IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 余合ホーム&モビリティ株式会社の特許一覧 ▶ エース産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図1
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図2
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図3
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図4
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図5
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図6
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図7
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図8
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図9
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図10
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図11
  • 特許-開き戸駆動ユニット 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】開き戸駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/611 20150101AFI20240129BHJP
【FI】
E05F15/611
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023183753
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-12-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年8月30日~9月1日に第7回高性能建材・住設EXPO大阪にて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000250144
【氏名又は名称】余合ホーム&モビリティ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598092328
【氏名又は名称】エース産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】猪股 悠資
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭46-29(JP,U)
【文献】特開2000-314270(JP,A)
【文献】特開2017-160710(JP,A)
【文献】特開昭58-213974(JP,A)
【文献】特開2000-80859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/611-15/662
E05F 3/00 -5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き戸により開閉される開口を形成する開口部材に取り付けられて、前記開口の左右方向に沿って直線移動可能に設けられる可動子を有し、前記可動子を駆動するリニアモータと、
一端が前記開口部材の側において上下方向の軸回りに回転可能に支持され、他端が前記開き戸の側において前記開き戸に対して相対的に移動可能に支持される、カム溝を有したリンク部材と、
前記開き戸に取り付けられ、前記リンク部材の前記他端を前記開き戸に対して相対的に移動可能に支持する支持部と、
前記可動子に支持されて、前記カム溝に係合する係合部とを備え、
前記可動子の直線移動に伴い前記係合部を前記カム溝に沿って移動させ、前記係合部の移動に伴い、前記リンク部材を、前記他端と前記開き戸との相対的な移動を伴いつつ前記軸回りに回転させ、前記リンク部材の回転に伴い前記開き戸を回転させる、
開き戸駆動ユニット。
【請求項2】
前記カム溝は曲線部を含む形状に形成される請求項1に記載の開き戸駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向の軸回りに回転する開き戸を駆動する開き戸駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
開き戸を駆動する装置として下記特許文献1の提案がある。特許文献1の装置では、リニアモータがドア(開き戸)の定置部材の上に取り付けられる。リニアモータの回転子板(可動部材)がドアの上方に取り付けられたフレームないしはシャシに取り付けられている。ドア上に取り付けられているローラピンが上記回転子板に設けられているカム溝と係合されている。そして、回転子板が定置部材の左右方向に移動することで、ローラピンがカム溝内を移動し、その移動に伴い開き戸を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭46-29号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の技術は、開き戸の回転軸と、リニアモータの駆動力が開き戸に作用する点(ローラピンの位置)との距離が短いため、リニアモータの駆動力を大きくしないと、開き戸を開閉できない。
【0005】
そこで、本発明は、リニアモータによる開き戸の駆動をしやすくできる開き戸駆動ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開き戸駆動ユニットは、
開き戸により開閉される開口を形成する開口部材に取り付けられて、前記開口の左右方向に沿って直線移動可能に設けられる可動子を有し、前記可動子を駆動するリニアモータと、
一端が前記開口部材の側において上下方向の軸回りに回転可能に支持され、他端が前記開き戸の側において前記開き戸に対して相対的に移動可能に支持される、カム溝を有したリンク部材と、
前記開き戸に取り付けられ、前記リンク部材の前記他端を前記開き戸に対して相対的に移動可能に支持する支持部と、
前記可動子に支持されて、前記カム溝に係合する係合部とを備え、
前記可動子の直線移動に伴い前記係合部を前記カム溝に沿って移動させ、前記係合部の移動に伴い、前記リンク部材を、前記他端と前記開き戸との相対的な移動を伴いつつ前記軸回りに回転させ、前記リンク部材の回転に伴い前記開き戸を回転させる。
【0007】
これによれば、リニアモータの可動子の移動によりリンク部材を回転させ、そのリンク部材の回転モーメントを開き戸に作用させることで、開き戸を回転させる。これによって、開き戸を駆動しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】壁部に設けられた開き戸及びそれを駆動する開き戸駆動ユニットの正面図である。
図2図1のA部の拡大図である。
図3】開き戸、開き戸駆動ユニット及び壁部を上方から見た図であって、開き戸が閉じた状態の図である。
図4】開き戸、開き戸駆動ユニット及び壁部を上方から見た図であって、開き戸が開閉動作する途中の状態の図である。
図5】開き戸、開き戸駆動ユニット及び壁部を上方から見た図であって、開き戸が開いた状態の図である。
図6】開き戸、開き戸駆動ユニット及び壁部の斜視図であって、開き戸が閉じた状態の図である。
図7】開き戸、開き戸駆動ユニット及び壁部の斜視図であって、開き戸が開閉動作する途中の状態の図である。
図8】開き戸、開き戸駆動ユニット及び壁部の斜視図であって、開き戸が開いた状態の図である。
図9】実施例の開き戸駆動ユニット及び開き戸を上方から見た図であって、リニアモータの推力を求めるための各変数又は定数の定義を説明する図である。
図10】比較例の開き戸駆動ユニット及び開き戸を上方から見た図である。
図11】実施例及び比較例における可動子の移動量(リニア移動量)と推力の関係を示す図である。
図12】実施例と比較例における可動子の移動量(リニア移動量)と推力変化率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1に示す開き戸100は、空間を仕切る開口部材としての壁部200に、上下方向を向いた回転軸線L1回りに回転可能に取り付けられる。回転軸線L1は開き戸100の左右方向における一方の端部100aの近傍に設定される。開き戸100は、回転軸線L1回りに回転することで、壁部200が形成する開口201(図3図5図7図8も参照)を開閉する。開き戸100は、回転軸線L1を規定する取付部202(図7参照)により、壁部200に取り付けられる。取付部202は、例えば、開き戸100の左右方向における一方の端部100aの上部及び下部のそれぞれに取り付けられる。また、開き戸100は、図1の紙面の奥側に向かって開く。図3図5の上面図を参照すれば、開き戸100は、開く際には回転軸線L1の位置を中心Oとした時計回りに回転し、閉じる際には反時計回りに回転する。なお、図3図5では、後述のリンク部材8よりも上方に位置する後述のリニアモータ2(可動子5)を想像線で図示している。また、壁部200を、リンク部材8及び支持部13よりも下方位置で切った断面として図示している。
【0010】
図1に示すように、開き戸100を自動で回転させる開き戸駆動ユニット1(以下、単にユニットという場合がある)が設けられる。ユニット1は例えば既存の開き戸100及び壁部200に後付けされる。ユニット1は、図2に示すように、リニアモータ2を備える。リニアモータ2は、磁石の吸引及び反発を利用して直線方向に推力を得る装置である。ここで、図3に示すように、壁部2の両表面200a、200bのうち、開き戸100の開き方向A側に面した表面200aを第1表面、開き方向Aの反対側に面した表面200bを第2表面とする。リニアモータ2は、第2表面200bにおける開口201の上方位置に、ネジ等により後付けで取り付け可能に構成される。
【0011】
図2はリニアモータ2の正面図を示すとともに、リニアモータ2の筐体3内の部分3~7を破線で示している。図2に示すように、リニアモータ2は、筐体3と固定子4と可動子5とローラ6とレール7とを含んで構成される。筐体3は、長手状に形成されて、固定子4、可動子5、ローラ6、及びレール7を収容する。筐体3は、その長手方向が開口201の左右方向(間口方向)を向くように、ネジ等で壁部200に取り付けられる。
【0012】
固定子4は、可動子5に間隔をあけて対向した位置に設けられて、可動子5に対向した位置に磁極を発生させる。固定子4は例えば複数の電磁石から構成される。これら電磁石は、筐体3内において、筐体3の長手方向に沿って配置される。なお、各電磁石はコイル、鉄芯等から構成されて、コイルに流す電流の向きに応じて、可動子5の側の磁極をN極又はS極に切り替える。固定子4(各電磁石)は、リニアモータ2が壁部200に取り付けられた状態で、開口201の左右方向に沿って配置される。固定子4の位置は固定されており、すなわち、可動子5の移動及び開き戸100の開閉動作にかかわらず、固定子4は移動しない。
【0013】
可動子5は、固定子4に間隔をあけて対向した位置に設けられて、固定子4に対向した位置に磁極を発生させる。可動子5は例えば複数の永久磁石から構成される。これら永久磁石は、筐体3内において、筐体3の長手方向に沿って配置される。可動子5(永久磁石)は、筐体3の長手方向に沿ってN極、S極が交互に現れるように構成される。可動子5は、リニアモータ2が壁部200に取り付けられた状態で、開口201の左右方向に沿って配置される。
【0014】
可動子5は、筐体3の長手方向に沿って直線移動可能に設けられる。言い換えれば、可動子5は、壁部200に取り付けられた状態で開口201の左右方向に沿って直線移動可能に設けられる。具体的には、可動子5の例えば下面にローラ6が取り付けられている。また、筐体3の長手方向に沿って、ローラ6を案内するレール7が設けられる。
【0015】
可動子5は固定子4との吸引又は反発に基づいて、開口201の左右方向における第1方向(具体的には図2の紙面の右方向)に移動し、又は、第1方向の反対の第2方向(具体的には図2の紙面の左方向)に移動する。第1方向は、開き戸100を開動作させる際の可動子5の移動方向である。第2方向は、開き戸100を閉動作させる際の可動子5の移動方向である。
【0016】
ユニット1は、リニアモータ2によって駆動されるリンク部材8を備える。リンク部材8は、開き戸100の、開き方向A(図3参照)の反対側の表面100cの上部に対面した位置に設けられる。リンク部材8は、長手状の板状に形成される。リンク部材8は、壁部200と開き戸100との間を連結するように後付け可能に構成される。詳しくは、図2に示すように、リンク部材8の、長手方向における一端には回転軸9が取り付けられている。回転軸9はその中心軸線が上下方向を向くように設けられる。回転軸9は開き戸100の回転軸線L1(図1参照)とは異なる位置に設けられる。回転軸9は、軸支持部10に支持されている。軸支持部10はリニアモータ2の筐体3に支持されている。リンク部材8は、回転軸9の軸線回りに回転可能に設けられる。このように、リンク部材8の一端は、回転軸9、軸支持部10、筐体3を介して、壁部200に支持される。
【0017】
リンク部材8の、長手方向における他端(回転軸9が設けられる反対側の端部)にはピン11が取り付けられる。ピン11はその中心軸線が上下方向を向くように設けられる。ピン11は自身の中心軸線回りに回転自在に設けられる。ピン11及びそれが取り付けられるリンク部材8の端部は、開き戸100の側に支持されて、開き戸100に対して相対的に移動可能に設けられる。
【0018】
詳しくは、ユニット1は、ピン11を支持する支持部13を備える。支持部13は、開き戸100に後付けで取り付け可能に構成される。支持部13は、開き戸100の、開き方向A(図3参照)の反対側の表面100cの上部に、ネジ等で取り付けられる。図3において、開き戸100の左右方向における両端部100a、100bのうち、開き戸100の回転中心O(回転軸線L1(図1参照))側の端部100aを開き戸100の基端とし、その反対側の端部100bを開き戸100の先端とする。支持部13は、開き戸100の左右方向における、基端100aよりも先端100bに近い位置に取り付けられる。
【0019】
図3図5に示すように、支持部13には、長手状のガイド溝14が形成される。ガイド溝14は、支持部13を上下方向に貫通する形態で形成される。ガイド溝14は、支持部13が開き戸100に取り付けられた状態で、開き戸100の左右方向に平行に延びる。
【0020】
ピン11は、ガイド溝14に嵌入されており、ガイド溝14に沿って移動可能に設けられる。ピン11は、ガイド溝14に沿った方向以外の方向には、開き戸100に対して相対的な移動が不能に設けられる。このように、ピン11及びそれが取り付けられるリンク部材8の端部は、開き戸100に対して相対的に、開き戸100の表面100cに沿って開き戸100の左右方向にスライド移動可能に設けられる。
【0021】
以下では、回転軸9をリンク部材8の基端という場合がある。また、ピン11をリンク部材8の先端という場合がある。リンク部材8の基端9及び先端11の位置についてさらに詳しく説明する。図3に示すように、開き戸100が閉じた状態で、基端9は、壁部200の左右方向B又は開き戸100の左右方向Cにおける、開き戸100の先端100bよりも基端100aに近い位置に設けられる。基端9は、図3図5に示すように、開き戸100の回転中心Oよりも、開口201の左右方向Bにおける中心側(図3図5の紙面の左側)に寄った位置に設けられる。また、基端9は、開き戸100が閉じた状態(図3の状態)で、開き戸100の表面100cの法線方向Dにおける、先端11よりも表面100cから遠い位置に設けられる。すなわち、開き戸100が閉じた状態で、表面100cと基端9との距離は、表面100cと先端11との距離よりも大きい。
【0022】
また、基端9と先端11とを結ぶ仮想線L2をリンク部材8の長手方向線としたとき、長手方向線L2は、開き戸100が閉じた状態(図3の状態)で、開き戸100の表面100cに対して角度を持った方向に延びている。長手方向線L2は、開き戸100が全開した状態(図5の状態)で、表面100cに対して略平行に位置する。言い換えれば、開き戸100が全開した状態での、長手方向線L2と表面100cとの成す角度は、開き戸100が閉じた状態でのその角度よりも小さい。
【0023】
リンク部材8の先端11は、開き戸100が閉じた状態(図3の状態)で、開き戸100の先端100b付近に配置される。先端11は、開き戸100が全開の状態(図5の状態)においても、開き戸100の左右方向Cにおける、開き戸100の基端100aよりも先端100bに近い位置に配置される。また、先端11は、図3に示すように、開き戸100が閉じた状態で、ガイド溝14の一端14aに位置してよい。先端11は、図5に示すように、開き戸100が全開の状態で、ガイド溝14の他端14bに位置してよい。
【0024】
先端11と基端9との距離は例えば開き戸100の左右幅の0.5倍より大きく、好ましくは0.7倍より大きい。これによれば、リンク部材8から開き戸100に作用させる回転モーメントを大きくできる。また、先端11と基端9との距離は、例えば開き戸100の左右幅より小さいとしてよい。これによれば、リンク部材8が大きくなりすぎるのを抑制でき、ユニット1を小型化できる。
【0025】
図3図5に示すように、リンク部材8はカム溝12を有する。カム溝12は、リニアモータ2の直線方向の推力を、回転軸9回りの回転運動に変換するための溝である。カム溝12は、リンク部材8の上面と下面との間を貫通する形態で形成される。カム溝12は、リンク部材8の長手方向に沿って長手形状に形成される。カム溝12は、リンク部材8が壁部200及び開き戸100に支持された状態で、水平方向(上下方向に直角な方向)に延びるように形成される。
【0026】
カム溝12の長手方向における第1端部12aは、リンク部材8の先端11よりも基端9に近い位置に設けられてよい。カム溝12の長手方向における第2端部12bは、基端9よりも先端11に近い位置に設けられてよい。第1端部12aと基端9との距離は、第2端部12bと先端11との距離よりも小さいとしてよい。また、先端11と第1端部12aとの距離は、先端11と基端9との距離よりも小さいとしてよい。基端9と第2端部12bとの距離は基端9と先端11との距離よりも小さいとしてよい。カム溝12の長手方向における長さは、リンク部材8の先端11と基端9との距離よりも短く、基端9と第1端部12aとの距離よりも長く、先端11と第2端部12bとの距離よりも長くてよい。
【0027】
リンク部材8の上面内の領域を、長手方向線L2を境に開き戸100の表面100cに近い側の第1領域と、その反対の第2領域とに分ける。この場合に、第1端部12aは例えば上記第2領域に設けられてよい。第2端部12bは長手方向線L2上、又は長手方向線L2の近傍に設けられてよい。カム溝12の大部分が第2領域に位置してよい。
【0028】
カム溝12は曲線状に延びている。詳しくは、カム溝12は、第1端部12aから第2端部12bまでの全区間で曲線部のみから構成され、直線部を含んでいない。また、カム溝12は、一定曲率の円弧状に形成されている。すなわち、カム溝12の曲率は、第1端部12aから第2端部12bまでの間で変化しない。ここで、リンク部材8の長手方向に延びた縁部のうち、開き戸100から遠い側の縁部8a(図4参照)を遠位縁部と定義する。カム溝12は、第1端部12aと第2端部12bとを結ぶ仮想直線(図示外)よりも、遠位縁部8a側に膨らんだ円弧状に形成される。また、カム溝12は、第1端部12aから第2端部12bに向かうにしたがって徐々に長手方向線L2との距離が変化するように形成される。より詳しくは、本実施形態では、第1端部12aと長手方向線L2との距離は、第2端部12bと長手方向線L2との距離よりも大きい。そして、カム溝12と長手方向線L2との距離は、例えば第2端部12bに近づくにしたがって徐々に小さくなる。
【0029】
可動子5の移動方向と、カム溝12の延設方向との成す角度φ(図4参照)が、後述のカムピン15と回転軸9との距離が小さいほど大きくなるように、カム溝12の形状が定められる。より具体的には、カムピン15がカム溝12の第1端部12a付近に位置する時(図5の時)の角度φのほうが、第2端部12b付近に位置する時(図3の時)の角度φよりも大きい。カムピン15がカム溝12の第1端部12a付近に位置する時(図5の時)の角度φは略90°に定められる。角度φは、開き戸100が開くにしたがって次第に大きくなる。また、カムピン15と回転軸9との距離は、開き戸100が開くにしたがって次第に小さくなる。
【0030】
なお、カム溝12は図3図5に示す形状以外の形状でもよい。具体的には、カム溝12の、端部12a、12b付近の部分を端付近部、端付近部以外の部分を中間部と定義する。この場合、例えば、カム溝12の中間部は一定曲率の円弧状とし、端付近部は、中間部とは異なる形状又は曲率の曲線部又は直線部としてもよい。また、カム溝12は曲率が異なる複数の曲線部から構成されてもよいし、傾きが異なる複数の直線部から構成されてもよい。また、カム溝12は、曲線部と直線部の双方を含む形状でもよい。
【0031】
ユニット1は、カム溝12に係合する係合部としてのカムピン15(図2図8参照)を備える。カムピン15はカム溝12に嵌入される。カムピン15は上下方向の軸線回りに回転自在に設けられる。図2に示すように、カムピン15は、支持部16に支持される。支持部16は、図3図6に示すように、上下方向に延びた第1部分16aと、第1部分16aの下端から直角に屈曲して水平方向に延びた第2部分16bとを含む。第1部分16aは、壁部200の表面200a、200bに直角な方向における開口201の外側に位置する。第2部分16bは、壁部200の表面200a、200bに直角な方向において開口201の外側から内側に入るように設けられる。第1部分16aはリニアモータ2の可動子5に支持される。カムピン15は第2部分16bに取り付けられる。支持部16及びこれに支持されるカムピン15は、可動子5の移動に伴って開口201の左右方向に沿って直線移動する。
【0032】
図3に示すように、カムピン15は、開き戸100が閉じた状態で、カム溝12の第2端部12bに近い位置に設けられる。カムピン15は、開き戸100が閉じた状態で、リンク部材8の基端9よりも先端11に近い位置に設けられる。また、図5に示すように、カムピン15は、開き戸100が全開の状態で、カム溝12の第1端部12aに近い位置に設けられる。カムピン15は、開き戸100が全開の状態で、リンク部材8の先端11よりも基端9に近い位置に設けられる。
【0033】
ユニット1は、リニアモータ2の固定子4の磁極及び磁力を制御する制御部17(図2参照)を備える。この制御部17は、開き戸100を開動作させる際には、可動子5が第1方向(具体的には図2の紙面の右方向)に移動するように固定子4の磁極を制御する。制御部17は、開き戸100を閉動作させる際には、可動子5が第1方向の反対の第2方向(具体的には図2の紙面の左方向)に移動するよう固定子4の磁極を制御する。また、制御部17は、固定子4に供給する電流を制御することで固定子4の磁力を制御し、ひいては可動子5の推進力を制御する。制御部17は、リニアモータ2の筐体3内に設けられてもよいし、筐体3外に設けられてもよい。
【0034】
さらに、ユニット1は、開き戸100の動作タイミングを検知する検知部18を備える。検知部18は、例えば、開き戸100に接近する人を検知するカメラ、赤外線センサ等の人感センサとしてよい。または、検知部18は、開き戸100の開動作、又は閉動作を指示する信号を出力する開閉スイッチ(操作部)を含んで構成されてもよい。この場合、検知部18は、開閉スイッチの操作に基づく信号(開動作を指示する信号又は閉動作を指示する信号)を制御部17に出力する。開閉スイッチは、開動作又は閉動作を指示する信号を無線で制御部17に送信する無線部(リモコン)として構成されてもよいし、制御部17に有線で接続されてもよい。
【0035】
以下、ユニット1の作用を説明する。制御部17は、検知部18に基づいて開動作の実行条件が成立したことを判断すると、固定子4への電流を制御して、可動子5を図3の状態から右方向に移動させる。なお、制御部17は、開動作の実行条件の成立として、開き戸100に接近する人が居ることを判断してもよいし、開動作を指示する信号を受信したことを判断してもよい。図3図4図5に示すように、可動子5が右方向に移動するに伴い、カムピン15はカム溝12に沿って、カム溝12の第1端部12aに接近する方向に移動する。リンク部材8は、カムピン15の移動に伴い、先端11をガイド溝14に沿って開き戸100の基端100aに接近する方向に移動させつつ、回転軸9を中心として図4の紙面の時計回りの方向に回転する。開き戸100は、リンク部材8の回転に伴い、回転中心Oを中心として図4の紙面の時計回りの方向に回転する。制御部17は、開き戸100が全開の状態(図5の状態)になった時に、固定子4への通電を止めて、可動子5を停止させる。以上により、開き戸100が自動で開く。
【0036】
制御部17は、検知部18に基づいて閉動作の実行条件が成立したことを判断すると、固定子4への電流を制御して、可動子5を図5の状態から左方向に移動させる。なお、制御部17は、閉動作の実行条件の成立として、開口201周辺に人がいなくなったことを判断してもよいし、閉動作を指示する信号を受信したことを判断してもよいし、開き戸100を開動作させてから所定時間が経過したことを判断してもよい。図5図4図3に示すように、可動子5が左方向に移動するに伴い、カムピン15はカム溝12に沿って、カム溝12の第2端部12bに接近する方向に移動する。リンク部材8は、カムピン15の移動に伴い、先端11をガイド溝14に沿って開き戸100の先端100bに接近する方向に移動させつつ、回転軸9を中心として図4の紙面の反時計回りの方向に回転する。開き戸100は、リンク部材8の回転に伴い、回転中心Oを中心として図4の紙面の反時計回りの方向に回転する。制御部17は、開き戸100が完全に閉じた状態(図3の状態)になった時に、固定子4への通電を止めて、可動子5を停止させる。以上により、開き戸100が自動で閉じる。
【0037】
以下、本実施形態の効果を説明する。本実施形態ではリニアモータ2により開き戸100を開閉させるので、回転モータで開閉させる場合に比べて、高い静寂性とスムーズな開閉を実現できる。また、リンク部材8の回転モーメントを開き戸100に作用させるようにしたので、リニアモータ2の駆動力(推進力)を過度に大きくしなくても、開き戸100を回転させることができる。特に、リンク部材8の先端11は、開き戸100の基端100aよりも先端100bに近い位置に設けられ、リンク部材8の先端11と基端9との距離が開き戸100の左右幅の0.5倍より大きいので、リンク部材8から開き戸100に作用させる回転モーメントを大きくでき、ひいては、リニアモータ2の駆動力を小さくできる。リニアモータ2の駆動力を小さくできることで、リニアモータ2が大型化するのを抑制できる。
【0038】
また、カム溝12は曲線部を含む形状に形成されるので、曲線部の位置、曲率等を調整することで、開き戸100の回転トルク、又は可動子5の推力を制御しやすい。また、カム溝12は全区間で一定曲率の曲線状(円弧状)に形成されるので、カム溝12を容易に形成できる。また、後述の実施例で示すように、開き戸100の回転トルクが一定になるように可動子5の推力を制御する場合に、可動子5の移動量に対する推力の変化率の変動を小さくできる。
【実施例
【0039】
カム溝の形状とリニアモータの推力との関係について以下の検証を行った。図9は、本発明の実施例における開き戸駆動ユニットの平面図を示している。図9の開き戸駆動ユニットの構造は、図1図8で示した構造と同じであり、図9の構造における各部には、図1図8の構造における各部と同一の符号を付している。開き戸100の回転トルクt(以下、扉トルクという場合がある)が、可動子5の移動量にかかわらず一定(具体的にはt=2N・m)となるように、可動子5の推力Fを制御する場合の、可動子5の移動量と推力Fとの関係を求めた。具体的には、以下の式1に基づいて、可動子5の移動量(位置)に対する推力Fを求めた。
t={(FLsinθ)/s}・cosμ・l ・・・(式1)
【0040】
図9中には、式1に用いられる変数又は定数を示している。具体的には、tは、開き戸100の回転軸O(以下、扉回転軸という場合がある)に作用するトルク(扉トルク)である。lは、リンク部材8の先端11と扉回転軸Oとの距離である。Fは可動子5の推力である。Lは、カムピン15とリンク部材8の回転軸9との距離である。θは、回転軸9とカムピン15とを結ぶ仮想直線と、回転軸9から、開口201の左右方向における扉回転軸Oが設けられる反対側の端部201aの側(図9の左側)に延びた仮想直線との成す角度である。μは、リンク部材8の先端11と回転軸9とを結ぶ仮想直線と、先端11と扉回転軸Oとを結ぶ仮想直線との成す角度である。sは、先端11と回転軸9との距離である。
【0041】
距離sは可動子5の位置にかかわらず一定の値であり、具体的にはs=61.81mmとした。角度θ、μ及び距離l、Lは、可動子5の位置に応じて、下記表1のように変化する。扉トルクt=2N・mとした場合の、可動子5の位置に対する推力Fを表1に示す。表1において、リニア移動量は、開口201の左右方向における、所定の原点からの可動子5の移動量を示している。リニア移動量=0mmは、開き戸100が全閉する、可動子5の位置を示している。リニア移動量=380mmは、開き戸100が全開する、可動子5の位置を示している。なお、表1には、開き戸100の開閉角である扉開閉角も示している。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、角度θはリニア移動量が大きくなるにしたがって次第に大きくなる。また、距離Lは、リニア移動量が大きくなるにしたがって次第に小さくなる。角度μは、リニア移動量が大きくなるにしたがって次第に大きくなり、途中から(リニア移動量が330mmを超えてから)は逆に次第に小さくなる。距離lは、リニア移動量が大きくなるにしたがって次第に小さくなる。推力Fは、リニア移動量が大きくなるにしたがって次第に大きくなる。推力Fの最小値は約28Nであり、最大値は約46Nである。推力Fの最小値に対する最大値の比(=最大値/最小値)は約1.6である。このように、扉トルクtが一定になるように推力Fを制御する場合に、推力Fの最小値に対する最大値の比が2以下となるように、開き戸駆動ユニット1の構造(リンク部材8の形状、カム溝12の形状、リンク部材8の回転軸9の位置など)が定められていると言える。
【0044】
また、比較例として、図10に示す構造を用いた場合における可動子の位置に対する推力も求めた。図10の構造において、図9と同様の部材には同一の符号を付している。図10の構造は、リンク部材8のカム溝12’が一直線状に形成される点で図9の構造と異なっており、それ以外は図9の構造と同じである。リンク部材8におけるカム溝12’の両端の位置は、図9のカム溝12の両端位置と同様である。
【0045】
表2及び図11に、実施例及び比較例における可動子5の移動量(リニア移動量)と推力Fの関係を示す。図11には、推力Fの理想線も示している。
【0046】
【表2】
【0047】
可動子5の制御を容易にするためには、図11の理想線で示すように、可動子5の移動量に対する推力Fの変化率(以下、推力変化率という場合がある)が一定となるのが理想である。図11において、実施例の推力Fの変化を示す線は、比較例の推力Fの変化を示す線よりも理想線に近い。
【0048】
さらに、表3及び図12に、実施例と比較例における、可動子5の移動量(リニア移動量)と推力変化率との関係を示す。また、表4に、実施例と比較例における、推力変化率の最大値、最小値、及びそれらの差(=最大値-最小値)を示す。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
表3及び図12に示すように、実施例及び比較例共に、推力変化率は、リニア移動量が大きくなるにしたがって次第に大きくなる。一方で、リニア移動量に対する推力変化率の変動は、比較例よりも実施例のほうが小さい。具体的には、表4に示すように、実施例における推力変化率の最大値と最小値の差は、比較例のそれよりも小さく、比較例におけるその差の87.2%の値となった。このことから、実施例の推力変化率は、比較例のそれよりも、図11の理想線に近いと言える。
【0052】
また、比較例における推力変化率の最小値に対する最大値の比(=最大値/最小値)は約33である。これに対して、実施例における推力変化率の最小値に対する最大値の比(=最大値/最小値)は約17であり、比較例のそれの約50%の値となった。
【0053】
このように、実施例においては、扉トルクtが一定になるように推力Fを制御する場合に、推力変化率の最大値と最小値の差が0.2N/mm以下(より具体的には0.15N/mm以下)となるように、又は、推力変化率の最小値に対する最大値の比が20以下となるように、開き戸駆動ユニット1の構造(リンク部材8の形状、カム溝12の形状、リンク部材8の回転軸9の位置など)が定められていると言える。
【0054】
なお、比較例のカム溝(直線状のカム溝)は形状が単純であるなどの長所があるので、本発明の範囲から直線状のカム溝を除外するものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 開き戸駆動ユニット
2 リニアモータ
4 固定子
5 可動子
8 リンク部材
12 カム溝
13 支持部
15 カムピン(係合部)
100 開き戸
200 壁部(開口部材)
201 開口
【要約】
【課題】リニアモータによる開き戸の駆動をしやすくできる開き戸駆動ユニットを提供する。
【解決手段】開き戸駆動ユニットは、リニアモータと、リンク部材8とを備える。リニアモータは、開き戸100が設けられる壁部200の上部に、可動子5が壁部200の左右方向に沿って直線移動するように設けられる。リンク部材8は、一端9が壁部200の側において上下方向の軸回りに回転可能に支持され、他端11が開き戸100の側において開き戸100に対して相対的に移動可能に支持される。リンク部材8はカム溝12を有する。カム溝12には係合部としてのカムピン15が嵌入される。可動子5の移動に伴いカムピン15がカム溝12に沿って移動する。カムピン15の移動に伴い、リンク部材8が回転する。リンク部材8の回転に伴い、開き戸100を回転させる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12