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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】サニタリー配管
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/06 20060101AFI20240129BHJP
   F16L 23/04 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F16L21/06
F16L23/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019112594
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020204367
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一馬
(72)【発明者】
【氏名】梅木 岳志
(72)【発明者】
【氏名】森山 英行
(72)【発明者】
【氏名】百留 大希
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3052672(JP,U)
【文献】特開2008-051192(JP,A)
【文献】実開平01-154391(JP,U)
【文献】特開昭61-006492(JP,A)
【文献】特開2003-307286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0132444(US,A1)
【文献】登録実用新案第3048911(JP,U)
【文献】特開昭61-180089(JP,A)
【文献】登録実用新案第3105041(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/06
F16L 21/00
F16L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂パイプと、この透明樹脂パイプの端部に装着可能なヘルール継手部とを有する内壁が面一なサニタリー配管であって、
前記透明樹脂パイプは、
本体部と、
前記本体部の少なくとも一端部から延設された、前記本体部の外径より小さい外径を有する小径管部と、
前記小径管部に設けられたパイプ側鍔状部と
を備える一方で、
前記へルール継手部は、
前記小径管部が内部にぴったり嵌まるように挿入可能に構成された継手側本体部と、
前記継手側本体部に前記小径管部が挿入された状態で前記パイプ側鍔状部と当接するように構成された継手側鍔状部と
を備え、さらに、
前記パイプ側鍔状部と前記継手側鍔状部との間に配置されるシール部材と、
前記シール部材を挟んで前記パイプ側鍔状部と前記継手側鍔状部とを互いに圧接させた状態で保持するように構成された保持用リング部材と、
を備えたサニタリー配管。
【請求項2】
前記保持用リング部材は、前記シール部材を挟んで前記パイプ側鍔状部と前記継手側鍔状部とが互いに圧接した状態で、これらの鍔状部にぴったり嵌まるように構成された溝部を有し、かつ
前記溝部の少なくとも一方の側壁が、前記保持用リング部材の締め付け力の増加に伴って、前記パイプ側鍔状部と前記継手側鍔状部との圧接力が高まるようにテーパ状を呈することを特徴とする請求項1に記載のサニタリー配管。
【請求項3】
前記透明樹脂パイプがポリメチルペンテン樹脂によって構成されており、
前記へルール継手部がステンレス鋼によって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のサニタリー配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂パイプと、この透明樹脂パイプの端部に装着可能なヘルール継手部とを有するサニタリー配管に関する。
【背景技術】
【0002】
サニタリー配管は、食品、飲料、医薬品等を含む多くの分野における流体移送のために用いられる。このようなサニタリー配管においては、ヘルール継手部が用いられることが多かった。その理由は、ヘルール継手部は工具がなくても組付や分解ができるため、洗浄などで取り外しの多い部分に使用し易いからである。また、ヘルール継手部の内部には凸凹がなく洗浄性に優れており、液だまりもしにくいため、異物混入リスクや菌発生リスクを抑えることが出来るからである。
【0003】
一般的な、サニタリー配管は、リング状のヘルールガスケット、このヘルールガスケットを挟む一対のヘルール継手部、および対向するヘルール継手部を互いに接近する方向に締め付けるクランプを備えることが多かった。そして、サニタリー配管の素材としては、これまでのところステンレス製のものが広く利用されてきた。
【0004】
ところが、ステンレス製のサニタリー配管は、透明性がないため、配管内部の状況を把握することが困難であるという不都合がたびたび指摘されることがあった。
【0005】
そこで、従来技術の中には、透明性を有する樹脂素材を用いたサニタリー配管を採用するものがあった(例えば、特許文献1および2参照。)。このようなサニタリー配管を用いることによって、より衛生的で、かつ、不衛生な状況の発生を早期に発見可能になるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-213682号公報
【文献】実用新案登録第3052672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術に係る配管は、新たにサニタリー配管システムを構築する場合には特に問題はないが、既存のサニタリー配管システムにおいて適用しにくいと思われる。その理由は、ヘルール継手部を通常の樹脂パイプの外周に嵌める構成を採用しているため、ヘルール継手部のフランジ部分が既存のものよりも大きくなり易いからである。
【0008】
ヘルール継手部のフランジ部分の大きさが異なる場合、対向するヘルール継手部どうしをクランプで締め付けることが難しく、クランプ位置から流体の漏れが発生するリスクがあった。一方で、ヘルール継手部のフランジ部分のみの形状を調整しようとした場合には、ヘルール継手部の強度が不足するリスクがあった。
【0009】
この発明の目的は、強度を保ちつつ既存の配管との互換性に優れたサニタリー配管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るサニタリー配管は、透明樹脂パイプと、この透明樹脂パイプの端部に装着可能なヘルール継手部とを有している。透明樹脂パイプは、本体部、小径管部、およびパイプ側鍔状部を備える。小径管部は、本体部の少なくとも一端部から延設されている。この小径管部は、本体部の外径より小さい外径になるように構成されている。この結果、本体部と小径管部との境界に段部が形成されることになる。そして、パイプ側鍔状部は、小径管部に設けられている。
【0011】
へルール継手部は、継手側本体部および継手側鍔状部を備えている。継手側本体部は、小径管部が内部にぴったり嵌まるように挿入可能に構成されている。継手側鍔状部は、継手側本体部に小径管部が挿入された状態でパイプ側鍔状部と当接するように構成されている。
【0012】
さらに、サニタリー配管は、シール部材および保持用リング部材を備えている。シール部材は、パイプ側鍔状部と継手側鍔状部との間に配置される。
【0013】
保持用リング部材は、シール部材を挟んでパイプ側鍔状部と継手側鍔状部とを互いに圧接させた状態で保持するように構成される。
【0014】
この構成においては、ヘルール継手部が小径管部に嵌まるように構成されるため、ヘルール継手部の肉厚やフランジ部の大きさや形状を既存の規格品と同一にすることが可能となる。しかも、パイプ側鍔状部と継手側鍔状部とが小径管部において圧接保持されるため、小径管部の肉厚が薄くなっても全体的に強度が維持される。
【0015】
上述のサニタリー配管において、保持用リング部材が、シール部材を挟んでパイプ側鍔状部と継手側鍔状部とが互いに圧接した状態で、これらの鍔状部にぴったり嵌まるように構成された溝部を有し、かつ溝部の少なくとも一方の側壁が、保持用リング部材の締め付け力の増加に伴って、パイプ側鍔状部と継手側鍔状部との圧接力が高まるようにテーパ状を呈することが好ましい。
【0016】
このような構成を採用することにより、小径管部のさらなる強度アップが図られる。具体的には、内壁を面一にした状態で外形を減らすと、肉厚が減少することにあるが、保持用リング部材を小径管部に装着することにより、小径管部が折れにくくなる。また、保持用リング部材によってヘルール継手部から透明樹脂パイプがさらに抜けにくくなり、かつ、シール性能がさらに向上する。
【0017】
保持用リング部材の締め付け力の増加に伴ってパイプ側鍔状部と継手側鍔状部との圧接力が高まるため、シール部材のシール機能を発揮させ易く、パイプ側鍔状部と継手側鍔状部との間からの液漏れが予防される。
【0018】
上述のサニタリー配管において、透明樹脂パイプがポリメチルペンテン樹脂によって構成されており、へルール継手部がステンレス鋼によって構成されることが好ましい。
【0019】
この構成においては、離形性および撥水性に優れた素材を用いることにより、サニタリー配管の内壁に異物が付着しにくくなる。しかも、ポリメチルペンテン樹脂は透明性にも優れているため、サニタリー配管内部の流体の挙動を把握しやすくなり、かつ、堆積物の発生や微生物の繁殖といった不衛生な状態の早期発見が可能になる。さらには、ポリメチルペンテン樹脂は耐熱性にも優れているため、高温流体の移送が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、強度を保ちつつ既存の配管との互換性に優れたサニタリー配管を実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るサニタリー配管の概略を示す図である。
図2】保持用リング部材の概略構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るサニタリー配管の接続例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るサニタリー配管の接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1(A)および図1(B)は、本発明の一実施形態に係るサニタリー配管10の概略を示している。サニタリー配管10は、透明樹脂パイプ12と、この透明樹脂パイプ12に装着可能なヘルール継手部14とを備えている。透明樹脂パイプ12の素材の例としては、透明ポリ塩化ビニルやポリオレフィン系樹脂が挙げられ、ここではポリメチルペンテンが採用されている。ヘルール継手部14の素材の例としては、ステンレス鋼のような耐食性に優れた金属が挙げられる。ただし、透明樹脂パイプ12のヘルール継手部14の素材は、これらに限定されるものではない。
【0023】
透明樹脂パイプ12は、本体部126、小径管部122、およびパイプ側鍔状部124を備える。小径管部122は、本体部126の少なくとも一端部から延設されており、本体部126の外径より小さい外径になるように構成されている。本体部126および小径管部122の外径に差があるため、これらの境界には段部125が形成されることになる。
【0024】
この実施形態では、本体部126の両端に小径管部122がそれぞれ延設された構成を示しているが、本体部126の一端にのみ小径管部122を延設させても良い。パイプ側鍔状部124は、小径管部122に設けられている。
【0025】
一方で、へルール継手部14は、フランジ部142、継手側本体部146、および継手側鍔状部144を備えている。フランジ部142は後述のガスケットが装着される溝部を有している。継手側本体部146は、透明樹脂パイプ12との接続時に、小径管部122が内部にぴったり嵌まるように挿入可能に構成されている。
【0026】
継手側鍔状部144は、継手側本体部146に小径管部122が挿入された状態でパイプ側鍔状部124と当接するように構成されている。より具体的には、継手側鍔状部144とパイプ側鍔状部124との間にOリング18等のシール部材が介在するように配置されており、透明樹脂パイプ12とへルール継手部14との接続時には、継手側鍔状部144がパイプ側鍔状部124とOリング18を介して圧接する。
【0027】
透明樹脂パイプ12とへルール継手部14とを接続する時には、継手側本体部146に小径管部122を挿入し、継手側鍔状部144とパイプ側鍔状部124とをOリング18を介して圧接させた状態で、接続箇所に保持用リング部材16を適用することによって、この状態を保持している。
【0028】
保持用リング部材16は、図2(A)~図2(D)に示すように、同一構造の2つのリング片162によって構成されている。リング片162は、Oリング18を介して互いに圧接したパイプ側鍔状部124および継手側鍔状部144によって形成される鍔状部にぴったり嵌まるように構成された溝部165を有する本体部168を備える。この本体部168の両端には第1の係合部164および第2の係合部166が設けられている。
【0029】
リング片162を結合するときには、一方のリング片162の第1の係合部164と他方のリング片162の第2の係合部166とが係合するとともに、一方のリング片162の第2の係合部164と他方のリング片162の第1の係合部164とが係合する。
【0030】
パイプ側鍔状部124および継手側鍔状部144を本体部168の溝部165に嵌めつつ、2つのリング片162を係合させつつ、これらを外れないようにホースバンド(ホース用クランプ)によって締め付け固定することによって、保持用リング部材16によるパイプ側鍔状部124と継手側鍔状部144との圧接保持が行われる。
【0031】
パイプ側鍔状部124および継手側鍔状部144の装着は小径管部122において行われるため、小径管部122の強度アップが図られる。さらに、小径管部122の外周部に保持用リング部材16が装着されるため、小径管部122のさらなる強度アップが図られる。このため、サニタリー配管10の内壁を面一にするために小径管部122の肉厚を減らしたときでも、小径管部122に十分の強度が維持されるため、折れたり曲がったりしにくくなる。
【0032】
なお、保持用リング部材16は、他の配管部材と干渉しにくい位置に配置されているため、保持用リング部材16の存在がサニタリー配管10の配管作業に支障を来すことはない。
【0033】
上述のサニタリー配管10を組み立てるときには、図1(A)に示すように、透明樹脂パイプ12の小径管部122にヘルール継手部14が嵌められる。このとき、パイプ側鍔状部124および継手側鍔状部144がOリング18を介して互いに圧接することによってヘルール継手部14の位置決めがなされる。
【0034】
そして、図1(B)に示すように、パイプ側鍔状部124および継手側鍔状部144に、保持用リング部材16が装着される。この実施形態では、保持用リング部材16として、2分割式の保持用リング部材16の外周をさらにホースバンド(図示省略)にて固定する構成を採用しているが、これには限定されない。
【0035】
上述のプロセスを経て、図3(A)に示すようなサニタリー配管10が組み上がる。図3(B)に示すように、溝部165は、その少なくとも一方の側壁がテーパ状を呈している。このため、保持用リング部材16の締め付け力の増加に伴って、パイプ側鍔状部124と継手側鍔状部144との圧接力が高まる。この結果、サニタリー配管10において接続箇所からの液漏れが生じることが防止される。
【0036】
このサニタリー配管10は、図4に示すように、ガスケット30を挟みつつクランプ(図示省略)によって締め付けることによって、同種のサニタリー配管や各種の継手部材(ソケット、エルボ等)と接続することが可能になる。
【0037】
さらに、サニタリー配管10は、既存のサニタリー配管とも円滑に接続することが可能である。その理由は、小径管部122を設けたことによりヘルール継手部14(特に、フランジ部142の部分)の形状の自由度が増した結果、ヘルール継手部14(特に、フランジ部142の部分)の形状やサイズを既存のサニタリー配管と適合性のある形状やサイズにし易くなったためである。
【0038】
上述のサニタリー配管10によれば、異物の混入が厳密に管理される流体を移送する場合において、パイプ内の密閉性を確保することが可能になる。また、移送される流体が80℃以上の高温であっても円滑に移送することができる。
【0039】
さらに、サニタリー配管10を洗浄する際の分解や組立を容易に行うことが可能になる。しかも既存のサニタリー配管との互換性にも優れるため、既存の設備に導入しやすいというメリットがある。
【0040】
また、サニタリー配管10において、透明樹脂パイプ12、ヘルール継手部14、保持用リング部材16等において接着剤を用いていないため、ホースバンドを取り外すことによって、適宜、分解することができる。このため、配管のやり直し等も容易に行うことが可能であり、配管の自由度が高まる。
【0041】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
10-サニタリー配管
12-透明樹脂パイプ
14-ヘルール継手部
16-保持用リング部材
18-Oリング
30-ガスケット
122-小径管部
124-鍔状部
126-本体部
144-鍔状部
図1
図2
図3
図4