(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ウェハ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648A
H01L21/304 651M
H01L21/304 651B
(21)【出願番号】P 2020020361
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390000594
【氏名又は名称】株式会社レクザム
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】一二三 正晃
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 弘祐
(72)【発明者】
【氏名】関口 博文
(72)【発明者】
【氏名】国重 秀則
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-033962(JP,A)
【文献】特開2017-183579(JP,A)
【文献】特開2011-009299(JP,A)
【文献】特開2013-030502(JP,A)
【文献】特開2013-131729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ユニット、及び前記上部ユニットと対向してウェハを収容する収容空間を構成する下部ユニットを有し、前記ウェハに超臨界流体を用いた所定の処理を行うためのチャンバと、
垂直方向の軸周りに回転可能となるように前記上部ユニットに設けられ、水平方向に搬入されるウェハを支持する支持手段が下面側に設けられた上部ヒータと、
前記上部及び下部ユニットの少なくとも一方を上下方向に移動させることによって前記チャンバを開閉する開閉手段と、
前記上部ヒータを垂直方向の軸周りに回転させる回転手段と、を備え、
前記回転手段は、前記上部ヒータへのウェハの搬入方向と、前記上部ヒータからの当該ウェハの搬出方向とが所定の角度となるように前記上部ヒータを回転させる、ウェハ処理装置。
【請求項2】
前記回転手段は、前記チャンバに収容されたウェハに前記所定の処理が行われている際にも、前記上部ヒータを回転させる、請求項1記載のウェハ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハに超臨界流体を用いた所定の処理を行うウェハ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェハの表面に形成されるパターンの微細化が進んでおり、アスペクト比が高くなってきている。そのため、パターンの洗浄等に用いる有機溶剤などの処理液が表面に残ったまま乾燥させると、処理液の表面張力によってパターンが倒壊するという問題が生じる。その問題を解決するため、基板の表面から処理液を除去する乾燥処理に超臨界流体が用いられることがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-254904号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/0114707号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乾燥処理等を行う従来のウェハ処理装置においては、チャンバへのウェハの出し入れが一方向から行われていた。そのため、チャンバへのウェハの搬入を行っている場合には、ウェハの搬出に関する準備等の作業を行うことができず、また、ウェハの搬出を行っている場合には、ウェハの搬入に関する準備等の作業を行うことができず、ウェハに所定の処理を行うためのタクトタイムが長くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ウェハに所定の処理を行う際のタクトタイムをより短くすることができるウェハ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によるウェハ処理装置は、上部ユニット、及び上部ユニットと対向してウェハを収容する収容空間を構成する下部ユニットを有し、ウェハに超臨界流体を用いた所定の処理を行うためのチャンバと、垂直方向の軸周りに回転可能となるように上部ユニットに設けられ、水平方向に搬入されるウェハを支持する支持手段が下面側に設けられた上部ヒータと、上部及び下部ユニットの少なくとも一方を上下方向に移動させることによってチャンバを開閉する開閉手段と、上部ヒータを垂直方向の軸周りに回転させる回転手段と、を備え、回転手段は、上部ヒータへのウェハの搬入方向と、上部ヒータからのウェハの搬出方向とが所定の角度となるように上部ヒータを回転させる、ものである。
【0007】
このような構成により、チャンバへのウェハの搬入方向と搬出方向とを異なる方向にすることができる。したがって、例えば、搬入用の搬送ロボットによってウェハを搬入すると共に、搬出用の別の搬送ロボットによってウェハを搬出するようにすることができる。その場合には、ウェハの搬入を行っている際にウェハの搬出の準備を行ったり、ウェハの搬出を行っている際にウェハの搬入の準備を行ったりすることができる。その結果、ウェハの搬入方向と搬出方向とが同じ場合と比較して、ウェハの搬入、搬出に関するタクトタイムをより短くすることができる。
【0008】
また、本発明によるウェハ処理装置では、回転手段は、チャンバに収容されたウェハに所定の処理が行われている際にも、上部ヒータを回転させてもよい。
【0009】
このような構成により、ウェハに超臨界流体を用いた所定の処理を行う際に、収容空間において上部ヒータを回転させることによって超臨界流体を撹拌することができ、例えば、処理を効率的に行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるウェハ処理装置によれば、チャンバへのウェハの搬入方向と搬出方向とを異なる方向にすることができ、ウェハの搬入及び搬出に関するタクトタイムをより短くすることができる。例えば、チャンバに対するウェハの搬入方向と搬出方向を異なる方向にすることにより、ウェハの挿脱を行う搬送ロボットを搬入用と搬出用に分離し、挿脱に掛かる時間を短縮できる。さらに、例えば、前工程である洗浄工程後のウェハと、乾燥工程後のウェハを異なるロボットで搬送することにより、乾燥後のウェハに洗浄剤等が再付着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態によるウェハ処理装置の構成を示す一部切り欠き斜視図
【
図2】同実施の形態によるウェハ処理装置のチャンバの縦断面を示す断面図
【
図4】同実施の形態における上部ヒータを回転させる回転手段を示す上面図
【
図5】同実施の形態における上部ヒータの回転とウェハの搬入搬出とを示す図
【
図6】同実施の形態におけるウェハの搬入搬出について説明するための上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるウェハ処理装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるウェハ処理装置は、チャンバへのウェハの搬入方向と搬出方向とが異なるようにするため、チャンバの上部ユニットに装着されており、ウェハを支持する支持手段を有する上部ヒータを所定の角度だけ回転させるものである。
【0013】
図1は、本実施の形態によるウェハ処理装置1の構成を示す一部切り欠き斜視図である。
図2は、ウェハ処理装置1のチャンバ11の縦断面を示す断面図である。なお、
図2では、チャンバ11が閉じた状態を示している。
図3は、上部ユニット21を下面側から見た斜視図である。
図4は、上部ヒータ24を回転させる回転手段30を示す図である。なお、
図4において、上部ユニット21は省略している。
図5は、ウェハ2の搬入、搬出と上部ヒータ24の回転とについて説明するための図である。
図6は、ウェハ処理装置1を内部に含む処理室3と、ウェハ2を処理室3に搬入、搬出する搬送ロボットのハンド4,5とを示す図である。
【0014】
本実施の形態によるウェハ処理装置1は、上部ユニット21及び下部ユニット22を有するチャンバ11と、チャンバ11の上部ユニット21及び下部ユニット22を開閉するための開閉手段12と、垂直方向の軸周りに回転可能となるように上部ユニット21に設けられた上部ヒータ24と、下部ユニット22に設けられた下部ヒータ25と、上部ヒータ24を回転させる回転手段30と、を備える。
【0015】
チャンバ11では、ウェハ2に超臨界流体を用いた所定の処理が行われる。本実施の形態では、その所定の処理が超臨界流体を用いたウェハ2の乾燥処理である場合について主に説明するが、その他の処理、例えば、超臨界流体を用いた洗浄処理や洗浄乾燥処理がウェハ2に行われてもよい。ウェハ2の乾燥処理は、例えば、ウェハ2の表面に残留した有機溶剤などの処理液を、超臨界流体に置換することによって除去し、その超臨界流体を乾燥させることによって行われる。本実施の形態では、処理に用いられる流体が二酸化炭素である場合、すなわち二酸化炭素の超臨界流体が用いられる場合について主に説明するが、他の超臨界流体が用いられてもよい。
【0016】
上部ユニット21と下部ユニット22とは対向するものであり、両者によってウェハ2を収容する収容空間22cが構成される。収容空間22cは、通常、略円柱形状の空間である。収容空間22cの容積が大きい場合には、流体を超臨界状態にする昇圧の時間が長くなるため、収容空間22cの容積は、小さいことが好適である。なお、本実施の形態では、収容空間22cが下部ユニット22側に形成されている場合について主に説明する。
図2で示されるように、上部ユニット21及び下部ユニット22には、上下方向に延びる円筒形状の孔部21e、22eがそれぞれ設けられている。孔部21e、22eはそれぞれ、上部ヒータ24、下部ヒータ25を装着するために用いられる。
【0017】
下部ユニット22には、
図2で示されるように、流体の注入路221と排出路222とが設けられていてもよい。本実施の形態では、平面視において、流体の注入口が収容空間22cの周縁側に設けられており、流体の排出口が収容空間22cの注入口と対向する周縁側と、孔部22eの周囲に設けられている場合について示しているが、それらは一例であり、注入口及び排出口、並びに注入路221及び排出路222の配置は、それらと異なっていてもよい。例えば、注入路221は、ウェハ2の上面側から流体を注入するように設けられてもよい。また、例えば、後述するクランプ41と干渉しない範囲で、収容空間22cの横側(側面)に注入路221や排出路222が設けられてもよい。なお、流体の注入路221や排出路222は、可動側のユニットではなく、固定側のユニットに設けられることが好適である。
【0018】
上部ユニット21及び下部ユニット22は、耐圧性のある材料によって構成されていることが好適である。その材料は、例えば、ステンレス鋼等であってもよい。また、その表面には、例えば、パーティクルの発生を防止するための不動態皮膜を形成する処理や、硬質化のためのDLC処理がなされてもよい。
【0019】
チャンバ11は、チャンバ11が閉じられた際に上部ユニット21及び下部ユニット22の間をシールするためのシール部23を有していてもよい。シール部23は、円環状の部材であり、下部ユニット22における収容空間22cの開口の環状の縁部分、または、その縁部分に対向する上部ユニット21の部分に配置されてもよい。シール部23は、例えば、
図2で示されるように、上部ユニット21の下端側に装着されてもよい。シール部23は、断面が略U字形状のものであってもよい。その場合には、チャンバ11が閉じている状態において、収容空間22cの流体がシール部23を介して外部に流出しようとする際に、略U字形状の内側部分の圧力が高まってシール性がより向上し、収容空間22cの流体の流出を効果的に防止することができる。シール部23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、またはシリコンなどの材料によって構成されてもよい。
【0020】
開閉手段12は、上部ユニット21及び下部ユニット22の少なくとも一方を上下方向に移動させることによってチャンバ11を開閉する。上部ユニット21及び下部ユニット22が開閉手段12によって閉じられ、両者が嵌め合わされて一体化されることによって、ウェハ2に対して処理を行うための収容空間22cが形成される。また、シール部23、並びに、後述する上部シール部21d及び下部シール部22dによって、収容空間22cの気密性が高められる。本実施の形態では、開閉手段12が、ベース15に固定されたエアシリンダであり、ベース15に対して、矩形状の上面板16の四隅をそれぞれ同じタイミングで上下方向に移動させることによって、上部ユニット21を上下方向に移動させる場合について主に説明する。なお、
図1では、一部の開閉手段12を省略している。
【0021】
開閉手段12は、エアシリンダ以外のソレノイド、ラックアンドピニオンとピニオンを駆動させる回転駆動手段、または、ボールねじとねじ軸を回転させる回転駆動手段等によって構成されてもよい。また、上面板16の四隅のうち、1個から3個の隅に開閉手段12が設けられており、それ以外の箇所には上面板16の頂点部分を上下方向にガイドするためのガイド部材が設けられていてもよい。なお、本実施の形態では、開閉手段12が、上部ユニット21を上下方向に移動させる場合について説明するが、そうでなくてもよい。開閉手段12は、下部ユニット22を上下方向に移動させてもよく、上部ユニット21及び下部ユニット22の両方をそれぞれ上下方向の逆向きに移動させてもよい。
【0022】
上部ヒータ24は、収容空間22cにおいて水平方向に延びる加熱プレート24aと、加熱プレート24aの上面に接続される円筒形状の支持部24bとを有する。加熱プレート24aは、例えば、円盤形状であってもよい。また、支持部24bの一端は、加熱プレート24aの平面と、支持部24bの円筒形状の中心軸とが直交するように、円盤形状である加熱プレート24aの中心付近に固定されていてもよい。加熱プレート24aと支持部24bとは、例えば、一体的に構成されていてもよく、独立した部材であってもよい。上部ヒータ24の支持部24bが、上部ユニット21に設けられた円筒形状の孔部21eに挿入されることによって、上部ヒータ24が上部ユニット21に装着される。なお、支持部24bは、全体が円筒形状であってもよく、または、少なくとも一部が円筒形状であってもよい。本実施の形態では、
図2で示されるように、支持部24bが、半径の異なる複数の円筒形状部によって構成される場合について主に説明する。後述する支持部25bについても同様であるとする。
【0023】
図2で示されるように、上部ヒータ24の支持部24bは、回転軸受21bによって、上部ユニット21の孔部22eにおいて、回転自在となるように設けられている。このようにして、上部ヒータ24は、垂直方向の軸周りに回転可能となるように上部ユニット21に設けられる。通常、回転軸受21bの収容空間22c側に、後述する上部シール部21dが設けられている。
【0024】
図2で示されるように、上部ヒータ24の加熱プレート24aの上面と、上部ユニット21の下面との間には、流体が流通可能な水平方向に延びる隙間が存在していてもよい。すなわち、加熱プレート24aの上面と、上部ユニット21の下面との間に上下方向の所定の間隔が空くように、上部ユニット21に上部ヒータ24が取り付けられてもよい。上部ヒータ24が回転する際に、加熱プレート24aの上面と、上部ユニット21の下面とが接触しないことが好適だからである。
【0025】
下部ヒータ25は、収容空間22cにおいて水平方向に延びる加熱プレート25aと、加熱プレート25aの下面に接続される円筒形状の支持部25bとを有する。下部ヒータ25は、上下が逆となる以外は、上部ヒータ24と同様のものであり、その詳細な説明を省略する。下部ヒータ25の支持部25bが、下部ユニット22に設けられた円筒形状の孔部22eに挿入されることによって、下部ヒータ25が下部ユニット22に装着される。なお、本実施の形態では、上部ヒータ24と異なり、下部ヒータ25が回転されない場合について主に説明するが、下部ヒータ25も回転されてもよい。
【0026】
図2で示されるように、下部ヒータ25の加熱プレート25aの下面と、下部ユニット22の上面との間には、流体が流通可能な水平方向に延びる隙間が存在していてもよく、または、そうでなくてもよい。例えば、下部ヒータ25の加熱プレート25aの下方側に排出口が設けられている場合には、その隙間が存在していることが好適である。
【0027】
上部ヒータ24及び下部ヒータ25は、収容空間22c内の流体を加熱するために用いられる。収容空間22cにおいて、流体を超臨界状態にするためである。流体が二酸化炭素である場合には、例えば、上部ヒータ24及び下部ヒータ25によって二酸化炭素が31.1℃以上となるように加熱されてもよい。
【0028】
上部シール部21dは、上部ヒータ24の支持部24bと、上部ユニット21の孔部21eとの間をシールする。また、下部シール部22dは、下部ヒータ25の支持部25bと、下部ユニット22の孔部22eとの間をシールする。上部シール部21dによって、支持部24bと孔部21eとの間から流体が漏れることが防止され、下部シール部22dによって、支持部25bと孔部22eとの間から流体が漏れることが防止され、収容空間22cが気密に保たれる。上部シール部21d及び下部シール部22dは、シール部23と同様のものであってもよい。なお、シール部21dを適切に位置決めするため、シール部21dの上方への移動を阻止するシール押えや、シール部21dと回転軸受21bとの距離を一定に保つ円筒形状スペーサなどが用いられてもよい。
【0029】
上部ヒータ24及び下部ヒータ25は、例えば、メンテナンスなどのために取り外されることもある。また、上部ヒータ24は、回転手段30によって回転される。そのように、両者が着脱される際、また、上部ヒータ24が回転される際に、上部ヒータ24及び下部ヒータ25とチャンバ11との接触部分、より具体的には上部シール部21d及び下部シール部22dの箇所においてパーティクル等が発生しやすくなる。そのようなパーティクル等は、ウェハ2のほうに拡散しないように排出されることが好適である。発生したパーティクル等を排出する手法としては、例えば、特開2002-324777号公報や、特開2007-036109号公報に記載されている手法を用いてもよい。
【0030】
上部ヒータ24の下面側には、水平方向に搬入されるウェハ2を支持する支持手段21aが設けられている。したがって、ウェハ2が搬入されると、
図2で示されるように、上部ヒータ24の下方側にウェハ2が位置することになる。支持手段21aは、例えば、
図2,
図3で示されるように、断面が略L字形状であり、水平方向に延びる先端部分において、搬入されたウェハ2の周縁部を支持するものであってもよい。本実施の形態では、
図3,
図5で示されるように、上部ヒータ24に3個の支持手段21aが設けられている場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。支持手段21aの個数は、例えば、1個や2個であってもよく、4個以上であってもよい。また、ウェハ2を適切に支持できるのであれば、支持手段21aの形状も問わない。
【0031】
回転手段30は、上部ヒータ24を垂直方向の軸周りに回転させるものであり、エアシリンダ31と、クランク32とを備えている。エアシリンダ31の基端側は、回転軸31bによって、上面板16に対して水平方向に回転自在に設けられている。また、エアシリンダ31のピストンロッド31aの先端は、クランク32に接続されている。そして、
図4で示されるように、ピストンロッド31aの長手方向の移動に応じて、クランク32、及びクランク32に接続されている上部ヒータ24が、垂直方向の回転軸24cを中心として回転することになる。そのクランク32の回転に応じて、ピストンロッド31aの先端部分の位置が変化するが、その位置の変化に応じて、エアシリンダ31の基端側が回転軸31bを中心に回転する。なお、エアシリンダ31に代えて、ソレノイドなどを用いてもよい。また、回転手段30は、例えば、上部ヒータ24を垂直方向の軸周りに回転させるモータ等の回転駆動手段であってもよい。
【0032】
上述したように、収容空間22cは、通常、略円柱形状の空間であり、孔部21e、22e、及び支持部24b、25bは円筒形状である。本実施の形態では、収容空間22cの略円柱形状、孔部21e、22e、及び支持部24b、25bの円筒形状のそれぞれの上下方向に延びる中心軸が、同一直線上に存在する場合について主に説明する。また、回転軸24cも、孔部21e及び支持部24bの円筒形状の中心軸と同軸であるとする。
【0033】
ウェハ処理装置1は、チャンバ11が閉じた状態、すなわち上部ユニット21及び下部ユニット22が上下方向に嵌め合わされて、内部の収容空間22cが気密に保たれている状態において、チャンバ11の周縁部を締め付けるクランプ41を有していてもよい。クランプ41は、ステージ42の上面に固定されている。ベース15には、スライドレール43が固定されており、そのスライドレール43にはスライドガイド44が摺動可能に設けられている。そして、ステージ42にスライドガイド44が固定されていることによって、スライドレール43の長手方向にクランプ41が移動可能となっている。クランプ41の移動、すなわちステージ42の移動は、図示しない駆動手段を用いて実現されてもよい。その駆動手段は、例えば、エアシリンダやソレノイド、ラックアンドピニオンとピニオンを駆動させる回転駆動手段、ボールねじとねじ軸を回転させる回転駆動手段等であってもよい。クランプ41は、駆動手段によって、チャンバ11のロック位置と、リリース位置との間を移動することになる。本実施の形態では、
図1で示されるように、3個のクランプ41によってチャンバ11の上部ユニット21と下部ユニット22とがロックされる場合について主に説明するが、クランプ41の個数は、例えば、2個であってもよく、4個以上であってもよい。複数のクランプ41のロック位置とリリース位置との間の移動は、独立して行われてもよく、連動して行われてもよい。
【0034】
次に、
図5を参照して、回転手段30によって上部ヒータ24を回転させ、上部ヒータ24へのウェハ2の搬入方向と、上部ヒータ24からのウェハ2の搬出方向とが所定の角度となるようにする処理について説明する。
【0035】
図5は、上部ユニット21を下方側から見た底面図である。
図5(a)で示されるように、ウェハ2は矢印の方向に搬入される。その後、チャンバ11が閉じられ、
図5(b)で示されるように、上部ヒータ24は、ウェハ2を支持手段21aによって支持している状態で、回転手段30によって矢印の向きに90度だけ回転され、
図5(c)で示されるようになる。その後、ウェハ2に対して所定の処理が行われることになる。所定の処理が終了するとチャンバ11が開けられ、
図5(d)で示されるように、矢印の方向にウェハ2が搬出されることになる。なお、その搬出後に、上部ヒータ24は、再度、
図5(a)の状態になるように90度だけ回転手段30によって回転される。
図5では、ウェハ2の搬入方向と搬出方向とのなす角度が90度となっている。なお、ウェハ2の搬入方向と搬出方向とのなす角度は、後述するウェハ2の搬入口3aに設けられた扉と搬出口3bに設けられた扉が干渉しない範囲であればよく、好ましくは90度から180度の範囲であればよい。また、上部ヒータ24が回転されるのは、ウェハ2の搬入後から搬出前までの間であればよく、そのタイミングを問わない。例えば、チャンバ11が閉じられる前に上部ヒータ24が回転され、その回転後にチャンバ11が閉じられてウェハ2に所定の処理が行われてもよく、超臨界流体を用いた所定の処理が終了した後に、上部ヒータ24が回転されてもよい。
【0036】
次に、本実施の形態によるウェハ処理装置1の動作について具体的に説明する。ここでは、
図6で示されるように、処理室3内にウェハ処理装置1が設置されており、処理室3には、ウェハ2の搬入口3aと搬出口3bが設けられ、それぞれ搬入時や搬出時以外は扉によって閉鎖されている。次に、搬入口3aを介してウェハ2がウェハ処理装置1に挿入され、搬出口3bを介してウェハ2がウェハ処理装置1から取り出される場合について説明する。
【0037】
まず、ウェハ処理装置1の上部ユニット21及び下部ユニット22が上下方向に離間した状態において、処理室3の搬入口3aの扉が開けられる。そして、前工程の洗浄装置において、例えばIPA(イソプロピルアルコール)等の洗浄剤によって洗浄されたウェハ2が、搬送ロボットのハンド4によって搬送され、搬入口3aから、上部ヒータ24の下面側に搬入される。その搬入されたウェハ2は、支持手段21aによって支持される。
【0038】
次に、ハンド4が搬入口3aの外に出たタイミングで扉が閉じられる。そして、開閉手段12によって上面板16が下降されることによってチャンバ11が閉じられる。また、ステージ42がチャンバ11の軸心に向かって移動されることによって、クランプ41によって上部ユニット21及び下部ユニット22がロックされる(
図2)。その後、回転手段30によって、上部ヒータ24が90度だけ回転される。
【0039】
そして、二酸化炭素の注入路221に接続された注入バルブが開けられ、チャンバ11の収容空間22cに二酸化炭素が注入される。二酸化炭素は、例えば、加圧ポンプなどの昇圧機構を用いて昇圧されて収容空間22cに注入される。また、上部ヒータ24及び下部ヒータ25によって、注入された二酸化炭素が加熱される。
【0040】
注入された二酸化炭素は、収容空間22c内の圧力が臨界圧力7.38MPa以上、温度が臨界温度31.1℃以上になると超臨界状態となり、ウェハ2上のIPA等は、超臨界状態の二酸化炭素に溶解される。収容空間22cにおける超臨界状態の二酸化炭素(超臨界流体)の圧力が一定値を超えると、排出路222に接続された排出バルブ(圧力調整バルブ)によって、収容空間22c内の圧力を保ちながら超臨界流体が徐々に排出される。このようにして、ウェハ2に付着していたIPA等が溶解した超臨界流体が排出され、収容空間22cにおいて、ウェハ2からのIPA等の除去が行われることになる。
【0041】
なお、収容空間22cは、少なくともIPA等の排出が完了するまで二酸化炭素が超臨界状態となる圧力及び温度に保たれることが好適である。収容空間22cは、例えば、圧力は7.4~15MPaに、また、温度は上部ヒータ24及び下部ヒータ25によって31~50℃に保たれることが好ましい。
【0042】
収容空間22cへの二酸化炭素の注入は継続されるため、超臨界二酸化炭素流体の注入と、IPA等が溶解している超臨界二酸化炭素流体の排出が並行して行われることになる。IPA等が溶解している超臨界流体の排出が終了すると、注入バルブが閉じられ、収容空間22c内を排出バルブによって降圧し、超臨界流体を気体に相転換させてから排出する。その後、排出バルブが閉じられる。収容空間22cは、加温が停止されてもよく、31~50℃に維持されてもよい。なお、超臨界流体によるIPA等の排出が終了したかどうかは、例えば、IPA等を検知するセンサによって収容空間22c内においてIPA等を検知することによって確認されてもよい。IPA等を検知するセンサは、例えば、アルコール検知センサ等であってもよい。
【0043】
その後、各クランプ41は、リリース位置に移動される。また、開閉手段12によって上面板16が上昇されることによってチャンバ11が開けられ、上部ユニット21と下部ユニット22とが離間する。また、処理室3の搬出口3bの扉が開けられる。そして、超臨界流体を用いて乾燥されたウェハ2が、搬送ロボットのハンド5によって搬出口3bの扉を介して搬出され、搬出口3bの扉が閉じられる。その後、回転手段30によって上部ヒータ24が逆方向に90度だけ回転されることによって、ウェハ2の搬入を行うことができる角度となり、一連の乾燥処理が終了になる。その後、上記の処理が繰り返されてもよい。なお、通常、ハンド4,5はそれぞれ異なる搬送ロボットによって操作されるものである。また、上記した一連の処理に関するタイミング等の制御は、図示しない制御手段によって行われてもよい。
【0044】
以上のように、本実施の形態によるウェハ処理装置1によれば、チャンバ11へのウェハ2の搬入方向と搬出方向とを異なるようにすることができる。例えば、両方向が同じであり、また、1つの搬送ロボットによって搬入と搬出とを行った場合には、ウェハの搬出後にすぐにウェハの搬入を行うことができず、タクトタイムが長くなる。また、例えば、ウェハの搬入方向と搬出方向とが同じであり、また、処理前のウェハを搬送する搬送ロボットと、処理後のウェハを搬送する搬送ロボットとをそれぞれ備えた場合(例えば、上記特許文献1参照)には、両ロボットの操作だけでウェハの搬入及び搬出を行うことができず、ウェハの受け渡しに時間がかかることになると共に、装置の設置面積が大きくなるというデメリットがある。一方、本実施の形態によるウェハ処理装置1のように、ウェハ2の搬入方向と搬出方向とが異なるようにすることによって、設置面積を増やすことなく、ウェハ2の搬入と搬出とをそれぞれ別の搬送ロボットによって行うことができる。その結果、ウェハ2を搬出した直後に、別のウェハ2を搬入することによってタクトタイムを短くすることができ、効率的な処理を実現することができるようになる。
【0045】
また、チャンバ11での処理前のウェハ2を搬送する搬送ロボットと、チャンバ11での処理後のウェハ2を搬送する搬送ロボットとを異なるものにすることができるため、例えば、搬入用ロボットのハンド4に付着しているIPA等が、処理後のウェハ2に付着することを防止することができる。また、処理前のウェハ2が取り扱われる領域と、処理後のウェハ2が取り扱われる領域とを分けることもでき、処理前のウェハ2から、処理後のウェハ2にIPA等が飛散して付着することを防止することもできる。
【0046】
また、ウェハ2の搬入方向と搬出方向とを異なるようにするためには、上部ユニット21そのものを回転させることも考えられる。しかしながら、上部ユニット21は、かなりの重量があるため、上部ユニット21を回転させるよりは、本実施の形態のように、上部ユニット2に対して上部ヒータ24を回転させるほうが、より簡単な構成とすることができるというメリットがある。
【0047】
なお、本実施の形態では、チャンバ11へのウェハ2の搬入方向と搬出方向とが異なるようにするために上部ヒータ24を回転させる場合について説明したが、超臨界流体を用いた所定の処理を促進するためにも、上部ヒータ24を回転させてもよい。その場合には、チャンバ11に収容されたウェハ2に超臨界流体を用いた所定の処理が行われている期間における少なくとも一部の期間において、回転手段30は上部ヒータ24を回転させてもよい。この場合の回転は、例えば、一方向への回転であってもよく、一方向への回転と逆方向への回転との繰り返しであってもよい。後者の場合には、例えば、揺動が行われてもよい。また、一方向への回転が行われる場合には、回転手段30は、モータ等の回転駆動手段であることが好適である。回転手段30が回転駆動手段である場合には、上部ヒータ24への電源の供給は、例えば、スリップリング等を用いて行われてもよい。このように、ウェハ2への所定の処理が行われている際にも上部ヒータ24を回転させることによって、例えば、収容空間22c内の流体を撹拌することができ、その処理を促進することができる。なお、所定の処理が行われている際に上部ヒータ24が回転される場合であっても、ウェハ2の搬入時と搬出時には、上記のように、上部ヒータ24があらかじめ決められた角度となることが好適である。そのため、回転手段30がモータ等の回転駆動手段である場合には、例えば、ステッピングモータなどの正確な位置決め制御を実現できる回転駆動手段を用いてもよく、エンコーダ等によって取得された上部ヒータ24の角度を用いて、回転駆動手段によって回転される上部ヒータ24の角度を制御してもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、収容空間22cにおいて、ウェハ2が上部ヒータ24の下面側に設けられた支持手段21aによって支持されている場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、収容空間22cの下面(すなわち、下部ユニット22の上面)に別の支持手段(以下、「下部支持手段」と呼ぶ。)が設けられており、チャンバ11が閉じられた際には、ウェハ2は、支持手段21aで支持されなくなり、下部支持手段で支持されるようになってもよい。下部支持手段は、例えば、平面視で円形状である収容空間22cの周縁部に配置されていてもよい。また、チャンバ11が閉じられた際には、下部支持手段におけるウェハ2の載置面が、支持手段21aにおけるウェハ2の載置面よりも上方側に位置していてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、ウェハ処理装置1が下部ヒータ25を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。ウェハ処理装置1は、下部ヒータ25を有していなくてもよい。
【0050】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上より、本発明によるウェハ処理装置によれば、チャンバへのウェハの搬入方向と搬出方向とを異なる方向とすることができ、より短いタクトタイムでウェハの処理を行うことができるウェハ処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 ウェハ処理装置
2 ウェハ
11 チャンバ
12 開閉手段
21 上部ユニット
21a 支持手段
22 下部ユニット
24 上部ヒータ
30 回転手段