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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/514 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
H01R13/514
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020183401
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073426
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035596(WO,A1)
【文献】特開2006-294386(JP,A)
【文献】特開2007-172998(JP,A)
【文献】実開平05-053153(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同一の形状をなす複数のハウジングを上下に積層して構成され、
各前記ハウジングの左右一方側には、積層方向に突出する係止片、及び同じ姿勢で積層された他の前記ハウジングの前記係止片が係止する第1被係止部が形成され、
各前記ハウジングの左右他方側には、上下左右を反転させた姿勢で積層された他の前記ハウジングの前記係止片が係止する第2被係止部が形成されており、
前記係止片には、前端が前記係止片の前端よりも後方に位置し、左右方向外側に向けて窪む凹部が形成され、
前記第1被係止部には、左右方向外側に向けて突出し、後端が前記第1被係止部の後端まで延び、前記凹部に嵌る第1凸部が形成され、
前記第2被係止部には、左右方向外側に向けて突出し、後端が前記第2被係止部の後端まで延び、前記凹部に嵌る第2凸部が形成されており、
前記積層方向に隣合う前記ハウジングのうち、一方の前記ハウジングの前後上下の向きを反転させて、前記係止片と前記第2被係止部の前後方向の位置を揃えた場合、一方の前記ハウジングにおける前記係止片の前端と前記凹部の前端との間の部位と、他方の前記ハウジングの前記第2凸部の後端部と、の前後方向の位置が揃い、
前記積層方向に隣合う前記ハウジングのうち、一方の前記ハウジングの前後左右の向きを反転させて、前記係止片と前記第1被係止部の前後方向の位置を揃えた場合、一方の前記ハウジングにおける前記係止片の前端と前記凹部の前端との間の部位と、他方の前記ハウジングの前記第1凸部の後端部と、の前後方向の位置が揃うコネクタ。
【請求項2】
前記係止片、及び前記第2被係止部は、前記ハウジングにおける前記積層方向の一方側に配置され、前記第1被係止部は、前記ハウジングにおける前記積層方向の他方側に配置されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
各前記ハウジングは、前記係止片、前記第1被係止部、及び前記第2被係止部の各々を一対ずつ有し、
一対の前記係止片、一対の前記第1被係止部、及び一対の前記第2被係止部の各々は、前記積層方向から見た平面視において、互いに点対称の位置関係で配置されている請求項1から請求項2までのいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同一構造の複数のハウジングを積層するコネクタが開示されている。複数のハウジングは、各ハウジングから下向きに突出した一対のアームを、下側のハウジングに設けられたレール部に係止することによって、積層状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-51050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものは、積層した状態において最下段のハウジングから一対のアームが突出した状態になり、このままでは取り扱い難い。これを避けるため、特許文献1のものは、最下段のハウジングのうち一対のアームが突出した下面を覆うように保持部材を配置している。しかし、保持部材は、ハウジングとは形状の異なる部品であるから、コネクタ全体としては2種類の部品が必要となる。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、部品の種類を少なくすることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
互いに同一の形状をなす複数のハウジングを上下に積層して構成され、
各前記ハウジングの左右一方側には、積層方向に突出する係止片、及び同じ姿勢で積層された他の前記ハウジングの前記係止片が係止する第1被係止部が形成され、
各前記ハウジングの左右他方側には、上下左右を反転させた姿勢で積層された他の前記ハウジングの前記係止片が係止する第2被係止部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、部品の種類を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のコネクタを分解して示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1のハウジングを右前方上側から見た斜視図である。
図3図3は、実施形態1のハウジングを左前方上側から見た斜視図である。
図4図4は、実施形態1のハウジングの平面図である。
図5図5は、図4におけるA-A断面図であって、雌側端子金具を挿入した状態を示す。
図6図6は、実施形態1の雌側端子金具の側面図である。
図7図7は、実施形態1のハウジングを積層した状態を示す側面図である。
図8図8は、2つのハウジングのうち一方の前後左右の向きを反転させて積層方向に並べた状態を示す側面図である。
図9図9は、2つのハウジングのうち一方の前後上下の向きを反転させて積層方向に並べた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)互いに同一の形状をなす複数のハウジングを上下に積層して構成され、各ハウジングの左右一方側には、積層方向に突出する係止片、及び同じ姿勢で積層された他のハウジングの係止片が係止する第1被係止部が形成され、各ハウジングの左右他方側には、上下左右を反転させた姿勢で積層された他のハウジングの係止片が係止する第2被係止部が形成されている。この構成によれば、1つのハウジングに対して他のハウジングを上下左右を反転させた姿勢で積層すると、各ハウジングの係止片が相手側のハウジングの高さ寸法の範囲内に配置される。したがって、ハウジングとは形状の異なる別部品を用いなくても、係止片が突出しない形態に積層することができる。本開示によれば、ハウジングとは別の部品が不要なので、部品の種類数を少なくすることができる。
【0010】
(2)本開示のコネクタの係止片、及び第2被係止部は、ハウジングにおける積層方向の一方側に配置され、第1被係止部は、ハウジングにおける積層方向の他方側に配置されていることが好ましい。この構成によれば、同じ姿勢の複数のハウジングを積層方向の他方側に積層しつつ、上下左右を反転させた姿勢のハウジングを積層方向の一方側に積層することができる。
【0011】
(3)本開示の各ハウジングは、係止片、第1被係止部、及び第2被係止部の各々を一対ずつ有し、一対の係止片、一対の第1被係止部、及び一対の第2被係止部の各々は、積層方向から見た平面視において、互いに点対称の位置関係で配置されていることが好ましい。この構成によれば、ハウジングを同じ姿勢で積層したときには、左右に離隔した一対の係止片の係止作用によってハウジング同士を確実に積層状態に保持できる。一つのハウジングに対して、他のハウジングを上下左右を反転させた姿勢で積層したときには、双方のハウジングの係止片同士が干渉することがない。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施形態1]
以下、本開示を具体化した実施形態1を図1図9を参照して説明する。以下の説明において、前後の方向については、図4における下方を前方、上方を後方と定義する。上下の方向については、図4における手前側を上方、奥側を下方と定義する。左右の方向については、図4に現れる向きをそのまま右方、左方と定義する。
【0013】
実施形態のコネクタ1は、図1に示すように、複数のハウジング20、及び雌側端子金具10を備えている。
【0014】
[ハウジングの構成]
複数のハウジング20の各々は合成樹脂製の単一部品である。これらハウジング20の形状及び寸法は互いに同一である。ハウジング20は、図2から図4に示すように、基部23、分岐部24、複数の端子収容室21、ランス22、一対の係止片25、一対の第1被係止部26、及び一対の第2被係止部27を有している。基部23は、左右方向に長い概ね直方体状をなしている。分岐部24は、左右方向に3つが並んでおり、各々が基部23の前端に連なっている。各分岐部24は、左右方向に長い概ね直方体状をなしている。隣合う分岐部24の間は、所定の寸法離隔している。複数のハウジング20は、基部23、及び分岐部24を上下に重ねるように積層することができる(図7参照。)。
【0015】
複数の端子収容室21は、図5に示すように、ハウジング20内において基部23の後端から分岐部24の前端にわたって前後方向に延びて形成されている。端子収容室21は、上下に二段、左右方向に複数並んで形成されている。各端子収容室21には、雌側端子金具10を基部23の後端から挿入して収容可能である。
【0016】
ランス22は、各分岐部24の上側と下側とに前向きに片持ち状に延びて設けられている。ランス22は、上下方向に弾性変形可能である。上側のランス22は、上側の端子収容室21の上方に配置され、上側の端子収容室21に臨んでいる。下側のランス22は、下側の端子収容室21の下方に配置され、下側の端子収容室21に臨んでいる。ランス22は、端子収容室21の正規位置に収容された雌側端子金具10に係止することによって、端子収容室21内の雌側端子金具10を抜け止めすることができる。
【0017】
一対の係止片25は、図2、3に示すように、各々平板状をなしている。各係止片25は、板厚方向を左右方向に向けて、基部23の右端の後側、及び基部23の左端の前側の各々から上向きに突出している。各係止片25の左右方向外側の面は、基部23の右側面及び左側面に面一である。各係止片25において、各係止片25が対向する側(左右方向中央に向く側)の上下方向中央部には、左右方向外側に向けて窪む凹部25Aが前後方向に延びて形成されている。各凹部25Aの後端は、後向きに開放されている。各凹部25Aの前端は、係止片25の前端よりも後方に位置しており、前向きに開放されていない。
【0018】
一対の第1被係止部26は、一対の係止片25の各々の下方に位置し、基部23の左右両側面を、左右方向中央に向けて窪ませるように形成されている。各第1被係止部26の上下方向中央部には、左右方向外側に向けて突出する第1凸部26Aが前後方向に延びて形成されている。各第1凸部26Aの後端は、各第1被係止部26の後端まで延びている。各第1凸部26Aの前端は、各第1被係止部26の前端よりも後方に位置している。
【0019】
一対の第2被係止部27は、基部23の右側面における上部前側、及び基部23の左側面における上部後側に配置され、左右方向中央に向けて窪ませるように形成されている。各第2被係止部27の上下方向中央部には、左右方向外側に向けて突出する第2凸部27Aが前後方向に延びて形成されている。各第2凸部27Aの後端は、各第2被係止部27の後端まで延びている。各第2凸部27Aの前端は、各第2被係止部27の前端よりも後方に位置している。
【0020】
一対の係止片25、一対の第1被係止部26、及び一対の第2被係止部27の各々は、基部23において、前後方向に異なる位置であって、且つ左右方向に異なる位置に配置されている。具体的には、一対の係止片25、一対の第1被係止部26、及び一対の第2被係止部27の各々は、図4に示すように、積層方向L(図2、3参照)から見た平面視において、基部23の中央部における架空点Pを挟み、互いに点対称の位置関係で配置されている。
【0021】
こうして構成されたハウジング20は、係止片25が突出する方向に積層することができる。つまり、係止片25は、積層方向Lに突出しているのである。また、係止片25、及び第2被係止部27は、ハウジング20における積層方向Lの一方側に配置されている。そして、第1被係止部26は、ハウジング20における積層方向Lの他方側に配置されている。
【0022】
[雌側端子金具の構成]
雌側端子金具10は、金属板材を所定形状に打ち抜いてから曲げ加工を施して形成されている。雌側端子金具10は、図6に示すように、角筒部12、及びバレル13を有している。角筒部12は、筒状をなしており、前端部に相手の雄側端子金具のタブ(図示せず)と接触する接触片(図示せず)を収容している。バレル13は、雌側端子金具10における後端部に設けられており、加締めることによって電線Wの端末に固着されている。
【0023】
角筒部12の上面の前端部には、上向きに突出したランス係止用突起17が設けられている。ランス係止用突起17は、後方に配置されたランス22の先端に係止することによって雌側端子金具10を抜け止めすることができる(図5参照。)。
【0024】
[コネクタの組み立て手順]
次に、コネクタ1における組み立て手順の一例について説明する。先ず、電線Wの端末に固着された雌側端子金具10を端子収容室21の後方から端子収容室21に挿入する。雌側端子金具10を端子収容室21に挿入する過程において、ランス係止用突起17がランス22に突き当たる。すると、ランス22は、ランス係止用突起17によって上向きに撓み変形する。雌側端子金具10が正規位置まで挿入されると、ランス22は、ランス係止用突起17の後方に到達して復元変形し、ランス係止用突起17に係止する。これによって、雌側端子金具10は、抜け止め状態に係止される(図5参照。)。
【0025】
次に、複数のハウジング20を上下方向に積層する。先ず、係止片25を上方へ突出させた同じ姿勢同士のハウジング20を上下に積層して取り付ける。具体的には、図7に示すように、最も下のハウジング20の一対の係止片25を上下方向中央のハウジング20(以下、単に中央のハウジング20ともいう)の一対の第1被係止部26に係止させる。このとき、最も下のハウジング20の係止片25を中央のハウジング20の下方から第1被係止部26に進入させる。すると、各係止片25は、第1凸部26Aに乗りあがり左右方向外側に向けて撓む。第1被係止部26への係止片25の進入がさらに進むと、各係止片25の凹部25Aに各第1凸部26Aが嵌る。つまり、中央のハウジング20の第1被係止部26には、同じ姿勢で積層された最も下の(他の)ハウジング20の係止片25が係止するのである。
【0026】
次に、中央のハウジング20の上に上下左右の向きを反転させたハウジング20を積層する。具体的には、最も上のハウジング20の下向きに突出した一対の係止片25を、中央のハウジング20の一対の第2被係止部27に係止させる。このとき、最も上のハウジング20の各係止片25を中央のハウジング20の上方から各第2被係止部27に進入させる。すると、最も上のハウジング20の各係止片25は、中央のハウジング20の各第2凸部27Aに乗りあがり左右方向外側に向けて撓む。各第2被係止部27への各係止片25の進入がさらに進むと、最も上のハウジング20の各凹部25Aに各第2凸部27Aが嵌る。
【0027】
これと共に、中央のハウジング20の各係止片25を最も上のハウジング20の下方から各第2被係止部27に進入させる。すると、中央のハウジング20の各係止片25は、最も上のハウジング20の各第2凸部27Aに乗りあがり左右方向外側に向けて撓む。各第2被係止部27への各係止片25の進入がさらに進むと、中央のハウジング20の各凹部25Aに各第2凸部27Aが嵌る。つまり、中央のハウジング20の第2被係止部27には、上下左右を反転させた姿勢で積層された最も上の(他の)ハウジング20の係止片25が係止するのである。この場合、最も上のハウジング20の係止片25は、外に向けて突出せず邪魔にならない。
【0028】
このように、コネクタ1は、最も下及び中央のハウジング20を同じ姿勢で積層し、最も上に位置するハウジング20を上下左右の向きを反転させて中央のハウジング20の上に積層して構成する。これによって、コネクタ1は、係止片25が外に向けて突出しないブロック状の形態にすることができる。こうして得たコネクタ1は、例えば、筒状をなしたフード部(図示せず)に収容することによって、雄側端子金具を有した相手側ハウジング(図示せず)と嵌合することができる。
【0029】
ここで、上下左右を反転させた最も上のハウジング20の左側の係止片25は、最も下のハウジング20の右側の係止片25に相当する。最も下のハウジング20における右側の係止片25は、中央のハウジング20における右側の第1被係止部26に係止する。そして、最も上のハウジング20における左側の係止片25は、中央のハウジング20における左側の第2被係止部27に係止する。したがって、中央のハウジング20の左右一方側である右側に、積層方向Lに突出する係止片25、及び同じ姿勢で積層された他の(最も下の)ハウジング20の右側の係止片25が係止する第1被係止部26を形成する。これと共に、中央のハウジング20の左右他方側である左側に、上下左右を反転させた姿勢で積層された他の(最も上の)ハウジング20の左側の係止片25が係止する第2被係止部27を形成する。この構成にすることによって、係止片を外向きに突出させることなく同一形状の複数のハウジング20をブロック状に積層することができる。
【0030】
次に、2つのハウジング20のうち一方の前後左右の向きを反転させた場合について説明する。図8に示すように、下に位置する一方のハウジング20(以下、単に下のハウジング20ともいう)のみ前後左右の向きを反転させると、下のハウジング20の係止片25における凹部25Aの後端は、後向きに開放されていない状態になる。下のハウジング20の係止片25を上に位置する他方のハウジング20(以下、単に上のハウジング20ともいう)の第1被係止部26に進入させる。下のハウジング20の凹部25Aは、後向きに開放されていないため、下のハウジング20の係止片25が上のハウジング20の第1凸部26Aに乗りあがり左右方向外側に撓み、凹部25Aに第1凸部26Aが嵌らない。つまり、2つのハウジング20のうち一方の前後左右の向きを反転させて積層することはできない。
【0031】
次に、2つのハウジング20のうち一方のハウジング20の前後上下の向きを反転させた場合について説明する。図9に示すように、上のハウジング20のみ前後上下の向きを反転させると、上のハウジング20の係止片25における凹部25Aの後端は、後向きに開放されていない状態になる。これと共に、上のハウジング20の第2被係止部27における第2凸部27Aの前端は、第2被係止部27の前端まで延びた状態になる。
【0032】
上のハウジング20の係止片25を下のハウジング20の第2被係止部27に進入させる。上のハウジング20の凹部25Aは、後向きに開放されていないため、上のハウジング20の係止片25が下のハウジング20の第2凸部27Aに乗りあがり左右方向外側に撓み、凹部25Aに第2凸部27Aが嵌らない。これと共に、下のハウジング20の係止片25を上のハウジング20の第2被係止部27に進入させる。上のハウジング20の第2凸部27Aの前端は第2被係止部27の前端まで延びている。このため、下のハウジング20の係止片25が上のハウジング20の第2凸部27Aに乗りあがり左右方向外側に撓み、凹部25Aの第2凸部27Aが嵌らない。つまり、2つのハウジング20のうち一方の前後上下の向きを反転させて積層することはできない。つまり、凹部25A、第1凸部26A、及び第2凸部27Aは、ハウジング20を前後左右、及び前後上下を反転させた姿勢で積層することを規制する規制部として機能する。係止片25、第1被係止部26、及び第2被係止部27は、規制部を有している。
【0033】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
【0034】
本開示のコネクタ1は、互いに同一の形状をなす複数のハウジング20を上下に積層して構成されている。つまり、コネクタ1を構成するハウジング20は、一種類だけである。各ハウジング20の左右一方側には、積層方向Lに突出する係止片25、及び同じ姿勢で積層された他のハウジング20の左右一方側の係止片25が係止する第1被係止部26が形成されている。各ハウジング20の左右他方側には、上下左右を反転させた姿勢で積層された他のハウジング20の左右他方側の係止片25が係止する第2被係止部27が形成されている。この構成によれば、1つのハウジング20に対して他のハウジング20を上下左右を反転させた姿勢で積層すると、各ハウジング20の係止片25が相手側のハウジング20の高さ寸法の範囲内に配置される。したがって、ハウジング20とは形状の異なる別部品を用いなくても、係止片25が突出しない形態に積層することができる。本開示によれば、ハウジング20とは別の部品が不要なので、部品の種類数を少なくすることができる。
【0035】
本開示のコネクタ1の係止片25、及び第2被係止部27は、ハウジング20における積層方向Lの一方側に配置され、第1被係止部26は、ハウジング20における積層方向Lの他方側に配置されている。この構成によれば、同じ姿勢の複数のハウジング20を積層方向Lの他方側に積層しつつ、上下左右を反転させた姿勢のハウジング20を積層方向Lの一方側に積層することができる。
【0036】
本開示の各ハウジング20は、係止片25、第1被係止部26、及び第2被係止部27の各々を一対ずつ有している。一対の係止片25、一対の第1被係止部26、及び一対の第2被係止部27の各々は、積層方向Lから見た平面視において、互いに点対称の位置関係で配置されている。この構成によれば、ハウジング20を同じ姿勢で積層したときには、左右に離隔した一対の係止片25の係止作用によってハウジング20同士を確実に積層状態に保持できる。一つのハウジング20に対して、他のハウジング20の上下左右を反転させた姿勢で積層したときには、双方のハウジング20の係止片25同士が干渉することがない。
【0037】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本開示には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
(1)実施形態において、係止片、第1被係止部、及び第2被係止部は各々一対設けられている。しかし、これに限らず、係止片、第1被係止部、及び第2被係止部は一つずつ設けてもよく、3つ以上設けてもよい。係止片、第1被係止部、及び第2被係止部を各々一つずつ設ける場合、ハウジングの左右一方側に、積層方向に突出する係止片、及び同じ姿勢で積層された他のハウジングの係止片が係止する第1被係止部を形成する。これと共に、ハウジングの左右他方側に、上下左右を反転させた姿勢で積層された他のハウジングの左側の係止片が係止する第2被係止部を形成する。
(2)実施形態において、ハウジングにランスを設けているが、雌側端子金具にランスを設ける構成であってもよい。
(3)実施形態において、端子収容室に雌側端子金具を挿入している。しかし、端子収容室にタブを有する雄側端子金具を挿入してもよい。
(4)実施形態において、端子収容室に雌側端子金具を挿入した後に複数のハウジングを積層している。しかし、これに限らず、複数のハウジングを積層した後に端子収容室に雌側端子金具を挿入してもよい。
(5)実施形態において、凹部、第1凸部、及び第2凸部は前後に延びた形態である。しかし、これに限らず、凹部を半球状に窪んだ形態にし、第1凸部、及び第2凸部を半球状に突出した形態にしてもよい。また、この場合、凹部、第1凸部、及び第2凸部を共に前後方向に偏った位置に配置することによって、規制部として機能させることができる。
(6)実施形態において、最も上のハウジングの上下左右を反転させて積層している。しかし、これに限らず、最も上のハウジングと同じ姿勢のハウジングをさらに積層してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…コネクタ
10…雌側端子金具
12…角筒部
13…バレル
17…ランス係止用突起
20…ハウジング
21…端子収容室
22…ランス
23…基部
24…分岐部
25…係止片
25A…凹部
26…第1被係止部
26A…第1凸部
27…第2被係止部
27A…第2凸部
L…積層方向
W…電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9