IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧 ▶ 東尾メック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-パイプ連結構造 図1
  • 特許-パイプ連結構造 図2
  • 特許-パイプ連結構造 図3
  • 特許-パイプ連結構造 図4
  • 特許-パイプ連結構造 図5
  • 特許-パイプ連結構造 図6
  • 特許-パイプ連結構造 図7
  • 特許-パイプ連結構造 図8
  • 特許-パイプ連結構造 図9
  • 特許-パイプ連結構造 図10
  • 特許-パイプ連結構造 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】パイプ連結構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/14 20060101AFI20240129BHJP
   E02D 5/24 20060101ALI20240129BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20240129BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20240129BHJP
   F16B 7/14 20060101ALI20240129BHJP
   F16B 21/18 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F16L37/14
E02D5/24 103
F16L21/00 E
F16L21/08 Z
F16B7/14 Z
F16B21/18 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020100766
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021195966
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221638
【氏名又は名称】東尾メック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】阿形 淳
(72)【発明者】
【氏名】妙中 真治
(72)【発明者】
【氏名】保田 秋生
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173373(JP,A)
【文献】特開平11-324569(JP,A)
【文献】特開2005-257046(JP,A)
【文献】登録実用新案第3193036(JP,U)
【文献】中国実用新案第201715159(CN,U)
【文献】米国特許第5584512(US,A)
【文献】特表平08-504021(JP,A)
【文献】米国特許第5636878(US,A)
【文献】特開2002-286183(JP,A)
【文献】特開2004-190758(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111878653(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/14
E02D 5/24
F16L 21/00
F16L 21/08
F16B 7/14
F16B 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの端部に挿入する挿入筒部を両端に有する円筒状ジョイントを介して一対の前記パイプ同士を同軸線上に連結するパイプ連結構造であって、
前記挿入筒部の外周面には、該外周面の全周にわたって延在する外周溝と、
前記パイプの端部の内周面には、該内周面の全周にわたって延在する内周溝と、
前記外周溝と前記内周溝のそれぞれに周方向にわたって嵌合することでパイプ連結状態とするC字状嵌込みリングと、を備え、
前記外周溝は、
前記C字状嵌込みリングの高さ寸法以上の深さ寸法、および前記C字状嵌込みリングの幅寸法以上の溝幅寸法を有する締結用溝部と、
管軸方向で該締結用溝部よりも離反する方向に向けて深さ寸法が小さくなる引張用溝部と、を有することを特徴とするパイプ連結構造。
【請求項2】
パイプの端部が挿入される外嵌筒部を両端に有する円筒状ジョイントを介して一対の前記パイプ同士を同軸線上に連結するパイプ連結構造であって、
前記外嵌筒部の内周面には、該内周面の全周にわたって延在する内周溝と、
前記パイプの端部の外周面には、該外周面の全周にわたって延在する外周溝と、
前記内周溝と前記外周溝のそれぞれに周方向にわたって嵌合することでパイプ連結状態とするC字状嵌込みリングと、を備え、
前記内周溝は、
前記C字状嵌込みリングの高さ寸法以上の深さ寸法、および前記C字状嵌込みリングの幅寸法以上の溝幅寸法を有する締結用溝部と、
管軸方向で該締結用溝部よりも離反する方向に向けて深さ寸法が小さくなる引張用溝部と、を有することを特徴とするパイプ連結構造。
【請求項3】
前記締結用溝部の第1溝幅寸法Lcおよび前記引張用溝部の第2溝幅寸法Ltは、前記C字状嵌込みリングの管軸方向の全幅寸法Lrに対して(1)式、(2)式の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のパイプ連結構造。
【数1】
【請求項4】
前記パイプの端部の第1溝深さ寸法Hp、前記円筒状ジョイントにおける前記締結用溝部の第2溝深さ寸法Hcおよび前記引張用溝部の第3溝深さ寸法Htは、前記C字状嵌込みリングの高さ寸法Hrに対して(3)式~(5)式の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のパイプ連結構造。
【数2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤でのトンネル掘削時において、鏡面の崩落防止を目的とした長尺鏡ボルト工法が用いられている。このような長尺鏡ボルト工法で用いられる鏡ボルトは、トンネルの切羽の断面に鋼管パイプ(以下、単にパイプという)が所定長の深さとなるように複数本が打ち込まれる。
このようなトンネル又は斜面の地盤補強や基礎杭等の土木工事用として用いられる小径鋼管(パイプ)同士を管軸方向に接合する技術としては溶接がまず考えられる。しかし、溶接による接合の場合には、天候や環境、溶接工の技量によって品質が左右されることや、溶接工の不足、溶接時間の長さなどの課題があり、現状では、短時間でパイプ同士を結合可能な機械式継手を採用するケースが多くなっている。
【0003】
機械式継手の代表的な構成として、以下の継手形式(1)~(3)が知られている。
継手形式(1)は、鋼管の外表面に雄ねじを加工し、内表面に雌ねじを加工して双方の雄ねじと雌ねじをねじ込む構造である。または、雌ねじを加工したカプラーによって雄ねじを加工した鋼管同士を連結する構造もある。継手形式(1)の場合には、小径鋼管において肉厚が薄いため、鋼管に直接ねじ加工をすることが難しい場合が多い。
継手形式(2)は、カプラーや内管等の継手部材を介して結合する構造である。この場合には、継手部材と鋼管をねじやボルト等で結合する必要があるが、ねじ継手は締め付けに時間がかかり、ボルトでは鋼管や継手の断面が欠損するため継手の引張強度を十分に確保しにくい。
継手形式(3)は、別途加工した継手を鋼管に工場溶接で取り付ける構造である。この場合には、鋼管に対してボルト穴の加工や溶接等をあらかじめ施す必要がある他、ボルトや接着剤など鋼管と継手以外の部品を調達する費用がかかる。
【0004】
これに対して、上述した継手形式(1)~(3)のような課題に対応する継手構造として、C字状嵌込みリングを使用したワンタッチ継手が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図11(a)~(d)は、ワンタッチ継手100の一例であって、C字状嵌込みリング103の要部断面図を示している。このワンタッチ継手100は、パイプ101と、パイプ101の内側に挿入される継手部材102と、パイプ101と継手部材102の両方に嵌合するC字状嵌込みリング103と、を備えている。継手部材102の外面102a、およびパイプ101の内面101aには、それぞれパイプ締結時にC字状嵌込みリング103が納まる収納溝104、105が管の周方向の全周にわたって予め加工されている。
【0005】
図11(a)~(d)に示すように、ワンタッチ継手100の締結方法の一例としては、まず継手部材102の外周収納溝104にC字状嵌込みリング103をセットし、パイプ101の管端から継手部材102を挿入していく。パイプ101の管端には予めテーパー面、あるいは曲面が形成されていて、管端にC字状嵌込みリング103が当たるとC字状嵌込みリング103の径がテーパー面に沿って徐々に縮径され、最終的にパイプ101の内径以下となる。これにより、パイプ101の内面にC字状嵌込みリング103が引っ掛からず継手部材102が挿入される。
そして、そのまま継手部材102を挿入し、C字状嵌込みリング103がパイプ101の内面の内周収納溝105に達すると、縮径されていたC字状嵌込みリング103が元の径に復元して戻りパイプ101の内径より大きくなる。これによりC字状嵌込みリング103が外周収納溝104及び内周収納溝105の両方に嵌め込まれた状態となり、継手部材102を引っ張ってもC字状嵌込みリング103が両収納溝104、105に掛止することで抜けることがなく、パイプ101と継手部材102とが連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-190758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のワンタッチ継手によるパイプ連結構造では、簡単な構造によりパイプ同士の連結を例えば人力でも容易に行うことができるが、パイプに対して引張強度が小さいという課題があった。
【0008】
ここで、図11(a)~(d)は、ワンタッチ継手100に引張荷重が作用した際の継手部材102とパイプ101の挙動を示している。パイプ101に引張荷重(図11の矢印F方向)が作用すると、図11(b)に示すようにC字状嵌込みリング103が継手部材102の外周収納溝104の一方の壁面104aと接触する。このとき、図11(c)、(d)に示すように一方の壁面104aがC字状嵌め込みリング103によって潰されるとともに、C字状嵌込みリング103が縮径して外周収納溝104の溝底に沈み込む方向(矢印P1方向)に回転力が作用する。これにより、パイプ101がC字状嵌込みリング103の外側に持ち上がって外面102aに沿って移動して離脱してしまい、パイプ101と継手部材102との連結が外れる。
【0009】
このようなことから、ワンタッチ継手において、C字状嵌込みリング103が引張荷重に抵抗して引張強度を高めることが求められており、その点で改良の余地があった。
【0010】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、結合させるパイプや部材の加工を最小限に抑えつつ、施工が簡易であり、かつ十分な引張強度を確保することができるパイプ連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係るパイプ連結構造では、パイプの端部に挿入する挿入筒部を両端に有する円筒状ジョイントを介して一対の前記パイプ同士を同軸線上に連結するパイプ連結構造であって、前記挿入筒部の外周面には、該外周面の全周にわたって延在する外周溝と、前記パイプの端部の内周面には、該内周面の全周にわたって延在する内周溝と、前記外周溝と前記内周溝のそれぞれに周方向にわたって嵌合することでパイプ連結状態とするC字状嵌込みリングと、を備え、前記外周溝は、前記C字状嵌込みリングの高さ寸法以上の深さ寸法、および前記C字状嵌込みリングの幅寸法以上の溝幅寸法を有する締結用溝部と、管軸方向で該締結用溝部よりも離反する方向に向けて深さ寸法が小さくなる引張用溝部と、を有することを特徴としている。
【0012】
本発明に係るパイプ連結構造では、パイプと円筒状ジョイントとが締結された状態において、パイプに形成された内周溝と円筒状ジョイントの挿入筒部に形成された外周溝の締結用溝部とにC字状嵌込みリングが嵌合される。パイプに引張荷重が作用すると、C字状嵌込みリングは外周溝の締結用溝部から引張用溝部に移動する。このとき、引張用溝部は締結用溝部よりも離反する方向に向けて深さ寸法が小さく設定されているので、C字状嵌込みリングの内周側に引張用溝部の溝底が位置し、C字状嵌込みリングの径方向内側に移動、あるいは変形するスペースがない状態となり、溝底から支持された状態となる。そのため、C字状嵌込みリングは、締結用溝部の溝底に沈み込む方向に回転力が作用することが抑制され、内周溝内に進入する方向に回転力が作用する。
つまり、回転力が作用したC字状嵌込みリングがパイプの引抜き方向への移動を規制することから、パイプ連結構造としての引張強度を向上させることができる。これにより、パイプがC字状嵌込みリングの外側に持ち上がっても、C字状嵌込みリングを超えて円筒状ジョイントの外周面に沿って抜け出す方向に移動して離脱しにくい構造となり、パイプと円筒状ジョイントとの連結が外れることを抑制することができる。
【0013】
このように、本発明では、外周溝に収納されるC字状嵌込みリングは、パイプと円筒状ジョイントとの締結時にはC字状嵌込みリングが下部に沈み込む空間を確保された締結用溝部が使用され、パイプに引張荷重が作用したときにはC字状嵌込みリングの内周側の空間を塞ぐ引張用溝部が使用され、外周溝に二つの機能をもたせて状況によって二つの機能を効果的に使い分けることができる。
このように本発明では、結合させるパイプや部材の加工を最小限に抑えた簡単な構造で、施工を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係るパイプ連結構造では、パイプの端部が挿入される外嵌筒部を両端に有する円筒状ジョイントを介して一対の前記パイプ同士を同軸線上に連結するパイプ連結構造であって、前記外嵌筒部の内周面には、該内周面の全周にわたって延在する内周溝と、前記パイプの端部の外周面には、該外周面の全周にわたって延在する外周溝と、前記内周溝と前記外周溝のそれぞれに周方向にわたって嵌合することでパイプ連結状態とするC字状嵌込みリングと、を備え、前記内周溝は、前記C字状嵌込みリングの高さ寸法以上の深さ寸法、および前記C字状嵌込みリングの幅寸法以上の溝幅寸法を有する締結用溝部と、管軸方向で該締結用溝部よりも離反する方向に向けて深さ寸法が小さくなる引張用溝部と、を有することを特徴としている。
【0015】
本発明に係るパイプ連結構造では、パイプと円筒状ジョイントとが締結された状態において、パイプに形成された外周溝と円筒状ジョイントの外嵌筒部に形成された内周溝の締結用溝部とにC字状嵌込みリングが嵌合される。パイプに引張荷重が作用すると、C字状嵌込みリングは内周溝の締結用溝部から引張用溝部に移動する。このとき、引張用溝部は締結用溝部よりも離反する方向に向けて深さ寸法が小さく設定されているので、C字状嵌込みリングの外周側に引張用溝部の溝底が位置し、C字状嵌込みリングの径方向外側に移動、あるいは変形するスペースがない状態となり、溝底から支持された状態となる。そのため、C字状嵌込みリングは、締結用溝部の溝底に沈み込む方向に回転力が作用することが抑制され、外周溝内に進入する方向に回転力が作用する。
つまり、回転力が作用したC字状嵌込みリングがパイプの引抜き方向への移動を規制することから、パイプ連結構造としての引張強度を向上させることができる。これにより、パイプがC字状嵌込みリングの内側に下がっても、C字状嵌込みリングを超えて円筒状ジョイントの内周面に沿って抜け出す方向に移動して離脱しにくい構造となり、パイプと円筒状ジョイントとの部材との連結が外れることを抑制することができる。
【0016】
このように、本発明では、内周溝に収納されるC字状嵌込みリングは、パイプと円筒状ジョイントとの締結時にはC字状嵌込みリングが下部に沈み込む空間を確保された締結用溝部が使用され、パイプに引張荷重が作用したときにはC字状嵌込みリングの外周側の空間を塞ぐ引張用溝部が使用され、内周溝に二つの機能をもたせて状況によって二つの機能を効果的に使い分けることができる。
このように本発明では、結合させるパイプや部材の加工を最小限に抑えた簡単な構造で、施工を容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係るパイプ連結構造では、前記締結用溝部の第1溝幅寸法Lcおよび前記引張用溝部の第2溝幅寸法Ltは、前記C字状嵌込みリングの管軸方向の全幅寸法Lrに対して(1)式、(2)式の関係を満たすことが好ましい。
【0018】
【数1】
【0019】
この場合には、C字状嵌込みリングの重心を引張用溝部の溝底によって支持することができ、C字状嵌込みリングが締結用溝部の溝底に沈み込む方向に回転力が作用することをより確実に抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係るパイプ連結構造では、前記パイプの端部の第1溝深さ寸法Hp、前記円筒状ジョイントにおける前記締結用溝部の第2溝深さ寸法Hcおよび前記引張用溝部の第3溝深さ寸法Htは、前記C字状嵌込みリングの高さ寸法Hrに対して(3)式~(5)式の関係を満たすことが好ましい。
【0021】
【数2】
【0022】
本発明では、パイプに引張荷重が作用した際に、C字状嵌込みリングがパイプの内周溝および円筒状ジョイントの外周溝に引っ掛かって係止し易くなり、パイプの引張荷重に抵抗することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のパイプ連結構造によれば、結合させるパイプや部材の加工を最小限に抑えつつ、施工が簡易であり、かつ十分な引張強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態によるパイプ連結構造を示す縦断面図である。
図2】C字状嵌込みリングの平面図である。
図3図1に示すC字状嵌込みリングの嵌合状態を示す要部拡大図である。
図4】引張荷重が作用したときのパイプ連結構造を示す縦断面図である。
図5】C字状嵌込みリングの嵌合状態を示す要部拡大図であって、(a)は引張荷重の作用前の図、(b)は引張荷重が作用した状態の図である。
図6】引張荷重が作用したときのC字状嵌込みリングの嵌合状態を示す要部拡大図であって、図3に対応する図である。
図7】(a)~(d)は、引張荷重が作用したときのC字状嵌込みリングの挙動を示す縦断面図である。
図8】実施例による引張試験結果を示す図である。
図9】第2実施形態によるパイプ連結構造を示す縦断面図である。
図10】変形例によるパイプ連結構造の外周溝を示す縦断面図である。
図11】(a)~(d)は、従来の引張荷重が作用したときのC字状嵌込みリングの挙動を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態によるパイプ連結構造について、図面に基づいて説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態によるパイプ連結構造1は、例えば地盤に打ち込むパイプ10(10A、10B)同士を円筒状ジョイント2を介して管軸O方向に締結する継手構造である。そして、本実施形態のパイプ連結構造1では、パイプ10A、10B同士を人力で容易に連結することが可能なワンタッチ継手である。
【0027】
パイプ連結構造1は、パイプ10のパイプ端部10aに挿入する挿入筒部2Aを両端に有する円筒状ジョイント2を介して一対のパイプ10A、10B同士を同軸線上に連結する継手構造である。
【0028】
パイプ連結構造1は、円筒状ジョイント2における挿入筒部2Aの外周面2aの全周にわたって延在する外周溝21と、パイプ10におけるパイプ端部10aの内周面10bの全周にわたって延在する内周溝11と、外周溝21と内周溝11のそれぞれに周方向にわたって嵌合することでパイプ連結状態とするC字状嵌込みリング3と、を備えている。
【0029】
ここで、以下の説明では、パイプ10A、10B及び円筒状ジョイント2において、それぞれの管軸O方向から見て管軸O回りに周回する方向を周方向といい、それぞれの管軸O方向に直交する径方向で管軸O側を内周側、内面といい、内周側及び内面の反対側を外周側、外面という。
【0030】
図2に示すC字状嵌込みリング3は、横断面形状が略矩形(図1及び図3参照)であり、リング状に形成された周方向の一部にリング開口部3aが形成されている。C字状嵌込みリング3は、リング開口部3aを開閉することで径方向に縮径及び拡径するように弾性変形可能となっている。C字状嵌込みリング3の外径寸法は、図1に示すパイプ10の内周面10bよりも大径となるように設定されている。
【0031】
パイプ10(10A、10B)は、例えばSTK400からなり、例えば管外径114.3mm、管内径102.6mmの短尺鋼管(例えば、長さ3m程度)に適用している。パイプ10は、地盤に打ち込む補強工法の用途として使用されるが、他の用途として用いられてもよい。パイプ10として、例えば、一般構造用炭素鋼鋼管、建築構造用炭素鋼鋼管などを用いることができる。
【0032】
図3に示すように、パイプ10のパイプ端部10a側の内周面10bには、全周にわたって延在する断面矩形状の内周溝11が形成されている。内周溝11には、後述する外周溝21との間でC字状嵌込みリング3が相互に嵌合される。そして、C字状嵌込みリング3が内周溝11と前記外周溝21との間に嵌合されたときにパイプ連結状態(図1参照)となり、パイプ10A、10Bの相互が回転可能、かつ引きや押し込みができない状態で連結される。
【0033】
内周溝11は、パイプ10の内周面10bにおいて全周にわたって同じ断面形状で凹んで形成されている。内周溝11は、管軸O方向に対向する第1内面11a、第2内面11bと、溝底側に位置する溝底面11cと、を有している。
【0034】
図1に示すように、パイプ10のパイプ端部10aに位置する開口内周縁部には、管軸Oに沿って管端側に向かうにしたがって漸次、内周面10bから外周面10cに向かう第1テーパー面12が形成されている。第1テーパー面12は、円筒状ジョイント2の挿入筒部2Aのパイプ10への挿入の際に、外周溝21に嵌込まれたC字状嵌込みリング3を縮径させる機能を有している。
【0035】
円筒状ジョイント2は、管軸O方向の中央凸部22を挟んだ両側のそれぞれに挿入筒部2Aを有している。一方の挿入筒部2A(ここでは紙面左側)には一方のパイプ10Aが外嵌された状態で連結され、他方の挿入筒部2A(ここでは紙面右側)には他方のパイプ10Bが外嵌された状態で連結される。円筒状ジョイント2の中央凸部22は、外周面2aから径方向の外側に向けて凸状に突出し、周方向に延在している。中央凸部22の外周面22aは、挿入筒部2Aに外嵌したパイプ10の外周面10cと面一となる。
【0036】
円筒状ジョイント2の挿入筒部2Aと中央凸部22との間には、管軸Oに沿って挿入筒部2Aから中央凸部22に向かうに従って漸次、拡径される第2テーパー面23が形成されている。第2テーパー面23は、パイプ連結状態では、相互に連結されたパイプ10A、10Bの第1テーパー面12に近接、または接した状態となる。
【0037】
挿入筒部2Aの外周面2aには、全周にわたって延在する断面矩形状の外周溝21が形成されている。外周溝21には、内周溝11との間でC字状嵌込みリング3が相互に嵌合される。そして、C字状嵌込みリング3が外周溝21と内周溝11との間に嵌合されたときにパイプ連結状態Tとなり、パイプ10A、10Bの相互が回転可能、かつ引きや押し込みができない状態で連結される。
【0038】
外周溝21は、図3に示すように、挿入筒部2Aの外周面2aにおいて全周にわたって同じ断面形状で凹んで形成されている。外周溝21は、C字状嵌込みリング3の高さ寸法Hr以上の深さ寸法Hcおよび幅寸法Lr以上の溝幅寸法Lcを有する締結用溝部24と、管軸O方向で締結用溝部24よりも離反する方向(管の引張方向E1)に向けて深さ寸法が小さくなる引張用溝部25と、を有する。
【0039】
締結用溝部24は、引抜き側内面24aと、底面24bと、引張用溝部25との境界に位置する段部24cと、を有している。
引張用溝部25は、段部24cから管軸O方向で管の引張方向E1に向けて深さが浅くなる傾斜底面25aと、傾斜底面25aの管の引張方向E1の端部に位置する挿入側内面25bと、を有している。挿入側内面25bは、傾斜底面25aから外周面2aに向けて管の引張方向E1に傾斜するテーパー形状に形成されている。
【0040】
次に、パイプ10に形成される内周溝11、円筒状ジョイント2の挿入筒部2Aに形成される外周溝21、及びC字状嵌込みリング3の具体的な構成について、図3及び図6等を用いて詳細に説明する。
【0041】
先ず、図3に示すように、外周溝21における深さ寸法が異なる二段形状の締結用溝部24と引張用溝部25の管軸O方向(図1参照)の長さLc,Ltについて説明する。
パイプ連結構造1では、締結用溝部24の長さ寸法(第1溝幅寸法Lc)と引張用溝部25の長さ寸法(第2溝幅寸法Lt)とは、C字状嵌込みリング3の管軸O方向の全幅寸法Lrに対して、(1)式、(2)式の関係を満たすように設定されている。
【0042】
【数3】
【0043】
このように、(1)式を満たして、パイプ連結状態においてC字状嵌込みリング3が位置する締結用溝部24の第1溝幅寸法LcがC字状嵌込みリング3の全幅寸法Lr以上とすることで、C字状嵌込みリング3が締結用溝部24に沈み込む幅寸法を確保することができる。
【0044】
一方で、パイプ10に引張荷重(矢印F)が作用する際において、C字状嵌込みリング3が位置する引張用溝部25については、必ずしも第2溝幅寸法LtがC字状嵌込みリング3の全幅寸法Lr以上である必要はないが、C字状嵌込みリング3が沈み込まないように下方から支持する必要がある。
そのため、引張用溝部25の第2溝幅寸法Ltは、全幅寸法Lrの2割以上を確保し、(2)式の範囲に設定される。第2溝幅寸法Ltを全幅寸法Lrの2割以上とすることで、以下に示すようにパイプ10の寸法公差による傾きを考慮することができる。
【0045】
図4に示す通り、パイプ10の寸法公差によっては継手をなす円筒状ジョイント2とパイプ10との間に不可避的に間隙が生じるため、パイプ10が管軸Oに対して角度θだけ傾く。このとき、図4の領域X1、X2を拡大した図をそれぞれ図5(a)、(b)に示している。領域X1を拡大した図5(a)は、図4において紙面下向きに曲げが作用したときの曲げの内弧円側を示している。一方、領域X2を拡大した図5(b)は、図4において紙面下向きに曲げが作用したときの曲げの外弧円側を示している。曲げの外弧円側では図6に示した状態となり、曲げの内弧円側では図5(b)に示すようにパイプ10と円筒状ジョイント2の溝(内周溝11と外周溝21)の位置にずれLdが生じるため、当初設定された第2溝幅寸法LtがずれLd分だけ実質的に短くなる。ここで、図5(b)に示す符号Dは、パイプ10の直径方向(管軸Oに直交する方向)を示している。なお、図4及び図5(a)、(b)は、説明を分かりやすくするために、図3に示すような外周溝21の引張用溝部25の挿入側内面25bがテーパー形状ではなく、管軸Oに直交する方向(パイプ10の直径方向)の面としている。
【0046】
例えば、STK400の管外径114.3mm、肉厚6.0mmのパイプ10を想定すれば、パイプ10の肉厚公差はJIS G344に定める通り-0.5~+0.6mmとなる。パイプ10と円筒状ジョイント2との初期隙間が0.6mmとなる場合には、円筒状ジョイント2とパイプ10の重なり長さLoを管外径と同程度の114.3mmとすれば角度θ=tan-1(0.6/114.3)=0.3°となる。
【0047】
このとき、溝位置のずれLdは図5(b)に示す幾何学的な関係より、管外径114.3mm×tanθ=0.6mmとなる。仮にC字状嵌込みリング3の全幅寸法Lrをパイプ10の鋼管肉厚と同程度の6.0mmとすれば、内周溝11と外周溝21との溝位置のずれLdはC字状嵌込みリング3の全幅寸法Lrの10%程度となる。このようにパイプ10の傾きにより溝のずれLdが生じ、有効な第2溝幅寸法Ltが短くなる可能性があるため、第2溝幅寸法Ltは全幅寸法Lrの2割以上を確保する必要がある。
【0048】
また、引張用溝部25の第2溝幅寸法Ltは、0.5Lr≦Lt≦Lrの範囲とすることがより好ましい。この場合、下限値を0.5Lrとすることにより、C字状嵌込みリング3の重心を引張用溝部25の傾斜底面25aによって下方から支持することができる。
【0049】
図6に示すように、パイプ10に引張荷重Fが作用する際には、C字状嵌込みリング3が管軸O方向で管の引張方向E1(図6で紙面左側)に移動して引張用溝部25に位置する。締結用溝部24は、パイプ連結状態Tにおいて、C字状嵌込みリング3の高さ寸法Hr以上の深さ寸法Hcとなるように設定されている。これにより締結用溝部24にC字状嵌込みリング3が位置し、C字状嵌込みリング3の全厚(高さ寸法Hr)が締結用溝部24に沈み込むことでスムーズに締結される。
また、引張用溝部25の深さ寸法Htは、C字状嵌込みリング3の高さ寸法Hrよりも小さく設定されている。これにより、C字状嵌込みリング3が引張用溝部25側に沈み込むことが回避され、C字状嵌込みリング3が外周溝21内で図6の紙面に向かって反時計回り(符号P2方向)に回転変形する(図7(d)参照)。
【0050】
そして、パイプ10の端部における内周溝11の第1溝深さ寸法Hp、円筒状ジョイント2の外周溝21における締結用溝部24の第2溝深さ寸法Hcおよび引張用溝部25の第3溝深さ寸法Htは、C字状嵌込みリング3の高さ寸法Hrに対して、(3)式~(5)式の関係を満たすように設定されている。
【0051】
【数4】
【0052】
パイプ連結状態Tにおいて、C字状嵌込みリング3が位置する締結用溝部24はC字状嵌込みリング3の全体が沈み込む深さが必要なため(3)式となる。また、幾何学的関係から、パイプ10の内周溝11の第1溝深さ寸法Hp、円筒状ジョイント2の外周溝21における引張用溝部25の第2溝深さ寸法Htの合計がC字状嵌込みリング3の高さ寸法Hr以上でないとC字状嵌込みリング3が円筒状ジョイント2内に存在できないため(4)式となる。
【0053】
一方で、引張荷重Fが作用した際に、C字状嵌込みリング3がパイプ10の内周溝11および円筒状ジョイント2の外周溝21に引っ掛かって係止しない状態であると、引張荷重に抵抗できないため、外周溝21の深さ寸法を採用して上述した(5)式となる。なお、円筒状ジョイント2とパイプ10に極端な強度差が無い限り、パイプ10の内周溝11と円筒状ジョイント2の外周溝21がそれぞれC字状嵌込みリング3と接触する面積がなるべく等しい方がバランスが良いことから、より好ましくは0.4Hr≦Ht≦0.6Hrとなる。
【0054】
ここで、上記(3)式~(5)式では、パイプ10と円筒状ジョイント2との間に生じる公差分の隙間Hbを考慮することが好ましい。すなわち、(3)式~(5)式は、隙間Hbが第1溝深さ寸法Hp、第2溝深さ寸法Hcおよび第3溝深さ寸法Htのいずれかに含まれるものとして設定することができる。あるいは、(3)式をHc+Hb≧Hr、(4)式を、Hp+Ht+Hb≧Hrとし、(5)式を、0.1Hr≦Ht+Hb≦0.9Hrとしてもよい。隙間Hbの大きさは、直径寸法で0.3~1.0mm程度である。
【0055】
次に、上述したパイプ連結構造1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態による図1及び図3に示すパイプ連結構造1では、円筒状ジョイント2の外周溝21にC字状嵌込みリング3を嵌合させてセットしてから、円筒状ジョイント2の挿入筒部2Aをパイプ端部10aの内側に挿入(あるいは、パイプ10を円筒状ジョイント2の挿入筒部2Aに外嵌)することにより、テーパー面12に沿ってC字状嵌込みリング3が徐々に縮径され、パイプ10の内周面10bの内径以下の径寸法になって外周溝21の締結用溝部24内に全体が押し込まれる。これにより、パイプ10の内周面10bにC字状嵌込みリング3が引っ掛からずに円筒状ジョイント2をパイプ10内に挿入される。
【0056】
その後、さらに円筒状ジョイント2をパイプ10に挿入(あるいは、パイプ10を円筒状ジョイント2に深く外嵌)することで、図1及び図3に示すように、C字状嵌込みリング3がパイプ10の内周溝11の位置で弾発力によって拡径し、C字状嵌め込みリング103の外周側の一部が内周溝11に嵌合する。これにより、C字状嵌込みリング3が外周溝21と内周溝11との間に嵌合されたパイプ連結状態(図1参照)となり、パイプ10A、10Bの相互が回転可能、かつ引きや押し込みができない状態で連結される。
【0057】
本実施形態によるパイプ連結構造1では、図7(a)、(b)に示すように、パイプ10に引張荷重Fが作用すると、C字状嵌込みリング3は外周溝21の締結用溝部24から引張用溝部25に移動する。このとき、引張用溝部25は締結用溝部24よりも離反する方向(管の引張方向E1)に向けて深さ寸法が小さく設定されているので、C字状嵌込みリング3の内周側に引張用溝部25の傾斜底面25aが位置し、C字状嵌込みリング3の径方向内側に移動、あるいは変形するスペースがない状態となり、傾斜底面25aから支持された状態となる。そのため、C字状嵌込みリング3は、締結用溝部24の溝底に沈み込む方向(図7(d)において時計回りの方向P2)に回転力が作用することが抑制され、図7(c)、(d)に示すように、内周溝11内に進入する方向(図中の矢印P1)に回転力が作用する。
【0058】
つまり、図7(b)、(c)に示すように、矢印P1方向(図7の紙面で反時計回りの方法)に回転力が作用したC字状嵌込みリング3がパイプ10の引抜き方向(引張荷重Fの方向)への移動を規制することから、パイプ連結構造1としての引張強度を向上させることができる。これにより、パイプ10がC字状嵌込みリング3の外側に持ち上がっても、C字状嵌込みリング3を超えて円筒状ジョイント2の外周面2aに沿って抜け出す方向に移動して離脱しにくい構造となり、パイプ10と円筒状ジョイント2との連結が外れることを抑制することができる。
【0059】
このように、本実施形態では、外周溝21に収納されるC字状嵌込みリング3は、パイプ10と円筒状ジョイント2との締結時にはC字状嵌込みリング3が下部に沈み込む空間を確保された締結用溝部24が使用され、パイプ10に引張荷重Fが作用したときにはC字状嵌込みリング3の内周側の空間を塞ぐ引張用溝部25が使用され、外周溝21に二つの機能をもたせて状況によって二つの機能を効果的に使い分けることができる。
このように本実施形態では、結合させるパイプ10や部材の加工を最小限に抑えた簡単な構造で、施工を容易に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態では、図3に示すように、締結用溝部24の第1溝幅寸法Lcおよび引張用溝部25の第2溝幅寸法LtがC字状嵌込みリングの管軸方向の全幅寸法Lrに対して上記(1)式、(2)式の関係を満たすように設定されている。そのため、C字状嵌込みリング3の重心を引張用溝部25の傾斜底面25aによって支持することができ、C字状嵌込みリング3が締結用溝部24の溝底に沈み込む方向に回転力が作用することをより確実に抑制することができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、パイプ10の端部の第1溝深さ寸法Hp、円筒状ジョイント2における締結用溝部24の第2溝深さ寸法Hcおよび引張用溝部25の第3溝深さ寸法Htが、C字状嵌込みリング3の高さ寸法Hrに対して、上述した(3)式~(5)式の関係を満たすように設定されている。そのため、パイプ10に引張荷重が作用した際に、C字状嵌込みリング3がパイプ10の内周溝11および円筒状ジョイント2の外周溝21に引っ掛かって係止し易くなり、パイプ10の引張荷重Fに抵抗することができる。
【0062】
上述した本実施形態によるパイプ連結構造1では、結合させるパイプ10A、10Bや円筒状ジョイント2等の部材の加工を最小限に抑えつつ、施工が簡易であり、かつ十分な引張強度を確保することができる。
【0063】
次に、上述した実施形態によるパイプ連結構造1の効果を裏付けるために行った実施例について以下説明する。
【0064】
(実施例)
実施例では、上述したパイプ連結構造1の効果を確認するために、弾塑性有限要素法(FEA)によるFEAモデルを作成して数値シミュレーション解析を行い、パイプ連結構造1のパイプ10に引張荷重Fを作用させたときの継手変形挙動の構造解析を行って、その効果を確認した。
【0065】
図7(a)~(d)は、本実施例の解析結果を模式的に示した要部断面図でもある。この結果、C字状嵌込みリング3が紙面に対して反時計回り(矢印P2方向)に回転し、パイプ10と円筒状ジョイントの早期の離脱が抑止されていることを確認できた。
【0066】
図8は、上述した実施形態と同様に外周溝に締結用溝部と引張用溝部とを設けた実施例と、引張用溝部が設けられていない従来の外周溝からなる比較例で引張試験を行い、変位(mm)と荷重(kN)の関係を示したグラフである。この結果、実施例の引張荷重が比較例よりも大きくなっていることを確認できた。
【0067】
次に、本発明のパイプ連結構造の他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
【0068】
(第2実施形態)
図9に示す第2実施形態によるパイプ連結構造1Aについて説明する。
円筒状ジョイント2は、パイプ端部10aの外側に嵌合する外嵌筒部2Bを有し、外嵌筒部2Bの内周面2bに内周溝26が形成され、パイプ端部10aの外周面10cに外周溝13が形成されている。
この場合、パイプ連結状態において内周溝26と外周溝13との間にC字状嵌込みリング3が嵌合される。そして、内周溝26は、C字状嵌込みリング3の高さ寸法以上の深さ寸法、およびC字状嵌込みリング3の幅寸法以上の溝幅寸法を有する締結用溝部27と、管軸O方向で締結用溝部27よりも離反する方向に向けて深さ寸法が小さくなる引張用溝部28と、を有する。
【0069】
第2実施形態によるパイプ連結構造1Aでは、パイプ10に引張荷重が作用すると、C字状嵌込みリング3は内周溝26の締結用溝部27から引張用溝部28に移動する。このとき、引張用溝部28は締結用溝部27よりも離反する方向に向けて深さ寸法が小さく設定されているので、C字状嵌込みリング3の外周側に引張用溝部28の傾斜底面28a(溝底)が位置し、C字状嵌込みリング3の径方向外側に移動、あるいは変形するスペースがない状態となり、傾斜底面28aから支持された状態となる。
【0070】
そのため、C字状嵌込みリング3は、締結用溝部27の溝底に沈み込む方向に回転力が作用することが抑制され、外周溝13内に進入する方向に回転力が作用する。つまり、回転力が作用したC字状嵌込みリング3がパイプ10の引抜き方向への移動を規制することから、パイプ連結構造1Aとしての引張強度を向上させることができる。これにより、パイプ10がC字状嵌込みリング3の内側に下がっても、C字状嵌込みリング3を超えて円筒状ジョイント2の内周面2bに沿って抜け出す方向に移動して離脱しにくい構造となり、パイプ10と円筒状ジョイント2との部材との連結が外れることを抑制することができる。
【0071】
このように、第2実施形態によるパイプ連結構造1Aでは、内周溝26に収納されるC字状嵌込みリングは、パイプ10と円筒状ジョイント2との締結時にはC字状嵌込みリング3が下部に沈み込む空間を確保された締結用溝部27が使用され、パイプ10に引張荷重が作用したときにはC字状嵌込みリング3の外周側の空間を塞ぐ引張用溝部28が使用され、内周溝26に二つの機能をもたせて状況によって二つの機能を効果的に使い分けることができる。
このように本実施形態では、結合させるパイプ10や部材の加工を最小限に抑えた簡単な構造で、施工を容易に行うことができる。
【0072】
以上、本発明によるパイプ連結構造の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0073】
例えば、円筒状ジョイント2の外周溝21の溝形状は、本実施形態に限定されることはない。例えば、図10に示す変形例では、外周溝21Aの引張用溝部25Aは、挿入側内面25dが周方向からみて挿入筒部2Aの外周面2aに対して直交する方向に延在している。
【0074】
また、本実施形態では、締結用溝部の第1溝幅寸法Lcおよび引張用溝部の第2溝幅寸法Ltは、C字状嵌込みリングの管軸方向の全幅寸法Lrに対して上述した(1)式、(2)式の関係を満たす構成としているが、このような関係式を満たすことに限定されることはない。
【0075】
さらに、本実施形態では、パイプの端部の第1溝深さ寸法Hp、円筒状ジョイントにおける締結用溝部の第2溝深さ寸法Hcおよび引張用溝部の第3溝深さ寸法Htは、C字状嵌込みリングの高さ寸法Hrに対して上述した(3)式~(5)式の関係を満たす構成としているが、このような関係式を満たすことに限定されることはない。
【0076】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0077】
1、1A パイプ連結構造
2 円筒状ジョイント
2A 挿入筒部
2B 外嵌筒部
3 C字状嵌込みリング
10、10A、10B パイプ
11 内周溝
13 外周溝
21 外周溝
24 締結用溝部
25、25A 引張用溝部
25a 傾斜底面(溝底)
25d 挿入側内面
26 内周溝
27 締結用溝部
28 引張用溝部
O 管軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11