(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ステータコア構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/14 20060101AFI20240129BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K3/52 Z
(21)【出願番号】P 2019134334
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】杉本 健太
【審査官】一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-74725(JP,A)
【文献】特開2017-34870(JP,A)
【文献】特開2006-115666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/14
H02K 3/52
H02K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪状ステータコア(20)と、
前記輪状ステータコア(20)の内面に、所定角度間隔毎に内方に向けて突出する突出磁極(30)と、
前記輪状ステータコア(20)と前記突出磁極(30)とを覆うように、一体又は別体にて形成された輪状絶縁カバー(50)と、
前記突出磁極(30)の先端に形成された鍔部(31)と、
前記鍔部(31)の径方向内側に形成され、前記輪状絶縁カバー(50)から露出した磁極面(32)と
からなるステータコア構造において、
前記輪状絶縁カバー(50)は、前記輪状ステータコア(20)の上面に設けられた第1輪状絶縁カバー部(40)と、前記輪状ステータコア(20)の下面に設けられた第2輪状絶縁カバー部(40a)とを有し、
前記鍔部(31)の端部には、前記輪状ステータコア(20)の軸方向に沿って前記第1輪状絶縁カバー部(40)と一体に形成された第1耳部(40A)が設けられ、前記第1耳部(40A)の内面には突条部(43)が設けられ、前記突条部(43)の外面(43a)は、
前記輪状ステータコア(20)の軸方向に平行であり且つ前記磁極面(32)と面一であることを特徴とするステータコア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステータコア構造に関し、特に、ステータコアに樹脂を一体成形するステータコア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
歪みセンサ及び回転センサに用いられる従来のステータコア構造としては、例えば以下の特許文献1に記載されたステータコア構造が知られている。すなわち、
図4に示す従来のステータコア構造では、輪状ステータコア20Aの内面に、所定角度間隔毎に内方へ向けて突出する複数の突出磁極30が設けられている。各突出磁極30の先端部には鍔部31が形成されている。また、前記輪状ステータコア20Aを回転軸の軸方向に第1輪状絶縁カバー部40及び第2輪状絶縁カバー部40aで挟み込み、ステータコア構造を形成している。前記突出磁極30は軸方向に両側から前記第1輪状絶縁カバー部40及び前記第2輪状絶縁カバー部40aにより挟み込まれるため、前記鍔部31の径方向内側に、第1耳部40A及び第2耳部40Bを有する前記第1輪状絶縁カバー部40及び前記第2輪状絶縁カバー部40aに覆われずステータコアが露出する磁極面32が形成される。なお、前記磁極面32の軸方向Aに沿う両端には、前記第1,第2輪状絶縁カバー部40,40aの前記第1,第2耳部40A,40Bの面から内方に突出する前記磁極面32により、前記第1,第2突出段部32a,32bが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のステータコア構造では、回転軸又は回転軸に挿入されたロータを輪状ステータコア20Aの内側に差し込むときに、回転軸やロータが前記磁極面32に接触し、回転軸、ロータ及び前記磁極面32に傷が付く可能性があるという問題点があった。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、回転軸及びロータがステータコアに接触し、回転軸、ロータ及び磁極面に傷が付く可能性を低減することができるステータコア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明に係るステータコア構造は、輪状ステータコアと、前記輪状ステータコアの内面に、所定角度間隔毎に内方に向けて突出する突出磁極と、前記輪状ステータコアと前記突出磁極とを覆うように、一体又は別体にて形成された輪状絶縁カバーと、前記突出磁極の先端に形成された鍔部と、前記鍔部の径方向内側に形成され、前記輪状絶縁カバーから露出した磁極面とからなるステータコア構造において、前記輪状絶縁カバーは、前記輪状ステータコアの上面に設けられた第1輪状絶縁カバー部と、前記輪状ステータコアの下面に設けられた第2輪状絶縁カバー部とを有し、前記鍔部の端部には、前記輪状ステータコアの軸方向に沿って前記第1輪状絶縁カバー部と一体に形成された第1耳部が設けられ、前記第1耳部の内面には突条部が設けられ、前記突条部の外面は、前記輪状ステータコアの軸方向に平行であり且つ前記磁極面と面一であることを特徴とする。
【0007】
前記突条部の外面は、前記磁極面と面一であってもよい。
前記突条部の外面は、前記磁極面よりも内方に突出していてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るステータコア構造は以上のように構成されているため、前記磁極面の上部には、前記輪状絶縁カバーと一体に形成された前記第1耳部が設けられ、前記第1耳部の内面には突条部が設けられているために、回転軸及びロータが前記磁極面に接触し、回転軸、ロータ及び前記磁極面に傷が付く可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るステータコア構造の概略図である。
【
図2】
図1に記載の突出磁極を拡大して示した概略図である。
【
図3】
図1に記載の突出磁極を拡大して示した平面図である。
【
図4】従来のステータコア構造の突出磁極を拡大して示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面の
図1~
図3に基づいて説明する。なお、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1は、この発明の実施の形態に係るステータコア構造10の概略図である。前記ステータコア構造10は、歪みセンサ又は回転センサに用いられるステータコア構造であり、輪状ステータコア20を有している。前記輪状ステータコア20は、複数の電磁鋼板を積層して形成されている。前記輪状ステータコア20の内面には、所定角度間隔毎に内方へ向けて突出する複数の突出磁極30が形成されており、前記各突出磁極30の間にスロット33がそれぞれ形成されている。前記各突出磁極30には、図示しない巻線が巻回される。前記突出磁極30の先端には、鍔部31が形成されている。また、前記突出磁極30の径方向内側には、前記ステータコア構造10を歪みセンサに用いる場合には金属製の回転軸(図示せず)が設けられ、前記ステータコア構造10を回転センサに用いる場合には回転軸に挿入された金属製のロータ(図示せず)が設けられる。前記各スロット33は、図示しない回転軸に平行に形成されている。
【0011】
前記輪状ステータコア20を絶縁するために、前記輪状ステータコア20の表面及び裏面に絶縁体である輪状絶縁カバー50が設けられている。前記輪状絶縁カバー50は、前記輪状ステータコア20の上面に設けられた第1輪状絶縁カバー部40と、前記輪状ステータコア20の下面に設けられた第2輪状絶縁カバー部40aとを有している。なお、前記輪状絶縁カバー50は、一体形成又は別体からなる第1輪状絶縁カバー部40及び第2輪状絶縁カバー部40aから構成されており、本実施の形態では一体成形の場合を示している。前記第1輪状絶縁カバー部40及び前記第2輪状絶縁カバー部40aは、一体成形の際には、前記突出磁極30を含む前記輪状ステータコア20を回転軸の軸方向A、すなわち上下方向から型に挟み込んで前記第1輪状絶縁カバー部40及び前記第2輪状絶縁カバー部40aと一体成形する。前記輪状ステータコア20及び前記第1輪状絶縁カバー部40の上部には、前記突出磁極30と同じ所定間隔毎に上方に向けて図示しないステータ巻線の渡り線用の渡り柱42が形成されている。
【0012】
前記輪状ステータコア20の径方向外側に、前記第1輪状絶縁カバー部40と一体成形された端子保持部60が設けられている。前記端子保持部60には、外部の装置に前記ステータコア構造10を接続するための端子ピン61と、巻線と前記端子ピン61との間の配線をガイドするガイドピン62が形成されている。
【0013】
図2は、
図1に示す前記突出磁極30の拡大図であり、
図3は、
図1に示す前記突出磁極30の平面図である。
前記突出磁極30の先端には、前記輪状絶縁カバー50から前記輪状ステータコア20(
図1参照)が露出した磁極面32が設けられている。前記磁極面32の上部には、前記第1輪状絶縁カバー部40と一体に第1耳部40Aが形成されている。また、磁極面32の下部には、前記第2輪状絶縁カバーと一体に形成された第2耳部40Bが形成されている。すなわち、前記輪状絶縁カバー50と前記第1耳部40A及び前記第2耳部40Bとは一体に形成されている。前記磁極面32は前記第1耳部40A及び前記第2耳部40Bよりも、前記輪状ステータコア20の内方に向けて突出している。前記磁極面32と前記第1耳部40Aとの間には第1突出段部32aが形成され、前記磁極面32と前記第2耳部40Bとの間には第2突出段部32bが形成されている。前記各突出段部32a,32bの構成については前述の段落0002の記載の通りである。
【0014】
前記第1耳部40Aの内面には、前記第1耳部40Aと一体に前記輪状ステータコア20の上下方向、すなわち、前記軸方向Aに沿って延びる突条部43が形成されている。前記突条部43の外面43aは、前記磁極面32と面一であるか、又は前記磁極面32よりも前記輪状ステータコア20の内方に向けて突出している。前記突条部43は、前記輪状ステータコア20の周方向の前記第1耳部40Aの幅Wに対して、中央に位置するように設けられている。
【0015】
前記ステータコア構造10を歪みセンサに用いる場合に、前記突出磁極30の内側に回転軸を挿入する際に前記ステータコア構造10と回転軸との同軸がずれた場合であっても、回転軸は前記磁極面32と面一であるか又は前記磁極面32よりも内方に向けてわずかに突出している前記突条部43の外面43aに接触するため、前記磁極面32に接触する可能性は低い。このため、前記磁極面32に傷が付く可能性は低減される。また、前記突条部43は樹脂で構成されており、金属製の回転軸よりも柔らかいため回転軸に傷がつく可能性は低減される。
【0016】
また、前記ステータコア構造10を回転センサに用いる場合に、前記突出磁極30の内側にロータを挿入する際に前記ステータコア構造10とロータとの同軸がずれた場合であっても、ロータは前記磁極面32と面一であるか又は前記磁極面32よりも内方に向けて突出している前記突条部43に接触するため、前記磁極面32に接触する可能性は低い。このため、前記磁極面32に傷が付く可能性は低減される。また、前記突条部43は樹脂で構成されており、金属製のロータよりも柔らかいため、ロータに傷が付く可能性は低減される。
【0017】
このように、前記輪状ステータコア20と、前記輪状ステータコア20の内面に、所定角度間隔毎に内方に向けて突出する前記突出磁極30と、前記輪状ステータコア20と前記突出磁極30とを覆うように、一体又は別体にて形成された前記輪状絶縁カバー50と、前記突出磁極30の先端に形成され、前記輪状絶縁カバー50から露出した前記磁極面32とからなるステータコア構造において、前記磁極面32の上部には、前記輪状絶縁カバー50と一体に形成された第1耳部40Aが設けられ、前記第1耳部40Aの内面には前記突条部43が設けられているため、回転軸及びロータが前記磁極面32に接触し回転軸、ロータ及び前記磁極面に傷が付く可能性を低減することができる。
【0018】
また、前記突条部43の前記外面43aは、前記磁極面32と面一であるため、回転軸及びロータが前記磁極面32に接触し回転軸、ロータ及びステータコアに傷が付く可能性をより低減することができる。
【0019】
また、前記突条部43の外面43aは、前記磁極面32よりも内方に突出しているため、回転軸及びロータが前記磁極面32に接触し回転軸、ロータ及びステータコアに傷が付く可能性をさらに低減することができる。
【0020】
なお、この実施の形態では、前記各第1耳部には上下方向に延びる前記突条部43が1つずつ形成されていたが、前記各第1耳部40Aに対して2つ以上ずつ形成されてもよい。また、前記突条部43は前記各第2耳部40Bに1つずつ又は2つ以上ずつ形成されてもよい。また、前記突条部43は、前記輪状ステータコア20の周方向の前記第1耳部40Aの幅に対して、中央に位置するように形成されていたが、中央の位置に対してずれて形成されていてもよい。また、前記突条部43は、前記第1耳部40Aと一体に成形されていたが、絶縁性があり回転軸及びロータに傷をつけない材料であれば樹脂以外の材料で形成されていてもよく、一体ではなく別体の部材として前記第1耳部40Aに取り付けられてもよい。
【0021】
また、この実施の形態では前記輪状ステータコア20の前記各スロット33は回転軸に平行に形成されていたが、ステータコアに各スロットを回転軸に対して斜め方向に形成したスキュースロットを形成してもよい。さらに、前記ステータコア構造10は歪みセンサ及び回転センサに用いられていたが、前記突出磁極30を有するセンサ及び装置であれば他の種類のセンサ及び装置に用いてもよい。
【0022】
なお、本発明によるステータコア構造は、以下の通りである。すなわち前記輪状ステータコア20と、前記輪状ステータコア20の内面に、所定角度間隔毎に内方に向けて突出する前記突出磁極30と、前記輪状ステータコア20と前記突出磁極30とを覆うように、一体又は別体にて形成された前記輪状絶縁カバー50と、前記突出磁極30の先端に形成され、前記輪状絶縁カバー50から露出した前記磁極面32とからなるステータコア構造において、前記磁極面32の上部には、前記輪状絶縁カバー50と一体に形成された第1耳部40Aが設けられ、前記第1耳部40Aの内面には前記突条部43が設けられている構成であり、また、前記突条部43の前記外面43aは、前記磁極面32と面一である構成であり、また、前記突条部43の外面43aは、前記磁極面32よりも内方に突出している構成である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によるステータコア構造は、輪状ステータコアと、輪状ステータコアの内面に、所定角度間隔毎に内方に向けて突出する突出磁極と、輪状ステータコアと突出磁極とを覆うように、一体又は別体にて形成された輪状絶縁カバーと、突出磁極の先端に形成され、輪状絶縁カバーから露出した磁極面とからなるステータコア構造において、磁極面の上部には、輪状絶縁カバーと一体に形成された第1耳部が設けられ、第1耳部の内面には突条部が設けられていることを特徴とするため、回転軸及びロータが磁極面に接触し回転軸、ロータ及び磁極面に傷が付く可能性を低減することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 ステータコア構造
20 輪状ステータコア
20A 輪状ステータコア
30 突出磁極
31 鍔部
32 磁極面
32a 第1突出段部
32b 第2突出段部
33 スロット
40 第1輪状絶縁カバー部
40a 第2輪状絶縁カバー部
40A 第1耳部
40B 第2耳部
42 渡り柱
43 突条部
43a 外面
50 輪状絶縁カバー
60 端子保持部
61 端子ピン
62 ガイドピン
A 軸方向
W 幅