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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ガラス板製造方法及びガラス板製造装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/08 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
B65H3/08 310E
B65H3/08 320
B65H3/08 342A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020189552
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078688
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】大藤 正直
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】柿木 浩
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098395(JP,A)
【文献】特開2019-104566(JP,A)
【文献】特開2019-218114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
B65D 85/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜姿勢のガラス板と、傾斜姿勢の保護シートとを前後方向に積層して含み、かつ、前記保護シートが、前記ガラス板から食み出す食み出し部と、前記ガラス板と重なる重なり部とを有する積層体から、最前列の第一ガラス板を順次取り出すガラス板製造方法であって、
前記第一ガラス板の取り出しに関連して、前記重なり部外の押え位置で押え部材によって前記食み出し部を押える押え工程を備え、
前記押え工程は、前記押え部材を、前記第一ガラス板の前面に沿って、前記押え位置の前方側に位置する中間位置よりも前記重なり部寄りの初期位置から前記中間位置まで移動させる第一工程と、前記中間位置に存する前記押え部材を、前記押え位置に向かって後方側に移動させて前記食み出し部を押える第二工程とを含むことを特徴とするガラス板製造方法。
【請求項2】
前記押え部材は、前記第一ガラス板を取り出す前に、前記第一ガラス板の前側に存する前記保護シートの前記食み出し部を押える請求項1に記載のガラス板製造方法。
【請求項3】
前記押え部材は、前記第一ガラス板を取り出す際に、前記第一ガラス板の後側に存する前記保護シートの前記食み出し部を押える請求項1又は2に記載のガラス板製造方法。
【請求項4】
前記初期位置が、前記重なり部内に位置する請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス板製造方法。
【請求項5】
前記押え部材は、前記第一ガラス板の上端縁から上側に食み出している前記保護シートの上端部を押える請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス板製造方法。
【請求項6】
前記押え部材は、前記第一ガラス板の上側角部よりも幅方向内側で、前記保護シートの前記上端部を押える請求項5に記載のガラス板製造方法。
【請求項7】
前記押え部材が、前記保護シートを吸着保持する吸着パッドを備える請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス板製造方法。
【請求項8】
前記第二工程では、前記吸着パッドを移動させながら、前記吸着パッドの吸着面の傾きを変化させる請求項7に記載のガラス板製造方法。
【請求項9】
傾斜姿勢のガラス板と、傾斜姿勢の保護シートとを前後方向に積層して含み、かつ、前記保護シートが、前記ガラス板から食み出す食み出し部と、前記ガラス板と重なる重なり部とを有する積層体から、最前列の第一ガラス板を順次取り出すガラス板製造装置であって、
前記第一ガラス板の取り出しに関連して、前記重なり部外の押え位置で前記食み出し部を押える押え部材と、
前記押え部材を、前記第一ガラス板の前面に沿って、前記押え位置の前方側に位置する中間位置よりも前記重なり部寄りの初期位置から前記中間位置まで移動させる第一移動機構と、
前記食み出し部を押えるために、前記中間位置に存する前記押え部材を、前記押え位置に向かって後方側に移動させる第二移動機構とを備えることを特徴とするガラス板製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の薄型表示機器やセンサの基板、あるいは固体撮像素子やレーザーダイオード等の半導体パッケージ用カバー、さらには薄膜化合物太陽電池の基板等に使用される。
【0003】
この種のガラス板の製造工程では、元になる複数枚のガラス板を保護シートと交互に積層した状態で輸送した後、その積層体から1枚ずつガラス板を取り出して後工程に搬送することが行われている。その具体例として、特許文献1には、パレットの背板に傾斜姿勢で立て掛け支持された積層体から、最前列の第一ガラス板と共にその第一ガラス板の前側に存する前側保護シートを受け渡しパッドにより吸着保持して引き離すことが開示されている。
【0004】
また、同文献には、第一ガラス板と前側保護シートを積層体から引き離す前に、押え部材によって、前側保護シートの上端部及び後側保護シートの上端部並びにそれらの後方に存する保護シートの上端部を押えることで、それらの上端部が前方に向かって倒れないようにすることが開示されている。押え部材の先端の押え部分は、可撓性を有するブラシ等で構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-104566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の押え部材は、積層体が載置されたパレットが準備されると、最初に積層体の上方に移送され、保護シートの上端部を前側に倒れないように押えるようになっている(同文献の段落0044、図5(a)を参照)。
【0007】
しかしながら、保護シートの上端部等の食み出し部は、押え部材で押える前に既に前側に倒れている場合もある。また、食み出し部が前側に倒れている場合、その態様も不規則である。したがって、積層体の上方に押え部材を単に移送させるだけでは、食み出し部を確実に押えることが難しいという問題がある。そして、食み出し部が確実に押えられていないと、保護シートが邪魔になってガラス板の取り出し作業を円滑に行えないおそれがある。
【0008】
本発明は、ガラス板の取り出し作業を円滑に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、傾斜姿勢のガラス板と、傾斜姿勢の保護シートとを前後方向に積層して含み、かつ、保護シートが、ガラス板から食み出す食み出し部と、ガラス板と重なる重なり部とを有する積層体から、最前列の第一ガラス板を順次取り出すガラス板製造方法であって、第一ガラス板の取り出しに関連して、重なり部外の押え位置で押え部材によって食み出し部を押える押え工程を備え、押え工程では、押え部材を、第一ガラス板の前面に沿って、押え位置の前方側に位置する中間位置よりも重なり部寄りの初期位置から中間位置まで移動させる第一工程と、中間位置に存する押え部材を、押え位置に向かって後方側に移動させて食み出し部を押える第二工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、保護シートの食み出し部が前側に倒れている場合であっても、押え部材が、押え工程の第一工程で第一ガラス板の前面に沿って移動する過程で、食み出し部の前側に倒れている部分と接触する。この状態で、押え部材が第一ガラス板の前面に沿ってさらに中間位置側に移動すると、食み出し部の前側に倒れている部分が押え部材によって持ち上げられ、その前側への倒れが矯正される。そして、このように倒れが矯正された食み出し部であれば、押え工程の第二工程において、中間位置に存する押え部材を押え位置に向かって後方側に移動させることで、確実に押えることができる。したがって、食み出し部が前側へ倒れている場合でも保護シートを確実に押え、ガラス板の取り出し作業を円滑に行うことが可能となる。
【0011】
上記の構成において、押え部材は、第一ガラス板を取り出す前に、第一ガラス板の前側に存する保護シート(前側保護シート)の食み出し部を押えてもよい。
【0012】
このようにすれば、第一ガラス板を取り出す前に、前側保護シートの食み出し部を押え部材で確実に押えることができる。このため、取り出し用の保持部材等を前側保持部材に対して正確に位置決めできる。
【0013】
上記の構成において、押え部材は、第一ガラス板を取り出す際に、第一ガラス板の後側に存する保護シート(後側保護シート)の食み出し部を押えてもよい。
【0014】
このようにすれば、第一ガラス板を取り出す際に、後側保護シートの食み出し部を押え部材で確実に押えることができる。このため、取り出し用の保持部材等により、第一ガラス板を、後側保護シートと確実に分離して取り出すことができる。
【0015】
上記の構成において、初期位置は、重なり部内に位置することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、初期位置が、保護シートの食み出し部の前側への倒れの影響の少ない位置となる。つまり、このような初期位置から押え部材の移動を開始させると、食み出し部の前側に倒れている部分に押え部材を潜り込ませて持ち上げ易くなる。この結果、食み出し部の前側への倒れをより確実に矯正できる。
【0017】
上記の構成において、押え部材は、第一ガラス板の上端縁から上側に食み出している保護シートの上端部を押えることが好ましい。
【0018】
保護シートの上端部は、重力の影響を受けて前側に倒れ易いため、前側への倒れを矯正できる本発明が特に有用となる。
【0019】
上記の構成において、押え部材は、第一ガラス板の上側角部よりも幅方向内側で、保護シートの上端部を押えることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、保護シートの上端部の動き(前側又は後側への倒れ)が、第一ガラス板の上端縁によってある程度規制されるため、押え部材により保護シートを押え易くなる。
【0021】
上記の構成において、押え部材が、保護シートを吸着保持する吸着パッドを備えることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、押え部材で保護シートを押えている状態で、両者の間で滑りが生じ難いため、押え部材によって保護シートを確実に押えることができる。
【0023】
押え部材が吸着パッドを備える場合、第二工程では、吸着パッドを移動させながら、吸着パッドの吸着面の傾きを変化させることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、食み出し部が後側に倒れている場合でも、食み出し部を確実に押えることができる。
【0025】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、傾斜姿勢のガラス板と、傾斜姿勢の保護シートとを前後方向に積層して含み、かつ、保護シートが、ガラス板から食み出す食み出し部と、ガラス板と重なる重なり部とを有する積層体から、最前列の第一ガラス板を順次取り出すガラス板製造装置であって、第一ガラス板の取り出しに関連して、重なり部外の押え位置で食み出し部を押える押え部材と、押え部材を、第一ガラス板の前面に沿って、押え位置の前方側に位置する中間位置よりも重なり部寄りの初期位置から中間位置まで移動させる第一移動機構と、食み出し部を押えるために、中間位置に存する押え部材を、押え位置に向かって後方側に移動させる第二移動機構とを備えることを特徴とする。
【0026】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ガラス板の取り出し作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法及びそれを実施するための製造装置を示す側面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順を示す要部拡大正面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順(押え工程)を示す要部拡大側面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順を示す要部拡大正面図である。
図5】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順を示す要部拡大正面図である。
図6】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順を示す要部拡大正面図である。
図7】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順を示す要部拡大正面図である。
図8】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順を示す要部拡大正面図である。
図9】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順を示す側面図である。
図10】本発明の第一実施形態に係るガラス板製造方法の手順を示す側面図である。
図11】本発明の第二実施形態に係るガラス板製造方法及びそれを実施するための製造装置を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0030】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係るガラス板製造装置1を示す側面図である。同図における左方向が前方側であって右方向が後方向である。同図に示すように、パレット2の床板2a上には、前後方向に保護シート3とガラス板4とが交互に積層された積層体5が載置されている。積層体5は、パレット2の背板2bに傾斜姿勢で立て掛け支持されている。このため、保護シート3及びガラス板4も傾斜姿勢となっている。
【0031】
図2に示すように、保護シート3の上端部3aは、ガラス板4の上端縁4aから上側に食み出しており、保護シート3の幅方向両端部3bは、ガラス板4の幅方向両端縁4bからそれぞれ幅方向外側に食み出している。つまり、保護シート3のうち、上端部3a及び幅方向両端部3bが、ガラス板4から食み出す食み出し部となる。一方、保護シート3のうち、上端部3a及び幅方向両端部3bを除く部分が、ガラス板4と重なる重なり部3cとなる。
【0032】
保護シート3の上端部3aの食み出し寸法は、例えば40~80mmとされ、保護シート3の幅方向端部3bの食み出し寸法は、例えば40~150mmとされる。
【0033】
保護シート3は、発泡樹脂シート等の合成樹脂、紙等とされる。発泡樹脂シートとしては、例えば、材質がポリエチレン等であって、厚みが0.1~0.5mm、発泡倍率が5~20倍のものを使用できる。保護シート3は、皺の発生を抑制する観点から伸縮性を有することが好ましい。
【0034】
ここで、図1図2図4図10では、保護シート3及びガラス板4を簡略化しているが、保護シート3の上端部3aや幅方向端部3bは前側又は後側へ倒れる場合もある。以下の説明においては、積層体5における最前列のガラス板4を第一ガラス板といい、最前列のガラス板4の前側に存する保護シート3を前側保護シートといい、最前列のガラス板4の後側に存する保護シート3を後側保護シートという。
【0035】
図1図10に示すように、この製造装置1は、後側保護シート3の食み出し部の一部が露出した状態になるように前側保護シート3をめくるめくり用吸着部材6と、保護シート3の食み出し部を押える押え部材7と、第一ガラス板4と共に前側保護シート3を保持して積層体5から引き離す保持部材8と、保持部材8によって積層体5から引き離された第一ガラス板4及び前側保護シート3を吊り下げ支持するチャック9とを備える。
【0036】
図1図4図10に示すように、めくり用吸着部材6は、前側保護シート3の重なり部3cを吸着保持する第一吸着パッド6aと、前側保護シート3の食み出し部を吸着保持する第二吸着パッド6bとを別々に備える。第一吸着パッド6aの保持エリアと、第二吸着パッド6bの保持エリアとは、互いに離れて独立している。
【0037】
本実施形態では、図4に示すように、第一吸着パッド6aは、第一ガラス板4の上側角部4cの近傍で、前側保護シート3の重なり部3cの上部を吸着保持し、第二吸着パッド6bは、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側で、前側保護シート3の上端部3aを吸着保持するようになっている。
【0038】
図6に示すように、第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bは、後側保護シート3の上端部3aのうち、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側に位置する部分が露出するように、前側保護シート3をめくるようになっている。なお、第一ガラス板4に対する前側保護シート3の位置ずれを抑制する観点からは、後側保護シート3の露出部Xの面積は小さいことが好ましい。つまり、第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bによる前側保護シート3のめくり動作により、後側保護シート3の上端部3aの幅方向中央部は露出させないことが好ましい。この場合、露出部Xは、例えば、後側保護シート3の上側角部を含む三角形状の領域となる。
【0039】
第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bは、前側保護シート3をめくる際に、前側保護シート3を吸着保持した状態で、前方かつ幅方向内側に向かって斜めに移動するようになっている。なお、第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bの移動方向は、後側保護シート3に露出部Xが形成される限り、特に限定されない。例えば、第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bの移動方向は、前方のみ、下方のみ、幅方向内側のみ、あるいは、前方・下方・幅方向内側のうちの少なくとも2方向を含む方向であってもよい。
【0040】
図1図4図7図10に示すように、押え部材7は、重なり部3c外の押え位置L1で、保護シート3の食み出し部を吸着保持する第三吸着パッド7aを備える。また、本実施形態では、図3に示すように、押え部材7は、第三吸着パッド7aの側面を取り囲むポリ塩化ビニル等の低摩擦材料から形成された筒状のガイド部7bをさらに備える。
【0041】
図3では、第三吸着パッド7aが、前側保護シート3を押える場合を例示しているが、第三吸着パッド7aは、前側保護シート3を押える場合(図2図4を参照)と、後側保護シート3を押える場合(図7図10を参照)とにそれぞれ使用される。いずれの場合も、押える対象となる保護シート3が異なるだけで、第三吸着パッド7aの動作は実質的に同じである。
【0042】
図2図7に示すように、第三吸着パッド7aは、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側で、前側保護シート3又は後側保護シート3の上端部3aを吸着保持するようになっている。
【0043】
第三吸着パッド7aは、図示しない第一移動機構及び第二移動機構により移動可能とされている。図3に示すように、第一移動機構は、第三吸着パッド7aを、第一ガラス板4の前面に沿って、押え位置L2の前方側に位置する中間位置L1よりも重なり部3c寄りの初期位置L0から中間位置L1まで上昇移動させる(矢印Aの動作)。第二移動機構は、前側保護シート3又は後側保護シート3の上端部3aを押えるために、中間位置L1に存する押え部材7を、押え位置L2に向かって後方側に移動させる(矢印B,Cの動作)。ここで、本実施形態では、初期位置L0及び中間位置L1は、第一ガラス板3aの前面よりも前方側に位置し、押え位置L2は、第一ガラス板3aの前面よりも後方側に位置する。なお、矢印Aの動作は、正面からみると、図2又は図7に示すような態様となる。矢印Aの動作方向は、側面からみた場合に、第一ガラス板4の前面と完全に平行である必要はなく、第一ガラス板4の前面と平行な方向に対して前後方向のいずれかに傾斜していてもよい。同様に、矢印Bの動作方向も、側面からみた場合に、積層体5の積層方向(パレット2の床板2aの傾斜方向)と完全に平行である必要はなく、積層方向と平行な方向に対して上下方向のいずれかに傾斜していてもよい。
【0044】
第一移動機構によって第三吸着パッド7aを第一ガラス板4の前面に沿って上昇移動させる際、第三吸着パッド7aの吸着面は、第一ガラス板4の前面と平行な状態を維持する。この際、保護シート3の上端部3aが前側に倒れていても、保護シート3の上端部3aが第三吸着パッド7aの側面と直接接触せず、ガイド部7bと接触する。ガイド部7bは低摩擦材料で構成されているため、保護シート3との間に適度な滑りが維持される。このため、第三吸着パッド7aの上昇移動を円滑に行うことができる。なお、第一移動機構による上昇動作の際の第三吸着パッド7aの吸着面の向きは特に限定されない。また、ガイド部7bは、必須の構成ではなく省略してもよい。
【0045】
第二移動機構は、矢印Cに示すように、第三吸着パッド7aを移動させながら、第三吸着パッド7aの吸着面の角度を変化させる。本実施形態では、第三吸着パッド7aの吸着面は、第一ガラス板4の前面と平行な状態から、第一ガラス板4の上端縁4a側に接近するように後側に傾く。第三吸着パッド7aの吸着面の最終的な角度は、保護シート3の上端部3aの状態をセンサ等で検知して自動調整してもよいし、保護シート3の上端部3aの状態を作業者が目視等で確認して手動調整するようにしてもよい。なお、保護シート3の上端部3aが後側に倒れている場合にのみ、第三吸着パッド7aの吸着面の角度を変化させるようにしてもよい。つまり、保護シート3の上端部3aが前側に倒れている場合には、第三吸着パッド7aの吸着面は、角度を変化させることなく、第一ガラス板4の前面と平行な状態のままでもよい。保護シート3の上端部3aは、積層体5の積層枚数が多い場合に後側に倒れる傾向があり、積層体5の積層枚数が少ない場合に前側に倒れる傾向がある。
【0046】
初期位置L0は、重なり部3c内、つまり、第一ガラス板4の上端縁4aよりも下方であることが好ましい。なお、初期位置L0は、中間位置L1(押え位置L2)よりも下方であれば、第一ガラス板4の上端縁4aよりも上方であってもよい。
【0047】
初期位置L0に位置する第三吸着パッド7aは、第一ガラス板4の前面から前方に10~20mm離れていることが好ましい。また、中間位置L1に位置する第三吸着パッド7aは、第一ガラス板4の前面と平行な方向に第一ガラス板4の上端縁4aから上方に30~40mm離れていることが好ましい。
【0048】
第一移動機構及び第二移動機構は、単一の機構であってもよいし別々の機構であってもよい。具体的には、単一の機構とする場合、例えば、マニピュレータで構成され、別々の機構とする場合、例えば、複数の送り機構を組み合わせて構成される。
【0049】
図1図4図10に示すように、保持部材8は、第一ガラス板4及び前側保護シート3の重なり部3cを同時に吸着保持する第四吸着パッド8aを備える。
【0050】
第四吸着パッド8aは、図示は省略するが、前側保護シート3に通気用の貫通部を形成すると共に、その貫通部を介して第一ガラス板4に負圧を作用させ、第一ガラス板4及び前側保護シート3を同時に吸着保持するようになっている。
【0051】
第四吸着パッド8aは、第一吸着パッド6aが前側保護シート3を吸着保持する保持エリアよりも下方で、前側保護シート3の重なり部3cの上部と、第一ガラス板4の上部とを吸着保持するようになっている。
【0052】
図9に示すように、第四吸着パッド8aは、第一ガラス板4と前側保護シート3とを吸着保持した状態で、前方(又は前方かつ上方)に移動するようになっている。この際、第一ガラス板4の下端縁4dは、パレット2の床板2aに接地していてもよいし、パレット2の床板2aから離れていてもよい。
【0053】
第四吸着パッド8aが第一ガラス板4及び前側保護シート3を吸着保持する保持エリアは、第一吸着パッド6aが前側保護シート3を吸着保持する保持エリアよりも大きい。同様に、第四吸着パッド8aが第一ガラス板4及び前側保護シート3を吸着保持する保持エリアは、第二吸着パッド6bが前側保護シート3を吸着保持する保持エリアよりも大きい。なお、第一ガラス板4及び前側保護シート3を安定した搬送できる態様であれば、各保持エリアの大小関係はこれに限定されない。
【0054】
図9図10に示すように、チャック9は、受け渡し位置Pで、第四吸着パッド8aによって搬送された第一ガラス板4及び前側保護シート3の上端部を把持することで、これらを吊り下げ支持して後工程に搬送するようになっている。受け渡し位置Pは、図示例のようにパレット2上であってもよいし、パレット2から前方や側方等に離れた位置であってもよい。
【0055】
ここで、図2図4図8では、積層体5の幅方向一方側の半領域を図示し、この半領域におけるめくり用吸着部材6、押え部材7及び保持部材8の動作を例示している。なお、積層体5の幅方向他方側の半領域についても、幅方向一方側の半領域と対称となるように、めくり用吸着部材6、押え部材7及び保持部材8を配置してもよい。あるいは、積層体5の幅方向他方側の半領域には、めくり用吸着部材6等の代わりに作業者を配置し、幅方向一方側の半領域に配置されためくり用吸着部材6、押え部材7及び保持部材8の動作を補助するようにしてもよい。
【0056】
次に、上記の構成を備えた製造装置1を用いたガラス板製造方法を説明する。この製造方法は、第一押え工程と、めくり工程と、第二押え工程と、分離工程と、搬送工程とをこの順に含む。
【0057】
(第一押え工程)
図2に示すように、第一押え工程は、第三吸着パッド7aにより、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側で、前側保護シート3の上端部3aを吸着保持して押える工程である。これにより、第三吸着パッド7aの保持エリアのシート状態が安定し易くなるため、前側保護シート3の上端部3aを確実に吸着保持できる。なお、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向外側では、第一ガラス板4の上端縁4aによる前側保護シート3の動きの規制が弱くなるため、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側に比べてシート状態が不安定になり易い。
【0058】
図3の矢印Aに示すように、第一押え工程では、まず、第三吸着パッド7aが、第一ガラス板4の前面に沿って、押え位置L2の前方側に位置する中間位置L1よりも重なり部3c寄りの初期位置L0から中間位置L1まで上昇移動する(第一工程)。その後、同図の矢印B,Cに示すように、中間位置L1に存する第三吸着パッド7aが、前側保護シート3の上端部3aを押えるために、押え位置L2に向かって後方側に移動する(第二工程)。このようにすれば、前側保護シート3の上端部3aが前側に倒れている場合であっても、第一工程で、第三吸着パッド7aが第一ガラス板4の前面に沿って上昇移動する過程で、前側保護シート3の上端部3aの前側に倒れている部分を第三吸着パッド7aにより持ち上げ、その倒れを矯正できる。そして、第二工程において、中間位置L1に存する第三吸着パッド7aが前後移動する過程で、前側への倒れが矯正された前側保護シート3の上端部3aを確実に吸着保持して押えることができる。
【0059】
第二工程では、第三吸着パッド7aは、矢印Bの動作により前後方向に沿って直進移動した後に、矢印Cの動作によりその吸着面の角度を変化させながら移動する。このようにすれば、前側保護シート3の上端部3aが後側に倒れている場合でも、その上端部3aに倣うように第三吸着パッド7aの吸着面の角度を調整できる。このため、第一工程の矢印Aの上昇動作と併せれば、前側保護シート3の上端部3aが前後いずれに向かって倒れている場合でも、第三吸着パッド7aで上端部3aを確実に吸着保持して押えることができる。
【0060】
なお、第一工程では第三吸着パッド7aの吸着力を作用させない状態(吸着オフ状態)とし、第二工程では第三吸着パッド7aの吸着力を作用させた状態(吸着オン状態)とすることが好ましい。このようにすれば、第一工程で、押え部材7で保護シート3を持ち上げる際に、第三吸着パッド7aが保護シート3の不要な位置で吸着するのを防止できる。
【0061】
(めくり工程)
図4図8に示すように、めくり工程は、後側保護シート3の上端部3aのうち、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側に位置する部分が露出するように、第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bにより、前側保護シート3をめくる工程である。
【0062】
図4に示すように、めくり工程では、第三吸着パッド7aで前側保護シート3の上端部3aを吸着保持した状態で、第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bで前側保護シート3を吸着保持すると共に、第四吸着パッド8aで前側保護シート3及び第一ガラス板4を吸着保持する。
【0063】
詳細には、第二吸着パッド6bは、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側で、前側保護シート3の上端部3aを吸着保持する。これにより、第二吸着パッド6bの保持エリアのシート状態が安定し易くなるため、前側保護シート3の上端部3aを確実に吸着保持できる。
【0064】
第二吸着パッド6bが前側保護シート3を吸着保持する保持エリアは、第三吸着パッド7aが前側保護シート3(又は後側保護シート3)を吸着保持する保持エリアよりも幅方向内側に位置している。これにより、めくり工程で、第二吸着パッド6bを幅方向内側に移動させても、第二吸着パッド6bと第三吸着パッド7aとが互いに干渉し難くなる。
【0065】
第一吸着パッド6aが前側保護シート3を吸着保持する保持エリアは、第四吸着パッド8aが第一ガラス板4及び前側保護シート3を吸着保持する保持エリアよりも幅方向外側に位置する部分を有する。これにより、第一吸着パッド6aが、第四吸着パッド8aよりも幅方向外側で前側保護シート3を吸着保持できる。このため、めくり工程で、第一ガラス板4及び前側保護シート3を吸着保持した第四吸着パッド8aを定位置で静止させた状態でも、第一吸着パッド6aを幅方向内側に移動させて、前側保護シート3をめくり易くなる。なお、本実施形態では、第二吸着パッド6bが前側保護シート3を吸着保持する保持エリアは、第一吸着パッド6aが前側保護シート3を吸着保持する保持エリアよりも幅方向内側に位置する。
【0066】
図5に示すように、めくり工程では、第一吸着パッド6a、第二吸着パッド6b及び第四吸着パッド8aによる吸着保持が完了した段階で、第三吸着パッド7aは、前側保護シート3の吸着保持を解除して前側保護シート3から離れる。
【0067】
図6に示すように、めくり工程では、第三吸着パッド7aが離れた後、前側保護シート3及び第一ガラス板4を吸着保持した第四吸着パッド8aを定位置で静止させた状態で、前側保護シート3を吸着保持した第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bを移動させる。これにより、後側保護シート3の上端部3aのうち、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側に位置する部分が露出するように、前側保護シート3がめくられる。この結果、後側保護シート3において、露出部Xが形成される。このようにすれば、前側保護シート3の重なり部3c及び上端部3aのそれぞれが、第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bにより、別々に吸着保持される。つまり、第一吸着パッド6aの姿勢や吸着力の大きさ等を前側保護シート3の重なり部3cの状態に応じて適正化しつつ、第二吸着パッド6bの姿勢や吸着力の大きさ等を前側保護シート3の上端部3aの状態に応じて適正化できる。したがって、前側保護シート3の重なり部3c及び上端部3aを同時に安定して保持できるため、めくり工程において、前側保護シート3が、不当に折れ曲がったり他部材に引っ掛かったりする等の不具合を確実に抑制できる。
【0068】
(第二押え工程)
図7に示すように、第二押え工程は、露出した後側保護シート3の上端部3aを、第三吸着パッド7aにより、第一ガラス板4の上側角部4cよりも幅方向内側で吸着保持して押える工程である。
【0069】
詳細には、第二押え工程では、第三吸着パッド7aで吸着保持する対象が後側保護シート3の上端部3aに代わる点を除き、押え部材7の基本的な動作は上述の第一押え工程と実質的に同じである。つまり、図示は省略するが、第三吸着パッド7aは、第一移動機構(図示省略)により、第一ガラス板4の前面に沿って、押え位置L2の前方側に位置する中間位置L1よりも重なり部3c寄りの初期位置L0から中間位置L1まで上昇移動する(第一工程)。その後、第三吸着パッド7aは、第二移動機構(図示省略)により、後側保護シート3の上端部3aを押えるために、中間位置L1から押え位置L2に向かって後方側に移動する(第二工程)。なお、第一押え工程で前側保護シート3を押える押え位置L2と、第二押え工程で後側保護シート3を押える押え位置L2とは、同じ位置であってもよいし、異なる位置であってもよい。
【0070】
なお、本実施形態では、図8に示すように、第三吸着パッド7aが上述のように後側保護シート3の上端部3aを吸着保持して押えた後、その状態を維持したまま、前側保護シート3を吸着保持した第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bを元の位置に戻す。この動作により、後側保護シート3を吸着保持した第三吸着パッド7aは、図中に点線で示すように、前側保護シート3の後側に隠れる場合がある。
【0071】
(分離工程)
図9に示すように、分離工程は、第一ガラス板4及び前側保護シート3を積層体5から引き離す工程である。
【0072】
詳細には、分離工程では、第三吸着パッド7aで後側保護シート3の上端部3aを吸着保持して押えた状態で、第一ガラス板4及び前側保護シート3を吸着保持した第四吸着パッド8aを移動させる。これにより、第一ガラス板4及び前側保護シート3を積層体5から引き離す。
【0073】
本実施形態では、第一ガラス板4及び前側保護シート3を積層体5から引き離す際、前側保護シート3を吸着保持した第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bも、第四吸着パッド8aと共に同方向に移動する。つまり、第四吸着パッド8aによって第一ガラス板4及び前側保護シート3を搬送する際に、前側保護シート3が、第一吸着パッド6a及び第二吸着パッド6bにより補助的に吸着保持される。これにより、第一ガラス板4及び前側保護シート3を同時に積層体5から円滑に引き離すことができる。
【0074】
(搬送工程)
図10に示すように、搬送工程は、チャック9によって第一ガラス板4及び前側保護シート3を把持して搬送する工程である。
【0075】
搬送工程では、第一吸着パッド6a、第二吸着パッド6b及び第四吸着パッド8aにより、第一ガラス板4及び前側保護シート3を受け渡し位置Pまで搬送する。受け渡し位置Pでは、チャック9により、第一吸着パッド6a、第二吸着パッド6b及び第四吸着パッド8aによって吸着保持された第一ガラス板4及び前側保護シート3の上端部を把持する。これにより、第一ガラス板4及び前側保護シート3が、チャック9に受け渡される。この受け渡しが完了すると、チャック9により、第一ガラス板4及び前側保護シート3を後工程まで搬送する。
【0076】
上記の受け渡し位置Pにおける受け渡しの際、第二吸着パッド6bの吸着保持は、チャック9で第一ガラス板4及び前側保護シート3の上端部を把持する前に解除される。一方、第一吸着パッド6a及び第四吸着パッド8aの吸着保持は、チャック9で第一ガラス板4及び前側保護シート3の上端部を把持した後に解除される。つまり、第二吸着パッド6bの吸着保持が、第一吸着パッド6aの吸着保持よりも先に解除される。これにより、チャック9で把持する前に、前側保護シート3の弾性により、前側保護シート3の上端部の皺が低減する。なお、皺が発生した状態のまま前側保護シート3の上端部をチャック9で把持すれば、後工程で不具合の原因となる前側保護シート3の破れ等が生じるおそれがある。
【0077】
なお、チャック9は、後工程で、姿勢変換装置(図示省略)に前側保護シート3と第一ガラス板4とを受け渡す。姿勢変換装置は、前側保護シート3の上に第一ガラス板4が載置された水平姿勢となるように姿勢変換をした後、搬送コンベアに受け渡す。そして、前側保護シート3の上に第一ガラス板4が載置された状態の下で、第一ガラス板4にスクライブを入れる工程と、そのスクライブに沿って折り割りをする工程とが実行される。その後、前側保護シート3が第一ガラス板4から離れ、第一ガラス板4に対する端面加工や洗浄等が行われる。
【0078】
以上のような動作は、後続のガラス板4及び保護シート3についても同様に行われる。このようにして、ガラス板4の製造ラインでの取り出しから洗浄等までの各工程が実行される。
【0079】
(第二実施形態)
図11に示すように、本発明の第二実施形態に係るガラス板製造装置1及びガラス板製造方法では、押え工程における押え部材7の第三吸着パッド7aの動作が、第一実施形態とは異なる。
【0080】
第二実施形態では、第三吸着パッド7aを、第一移動機構(図示省略)により、矢印Dに示すように、第一ガラス板4の前面に沿って、押え位置L2の前方側に位置する中間位置L1よりも重なり部3c寄りの初期位置L0から中間位置L1まで上昇移動させる(押え工程の第一工程)。その後、第二移動機構(図示省略)により、保護シート3の上端部3aを押えるために、矢印E,F,Gに示すように、中間位置L1に存する第三吸着パッド7aを、押え位置L2に向かって後方側に移動させる(押え工程の第二工程)。
【0081】
第一工程では、矢印Dの動作の際に、第三吸着パッド7aの吸着面は、上方を向いている。一方、第二工程では、矢印Eの動作の際に、第三吸着パッド7aの吸着面は、上方を向いた状態から第一ガラス板4の前面と平行な状態に変化する。次に、矢印Fの動作の際は、第三吸着パッド7aの吸着面は、第一ガラス板4の前面と平行な状態を維持する。その後、矢印Gの動作の際に、第三吸着パッド7aの吸着面は、第一ガラス板4の前面と平行な状態から、第一ガラス板4の上端縁4a側に接近するように後側に傾く。
【0082】
このようにすれば、第一実施形態と同様、前側保護シート3の上端部3aが前後いずれに向かって倒れている場合でも、第三吸着パッド7aで上端部3aを確実に吸着保持して押えることができる。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0084】
上記の実施形態において、押え部材7の第三吸着パッド7aは、前側保護シート3及び/又は後側保護シート3の幅方向端部3bを吸着保持してもよい。この場合、第一移動機構によって、第三吸着パッド7aを、第一ガラス板4の前面に沿って、押え位置の前方側に位置する中間位置よりも重なり部3c寄りの位置(例えば、第一ガラス板4の幅方向端縁4bの内側)から中間位置まで幅方向移動させる。その後、第二移動機構によって、中間位置に存する第三吸着パッド7aを、押え位置に向かって後方側に移動させる。
【0085】
上記の実施形態では、押え部材7が、前側保護シート3及び後側保護シート3のそれぞれを上述した同一の動作により押える構成である場合を説明したが、押え部材7は、前側保護シート3及び後側保護シート3のいずれか一方のみを、上述した動作により押える構成であってもよい。この場合、残りの他方を、同一の押え部材7により上述した動作とは異なる動作(例えば第二工程の前後移動のみ)で押えてもよいし、別の押え部材で押えるようにしてもよい。
【0086】
上記の実施形態では、第四吸着パッド8aが、前側保護シート3に通気用の貫通部を形成する場合を説明したが、第四吸着パッド8aとは別に、前側保護シート3に通気用の貫通部を形成する穿孔用部材を設けてもよい。また、前側保護シート3が通気性を有する材質の場合、前側保護シート3に通気用の貫通部を形成するための構成は省略してもよい。
【0087】
上記の実施形態において、第二吸着パッド6bは、保護シート3の幅方向端部3bを吸着保持してもよい。
【0088】
上記の実施形態において、第一吸着パッド6a、第二吸着パッド6b、第三吸着パッド7a、及び第四吸着パッド8aは、吸着パッド以外にも、サイクロンタイプやベルヌーイタイプ等の非接触チャックなどの吸着部材であってもよい。
【0089】
上記の実施形態において、押え部材7は、前側保護シート3及び後側保護シート3を押えることができれば、吸着機構を備えていなくてもよい。
【0090】
なお、本発明は、以下の発明も含む。
【0091】
(1) 傾斜姿勢のガラス板と、傾斜姿勢の保護シートとを前後方向に積層して含み、かつ、保護シートが、ガラス板から食み出す食み出し部と、ガラス板と重なる重なり部とを有する積層体から、最前列の第一ガラス板と共に第一ガラス板の前側保護シートを順次取り出すガラス板製造方法であって、第一ガラス板の後側保護シートの食み出し部の一部が露出するように、めくり用吸着部材で前側保護シートをめくるめくり工程と、めくり工程で露出した後側保護シートの食み出し部を押え部材で押えた状態で、第一ガラス板と共に前側保護シートを保持部材で保持して積層体から引き離す分離工程とを備え、めくり用吸着部材が、第一吸着部材と第二吸着部材とを有し、めくり工程では、第一吸着部材で前側保護シートの重なり部を吸着保持すると共に、第二吸着部材で前側保護シートの食み出し部を吸着保持することを特徴とする。
【0092】
このようにすれば、めくり工程において、前側保護シートの重なり部及び食み出し部のそれぞれが、第一吸着部材及び第二吸着部材により、別々に吸着保持される。つまり、第一吸着部材の姿勢や吸着力の大きさ等を前側保護シートの重なり部の状態に応じて適正化しつつ、第二吸着部材の姿勢や吸着力の大きさ等を前側保護シートの食み出し部の状態に応じて適正化できる。したがって、前側保護シートの重なり部及び食み出し部を同時に安定して保持できるため、めくり工程において、前側保護シートが、不当に折れ曲がったり他部材に引っ掛かったりする等の不具合を確実に抑制できる。この結果、分離工程において、押え部材で後側保護シートの食み出し部を押えた状態で、保持部材により、第一ガラス板及び前側保護シートを同時に積層体から円滑に引き離すことができる。
【0093】
(2) 上記の(1)において、後側保護シートの食み出し部を押え部材で押えた後、かつ、第一ガラス板及び前側保護シートを保持部材で保持して積層体から引き離す前に、前側保護シートを吸着保持した第一吸着部材及び第二吸着部材を、めくり工程において前側保護シートをめくる前の位置に戻すことが好ましい。
【0094】
このようにすれば、第一ガラス板に対する前側保護シートの位置関係の狂いが生じ難い状態で、保持部材により、第一ガラス板及び前側保護シートを同時に積層体から引き離すことができる。
【0095】
(3) 上記の(1)又は(2)において、分離工程では、前側保護シートを第一吸着部材及び第二吸着部材で吸着保持すると共に、第一ガラス板及び前側保護シートを保持部材で保持した状態で、前側保護シート及び第一ガラス板が積層体から引き離される方向に、第一吸着部材、第二吸着部材及び保持部材を移動させることが好ましい。
【0096】
このようにすれば、第一ガラス板及び前側保護シートを積層体から引き離す際も、前側保護シートの重なり部と食み出し部とが保持されるため、第一ガラス板に対する前側保護シートの位置関係の狂いがより生じ難くなる。
【0097】
(4) 上記の(1)~(3)のいずれか1つにおいて、第二吸着部材が前側保護シートを吸着保持する保持エリアが、押え部材が後側保護シートを押える押えエリアよりも幅方向内側に位置することが好ましい。
【0098】
このようにすれば、第二吸着部材を幅方向内側に移動させても、押え部材と干渉し難くなる。したがって、めくり工程等における第二吸着部材の移動態様の自由度が高まるため、装置構成及び/又は装置動作を簡素化できる。
【0099】
(5) 上記の(1)~(4)のいずれか1つにおいて、第二吸着部材が吸着保持する前側保護シートの食み出し部が、第一ガラス板の上端縁から上側に食み出している前側保護シートの上端部のうち、第一ガラス板の上側角部よりも幅方向内側に位置する部分であることが好ましい。
【0100】
第一ガラス板の上側角部よりも幅方向外側では、第一ガラス板の上端縁による前側保護シートの動き(例えば後方への倒れ込み)の規制が弱くなるため、シート状態が不安定になり易い。これに対し、第一ガラス板の上側角部よりも幅方向内側では、第一ガラス板の上端縁による前側保護シートの動きがある程度規制されるため、シート状態が安定し易い。したがって、第二吸着部材は、上記の構成のように、第一ガラス板の上側角部よりも幅方向内側において、前側保護シートの食み出し部を吸着保持することが好ましい。これにより、前側保護シートの食み出し部を確実に吸着保持できる。
【0101】
(6) 上記の(1)~(5)のいずれか1つにおいて、押え部材が押さえる後側保護シートの食み出し部が、第一ガラス板の上端縁から上側に食み出している後側保護シートの上端部のうち、第一ガラス板の上側角部よりも幅方向内側に位置する部分であることが好ましい。
【0102】
つまり、第一ガラス板の上側角部よりも幅方向外側では、第一ガラス板の上端縁による後側保護シートの動き(例えば前方又は後方への倒れ込み)の規制が弱くなるため、シート状態が不安定になり易い。これに対し、第一ガラス板の上側角部よりも幅方向内側では、第一ガラス板の上端縁による後側保護シートの動きがある程度規制されるため、シート状態が安定し易い。したがって、押え部材は、上記の構成のように、第一ガラス板の上側角部よりも幅方向内側において、後側保護シートの食み出し部を押えることが好ましい。これにより、後側保護シートの食み出し部を確実に押えることができる。
【0103】
(7) 上記の(1)~(6)のいずれか1つにおいて、めくり工程では、第一ガラス板及び前側保護シートを吸着した保持部材を定位置で静止させた状態で、前側保護シートを吸着保持した第一吸着部材及び第二吸着部材を移動させることが好ましい。
【0104】
このようにすれば、前側保護シートをめくる間も、保持部材の保持エリアでは、第一ガラス板及び前側保護シートが定位置で保持され、両者の位置関係は一定に維持される。したがって、めくり工程で、第一ガラス板に対する前側保護シートの位置関係の狂いが生じ難くなる。
【0105】
(8) 上記の(7)において、第一吸着部材が前側保護シートを吸着保持する保持エリアが、保持部材が第一ガラス板及び前側保護シートを保持する保持エリアよりも幅方向外側に位置する部分を有することが好ましい。
【0106】
このようにすれば、保持部材により第一ガラス板及び前側保護シートを定位置で静止させた状態でも、後側保護シートの食み出し部が露出するように前側保護シートをめくり易くなる。
【0107】
(9) 上記の(1)~(8)のいずれか1つにおいて、前側保護シートに通気用の貫通部を形成し、保持部材が、貫通部を介して第一ガラス板に作用する負圧により第一ガラス板を前側保護シートと共に吸着保持することが好ましい。
【0108】
このようにすれば、保護シートの材質にかかわらず、貫通部によって保護シートに通気性を持たせることができる。したがって、元々は通気性のない保護シートを使用しても、前側保護シートを介して第一ガラス板を確実に吸着保持できる。
【0109】
(10) 上記の(1)~(9)のいずれか1つにおいて、押え部材が、後側保護シートを吸着保持することが好ましい。
【0110】
このようにすれば、押え部材によって、後側保護シートを確実に押えることができる。
【0111】
(11) 上記の(1)~(10)のいずれか1つにおいて、第一吸着部材及び第二吸着部材は、吸着パッドであることが好ましい。
【0112】
このようにすれば、保護シート及びガラス板の両方を確実に吸着することができる。
【0113】
(12) 傾斜姿勢のガラス板と、傾斜姿勢の保護シートとを前後方向に積層して含み、かつ、前記保護シートが、前記ガラス板から食み出す食み出し部と、前記ガラス板と重なる重なり部とを有する積層体から、最前列の第一ガラス板と共に第一ガラス板の前側保護シートを順次取り出すガラス板製造装置であって、第一ガラス板の後側保護シートの食み出し部の一部が露出するように、前側保護シートをめくるめくり用吸着部材と、めくり用吸着部材により露出した後側保護シートの食み出し部を押える押え部材と、第一ガラス板と共に保護シートを保持して積層体から引き離す保持部材とを備え、めくり用吸着部材が、前側保護シートの重なり部を吸着保持する第一吸着部材と、前側保護シートの食み出し部を吸着保持する第二吸着部材とを有することを特徴とする。
【0114】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【符号の説明】
【0115】
1 ガラス板製造装置
2 パレット
3 保護シート
3a 上端部(食み出し部)
3b 幅方向端部(食み出し部)
3c 重なり部
4 ガラス板
5 積層体
6 めくり用吸着部材
6a 第一吸着パッド
6b 第二吸着パッド
7 押え部材
7a 第三吸着パッド
8 保持部材
8a 第四吸着パッド
9 チャック
L0 初期位置
L1 中間位置
L2 押え位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11