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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】毛包原基及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240129BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20240129BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/077
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021518296
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031142
(87)【国際公開番号】W WO2020225934
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2019087747
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 淳二
(72)【発明者】
【氏名】景山 達斗
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮啓
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 陸満
(72)【発明者】
【氏名】穴竃 理樹
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082638(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039376(WO,A1)
【文献】Cell Reports,2018年,vol.22,p.242-254
【文献】Corningマトリゲル基底膜マトリックス,コーニングインターナショナル株式会社ライフサイエン,2016年,p.1-31,p.3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/071
C12N 5/077
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること;、
(a)総濃度1μg/mL以上のラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)濃度1μg/mL以上のIV型コラーゲンが分散された流動性を有する培養液中、30℃以上、45℃以下の温度で30分以上、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を保持すること;及び、
培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞の共培養を行うことにより、毛包原基を形成すること、
を含む、毛包原基の製造方法。
【請求項2】
前記(a)ラミニン及びエンタクチンが分散された培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を保持する、請求項1に記載の毛包原基の製造方法。
【請求項3】
前記(b)IV型コラーゲンが分散された培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を保持する、請求項1又は2に記載の毛包原基の製造方法。
【請求項4】
培養液中で、播種された前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を、培養基材上に沈降させることを含み、
前記培養基材上に沈降した前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を、前記(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で保持する、請求項1乃至3のいずれかに記載の毛包原基の製造方法。
【請求項5】
前記(a)及び/又は(b)が分散された培養液中における前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞の保持後、前記(a)及び/又は(b)の濃度が前記保持時の濃度より小さい培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞の共培養を行うことを含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の毛包原基の製造方法。
【請求項6】
前記共培養を行うことにより、毛幹様構造を有する前記毛包原基を形成する、請求項1乃至5のいずれかに記載の毛包原基の製造方法。
【請求項7】
上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること、及び前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を共培養して毛包原基を形成することを含む細胞培養において、
(a)総濃度1μg/mL以上のラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)濃度1μg/mL以上のIV型コラーゲンが分散された流動性を有する培養液中、30℃以上、45℃以下の温度で30分以上、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を保持することにより、前記毛包原基における毛幹様構造の形成を促進する方法。
【請求項8】
上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること、及び前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を共培養して毛包原基を形成することを含む細胞培養において、
流動性を有する培養液中に分散された(a)総濃度1μg/mL以上のラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)濃度1μg/mL以上のIV型コラーゲンを、前記毛包原基における毛幹様構造の形成を促進するために使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛包原基及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、マウスの胎児線維芽細胞から作製された人工多能性幹細胞(iPSCs)を96ウェルプレートに播種して培養することにより、in vitroで皮膚組織体(skin organoids)を形成することが記載されている。
【0003】
特許文献1には、規則的な配置の微小凹部からなるマイクロ凹版に、間葉系細胞及び上皮系細胞を播種し、酸素を供給しながら混合培養することにより、毛包原基を形成させる工程を備えることを特徴とする再生毛包原基の集合体の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、皮膚付属器官を有する全層皮膚を製造する方法であって、当該「皮膚付属器官を有する全層皮膚」は、少なくとも下記(1)~(3);(1)表皮層と真皮層を含む皮膚、(2)少なくとも1種類の皮膚付属器官、及び(3)皮下組織を含み、当該方法は、下記ステップ;(a)胚様体を、Wnt経路を活性化させ得る生理活性物質で刺激するステップ、(b):下記(A)および(B)を含む結合体を調製するステップ;(A)ステップ(a)で刺激を行った当該胚様体の全部または一部(B)足場材料、(c):当該ステップ(b)で調製した当該結合体を動物に移植するステップ、および、(d):当該動物中において、前記結合体由来の全層皮膚を製造するステップ、を含むことを特徴とする、方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/073625号
【文献】国際公開第2016/039279号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Jiyoon Lee et al. (2018). Hair Follicle Development in Mouse Pluripotent Stem Cell-Derived Skin Organoids. Cell Reports 22, 242-254
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法は、人工多能性幹細胞を用いるため、操作が煩雑であり、また、比較的長い培養期間が必要であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、簡便に且つ短期間で、in vitroにおいて毛幹様構造を形成できる毛包原基を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法の一側面は、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること;、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンが分散された培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を保持すること;及び、培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞の共培養を行うことにより、毛包原基を形成すること、を含む、毛包原基の製造方法である。本発明によれば、簡便に且つ短期間で、in vitroにおいて毛幹様構造を形成できる毛包原基を製造する方法が提供される。
【0010】
前記方法においては、前記(a)ラミニン及びエンタクチンが分散された培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を保持することとしてもよい。前記方法においては、前記(b)IV型コラーゲンが分散された培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を保持することとしてもよい。
【0011】
前記方法は、培養液中で、播種された前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を、培養基材上に沈降させることを含み、前記培養基材上に沈降した前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を、前記(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で保持することとしてもよい。前記方法は、前記(a)及び/又は(b)が分散された培養液中における前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞の保持後、前記(a)及び/又は(b)の濃度が前記保持時の濃度より小さい培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞の共培養を行うことを含むこととしてもよい。前記方法においては、前記共培養を行うことにより、毛幹様構造を有する前記毛包原基を形成することとしてもよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法の他の側面は、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること、及び前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を共培養して毛包原基を形成することを含む細胞培養において、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンが分散された培養液中で、前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を保持することにより、前記毛包原基における毛幹様構造の形成を促進する方法である。本発明によれば、簡便に且つ短期間で、in vitroにおいて毛包原基における毛幹様構造の形成を促進する方法が提供される。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法のさらに他の側面は、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること、及び前記上皮系細胞及び前記間葉系細胞を共培養して毛包原基を形成することを含む細胞培養において、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンを、前記毛包原基における毛幹様構造の形成を促進するために使用する方法である。本発明によれば、簡便に且つ短期間で、in vitroにおいて毛包原基における毛幹様構造の形成を促進するために、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンを使用する方法が提供される。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る毛包原基は、上皮系細胞及び間葉系細胞を含む毛包原基であって、毛幹様構造を有し、立毛筋構造及び/又は皮脂腺構造を含まず、生体に移植されていない、毛包原基である。本発明によれば、簡便に且つ短期間に、in vitroで形成された、毛幹様構造を有する毛包原基が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡便に且つ短期間で、in vitroにおいて毛幹様構造を形成できる毛包原基及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本実施形態に係る例1-1において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図1B】本実施形態に係る例1-1において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図1C】本実施形態に係る例1-1において培養6日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図1D】本実施形態に係る例1-2において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図1E】本実施形態に係る例1-2において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図1F】本実施形態に係る例1-2において培養6日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図2A】本実施形態に係る例1-1において培養4日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図2B】本実施形態に係る例1-1において培養5日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図2C】本実施形態に係る例1-1において培養6日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図3】本実施形態に係る例1-1において培養12日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4A】本実施形態に係る例2-1において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4B】本実施形態に係る例2-1において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4C】本実施形態に係る例2-1において培養7日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4D】本実施形態に係る例2-2において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4E】本実施形態に係る例2-2において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4F】本実施形態に係る例2-2において培養7日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4G】本実施形態に係る例2-3において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4H】本実施形態に係る例2-3において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図4I】本実施形態に係る例2-3において培養7日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図5A】本実施形態に係る例3-1において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図5B】本実施形態に係る例3-2において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図5C】本実施形態に係る例3-3において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図5D】本実施形態に係る例3-4において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図5E】本実施形態に係る例3-5において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図5F】本実施形態に係る例3-6において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図5G】本実施形態に係る例3-7において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図5H】本実施形態に係る例3-8において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図6A】本実施形態に係る例3-1において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図6B】本実施形態に係る例3-2において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図6C】本実施形態に係る例3-3において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図6D】本実施形態に係る例3-4において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図6E】本実施形態に係る例3-5において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図6F】本実施形態に係る例3-6において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図6G】本実施形態に係る例3-7において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図6H】本実施形態に係る例3-8において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図7A】本実施形態に係る例4において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図7B】本実施形態に係る例4において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図7C】本実施形態に係る例4において培養7日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図8A】本実施形態に係る例5-1において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図8B】本実施形態に係る例5-2において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図8C】本実施形態に係る例5-3において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図9A】本実施形態に係る例6において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図9B】本実施形態に係る例6において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図10A】本実施形態に係る例7-1において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図10B】本実施形態に係る例7-2において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図10C】本実施形態に係る例7-3において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図10D】本実施形態に係る例7-4において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図10E】本実施形態に係る例7-5において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図10F】本実施形態に係る例7-6において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図11A】本実施形態に係る例7-1において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図11B】本実施形態に係る例7-2において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図11C】本実施形態に係る例7-3において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図11D】本実施形態に係る例7-4において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図11E】本実施形態に係る例7-5において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図11F】本実施形態に係る例7-6において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図12A】本実施形態に係る例7-1において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図12B】本実施形態に係る例7-2において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図12C】本実施形態に係る例7-3において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図12D】本実施形態に係る例7-4において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図12E】本実施形態に係る例7-5において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図12F】本実施形態に係る例7-6において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図13A】本実施形態に係る例8-1において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図13B】本実施形態に係る例8-2において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図13C】本実施形態に係る例8-3において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図13D】本実施形態に係る例8-4において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図13E】本実施形態に係る例8-5において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図13F】本実施形態に係る例8-6において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図14A】本実施形態に係る例8-1において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図14B】本実施形態に係る例8-2において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図14C】本実施形態に係る例8-3において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図14D】本実施形態に係る例8-4において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図14E】本実施形態に係る例8-5において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図14F】本実施形態に係る例8-6において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図15A】本実施形態に係る例8-1において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図15B】本実施形態に係る例8-2において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図15C】本実施形態に係る例8-3において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図15D】本実施形態に係る例8-4において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図15E】本実施形態に係る例8-5において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図15F】本実施形態に係る例8-6において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図16A】本実施形態に係る例9-1において培養2日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図16B】本実施形態に係る例9-2において培養2日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図16C】本実施形態に係る例9-3において培養2日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図17A】本実施形態に係る例9-1において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図17B】本実施形態に係る例9-2において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図17C】本実施形態に係る例9-3において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図18A】本実施形態に係る例C1-1において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図18B】本実施形態に係る例C1-1において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図18C】本実施形態に係る例C1-1において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図18D】本実施形態に係る例C1-2において培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図18E】本実施形態に係る例C1-2において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図18F】本実施形態に係る例C1-2において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図19A】本実施形態に係る例C2において培養2日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図19B】本実施形態に係る例C2において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図20A】本実施形態に係る例C3-1において培養12日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図20B】本実施形態に係る例C3-2において培養12日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図20C】本実施形態に係る例C3-3において培養12日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図20D】本実施形態に係る例C3-4において培養12日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図21】本実施形態に係る例10においてヌードマウスの背部に移植された毛包原基から毛髪が再生した様子の一例を示す説明図である。
図22A】本実施形態に係る例11において培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図22B】本実施形態に係る例11において培養14日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図23】本実施形態に係る例11において共培養中に毛包原基において形成された毛幹様構造の長さを測定した結果の一例を示す説明図である。
図24A】本実施形態に係る例11において培養14日目の毛包原基において形成された毛幹様構造の断面を撮影して得られた透過型顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図24B図24Aに示す白い線で囲まれた四角の領域を拡大して示す説明図である。
図24C図24Bに示す白い線で囲まれた四角の領域を拡大して示す説明図である。
図24D図24Cに示す白い線で囲まれた四角の領域を拡大して示す説明図である。
図25A】本実施形態に係る例12-C1において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図25B】本実施形態に係る例12-1において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図25C】本実施形態に係る例12-2において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
図25D】本実施形態に係る例12-3において培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0018】
本実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)は、その一側面として、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること;、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンが分散された培養液中で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を保持すること;及び、培養液中で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行うことにより、毛包原基を形成すること、を含む、毛包原基の製造方法を包含する。
【0019】
すなわち、本発明の発明者らは、in vitroで毛包原基を製造する技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、意外にも、培養液中で、上皮系細胞及び間葉系細胞を、当該培養液に分散された(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンと接触させることにより、in vitroにおいて毛幹様構造を形成することができる毛包原基を、簡便に且つ短期間で製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
このため、本方法は、他の側面として、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること、及び当該上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養して毛包原基を形成することを含む細胞培養において、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンが分散された培養液中で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を保持することにより、当該毛包原基における毛幹様構造の形成を促進する方法を包含する。
【0021】
また、本方法は、さらに他の側面として、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種すること、及び当該上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養して毛包原基を形成することを含む細胞培養において、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンを、当該毛包原基における毛幹様構造の形成を促進するために使用する方法を包含する。
【0022】
すなわち、本実施形態は、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び/又は(b)IV型コラーゲンの、毛包原基における毛幹様構造の形成を促進するための培養液添加剤(より具体的には、培養液中に分散された成分)としての使用を包含する。
【0023】
本方法において用いられる上皮系細胞は、間葉系細胞と共培養することにより毛包原基を形成する上皮系細胞であれば特に限られないが、例えば、毛包組織に由来する上皮系細胞、皮膚組織に由来する上皮系細胞、及び、培養系で幹細胞から誘導された毛包上皮系細胞からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0024】
毛包組織に由来する上皮系細胞は、例えば、毛包組織のバルジ領域に由来する上皮系細胞(例えば、外毛根鞘最外層細胞)、及び、毛包組織の毛母基部に由来する上皮系細胞からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。皮膚組織に由来する上皮系細胞は、例えば、表皮角化細胞及び発生期の皮膚上皮系細胞からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。培養系で幹細胞から誘導された毛包上皮系細胞は、例えば、iPS(induced Pluripotent Stem)細胞、ES(Embryonic Stem)細胞、又はEG(Embryonic Germ)細胞から誘導された毛包上皮系細胞であることとしてもよい。上皮系細胞は、上皮幹細胞であってもよい。
【0025】
上皮系細胞は、例えば、発毛関連遺伝子を発現する。具体的に、上皮系細胞は、例えば、サイトケラチンを発現する細胞として特定される。上皮系細胞が上皮幹細胞である場合、当該上皮幹細胞は、例えば、サイトケラチン15及びCD34からなる群より選択される1以上を発現する細胞として特定される。上皮系細胞は、生体から採取された初代細胞であってもよいし、予め培養された細胞(例えば、継代培養された細胞、及び/又は、株化された細胞)であってもよい。
【0026】
本方法において用いられる間葉系細胞は、上皮系細胞と共培養することにより毛包原基を形成する間葉系細胞であれば特に限られないが、例えば、毛包組織に由来する間葉系細胞、皮膚組織に由来する間葉系細胞、及び、培養系で幹細胞から誘導された間葉系細胞からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0027】
毛包組織に由来する間葉系細胞は、例えば、毛乳頭細胞及び毛球部毛根鞘細胞からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。皮膚組織に由来する間葉系細胞は、例えば、真皮毛根鞘細胞及び発生期の皮膚間葉系細胞からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。培養系で幹細胞から誘導された間葉系細胞は、例えば、iPS細胞、ES細胞、又はEG細胞から誘導された毛包間葉系細胞であることとしてもよい。
【0028】
間葉系細胞は、例えば、発毛関連遺伝子を発現する。具体的に、間葉系細胞は、例えば、Versican及びALP(アルカリフォスファターゼ)からなる群より選択される1以上を発現する細胞として特定される。間葉系細胞は、生体から採取された初代細胞であってもよく、予め培養された細胞(例えば、継代培養された細胞、及び/又は、株化された細胞)であってもよい。
【0029】
なお、本方法においては、上皮系細胞及び間葉系細胞のみの共培養を行うこととしてもよいが、さらに他の細胞を含む共培養を行うこととしてもよい。この場合、他の細胞は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、色素細胞、色素前駆細胞、色素幹細胞、及び多能性幹細胞(例えば、iPS細胞、ES細胞、又はMuse(Multilineage-differentiating stress-enduring)細胞)由来色素幹細胞からなる群より選択される1以上であることとしてもよい。また、他の細胞を播種するタイミングは、上皮系細胞、間葉系細胞及び当該他の細胞を含む毛包原基が形成される範囲内であれば特に限られない。
【0030】
本方法においては、まず、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種する。この点、上記非特許文献1に記載の方法においては、人工多能性幹細胞を播種している。このため、人工多能性幹細胞を分化させるための煩雑な操作が必須であった。これに対し、本方法では、多能性幹細胞を用いる必要がない。このため、本方法は、多能性幹細胞を播種することを含まないこととしてもよい。また、本方法は、多能性幹細胞を分化させることを含まないこととしてもよい。また、本方法は、多能性幹細胞を培養することを含まないこととしてもよい。
【0031】
上皮系細胞及び間葉系細胞の播種は、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を培養容器に入れることにより行う。具体的には、上皮系細胞及び間葉系細胞を含む培養液(細胞懸濁液)を培養容器内に入れる。また、培養容器は、上皮系細胞及び間葉系細胞が沈降する培養基材(例えば、当該培養容器の底部、又は当該培養容器内に配置された当該培養容器と別体の培養基材)を含むため、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を当該培養基材上に播種するともいえる。
【0032】
上皮系細胞及び間葉系細胞の播種においては、当該上皮系細胞と間葉系細胞とを同時に播種してもよいし、又は、当該上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞を播種し、次いで他方の細胞を播種してもよい。すなわち、上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞を、他方の細胞と接触させることなく播種し、次いで、当該他方の細胞を播種して、当該一方の細胞と当該他方の細胞とを接触させることとしてもよい。この場合、まず間葉系細胞を播種し、次いで、上皮系細胞を播種することが好ましい。
【0033】
具体的に、例えば、まず間葉系細胞を含み上皮系細胞を含まない細胞懸濁液を培養容器(例えば、96ウェルプレートのウェル)に入れて当該間葉系細胞を播種し、次いで、当該間葉系細胞を含む培養容器に、上皮系細胞を含む細胞懸濁液を入れて当該上皮系細胞を播種する。この場合、上皮系細胞を含む細胞懸濁液は間葉系細胞を含まないこととしてもよい。
【0034】
また、上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞を播種し、次いで当該一方の細胞を培養し、その後、他方の細胞を播種することとしてもよい。すなわち、この場合、上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞を他方の細胞と接触させることなく播種して培養し、次いで当該他方の細胞を播種して、当該一方の細胞と他方の細胞との共培養を開始する。
【0035】
上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞を播種し、次いで他方の細胞を播種する場合、当該一方の細胞を播種してから、当該他方の細胞を播種するまでの時間(すなわち、例えば、当該一方の細胞を播種してから、当該一方の細胞及び他方の細胞の共培養を開始するまでの時間)は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、96時間以下であってもよく、72時間以下であることが好ましく、48時間以下であることがより好ましく、24時間以下であることが特に好ましい。
【0036】
播種される上皮系細胞及び間葉系細胞は、培養液中に分散されていることが好ましい。この場合、上皮系細胞及び間葉系細胞は、培養液中で混合され、且つ分散される。培養液中に分散された個々の細胞は、他の細胞と結合しておらず、又は、他の細胞に付着しているがピペッティング等の操作により当該培養液を流動させることで当該他の細胞から容易に分離される。なお、本方法で用いられる培養液は、本発明の効果が得られる範囲内で、上皮系細胞及び間葉系細胞の生存を維持できる溶液であれば特に限られない。
【0037】
上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞を播種し、次いで他方の細胞を播種する場合、まず培養液に分散された当該一方の細胞を播種し、次いで培養液に分散された当該他方の細胞を播種することが好ましい。具体的に、例えば、まず上皮系細胞を含まず間葉系細胞が分散された細胞懸濁液を培養容器に入れて当該間葉系細胞を播種し、次いで、当該間葉系細胞を含む培養容器に、上皮系細胞が分散された細胞懸濁液を入れて当該上皮系細胞を播種する。
【0038】
播種される上皮系細胞及び間葉系細胞の密度は、その後の共培養において毛包原基を形成できる範囲内であれば特に限られず、例えば、培養容器内で(特に、培養基材上に沈降した状態で)、個々の細胞が隣接する細胞と接触可能となる程度の密度であることが好ましい。
【0039】
本方法においては、播種された上皮系細胞及び間葉系細胞を、培養液中で共培養することにより、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を含む毛包原基を形成する。すなわち、培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養することにより、培養時間の経過に伴い、当該上皮系細胞及び間葉系細胞が凝集して、毛包原基を形成する。
【0040】
より具体的に、播種された上皮系細胞及び間葉系細胞は、培養液中、混合され且つ分散された状態で保持される。その後、培養時間の経過に伴って、上皮系細胞同士の結合の形成、間葉系細胞同士の結合の形成、及び、上皮系細胞と間葉系細胞との結合の形成が進む。その結果、上皮系細胞は凝集して上皮系細胞凝集体を形成し、間葉系細胞は凝集して間葉系細胞凝集体を形成し、また、当該上皮系細胞凝集体及び間葉系細胞凝集体の形成と並行して、当該上皮系細胞凝集体と間葉系細胞凝集体との結合も形成される。こうして最終的に、上皮系細胞集合体と間葉系細胞凝集体とを含む毛包原基が形成される。
【0041】
上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞(例えば、間葉系細胞)を播種し、次いで他方の細胞(例えば、上皮系細胞)を播種することにより、当該一方の細胞が凝集して形成された第一の細胞凝集体と、当該他方の細胞が凝集して形成され、当該第一の細胞凝集塊と連結された第二の細胞凝集体とを含む毛包原基を効率的に形成することができる。
【0042】
本方法において毛包原基を形成するためには、上皮系細胞及び間葉系細胞が凝集する必要があるため、当該毛包原基を形成するための上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養は、流動性のある培養液中で行う。
【0043】
毛包原基は、動物に移植された場合に毛髪を形成する細胞凝集体である。本方法において製造される毛包原基は、毛包原基スフェロイドであることとしてもよい。毛包原基スフェロイドは、略球状の細胞集合体である。
【0044】
毛包原基を構成する細胞の総数に対する、上皮系細胞及び間葉系細胞の数の割合は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、50%以上であることとしてもよく、70%以上であることとしてもよく、90%以上であることとしてもよい。
【0045】
この場合、毛包原基を製造するために播種される細胞の総数に対する、上皮系細胞及び間葉系細胞の数の割合も、例えば、50%以上であることとしてもよく、70%以上であることとしてもよく、90%以上であることとしてもよい。
【0046】
同様に、毛包原基を形成するために共培養される細胞の総数に対する、上皮系細胞及び間葉系細胞の数の割合も、例えば、50%以上であることとしてもよく、70%以上であることとしてもよく、90%以上であることとしてもよい。
【0047】
本方法においては、上皮系細胞及び間葉系細胞を、細胞非接着性の培養基材上で共培養することとしてもよい。この場合、共培養中、上皮系細胞及び間葉系細胞は、培養基材上に接着することなく培養液中に浮遊し、又は、ピペッティング等の操作により培養液を流動させることで当該培養基材から容易に脱離する程度に当該培養基材に付着する。細胞非接着性の培養基材上で培養される上皮系細胞及び間葉系細胞の形状は、ほぼ球形に維持される。
【0048】
細胞非接着性の培養基材上で共培養することにより、非接着状態の毛包原基が形成される。非接着状態の毛包原基は、培養液中に浮遊し、又は、ピペッティング等の操作により培養液を流動させることで当該培養基材から容易に脱離する程度に当該培養基材に付着する。
【0049】
上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養する培養容器は、当該上皮系細胞及び間葉系細胞が毛包原基を形成できるものであれば特に限られないが、例えば、比較的小さなウェルが好ましく用いられる。
【0050】
すなわち、培養容器として用いられる1つのウェルの底面の面積は、例えば、1000mm以下であってもよく、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。
【0051】
ウェルの底面の面積は、例えば、100μm以上であってもよく、1000μm以上であることが好ましく、10000μm以上であることがより好ましく、100000μm以上であることが特に好ましい。
【0052】
ウェルの底面の面積は、上述した下限値の一つと、上述した上限値の一つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。具体的に、ウェルの底面の面積は、例えば、100μm以上、1000mm以下であってもよく、1000μm以上、100mm以下であることが好ましく、10000μm以上、50mm以下であることがより好ましく、100000μm以上、20mm以下であることが特に好ましい。
【0053】
本方法においては、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養により、各培養容器(例えば、各ウェル)内に、1つの毛包原基を形成することとしてもよい。すなわち、この場合、各培養容器に播種された上皮系細胞及び間葉系細胞は、当該培養容器内で凝集し、1つの毛包原基を形成する。
【0054】
そして、本方法においては、上皮系細胞及び間葉系細胞の播種後、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び、(b)IV型コラーゲンからなる群より選択される1以上が分散された培養液中で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する。
【0055】
すなわち、例えば、(a)ラミニン及びエンタクチンが分散された培養液中で、上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する。この場合、ラミニン及びエンタクチンは、ラミニンとエンタクチンとの複合体を含んでいることが好ましい。
【0056】
また、例えば、(b)IV型コラーゲンが分散された培養液中で、上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する。また、例えば、(a)ラミニン及びエンタクチン、及び(b)IV型コラーゲンが分散された培養液中で、上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する。
【0057】
分散された(a)及び/又は(b)を含む培養液は、予め調製された(a)を含む組成物、及び/又は、予め調製された(b)を含む組成物を培養液に添加することにより調製される。
【0058】
本方法においては、(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を保持することにより、当該培養液中で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を、当該(a)及び/又は(b)と接触させる。
【0059】
すなわち、流動性を有する培養液中で、上皮系細胞及び間葉系細胞を、当該培養液中に分散された(a)及び/又は(b)と接触させる。具体的に、本方法において上皮系細胞及び間葉系細胞と接触させる(a)及び/又は(b)は、流動性を有する培養液中に分散されている(a)及び/又は(b)であり、例えば、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を包埋しているハイドロゲルを構成している(a)及び/又は(b)ではないし、当該上皮系細胞及び間葉系細胞がハイドロゲルの表面に保持されている場合において当該ハイドロゲルを構成している(a)及び/又は(b)ではないし、当該上皮系細胞及び間葉系細胞が保持されている培養基材に予め固定化されている(a)及び/又は(b)ではない。
【0060】
本方法は、ハイドロゲル(例えば、(a)及び/又は(b)を含む成分で構成されるハイドロゲル、又は、当該(a)及び/又は(b)を含まないハイドロゲル)の表面上に保持されている上皮系細胞及び間葉系細胞と、培養液中に分散されている(a)及び/又は(b)とを接触させることを含んでもよい。ただし、本方法は、(a)及び/又は(b)を含む成分で構成されるハイドロゲルの表面上に保持されている上皮系細胞及び間葉系細胞と、培養液中に分散されている(a)及び/又は(b)とを接触させることを含まないこととしてもよい。また、本方法は、(a)及び/又は(b)を含まないハイドロゲルの表面上に保持されている上皮系細胞及び間葉系細胞と、培養液中に分散されている(a)及び/又は(b)とを接触させることを含まないこととしてもよい。また、本方法は、ハイドロゲルの表面上に保持されている上皮系細胞及び間葉系細胞と、培養液中に分散されている(a)及び/又は(b)とを接触させることを含まないこととしてもよい。
【0061】
本方法は、(a)及び/又は(b)が固定化された培養基材上に保持されている上皮系細胞及び間葉系細胞と、培養液中に分散されている(a)及び/又は(b)とを接触させることを含んでもよい。ただし、本方法は、(a)及び/又は(b)が固定化された培養基材上に保持されている上皮系細胞及び間葉系細胞と、培養液中に分散されている(a)及び/又は(b)とを接触させることを含まないこととしてもよい。
【0062】
また、本方法は、毛包原基が形成される前に、(a)及び/又は(b)を含む成分で構成されるハイドロゲル中に上皮系細胞及び間葉系細胞を包埋して培養することを含まないこととしてもよい。また、本方法は、毛包原基が形成される前に、(a)及び/又は(b)を含まないハイドロゲル中に上皮系細胞及び間葉系細胞を包埋して培養することを含まないこととしてもよい。また、本方法は、毛包原基が形成される前に、ハイドロゲル中に上皮系細胞及び間葉系細胞を包埋して培養することを含まないこととしてもよい。
【0063】
なお、播種に用いられる上皮系細胞及び間葉系細胞を含む細胞懸濁液は、(a)及び/又は(b)を含んでもよいし、(a)及び/又は(b)を含まなくてもよい。播種時の細胞懸濁液が(a)及び/又は(b)を含まない場合、播種後、培養液に当該(a)及び/又は(b)を添加することにより、当該上皮系細胞及び間葉系細胞と、当該培養液に分散された(a)及び/又は(b)とを接触させる。
【0064】
すなわち、上皮系細胞と間葉系細胞とを同時に播種する場合、当該上皮系細胞及び間葉系細胞と、(a)及び/又は(b)とを含む細胞懸濁液を培養容器に入れて播種を行うこととしてもよいし、又は、まず当該上皮系細胞及び間葉系細胞を含み、(a)及び/又は(b)を含まない細胞懸濁液を培養容器に入れて播種を行い、その後、当該培養容器に(a)及び/又は(b)を添加することとしてもよい。
【0065】
また、上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞(例えば、間葉系細胞)を播種し、次いで他方の細胞(例えば、上皮系細胞)を播種する場合、当該一方の細胞及び当該他方の細胞のそれぞれの播種において、当該一方の細胞又は当該他方の細胞と、(a)及び/又は(b)とを含む細胞懸濁液を培養容器に入れて播種を行うこととしてもよいし、又は、まず当該一方の細胞又は当該他方の細胞を含み、(a)及び/又は(b)を含まない細胞懸濁液を培養容器に入れて播種を行い、その後、当該培養容器に(a)及び/又は(b)を添加することとしてもよい。
【0066】
上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する培養液中の(a)ラミニン及びエンタクチンの濃度は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、1μg/mL以上であってもよく、3μg/mL以上であることが好ましく、5μg/mL以上であることが特に好ましい。
【0067】
また、上記培養液中の(a)ラミニン及びエンタクチンの濃度は、例えば、3000μg/mL以下であってもよく、2500μg/mL以下であることが好ましく、2000μg/mL以下であることが特に好ましい。
【0068】
上記培養液中の(a)ラミニン及びエンタクチンの濃度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。すなわち、上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する培養液中の(a)ラミニン及びエンタクチンの濃度は、例えば、1μg/mL以上、3000μg/mL以下であってもよく、3μg/mL以上、2500μg/mL以下であることが好ましく、5μg/mL以上、2000μg/mL以下であることが特に好ましい。
【0069】
上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する培養液中の(b)IV型コラーゲンの濃度は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、1μg/mL以上であってもよく、3μg/mL以上であることが好ましく、5μg/mL以上であることが特に好ましい。
【0070】
また、上記培養液中の(b)IV型コラーゲンの濃度は、例えば、1000μg/mL以下であってもよく、700μg/mL以下であることが好ましく、400μg/mL以下であることが特に好ましい。
【0071】
上記培養液中の(b)IV型コラーゲンの濃度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。すなわち、上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する培養液中の(b)IV型コラーゲンの濃度は、例えば、1μg/mL以上、1000μg/mL以下であってもよく、3μg/mL以上、700μg/mL以下であることが好ましく、5μg/mL以上、400μg/mL以下であることが特に好ましい。
【0072】
本方法において、(a)及び/又は(b)を培養液に分散する目的は、当該培養液のゲル化ではないため、培養液中の(a)及び/又は(b)の濃度は、一般にゲル化のために用いられる濃度に比べて低くてもよい。すなわち、上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する培養液中の(a)及び/又は(b)の濃度は、当該培養液の全体をゲル化させる濃度より低いこととしてもよい。
【0073】
(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する温度は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、当該上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養に適した温度であることが好ましく、具体的には、例えば、30℃以上、45℃以下の温度であることが好ましく、35℃以上、40℃以下の温度であることが特に好ましい。
【0074】
(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する時間(当該(a)及び/又は(b)が分散された培養液中、共培養に適した温度で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する時間)は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、30分以上であることとしてもよく、40分以上であることが好ましく、50分以上であることがより好ましく、60分以上であることが特に好ましい。
【0075】
(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を保持するタイミングは、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、毛包原基の形成前に開始することが好ましい。
【0076】
具体的に、(a)及び/又は(b)が分散された培養液中での上皮系細胞及び間葉系細胞の保持は、例えば、当該上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養が開始された時点(すなわち、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養に適した温度(例えば、好ましくは35℃以上、39℃以下、特に好ましくは36℃以上、38℃以下)で保持し始めた時点)から、28時間が経過する前に開始することとしてもよく、24時間が経過する前に開始することが好ましく、20時間が経過する前に開始することがより好ましく、15時間が経過する前に開始することがより一層好ましく、10時間が経過する前に開始することが特に好ましい。
【0077】
すなわち、上皮系細胞と間葉系細胞とを同時に播種する場合、及び、上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞(例えば、間葉系細胞)を播種し、次いで他方の細胞(例えば、上皮系細胞)を播種する場合、のいずれの場合においても、当該上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養が開始された時点から上記いずれかの閾値時間が経過する前(当該共培養が開始されると同時又はそれより後であって、当該共培養が開始されてから上記いずれかの閾値時間が経過する前)に、(a)及び/又は(b)が分散された培養液中での当該上皮系細胞及び間葉系細胞の保持を開始することとしてもよい。
【0078】
また、上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、まず一方の細胞(例えば、間葉系細胞)を播種して当該一方の細胞の培養を開始し、次いで、他方の細胞(例えば、上皮系細胞)を播種して共培養を開始する場合、当該一方の細胞の培養が開始された時点(すなわち、当該一方の細胞を培養に適した温度(例えば、好ましくは35℃以上、39℃以下、特に好ましくは36℃以上、38℃以下)で保持し始めた時点)から、28時間が経過する前(当該一方の細胞の培養開始と同時又はそれより後であって、当該一方の細胞の培養開始から当該28時間が経過する前)に、(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で当該一方の細胞を保持することを開始することとしてもよい。
【0079】
この場合、(a)及び/又は(b)が分散された培養液中における一方の細胞(上皮系細胞及び間葉系細胞のうち、先に播種された細胞)の保持は、例えば、当該一方の細胞の培養が開始された時点から24時間が経過する前に開始することが好ましく、18時間が経過する前に開始することがより好ましく、12時間が経過する前に開始することがより一層好ましく、当該一方の細胞の培養開始と同時に開始することが特に好ましい。
【0080】
本方法は、培養液中で、播種された上皮系細胞及び間葉系細胞を、培養基材上に沈降させることをさらに含み、当該培養基材上に沈降した当該上皮系細胞及び間葉系細胞を、(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で保持することとしてもよい。
【0081】
すなわち、(a)及び/又は(b)が添加されていない培養液中(特に、(a)が添加されていない培養液中)で上皮系細胞及び間葉系細胞を培養基材上に播種する場合、例えば、まず当該培養液中で、播種された当該上皮系細胞及び間葉系細胞を当該培養基材上に沈降させ、その後、当該培養液に当該(a)及び/又は(b)を添加して、分散された当該(a)及び/又は(b)を含む培養液中、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する。
【0082】
また、(a)及び/又は(b)が添加された培養液中(特に、(a)が添加された培養液中)で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を培養基材上に播種する場合、例えば、まず、共培養に適した温度より低い温度(例えば、好ましくは10℃以下(具体的には、例えば、0℃超、10℃以下)、より好ましくは7℃以下、特に好ましくは5℃以下)で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を培養基材上に沈降させ、その後、当該共培養に適した温度で、分散された当該(a)及び/又は(b)を含む培養液中、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を保持する。
【0083】
上皮系細胞及び間葉系細胞を培養基材上に沈降させる方法は、特に限られず、例えば、当該培養基材を含む培養容器を静置することにより、及び/又は、当該培養基材を含む培養容器に遠心処理を施すことにより、当該培養容器内の培養液中で当該上皮系細胞及び間葉系細胞を培養基材上に沈降させることができる。
【0084】
本方法においては、上述のようにして(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を保持した後、培養液中で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行うことにより、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を含む毛包原基を形成する。
【0085】
共培養においては、(a)及び/又は(b)が添加された培養液を用いてもよいし、(a)及び/又は(b)が添加されていない培養液を用いてもよい。すなわち、本方法は、(a)及び/又は(b)が分散された培養液中における上皮系細胞及び間葉系細胞の保持後、当該(a)及び/又は(b)の濃度が当該保持時の濃度より小さい培養液中で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行うことを含んでもよい。
【0086】
この場合、分散された(a)及び/又は(b)を第一の濃度で含む培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を保持し、その後、当該(a)及び/又は(b)の濃度が当該第一の濃度より小さい第二の濃度である培養液中で、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養する。
【0087】
第二の濃度は、第一の濃度より小さく、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、第一の濃度の5分の1以下であってもよいし、10分の1以下であってもよいし、15分の1以下であってもよいし、20分の1以下であってもよいし、25分の1以下であってもよいし、又は30分の1以下であってもよい。
【0088】
(a)の第二の濃度は、例えば、1μg/mL未満であってもよく、0.2μg/mL未満であってもよく、0.1μg/mL未満であってもよい。(b)の第二の濃度は、例えば、1μg/mL未満であってもよく、0.2μg/mL未満であってもよく、0.1μg/mL未満であってもよい。
【0089】
本方法が、第二の濃度で共培養を行うことを含む場合、毛包原基が形成されるまでの共培養期間を通じて、当該(a)及び/又は(b)の濃度が第二の濃度である培養液中で共培養を行うこととしてもよいし、当該共培養期間のうち一部の期間でのみ、当該(a)及び/又は(b)の濃度が第二の濃度である培養液中で共培養を行うこととしてもよい。
【0090】
共培養に用いる培養液中の(a)及び/又は(b)の濃度を低減することにより、例えば、毛包原基の製造コストを効果的に低減することができ、また、煩雑な操作の低減によって操作性を向上させることもできる。
【0091】
本方法においては、培養液中に分散された(a)及び/又は(b)と上皮系細胞及び間葉系細胞を接触させ、その後、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養することにより、in vitroにおいて毛幹様構造を形成することができる毛包原基を、簡便に且つ短期間で製造することができる。すなわち、本方法で製造された毛包原基をさらに培養することにより、当該毛包原基において、毛幹様構造を形成することができる。
【0092】
そこで、本方法においては、(a)及び/又は(b)が分散された培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を保持した後、当該上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行うことにより、毛幹様構造を有する毛包原基を形成することとしてもよい。
【0093】
すなわち、この場合、上皮系細胞及び間葉系細胞が凝集して毛包原基が形成された後も、当該毛包原基に毛幹様構造が形成されるまで、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養(当該毛包原基の培養)を継続する。その結果、in vitroで、簡便且つ短期間に、毛幹様構造を有する毛包原基を製造することができる。
【0094】
具体的に、本方法においては、例えば、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養が開始された時点から、480時間が経過する前、好ましくは360時間が経過する前、より好ましくは240時間が経過する前、特に好ましくは170時間が経過する前に、毛幹様構造を有する毛包原基を形成することとしてもよい。
【0095】
毛包原基が有する毛幹様構造は、当該毛包原基に形成される糸状の構造体である。この毛幹様構造は、ケラチンを含むこととしてもよい。また、毛幹様構造は、メラニンを含むこととしてもよい。また、毛幹様構造は、毛包原基から萌出していることとしてもよい。また、毛幹様構造は、キューティクル構造を有することとしてもよい。
【0096】
本毛包原基が有する毛幹様構造の長さは、特に限られないが、例えば、30μm以上であることとしてもよく、50μm以上であることとしてもよく、100μm以上であることとしてもよい。
【0097】
本実施形態に係る毛包原基(以下、「本毛包原基」という。)は、上皮系細胞及び間葉系細胞を含む毛包原基であって、毛幹様構造を有し、立毛筋構造及び/又は皮脂腺構造を含まず、生体に移植されていない、毛包原基である。本毛包原基は、上述した本方法により好ましく製造される。
【0098】
本毛包原基は、未だ生体に移植されていないにも関わらず、毛幹様構造を有している。この点、従来も、生体に移植された後、当該生体において毛幹様構造を形成できる毛包原基は製造することは可能であった。しかしながら、生体に移植する前に、生体外で、毛包原基に毛幹様構造を形成することは難しかった。
【0099】
上記非特許文献1に記載の方法では、人工多能性幹細胞を培養して形成される皮膚組織体は、立毛筋構造や皮脂腺構造といった複雑な構造を有している。これに対し、本毛包原基は、比較的シンプルな構造を有する。
【0100】
すなわち、本毛包原基は、上記非特許文献1に記載されているような立毛筋構造及び/又は皮脂腺構造を含まない。具体的に、本毛包原基は、立毛筋構造を含まないこととしてもよく、皮脂腺構造を含まないこととしてもよく、又は立毛筋構造及び皮脂腺構造を含まないこととしてもよい。
【0101】
毛包原基の用途は、特に限られないが、当該毛包原基は、例えば、患者への移植等の医療に用いることができ、又は、毛髪の形成に関する研究のために用いることもできる。毛包原基が移植される生体は、ヒトであってもよいし、非ヒト動物であってもよいが、ヒトであることが好ましい。毛包原基の生体への移植は、当該生体の皮膚への移植であることが好ましい。
【0102】
毛包原基の生体への移植は、医学的用途であってもよいし、研究用途であってもよい。毛包原基の生体への移植は、例えば、脱毛を伴う疾患の治療又は予防のための、当該疾患を患っている又は患う可能性のあるヒト患者への移植であることとしてもよい。
【0103】
脱毛を伴う疾患は、特に限られないが、例えば、男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia:AGA)、女子男性型脱毛症(Female Androgenetic Alopecia:FAGA)、分娩後脱毛症、びまん性脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、牽引性脱毛症、代謝異常性脱毛症、圧迫性脱毛症、円形脱毛症、神経性脱毛症、抜毛症、全身性脱毛症、及び症候性脱毛症からなる群より選択される1以上であることとしてもよい。
【0104】
毛包原基は、例えば、脱毛を伴う疾患の治療又は予防に使用され得る物質の探索、当該疾患に関与する物質の探索、当該疾患のメカニズムに関する研究のために用いられることとしてもよい。
【0105】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0106】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
胎齢18日のC57BL/6マウス胎児より背部の皮膚組織を採取し、中尾らが報告した方法(Koh-ei Toyoshima et al. Nature Communications, 3, 784, 2012)を一部改変して、ディスパーゼ処理を4℃で1時間、30rpm震盪条件で行い、当該皮膚組織の上皮層と間葉層とを分離した。その後、上皮層に100U/mLのコラゲナーゼ処理を1時間20分施し、さらにトリプシン処理を10分施すことで、上皮系細胞を単離した。また、間葉層に100U/mLのコラゲナーゼ処理を1時間20分施すことで間葉系細胞を単離した。
【0107】
[培養]
例1-1においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含む培養液を用いて、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。まず培養液として、1%GultaMax Supplement(GIBCO(登録商標))及び0.2%Normоcin(InvivoGen)を含むDMEM/F12培地(Advanced Dulbecco‘s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12、GIBCO(登録商標))を調製した。
【0108】
次いで、この培養液に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、さらに、濃度が1v/v%となる量のマトリゲル(Matrigel(登録商標) Basement Membrane Matrix、CORNING(登録商標))を添加することにより、細胞懸濁液を調製した。
【0109】
用いられたマトリゲル製品は、EHS(Engelbreth-Holm-Swarm)マウス腫瘍から抽出された可溶性基底膜マトリクスを10.6mg/mL(Lowry法で測定されるタンパク質量)含み、当該基底膜マトリクスにおける組成比率は、ラミニンが56%、エンタクチンが8%、及びIV型コラーゲンが31%であった。
【0110】
よって、1v/v%のマトリゲル製品が添加された上記細胞懸濁液は、59μg/mLのラミニン、8μg/mLのエンタクチン、及び33μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0111】
上記細胞懸濁液を、96ウェルプレート(Prime surface(登録商標)、住友ベークライト)の各ウェルに100μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。播種後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置した。この静置により、冷蔵庫内で、冷却された培養液中、上皮系細胞及び間葉系細胞がウェルの底面上に、互いに接触可能な状態で沈降した。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。共培養は、12日間行った。
【0112】
共培養において、培養液の交換は、2日に1回行った。培養液の交換は、まず各ウェルから、ほぼ全ての培養液を除去し、次いで、新たな培養液として、マトリゲルを含まず、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を各ウェルに100μL添加することにより行った。
【0113】
また、比較のための例1-2においては、播種時の細胞懸濁液にマトリゲルを添加しなかったこと(すなわち、マトリゲルを含まない培養液のみを用いたこと)以外は上記例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0114】
[結果]
図1A図1B、及び図1Cには、例1-1の一つのウェル内の共培養において、それぞれ培養1日目、培養3日目、及び培養6日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図1D図1E、及び図1Fには、例1-2の一つのウェル内の共培養において、それぞれ培養1日目、培養3日目、及び培養6日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図1A図1Fにおいて、スケールバーは100μmを示す。
【0115】
図1D図1Fに示すように、例1-2においては、毛幹様構造を有する毛包原基は形成されなかった。これに対し、図1A図1Cに示すように、例1-1においては、毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。すなわち、図1Cにおいて矢頭が指し示すように、培養6日目の毛包原基には毛幹様構造が形成されていた。
【0116】
また、図2A図2B、及び図2Cには、例1-1の他の一つのウェル内の共培養系において、それぞれ培養4日目、培養5日目、及び培養6日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図2A図2Cにおいて、スケールバーは100μmを示す。図2A図2Cにおいて矢頭が指し示すように、例1-1では、培養4日目に毛幹様構造の形成が確認され、その後、当該毛幹様構造は培養時間の経過に伴って伸長した。
【0117】
また、培養10日目の毛包原基における毛幹様構造の形成効率を評価した。すなわち、培養10日目において毛幹様構造が形成されている毛包原基の数を、毛包原基の総数で除して、100を乗じることにより、毛幹様構造の形成率(%)を算出した。
【0118】
その結果、例1-2では、96個の毛包原基の全てにおいて、毛幹様構造の形成は確認されず、毛幹様構造の形成率は、0(ゼロ)%であった。これに対し、例1-1では、96個の毛包原基のうち、88個の毛包原基において毛幹様構造の形成が確認され、毛幹様構造の形成率は、92%であった。
【0119】
図3には、例1-1において、培養12日目の毛包原基に形成されていた毛幹様構造の走査型顕微鏡写真を示す。図3において、スケールバーは30μmを示す。図3に示すように、毛包原基に形成された毛幹様構造は、生体の毛幹の特徴的な構造であるキューティクル構造を有していた。
【実施例2】
【0120】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0121】
[培養]
例2-1においては、上記実施例1の例1-1と同様、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含む培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。すなわち、まず培養液として、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を調製した。
【0122】
次いで、この培養液に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、さらに、濃度が1v/v%となる量のマトリゲルを添加することにより、細胞懸濁液を調製した。
【0123】
上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。播種後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置することにより、各ウェルで上皮系細胞及び間葉系細胞を沈降させた。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。
【0124】
培養1日後、各ウェルに、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含み、マトリゲルを含まないDMEM/F12培地を100μL添加した。この結果、各ウェルの培養液の量は約200μLとなった。
【0125】
その後、培養液は2日に1回交換した。培養液の交換は、まず各ウェルから、100μLの培養液を除去し、次いで、新たな培養液として、マトリゲルを含まず、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を各ウェルに100μL添加することにより行った。
【0126】
例2-2においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を播種し、その後、培養1日目に、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加した。
【0127】
すなわち、まず、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、細胞懸濁液を調製した。
【0128】
次いで、上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。播種後、直ちに、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。
【0129】
培養1日後(具体的には、共培養の開始(96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移した時点)から約22時間が経過した時点)に、各ウェルに、1%GultaMax Supplement、0.2%Normоcin、及び2v/v%マトリゲルを含むDMEM/F12培地を100μL添加した。この結果、各ウェルの培養液の量は約200μLとなり、当該培養液中のマトリゲル濃度は約1v/v%となった。
【0130】
さらに、マトリゲルの添加後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置した。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を継続した。培養液の交換は、上記例2-1と同様に行った。
【0131】
例2-3においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を播種し、その後、培養3日目に、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加した。
【0132】
すなわち、上記例2-2と同様に、上皮系細胞及び間葉系細胞を含む細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を播種し、37℃インキュベータ内で共培養を開始した。
【0133】
培養1日後に、各ウェルに、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を100μL添加した。この結果、各ウェルの培養液の量は約200μLとなった。
【0134】
培養3日後(具体的には、共培養の開始から約69時間が経過した時点)に、まず各ウェルから培養液100μLを除去し、次いで、1%GultaMax Supplement、0.2%Normоcin、及び2v/v%マトリゲルを含むDMEM/F12培地を100μL添加した。この結果、各ウェルの培養液中のマトリゲル濃度は約1v/v%となった。
【0135】
さらに、マトリゲルの添加後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置した。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を継続した。培養液の交換は、上記例2-1と同様に行った。
【0136】
[結果]
図4A図4B、及び図4Cには、例2-1の共培養において、それぞれ培養1日目、培養3日目、及び培養7日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図4D図4E、及び図4Fには、例2-2の共培養において、それぞれ培養1日目、培養3日目、及び培養7日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図4G図4H、及び図4Iには、例2-3の共培養において、それぞれ培養1日目、培養3日目、及び培養7日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図4A図4Iにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0137】
図4A図4Cに示すように、例2-1においては、毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。すなわち、図4Cにおいて矢頭が指し示すように、培養7日目の毛包原基には毛幹様構造が形成されていた。これに対し、図4D図4Iに示すように、例2-2及び例2-3においては、培養7日目の毛包原基に毛幹様構造は形成されていなかった。
【実施例3】
【0138】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0139】
[培養]
例3-1においては、まず、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を播種し、次いで、当該播種直後(当該播種から0時間後)に、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加した。
【0140】
すなわち、まず、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、細胞懸濁液を調製した。
【0141】
次いで、上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。次いで、播種直後の各ウェルに、1%GultaMax Supplement、0.2%Normоcin、及び2v/v%マトリゲルを含むDMEM/F12培地を100μL添加した。この結果、各ウェルの培養液の量は200μLとなり、当該培養液中のマトリゲル濃度は1v/v%となった。
【0142】
なお、マトリゲルを含む培養液を添加する直前の、播種直後において、各ウェル内の上皮系細胞及び間葉系細胞の一部は、ウェル底面上に未だ沈降しておらず、培養液中に浮遊していた。
【0143】
その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。培養液の交換は、上記実施例2の例2-1と同様に行った。
【0144】
例3-2においては、まず、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を播種して共培養を開始し、その後、当該共培養の開始から0.5時間が経過した時点で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加した。
【0145】
すなわち、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、細胞懸濁液を調製した。
【0146】
上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。播種後、直ちに、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。
【0147】
共培養の開始から0.5時間が経過した時点で、各ウェルに、1%GultaMax Supplement、0.2%Normоcin、及び2v/v%マトリゲルを含むDMEM/F12培地を100μL添加した。この結果、各ウェルの培養液の量は約200μLとなり、当該培養液中のマトリゲル濃度は1v/v%となった。
【0148】
なお、マトリゲルを含む培養液を添加する直前の、共培養の開始から0.5時間が経過した時点において、各ウェル内の上皮系細胞及び間葉系細胞は、ウェル底面上に既に沈降していた。
【0149】
その後、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を継続した。培養液の交換は、上記実施例2の例2-1と同様に行った。
【0150】
例3-3においては、共培養の開始から1時間が経過した時点で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加したこと以外は上記例3-2と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0151】
例3-4においては、共培養の開始から2時間が経過した時点で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加したこと以外は上記例3-2と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0152】
例3-5においては、共培養の開始から3時間が経過した時点で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加したこと以外は上記例3-2と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0153】
例3-6においては、共培養の開始から6時間が経過した時点で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加したこと以外は上記例3-2と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0154】
例3-7においては、共培養の開始から15時間が経過した時点で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加したこと以外は上記例3-2と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0155】
例3-8においては、共培養の開始から22時間が経過した時点で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加したこと以外は上記例3-2と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0156】
[結果]
図5A図5B図5C図5D図5E図5F図5G、及び図5Hには、それぞれ例3-1、例3-2、例3-3、例3-4、例3-5、例3-6、例3-7、及び例3-8の共培養において、培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図6A図6B図6C図6D図6E図6F図6G、及び図6Hには、それぞれ例3-1、例3-2、例3-3、例3-4、例3-5、例3-6、例3-7、及び例3-8の共培養において、培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図5A図5H、及び図6A図6Hにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0157】
図5A図5H、及び図6A図6Hに示すように、共培養の開始から0時間~22時間が経過した時点でラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加した全ての例(例3-1~例3-8)において、毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。すなわち、図6A図6Hに示すように、全ての例において、培養8日目の毛包原基に毛幹様構造が形成されていた。
【0158】
また、毛幹様構造の形成率は、例3-1で22%(9個の毛包原基のうち2個)、例3-2で89%(9個の毛包原基のうち8個)、例3-3で78%(9個の毛包原基のうち7個)、例3-4で100%(9個の毛包原基のうち9個)、例3-5で89%(9個の毛包原基のうち8個)、例3-6で78%(9個の毛包原基のうち7個)、例3-7で44%(9個の毛包原基のうち4個)、及び例3-8で22%(9個の毛包原基のうち2個)であった。
【0159】
共培養の開始から15時間又は22時間が経過した時点でマトリゲルを添加した例3-7及び例3-8の毛幹様構造形成効率が、0.5時間~6時間が経過した時点でマトリゲルを添加した例3-2~例3-6のそれより小さい理由としては、例えば、当該マトリゲルを添加する時点で既に上皮系細胞及び間葉系細胞の凝集が進行していたことが考えられる。
【0160】
また、共培養の開始直後にマトリゲルを添加した例3-1の毛幹様構造形成効率が小さい理由としては、例えば、当該マトリゲルを添加する時点で上皮系細胞及び間葉系細胞の一部がウェル底面上に沈降しておらず、未だ浮遊状態にあったことが考えられる。
【0161】
なお、上記実施例2の例2-2では、例3-6と同様、共培養の開始から約22時間が経過した時点でラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを培養液に添加したにもかかわらず、培養6日目における毛包原基に毛幹様構造の形成は確認されなかった。この原因としては、例えば、細胞を採取したマウスの個体差に由来する影響が考えられる。
【実施例4】
【0162】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0163】
[培養]
例4においては、ラミニン及びエンタクチンを含む培養液を用いて、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。まず培養液として、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を調製した。
【0164】
次いで、この培養液に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、さらに、濃度が1v/v%となる量の高濃度ラミニン/エンタクチン複合体(HIGH CONCENTRATION LAMININ/ENTACTIN COMPLEX、CORNING(登録商標))を添加することにより、細胞懸濁液を調製した。
【0165】
用いられた高濃度ラミニン/エンタクチン複合体製品は、EHSマウス腫瘍から抽出された可溶性基底膜マトリクスを15.2mg/mL含み、SDS-PAGEによる純度90%以上でラミニン/エンタクチン複合体を含み、ラミニンとエンタクチンとは等モル比で含まれていた。
【0166】
よって、1v/v%の高濃度ラミニン/エンタクチン複合体製品が添加された上記細胞懸濁液は、137~152μg/mLのラミニン/エンタクチン複合体(すなわち、それぞれ68~76μg/mLのラミニン及びエンタクチンを)を含有していたと算出される。
【0167】
すなわち、例4の細胞懸濁液において、ラミニンの含有量は、上記実施例1の例1-1の細胞懸濁液におけるそれの115%~129%であり、ラミニン及びエンタクチンの総含有量は、上記実施例1の例1-1の細胞懸濁液におけるそれの204%~227%であったと算出される。
【0168】
上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。播種後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置することにより、当該冷蔵庫内で、冷却された培養液中、上皮系細胞及び間葉系細胞をウェルの底面上に沈降させた。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。培養液の交換は、上記実施例1の例1-1と同様に行った。
【0169】
[結果]
図7A図7B、及び図7Cには、例4の共培養において、それぞれ培養1日目、培養3日目、及び培養7日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図7A図7Cにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0170】
図7A図7Cに示すように、ラミニン及びエンタクチンを含む培養液を用いることにより、毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。すなわち、図7Cにおいて矢頭が指し示すように、培養7日目の毛包原基には毛幹様構造が形成されていた。
【実施例5】
【0171】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0172】
[培養]
例5-1においては、ラミニンを含む培養液を用いて、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。すなわち、まず培養液として、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を調製した。
【0173】
次いで、この培養液に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、さらに、濃度が1v/v%となる量の高純度ラミニン(LAMININ-ULTRAPURE,MOUSE、CORNING(登録商標))を添加することにより、細胞懸濁液を調製した。
【0174】
用いられた高純度ラミニン製品は、EHSマウス腫瘍から抽出された可溶性基底膜マトリクスを0.82mg/mL含み、SDS-PAGEによる純度95%以上でラミニンを含んでいた。
【0175】
よって、1v/v%の高純度ラミニン製品が添加された上記細胞懸濁液は、約8μg/mLのラミニンを含有していたと算出される。すなわち、例5-1の細胞懸濁液において、ラミニンの含有量は、上記実施例1の例1-1の細胞懸濁液におけるそれの13%~14%であったと算出される。
【0176】
上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。播種後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置することにより、当該冷蔵庫内で、冷却された培養液中、上皮系細胞及び間葉系細胞をウェルの底面上に沈降させた。
【0177】
その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。培養液の交換は、上記実施例1の例1-1と同様に行った。
【0178】
例5-2においては、上記実施例4の例4と同様にして、ラミニン及びエンタクチンを含む培養液を用いて上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0179】
例5-3においては、IV型コラーゲンを含む培養液を用いて、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。すなわち、まず培養液として、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を調製した。
【0180】
次いで、この培養液に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、さらに、濃度が1v/v%となる量のIV型コラーゲン(COLLAGEN IV,MOUSE、CORNING(登録商標))を添加することにより、細胞懸濁液を調製した。
【0181】
用いられたIV型コラーゲン製品は、EHSマウス腫瘍から抽出された可溶性基底膜マトリクスを1.25mg/mL含み、SDS-PAGEによる純度90%以上でIV型コラーゲンを含んでいた。
【0182】
よって、1v/v%のIV型コラーゲン製品が添加された上記細胞懸濁液は、11~13μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。すなわち、例5-3の細胞懸濁液において、IV型コラーゲンの含有量は、上記実施例1の例1-1の細胞懸濁液におけるそれの34%~38%であった。
【0183】
上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。播種後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置することにより、当該冷蔵庫内で、冷却された培養液中、細胞をウェルの底面上に沈降させた。
【0184】
その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。培養液の交換は、上記実施例1の例1-1と同様に行った。
【0185】
[結果]
図8A図8B、及び図8Cには、それぞれ例5-1、例5-2、及び例5-3において、培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図8A図8Cにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0186】
図8Aに示すように、ラミニンを含む培養液を用いた例5-1では、培養8日目の毛包原基において毛幹様構造は形成されていなかった。これに対し、図8Bにおいて矢頭が指し示すように、ラミニン及びエンタクチンを含む培養液を用いた例5-2では、培養8日目の毛包原基において毛幹様構造が形成されていた。また、図8Cにおいて矢頭が指し示すように、IV型コラーゲンを含む培養液を用いた例5-3においても、培養8日目の毛包原基において毛幹様構造が形成されていた。
【実施例6】
【0187】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0188】
[培養]
例6においては、上記実施例1の例1-1において用いられたマトリゲル製品に代えて、増殖因子の含有量が低減されたマトリゲル製品(Matrigel(登録商標) Basement Membrane Matrix(Growth Factor Reduced)、CORNING(登録商標))を、培養液中の濃度が1v/v%となる量で用いたこと以外は、当該実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を8日間行った。
【0189】
用いられたマトリゲル製品(GFR)は、EHS(Engelbreth-Holm-Swarm)マウス腫瘍から抽出された可溶性基底膜マトリクスを8~12mg/mL(Lowry法で測定されるタンパク質量)含み、当該基底膜マトリクスにおける組成比率は、ラミニンが61%、エンタクチンが7%、及びIV型コラーゲンが30%であった。
【0190】
[結果]
図9A及び図9Bには、例6の共培養において、それぞれ培養1日目及び培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図9A及び図9Bに示すように、例6においては、毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。すなわち、図9Bに示すように、培養8日目の毛包原基には毛幹様構造が形成されていた。
【0191】
また、96個の毛包原基のうち、85個の毛包原基において毛幹様構造の形成が確認され、毛幹様構造の形成率は、89%であった。すなわち、例6においては、上述の例1-1と同様に毛幹様構造を有する毛包原基が形成され、毛幹様構造の形成率も当該例1-1と同程度であった。
【実施例7】
【0192】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0193】
[培養]
例7-1においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて0.1v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、0.1v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、6μg/mLのラミニン、1μg/mLのエンタクチン、及び3μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0194】
例7-2においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて0.2v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、0.2v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、12μg/mLのラミニン、2μg/mLのエンタクチン、及び7μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0195】
例7-3においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて0.3v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、0.3v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、18μg/mLのラミニン、3μg/mLのエンタクチン、及び10μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0196】
例7-4においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて0.4v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、0.4v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、24μg/mLのラミニン、3μg/mLのエンタクチン、及び13μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0197】
例7-5においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて0.5v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、0.5v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、30μg/mLのラミニン、4μg/mLのエンタクチン、及び16μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0198】
例7-6においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて0.6v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、0.5v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、36μg/mLのラミニン、5μg/mLのエンタクチン、及び20μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0199】
[結果]
図10A図10B図10C図10D図10E、及び図10Fには、それぞれ例7-1、例7-2、例7-3、例7-4、例7-5、及び例7-6の共培養において、培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図11A図11B図11C図11D図11E、及び図11Fには、それぞれ例7-1、例7-2、例7-3、例7-4、例7-5、及び例7-6の共培養において、培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図12A図12B図12C図12D図12E、及び図12Fには、それぞれ例7-1、例7-2、例7-3、例7-4、例7-5、及び例7-6の共培養において、培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図10A図10F図11A図11F、及び図12A図12Fにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0200】
図10A図10F図11A図11F、及び図12A図12Fに示すように、全ての例(例7-1~例7-6)において、毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。すなわち、図12A図12Fに示すように、全ての例において、培養8日の毛包原基に毛幹様構造が形成されていた。
【0201】
また、培養8日目における毛幹様構造の形成率は、例7-1で25%(12個の毛包原基のうち3個)、例7-2で58%(12個の毛包原基のうち7個)、例7-3で92%(12個の毛包原基のうち11個)、例7-4、例7-5、及び例7-6で100%(12個の毛包原基のうち12個)であった。
【実施例8】
【0202】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0203】
[培養]
例8-1においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて2.0v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、2.0v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、119μg/mLのラミニン、17μg/mLのエンタクチン、及び66μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0204】
例8-2においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて2.5v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、2.5v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、148μg/mLのラミニン、21μg/mLのエンタクチン、及び82μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0205】
例8-3においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて3.0v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、3.0v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、178μg/mLのラミニン、25μg/mLのエンタクチン、及び99μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0206】
例8-4においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて3.5v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、3.5v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、208μg/mLのラミニン、30μg/mLのエンタクチン、及び115μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0207】
例8-5においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて4.0v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、4.0v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、237μg/mLのラミニン、34μg/mLのエンタクチン、及び131μg/mLのIV型コラーゲンを含有していたと算出される。
【0208】
例8-6においては、培養液に添加したマトリゲルの濃度を1v/v%に代えて4.5v/v%としたこと以外は上記実施例1の例1-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、4.5v/v%のマトリゲルが添加された細胞懸濁液は、267μg/mLのラミニン、38μg/mLのエンタクチン、及び148μg/mLのIV型コラーゲンを含有していた。
【0209】
[結果]
図13A図13B図13C図13D図13E、及び図13Fには、それぞれ例8-1、例8-2、例8-3、例8-4、例8-5、及び例8-6の共培養において、培養1日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図14A図14B図14C図14D図14E、及び図14Fには、それぞれ例8-1、例8-2、例8-3、例8-4、例8-5、及び例8-6の共培養において、培養3日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図15A図15B図15C図15D図15E、及び図15Fには、それぞれ例8-1、例8-2、例8-3、例8-4、例8-5、及び例8-6の共培養において、培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図13A図13F図14A図14F、及び図15A図15Fにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0210】
図13A図13F図14A図14F、及び図15A図15Fに示すように、全ての例(例8-1~例8-6)において、毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。すなわち、図15A図15Fに示すように、全ての例において、培養8日の毛包原基に毛幹様構造が形成されていた。
【0211】
また、培養8日目における毛幹様構造の形成率は、例8-1、例8-2及び例8-3で100%(6個の毛包原基のうち6個)、例8-4、例8-5、及び例8-6でも100%(12個の毛包原基のうち12個)であった。
【実施例9】
【0212】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0213】
[培養]
例9-1においては、培養液に添加した高濃度ラミニン/エンタクチン複合体製品の濃度を1v/v%に代えて0.5v/v%としたこと以外は上記実施例4の例4と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、0.5v/v%の高濃度ラミニン/エンタクチン複合体製品が添加された細胞懸濁液は、68~76μg/mLのラミニン/エンタクチン複合体(すなわち、それぞれ34~38μg/mLのラミニン及びエンタクチンを)を含有していたと算出される。
【0214】
例9-2においては、培養液に添加した高濃度ラミニン/エンタクチン複合体製品の濃度を1v/v%に代えて5.0v/v%としたこと以外は上記実施例4の例4と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、5.0v/v%の高濃度ラミニン/エンタクチン複合体製品が添加された細胞懸濁液は、684~760μg/mLのラミニン/エンタクチン複合体(すなわち、それぞれ342~380μg/mLのラミニン及びエンタクチンを)を含有していたと算出される。
【0215】
例9-3においては、培養液に添加した高濃度ラミニン/エンタクチン複合体製品の濃度を1v/v%に代えて10.0v/v%としたこと以外は上記実施例4の例4と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、5.0v/v%の高濃度ラミニン/エンタクチン複合体製品が添加された細胞懸濁液は、1368~1520μg/mLのラミニン/エンタクチン複合体(すなわち、それぞれ684~760μg/mLのラミニン及びエンタクチンを)を含有していたと算出される。
【0216】
[結果]
図16A図16B、及び図16Cには、それぞれ例9-1、例9-2、及び例9-3の共培養において、培養2日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図17A図17B、及び図17Cには、それぞれ例9-1、例9-2、及び例9-3の共培養において、培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図16A図16C、及び図17A図17Cにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0217】
図16A図16C、及び図17A図17Cに示すように、全ての例(例9-1~例9-3)において、毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。すなわち、図17A図17Cに示すように、全ての例において、培養8日の毛包原基に毛幹様構造が形成されていた。
【参考例1】
【0218】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0219】
[培養]
例C1-1においては、培養液に添加した高純度ラミニン製品の濃度を1v/v%に代えて5v/v%としたこと以外は上記実施例4の例4と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、5v/v%の高純度ラミニン製品を含有する細胞懸濁液は、39~41μg/mLのラミニンを含有していたと算出される。
【0220】
例C1-2においては、培養液に添加した高純度ラミニン製品の濃度を1v/v%に代えて10v/v%としたこと以外は上記実施例4の例4と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。なお、10v/v%の高純度ラミニン製品を含有する細胞懸濁液は、78~82μg/mLのラミニンを含有していたと算出される。
【0221】
[結果]
図18A図18B、及び図18Cには、例C1-1の共培養において、それぞれ培養1日目、培養3日目、及び培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図18D図18E、及び図18Fには、例C1-2の共培養において、それぞれ培養1日目、培養3日目、及び培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図18A図18Fにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0222】
図18A図18Fに示すように、例C1-1及び例C1-2のいずれにおいても、毛幹様構造を有する毛包原基は形成されなかった。
【参考例2】
【0223】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0224】
[培養]
例C2においては、予めIV型コラーゲンをコーティングした培養ディッシュ表面上で、IV型コラーゲンを含まない培養液中、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。まず上記実施例5の例5-3で用いたIV型コラーゲン製品を、その取扱説明書におけるコーティング方法に関する記載に従い、0.05M HCl溶液で100μg/mLの濃度に希釈してコーティング液を調製した。次いで、このコーティング液1mLを、35mm径の培養ディッシュに添加し、室温で1時間保持した。その後、培養ディッシュからコーティング液を捨て、当該培養ディッシュ表面を精製水で洗浄した。
【0225】
一方、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地に、それぞれの細胞密度が5×10cells/mLとなる量(総細胞密度が1×10cells/mLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、細胞懸濁液を調製した。
【0226】
上記細胞懸濁液を、上述のようにして予めIV型コラーゲンをコーティングした培養ディッシュに2mLずつ入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種し、共培養を開始した。
【0227】
[結果]
図19A、及び図19Bには、例C2の共培養において、それぞれ培養2日目、及び培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図19A及び図19Bにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0228】
図19A及び図19Bに示すように、IV型コラーゲンのコーティング処理を施した培養ディッシュ表面上で、IV型コラーゲンを含まない培養液中、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行っても、毛幹様構造を有する毛包原基は形成されなかった。
【参考例3】
【0229】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0230】
[培養]
例C3-1においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含むゲル上で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0231】
すなわち、まず上記実施例1の例1-1で用いたマトリゲル製品を96ウェル平底培養プレートの各ウェルの底面に50μL滴下し、37℃にて15分間インキュベートすることでゲル化させた。その後、各ウェルのゲル上に、マトリゲル製品を含まない培養液に懸濁した上皮系細胞及び間葉系細胞を播種し、当該ゲル上で共培養を行った。
【0232】
例C3-2においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含むゲル内で、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0233】
すなわち、まずマトリゲル製品と、上皮系細胞及び間葉系細胞とを混合し、得られた細胞懸濁液を、96ウェル平底培養プレートの各ウェルの底面に50μL滴下し、37℃にて15分間インキュベートすることでゲル化させた。その後、各ウェルの、分散された上皮系細胞及び間葉系細胞が包埋されたゲル上に、マトリゲル製品を含まない培養液を注ぎ、当該ゲル内で共培養を行った。
【0234】
例C3-3においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養して形成された毛包原基を、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含むゲル上で、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中、培養した。
【0235】
すなわち、まず、上記実施例1の例1-2と同様にして、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中で、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を3日間行い、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を含む毛包原基を形成した。
【0236】
一方、上記例C3-1と同様にして、マトリゲルのゲルを形成した。そして、上述のようにして形成した毛包原基を、マトリゲルが添加されていない培養液中、上述のようにして形成したゲル上に播種し、当該ゲル上で当該毛包原基を9日間培養した。
【0237】
例C3-4においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中で上皮系細胞及び間葉系細胞を共培養して形成された毛包原基を、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含むゲル内で培養した。
【0238】
すなわち、まず、上記実施例1の例1-2と同様にして、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液中で、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を3日間行い、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を含む毛包原基を形成した。そして、上記例C3-2と同様にして、毛包原基をマトリゲルのゲル内に包埋し、当該ゲル内で当該毛包原基を9日間培養した。
【0239】
[結果]
図20A図20B図20C、及び図20Dには、それぞれ例C3-1、例C3-2、例C3-3、及び例C3-4において、培養12日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図20A図20Dにおいて、スケールバーは200μmを示す。
【0240】
図20A図20Dに示すように、例C3-1~例C3-4のいずれにおいても、毛幹様構造を有する毛包原基は形成されなかった。
【実施例10】
【0241】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。
【0242】
[培養]
例10においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含む培養液を用いて、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。まず培養液として、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を調製した。
【0243】
次いで、この培養液に、それぞれの細胞密度が5×10cells/200μLとなる量(総細胞密度が1×10cells/200μLとなる量)の上皮系細胞及び間葉系細胞を懸濁し、さらに、濃度が1v/v%となる量のマトリゲルを添加することにより、細胞懸濁液を調製した。
【0244】
上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに200μL入れることで、上皮系細胞及び間葉系細胞を播種した。播種後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置した。この静置により、冷蔵庫内で、冷却された培養液中、上皮系細胞及び間葉系細胞がウェルの底面上に、互いに接触可能な状態で沈降した。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。共培養は、6日間行った。
【0245】
共培養において、培養液の交換は、2日に1回行った。培養液の交換は、まず各ウェルから、100μLの培養液を除去し、次いで、新たな培養液として、マトリゲルを含まず、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を各ウェルに100μL添加することにより行った。
【0246】
[毛包原基の移植]
6日間の共培養により形成された毛包原基を位相差顕微鏡下で観察し、各毛包原基に毛幹様構造が形成されているかどうかを確認した。そして、毛幹様構造が形成されている毛包原基のみを選択的に回収し、小動物用イソフルラン麻酔器(バイオリサーチセンター株式会社)を用いた麻酔下、5週齢のICRヌードマウス(オリエンタル酵母工業株式会社)の皮下に移植した。すなわち、ヌードマウスの背部にオフサルミックVランス(20G、日本アルコン株式会社)を用いて移植穴を形成し、ピペットを用いて、各々が毛幹様構造を有する21個の毛包原基を当該移植穴に挿入した。
【0247】
[結果]
図21には、移植後22日目におけるヌードマウスの背部の写真の一例を示す。図21に示すように、ヌードマウスの背部の毛包原基が移植された部位に毛髪が形成された。具体的に、移植した21個の毛包原基のうち、18個から毛髪の形成が確認された。すなわち、移植した毛包原基の総数に対する、移植したヌードマウス背部で毛髪を形成した毛包原基の数の割合(毛髪再生効率)は85.7%(=18/21×100)であった。なお、この毛髪再生効率は、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含まない培養液を用いて形成された、毛幹様構造を有しない毛包原基を移植した場合(結果は図示せず)に比べて高かった。このように、上述の共培養により製造された毛包原基を生体に移植することにより毛髪が高効率に再生することが確認された。
【実施例11】
【0248】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
上記実施例1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞を調製した。ただし、まず間葉系細胞のみを播種する日に第一のマウス個体から間葉系細胞を採取し、次いで、当該間葉系細胞の1日培養後、上皮系細胞をさらに播種する日に、当該第一の個体とは異なる第二のマウス固体から上皮系細胞を採取した。
【0249】
[培養]
例11においては、まずラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含む培養液を用いて間葉系細胞のみの培養を開始し、次いで、上皮系細胞を添加し、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含む培養液を用いて上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0250】
培養液として、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を調製した。この培養液に、細胞密度が5×10cells/mLとなる量の間葉系細胞を懸濁し、さらに、濃度が1v/v%となる量のマトリゲルを添加することにより、当該間葉系細胞の細胞懸濁液を調製した。
【0251】
間葉系細胞の細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに100μL入れることで、間葉系細胞を播種した(間葉系細胞の細胞密度:5×10cells/ウェル)。播種後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置し、間葉系細胞をウェルの底面上に沈降させた。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で間葉系細胞を開始した。間葉系細胞の培養は、1日間行った。
【0252】
間葉系細胞の培養開始から1日後、培養液(1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地)に、細胞密度が5×10cells/mLとなる量の上皮系細胞を懸濁し、さらに、濃度が1v/v%となる量のマトリゲルを添加することにより、当該上皮系細胞の懸濁液を調製した。
【0253】
一方、上述のようにして1日間培養した間葉系細胞を含む96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置した。その後、間葉系細胞を含む各ウェルに、上皮系細胞の懸濁液を100μL入れることで、上皮系細胞を播種した(上皮系細胞の細胞密度:5×10cells/ウェル)。
【0254】
上皮系細胞の播種後、当該上皮系細胞及び間葉系細胞を含む96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置した。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を開始した。共培養は、14日間行った。すなわち、間葉系細胞を含む各ウェルに上皮系細胞を播種した日から14日間、当該上皮系細胞と間葉系細胞との共培養を行った。培養液の交換は、上記例10と同様に行った。
【0255】
[結果]
図22A及び図22Bには、例11の共培養において、それぞれ共培養の開始から3日目及び14日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。図22A及び図22Bにおいてスケールバーは200μmを示す。
【0256】
図22Aに示すように、培養3日目に形成されていた毛包原基のうち多くは、間葉系細胞が凝集して形成された間葉系細胞凝集体と、上皮系細胞が凝集して形成され、当該間葉系細胞凝集体と直列的に連結された上皮系細胞凝集体とを含んでいた。また、図22Bに示すように、培養14日目には、1つの毛包原基から1本の長い毛幹様構造が形成されている様子も確認された。
【0257】
図23には、共培養中に毛包原基において形成された毛幹様構造の長さを測定した結果を示す。図23において、横軸は共培養の日数を示し、縦軸は毛包原基において形成されていた毛幹様構造の長さを示す。
【0258】
図23に示すように、共培養の開始から4日が経過した後に毛幹様構造が観察され始め、その後、培養時間が経過するにつれて、当該毛幹様構造は成長し、長くなっていった。
【0259】
図24Aには、培養14日目の毛包原基において形成された毛幹様構造の断面を透過型顕微鏡で観察して得られた写真を示す。図24Aにおいてスケールバーは5μmを示す。図24Bには、図24Aに示す白い線で囲まれた四角の領域を拡大して示す。図24Bにおいてスケールバーは2μmを示す。図24Cには、図24Bに示す白い線で囲まれた四角の領域を拡大して示す。図24Cにおいてスケールバーは500nmを示す。図24Dには、図24Cに示す白い線で囲まれた四角の領域を拡大して示す。図24Dにおいてスケールバーは200nmを示す。
【0260】
図24A図24Dに示すように、毛包原基において形成された毛幹様構造は、メラニンやコルテックスといった、生体の毛髪に類似した構造を有していることが確認された。
【実施例12】
【0261】
[上皮系細胞及び間葉系細胞の採取]
胎齢18日のBulb/cマウス胎児より背部の皮膚組織を採取し、中尾らが報告した方法(Koh-ei Toyoshima et al. Nature Communications, 3, 784, 2012)を一部改変して、ディスパーゼ処理を4℃で1時間、30rpm震盪条件で行い、当該皮膚組織の上皮層と間葉層とを分離した。その後、上皮層に100U/mLのコラゲナーゼ処理を1時間20分施し、さらにトリプシン処理を10分施すことで、上皮系細胞を単離した。また、間葉層に100U/mLのコラゲナーゼ処理を1時間20分施すことで間葉系細胞を単離した。
【0262】
[培養]
例12-1においては、ラミニン、エンタクチン及びIV型コラーゲンを含む培養液を用いて、上皮系細胞、間葉系細胞及びメラノサイトの共培養を行った。まず培養液として、1%GultaMax Supplement及び0.2%Normоcinを含むDMEM/F12培地を調製した。
【0263】
次いで、この培養液に、それぞれの細胞密度が5×10cells/200μLとなる量の上皮系細胞及び間葉系細胞と、細胞密度が1.25×10cells/200μLとなる量のメラノサイト(正常ヒト(黒人)表皮メラノサイト)とを懸濁し(総細胞密度:1.125×10cells/200μL)、さらに、濃度が1v/v%となる量のマトリゲルを添加することにより、細胞懸濁液を調製した。
【0264】
上記細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに200μL入れることで、上皮系細胞、間葉系細胞及びメラノサイトを播種した。播種後、直ちに96ウェルプレートを4℃の冷蔵庫内に移して20分間静置した。この静置により、上皮系細胞、間葉系細胞及びメラノサイトがウェルの底面上に、互いに接触可能な状態で沈降した。その後、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに移し、当該インキュベータ内で上皮系細胞、間葉系細胞及びメラノサイトの共培養を開始した。共培養は、8日間行った。培養液の交換は、上記例10と同様に行った。
【0265】
例12-2においては、細胞密度が2.5×10cells/200μLとなる量のメラノサイト(総細胞密度:1.25×10cells/200μL)を用いた以外は上述の例12-1と同様にして、上皮系細胞、間葉系細胞及びメラノサイトの共培養を行った。
【0266】
例12-3においては、細胞密度が5×10cells/200μLとなる量のメラノサイト(総細胞密度:1.5×10cells/200μL)を用いた以外は上述の例12-1と同様にして、上皮系細胞、間葉系細胞及びメラノサイトの共培養を行った。
【0267】
例12-C1においては、メラノサイトを用いなかった(総細胞密度:1×10cells/200μL)以外は上述の例12-1と同様にして、上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養を行った。
【0268】
すなわち、3種の細胞の播種数の比率(上皮系細胞:間葉系細胞:メラノサイト)は、例12-C1において「1:1:0」、例12-1において「4:4:1」、例12-2において「2:2:1」、及び例12-3において「1:1:1」であった。
【0269】
[結果]
図25A図25B図25C、及び図25Dには、それぞれ例12-C1、例12-1、例12-2、及び例12-3の共培養において、培養8日目に撮影された位相差顕微鏡写真を示す。
【0270】
図25Aに示すように、白い毛を有するBulb/cマウス由来の上皮系細胞及び間葉系細胞の共培養により、白色の毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。これに対し、図25B図25Dに示すように、例12-1~例12-3の全てにおいて、白い毛を有するBulb/cマウス由来の上皮系細胞及び間葉系細胞に、さらにメラノサイトを加えた共培養により、黒色の毛幹様構造を有する毛包原基が形成された。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図20D
図21
図22A
図22B
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
図25A
図25B
図25C
図25D