(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】フェンスの脚部構造
(51)【国際特許分類】
E04H 17/18 20060101AFI20240129BHJP
E01F 13/02 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
E04H17/18
E01F13/02 Z
(21)【出願番号】P 2020085651
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】505061447
【氏名又は名称】株式会社アルマックス
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 博信
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3080107(JP,U)
【文献】実開昭57-123454(JP,U)
【文献】特開2009-001967(JP,A)
【文献】登録実用新案第3216884(JP,U)
【文献】実開昭54-130722(JP,U)
【文献】実開昭48-008934(JP,U)
【文献】米国特許第5402988(US,A)
【文献】特開2012-057420(JP,A)
【文献】特開平06-173229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00-17/26
E01F 1/00
E01F 13/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンスの支柱を支持するために接地可能な第1脚部部材と第2脚部部材とを備え、
前記第1脚部部材は、前記支柱の少なくとも一部を構成する柱部と、前記柱部に直交するように前記柱部の下端に固定された第1支持部と、を備え、
前記第2脚部部材は、前記第1支持部の上に載置可能な第2支持部を備えて、前記柱部に回動可能かつ上下動可能に取り付けられており、
前記第2脚部部材を前記第1脚部部材に対して回動させることにより、前記第1支持部と前記第2支持部とが互いに開いた開脚状態と、前記第2支持部を前記第1支持部に重ねた閉脚状態と、を取り得るように構成され、
前記第2脚部部材を前記第1脚部部材に対して上下動させることにより、前記第1脚部部材と前記第2脚部部材とが互いに係合して回動できない固定状態と、前記第1脚部部材と前記第2脚部部材との係合を解除した可動状態と、を切り替え可能に構成されている、
フェンスの脚部構造。
【請求項2】
前記第2支持部は、断面視で下向きに開口した開口部を有しており、
前記閉脚状態かつ前記固定状態としたときに、前記開口部の内側に前記第1支持部が係合する、
請求項1に記載のフェンスの脚部構造。
【請求項3】
前記第2支持部は、側面に形成されて下向きに開口した切り欠き部を有しており、
前記開脚状態かつ前記固定状態としたときに、前記切り欠き部に前記第1支持部が係合する、
請求項1または2のいずれか1項に記載のフェンスの脚部構造。
【請求項4】
前記第2脚部部材は、前記柱部を挿通可能な筒部を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のフェンスの脚部構造。
【請求項5】
前記第1支持部の長手方向と、前記支柱の間に配置されるフェンス本体の幅方向とが、一致するように設定可能である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のフェンスの脚部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、間仕切り、ゲート、囲い、柵などに使用できるフェンスの脚部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフェンスとして、例えば特許文献1に記載されているような移動可能なフェンスが存在する。このようなフェンスは、地面に固定されていないため、任意の場所に据え置いて使用することができる。こうしたフェンスの脚部としては、特許文献1に記載されているように、支柱に対して逆T字形に固定されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の構造では、使用していないフェンスを収納する際に、脚部を収容できる奥行が必要となるため、収納できる場所が限られたり、収納スペースを圧迫したりする問題があった。また、脚部を小さくすれば収納はしやすくなるが、脚部が小さいとフェンスを安定して立てることができないという問題があった。
そこで、本発明は、収納がしやすく、かつ、安定してフェンスを支持することができるフェンスの脚部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、本発明は、フェンスの支柱を支持するために接地可能な第1脚部部材と第2脚部部材とを備え、前記第1脚部部材は、前記支柱の少なくとも一部を構成する柱部と、前記柱部に直交するように前記柱部の下端に固定された第1支持部と、を備え、前記第2脚部部材は、前記第1支持部の上に載置可能な第2支持部を備えて、前記柱部に回動可能かつ上下動可能に取り付けられており、前記第2脚部部材を前記第1脚部部材に対して回動させることにより、前記第1支持部と前記第2支持部とが互いに開いた開脚状態と、前記第2支持部を前記第1支持部に重ねた閉脚状態と、を取り得るように構成され、前記第2脚部部材を前記第1脚部部材に対して上下動させることにより、前記第1脚部部材と前記第2脚部部材とが互いに係合して回動できない固定状態と、前記第1脚部部材と前記第2脚部部材との係合を解除した可動状態と、を切り替え可能に構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上記の通りであり、第2脚部部材を第1脚部部材に対して回動させることにより、第1支持部と第2支持部とが互いに開いた開脚状態と、第2支持部を第1支持部に重ねた閉脚状態と、を取り得るように構成されている。よって、使用時には開脚状態で安定してフェンスを支持することができる。また、収納時には閉脚状態とすることで、脚部を小さく折り畳んで収納することができる。
【0007】
しかも、第2脚部部材を第1脚部部材に対して上下動させることにより、第1脚部部材と第2脚部部材とが互いに係合して回動できない固定状態と、第1脚部部材と第2脚部部材との係合を解除した可動状態と、を切り替え可能に構成されている。よって、第2脚部部材を持ち上げて回動させるという簡単な動作で、上記した開脚状態と閉脚状態とを切り替えることができる。また、第2脚部部材を固定するための特別な構造が必要ないので、フェンスを少ない部品点数で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】(a)脚部の分解図、(b)開脚状態の脚部の図、(c)閉脚状態の脚部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
本実施形態に係るフェンス10は、間仕切り、ゲート、囲い、柵などに使用できる移動可能なフェンス10であり、任意の場所に据え置いて使用することができる。
【0010】
本実施形態に係るフェンス10は、伸縮可能に構成されており、
図1に示すように、複数の支柱11と、支柱11の間に配置されるフェンス本体15と、を備えている。本実施形態に係るフェンス本体15は、伸縮可能なリンク機構で構成されている。
【0011】
なお、本実施形態においては、支柱11の間に伸縮可能なリンク機構でフェンス本体15を構成しているが、これに限らない。例えば、パネル、格子体、網体など、フェンス10の役割を果たす任意の部材をフェンス本体15として使用し、リンク機構の代わりに支柱11の間に配置してもよい。また、本実施形態においては支柱11が3本であるが、これに限らず、支柱11の数は任意に設定できる。すなわち、2本の支柱11の間に1つのフェンス本体15を設けてもよいし、支柱11を4本以上設け、これらの支柱11の間にそれぞれフェンス本体15を設けてもよい。
【0012】
支柱11は、地面に対して略垂直に配置される長尺部材であり、例えば中空のアルミ材で形成されている。本実施形態に係る支柱11は、
図4に示すように、上下に分離可能となっている。具体的には、各支柱11は、フェンス本体15の両側端部が接続される上部と、脚部12を構成する下部(後述する柱部21)と、に分離可能となっている。支柱11の上部と下部とは、互いに挿抜可能なパイプで形成されており、ボルトなどの留具で一体的に固定されている。
【0013】
フェンス本体15は、隣接する支柱11の間に設けられ、仕切りや目隠しなどの機能を果たす部分である。本実施形態に係るフェンス本体15は、斜め格子状に配置された複数のリンクバー16と、交差するリンクバー16を回動可能に連結する回動軸17と、を備えたリンク機構である。このリンク機構は、回動軸17によって回動可能に接続されたリンクバー16によってパンタグラフ機構を構成し、
図1および
図2に示すように、リンクバー16の角度が変位することで伸縮できるように構成されている。
【0014】
なお、本実施形態においては、隣り合う支柱11の間にそれぞれ1組のフェンス本体15が設けられており、これら複数のフェンス本体15は、それぞれ独立して伸縮自在である。すなわち、あるフェンス本体15は、他のフェンス本体15の伸縮に影響を与えずに、独立して伸縮することができる。
【0015】
また、これらのフェンス本体15の両端部は、それぞれ支柱11に対して水平に回動可能に取り付けられている。このため、フェンス本体15は、支柱11を中心に回動可能となっている。このように構成することで、複数のフェンス本体15を自由な角度に配置することができる。例えば、複数のフェンス本体15を一直線に配置するだけではなく、
図1に示すように複数のフェンス本体15を屈折させて配置することもできる。また、フェンス10を使用していないときには、
図3に示すようにフェンス10を折り畳むこともできる。
【0016】
ところで、本実施形態に係る支柱11は、下端部に脚部12を備えている。この脚部12は、
図1に示すように平面視X字形に展開されて支柱11が倒れないように支持することができる。この脚部12は、
図4に示すように、フェンス10の支柱11を支持するために接地可能な第1脚部部材20と第2脚部部材30とを備えて構成されている。
第1脚部部材20は、
図4および
図5に示すような逆T字形の部材であり、柱部21と、第1支持部22と、を備えている。
【0017】
柱部21は、棒状の部位であり、支柱11の少なくとも一部を構成している。本実施形態に係る柱部21は、支柱11の下部を構成しており、支柱11の上部に連結可能となっている。具体的には、本実施形態に係る柱部21は、支柱11の上部を構成するパイプの内部に挿入可能なパイプとして構成されている。柱部21のパイプを上部のパイプに挿入し、ボルトなどの固定具で固定することで、まっすぐな支柱11が構成されるようになっている。
【0018】
なお、本実施形態においては、柱部21が支柱11の下部を構成するようにしたが、これに限らず、柱部21が支柱11の全体を構成するようにしてもよい。すなわち、支柱11をそのまま第1脚部部材20の柱部21として使用してもよい。
【0019】
第1支持部22は、上記した柱部21に直交するように柱部21の下端に固定される部分である。本実施形態に係る第1支持部22は、柱部21の下端部に逆T字形に固定された角柱状の部位である。この第1支持部22は、下面が地面に接地してフェンス10を支持することができる。
【0020】
また、第2脚部部材30は、上記した第1脚部部材20の柱部21に回動可能かつ上下動可能に取り付けられる部材である。この第2脚部部材30は、
図4および
図5に示すような逆T字形の部材であり、筒部31と、第2支持部32と、を備えている。
【0021】
筒部31は、
図5に示すように、柱部21を挿通可能な円筒状の部位である。この筒部31の内径は、柱部21の外径よりもやや大きく形成されている。この筒部31を柱部21が貫通することで、筒部31は、柱部21の軸方向(上下方向)にスライド可能、かつ、柱部21の周方向(水平方向)に回動可能となっている。
【0022】
第2支持部32は、上記した筒部31に直交するように筒部31の下端に固定される部分である。本実施形態に係る第2支持部32は、筒部31の下端部に逆T字形に固定された断面コ字形の部位である。具体的には、この第2支持部32は、
図5に示すように、筒部31の下端に接続される水平な上板部32aと、この上板部32aの両端から下方に向けて延出する一対の側板部32bと、を備える。これにより、第2支持部32は、断面視で下向きに開口した開口部32dを有している。この開口部32dは、後述するように、第1支持部22を係合させるためのものであり、第1支持部22がすっぽりと入ることができる大きさで開口している。すなわち、この開口部32dの内部空間は、断面視において、第1支持部22の高さおよび幅とほぼ等しく形成されている。
【0023】
また、一対の側板部32bには、中央部(側面視において、筒部31の直下に当たる部分)に、下向きに開口した切り欠き部32cが形成されている。この切り欠き部32cは、後述するように、第1支持部22を係合させるためのものであり、第1支持部22がすっぽりと入ることができる大きさで開口している。すなわち、この切り欠き部32cの内側は、第1支持部22の高さおよび幅とほぼ等しく形成されている。なお、この切り欠き部32cを形成したことで第2支持部32の剛性が低下するため、本実施形態においては、筒部31と第2支持部32の接続箇所(切り欠き部32cの上方)にリブ33を設け、第2支持部32を補強している。
【0024】
この第2支持部32は、
図5(b)に示すように、第1支持部22と協働してフェンス10を支持することができる。第2支持部32でフェンス10を支持するときには、第2支持部32は、平面視で第1支持部22と直交するように配置する。このように配置することで、第2支持部32の下端が地面に接地し、フェンス10を支持することができる。また、この第2支持部32を使用しないときには、
図5(c)に示すように、第2支持部32を第1支持部22の上に載置することができる。
【0025】
このように、本実施形態に係る脚部12は、第2脚部部材30を第1脚部部材20に対して回動させることにより、第1支持部22と第2支持部32とが互いに開いた開脚状態(
図5(b)の状態)と、第2支持部32を第1支持部22に重ねた閉脚状態(
図5(c)の状態)と、を取り得るように構成されている。
【0026】
なお、脚部12を開脚状態から閉脚状態へ、または、閉脚状態から開脚状態へと変更したいときには、使用者が第2脚部部材30を上方に持ち上げることで、第1脚部部材20と第2脚部部材30との係合が解除され、第2脚部部材30が回動可能な状態となる。そして、第2脚部部材30を開脚状態または閉脚状態まで回動させてから下方に降ろすことで、第1脚部部材20と第2脚部部材30とが係合し、第2脚部部材30が回動できない状態となる。
【0027】
このように、本実施形態に係る脚部12は、第2脚部部材30を第1脚部部材20に対して上下動させることにより、第1脚部部材20と第2脚部部材30とが互いに係合して回動できない固定状態と、第1脚部部材20と第2脚部部材30との係合を解除した可動状態と、を切り替え可能に構成されている。
なお、本実施形態に係る固定状態は、第2支持部32の開口部32dおよび切り欠き部32cを使用して実現されている。
【0028】
すなわち、
図5(c)に示すように、第1脚部部材20と第2脚部部材30とを閉脚状態かつ固定状態としたときには、開口部32dの内側に第1支持部22が係合することで、第2脚部部材30が第1脚部部材20に対して回動できないようになっている。
【0029】
また、
図5(b)に示すように、第1脚部部材20と第2脚部部材30とを開脚状態かつ固定状態としたときには、切り欠き部32cに第1支持部22が係合することで、第2脚部部材30が第1脚部部材20に対して回動できないようになっている。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2脚部部材30を第1脚部部材20に対して回動させることにより、第1支持部22と第2支持部32とが互いに開いた開脚状態と、第2支持部32を第1支持部22に重ねた閉脚状態と、を取り得るように構成されている。よって、使用時には開脚状態で安定してフェンス10を支持することができる。また、収納時には閉脚状態とすることで、脚部12を小さく折り畳んで収納することができる。
【0031】
すなわち、開脚状態においては、第1支持部22と第2支持部32とが平面視でX字形に組まれるため、全方位にフェンス10を支持することができる(従来のように平面視I字形の脚部の場合、脚部の長手方向と直交する方向への力には弱く、全方位にフェンス10を支持することはできない)。このため、本実施形態のように複数のフェンス本体15を自由な角度に配置することができる構造であっても、フェンス本体15の角度にかかわらず安定してフェンス10を支持することができる。
【0032】
また、閉脚状態においては、
図3に示すように、フェンス10の見付方向(フェンス10を正面から見たときの幅方向)に沿って第1支持部22と第2支持部32とを一直線に閉じることができる。よって、フェンス10の収納に必要な奥行きが最低限となり、フェンス10をコンパクトに収納することができる。なお、本実施形態においては、フェンス本体15が支柱11の周囲を回動可能であるため、フェンス本体15の幅方向と脚部12の長手方向とが一致するようにフェンス本体15を回動させれば、
図3に示すようにフェンス10の奥行を小さくすることができる。ただし、フェンス本体15が支柱11の周囲を回動できない構成であっても、第1支持部22の長手方向とフェンス本体15の幅方向とが一致するように構成されていれば、
図3に示すようにフェンス10の奥行を小さくすることができる。
【0033】
また、本実施形態に係るフェンス10は、第2脚部部材30を第1脚部部材20に対して上下動させることにより、第1脚部部材20と第2脚部部材30とが互いに係合して回動できない固定状態と、第1脚部部材20と第2脚部部材30との係合を解除した可動状態と、を切り替え可能に構成されている。よって、第2脚部部材30を持ち上げて回動させるという簡単な動作で、上記した開脚状態と閉脚状態とを切り替えることができる。また、第2脚部部材30を固定するための特別な構造が必要ないので、フェンス10を少ない部品点数で製造することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 フェンス
11 支柱
12 脚部
15 フェンス本体
16 リンクバー
17 回動軸
20 第1脚部部材
21 柱部
22 第1支持部
30 第2脚部部材
31 筒部
32 第2支持部
32a 上板部
32b 側板部
32c 切り欠き部
32d 開口部
33 リブ