(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】鉄筋トラス及びデッキパネル
(51)【国際特許分類】
E04C 5/06 20060101AFI20240129BHJP
E04B 5/32 20060101ALI20240129BHJP
E04B 5/40 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
E04C5/06
E04B5/32 A
E04B5/40 D
(21)【出願番号】P 2020015057
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】598143790
【氏名又は名称】株式会社クギン
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 幸弘
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-050110(JP,U)
【文献】登録実用新案第3091969(JP,U)
【文献】特開2001-311258(JP,A)
【文献】特開平10-196027(JP,A)
【文献】特開2012-087548(JP,A)
【文献】特開2007-170161(JP,A)
【文献】特開平10-008620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/06
E04B 5/32
E04B 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に離間して配設された2本の主筋と一対のラチス材を有する鉄筋トラスであって、
線状の第1主筋と、
該第1主筋の下方側に離間し、該第1主筋に沿うように位置する線状の第2主筋と、を備え、
前記一対のラチス材は、長さ方向に第1変曲部と第2変曲部を互いに繰り返す波形状であり、前記第1主筋及び前記第2主筋を、前記第1主筋及び前記第2主筋が伸びる方向と交差する幅方向の両側から挟むように互いに対向し、一方のラチス材の各前記第1変曲部と他方のラチス材の各前記第1変曲部とが向かい合うように配設されるとともに、
前記第1主筋と、前記一対のラチス材とが、接する部位に設定された第1接合部位をそれぞれ有し、
前記第2主筋と、前記一対のラチス材における前記第1変曲部と前記第2変曲部の中間部位とが、接する部位に設定された第2接合部位をそれぞれ
有し、
前記一対のラチス材は、
各前記第2接合部位と同じ高さ位置に第1折曲点をそれぞれ有し、該第1折曲点において、前記幅方向にそれぞれ広がりを有するように折曲しており、
各前記第1折曲点と各前記第2変曲部の間に第2折曲点をそれぞれ有し、該第2折曲点において、前記一方のラチス材の各前記第2変曲部と前記他方のラチス材の各前記第2変曲部が互いに遠ざかるように水平に折曲された脚部をそれぞれ有する、鉄筋トラス。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋トラスであって、
前記一対のラチス材は、それぞれ同じ振幅、同じピッチで前記第1変曲部と前記第2変曲部を互いに繰り返す波形状である、鉄筋トラス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉄筋トラスと、
金属製の板部材とを有し、
各前記第2変曲部と前記板部材が接合されて一体化されている、デッキパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋トラス及びデッキパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造の建築物の天井や床を施工する際に、鉄筋とデッキのユニットを用いる工法が採用されている。鉄筋とデッキのユニットとしては、複数の主筋とラチス筋を有する鉄筋トラスが溶接等で底板デッキに固定され、鉄筋コンクリートスラブの主筋と底板デッキが一体となった構造材がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、1本の上部主筋と2本の下部主筋、及び長さ方向に山部と谷部を繰り返す波形状の2本のラチス材とを備えた鉄筋トラスが開示されている。この鉄筋トラスは、上部主筋と2本のラチス材の各山部の頂部とが接合されている。また、各ラチス材は、1本のラチス材に対し1本の下部主筋がラチス材の各谷部において接合されている。2本の下部主筋は長さ方向と交差する方向に互いに離間しているため、2本のラチス材は互いに外側に広がる構成となっている。さらに、ラチス材の各谷部の先端が底板に接合され、鉄筋トラスと底板が一体となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された鉄筋トラスは、上部主筋と下部主筋を合わせた主筋の本数が3本となるため、重量が大きくなり易い。また、平面視における主筋とラチス材交差部分が多く、コンクリートの充填を妨げる傾向にある。さらには、鉄筋トラス、又は鉄筋トラスと底板が一体となったデッキパネルを運搬する際に嵩張り易い。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、軽量化、コンクリートの充填における作業効率の向上及び運搬時の嵩張りの抑制を図ることができる鉄筋トラス及びデッキパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、次の手段をとる。先ず、第1の発明は、上下に離間して配設された2本の主筋と一対のラチス材を有する鉄筋トラスであって、線状の第1主筋と、該第1主筋の下方側に離間し、該第1主筋に沿うように位置する線状の第2主筋とを備え、前記一対のラチス材は、長さ方向に第1変曲部と第2変曲部を互いに繰り返す波形状であり、前記第1主筋及び前記第2主筋を、前記第1主筋及び前記第2主筋が伸びる方向と交差する幅方向の両側から挟むように互いに対向し、一方のラチス材の各前記第1変曲部と他方のラチス材の各前記第1変曲部とが向かい合うように配設されるとともに、前記第1主筋と、前記一対のラチス材とが、接する部位に設定された第1接合部位をそれぞれ有し、前記第2主筋と、前記一対のラチス材における前記第1変曲部と前記第2変曲部の中間部位とが、接する部位に設定された第2接合部位をそれぞれ有し、前記一対のラチス材は、各前記第2接合部位と同じ高さ位置に第1折曲点をそれぞれ有し、該第1折曲点において、前記幅方向にそれぞれ広がりを有するように折曲しており、各前記第1折曲点と各前記第2変曲部の間に第2折曲点をそれぞれ有し、該第2折曲点において、前記一方のラチス材の各前記第2変曲部と前記他方のラチス材の各前記第2変曲部が互いに遠ざかるように水平に折曲された脚部をそれぞれ有する、鉄筋トラスである。
【0008】
第1の発明の鉄筋トラスは、主筋が2本の構成とすることにより、主筋の本数を低減できるため、軽量化を図り得る。また、鉄筋トラスの平面視において主筋及びラチス材の交差部分が従来例と比較して少なくなる。さらに、一対のラチス材が第1主筋及び第2主筋を挟むように配置された構成をとることにより、従来例と比べて鉄筋トラスの幅を狭くすることができ、幅方向の広がりが抑えられる。よって、鉄筋トラスにコンクリートを流し込み易くなり、コンクリートの充填作業の効率化を図り得る。また、複数の鉄筋トラスを重ね易くできるため、運搬時の嵩張りの抑制を図ることができる。
【0010】
また、一対のラチス材の各第2変曲部が幅方向において外側に広がるため、より広い面積で鉄筋トラスを支えることができ、鉄筋トラスが安定して自立する。よって、鉄筋トラスの剛性、強度の向上、及び安定性の向上を図ることができる。
【0012】
また、一対のラチス材が各第2変曲部側において折曲し、脚部が構成されるため、それぞれの脚部によって鉄筋トラスを支えることができる。よって、鉄筋トラスはより安定して自立し、剛性及び安定性の向上を図ることができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明における鉄筋トラスであって、前記一対のラチス材は、それぞれ同じ振幅、同じピッチで前記第1変曲部と前記第2変曲部を互いに繰り返す波形状である。
【0014】
第2の発明によれば、一対のラチス材の第1変曲部と第2変曲部の振幅及びピッチが一定となるため、ラチス材の折り曲げ加工、第1主筋及び第2主筋との接合を行い易くなり、鉄筋トラスの製造工程の短縮を図ることができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明における鉄筋トラスと、金属製の板部材とを有し、各前記第2変曲部と前記板部材が接合されて一体化されている、デッキパネルである。
【0016】
第3の発明によれば、鉄筋トラスと板部材が一体となった強固なデッキパネルを構成し得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記の各発明の構成をもつことにより、軽量化、コンクリート充填の作業効率の向上及び運搬時の嵩張りの抑制を図り得る鉄筋トラス及びデッキパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態1に係る鉄筋トラス及びデッキパネルの斜視図である。
【
図5】本実施形態2に係る鉄筋トラス及びデッキパネルの斜視図である。
【
図9】本実施形態1及び本実施形態2の変更例1を示す図である。
【
図10】本実施形態1及び本実施形態2の変更例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、
図1から
図10を用いて説明する。本発明の実施形態に係る鉄筋トラス2及びデッキパネル1は、例えばコンクリート床スラブ等の建設工事に用いられる。建設現場においては、鉄筋トラス2及び板部材40が一体となって構成されるデッキパネル1を並べて敷き込みが行われた後に、コンクリートが打設される。
図1は、実施形態1に係る鉄筋トラス2及びデッキパネル1の斜視図である。鉄筋トラス2は、板部材40に接合され、一体となってデッキパネル1を構成する。なお、鉄筋トラス2及びデッキパネル1の大きさは、床スラブ等の面積や厚さに応じて設定される。また、鉄筋トラス2の設置数及び配列の間隔も、適宜設定される。
【0020】
実施形態1の鉄筋トラス2は、
図1から
図4に示すように、直線状の第1主筋10、第2主筋20と、波形状の一対のラチス材30を有する。
【0021】
第1主筋10と第2主筋20は、鉄製材を軸方向に線状に引き伸ばして形成されている。例えば、異形鉄筋を用いても良い。第1主筋10と第2主筋20は、上下方向に離間して、第2主筋20が第1主筋10に沿うように下方側に位置している。第1主筋10と第2主筋20は互いに平行であるのが好ましい。なお、2本の主筋に用いる鉄筋は、第1主筋10と第2主筋20に同じ径の鉄筋を用いても良く、それぞれ異なる径の鉄筋を用いても良い。また、第1主筋10及び第2主筋20のそれぞれの高さ位置は、鉄筋トラス2の大きさに応じて適宜設定できる。さらには、第1主筋10及び第2主筋20は直線状に限られず、床スラブの設計に応じて円弧状等他の形状に加工しても良い。
【0022】
一対のラチス材30は、線状の金属材を、長さ方向に波形状となるように折曲げ加工して形成されている。例えば、鉄線材を用いても良い。ラチス材30は、長さ方向に第1変曲部31と第2変曲部32を互いに繰り返し、第1変曲部31と第2変曲部32の間に傾斜部38、すなわち、斜め上方に伸びた上方傾斜部38U、及び斜め下方に伸びた下方傾斜部38Dをそれぞれ有している。
【0023】
具体的には、長さ方向において、斜め上方に直線状に伸びたラチス材30が、斜め下方に向きを変えて折り曲げられる。斜め上方から斜め下方に向きを変えて折曲したラチス材30の曲線状の部分が、第1変曲部31となる。また、斜め下方に直線状に伸びたラチス材30が、斜め上方に向きを変えて折り曲げられる。斜め下方から斜め上方に向きを変えて折曲したラチス材30の曲線状の部分が、第2変曲部32となる。また、長さ方向に、第2変曲部32から第1変曲部31に向かって斜め上方に伸びている部分が上方傾斜部38U、第1変曲部31から第2変曲部32に向かって斜め下方に伸びている部分が下方傾斜部38Dである。
【0024】
言い換えれば、ラチス材30は、長さ方向に、上方傾斜部38Uが第1変曲部31に向かって伸びており、第1変曲部31において斜め下方に向きを変えて折り曲げられている。そして、下方傾斜部38Dが第2変曲部32に向かって伸びており、第2変曲部32において斜め上方に向きを変えて折り曲げられている。
【0025】
ラチス材30は、一方のラチス材30aと他方のラチス材30bで一対となっている。これらのラチス材30a、30bは、第1主筋10及び第2主筋20を、第1主筋10及び第2主筋20が伸びる方向と交差する幅方向の両側から挟むように互いに対向して配設されている。
【0026】
図2から
図4に示すように、一方のラチス材30aの各第1変曲部31aと他方のラチス材30bの各第1変曲部31bとが向かい合い、一方のラチス材30aの各第2変曲部32aと他方のラチス材30bの各第2変曲部32bとがそれぞれ向かい合うように配設される。なお、ラチス材30はそれぞれ同じ振幅、同じピッチで第1変曲部31と第2変曲部32を互いに繰り返す構成である。よって、第1変曲部31の角度θ1及び第2変曲部32の角度θ2は一定になる。
【0027】
言い換えれば、ラチス材30は波形状の山部と谷部を有しており、長さ方向に同じ振幅、同じピッチで山部と谷部を互いに繰り返す構成である。そして、
図3に示す幅方向から見た図において、一方のラチス材30aの各山部と他方のラチス材30bの各山部がそれぞれ重なり、一方のラチス材30aの各谷部と他方のラチス材30bの各谷部がそれぞれ重なるように配置されている。
【0028】
ラチス材30は、第1接合部位33と第2接合部位34を有している。第1接合部位33は、第1主筋10の上方外周面と、ラチス材30における第1変曲部31の頂点部分とが接する部位にそれぞれ設定されている。第2接合部位34は、第2主筋20と、ラチス材30における第1変曲部31と第2変曲部32の中間部位とが接する部位にそれぞれ設定されている。第1主筋10とラチス材30が、各第1接合部位33において溶接によって接合されており、第2主筋20とラチス材30が、各第2接合部位34において溶接によって接合されている。なお、第1接合部位33及び第2接合部位34の位置は、任意に設定できる。
【0029】
ラチス材30は、各第2接合部位34と各第2変曲部32の間に、任意に設定された第2折曲点36をそれぞれ有している。また、第2折曲点36において折曲した脚部37をそれぞれ有している。具体的には、第2折曲点36において、一方のラチス材30aの各第2変曲部32aと他方のラチス材30bの各第2変曲部32bが互いに遠ざかるように、ラチス材30a、30bが折り曲げられ、傾斜部38の第2変曲部32側において脚部37が形成される。言い換えれば、一対のラチス材30は、第2折曲点36において、幅方向の外側に水平になるように折り曲げられる。よって、第2折曲点36におけるラチス材30の折曲の角度θ6は、脚部37が水平となるように設定されている。なお、第2折曲点36から第2変曲部32までが脚部37となる。
【0030】
板部材40は、金属製の板であり、例えば溶融亜鉛メッキ鋼板を用いても良い。板部材40の表面には、鉄筋トラス2の設置位置に合わせて、リブ41が形成されている。リブ41は、板部材40の表面が上方へ凸状に突出して形成され、板部材40の長さ方向に沿って直線状に伸びている。リブ41にラチス材30の脚部37が溶接により接合される。このように、鉄筋トラス2と板部材40が接合され、一体となってデッキパネル1を構成する。なお、リブ41の断面形状は、半円形や台形等、様々な形状に加工しても良い。また、リブ41を設けず、平らな板部材40を用いても良い。
【0031】
次に、上記実施形態1における鉄筋トラス2及びデッキパネル1の機能、作用について説明する。上記実施形態1の鉄筋トラス2は、主筋である鉄筋の本数が2本の構成である。鉄筋は一定の長さがあることから、主筋の本数を3本から2本に減らすことにより、鉄筋トラス2の重量を大幅に削減し得る。また、構成部材の使用量を抑制し得る。
【0032】
また、上記実施形態1における鉄筋トラス2は、一対のラチス材30a、30bが第1主筋10及び第2主筋20を幅方向の両側から挟むように配置された構成である。この構成をとることにより、幅方向において第1主筋10及び第2主筋20を左右から均一に保持し得る。また、鉄筋トラス2の左右への傾きを抑制し得る。よって、コンクリート打設時においても、第1主筋10と第2主筋20が互いに平行である状態を維持し易くなる。さらに、構成部材の変形を抑えられ、鉄筋トラス2の剛性の向上を図ることができる。
【0033】
さらに、一対のラチス材30が2本の主筋を幅方向の両側から挟むように配置された構成により、従来例に比べて幅方向の長さを抑えた鉄筋トラス2を構成し得る。
図2を参照として、第2折曲点36より上方における鉄筋トラス2の幅は、第1主筋10又は第2主筋20の径に2本のラチス材30a、30bの径を合わせた長さであり、各構成部材の間にできる隙間は従来例と比べて小さいものである。そのため、互いに上下逆向きにした複数の鉄筋トラス2を重ね易くなり、運搬等の際には嵩張りを抑え、省スペース化を図ることができる。
【0034】
図2を参照として、鉄筋トラス2の幅は従来例よりも狭くすることができる。
図4を参照として、平面視において、第1主筋10、第2主筋20、及びラチス材30のそれぞれの部材が互いに交差する部分が従来例に比べて少なくなる。このように各構成部材が混み合うことなく配置される構成をとることにより、コンクリート打設時においてコンクリートを流し込み易くなり、作業工程の短縮化を図ることができる。
【0035】
図2から
図4を参照として、一方のラチス材30aの各第1変曲部31aと他方のラチス材30bの各第1変曲部31bとがそれぞれ向かい合う構成をとるため、一対のラチス材30は、各第1変曲部31a、31bが幅方向からみてそれぞれ重なる。また、一方のラチス材30aの各第1接合部位33aと、他方のラチス材30bの各第1接合部位33bとが、幅方向からみてそれぞれ重なる。よって、各第1接合部位33a、33bにおいて、第1主筋10と一対のラチス材30a、30bとの溶接作業を一度に行うことができ、溶接ポイントの削減を図ることができる。
【0036】
また、ラチス材30a、30bはそれぞれ、第1主筋10及び第2主筋20を跨ぐことなく、これらの主筋と接合されているため、第1主筋10、第2主筋20、ラチス材30の径を選択する際には、自由度が高くなる。
【0037】
さらに、ラチス材30は傾斜部38の第2変曲部32側において脚部37を有する構成であることにより、ラチス材30の脚部37によって鉄筋トラス2を支えることができる。また、鉄筋トラス2が板部材40に当接する面積がより広くなる。そのため、鉄筋トラス2は安定して自立し、剛性が向上し得る。
【0038】
また、ラチス材30はそれぞれ同じ振幅、同じピッチで第1変曲部31と第2変曲部32を互いに繰り返す構成である。そのため、第1主筋10とラチス材30における各第1変曲部31の頂部を接合することにより、第1主筋10が直線状に保持される。言い換えれば、ラチス材30において第1接合部位33が直線上に並ぶように設定される。なお、第1主筋10に沿って第2主筋20が平行に配置されることにより、第2接合部位34が直線上に並ぶように設定される。また、振幅及びピッチが一定であるため、ラチス材30の折り曲げ加工や主筋との接合作業を効率良く行うことができる。
【0039】
上記実施形態1の鉄筋トラス2は、上記の構成並びに機能、作用により、剛性及び強度の向上を図ることができるため、主筋の本数を減らして2本にすることができる。よって、一定の剛性及び強度を維持しつつ、鉄筋トラス2の重量を削減できる。
【0040】
上記実施形態1おける鉄筋トラス2及びデッキパネル1は、次のような効果がある。鉄筋トラス2は、主筋が2本の構成とすることにより、主筋の本数を低減できるため、軽量化を図ることができる。また、
図4を参照として、鉄筋トラス2の平面視において第1主筋10、第2主筋20、及びラチス材30の交差部分が従来例と比較して少なくなる。さらに、一対のラチス材30が第1主筋10及び第2主筋20を挟むように配置された構成をとることにより、従来例と比べて鉄筋トラス2の幅を狭くすることができ、幅方向の広がりが抑えられる。よって、鉄筋トラス2にコンクリートを流し込み易くなり、コンクリートの充填作業の効率化を図ることができる。また、複数の鉄筋トラス2を重ね易くできるため、運搬時の嵩張りの抑制を図ることができる。
【0041】
鉄筋トラス2は、ラチス材30が各第2変曲部32側において折曲し、脚部37が構成されるため、ラチス材30の脚部37によって鉄筋トラス2を支えることができる。よって、鉄筋トラス2はより安定して自立し、剛性及び安定性の向上を図ることができる。また、ラチス材30の各第2変曲部32側において板部材40に当接する面積がより広くなり、板部材40に鉄筋トラス2を接合する際における安定性の向上を図ることができる。ラチス材30は、同じ振幅、同じピッチで第1変曲部31と第2変曲部32を繰り返す波形状である。これにより、ラチス材30の第1変曲部31と第2変曲部32の振幅及びピッチが一定となるため、ラチス材30の折り曲げ加工、第1主筋10及び第2主筋20との接合を行い易くなり、鉄筋トラス2の製造工程の短縮を図ることができる。また、鉄筋トラス2と板部材40が一体となった強固なデッキパネル1を構成し得る。
【0042】
上記実施形態1における鉄筋トラス2と板部材40を接合することにより、一定の剛性及び強度を維持できるデッキパネル1が構成される。よって、製造工程の作業効率化及び経費削減を図り、さらには軽量化を図りつつ、強固な鉄筋トラス及びデッキパネルを提供し得る。
【0043】
鉄筋トラス2は、一対のラチス材30が2本の主筋を幅方向の両側から挟むように配置された構成であるため、鉄筋トラス2の安定性及び剛性が向上し得る。また、従来例に比べて鉄筋トラス2の幅が狭く、平面視における各構成部材の交差部分が少ない構成であるため、コンクリートの流し込みを行い易く、作業の効率化を図ることができる。さらに、幅方向における広がりを抑えることにより、複数の鉄筋トラス2を重ね易くすることができる。よって、鉄筋トラス2、又は鉄筋トラス2と板部材40が一体となったデッキパネル1の運搬時等の嵩張りを抑え、省スペース化を図ることができる。
【0044】
また、一方のラチス材30aの各第1変曲部31aと他方のラチス材30bの各第1変曲部31bとが向かい合う構成であるため、第1主筋10と一対のラチス材30a、30bとの溶接ポイントが重なる。よって、全体として溶接ポイントの数が削減され、作業工程の短縮化を図ることができる。さらに、鉄筋トラス2は、構成部材の使用量を抑えることにより、軽量化及びコスト削減を図ることができる。また、コンクリートを流し込み易い構成であることにより、作業工程の短縮化を図ることができる。
【0045】
さらに、ラチス材30の各山部と各谷部の振幅、ピッチは一定である構成により、第1接合部位33及び第2接合部位34がそれぞれ直線上に並ぶように設定される。そのため、ラチス材30の折り曲げ加工や主筋との接合作業を効率的に行うことができ、作業工程の短縮化を図ることができる。また、鉄筋トラス2は、ラチス材30が傾斜部38の第2変曲部32側において脚部37を有するため、安定して自立する。この構成により、板部材40に接合する際、及びコンクリート打設時における鉄筋トラス2の安定性向上を図ることができる。
【0046】
また、ラチス材30a、30bは、第1主筋10及び第2主筋20を跨がずに、幅方向の両側から挟むように接合される配置構成であるから、第1主筋10、第2主筋20、ラチス材30の径を選択する際、自由度が高くなる。よって、様々な大きさ又は高さの鉄筋トラス2を提供し得る。さらに、第1主筋10及び第2主筋20は均一に保持され、変形が抑えられることにより、鉄筋トラス2の安定性及び剛性の向上を図ることができる。
【0047】
次に、実施形態2に係る鉄筋トラス2及びデッキパネル1について説明する。なお、実施形態1において説明した鉄筋トラス2及びデッキパネル1と実質的な構成及び作用効果等が同じとなる箇所については、これらと同一の符号を付して説明を省略し、異なる箇所について詳しく説明することとする。
【0048】
実施形態2の鉄筋トラス2は、
図5から
図8に示すように、直線状の第1主筋10と、第1主筋10の下方側に位置する直線状の第2主筋20と、長さ方向に第1変曲部31と第2変曲部32を互いに繰り返す波形状の一対のラチス材30を有している。第1主筋10、第2主筋20、及び一対のラチス材30は、実施形態1と同様の配置構成となっている。
【0049】
図6を参照として、第1主筋10と第2主筋20にはそれぞれ異なる径の鉄筋が用いられている。なお、第1主筋10の径が、第2主筋20の径よりも大きい構成となっている。
【0050】
ラチス材30a、30bは、
図6に示すように、各第2接合部位34と各第2変曲部32a、32bの間に、任意に設定された第1折曲点35及び第2折曲点36をそれぞれ有している。実施形態2においては、第1折曲点35は、第2接合部位34と同じ高さ位置に設定されている。第2折曲点36は、第1折曲点35よりも下方に設定される。
【0051】
第1折曲点35においては、ラチス材30が幅方向にそれぞれ広がりを有するように折り曲げられ、拡開した構成となっている。言い換えれば、一方のラチス材30aの各第2変曲部32aと他方のラチス材30bの各第2変曲部32bが互いに遠ざかるように、ラチス材30a、30bが折り曲げられている。なお、第1主筋10及び第2主筋20を挟んで対向する第2変曲部32a、32bの幅方向における離間距離L1は、任意に設定することができ、ラチス材30a、30bは所定の幅方向における離間距離L1に合わせて拡開している。
【0052】
第2折曲点36においては、ラチス材30a、30bが、一方のラチス材30aの各第2変曲部32aと他方のラチス材30bの各第2変曲部32bが互いに遠ざかるように折り曲げられ、脚部37がそれぞれ形成される。言い換えれば、ラチス材30a、30bは、それぞれ幅方向の外側に水平に折り曲げられ、脚部37が形成される。
【0053】
第1折曲点35におけるラチス材30の拡開の角度θ5及び第2折曲点36におけるラチス材30の角度θ6は、脚部37が水平となるように設定されている。
【0054】
上記実施形態2における鉄筋トラス2及びデッキパネル1は、ラチス材30a、30bが各第1折曲点35において幅方向にそれぞれ広がりを有するように折り曲げられ、拡開した構成である。これにより、第2主筋20の下方において、板部材40とラチス材30a、30bにおける傾斜部38とで、トラスが形成される。そのため、より多くのトラスによって第1主筋10及び第2主筋20を支える構成となる。
【0055】
上記実施形態2における鉄筋トラス2及びデッキパネル1は、上記実施形態1における効果に加えて、次のような効果がある。鉄筋トラス2は、一対のラチス材30の第2変曲部32が幅方向においてそれぞれ外側に広がるため、より広い面積で鉄筋トラス2を支えることができ、鉄筋トラス2が安定して自立する。さらに、第2主筋20の下方においてもトラスが形成されるため、より多くのトラスで第1主筋10及び第2主筋20を支えることができ、第1主筋10及び第2主筋20の変形を抑えることができる。よって、鉄筋トラス2の剛性及び強度の向上を図ることができる。さらには、剛性及び強度の高い鉄筋トラス2及びデッキパネル1を提供し得る。また、ラチス材30が折曲して鉄筋トラス2の外側に拡開し、傾斜部38の第2変曲部32側において脚部37を有するため、鉄筋トラス2は安定して自立する。この構成により、板部材40に接合する際、及びコンクリート打設時における鉄筋トラス2の安定性向上を図ることができる。
【0056】
図9は、上記実施形態1及び上記実施形態2の変更例1を示すものである。ラチス材30には、第2接合部位34よりも下方に第1折曲点55が設定される。第1折曲点55において、ラチス材30が幅方向にそれぞれ広がりを有するように折り曲げられ、拡開した構成となっている。また、第1折曲点55と第2変曲部32との間に第2折曲点36が設定される。第2折曲点36においては、ラチス材30が幅方向の外側に水平に折り曲げられ、脚部37が形成される。
【0057】
図10は、上記実施形態1及び上記実施形態2の変更例2を示すものである。ラチス材30は、長さ方向に第1変曲部51と第2変曲部52を互いに繰り返す波形状となるように形成されている。第1変曲部51と第2変曲部52が互いに繰り返すそれぞれのピッチは、すべて同じではなく、異なるピッチが含まれる。例えば、各第1変曲部51のうち、一つの第1変曲部51からその隣り合う第1変曲部51までの距離をL3とし、他の第1変曲部51からその隣り合う第1変曲部51までの距離をL4とすると、L3とL4は異なる構成となっている。また、ラチス材30は、異なる角度の第1変曲部51及び第2変曲部52を有している。例えば、一つの第1変曲部51の角度θ3と、他の第1変曲部51の角度θ4は、異なる構成となっている。これにより、様々な設計サイズや強度の床スラブに対応した鉄筋トラス2及びデッキパネル1を提供できる。
【0058】
本発明にかかる鉄筋トラス2及びデッキパネル1は、上記実施形態に限られるものではなく、その他各種の形態で実施することができるものである。2本の主筋に用いる鉄筋は、第1主筋10と第2主筋20に同じ径の鉄筋を用いても良く、それぞれ異なる径の鉄筋を用いても良い。なお、断面形状が円形の鉄筋に限られるものではなく、様々な種類や断面形状の鉄筋を用いても良い。また、第1主筋10及び第2主筋20のそれぞれの高さ位置は、鉄筋トラス2の大きさに応じて適宜設定できる。さらには、第1主筋10及び第2主筋20は直線状に限られず、床スラブの設計に応じて円弧状等他の形状に加工しても良い。なお、上記実施形態においては、板部材40には溶融亜鉛メッキ鋼板を用いた例を示したが、他の金属板を用いても良い。
【0059】
ラチス材30の第1折曲点35は、第2接合部位34と同じ位置に設定しても良く、第2接合部位34より下方に設定しても良い。また、第2折曲点36の位置も任意に設定できることから、様々な高さや幅の鉄筋トラス2を構成することができる。ラチス材30の波形状については、第1変曲部31と第2変曲部32が同じ振幅、同じピッチで繰り返す構成に限られず、部分的に異なる振幅や異なるピッチを含む構成とすることもできる。例えば床スラブの段差に合わせて、ラチス材30が部分的に異なる振幅で第1変曲部31及び第2変曲部32を繰り返す構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 デッキパネル
2 鉄筋トラス
10 第1主筋
20 第2主筋
30 ラチス材
31 第1変曲部
32 第2変曲部
33 第1接合部位
34 第2接合部位
35 第1折曲点
36 第2折曲点
37 脚部
40 板部材