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特許7427246通電加熱装置、それを用いた食品材料の加熱方法、および通電加熱装置の制御プログラム
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  • 特許-通電加熱装置、それを用いた食品材料の加熱方法、および通電加熱装置の制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】通電加熱装置、それを用いた食品材料の加熱方法、および通電加熱装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
H05B3/00 340
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020096623
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021190367
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000136642
【氏名又は名称】株式会社フロンティアエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】星野 弘
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187077(JP,A)
【文献】特開2009-294180(JP,A)
【文献】特開2013-212662(JP,A)
【文献】特開2008-136486(JP,A)
【文献】特開2006-320402(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01852398(EP,A1)
【文献】特開2008-022852(JP,A)
【文献】特開2002-218958(JP,A)
【文献】特開2007-130223(JP,A)
【文献】特開2006-054093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0050400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00、3/60
A23L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極体および複数のスペーサ管体と、
それらの内壁が食品材料を流動移送させながら通電加熱するための加熱流路と、
食品材料の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサが検出した温度データに基づいて、前記電極体に印加する電圧を制御する制御装置と、を備える通電加熱装置であって、
前記制御装置は、前記温度センサ検出した直近の第1時間における複数の温度データの移動平均値に基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第1制御モードと、
前記温度センサが検出した直近の前記第1時間よりも長い第2時間における複数の温度データの移動平均値に基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第2制御モードと、を切替可能である、通電加熱装置。
【請求項2】
前記温度センサは、前記加熱流路の出口近傍に設置されている、請求項に記載の通電加熱装置。
【請求項3】
前記加熱流路に流入する食品材料の流量を測定するための電磁流動計をさらに有し、 前記制御装置は、前記電磁流動計が一定時間内における異なる時刻で検出した複数の流量データに基づいて、前記食品材料の流量を算出する、請求項1または2に記載の通電加熱装置。
【請求項4】
複数の電極体および複数のスペーサ管体と、
それらの内壁が食品材料を流動移送させながら通電加熱するための加熱流路と、
食品材料の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサが検出した温度データに基づいて、前記電極体に印加する電圧を制御する制御装置と、を備える通電加熱装置とを用いた食品材料の加熱方法であって、
前記温度センサ検出した直近の第1時間における複数の温度データに基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第1制御と、
前記温度センサが検出した直近の前記第1時間よりも長い第2時間における複数の温度データの移動平均値に基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第2制御と、を切り替えて実行する、通電加熱方法。
【請求項5】
前記食品材料は、前記加熱流路を流通するタイミングによって導電率が変化する食品材料である、請求項4に記載の通電加熱方法。
【請求項6】
前記食品材料は、導電率が所定値以上離れた材料の混合物である、請求項5に記載の通電加熱方法。
【請求項7】
前記食品材料は、固形物と液状物との混合物である、請求項5に記載の通電加熱方法。
【請求項8】
前記食品材料は、前記加熱流路を流通するタイミングによって塩分濃度が変化する食品材料である、請求項5に記載の通電加熱方法。
【請求項9】
前記食品材料は、流速が所定値以上離れた材料の混合物である、請求項5に記載の通電加熱方法。
【請求項10】
複数の電極体および複数のスペーサ管体と、
それらの内壁が食品材料を流動移送させながら通電加熱するための加熱流路と、
食品材料の温度を測定する温度センサと、
前記電極体に印加する電圧を制御するコンピュータと、を備える通電加熱装置の前記コンピュータで実行される制御プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記温度センサ検出した直近の第1時間における複数の温度データに基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第1制御と、
前記温度センサが検出した直近の前記第1時間よりも長い第2時間における複数の温度データの移動平均値に基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第2制御と、を切り替えて実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電加熱装置、それを用いた食品材料の加熱方法、および通電加熱装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
流動性を有する食品材料などを殺菌や調理等のために加熱する方法の一つとして、その食品材料をパイプ内で連続的に流動移送させながら、食品材料の有する電気抵抗を利用して、食品材料に直接通電することにより食品材料自体を発熱させる加熱技術(通電加熱、ジュール加熱)が実用化されている(例えば、特許文献1)。この装置では、食料品輸送管路の上流側から下流側へ向けて所定間隔を置いて少なくとも2以上の部分に、管路の中心軸線に対して同心状となるように、この管路の内面に導電材料からなる環状の電極体を設け、管路の上流側に設置した電極体と下流側に設置した電極体との間で電圧を印加して、その間を移動する流動性食品材料中に電流を流し、ジュール熱を発生させることにより連続的に加熱する。
【0003】
また、このような装置において、加熱ユニットの流入部と流出部とにおける被加熱物の温度を温度センサにより検出し、流入部と流出部の温度差に応じて電極間に供給される電圧をフィードバック制御することによって、加熱ユニットの流路内を搬送しながら加熱される被加熱物を設定された温度にまで加熱する技術も開示されている(たとえば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平5-33024号公報
【文献】特開2014-002991公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加熱対象の食品材料が、キムチなどの導電率が大きく異なる複数の材料の混合物である場合、導電率が高い材料(たとえばタレなどの液状物)が多く流動するタイミングでは通電加熱が効率良く行われ食品材料が高温となるのに対して、導電率が低い材料(たとえば白菜などの固形物)が多く流動するタイミングでは通電が効率良く行われず食品材料は低温となってしまう。このように、流動する材料の導電率に応じて食品材料の温度が大きく変動してしまうため、単に、温度センサで測定した温度に基づいて、印加する電圧のフィードバック制御を行ってしまうと、通電加熱を行った食品材料の温度が乱高下しまい、過加熱(あるいは突沸や焦げ)が生じる場合や、加熱が不十分となってしまう場合があった。
【0006】
本発明は、食品材料が導電率の大きく異なる複数の材料からなる混合物である場合であっても、食品材料を所望の温度で適切に加熱することができる通電加熱装置、それを用いた食品材料の加熱方法、および通電加熱装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通電加熱装置は、複数の電極体および複数のスペーサ管体と、それらの内壁が食品材料を流動移送させながら通電加熱するための加熱流路と、食品材料の温度を測定する温度センサと、前記温度センサが検出した温度データに基づいて、前記電極体に印加する電圧を制御する制御装置と、を備える通電加熱装置であって、前記制御装置は、前記温度センサ検出した直近の第1時間における複数の温度データの移動平均値に基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第1制御モードと、前記温度センサが検出した直近の前記第1時間よりも長い第2時間における複数の温度データの移動平均値に基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第2制御モードと、を切替可能である。
上記通電加熱装置において、前記温度センサは、前記加熱流路の出口近傍のみに設置されているように構成することができる。
上記通電加熱装置において、前記媒体流路に流入する食品材料の流量を測定するための電磁流動計をさらに有し、前記制御装置は、前記電磁流動計が一定時間内における異なる時刻で検出した複数の流量データに基づいて、前記食品材料の流量を算出するように構成することができる。
【0008】
本発明に係る通電加熱方法は、複数の電極体および複数のスペーサ管体と、それらの内壁が食品材料を流動移送させながら通電加熱するための加熱流路と、食品材料の温度を測定する温度センサと、前記温度センサが検知した温度に基づいて、前記電極体に印加する電圧を制御する制御装置と、を備える通電加熱装置とを用いた食品材料の通電加熱方法であって、前記温度センサ検出した直近の第1時間における複数の温度データに基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第1制御と、前記温度センサが検出した直近の前記第1時間よりも長い第2時間における複数の温度データの移動平均値に基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第2制御と、を切り替えて実行する
上記通電加熱方法において、前記食品材料は、前記加熱流路を流通するタイミングによって導電率が変化する食品材料であるように構成することができる。
上記通電加熱方法において、前記食品材料は、導電率が所定値以上離れた材料の混合物であるように構成することができる。
上記加熱方法において、前記食品材料は、固形物と液状物との混合物であるように構成することができる。
上記通電加熱方法において、前記食品材料は、前記加熱流路を流通するタイミングによって塩分濃度が変化する食品材料であるように構成することができる。
上記通電加熱方法において、前記食品材料は、流速が所定値以上離れた材料の混合物であるように構成することができる。
【0009】
本発明に係る通電加熱装置の制御プログラムは、複数の電極体および複数のスペーサ管体と、それらの内壁が食品材料を流動移送させながら通電加熱するための加熱流路と、食品材料の温度を測定する温度センサと、前記電極体に印加する電圧を制御するコンピュータと、を備える通電加熱装置の前記コンピュータで実行される制御プログラムであって、前記コンピュータに、前記温度センサ検出した直近の第1時間における複数の温度データに基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第1制御と、前記温度センサが検出した直近の前記第1時間よりも長い第2時間における複数の温度データの移動平均値に基づいて、前記食品材料の加熱温度が目標温度となるように、前記電極体に印加する電圧を制御する第2制御と、を切り替えて実行させる
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食品材料が導電率の大きく異なる複数の材料からなる混合物である場合であっても、食品材料を所望の温度で適切に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るジュール加熱装置の構成図である。
図2】本実施形態に係る通電加熱装置の構成図である。
図3】本実施形態に係る加熱モジュールの構成図である。
図4】本実施形態に係る加熱モジュールの拡大断面図である。
図5】本実施例における流動性食品材料の温度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る通電加熱装置および食品材料の加熱方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。本実施形態において加熱される食品材料は、流動性を有する食品材料(流動性食品材料)であり、流動性食品材料を通電加熱装置に通過させる際に、通電加熱装置を構成する電極体に電圧を印加することで、ジュール加熱により流動性食品材料を加熱殺菌処理することができる。また、本発明では、ジュール加熱後の流動性食品材料の温度を測定し、測定した流動性食品材料の温度に基づいて、電極体に印可する電圧をフィードバック制御することで、流動性食品材料の加熱温度を調整している。
【0013】
ここで、加熱対象となる流動性食品材料が、キムチなどの導電率の大きく異なる複数の材料からなる混合物である場合、導電率の違いにより、ジュール加熱により加熱された流動性食品材料の温度が乱高下してしまう場合がある。たとえば、キムチは、固形物(白菜などの具)と液状物(タレ)との混合物であり、固形物における導電率と液状物における導電率は異なるため、固形物が多く流れるタイミングでは比較的低温となり、液状物が多く流れるタイミングでは比較的高温となってしまう場合がある。このような流動性食品材料について、温度センサで測定したそのままの温度に基づいて、電極体に印加する電圧をフィードバック制御してしまうと、ジュール加熱を行った流動性食品材料の温度が大きく乱高下してしまい、過加熱(あるいは突沸や焦げ)が生じる場合や、加熱が不十分となってしまう場合がある。
【0014】
本発明は、上記のように、流動性食品材料が加熱流路を流通するタイミングによって流動性食品材料の導電率が変化する場合でも、直近10秒間における温度データの移動平均値など、一定時間内の異なる時刻において検出した複数の温度データに基づいて電極体に印加する電圧を制御することで、食品材料を所望の温度で適切に加熱することができる通電加熱装置に関するものであり、導電率が大きく異なる材料の混合物である食品材料において特に有用である。ここで、「導電率が大きく異なる材料」とは、たとえば、導電率が0.5ms/cm以上離れた材料とすることができ、好ましくは導電率が1.0ms/cm以上離れた材料とすることができる。このような流動性食品材料は、キムチに限定されず、たとえば漬物や具入りのドレッシングなども挙げられる。
【0015】
また、本発明に有用な流動性食品材料は、導電率が大きく異なる複数の材料からなる混合物に限定されず、単一の素材でも、流動性食品材料が加熱流路を流通するタイミングによって導電率が変化する材料も含まれる。たとえば、めかぶは、ジュール加熱の前に、塩揉みと水洗いの処理が行われるが、粘り気があるために水洗いでも十分に塩が落とせず、場所ごとに塩分濃度にバラツキが生じ、当該塩分濃度のバラツキにより導電率が変化する場合がある。このように導電率が変化する可能性がある流動性食品材料についても、本発明は有用である。なお、塩分濃度のバラツキは、特に限定されないが、たとえば1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上の濃度差がある食品材料に有用である。また、本発明に有用な流動性食品材料として、流速が大きく異なる複数の材料からなる混合物も含むことができる。このような食品材料は、加熱流路において流動する際に、流速に差が出るため空洞が生じやすく、空洞部分の温度を温度センサで測定してしまうと、流動性食品材料自体の温度ではないため、流動性食品材料の温度に応じた適切な電圧を印加できない場合がある。これに対して、本発明では、一定時間内の異なる時刻において検出した複数の温度データに基づいて印加する電圧を制御することで、このような流動性食品材料についても適切に電圧制御を行うことができる。なお、流速が大きく異なる複数の材料における流速の差は、特に限定されないが、たとえば1.5倍以上の差がある場合、好ましくは2倍以上であり、また流速が大きい食品材料に有用である。
【0016】
このように、本発明は、直近10秒間における温度データの移動平均値など、一定時間内の異なる時刻において検出した複数の温度データに基づいて電極体に印加する電圧をフィードバック制御することで、流動性食品材料が加熱流路を流通するタイミングによって導電率が変化する流動性食品材料であっても、流動性食品材料の加熱温度が大きく乱高下することを抑制するものである。なお、本発明において、「一定時間」とは、異なるタイミングにおいて複数の温度データを取得できる時間であれば特に限定されないが、たとえば直近5秒以上、あるいは直近10秒以上の時間とすることが好ましい。
なお、本実施形態では、流動性食品材料として、キムチを例示して説明する。また、以下においては、本発明に係る通電加熱装置を備えるジュール加熱装置1を例示して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るジュール加熱装置1の構成図である。ジュール加熱装置1は、ジュール加熱により流動性食品材料を加熱殺菌し、袋に充填するための装置群であり、図1に示すように、ニーダー10、予熱部12、通電加熱装置13、調温器14、温度保持部15、冷却部16、充填機17、コントロールユニット18、および電源ユニット19を備える。
【0018】
本実施形態に係るジュール加熱装置1において、ニーダー10、予熱部12、通電加熱装置13、温度保持部15、冷却部16、充填機17およびパイプ110~150は一連の流路を形成しており、ポンプ11の作用により、当該流路内を流動性食品材料が流動する。また、図1において実線で示すように、通電加熱装置13、コントロールユニット18および電源ユニット19は電気的に互いに接続されており、殺菌や調理のため、コントロールユニット18の制御により、電源ユニット19から通電加熱のための電圧が通電加熱装置13に印加される。また、本実施形態では、温度センサ40もコントロールユニット18に電気的に接続しており、コントロールユニット18は、温度センサ40で測定した流動性食品材料の温度に基づいて、通電加熱装置13に印加する電圧を制御することで、流動性食品材料の加熱温度を制御可能となっている。さらに、本実施形態に係るジュール加熱装置1において、通電加熱装置13と調温器14とは、電極体23を加熱または冷却するための媒体の流路(図1において破線で示す)で接続されており、調温器14は、冷水、常温の水、または温水を媒体として、通電加熱装置13に供給可能となっている。以下に、ジュール加熱装置1を構成する各装置について説明する。
【0019】
ニーダー10は、流動性食品材料を撹拌(または混合、調合)するタンクを有しており、ニーダー10内の流動性食品材料は、ポンプ11により、パイプ110を介して下流側に定速移送される。ニーダー10から移送された流動性食品材料は、予熱部12を通過する際に、常温から20~80℃程度まで加熱され、パイプ120を通過して通電加熱装置13へと移送される。なお、予熱部12は、流動性食品材料が通過する流路の壁面外側において温水を循環させることで、通電加熱装置13に移送される流動性食品材料を予熱することが可能となっている。また、予熱部12を設けずに、パイプ110を経由してニーダー10から通電加熱装置13へと流動性食品材料を直接移送する構成とすることもできるし、ニーダー10が予熱機能を有する構成とすることもできる。
【0020】
流動性食品材料はパイプ120を通過して通電加熱装置13へと流入される。図2は、本実施形態に係る通電加熱装置13の構成図である。図2に示すように、本実施形態に係る通電加熱装置13は、3本の加熱モジュール20を有しており、加熱モジュール20同士は配管22を介して連通されている。
【0021】
また、図3は、加熱モジュール20の構成図である。加熱モジュール20は、図2および図3に示すように、交互に配置された複数の電極体23と、複数のスペーサ管体24とを備えており、これらはフランジ25により挟着固定されている。電極体23の内径とスペーサ管体24の内径は同径となっており、交互に連結し連通させることにより流動性食品材料を通電加熱処理するための加熱流路21が形成されている。
【0022】
電極体23は、リング状であることが望ましいが、多角形、楕円などその形状には特に制限はない。リング状の電極体23はスペーサ管体24に一致した内面形状を有し、スペーサ管体24を交互に配置することにより各電極体23間を流動性食品材料が通過する際に電気的回路が構成され通電加熱される。電極体23は、良導電性の材料で構成され、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、白金、純鉄、ステンレス等の金属を用いることができる。加熱流路21の両端付近に設けられる2つの電極体は漏洩電流阻止のためのアース電極26であり、アース電極26に挟まれる残りの電極体23は全て通電加熱用である。
【0023】
スペーサ管体24は絶縁材料からなり、電極体23と交互に設置されることにより加熱流路21を構成する。スペーサ管体24は、非導電性のプラスチック、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォンなどの樹脂によって作製される。スペーサ管体24の形状は、角形の筒体としてもよく、内周面が円形で外周面が矩形となった筒体を用いてもよくその形状に制限はないが、電極体23の断面形状とスペーサ管体24の断面形状を対応させた形状にすることが必要である。スペーサ管体24と電極体23との接続面間にはシール材を組み込んで加熱流路21の外部に流動性食品材料が漏出することを防止している。スペーサ管体24の長さが電極間の距離となるが、電極間の距離Lは、電極体23の内径R(加熱流路21の直径)に対する比(L/R)が2倍以上であることが好ましく、さらに好ましくは、4倍以上12倍以下であることにより均一な加熱が促進される。
【0024】
加熱流路21の両端部には流入側と流出側のジョイント部27が設けられている。それぞれの電極体23は、流動性食品材料の流れる方向に隣り合った電極体23間が相互に逆極性となるように電源ユニット19に接続される。なお、加熱モジュール20が備える電極体23の数は加熱温度等に応じて任意に設定することができる。
【0025】
図4は、加熱モジュール20の拡大断面図であり、電極体23の位置における加熱モジュール20の断面を示している。電極体23には加熱流路21の内面に沿って、媒体が流通する媒体流路30が同心状に設けられている。媒体流路30を設け、媒体を流通させることにより、通電加熱装置13の入口に近いほど(加熱モジュール20が複数ある場合には上流側の加熱モジュール20であるほど)、流動性食品材料の温度が低いために媒体は流動性食品材料を加熱する熱源として作用し、通電加熱装置13の出口に近いほど(加熱モジュール20が複数ある場合には下流側の加熱モジュール20であるほど)、流動性食品材料の温度が高いために媒体は流動性食品材料を冷却する冷媒として作用する。
【0026】
媒体流路30を流通する媒体は、電極体23に設けられた媒体供給口31から供給され、反対側に設けられた媒体排出口32から排出される。本実施形態では、媒体流路30に供給する媒体として、室温(常温)よりも低い温度の冷水、常温の水、室温(常温)よりも高い温度の温水のいずれも選択可能となっている。図1および図4に示すように、本実施形態では、調温器14と媒体流路30とが、媒体供給口31および媒体排出口32を介して接続されている。調温器14は、水を加熱または冷却し、あるいはそのままの温度で、熱交換媒体として媒体流路30に供給する。
【0027】
図1に示すように、通電加熱装置13の出口付近には、パイプ130内の流路の中心軸線部分の温度を計測する温度センサ40が設けられている。本実施形態に係る温度センサ40は、1秒ごとに、通電加熱装置13の出口付近における流動性食品材料の温度を測定しており、取得した温度データをコントロールユニット18に出力する。なお、温度センサ40により温度を測定する周期は、1秒ごとに限定されず、1秒よりも短い周期としてもよいし、1秒よりも長い周期としてもよい。
【0028】
コントロールユニット18は、温度データに基づいて電極体23に印加する電圧を制御する制御プログラムを実行する処理装置と、当該制御プログラムが格納されるとともに、温度センサ40から取得した温度データを記憶する記憶装置を備えている。コントロールユニット18は、温度センサ40により取得された温度データに基づいて、通電加熱装置13の出力(電極体23に印加する電圧)を制御する。具体的には、コントロールユニット18は、温度センサ40が取得した流動性食品材料の温度が目標温度に達していない場合には、通電加熱装置13に印加する電圧を高くすることで、流動性食品材料の温度を目標温度まで上昇させる。反対に、コントロールユニット18は、温度センサ40で測定した流動性食品材料の温度が目標温度を超えている場合には、通電加熱装置13に印加する電圧を低くすることで、流動性食品材料の温度を目標温度まで下降させる。このように、コントロールユニット18は、温度センサ40により測定された流動性食品材料の温度データに基づいて、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を行っている。本実施形態において、温度センサ40は1秒ごとに流動性食品材料の温度データを取得しており、温度センサ40が取得した流動性食品材料の温度データをそのまま用いて、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を行う制御モードを、基本制御モードという。
【0029】
また、本実施形態に係るコントロールユニット18は、一定時間内の異なる時刻において温度センサ40が取得した複数の温度データに基づいて、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を行うことができる。具体的には、コントロールユニット18は、直近10秒間において取得された10回分の温度データの移動平均値を算出し、直近10秒間における流動性食品材料の温度データの移動平均値に基づいて、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を行う第1制御モードと、直近30秒間において取得された流動性食品材料の30回分の温度データの移動平均値を算出し、直近30秒間における流動性食品材料の温度データの移動平均値に基づいて、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を行う第2制御モードとを行うことができる。
【0030】
そして、本実施形態に係るジュール加熱装置1は、上述した、基本制御モード、第1制御モード、および第2制御モードを切り替え、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を行うことが可能となっている。たとえば、操作パネル(不図示)を介して、ユーザが、流動性食品材料の特性に応じて、いずれかの制御モードを選択する構成とすることができる。また、コントロールユニット18は、最初に、基本制御モードより電圧制御を行いながら流動性食品材料の温度を監視し、流動性食品材料の温度が乱高下する場合には(あるいは流動性食品材料の温度が所定値以上の幅でぶれる場合には)、第1制御モードで電圧制御を行う構成とすることができる。また、第1制御モードで電圧制御を行いながら流動性食品材料の温度を監視し、流動性食品材料の温度がまだ乱高下する場合には、第2制御モードに基づいて電圧制御を行う構成とすることができる。このように、コントロールユニット18が、自動で電圧制御を行うプログラムを有する構成とすることもできる。また、温度データの移動平均値の対象とする「一定時間」は直近10秒間または直近30秒間に限定されず、たとえば、直近20秒間における流動性食品材料の温度データの移動平均値に基づいて、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を行う第3制御モードや、直近15秒間における流動性食品材料の温度データの移動平均値に基づいて、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を行う第4制御モードなどを適宜行う構成としてもよい。
【0031】
温度センサ40は、熱電対などの公知の温度センサを用いることができる。また、コントロールユニット18は、通常運転時は、温度センサ40の計測値に基づき電極体23に供給される電力をPID制御により自動制御することができる。PID制御における比例動作(P動作)や積分動作(I動作)の値は、オーバーシュートやサイクリングを起こさないように、加熱流路21の全長や食品材料の流速等に応じて適宜最適に設定される。また、本実施形態において、温度センサ40は、通電加熱装置13の出口付近に設置されるが、この構成に加えて、別の温度センサを、通電加熱装置13の入り口付近、1本目の加熱モジュール20と2本目の加熱モジュール20との間の配管22、あるいは、2本目の加熱モジュール20と3本目の加熱モジュール20との間の配管22に設置する構成とすることもできる。
【0032】
通電加熱装置13で加熱殺菌された流動性食品材料は、パイプ130を経由して温度保持部15まで移送され、温度保持部15において予熱によりさらに加熱・殺菌が行われた後、パイプ140を経由して、冷却部16へ移送される。そして、流動性食品材料は、冷却部16を通過する際に冷却され、パイプ150を経由して、充填機17へと移送される。充填機17は、袋内に流動性食品材料を充填するノズルと、袋内に充填された流動性食品材料を成型する成型機を備えている。また、充填機17はホッパーを備えており、通電加熱装置13から移送された流動性食品材料はホッパーで一時的に貯留される。なお、上述した実施形態に代えて、温度保持部15を備えない構成とすることもできるし、冷却部16を備えないで流動性食品材料を高温のまま充填機17で包装に充填する構成とすることもできる。
【0033】
また、本実施形態では、パイプ110に、流動性食品材料の流量を測定するための電磁流量計160が設けられている。電磁流量計160は、導電性の流動性食品材料が通過する際に生じる起電力を検知することで、パイプ110を通過する流動性食品材料の流量を測定するものであり、通電加熱装置13が空転していないかを判定するためのものである。電磁流量計160による流動性食品材料の流量測定結果は、コントロールユニット18へと出力され、たとえば流量が所定値よりも低い場合には、コントロールユニット18により、通電加熱装置13による通電加熱を停止するなど、空焚きを防止するための制御を行うことができる。また、本実施形態に係るジュール加熱装置1では、電磁流量計160で取得した流動性食品材料の流量に基づいて、ニーダー10に貯留された流動性食品材料が一定量ずつ通電加熱装置13に移送されるように、ポンプ11の動作の制御も行われる。
【0034】
ここで、電磁流量計160により検知される起電力は、流動性食品材料の導電率に応じて変化するため、導電率が大きく異なる複数の材料が混在する流動性食品材料では、温度センサ40と同様に、タイミングによって検出される流量にバラツキが生じる。そのため、本実施形態では、導電率が大きく異なる複数の材料が混在する流動性食品材料については、直近の一定期間内における複数の時刻で検知した流量データの移動平均値を、流動性食品材料の流量として算出することで、流動性食品材料の流量値のバラツキを抑制している。これにより、ニーダー10に貯留された流動性食品材料が一定量ずつ通電加熱装置13に移送されるように、ポンプ11の動作を制御することができる。
【0035】
また、流動性食品材料の種類によっては、ニーダー10で貯留している流動性食品材料の自重によって、通電加熱装置13に移送される流量が変化する場合があり、当該流量の差により、パイプ内を移送される流動性食品材料の一部に空洞が生じてしまう可能性が考えられる。上述したように、温度センサ40がこのような空洞の温度を検出してしまうと、流動性食品材料自体の温度を検知できずに、電極体23に印加する電圧のフィードバック制御を適切に行うことができない場合がある。これに対して、本実施形態では、一定期間内における異なる時刻で取得した複数の流量データの移動平均値を、流動性食品材料の流量として算出することで、電磁流量計160により流量のバラツキを抑え、ポンプ11の動作を適切に制御することができることに加え、一定期間内における異なる時刻において取得した複数の温度データに基づいて電極体23に印加する電圧を制御することで、流動性食品材料をより適切に加熱することが可能となる。
【0036】
次いで、本実施形態に係るジュール加熱装置1の実施例について説明する。本実施形態では、流動性食品材料として市販のキムチを用い、温度センサ40から取得した温度データに基づいて、通電加熱装置13で印加する電圧を制御して、キムチの加熱温度を制御した。ここで、図5は、本実施例における流動性食品材料の温度の推移を示したグラフである。具体的には、図5においては、1秒ごとに取得した温度センサ40の出力値(1秒ごとに取得したそのままの温度データ)に基づいて電圧制御を行った基本制御モードでの流動性食品材料の温度の推移(比較例1)と、1秒ごとに取得した温度センサ40の出力値のうち直近10秒間における温度データの移動平均値に基づいて電圧制御を行った第1制御モードでの流動性食品材料の温度の推移(実施例1)と、1秒ごとに取得した温度センサ40の出力値のうち直近30秒間における温度データの移動平均値に基づいて電圧制御を行った第2制御モードでの流動性食品材料の温度の推移(実施例2)と、を例示している。
【0037】
図5に示すように、比較例1では、流動性食品材料の温度が大きく乱高下していることが分かる。これは、キムチに含まれるタレ(液状成分)と白菜などの具(固形成分)とで導電率が大きくことなるため、固形成分が比較的多いタイミングでは通電加熱による温度上昇が少なく、流動性食品材料の温度は目標温度よりも低い温度で測定されるためである。すなわち、コントロールユニット18は、流動性食品材料の温度が目標温度より低い温度である場合には、流動性食品材料の温度を高くするために、電極体23に印加する電圧を高くするフィードバック制御を行うが、液状成分が比較的多いタイミングであると、導電率が高いため通電加熱により流動性食品材料の温度が目標温度よりも高くなってしまう。また、この場合、コントロールユニット18は、流動性食品材料の温度を低くするために、電極体23に印加する電圧を低くするようにフィードバック制御を行うが、この際に固形成分が比較的多いタイミングとなると導電率が低いため通電加熱により温度が低下してしまう。このような状況を繰り返すことで、図5に示す比較例1のように、流動性食品材料の温度が乱高下してしまい、所望の温度で流動性食品材料を加熱することができなくなってしまう。
【0038】
これに対して、実施例1では、直近10秒における温度データの移動平均値に基づいて電圧制御を行う第1制御モードを行うことで、導電率が異なる材料の一時的な温度変化に応じて電極体23に印加される電圧が決定されることを防止することができ、その結果、図5に示すように、流動性食品材料をほぼ一定の温度で加熱することができる。同様に、実施例2でも、直近10秒における温度データの移動平均値に基づいて電圧制御を行う第1制御モードを行うことで、図5に示すように、流動性食品材料をほぼ一定の温度で継続して加熱することができる。
【0039】
また、図示していないが、固形物(白菜)の大きさや、タレの粘度などが異なる4種類のキムチを用いて、基本制御モードで電圧制御を行った場合と、直近の所定時間内における複数の温度データの移動平均値に基づいて電圧制御を行った場合との流動性食品材料の温度の変動を比較した。具体的には、比較例2として、市販のキムチAを用いて、1秒ごとに検出した温度データに基づいて電圧制御(基本制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定した。また、実施例3として、同じ市販のキムチAを用いて、直近30秒間において検出した30回分の温度データの移動平均値に基づいて電圧制御(第2制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定した。その結果、比較例2では、流動性食品材料の温度が85.9±3.5℃で推移したのに対して、実施例3では、85.2±0.5℃で推移した。また、比較例3として、市販のキムチBを用いて、1秒ごとに検出した温度データに基づいて電圧制御(基本制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定し、また、実施例4として、同じ市販のキムチBを用いて、直近30秒間において検出した30回分の温度データの移動平均値に基づいて電圧制御(第2制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定した。その結果、比較例3では、流動性食品材料の温度が85.9±4.5℃で推移したのに対して、実施例4では、85.2±0.7℃で推移した。
【0040】
さらに、比較例4として、市販のキムチCを用いて、1秒ごとに検出した温度データに基づいて電圧制御(基本制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定した。また、同じ市販のキムチCを用いて、実施例5-1として、直近20秒間において検出した20回分の温度データの移動平均値に基づいて電圧制御(第3制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定し、実施例5-2として、直近30秒間において検出した30回分の温度データの移動平均値に基づいて電圧制御(第2制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定した。その結果、比較例4では、流動性食品材料の温度が83.1±2.5℃で推移したのに対して、実施例5-1では78.0±1.5℃で推移し、実施例5-2では80.7±0.4℃で推移した。また、比較例5として、市販のキムチDを用いて、1秒ごとに検出した温度データに基づいて電圧制御(基本制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定した。また、実施例6-1として、直近15秒間において検出した15回分の温度データの移動平均値に基づいて電圧制御(第4制御モードでの電圧制御)を行い、流動性食品材料の温度推移を測定し、実施例6-2として、直近30秒間において検出した30回分の温度データの移動平均値(第2制御モードでの電圧制御)に基づいて電圧制御を行い、流動性食品材料の温度推移を測定した。その結果、比較例5では、流動性食品材料の温度が74.1±2.5℃で推移したのに対して、実施例6-1では71.0±1.0℃で推移し、実施例6-2では73.2±0.5℃で推移した。
【0041】
以上のことから、一時的に検出した温度データに基づいて電極体23に印加する電圧制御(基本制御モードでの電圧制御)を行うよりも、直近所定時間内における温度データの移動平均値に基づいて電極体23に印加する電圧制御(第1~第4制御モード)を行うことで、流動性食品材料の温度の変動が小さくなり、流動性食品材料を所望の温度で加熱することができることが分かった。また、直近30秒間内における温度データの移動平均値に基づいて電圧制御(第2制御モードでの電圧制御)を行うことで、測定した温度データそのままに基づいて電圧制御(基本制御モードでの電圧制御)を行う場合と比べて、流動性食品材料の温度の変動を1/5~1/7に抑えることができることが分かった。
【0042】
また、本実施例では、電磁流量計160により流動性食品材料の流量を測定する場合に、電磁流量計160が一時的に検出した起電力に基づいて算出した流量を、流動性食品材料の流量として取得するのではなく、所定時間内における異なる時刻で測定した起電力に基づいて算出した複数の流量データの移動平均値を、流動性食品材料の流量として算出した。具体的には、実施例7として、直近5秒間における5回分の流量データの移動平均値に基づいて流動性食品材料の流量を算出し、また実施例8として、直近30秒間における30回分の流量データの移動平均値に基づいて流動性食品材料の流量を算出した。その結果、実施例7では、流量が±10L/時間の幅で変動したのに対して、実施例8では、流量が±2L/時間の幅で変動し、流動性食品材料の流量のバラツキを抑制することができた。
【0043】
以上のように、本実施形態に係るジュール加熱装置1は、複数の電極体23および複数のスペーサ管体24と、それらの内壁が流動性食品材料を流動移送させながら通電加熱するための加熱流路21と、食品材料の温度を検出する温度センサ40と、温度センサ40が検知した温度データに基づいて電極体23に印加する電圧を制御するコントロールユニット18と、を備え、コントロールユニット18は、温度センサ40が一定時間内における異なる時刻で検出した複数の温度データに基づいて、流動性食品材料の加熱温度が目標温度となるように、電極体23に印加する電圧を制御する。これにより、本実施形態に係るジュール加熱装置1では、導電率が異なる材料が混在する流動性食品材料であっても、一時的な流動性食品材料の温度に応じて電極体23に印加される電圧が決定されないため、図5の実施例1,2に示すように、流動性食品材料の温度変動を抑制し、流動性食品材料を所望の温度に近い温度で継続して加熱することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態例の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】
また、上述した実施形態では、温度センサ40の温度データに基づいて電圧制御を行う通電加熱装置13を例示して説明したが、既設の通電加熱装置に、本発明に係る電圧制御を行うプログラムを適用して、本発明に係る通電加熱装置13を構成することもできる。
【0046】
さらに、上述した実施形態では、複数の温度データの移動平均値を用いて、電極体23に印加する電圧を制御する構成を例示したが、この構成に限定されず、複数の温度データの荷重移動平均値または指数移動平均値を用いて、電極体23に印加する電圧を制御する構成としてもよい。
【0047】
加えて、上述した実施形態では、電極体23をリング状とする構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、電極体23を平板状とする構成とすることができる。たとえば、交流高電界殺菌方法による通電加熱を行う場合には、平板状の電極体23を用い、この電極体23を媒体で加熱および冷却することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…ジュール加熱装置
10…ニーダー
11…ポンプ
12…予熱部
13…通電加熱装置
20…加熱モジュール
21…加熱流路
22…配管
23…電極体
24…スペーサ管体
25…フランジ
26…アース電極
27…ジョイント部
30…媒体流路
31…媒体供給口
32…媒体排出口
14…調温器
15…温度保持部
16…冷却部
17…充填機
18…コントロールユニット
19…電源ユニット
110~150…パイプ
40…温度センサ
160…電磁流量計
図1
図2
図3
図4
図5