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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
E03C1/042 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020130244
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026670
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】立元 惠祐
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 幸人
(72)【発明者】
【氏名】金城 政信
(72)【発明者】
【氏名】城戸 健司
(72)【発明者】
【氏名】村田 八千穂
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180232(JP,A)
【文献】特開2008-184731(JP,A)
【文献】特開2011-069169(JP,A)
【文献】特開2007-231546(JP,A)
【文献】特開2017-115541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルアウト可能な水栓装置であって、
吐水口を有するプルアウト部材と、
前記プルアウト部材に接続されたホースと、
前記ホースが挿通される空洞部を有するスパウト部材と、
を備え、
前記スパウト部材の前記空洞部は、前記スパウト部材の下方側において上流側開口を有すると共に、前記スパウト部材の前方側において下流側開口を有しており、
前記プルアウト部材は、前記スパウト部材の前記下流側開口よりも更に前方側において、当該下流側開口に対して近づく乃至離れることが可能となっており、
前記スパウト部材の前記空洞部内に、前記スパウト部材とは別体に、前記ホースを案内するスパウト内ガイド部材が設けられており、
前記スパウト内ガイド部材は、前記ホースが挿通される案内開口を有する基部と、前記案内開口より上方の領域において前記ホースの後方側面を案内するホースガイド部と、を有しており、
前記ホースガイド部は、前記基部の前記案内開口より後方側から上方に向かって延びつつ前方に向かって湾曲している
ことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記ホースガイド部の下流側端は、前記スパウト部材の前記下流側開口の前後方向の投影面内に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記スパウト内ガイド部材は、前記基部の前記案内開口より前方側から上方に向かって延びるスクレーバー部を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記ホースガイド部と前記スクレーバー部とは、それぞれ別々に、前記基部から上方に向かって延びており、
前記ホースガイド部と前記スクレーバー部との間には、隙間が設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の水栓装置。
【請求項5】
前記スクレーバー部の左右方向の幅は、前記ホースガイド部の左右方向の幅よりも大きい
ことを特徴とする請求項3または4に記載の水栓装置。
【請求項6】
前記スパウト内ガイド部材は、前記スパウト部材の前記上流側開口に着脱可能に取り付けられており、
前記ホースガイド部は、前記スパウト部材の前記上流側開口の上下方向の投影面内に位置している
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水栓装置。
【請求項7】
前記ホースガイド部の上流側端は、前記案内開口に隣接している
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水栓装置。
【請求項8】
前記ホースガイド部の断面形状は、上に凸の円弧形状である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の水栓装置。
【請求項9】
前記スパウト内ガイド部材及び/または前記スパウト部材には、排水経路が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の水栓装置。
【請求項10】
前記スパウト部材の下方に、吐止水を操作する操作部を有する下方スパウト部材が設けられており、
前記スパウト部材と前記下方スパウト部材とは、ビスによって、互いに対して所定角度回転可能であるように接続されており、
前記スパウト内ガイド部材は、前記ビスを貫通させる貫通孔を有しており、
前記貫通孔は、前記ビスの貫通部よりも大きく、前記ビスは前記貫通孔と接触していない
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関し、具体的には、プルアウト部材がスパウト部材からプルアウト可能な水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プルアウト部材がスパウト部材(外観部材)からプルアウト可能な水栓装置が知られている。プルアウト部材は、吐水口を有しており、ホースに接続されている。そして、当該ホースが、スパウト部材(外観部材)の内部形状に沿って(案内されて)、引き出されたり(プルアウト)、戻されたりできるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1に、プルアウト部材がスパウト部材からプルアウト可能な水栓装置の従来構成の一例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】CN 208634430 U
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、従来構成では、スパウト部材(外観部材)自体が、ホースを案内する機能を有していた。従って、スパウト部材を例えば鋳物で製造する場合、その外観形状の設計自由度が制限されてしまう、という問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような背景に基づいてなされたものである。本発明の目的は、プルアウト部材がスパウト部材からプルアウト可能な水栓装置において、プルアウト部材に接続されたホースを案内するための部材を、スパウト部材の空洞部内にスパウト部材とは別体に設けることにより、スパウト部材の外観形状の設計自由度を高く維持できる水栓装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プルアウト可能な水栓装置であって、吐水口を有するプルアウト部材と、前記プルアウト部材に接続されたホースと、前記ホースが挿通される空洞部を有するスパウト部材と、を備え、前記スパウト部材の前記空洞部は、前記スパウト部材の下方側において上流側開口を有すると共に、前記スパウト部材の前方側において下流側開口を有しており、前記プルアウト部材は、前記スパウト部材の前記下流側開口よりも更に前方側において、当該下流側開口に対して近づく乃至離れることが可能となっており、前記スパウト部材の前記空洞部内に、前記スパウト部材とは別体に、前記ホースを案内するスパウト内ガイド部材が設けられており、前記スパウト内ガイド部材は、前記ホースが挿通される案内開口を有する基部と、前記案内開口より上方の領域において前記ホースの後方側面を案内するホースガイド部と、を有しており、前記ホースガイド部は、前記基部の前記案内開口より後方側から上方に向かって延びつつ前方に向かって湾曲していることを特徴とする水栓装置である。
【0008】
本発明によれば、スパウト部材の空洞部内において、下方側の上流側開口から前方側の下流側開口へとホースの向きが90°変更されるところ、ホースをそのような軌道に案内するためのスパウト内ガイド部材を、スパウト部材とは別体に設けているため、外観部材であるスパウト部材の設計に際してホースの案内機能を考慮する必要がなく、すなわち、スパウト部材の形状の設計自由度が高い。
【0009】
本発明において、前記ホースガイド部の下流側端は、前記スパウト部材の前記下流側開口の前後方向の投影面内に位置していることが好ましい。
【0010】
この場合、ホースの上流端をスパウト部材の前方側の下流側開口から挿入する作業を行う際、ホースがホースガイド部の下流側端により容易に当接するため、ホースがホースガイド部によってより容易に案内され得る。
【0011】
また、本発明において、前記スパウト内ガイド部材は、前記基部の前記案内開口より前方側から上方に向かって延びるスクレーバー部を有することが好ましい。
【0012】
この場合、ホースを伝ってスパウト部材内に侵入し得る「伝い水」を、当該スクレーバー部によって効果的に堰き止めることができ、ひいては、当該「伝い水」がスパウト部材から更に下方のカウンター下方へと漏水することを効果的に防止することができる。
【0013】
また、この場合、前記ホースガイド部と前記スクレーバー部とは、それぞれ別々に、前記基部から上方に向かって延びており、前記ホースガイド部と前記スクレーバー部との間には、隙間が設けられていることが更に好ましい。
【0014】
これによれば、ホースの取付時やメンテナンス時等において、当該隙間を有効に利用することで、ホースをより円滑に挿抜することができる。また、スクレーバー部を設けているにも拘わらず、ホースガイド部に弾性を持たせることが容易であり、すなわち、ホースガイド部を撓みやすくすることが容易である。このようなホースガイド部によれば、ホースの案内機能が更に高められる。
【0015】
また、前記スクレーバー部の左右方向の幅は、前記ホースガイド部の左右方向の幅よりも大きいことが好ましい。
【0016】
これによれば、ホースが左右方向に多少ずれた場合であっても、スクレーバー部がより確実に「伝い水」を堰き止めることができる。
【0017】
また、本発明において、前記スパウト内ガイド部材は、前記スパウト部材の前記上流側開口に着脱可能に取り付けられており、前記ホースガイド部は、前記スパウト部材の前記上流側開口の上下方向の投影面内に位置していることが好ましい。
【0018】
これによれば、スパウト内ガイド部材をスパウト部材に取り付ける際に、ホースガイド部とスパウト部材の上流側開口とが干渉しないため、取り付け作業が容易である。
【0019】
また、本発明において、前記ホースガイド部の上流側端は、前記案内開口に隣接していることが好ましい。
【0020】
これによれば、ホースの上流端をスパウト部材の前方側の下流側開口から挿入する作業を行う際、ホースが案内開口へとより円滑に案内され得る。
【0021】
また、本発明において、前記ホースガイド部の断面形状は、上に凸の円弧形状であることが好ましい。
【0022】
これによれば、ホースが左右方向にずれることを効果的に防止することができる。
【0023】
また、本発明において、前記スパウト内ガイド部材及び/または前記スパウト部材には、排水経路が形成されていることが好ましい。
【0024】
これによれば、不所望にスパウト部材の空洞部内に侵入してきた水(例えばホースを伝ってくる「伝い水」)を、当該排水経路を介して有効に排出することができ、ひいては、そのような水がスパウト部材から更に下方のカウンター下方へと漏水することを効果的に防止することができる。
【0025】
また、本発明において、前記スパウト部材の下方に、吐止水を操作する操作部を有する下方スパウト部材が設けられており、前記スパウト部材と前記下方スパウト部材とは、ビスによって、互いに対して所定角度回転可能であるように接続されており、前記スパウト内ガイド部材は、前記ビスを貫通させる貫通孔を有しており、前記貫通孔は、前記ビスの貫通部よりも大きく、前記ビスは前記貫通孔と接触していないことが好ましい。
【0026】
これによれば、スパウト部材と下方スパウト部材とを接続するビスにかかる荷重が、スパウト内ガイド部材に全く伝達されない。このため、スパウト内ガイド部材の材料選択の自由度が高く、例えば、スパウト内ガイド部材を樹脂製とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、スパウト部材の空洞部内において、下方側の上流側開口から前方側の下流側開口へとホースの向きが90°変更されるところ、ホースをそのような軌道に案内するためのスパウト内ガイド部材を、スパウト部材とは別体に設けているため、外観部材であるスパウト部材の設計に際してホースの案内機能を考慮する必要がなく、すなわち、スパウト部材の形状の設計自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態による水栓装置の斜視図である。
図2図1の水栓装置の上部の縦断面図である。
図3】プルアウト状態での図1の水栓装置の上部の縦断面図である。
図4図1の水栓装置の分解斜視図である。
図5図1の水栓装置のスパウト部材の縦断面図である。
図6図1の水栓装置のスパウト内ガイド部材の後方側から見た斜視図である。
図7図1の水栓装置のスパウト内ガイド部材の前方側から見た斜視図である。
図8図1の水栓装置のVIII-VIII線断面図である。
図9図1の水栓装置のIX-IX線断面斜視図である。
図10図1の水栓装置の下方スパウト部材の上部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水栓装置について説明する。
【0030】
(構成)
図1は、本発明の一実施形態による水栓装置1の斜視図であり、図2は、本実施形態の水栓装置1の上部の縦断面図であり、図3は、プルアウト状態での本実施形態の水栓装置1の上部の縦断面図である。
【0031】
図1乃至図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、プルアウト可能な水栓装置であって、吐水口15を有するプルアウト部材10と、プルアウト部材10に接続されたホース20と、ホース20が挿通される空洞部33を有するスパウト部材30と、を備えている。
【0032】
スパウト部材30の空洞部33は、スパウト部材30の下方側において上流側開口33uを有すると共に、スパウト部材30の前方側において下流側開口33dを有している(図4参照)。
【0033】
プルアウト部材10は、スパウト部材30の下流側開口33dよりも更に前方側において、当該下流側開口33dに対して近づく乃至離れることが可能となっている(図2及び図3参照)。
【0034】
本実施形態のスパウト部材30は、外観部材であるケーシング31と、ホース20を略水平方向に案内するホース摺動筒32と、を有している。ホース摺動筒32は、Oリングシール32sを介して(図4参照)、スパウト部材30(ケーシング31)の下流側開口33dに取り付けられている。当該ホース摺動筒32は、プルアウト部材10のキャップ部材13によって、着脱可能に嵌合されるようになっている。ケーシング31は、鋳物で製造される金属製であり、ホース摺動筒32は、樹脂製であり、キャップ部材13も、樹脂製である。
【0035】
キャップ部材13は、外観部材であるケーシング11(金属製)によって覆われて、係合片13eによって一体的に係合されている。一方、キャップ部材13の内部には、ホース固定筒12が係合リング12eを介して堅固に嵌合されており、当該ホース固定筒12に、ホース20の下流端が堅固に固定されている。更に、キャップ部材13は、Oリングシール15sを介して吐水口15を保持すると共に、ホース固定筒12の内部と吐水口15とを連通する水路14を区画している。
【0036】
続いて、図4は、本実施形態の水栓装置1の分解斜視図であり、図5は、本実施形態のスパウト部材30の縦断面図であり、図6及び図7は、それぞれ本実施形態のスパウト内ガイド部材40の後方側及び前方側から見た斜視図である。また、図8は、図1のVIII-VIII線断面図であり、図9は、図1のIX-IX線断面斜視図であり、図10は、本実施形態の下方スパウト部材50の上部の斜視図である。
【0037】
図4乃至図7に示すように、本実施形態の水栓装置1においては、スパウト部材30の空洞部33内に、スパウト部材30とは別体に、ホース20を案内するスパウト内ガイド部材40が設けられている。本実施形態では、スパウト部材30のケーシング31は鋳物で製造される金属製部材であるが、スパウト内ガイド部材40は樹脂製部材である。
【0038】
スパウト内ガイド部材40は、ホース20が挿通される円形の案内開口41hを有する水平円板状(案内開口41hを除けば円環状)の基部41と、案内開口41hより上方の領域においてホース20の後方側面を案内するホースガイド部42と、を有している。
【0039】
そして、図4乃至図7に示すように、ホースガイド部42は、基部41の案内開口41hより後方側から上方に向かって延びつつ前方に向かって湾曲している。本実施形態のホースガイド部42は、上に凸の断面形状を有しており、ホースガイド部42の内面の最も外側の稜線が描く曲率半径(図5において視認される)は、4.7cmとなっている。
【0040】
本件発明者の試行実験によれば、ホースを円滑に案内するためには、ホース径が12.9mmである場合、当該曲率半径は、4.7~5.0cmの範囲内であることが好適である。この曲率半径は、一定である必要はなく、例えば上方側に延びるにつれて次第に小さくなっていてもよい。また、基部41側の領域(立ち上がり領域)に、鉛直方向に延びる部分(曲率半径無限大の部分)を有していてもよい。
【0041】
また、本件発明者の試行実験によれば、ホースを円滑に案内するためには、ホース径が12.9mmである場合、前記曲率半径を通り且つ図5の紙面に垂直な平面でのホースガイド部42の内面の断面形状は、上に凸の円弧形状であり、その曲率半径は、9~10mmであることが好適である。また、前記曲率半径を通り且つ図5の紙面に垂直な平面でのホースガイド部42の肉厚は、1.5~2.0mmであることが好適である。
【0042】
また、本実施形態では、ホースガイド部42の上流側端は、案内開口41hに隣接している。もっとも、本件発明者の試行実験によれば、ホース径が12.9mmである場合、両者の離間距離が3.7mm以内であれば、両者間に基部41が存在していても、ホースを円滑に案内することができる。
【0043】
一方、ホースガイド部42の下流側端(本実施形態ではホースガイド部42の最も外側の稜線の下流側端)は、スパウト部材30の下流側開口33dの前後方向の投影面内に位置しており、更に、ホース摺動筒32の開口の前後方向の投影面内に位置している。
【0044】
また、本実施形態のスパウト内ガイド部材40は、基部41の案内開口41hより前方側から上方に向かって延びるスクレーバー部43を有している。ホースガイド部42とスクレーバー部43とは、それぞれ別々に、基部41から上方に向かって延びている。ホースガイド部42とスクレーバー部43との間には、図4乃至図7に示すように、隙間が設けられている。
【0045】
本実施形態のスクレーバー部43は、外径31mm、内径28.65mm(すなわち肉厚1.175mm)の円筒部材の一部(120°/360°)である柱状であり、高さ18mmである。
【0046】
以上の寸法例の場合、スクレーバー部43の左右方向の幅は、ホースガイド部42の左右方向の幅よりも大きい。
【0047】
また、スパウト内ガイド部材40は、スパウト部材30の上流側開口33uに、着脱可能に取り付けられている。具体的には、下方側から、3本の固定ネジ34を介して着脱可能に取り付けられている。また、ホースガイド部42は、その下流側端を含めて、スパウト部材30の上流側開口33uの上下方向の投影面内に位置している。
【0048】
また、本実施形態では、スパウト部材30の下方に、吐止水を操作する操作部(ハンドル)70を有する下方スパウト部材50が設けられている。スパウト部材30と下方スパウト部材50とは、ビス35によって、互いに対して所定角度回転可能であるように接続されている。
【0049】
具体的には、ビス35は、スパウト部材30に対しては堅固に固定される一方、下方スパウト部材50に対してはその長孔55内を移動可能であり、当該長孔55の左右両端が規定する範囲が、回転可能角度範囲に対応している。
【0050】
また、本実施形態のスパウト内ガイド部材40は、基部41の下方側に一体的に形成された筒部44を有しており、ビス35は、当該筒部44に設けられた貫通孔45をも貫通している。但し、貫通孔45は、ビス35の貫通部よりも大きく、ビス35は貫通孔45と接触しないようになっている。
【0051】
また、本実施形態では、スパウト部材30、スパウト内ガイド部材40及び下方スパウト部材50によって、排水経路が形成されている。
【0052】
具体的には、本実施形態のスパウト内ガイド部材40は、筒部44の下方端にフランジ部46を有しており、当該フランジ部46に、固定ネジ34用の貫通孔に加えて、複数(本実施例では6個)の排水孔47が設けられている。
【0053】
そして、排水孔47の上方側と空洞部33とを連通するように、スパウト部材30(ケーシング31)に2個の平面視円弧状の連通孔37が形成されており(連通孔37の内面側は筒部44の外面によって規定されている)、排水孔47の下方側と下方スパウト部材50の側方に開口する排水開口59とを連通するように、下方スパウト部材50のフランジ部46に対向する面内に、環状連通孔57が形成されている。
【0054】
また、本実施形態では、スパウト内ガイド部材40の筒部44の外面上に、周方向に45°おきに等間隔に、三角リブ44rが形成されている。各三角リブ44rは、筒部44の外面からの径方向高さ0.13mm程度であって、フランジ部46の側4mmの高さ領域に設けられている。
【0055】
その他、図4を参照して、本実施形態の操作部70は、シングルレバーカートリッジ65を利用して、吐止水の操作に加えて、温調操作もできるようになっている。本実施形態では、水が給水管61、62を介して供給され、湯が給水管63、64を介して供給され、シングルレバーカートリッジ65によって所望の温度となるように混合され、出水管66及びホース20を介して吐水口15から吐水され得る。
【0056】
また、下方スパウト部材50には、ホース20の鉛直方向の摺動を案内するホース保護チューブ25が取り付けられている。ホース20は、ホース保護チューブ25の下方で、出水管66に固定されたホースガイド26を通過して、当該ホースガイド26の下方で出水管66に接続されている。また、ホースガイド26の下方で、ホース20にストッパ27が取り付けられている。
【0057】
(ホースの取付)
以上のように構成された本実施形態の水栓装置1は、ホース20の挿抜が容易である。スパウト内ガイド部材40をスパウト部材30に取り付けた状態で、ホースガイド部42の下流側端がスパウト部材30の下流側開口33dの前後方向の投影面内に位置しているため、ホース20の上流端をスパウト部材30の前方側から挿入する作業を行う際、ホース20がホースガイド部42の下流側端により容易に当接して、より容易に案内され得る。
【0058】
あるいは、スパウト内ガイド部材40をスパウト部材30に取り付ける前であれば、空洞部33が比較的広いため、ホース20を取り回す際に空洞部33内を有効に活用することができる。例えば、ホース20の上流端をして空洞部33を通過させてから、上流側開口33uの上流側でスパウト内ガイド部材40の案内開口41hを通過させ、その後にスパウト内ガイド部材40をスパウト部材30に取り付けてもよい。
【0059】
(使用)
以上のように構成された本実施形態の水栓装置1は、操作部70を介して、吐止水の操作、及び、温調操作を実施することができる。また、プルアウト部材10(及びホース20の一部)をスパウト部材30からプルアウトして使用することもできる。
【0060】
このプルアウトの際、更には、プルアウト状態から元の状態に戻る際、ホース20は、ホース摺動筒32の内面、ホースガイド部42の内側面、案内開口41hの内面、ホース保護チューブ25の内面、及び、ホースガイド26のガイド面によって、円滑に案内される。これにより、ホース20の破損リスクが小さく抑えられている。
【0061】
また、プルアウト状態では、ホース20を伝って、スパウト部材30内に水が侵入し得る(「伝い水」)。しかしながら、当該「伝い水」は、スクレーバー部43によって効果的に堰き止められる。そして、スクレーバー部43によって堰き止められた水は、連通孔37、排水孔47、環状連通孔57及び排水開口59を介して、下方スパウト部材50の側方から排出される。これにより、「伝い水」がスパウト部材30から更に下方のカウンター下方へと漏水することが効果的に防止されている。
【0062】
(メンテナンス)
ビス35を外せば、スパウト部材30は、下方スパウト部材50から容易に離間させることができる(ホース20を介してつながった状態となる)。そして、3本の固定ネジ34を外せば、スパウト部材30からスパウト内ガイド部材40を容易に取り外せる。この状態で、比較的広い空洞部33をメンテナンス作業に活用することができる。例えば、ホース20を自由に取り回しながら、ホース20への所望のメンテナンス作業を実施することができる。
【0063】
(効果)
以上のように構成された本実施形態の水栓装置1によれば、スパウト部材30の空洞部33内において、下方側の上流側開口33uから前方側の下流側開口33dへとホース20の向きが90°変更されるところ、ホース20をそのような軌道に案内するためのスパウト内ガイド部材40を、スパウト部材30とは別体に設けているため、外観部材であるスパウト部材30(ケーシング31)の設計に際してホース20の案内機能を考慮する必要がなく、すなわち、スパウト部材30(ケーシング31)の形状の設計自由度が高い。
【0064】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、ホースガイド部42の下流側端は、スパウト部材30の下流側開口33dの前後方向の投影面内に位置している。これにより、ホース20の上流端をスパウト部材30の前方側の下流側開口33dから挿入する作業を行う際、ホース20がホースガイド部42の下流側端により容易に当接するため、ホース20がホースガイド部42によってより容易に案内され得る。
【0065】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、スパウト内ガイド部材40は、基部41の案内開口41hより前方側から上方に向かって延びるスクレーバー部43を有している。これにより、ホース20を伝ってスパウト部材30内に侵入し得る「伝い水」を、当該スクレーバー部43によって効果的に堰き止めることができ、ひいては、当該「伝い水」がスパウト部材30から更に下方のカウンター下方へと漏水することを効果的に防止することができる。
【0066】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、ホースガイド部42とスクレーバー部43とは、それぞれ別々に、基部41から上方に向かって延びており、ホースガイド部42とスクレーバー部43との間には、隙間が設けられている。これにより、ホース20の取付時やメンテナンス時等において、当該隙間を有効に利用することで、ホース20をより円滑に挿抜することができる。また、スクレーバー部43を設けているにも拘わらず、ホースガイド部42に弾性を持たせることが容易であり、すなわち、ホースガイド部42を撓みやすくすることが容易である。このようなホースガイド部42によれば、ホース20の案内機能が更に高められる。
【0067】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、スクレーバー部43の左右方向の幅は、ホースガイド部42の左右方向の幅よりも大きい。これにより、ホース20が左右方向に多少ずれた場合であっても、スクレーバー部43がより確実に「伝い水」を堰き止めることができる。
【0068】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、スパウト内ガイド部材40は、スパウト部材30の上流側開口33uに着脱可能に取り付けられており、ホースガイド部42は、スパウト部材30の上流側開口33uの上下方向の投影面内に位置している。これにより、スパウト内ガイド部材40をスパウト部材30に取り付ける際に、ホースガイド部42とスパウト部材30の上流側開口33uとが干渉しないため、取り付け作業が容易である。
【0069】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、ホースガイド部42の上流側端は、案内開口41hに隣接している。これにより、ホース20の上流端をスパウト部材30の前方側の下流側開口33dから挿入する作業を行う際、ホース20が案内開口41hへとより円滑に案内され得る。
【0070】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、ホースガイド部42の断面形状は、上に凸の円弧形状である。これにより、ホース20が左右方向にずれることを効果的に防止することができる。
【0071】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、スパウト部材30に連通孔37が形成され、スパウト内ガイド部材40のフランジ部46に排水孔47が形成され、下方スパウト部材50のフランジ部46に対向する面内に環状連通孔57が形成され、下方スパウト部材50の側方に排水開口59が開口され、それら連通孔37、排水孔47、環状連通孔57及び排水開口59によって、排水経路が形成されている。これにより、不所望にスパウト部材30の空洞部33内に侵入してきた水(例えばホース20を伝ってくる「伝い水」)を、当該排水経路を介して有効に排出することができ、ひいては、そのような水がスパウト部材30から更に下方のカウンター下方へと漏水することを効果的に防止することができる。
【0072】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、スパウト部材30の下方に、吐止水を操作する操作部70を有する下方スパウト部材50が設けられており、スパウト部材30と下方スパウト部材50とは、ビス35によって、互いに対して所定角度回転可能であるように接続されており、スパウト内ガイド部材40は、ビス35を貫通させる貫通孔45を有しており、貫通孔45は、ビス35の貫通部よりも大きく、ビス35は貫通孔45と接触していない。これにより、スパウト部材30と下方スパウト部材50とを接続するビス35にかかる荷重が、スパウト内ガイド部材40に全く伝達されない。このため、スパウト内ガイド部材40の材料選択の自由度が高く、例えば、スパウト内ガイド部材40を樹脂製とすることができる。
【0073】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、スパウト部材30とは別体のスパウト内ガイド部材40を、スパウト部材30から取り外すことができる。このため、前述のように、比較的広い空洞部33をメンテナンス作業に活用することができる。
【0074】
その他、本実施形態の水栓装置1によれば、三角リブ44rが設けられているため、スパウト内ガイド部材40を空洞部33内に取り付ける時、三角リブ44rが設けられていない筒部44の領域のみを挿入した状態で、回転方向位置を調整し、その後、三角リブ44rが設けられた筒部44の領域を圧入することで、回転方向のずれの発生を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 水栓装置
10 プルアウト部材
11 ケーシング
12 ホース固定筒
12e 係合リング
13 キャップ部材
13e 係合片
14 水路
15 吐水口
15s Oリングシール
20 ホース
25 ホース保護チューブ
26 ホースガイド
27 ストッパ
30 スパウト部材
31 ケーシング
32 ホース摺動筒
32s Oリングシール
33 空洞部
33d 下流側開口
33u 上流側開口
34 固定ネジ
35 ビス
37 連通孔
40 スパウト内ガイド部材
41 基部
41h 案内開口
42 ホースガイド部
43 スクレーバー部
44 筒部
44r 三角リブ
45 貫通孔
46 フランジ部
47 排水孔
50 下方スパウト部材
55 長孔
57 環状連通孔
59 排水開口
61 給水管
62 給水管
63 給水管
64 給水管
65 シングルレバーカートリッジ
66 出水管
70 操作部
図1
図2
図3
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図8
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図10