(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】水生生物収容装置用の水質浄化装置
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A01K63/04 F ZAB
(21)【出願番号】P 2019239887
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】520002760
【氏名又は名称】株式会社クラハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 雄一
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176149(JP,A)
【文献】特開2015-073458(JP,A)
【文献】特開2004-254577(JP,A)
【文献】特開2009-055821(JP,A)
【文献】特開2004-160349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00-61/65
A01K 61/80-63/10
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
前記輸送機構により輸送される排出水を生物学的に浄化する生物浄化槽と、
前記輸送機構により輸送される排出水および前記生物浄化槽から排出される水の少なくとも一部の水を電気分解によって浄化する電気分解槽と、
前記生物浄化槽および前記電気分解槽のそれぞれへの水の流量を制御する流量制御部と、
前記生物浄化槽で浄化されて得られる生物浄化水および前記電気分解槽で浄化されて得られる分解浄化水を、前記収容容器に還流させる還流機構と、を備え、
前記流量制御部は、基準状態に基づいて、前記収容容器からの排出水を前記生物浄化槽へ輸送する、もしくは、前記収容容器からの排出水を前記生物浄化槽および前記電気分解槽のそれぞれへ輸送する、ことを切り替えて制御し、
前記基準状態は、前記生物浄化槽の分解能力限界である能力限界値と、前記生物浄化槽の分解能力限界よりも低い余裕能力値と、を含み、
前記流量制御部は、前記収容容器における生物係数を算出する算出部と、
前記生物係数と前記基準状態とを比較する比較部と、
前記比較部における比較結果に基づいて、前記生物浄化槽および前記電気分解槽のそれぞれへの水量を決定する水量決定部と、を備え、
前記生物係数が前記能力限界値以上の場合には、
前記流量制御部は、
第1時間においては、前記収容容器からの排出水において前記余裕能力値以上の水量を、前記電気分解槽に輸送させ、残量を前記生物浄化槽に輸送させ、
第1時間の後である第2時間においては、前記収容容器からの排出水において前記
能力限界値以上の水量を、前記電気分解槽に輸送させ、残量を前記生物浄化槽に輸送させる、水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項2】
前記収容容器からの前記排出水は、前記水生生物に由来する汚濁を含んでおり、
前記生物浄化槽および前記電気分解槽は、前記汚濁を浄化もしくは分解する、請求項1記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項3】
前記汚濁は、アンモニア成分を含み、
前記生物浄化槽は、微生物により前記アンモニア成分を分解し、
前記電気分解槽は、電気分解により発生させる次亜塩素酸により前記アンモニア成分を分解する、請求項2記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項4】
前記電気分解槽で発生する前記次亜塩素酸を除去する活性炭槽を、更に備える、請求項3記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項5】
前記微生物は、前記アンモニア成分を分解する第1微生物群と、前記アンモニア成分が分解されて生じる亜硝酸を分解する第2微生物群と、を含む、請求項3または4記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項6】
前記生物係数は、
(1)前記収容容器中の水生生物の量 × 前記水生生物用の餌の量、
(2)前記収容容器中の水生生物の密度、
(3)前記収容容器中のアンモニア濃度、
(4)前記収容容器中の亜硝酸濃度、
(5)前記収容容器中の水温、
(6)前記収容容器中の溶存酸素、
の、いずれかに基づいて算出される、請求項1記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項7】
前記生物浄化槽からの前記生物浄化水を、前記電気分解槽に輸送する輸送路を更に備え、
前記電気分解槽は、前記生物浄化水を殺菌処理して、前記収容容器に還流させる、請求項1から6のいずれか記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項8】
前記電気分解槽からの前記分解浄化水は、前記収容容器に還流される過程で、前記生物浄化水と合流して、前記生物浄化水を殺菌する、請求項1から7のいずれか記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物を保管もしくは輸送でき水生生物収容装置に適した水生生物収容装置用の水質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の水生生物を、一定時間において保管したり輸送したりすることが求められるようになってきている。例えば、食用に供される水生生物(食用の魚類や魚介類など)を、漁獲地において一定時間(数日から数週間など、種類や必要性に応じて様々)で、保管することが求められることがある。漁獲から販売や輸送までの待機時間があり、この待機時間において、漁獲された水生生物を活かしておく必要があるからである。この活かしておくための保管においても、水生生物の健康状態や鮮度を維持することが求められる。
【0003】
ここで、保管とは上述のような漁獲後の一定時間の保管もありえるし、漁獲地以外での一定時間の保管もありえる。あるいは、養殖や蓄養などにおいて、成長まであるいは出荷までの間において保管する場合も含む。すなわち、出荷用として漁獲された水生生物を保管(あるいは輸送)する場合もあり得るし、養殖や蓄養のために、ある程度の期間において保管する場合もありえる。これらのいずれの意味でも、ここでいう保管は対応する。
【0004】
例えば、いけす料理などを提供する飲食店において、かなりの長い期間で食事用の魚介類を生きたまま保管することもある。このような保管でも、魚介類をはじめとする水生生物を、新鮮かつ健康な状態で保管することが求められる。
【0005】
あるいは、漁獲地や集積地から、水生生物を生きたまま輸送することが求められるようになってきている。例えば、地方の漁港で漁獲された水生生物を、消費地である都市部に活きたまま輸送することが求められている。輸送では、水生生物を生きたまま輸送することに加えて、その鮮度や健康状態を維持することが重要である。
【0006】
輸送中においては、輸送の特性上、水生生物に様々なストレスが掛かるからである。このストレスに対して、鮮度や健康状態をきちんと維持することが求められる。
【0007】
更には、輸送された水生生物を、消費地において実際の用途に供されるまでの間において、一定時間保管することが求められる。水生生物が食用に供される場合には、実際に食事に供されるまでの時間は、保管が求められることがある。生きた状態で調理されて食事に供される必要のある魚介類の場合などである。あるいは、観賞用の水生生物を販売するまでの時間において、健康状態を維持しつつ保管することが求められる。
【0008】
このような保管あるいは輸送においては、次のような事情がある。
【0009】
漁獲地において生きたまま保管するのは、実際の消費する場所に輸送するタイミングや間隔に合わせて運び出す必要があるからである。これは消費地における事情(購入するための条件が整う必要性や、消費に最適なタイミング)や、輸送が可能となるタイミングなどの事情による。このような事情によって、漁獲地において、水生生物の鮮度や健康状態を維持して保管する必要がある。
【0010】
あるいは、生きたまま輸送する必要があるのは、食用であれば、新鮮な状態で食事として供する(場合によっては活き造りで)必要があることで、生きた状態で水生生物を輸送する必要があるからである。特に、鮮度や健康状態を維持して輸送することが求められる。このとき、漁獲地と消費地が遠いことが多い。食用(かつ、活き造りや新鮮な状態で食する)の水生生物は、地方の沿岸部で水揚げされる。
【0011】
一方で、消費地としては、漁獲地周辺の都市部あるいは、関東、近畿、中京といった三大都市圏である。このような都市部や三大都市圏は、漁獲地と遠隔であることが多い。例えば活き造りなどの新鮮な状態で食されることの多いイカは、九州、中国地方、北海道などが代表的な漁獲地である。イカに限らず、他の魚介類も、漁獲地と消費地とが遠隔になっていることが多い。もちろん、消費地の近隣でも水揚げされることがあるが、量の不足、品質の不足などの問題があり、消費地の多くでは、より品質の高い魚介類を食したいとの高い要望をもっている。
【0012】
このような事情があり、漁獲地から消費地まで、鮮度と健康状態を維持して輸送を行う必要がある。これは、観賞用の水生生物であっても同様である。
【0013】
また、輸送された消費地においても、実際の食用に供されるまでの間、生きたまま保管される必要がある。輸送された生きた状態の水生生物を、実際に調理して供するまでの期間においては、鮮度や健康状態を維持して保管する必要があるからである。
【0014】
このように、漁獲された水生生物の鮮度と健康状態を維持して、保管や輸送することが求められている。特に、専用の生簀、水槽、などの施設で保管が行われるまでの間の保管や輸送が必要となりうる。
【0015】
ここで、輸送は、トラックや列車などの輸送機器で輸送される必要がある。この輸送においては、種々の状況が発生し、輸送される水生生物の健康状態を維持することが難しいことが多い。例えば、魚介類であれば、魚介類が必要とする酸素量の維持、魚介類からの排泄物や老廃物の処理、水質の維持などが必要条件となるからである。ストレスなく水生生物を生きたまま輸送することも大切である。
【0016】
輸送において、水生生物にストレスを与えにくい環境を実現する必要がある。例えば、酸素量(水中の溶存酸素)の維持、水生生物の排泄物や老廃物の除去、水質の維持などの必要性がある。
【0017】
同様に、一定期間の保管においても、水生生物の鮮度や健康状態を維持することが必要である。このため、水生生物にストレスを与えにくい環境を実現する必要がある。例えば、酸素量(水中の溶存酸素)の維持、水生生物の排泄物や老廃物の除去、水質の維持などの必要性がある。
【0018】
ここで、水生生物を保管する容器の水質を汚損する要因としては、水生生物の呼吸、排泄、体液等の分泌、産卵、水生生物の損傷による生体組織などがある。これらの中でも、水にアンモニアが蓄積(排泄による)されていく問題が大きい。アンモニアが水に蓄積されれば、水質が汚損されてしまう。アンモニアによる汚損は、水質汚濁において非常に大きな問題であり、水生生物への悪影響が大きい。
【0019】
このような状況において、魚介類の保管や輸送における水質改善の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献1は、隔膜2で仕切られた陽極室3と陰極室4とを備え、飼育水槽1から供給される海水Sを電気分解する電解槽5。陽極室3から海水Sが供給される曝気槽8。水面より上の空間部14が曝気槽8の水面より上の空間部15と連通され、水Wが貯溜あるいは通水されている塩素溶解槽10。塩素溶解槽10の空間部14の空気を曝気槽8の海水S中及び塩素溶解槽10の水W中に噴出して曝気する散気装置16。曝気槽8から供給される海水S中に残留する活性塩素を炭化剤6で中和する中和槽7。陰極室4から供給される海水Sと中和槽7から供給される海水Sを混合して飼育水槽1に返送する混合槽9。これらを備えて形成されるpH調整装置100を具備する。海水Sの電気分解で、海水SのpH調整を行なうことができる閉鎖式循環養殖システムを開示する。
【0022】
特許文献1は、電気分解を用いて、海水のPH調整を行うことを開示している。すなわち、特許文献1の技術は、水質浄化を実現することを開示していない。
【0023】
仮に、電気分解を水質浄化に用いるとしても、水質浄化は不十分である問題がある。上述したように、水生生物を保管する容器内部の水質悪化の主原因は、排泄などによるアンモニアである。電気分解では、このアンモニアを分解するために、次亜塩素酸を必要とする。しかしながらこの次亜塩素酸そのものも、収容容器に戻されると、水生生物に悪影響を与える。電気分解による水質浄化は、収容容器の水を電気分解に取り込んで、分解後の水を収容容器に循環させるからである。
【0024】
この循環によって、次亜塩素酸が収容容器に還流されることは、水生生物への悪影響をもたらす点で好ましくない。
【0025】
一方で、この次亜塩素酸を除去するために、除去機構を設ける必要があるが、この除去機構がコストや装置規模の点で大きくなってしまう問題もある。
【0026】
また、電気分解は、収容容器の水のアンモニアを分解できるが、収容容器の水量が大きくなったりアンモニア量が多くなったりすると、電気分解の能力を上げる必要がある。この場合には、電気分解のコストが増加する問題がある。また、能力不足に備えて、予めオーバースペックの電気分解装置を設ける必要があり、コストやサイズの面で、保管や輸送に向かない問題がある。
【0027】
以上のように、従来技術においては、水質浄化の能力が不十分であったり、そのコストが大きくなったり、輸送や保管に向きにくかったりする問題がある。
【0028】
本発明は、これらの課題に鑑み、水生生物の収容容器の水質を水量や汚損状態に適したレベルで浄化でき、コストやサイズの面でも低下できる水生生物収容装置用の水質浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題に鑑み、水生生物収容装置用の水質浄化装置は、水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
輸送機構により輸送される排出水を生物学的に浄化する生物浄化槽と、
輸送機構により輸送される排出水および生物浄化槽から排出される水の少なくとも一部の水を電気分解によって浄化する電気分解槽と、
生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへの水の流量を制御する流量制御部と、
生物浄化槽で浄化されて得られる生物浄化水および電気分解槽で浄化されて得られる分解浄化水を、収容容器に還流させる還流機構と、を備え、
流量制御部は、基準状態に基づいて、収容容器からの排出水を生物浄化槽へ輸送する、もしくは、収容容器からの排出水を生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへ輸送する、ことを切り替えて制御し、
基準状態は、生物浄化槽の分解能力限界である能力限界値と、生物浄化槽の分解能力限界よりも低い余裕能力値と、を含み、
流量制御部は、収容容器における生物係数を算出する算出部と、
生物係数と基準状態とを比較する比較部と、
比較部における比較結果に基づいて、生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへの水量を決定する水量決定部と、を備え、
生物係数が能力限界値以上の場合には、
流量制御部は、
第1時間においては、収容容器からの排出水において余裕能力値以上の水量を、電気分解槽に輸送させ、残量を生物浄化槽に輸送させ、
第1時間の後である第2時間においては、収容容器からの排出水において能力限界値以上の水量を、電気分解槽に輸送させ、残量を生物浄化槽に輸送させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の水生生物収容装置用の水質浄化装置は、収容されている水生生物からの排泄物によって生じるアンモニアを生物浄化槽で浄化しつつ、不足するレベルや量については、電気分解槽で浄化して、複数での浄化処理が可能である。この複数処理での浄化によって、水生生物から生じるアンモニアの増減にも、フレキシブルに対応して、浄化することができる。
【0031】
生物浄化槽は、生物学的にアンモニアを分解できるので、電力エネルギーなどを必要とせずに浄化が可能である。この生物浄化槽での浄化が不足する場合に、電気分解槽が利用されることで、水質浄化装置全体に係るエネルギーおよびコストを低減することができる。また、装置を小型化しやすい。
【0032】
また、生物浄化槽のみでの浄化に電気分解槽での浄化を加える制御において、水生生物の量、収容容器での餌の量などの生体活動を基準の一つとすることで、より実際の水質汚濁に対応した浄化を実施できる。
【0033】
また、上述のように、低エネルギー、低コスト、小型化が実現できることで、輸送機器に設置される水生生物収容装置に、本発明の水質浄化装置を取り付けることが容易である。この結果、活魚輸送などでの水生生物の健康状態を維持した輸送のレベルを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】発明者の解析における水生生物収容容器内部におけるアンモニア濃度の変化を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施の形態1における水質浄化装置のブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における収容容器の模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における水質浄化装置のブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における水質浄化装置のブロック図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における流量制御部による排出水の輸送の切り替えを説明するブロック図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における流量制御部における流量制御での場合A、場合Bでの制御を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における流量制御部における流量制御での場合Cでの制御を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施の形態1における流量制御部における流量制御での場合Dでの制御を示す模式図である。
【
図11】本発明の実施の形態1における流量制御部における流量制御での場合Eでの制御を示す模式図である。
【
図12】本発明の実施の形態2における水質浄化装置のブロック図である。
【
図13】本発明の実施の形態2における水質浄化装置のブロック図である。
【
図14】本発明の実施の形態2における輸送機器に水生生物収容装置が備わっている模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の第1の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置は、水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
輸送機構により輸送される排出水を生物学的に浄化する生物浄化槽と、
輸送機構により輸送される排出水および生物浄化槽から排出される水の少なくとも一部の水を電気分解によって浄化する電気分解槽と、
生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへの水の流量を制御する流量制御部と、
生物浄化槽で浄化されて得られる生物浄化水および電気分解槽で浄化されて得られる分解浄化水を、収容容器に還流させる還流機構と、を備え、
流量制御部は、基準状態に基づいて、収容容器からの排出水を生物浄化槽へ輸送する、もしくは、収容容器からの排出水を生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへ輸送する、ことを切り替えて制御する。
【0036】
この構成により、収容容器内部の水は、浄化されながら繰り返し使用される。加えて、電力消費を直接的に利用しない生物浄化槽を基本として浄化に使用しつつ、生物浄化槽の能力を超える分を電気分解槽で浄化する。これにより、消費電力抑制の最適化も図られる。
【0037】
本発明の第2の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第1の発明に加えて、収容容器からの排出水は、水生生物に由来する汚濁を含んでおり、
生物浄化槽および電気分解槽は、汚濁を浄化もしくは分解する。
【0038】
この構成により、水生生物を収容している収容容器からの排出吸いにおいて、水生生物に由来する汚濁を浄化できる。この浄化された水が還流するので、水生生物収容装置では、清浄な水が常に使用可能になる。
【0039】
本発明の第3の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第2の発明に加えて、汚濁は、アンモニア成分を含み、
生物浄化槽は、微生物によりアンモニア成分を分解し、
電気分解槽は、電気分解により発生する次亜塩素酸によりアンモニア成分を分解する。
【0040】
この構成により、生物浄化槽及び電気分解槽のそれぞれで、それぞれのメカニズムでアンモニア成分を分解する。
【0041】
本発明の第4の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第3の発明に加えて、電気分解槽で発生する次亜塩素酸を除去する活性炭槽を、更に備える。
【0042】
この構成により、電気分解槽で発生した次亜塩素酸を、除去したうえで電解浄化水を収容容器に還流させる。
【0043】
本発明の第5の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第3または第4の発明に加えて、微生物は、アンモニア成分を分解する第1微生物群と、アンモニア成分が分解されて生じる亜硝酸を分解する第2微生物群と、を含む。
【0044】
この構成により、微生物によるアンモニア成分の確実な分解を実現できる。
【0045】
本発明の第6の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、基準状態は、生物浄化槽の分解能力限界である能力限界値と、生物浄化槽の分解能力限界よりも低い余裕能力値と、を含み、
流量制御部は、収容容器における生物係数を算出する算出部と、
生物係数と基準状態とを比較する比較部と、
比較部における比較結果に基づいて、生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへの水量を決定する水量決定部と、を備える。
【0046】
この構成により、汚濁レベルと生物浄化槽での浄化能力との対比から、生物浄化槽と電気分解槽のそれぞれへの最適な水量切り分けを実現できる。
【0047】
本発明の第7の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第6の発明に加えて、生物係数は、
(1)収容容器中の水生生物の量 × 水生生物用の餌の量、
(2)収容容器中の水生生物の密度、
(3)収容容器中のアンモニア濃度、
(4)収容容器中の亜硝酸濃度、
(5)収容容器中の水温、
(6)収容容器中の溶存酸素、
の、いずれかに基づいて算出される。
【0048】
この構成により、汚濁レベルを示す指標である生物係数を、より高い精度で算出できる。
【0049】
本発明の第8の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第6または第7の発明に加えて、生物係数が余裕能力値未満もしくは能力限界値未満の場合には、
流量制御部は、収容容器からの排出水の略全量を、生物浄化槽に輸送させる。
【0050】
この構成により、生物浄化槽で浄化に対応できる場合には、生物浄化槽のみで浄化処理を行う。これにより、電解浄化槽での消費電力を最小化することができる。
【0051】
本発明の第9の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第6または第7の発明に加えて、生物係数が能力限界値以上の場合には、
流量制御部は、収容容器からの排出水において能力限界値以上の水量を、電気分解槽に輸送させ、残量を生物浄化槽に輸送させる。
【0052】
この構成により、生物浄化槽の能力限界値を超える場合には、生物浄化槽では浄化できない状態であるので、これを超える排出水を、電気分解槽にて浄化する。電気分解槽の消費電力を抑えつつ、排出水の汚濁を確実に浄化することを、ハイブリッドに実現できる。
【0053】
本発明の第10の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第6または第7の発明に加えて、生物係数が能力限界値以上の場合には、
流量制御部は、
第1時間においては、収容容器からの排出水において余裕能力値以上の水量を、電気分解槽に輸送させ、残量を生物浄化槽に輸送させ、
第1時間の後である第2時間においては、収容容器からの排出水において限界能力値以上の水量を、電気分解槽に輸送させ、残量を生物浄化槽に輸送させる。
【0054】
この構成により、生物浄化槽の余裕能力値以上あるいは限界能力値以上に係る排出水を、ある時間帯では生物浄化槽での負担軽減を優先し、ある時間帯では電解分解槽での消費電力削減を優先して、浄化する。
【0055】
本発明の第11の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第6または第7の発明に加えて、生物係数が余裕能力値以上の場合には、
流量制御部は、収容容器からの排出水において余裕能力値以上の水量を、電気分解槽に輸送させ、残量を生物浄化槽に輸送させる。
【0056】
この構成により、生物浄化槽の負担軽減を優先して、排出水の浄化を実行する。
【0057】
本発明の第12の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第1から第11のいずれかの発明に加えて、収容容器中のアンモニア成分の量を推定・計測する計測部と、電気分解槽を制御する電気分解槽制御部と、を更に備え、
計測部での測定結果に基づいて、電気分解槽制御部は、
電気分解槽での電流もしくは電気分解槽での電圧、
を、制御する。
【0058】
この構成により、電気分解槽での消費電力の最適化を実現できる。
【0059】
本発明の第13の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、生物浄化槽からの生物浄化水を、電気分解槽に輸送する輸送路を更に備え、
電気分解槽は、生物浄化水を殺菌処理して、収容容器に還流させる。
【0060】
この構成により、生物浄化水の殺菌を行い、浄化レベルを更に向上させることができる。
【0061】
本発明の第14の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、電気分解槽からの分解浄化水は、収容容器に還流される過程で、生物浄化水と合流して、生物浄化水を殺菌する。
【0062】
この構成により、生物浄化水の殺菌を行い、浄化レベルを更に向上させることができる。
【0063】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0064】
(発明者の解析)
【0065】
図1は、発明者の解析における水生生物収容容器内部におけるアンモニア濃度の変化を示すグラフである。水生生物収容容器の内部においては、魚介類などを始めとする水生生物が収容されている。例えば、イカ類が収容されていたり、食用に供される鯵や鯖といった魚類が収容されていたりする。あるいは、観賞用の水生生物(熱帯魚)などが収容されている。このような水生生物収容容器は、漁獲地から消費地への移動において使用されたり、活魚料理を提供する飲食店に設置されて使用されたりする。
【0066】
このような水生生物収容容器においては、収容されている水生生物の活動によって、排泄物、体液、卵、その他の排出物が生じる。これらの排出物は、収容容器内の水質汚濁に繋がる。特に、排出物によって、収容容器内部には、アンモニアが増加していくことがある。特に、水生生物が餌を食することによる生体活動によって、アンモニアが増加していくことが、発明者によって解析された。
【0067】
このアンモニア濃度が増加していく状態が、
図1のグラフに示されている。
図1のグラフに示されるように、収容容器内部において、アンモニア濃度が増加していく。
【0068】
ここで、このようなアンモニア濃度が増加した収容容器内部の水を浄化して、収容している水生生物の生活環境を維持することが必要である。もちろん、収容容器内部の水は、アンモニア以外によっても汚濁しており、この汚濁した水を浄化することが必要である。この浄化によって、
図1のグラフのように、一旦増加したアンモニア濃度が、やがて低下していくことができる。
【0069】
ここで、発明者は、アンモニアを含む汚濁した水を浄化するのに、(1)バクテリアなどの生物分解を利用する生物浄化、(2)電気分解による生物浄化、の2つを検討した。これらは、方法は異なるものの、アンモニアなどを始めとする汚濁を浄化する機能を発揮する。
【0070】
生物浄化と、電気分解による浄化とは、方法が異なることでの、それぞれの特徴がある。特に、その能力的な相違、あるいは、必要とするエネルギー量での相違などがある。
【0071】
ここで、生物浄化は、微生物であるバクテリアを利用するために、その浄化能力には限界がある(生物浄化装置の大型化やバクテリア数の増加により、浄化能力を上げていくことはできるが、コストや装置サイズの限界などの点で、結局は生物浄化の浄化能力には限界がある。
【0072】
一方で、電気分解による浄化は、海水中に含まれる塩素を用いて電気分解を行うことにより、汚濁した水の浄化を行う。この電気分解において、次亜塩素酸が発生し、これにより汚濁した水の浄化を行う。このため、電気分解に係るエネルギーを上げていけば、浄化能力を高めることができる。また、微生物であるバクテリアを用いることはないので、機械的あるいは電気的な人工装置によって、その浄化能力を高めることもできる。
【0073】
しかしながら、電気分解による浄化能力を高めようとすると、必要とするエネルギー量を高くしなければならない問題がある。エネルギー量を高くすることは、多くの電力(およびそれに伴う機械的負担)を増やすことになり、水生生物収容装置の運転コストを高め、環境負荷にも悪影響である問題がある。もちろん、水生生物収容装置が設置されている場所によっては、大きな電力供給を持続させることが難しく、電気分解による浄化能力を上げることについて、困難となることもあり得る。
【0074】
加えて、生物浄化による水の浄化と、電気分解による水の浄化とは、その方法の違いによる精度や効果に違いもあり得る。それぞれにメリットとデメリットがある。特に生物浄化による水の浄化は、微生物であるバクテリアを利用するので、直接的な電力エネルギーを必要としない。また、バクテリアの生存維持がなされれば、永続的かつ繰り返しの浄化を実現できる。このため、生物浄化による水の浄化は、より主体的に利用されることが好ましいと、発明者は解析した。一方で、上述したように、浄化能力の限界に対応することを併せて含むことが、水生生物収容装置においては必要であると、発明者は解析した。
【0075】
なお、生物浄化による浄化能力および電気分解による浄化能力は、汚濁成分の分解能力として把握することができる。以下では、そのような把握に基づいて説明できる。
【0076】
以上のような解析に基づいて、発明者は、本発明に至った。
【0077】
(全体概要)
図2は、本発明の実施の形態1における水質浄化装置のブロック図である。水質浄化装置1は、水生生物収容装置100に用いられる。ここで、水生生物収容装置100は、
図2において、水生生物を収容する収容容器101と、それに必要な要素を含む。
図2では、この範囲を示しているが、厳密に解釈される必要はなく、水生生物を収容する収容容器101とこれに必要となる要素とを、水生生物収容装置100として把握すればよい。
【0078】
また、水質浄化装置1は、この水生生物収容装置100に用いられる。ここで、輸送機構2や還流機構6などのように、収容容器101との間での水のやり取りを行う要素については、水質浄化装置1および水生生物収容装置100とにまたがっている。水質浄化装置1は、水生生物収容装置100に使用されるので、
図2に示されるように、水生生物収容装置100に組み合わされて使用される。
【0079】
水質浄化装置1は、輸送機構2、生物浄化槽3、電気分解槽4、流量制御部5、還流機構6を、備える。
【0080】
輸送機構2は、収容容器101から排出される排出水を輸送する。収容容器101は、水生生物を収容する。また、水生生物を生きた状態で収容するので、水生生物に必要となる水を収容している。このため、収容容器101内部では、水生生物が生体活動を行っており、上述したように、生体活動により汚濁が発生する。すなわち、収容容器101に収容されている水は、汚濁を含んでいる。言い換えれば、収容容器101からの排出水には、汚濁が含まれている。
【0081】
輸送機構2は、この排出水を収容容器101から水質浄化装置1に輸送する。収容容器101には排出部102が備わっており、輸送機構2は、この排出部102と接続されている。この排出部102から排出される排出水を、排出部102に接続される輸送機構2が、水質浄化装置1に輸送する。この輸送は、連続的であってもよいし、断続的であってもよい。輸送機構2は、排出水を輸送する管路や、この輸送を促進する圧力ポンプなどを備えている。
【0082】
生物浄化槽3は、排出水を、生物学的に浄化する。バクテリアなどの微生物の生体活動により、排出水に含まれる汚濁を浄化もしくは分解する。生物浄化槽3で使用される微生物は、水生生物の汚濁の種類によって、あるいは汚濁の濃度によって、適宜定められれば良い。生物浄化槽3は、このような微生物の活動に基づいて、排出水の汚濁を浄化もしくは分解して、排出水を浄化する。
【0083】
また、輸送機構2は、収容容器101からの排出水を生物浄化槽3に輸送する。後述するが、輸送機構2は、基本的に、排出水を常に生物浄化槽3に輸送する。すなわち、生物浄化槽3には、常に排出水が供給され、生物浄化槽3は、排出水を常に浄化している状態にある。
【0084】
電気分解槽4は、輸送機構2から輸送される排出水および生物浄化槽3から非出される水の少なくとも一部が供給される。すなわち、電気分解槽4には、収容容器101から排出される排出水の少なくとも一部が、供給される。あるいは、電気分解槽4には、生物浄化槽3からの水の少なくとも一部が供給される。すなわち、2つのルートからの水が供給される。
【0085】
このように、電気分解槽4には、いずれかのルートの少なくとも一部の水が供給される。後述する流量制御部5での働きによって、電気分解槽4には、排出水の少なくとも一部が供給されるので、状況によっては、排出水(生物浄化槽3からの水も含めて)が、供給される状態と、まったく供給されない状態とがあり得る。
【0086】
電気分解槽4は、供給される排出水を電気分解によって浄化する。具体的には、排出水に含まれる汚濁を、電気分解によって発生する次亜塩素酸が浄化する。この汚濁の分解により、排出水が浄化される。もちろん、生物浄化槽3から供給される水も、電気分解によって浄化される。
【0087】
ここで、電気分解槽4は、電気分解により汚濁を分解する。このため、電気分解においては、電力エネルギーを必要とする。このため、電気分解槽4での浄化する排出水の量や時間を増加させると、電力エネルギーの消費量が増加する問題がある。増加することは、コストや環境負荷の面で好ましくない。
【0088】
流量制御部5は、生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれへの水の流量を制御する。特に、収容容器101からの排出水を、生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれへの流量を制御する。この流量制御部5の制御によって、どの程度の量の排出水が生物浄化槽3に供給され、どの程度の量の排出水が電気分解槽4に供給されるかが制御される。
【0089】
ここで、流量制御部5による制御は、ある時間帯においての供給される水の量が制御されることでもよいし、長い時間帯において、供給される時間量が制御されることでもよい。
【0090】
この流量制御部5の制御によって、排出水の内、どれだけの量が生物浄化槽3に供給され、どれだけの量が電気分解槽4に供給されるかが決められる。ここで、生物浄化槽3は、微生物の生体活動によって排出水を浄化する。このため、電力エネルギーを必要とせず、環境負荷の低い浄化である。また、微生物の生体活動による汚濁の分解であるので、微生物が生きている限りは、恒常的に分解能力が維持される。
【0091】
このため、流量制御部5は、基本的に、排出水を生物浄化槽3に供給する。この結果、生物浄化槽3では、常に排出水の浄化が実行される。これに対して、庫術するように、生物浄化槽3での浄化能力を超えると考えられる状態で、流量制御部5は、排出水の一部を、電気分解槽4に供給する。電気分解槽4では、流量制御部5から排出水の一部が供給される場合において、電気分解による汚濁分解を実行する。このため、電気分解槽4での電気分解作業時間や作業量が必要最小限程度に抑えられる。結果として、電気分解槽4での消費エネルギーが抑制される。
【0092】
また、流量制御部5は、必要に応じて、生物浄化槽3からの水も、電気分解槽4に供給する。生物浄化槽3に一旦供給されたが、生物浄化槽3での浄化能力を超えていると判断される場合や、生物浄化槽3で微生物により分解された水を、さらに電気分解で浄化することが好ましいと判断される場合である。このようなルートで供給された水も、電気分解槽4は、電気分解により浄化する。
【0093】
ここで、流量制御部5は、基準状態に基づいて、収容容器101からの排出水を生物浄化槽3のみに供給する。もしくは、流量制御部5は、基準状態に基づいて、収容容器101からの排出水を、生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれに供給する。
【0094】
すなわち、流量制御部5は、基準状態に基づいて、浄化対象となる収容容器101からの排出水を、生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれへの割り振り量を決定する。このとき、生物浄化槽3のみへ排出水を供給する(輸送する)、あるいは、生物浄化槽3と電気分解槽4とのそれぞれに排出水を供給する(輸送する)ことを、切り替える。加えて、生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれに排出水を供給する場合には、生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれへの供給量も制御する。
【0095】
流量制御部5は、輸送機構2により輸送される排出水の輸送先(供給先)を、生物浄化槽3なのか、生物浄化槽3と電気分解槽4の両方なのかを切り替える。この切り替え制御により、生物浄化槽3での浄化能力の限界になりえる場合には、これを超える量の排出水については、電気分解槽4においての浄化を行わせることができる。逆に言えば、通常は電力エネルギーの直接的な消費のない生物浄化槽3で排出水が浄化されて、電気分解槽4での電力エネルギーの消費を抑制できる。
【0096】
【0097】
基準状態は、生物浄化槽3での浄化能力に基づく基準指標である。生物浄化槽3での汚濁の分解能力限界である能力限界値と、分解能力限界よりも低い余裕能力値が、
図3に示されている。能力限界値は、生物浄化槽3での汚濁の分解能力の最大値を示しており、余裕能力値は、一定のマージンを持った能力レベルを示している。
【0098】
基準状態は、この能力限界値と余裕能力値を含む。これを基準とすることで、生物浄化槽3への排出水の供給量(輸送量)を、判断することができるからである。流量制御部5は、基準状態に基づけば、排出水を生物浄化槽3のみに供給すればよいのか、生物浄化槽3と電気分解槽4の両方に供給することが良いのかを判断できる。この基準状態に基づくことで、流量制御部5は、生物浄化槽3と電気分解槽4への排出水の供給量を制御できる。
【0099】
生物浄化槽3で浄化されることで、排出水は浄化されて生物浄化水が得られる。同様に、電気分解槽4で排出水は電気分解されて浄化され、分解浄化水が得られる。生物浄化槽3は、浄化後に、生物浄化水を出力する。電気分解槽4は、浄化後に、電解浄化水を出力する。還流機構6は、これらの生物浄化水および電解浄化水を、収容容器101に還流させる。すなわち、収容容器101から排出された汚濁を含む排出水を、浄化した後の浄化水を、収容容器101に還流させる。これにより、水生生物を収容する収容容器101内部の水は、清浄状態が保たれる。
【0100】
(収容容器と排出水)
図4は、本発明の実施の形態1における収容容器の模式図である。水生生物収容装置100を構成する要素である収容容器101を、模式的に示している。収容容器101は、内部に水生生物を収容する。
図4では、一例としてイカ類200が収容されている。当然に、収容容器100には、イカ類200の生体活動に必要な水が収容されている。
【0101】
また、イカ類200の生体活動に必要な餌なども供給される。
【0102】
イカ類200は、この餌を食すことで、排泄物を出したりする。また、体液などの分泌物を出したり、排卵による卵を排出したりする。さらに、生体活動を通じて、種々の排出物を出す。これらの排出物が相まって、水生生物に由来する汚濁が、収容容器101内部にたまっていく。
【0103】
収容容器101は、排出部102を備えている。収容容器101は、蓋103を備えており、内部を密閉状態とできる。この密閉状態において、還流機構6を介して、浄化された浄化水(あるいは別ルートから供給される新しい水)が、収容容器101内部に供給される。供給口104から、これら浄化水などが供給される。
【0104】
蓋103によって密閉されていることで、浄化水などが供給され続けると、収容容器101においては水があふれる状態となる。このあふれる水は、排出部102からあふれ出す。このあふれ出しによって、余分な量の水が輸送機構2に排出される。これが、排出水となって、水質浄化装置1に輸送される。
【0105】
この排出水は、上述の水生生物由来の汚濁を含んでいる。汚濁成分は、その種類によっては、収容容器101の上方に移動しやすく、上方にある排出部102から余分な水があふれ出るのに合わせて、汚濁を含んだ排出水が、輸送機構2に排出されるようになる。
もちろん、密閉による水のあふれ出し以外の、ポンプなどでの吸引で排出水が排出されることでもよい。
【0106】
(生物浄化槽および電気分解槽での浄化)
結果的に、水生生物由来の汚濁を含んだ排出水が、生物浄化槽3および電気分解槽4に輸送されるようになる。生物浄化槽3は、微生物の生体活動によって、この排出水に含まれる汚濁を分解する。電気分解槽4は、電気分解の作用によって、この排出水に含まれる汚濁を分解する
【0107】
汚濁は、アンモニア成分を含む。もちろん、他の成分も含んでいる。
【0108】
生物浄化槽3は、既述したように、水生生物由来の汚濁の種類や量などに適した微生物を収容している。あるいは、水生生物の種類や特徴に適した微生物を収容している。この選択された微生物の生体活動によって、アンモニア成分を分解する。アンモニア成分の分解を通じて、生物浄化槽3は、供給された排出水の汚濁を浄化する。浄化によって、浄化された後の生物浄化水を、出力する。この生物浄化水が、還流機構6によって収容容器101に還流される。
【0109】
ここで、生物浄化槽3に含まれる微生物は、アンモニア成分を分解する第1微生物群と、アンモニア成分が分解されて生じる亜硝酸を分解する第2微生物群を含んでいる。第1微生物群と第2微生物群は、それぞれの役割が異なる。
【0110】
第1微生物群がアンモニア成分を分解して亜硝酸に変化させる。第2微生物群は、亜硝酸を分解する。これらの2段階での分解の結果、アンモニア成分は無害な成分に変化させられる。このようにして、生物浄化槽3は、汚濁を浄化して、浄化された後の生物浄化水を得る。これが、収容容器101に還流することで、収容容器101には、水生生物が生活するのに適した浄化水が供給され続けるようになる。
【0111】
電気分解槽4は、次亜塩素酸が発生した状態で、アンモニア成分を分解する。
図5は、本発明の実施の形態1における水質浄化装置のブロック図である。
図5に示される水質浄化装置1において、電気分解槽4は、海水中に含まれる塩素を電気分解に利用し、これにより次亜塩素酸が発生する。この次亜塩素酸によって、汚濁が浄化される。
【0112】
次亜塩素酸の発生を利用して、電気分解槽4は、アンモニア成分を分解する。この分解により汚濁を浄化する。この浄化によって、浄化された後の電解浄化水を生成して、還流機構6を通じて、浄化された水を収容容器101に還流させることができる。
【0113】
生物浄化水と同様に、一度汚濁された後の排出水は、浄化された電解浄化水に変化させられて、水生生物が生活するのに適した浄化水が供給されるようになる。
【0114】
このように、生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれは、異なるメカニズムで、アンモニア成分を分解する。このアンモニア成分の分解を通じて、汚濁を分解して排出水を浄化する。
【0115】
また、既述したように、流量制御部5が、排出水を生物浄化槽3と電気分解槽4とに振り分ける。場合によっては、電気分解槽4には、常に排出水が供給されるわけではなく、ある場合において、排出水が供給される。この供給される場合のみ、電気分解槽4は、電気分解を実行すればよい。このため、例えば、流量制御部5は、電気分解槽4に排出水を供給(輸送)する場合に、電気分解槽4の電気分解の電力起動を行わせることも好適である。電気分解槽4での電気分解が必要な状態においてのみ、電気分解槽4では電力エネルギーを消費するようになる。結果として、水質浄化装置1での電力消費量を低減できる。
【0116】
生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれからの浄化された後の水が、収容容器101に供給され続けることで、水生生物収容装置100は、水生生物の生体活動を維持できる。特に、収容容器101に収容されていた水を、汚濁から浄化までを循環させることで、収容容器101に外部から水を供給することが難しい状態でも、水生生物の生活を維持させることができる。
【0117】
なお、電気分解槽4には、収容容器101からの排出水だけでなく、生物浄化槽3からの水も供給されることがある。この場合には、生物浄化槽3での処理を超える水あるいは生物浄化槽3で微生物による分解を経た生物浄化水が、電気分解槽4に供給される。この供給により、電気分解槽4は、生物浄化槽3からの水も、電気分解により浄化する。
【0118】
(活性炭槽)
図6は、本発明の実施の形態1における水質浄化装置のブロック図である。
図6の水質浄化装置1は、活性炭槽8を備えている。活性炭槽8は、電気分解槽4で発生する次亜塩素酸を除去する。このため、電気分解槽4からの出力の先に備わっている。電気分解槽4では、電気分解の過程で、次亜塩素酸を発生させる。この次亜塩素酸が利用されて、電気分解槽4では、アンモニア成分などの汚濁が分解されて浄化される。
【0119】
この浄化により、電気分解槽4は、浄化後の電解浄化水を出力する。しかし、この出力される電解浄化水は、電気分解槽4から出力された次亜塩素酸を含んだまままの状態である。活性炭槽8は、電気分解槽4の出力の先に備わるので、電気分解槽4から出力される電解浄化水は、活性炭槽8を経由する。
【0120】
活性炭槽8は、活性炭を備えている。この活性炭は、電解浄化水に含まれる次亜塩素酸を還元する。この還元により、活性炭槽8は、電解浄化水から次亜塩素酸を除去できる。
【0121】
この除去によって、最終的に還流機構6から収容容器101に還流される電解浄化水は、次亜塩素酸をほとんど含まない状態となって還流する。これにより、収容容器101には、浄化されていることに加えて、次亜塩素酸も除去された、水生生物の生活により適した水が、循環しつつ供給されることになる。
【0122】
(流量制御部)
流量制御部5は、既述したように、生物浄化槽3と電気分解槽4とに輸送される排出水の量を切り替える。この切り替えにより、ある場合においては、生物浄化槽3のみに排出水が供給され、ある場合においては、生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれに排出水が供給される。後者の場合においては、その供給割合も制御される。
【0123】
なお、ここでの排出水は、輸送機構2により収容容器101から輸送される排出水と、電気分解槽4においては、生物浄化槽3からの水も含んだ概念である。
【0124】
図7は、本発明の実施の形態1における流量制御部による排出水の輸送の切り替えを説明するブロック図である。流量制御部5による流量制御に係る要素にフォーカスして示している。流量制御部5は、記憶部51、算出部52、比較部53、水量決定部54を備える。
【0125】
記憶部51は、既述した基準状態を記憶する。記憶部51は、半導体メモリや光メモリ、磁気メモリなどの電子的データを記憶する手段が用いられれば良い。基準状態は、生物浄化槽3における浄化能力を見る指標である。すなわち、流量制御部5の目的は、水質浄化装置1としては、恒常的に電力エネルギーを直接使用しない生物浄化槽3を使いつつ、生物浄化槽3の浄化能力を超える状態においては、電気分解槽4を使用することを、適切に制御することである。
【0126】
このため、基準状態は、生物浄化槽3での浄化能力を示す指標を利用することが適切である。基準状態に基づいて、流量制御部5は、必要な状態であれば排出水を電気分解槽4にも輸送させるからである。記憶部51は、この基準状態を記憶する。ここで、基準状態は、生物浄化槽3の分解能力(汚濁の分解、アンモニウム成分の分解)の限界である能力限界値と、能力限界値よりも低いレベルでマージンを取った値である余裕能力値を含む。これは、
図3で説明した内容である。
【0127】
流量制御部5は、この能力限界値あるいは余裕能力値を把握して、生物浄化槽3だけでの浄化では不十分となりうるかを判断できる。この判断によって、電気分解槽4での浄化も使用することを判断する。
【0128】
算出部52は、収容容器101における生物係数を算出する。収容容器101からは、輸送機構2を介して、排出水が水質浄化装置1に輸送される。算出部52は、この輸送された排出水を解析することができる。この解析を通じて、収容容器101から輸送された排出水の生物係数を算出できる。この輸送された排出水は、そのタイミングでの収容容器101の内部に収容されている水の状態を示している。このため、算出部52が、輸送された排出水の生物係数を算出することは、そのタイミングでの収容容器101内部の水の生物係数を算出することになる。
【0129】
後述するが、生物係数は、収容容器101内部の水の汚濁レベルを示す指標である。
【0130】
比較部53は、算出部52で算出された生物係数と、記憶部51に記憶されている基準状態とを比較する。基準状態は、生物浄化槽3の浄化能力の限界を示している。生物係数は、収容容器101から輸送される排出水の汚濁レベルを示している。この排出水の汚濁レベルは、生物浄化槽3での浄化能力に関係する。生物浄化槽3での浄化のみで十分であるかを、生物係数と基準状態との比較により、判断することができる。
【0131】
比較部53は、この観点に基づいて、生物係数と基準状態を比較する。比較部53は、比較結果を、水量決定部54に出力する。
【0132】
水量決定部54は、比較結果に基づいて、輸送機構2を介して輸送された排出水を、生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれへ供給する水量を決定する。すなわち、水量決定部54は、輸送機構2を介して輸送された排出水を、生物浄化槽3のみに供給する、生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれに供給する、生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれに、ある割合で供給する、との切り替えを決定する。
【0133】
流量制御部5は、このような処理手順で、生物浄化槽3と電気分解槽4とに、排出水を切り分けて供給する。これにより、生物浄化槽3の浄化能力を適切に反映した状態で、生物浄化槽3と電気分解槽4とのそれぞれへの、排出水の供給量を決定できる。
【0134】
(生物係数)
生物係数は、
(1)収容容器101中の水生生物の量 × 水生生物用の餌の量、
(2)収容容器101中の水生生物の密度、
(3)収容容器101中のアンモニア濃度、
(4)収容容器101中の亜硝酸濃度、
(5)収容容器101中の水温、
(6)収容容器101中の溶存酸素、
の、いずれかに基づいて算出される。算出部52は、これらの(1)~(6)のいずれかに基づいて、生物係数を算出する。これら(1)~(6)のそれぞれは、収容容器101内部の汚濁レベルを示す指標となりうるからである。
【0135】
例えば、(1)の「収容容器101中の水生生物の量 × 水生生物用の餌の量」は、収容容器101内部での水生生物の食事活動によって、酸素を消費したり、排泄物を出したりすることでの汚濁レベルを推定する指標となりうる。
【0136】
(2)の「収容容器101中の水生生物の密度(個体数の密度など)」は、生体活動によって生じうる汚濁レベル(排泄物、体液、排卵、酸素消費など)を推定する指標となりえる。
【0137】
(3)の「収容容器101中のアンモニア濃度」、(4)の「収容容器101中の亜硝酸濃度」は、汚濁の質を示す直接的な数値である。このため、汚濁レベルを推定する指標となりえる。
【0138】
(5)の「収容容器101中の水温」、(6)の「収容容器101中の溶存酸素」は、水生生物の生体活動の度合いを示す要素である。このため、汚濁レベルを推定する指標となりえる。
【0139】
このような汚濁レベルを推定できる指標として、算出部52は、(1)~(6)を例とする要素に基づいて、生物係数を算出する。これが、比較部53において、基準状態と比較される。この比較により、生物浄化槽3での浄化能力を超える排出水が輸送されてきているのかどうかを判断できる。この判断結果から、輸送された排出水の、生物浄化槽3および電解浄化槽4のそれぞれへの水量を決定できる。
【0140】
(流量制御部による振り分け)
上述したように、流量制御部5は、輸送される排出水の、生物浄化槽3および電解浄化槽4のそれぞれへの水量を決定する。生物係数は、収容容器101の汚濁レベルを推定する指標である。一方で、基準状態は、通常的に浄化動作を発揮している生物浄化槽3の浄化能力の限界レベルを示す指標である。これら2つの指標を比較することは、生物浄化槽3の能力を超える排出水が輸送される場合に、電気分解槽4を使用する(電気分解槽4に排出水を輸送するかどうか)ことの判断基準となる。
【0141】
このような比較結果と流量制御部5による排出水の流量制御について、それぞれの場合(ケース)について説明する。
【0142】
(その1:
図8 場合A、場合B)
図8は、本発明の実施の形態1における流量制御部における流量制御での場合A、場合Bでの制御を示す模式図である。
【0143】
場合A:生物係数が、基準状態に含まれる生物浄化槽3の余裕能力値未満
【0144】
場合Aのときには、流量制御部5は、収容容器101からの排出水の略全量を、生物浄化槽3に輸送させる。場合Aのときには、生物係数が生物浄化槽3のマージンをもった浄化能力よりも低い。これは、生物浄化槽3のみで、排出水を浄化することが可能であることを示している。
【0145】
このため、場合Aのときには、流量制御部5は、収容容器101からの排出水の略全量を、生物浄化槽3に輸送させ、生物浄化槽3のみで排出水の汚濁浄化を行わせる。
【0146】
場合B:生物係数が、基準状態に含まれる生物浄化槽3の能力限界値未満
【0147】
場合Bのときには、流量制御部5は、収容容器101からの排出水の略全量を、生物浄化槽3に輸送させる。場合Aのときには、生物係数が生物浄化槽3の浄化能力の限界よりも低い。場合Aよりは負担がかかる状況であるが、生物浄化槽3のみで、排出水を浄化することが可能であることを示している。
【0148】
このため、場合Bのときには、流量制御部5は、収容容器101からの排出水の略全量を、生物浄化槽3に輸送させ、生物浄化槽3のみで排出水の汚濁浄化を行わせる。
【0149】
なお、場合A、場合Bの両方を流量制御部5が採用して流量を制御してもよいし、いずれか一方のみ(例えば、場合Aのみ)を採用して、流量を制御してもよい。生物浄化槽3での負担をかけすぎないことを考慮して、場合Aのときのみ、流量制御部5は、生物浄化槽3へ、排出水の略全量を輸送させることでもよい。また、余裕能力値と限界能力値との差分(マージン)の大きさを、適宜変えることでもよい。
【0150】
なお、排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送するとは、流量制御や輸送機構2における物理的な動作において、何らかの原因で排出水の一部が電解分解槽4に輸送されてしまうことを、厳密に除く意図ではない。
【0151】
【0152】
図9は、本発明の実施の形態1における流量制御部における流量制御での場合Cでの制御を示す模式図である。
【0153】
場合C:生物係数が、基準状態に含まれる生物浄化槽3の能力限界値以上
【0154】
場合Cのときには、流量制御部5は、収容容器101からの排出水において、能力限界値以上の水量を、電気分解槽4に輸送させ、残量を生物浄化槽3に輸送させる。
【0155】
能力限界値以上の水量の排出水については、生物浄化槽3では浄化を十分に行うことは難しい。このような場合において、流量制御部5は、能力限界値以上の水量を計算する。例えば、単位時間での排出水と当該排出水の汚濁レベル(生物係数から算出される)との乗算により、汚濁水量を計算する。この汚濁水量において、能力限界値以上の汚濁水量を電解浄化槽4に輸送する。残量を、生物浄化槽3へ輸送する。
【0156】
このような切り替えにより、生物浄化槽3で浄化困難な量の部分については、電解浄化槽4において、排出水を浄化することができる。浄化を並列化でき、収容容器101からの排出水を、効率的かつ確実に浄化できる。
【0157】
また、流量制御部5は、場合Cのように電解浄化槽4に排出水を輸送する場合のみ、電解浄化槽4の電力的な起動を行わせることも好適である。加えて、電解浄化槽4での浄化が終了するときに、電気浄化槽4の電力を停止させることも好適である。
【0158】
これらの電力起動と停止の制御も合わせて行われることで、電解分解槽4で消費される電力エネルギーを、必要最小限に抑制することができる。結果として、水質浄化装置1としての電力エネルギーを抑えることができ、水質浄化装置1を備える水生生物収容装置100全体での電力エネルギーを抑えることもできる。この結果、水生生物収容装置100が、設置される場所での電力消費やコストを抑えることができる。加えて、水生生物収容装置100が、輸送車両による輸送において使用されることの容易性も高めることができる。
【0159】
【0160】
図10は、本発明の実施の形態1における流量制御部における流量制御での場合Dでの制御を示す模式図である。
【0161】
場合D:生物係数が、基準状態に含まれる生物浄化槽3の能力限界値以上
【0162】
この場合、
図10に示されるように、生物係数は、生物浄化槽3の能力限界値以上であるとともに余裕能力値以上である。すなわち、いずれの指標も超えている状態である。
【0163】
場合Dでは、ある時間帯である第1時間(第1時間帯として把握されればよい)と、第1時間の後の時間帯である第2時間(第2時間帯として把握されればよい)とで、流量制御部5による制御を変化させる。
【0164】
第1時間においては、流量制御部5は、収容容器101からの排出水において余裕能力値以上の水量を、電気分解槽4に輸送させる。併せて、残量を生物浄化槽3に輸送させる。すなわち、生物係数が限界能力値を超えている場合での処理の最初においては、生物浄化槽3での浄化能力の限界の内、最終的な限界よりもマージンをもった余裕能力値を超える水量を、電気分解槽4に輸送させる。
【0165】
最初の時間帯においては、電気分解槽4での電力消費量が大きくなっても、生物浄化槽3への負担を軽減することを優先するからである。
【0166】
第1時間の後の時間である第2時間においては、流量制御部5は、収容容器101からの排出水において、能力限界値以上の水量を、電気分解槽4に輸送させる。併せて、残量を生物浄化槽3へ輸送させる。すなわち、生物係数が能力限界値以上の場合での処理の後半においては、電気分解槽4での消費電力を抑えることを優先する。この優先のために、余裕能力値以上の水量ではなく、能力限界値以上の水量を、電気分解槽4に輸送させる。
【0167】
この輸送により、電気分解槽4に輸送される水量は、第1時間よりも相対的に減少する。この減少により、電気分解槽4での消費電力を、第1時間よりも相対的に抑えることができる。
【0168】
このように、時間軸において、生物浄化槽3での負荷軽減を優先する水量の分配と、電気分解槽4での消費電力低減を優先する水量の分解と、を切り替えることも好適である。
【0169】
【0170】
図11は、本発明の実施の形態1における流量制御部における流量制御での場合Eでの制御を示す模式図である。
【0171】
場合E:生物係数が、基準状態に含まれる生物浄化槽3の余裕能力値以上
【0172】
この場合、流量制御部5は、収容容器101からの排出水において、余裕能力値以上にかかわる水量を電気分解槽4に輸送させる。併せて、残量を、生物浄化槽3に輸送させる。
【0173】
流量制御部5は、生物浄化槽3での負担軽減を優先して、マージンのある余裕能力値を超える水量の排出水を、電気分解槽4へ輸送して、電気分解槽4での浄化を行わせる。
【0174】
なお、
図11では、生物係数が余裕能力値以上であって限界能力値未満の場合を示している。しかし、生物係数が余裕能力値以上であると共に限界能力値以上である場合も、このその4で説明した流量制御が行われてもよい。流量制御のその3における説明とは、別の観点である、生物浄化槽3の負担軽減を優先するその4での制御が行われることを示している。
【0175】
以上のように、実施の形態1における水質浄化装置1は、水生生物収容装置100からの汚濁を含んだ排出水を、生物浄化槽3と電気分解槽4のハイブリッドで浄化することができる。このとき、電力消費抑制と生物浄化槽3の浄化能力とのバランスを取りつつ、最適な浄化を行うことができる。
【0176】
これらの結果、水生生物の生きた状態での保管や輸送において、コストなどの懸念を低減したうえで、水生生物収容装置100を、様々な場所、場面、方法で使用することができる。
【0177】
(実施の形態2)
【0178】
次に、実施の形態2について説明する。
【0179】
(酸素供給)
【0180】
図2においては、還流機構6の途中において、酸素供給部110が示されている。酸素供給部110は、水質浄化装置1に含まれる要素として把握されてもよいし、水生生物収容装置100に含まれる要素として把握されてもよい。
【0181】
酸素供給部110は、生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれで浄化された、生物浄化水および電解浄化水が、収容容器101に還流する過程で、これらの浄化水に酸素を溶存させる。浄化されて還流する浄化水は、この酸素供給部110による酸素の供給を受けて、酸素濃度を高めて収容容器101に還流する。
【0182】
収容容器101には、水生生物が収容されている。水生生物の生体活動により、収容容器101内部の水の溶存酸素の濃度は減少している。この溶存酸素の濃度が減少した後の状態で、排出水が浄化される。このため、浄化されて汚濁成分が減少していても、溶存酸素の濃度は下がったままである。
【0183】
この浄化水に、酸素供給部110が、酸素を溶存させることで、収容容器101に還流する水の溶存酸素の濃度は、適切なレベルに復帰できる。浄化と合わせて、溶存酸素の濃度も復帰することで、水質浄化装置1を循環した水は、収容容器101にて再び水生生物の生体活動のために使用可能となる。
【0184】
これらの結果、水生生物の生存に必要となる水が、外部から十分に供給できない環境であっても、水の浄化を繰り返して循環させることで、収容容器101での水生生物の生体活動を維持して保管を実現できる。
【0185】
(電気分解槽での制御)
図12は、本発明の実施の形態2における水質浄化装置のブロック図である。
図12の水質浄化装置1は、計測部9と電気分解槽制御部10を更に備えている。
【0186】
計測部9は、収容容器101内部のアンモニア成分の量を計測する。
【0187】
また、説明済みのように、収容容器101においては水生生物の生体活動によって、アンモニア成分が生じている。このアンモニア成分は、分解されて浄化されるべき成分である。また、電気分解槽4においては、電気分解で発生する次亜塩素酸によりアンモニア成分を分解する。電気分解槽4は、この次亜塩素酸を利用して、アンモニア成分を分解する。
【0188】
説明したように、収容容器から排出される排出水は、アンモニア成分を含んでいる。このアンモニア成分の量によって、電気分解槽4の電気分解に関する能力が制御されることは好ましい。このため、
図12にある、計測部9と電気分解槽制御部10が、このアンモニア成分の量によって、電気分解槽4の能力を制御する。
【0189】
計測部9は、計測結果を電気分解槽制御部10に出力する。
【0190】
電気分解槽制御部10は、計測部9での計測結果に基づいて、電気分解槽4での電流もしくは電圧を制御する。電気分解槽4での電流や電圧は、電気分解能力を決める。すなわち、アンモニア成分の分解能力を決める一つの要素である。電気分解槽4に輸送される排出水に含まれるアンモニア成分を分解する能力を、電気分解槽制御部10は、制御する。
【0191】
電流もしくは電圧が最適レベルに制御されると、輸送される排出水が実際に含むアンモニア成分の濃度に最適なレベルで、電気分解槽4は、アンモニア成分を分解できる。また、最適レベルで制御されると、過分な電流や電圧による、不要な消費電力が生じることを抑制できる。
【0192】
このように、計測部9での計測とこの計測結果に基づく電気分解槽4の制御によって、電気分解槽4での浄化能力の最適化と、消費電力の最適化を実現できる。
【0193】
(輸送路11)
図12においては、生物浄化槽からの生物浄化水を、電気分解槽4に輸送する輸送路11が示されている。この輸送路11で輸送された生物浄化水は、電気分解槽4で、電気分解による殺菌処理を受ける。電気部分解により、生物浄化とは異なるメカニズムでの汚濁分解がなされる。この汚濁分解により、殺菌処理が施される。
【0194】
生物浄化水が、電気分解槽4でさらに浄化されることで、浄化レベルの増加した浄化水が、収容容器101に還流する。これにより、水生生物の生体活動に必要となる水を循環させて使用される水生生物収容装置100において、循環する水の浄化レベルを高めることができる。結果として、水生生物の生体活動の維持を、より高いレベルで実現できる。
【0195】
(合流による殺菌処理)
図13は、本発明の実施の形態2における水質浄化装置のブロック図である。
図13では、生物浄化槽3からの生物浄化水の出力経路と、電気分解槽4からの電解浄化水の出力経路とで、合流がされることを示している。この合流により、生物浄化槽3からの生物浄化水と、電解浄化槽4からの電解浄化水とが合流する。
【0196】
この合流によって、生物浄化水は、電解浄化水によって殺菌処理される。電解浄化水は、電解浄化槽4において次亜塩素酸が電気分解で発生するので、電解浄化槽4から出力された段階では、次亜塩素酸を含んでいる。この次亜塩素酸が、生物浄化水を殺菌する。この殺菌処理によって、アンモニア成分を始めとする汚濁を微生物の生体活動で分解した生物浄化水は、次亜塩素酸によってさらに化学的に殺菌もされる。
【0197】
この合流での殺菌の後で、
図13に示すように、活性炭槽8が備わっている。この活性炭槽8が、次亜塩素酸を除去できる。この除去により、より浄化された浄化水が、収容容器101に還流する。結果として、収容容器101における水生生物の健康維持がさらに実現できる。
【0198】
(輸送機器における適用)
図14は、本発明の実施の形態2における輸送機器に水生生物収容装置が備わっている模式図である。実施の形態1、2で説明した水質浄化装置1およびこれと接続する水生生物収容装置100とが、輸送機器300に積載されている。輸送機器300は、例えば、トラックや活魚輸送車などである。もちろん、船舶や鉄道車両であってもよい。
【0199】
このような輸送機器300によって水生生物が生きた状態で輸送される必要性は、多々ある。漁獲地から消費地へ輸送する必要だったり、ある保管地区から消費される店舗などに輸送される場合だったりである。
図14では、水生生物としてイカ類200が収容されている。輸送先において生きたまま必要となることで、生きたイカ類200が、水生生物収容装置100に収容されている。この状態で、輸送機器300によって輸送される。
【0200】
また、輸送機器300で輸送されることで、水生生物収容装置100には、外部から必要となる海水などを供給し続けることが困難である。このため、水生生物収容装置100の収容容器101に、最初に供給された海水などを、浄化しながら繰り返し使用することが求められる。
【0201】
輸送機器300には、実施の形態1,2で説明した水質浄化装置1が一緒に積載されている。水質浄化装置1は、輸送機構2と還流機構6とによって、水生生物収容装置100と接続されている。この接続は、水の循環のやり取りを実現する。
【0202】
水質浄化装置1は、実施の形態1、2で説明した通り、水生生物収容装置100からの排出水を浄化して還流させる。この循環により、輸送機器300に積載されて輸送される場合に、外部からの海水などの供給が難しくても、水生生物を生かしたまま輸送できる。水生生物収容装置100および水質浄化装置1は、実施の形態1、2で説明したような動作を行う。これらの結果、外部からの水の供給が難しい輸送においても、水生生物の生体活動を維持することができる。
【0203】
なお、実施の形態1~2で説明された水生成物収容装置1は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0204】
1 水質浄化装置
2 輸送機構
3 生物浄化槽
4 電気分解槽
5 流量制御部
51 記憶部
52 算出部
53 比較部
54 水量決定部
6 還流機構
8 活性炭槽
9 計測部
10 電気分解槽制御部
11 輸送路
100 水生生物収容装置
101 収容容器
102 排出部
103 蓋
104 供給口