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特許7427247呼吸状態判別装置、呼吸状態判定方法、及び呼吸状態判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】呼吸状態判別装置、呼吸状態判定方法、及び呼吸状態判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/113 20060101AFI20240129BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240129BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61B5/113
A61B5/08
A61B5/11 100
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020100048
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021194035
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富男
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-280686(JP,A)
【文献】特開2011-182919(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003752(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0275832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データに基づいて、前記被測定者の呼吸状態を判別する呼吸状態判別装置であって、
前記波形データを前記被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は前記被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別する波形判別手段と、
前記呼吸波形データを所定の時間間隔で区切った区間毎に呼吸状態を判別し、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した前記区間に対して、前記所定の時間間隔とは異なる時間間隔で呼吸状態の判別を行う呼吸状態判別手段と、
を備える呼吸状態判別装置。
【請求項2】
呼吸状態判別手段は、前記呼吸波形データを第1時間間隔で区切った前記区間毎の判別結果が前記所定の呼吸状態である前記区間に対して、前記第1時間間隔とは異なる第2時間間隔で区切って呼吸状態を判別する、請求項1記載の呼吸状態判別装置。
【請求項3】
前記被測定者の呼吸状態は、前記被測定者の睡眠時における呼吸安定、呼吸不安定、及び前記被測定者の相対的に小さな体動の何れかであり、
前記呼吸状態判別手段は、前記呼吸不安定とは判別しなかった前記第1時間間隔の前記区間を、前記第1時間間隔より短い前記第2時間間隔で区切って前記呼吸安定、前記呼吸不安定、及び前記小さな体動の何れかに再度判別する、請求項2記載の呼吸状態判別装置。
【請求項4】
前記被測定者の呼吸状態は、前記被測定者の睡眠時における呼吸安定、呼吸不安定、及び前記被測定者の相対的に小さな体動の何れかであり、
前記呼吸状態判別手段は、前記小さな体動に判別した前記第1時間間隔の前記区間を含み、前記第1時間間隔より長い前記第2時間間隔で区切った前記区間を呼吸安定、呼吸不安定、及び小さな体動の何れかに再度判別する、請求項2記載の呼吸状態判別装置。
【請求項5】
呼吸状態判別手段によって判別された呼吸状態に基づいて、睡眠中の前記被測定者が安定した呼吸を行った時間割合を算出する算出手段を備える、請求項1から請求項4の何れか1項記載の呼吸状態判別装置。
【請求項6】
前記算出手段によって算出された前記時間割合に基づいて、前記被測定者の睡眠時における無呼吸リスクを判定する判定手段を備える、請求項5記載の呼吸状態判別装置。
【請求項7】
前記呼吸状態判別手段による前記被測定者の呼吸状態の判別結果に基づいて、前記被測定者の呼吸状態の時間変化を示す画像を画像出力手段に出力させる、請求項1から請求項6の何れか1項記載の呼吸状態判別装置。
【請求項8】
前記呼吸状態判別手段は、前記波形データを画像データとして取得し、当該画像データが複数種類の呼吸状態の何れの状態を示しているのかを判別する画像判別器を用いて、前記呼吸波形データを区切った前記区間毎に呼吸状態を判別する、請求項1から請求項7の何れか1項記載の呼吸状態判別装置。
【請求項9】
被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データに基づいて、前記被測定者の呼吸状態を判別する呼吸状態判別方法であって、
前記波形データを前記被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は前記被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別する第1工程と、
前記呼吸波形データを所定の時間間隔で区切った区間毎に呼吸状態を判別し、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した前記区間に対して、前記所定の時間間隔とは異なる時間間隔で呼吸状態の判別を行う第2工程と、
を有する呼吸状態判別方法。
【請求項10】
被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データに基づいて、前記被測定者の呼吸状態を判別する呼吸状態判別装置が備えるコンピュータを、
前記波形データを前記被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は前記被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別する波形判別手段と、
前記呼吸波形データを所定の時間間隔で区切った区間毎に呼吸状態を判別し、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した前記区間に対して、前記所定の時間間隔とは異なる時間間隔で呼吸状態の判別を行う呼吸状態判別手段と、
して機能させるための呼吸状態判別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸状態判別装置、呼吸状態判定方法、及び呼吸状態判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠時に呼吸停止や低呼吸となる睡眠時無呼吸症候群が知られ、睡眠時無呼吸症候群を検知するための装置の開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、被測定者が睡眠状態の場合に、生体信号から抽出した呼吸波形および/またはいびき波形に基づいて、無呼吸乃至低呼吸となる異常呼吸を判定する睡眠時無呼吸症候群測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4859778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、呼吸波形等から被測定者の呼吸状態を判別しようとしても、呼吸周期は人によって違う場合もあり、被測定者の呼吸状態を正しく判別することが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、被測定者の呼吸状態をより正確に判別できる、呼吸状態判別装置、呼吸状態判定方法、及び呼吸状態判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の呼吸状態判別装置は、被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データに基づいて、前記被測定者の呼吸状態を判別する呼吸状態判別装置であって、前記波形データを前記被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は前記被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別する波形判別手段と、前記呼吸波形データを所定の時間間隔で区切った区間毎に呼吸状態を判別し、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した前記区間に対して、前記所定の時間間隔とは異なる時間間隔で呼吸状態の判別を行う呼吸状態判別手段と、を備える。
【0008】
被測定者の胸部の動きに基づいて呼吸状態を正しく判別することは、呼吸周期の個人差が大きいことから難しい。そこで、本構成によれば、被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データから被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データを判別する。そして呼吸波形データのうち、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に対しては異なる時間間隔で複数回の判別が行われる。これにより、被測定者の呼吸周期が異なっても、より正確に被測定者の呼吸状態を判別できる。
【0009】
上記の呼吸状態判別装置において、前記呼吸状態判別手段は、前記呼吸波形データを第1時間間隔で区切った前記区間毎の判別結果が前記所定の呼吸状態である前記区間に対して、前記第1時間間隔とは異なる第2時間間隔で区切って呼吸状態を判別する。本構成によれば、誤判定されやすい所定の呼吸状態に判別した第1時間間隔とは異なる第2時間間隔で区切って呼吸状態を再度判別するので、被測定者の呼吸状態をより正確に判別できる。
【0010】
上記の呼吸状態判別装置において、前記被測定者の呼吸状態は、前記被測定者の睡眠時における呼吸安定、呼吸不安定、及び前記被測定者の相対的に小さな体動の何れかであり、前記呼吸状態判別手段は、前記呼吸不安定とは判別しなかった前記第1時間間隔の前記区間を、前記第1時間間隔より短い前記第2時間間隔で区切って前記呼吸安定、前記呼吸不安定、及び前記小さな体動の何れかに再度判別する。
【0011】
呼吸安定、呼吸不安定、及び小さな体動のうち、呼吸不安定と小さな体動とは判別が難しい。また、呼吸安定と呼吸不安定とは判別が難しい。本構成によれば、1回目の判別で呼吸不安定とは判別されなかった第1時間間隔の区間をより短い第2時間間隔で区切った区間で再度判別するので、被測定者の呼吸状態をより正確に判別できる。
【0012】
上記の呼吸状態判別装置において、前記被測定者の呼吸状態は、前記被測定者の睡眠時における呼吸安定、呼吸不安定、及び前記被測定者の相対的に小さな体動の何れかであり、前記呼吸状態判別手段は、前記小さな体動に判別した前記第1時間間隔の前記区間を含み、前記第1時間間隔より長い前記第2時間間隔で区切った前記区間を呼吸安定、呼吸不安定、及び小さな体動の何れかに再度判別する。本構成によれば、1回目の判別で小さな体動に判別された区間を含み、より長い第2時間間隔で区切った区間を再度判別するので、被測定者の呼吸状態をより正確に判別できる。
【0013】
上記の呼吸状態判別装置において、呼吸状態判別手段によって判別された呼吸状態に基づいて、睡眠中の前記被測定者が安定した呼吸を行った時間割合を算出する算出手段を備える。本構成によれば、簡易に被測定者の睡眠時における呼吸安定割合を算出できる。
【0014】
上記の呼吸状態判別装置において、前記算出手段によって算出された前記時間割合に基づいて、前記被測定者の睡眠時における無呼吸リスクを判定する判定手段を備える。本構成によれば、簡易かつより正確に被測定者の睡眠時における無呼吸リスクを判定できる。
【0015】
上記の呼吸状態判別装置において、前記呼吸状態判別手段による前記被測定者の呼吸状態の判別結果に基づいて、前記被測定者の呼吸状態の時間変化を示す画像を画像出力手段に出力させる。本構成によれば、被測定者の呼吸状態の時間変化を直感的に認識可能となる。
【0016】
上記の呼吸状態判別装置において、前記呼吸状態判別手段は、前記波形データを画像データとして取得し、複数種類の呼吸状態の何れの状態を示しているのかを判別する画像判別器を用いて、前記呼吸波形データを区切った前記区間毎に呼吸状態を判別する。本構成によれば、区間毎の被測定者の呼吸状態を簡易に判別できる。
【0017】
本発明の一態様の呼吸状態判定方法は、被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データに基づいて、前記被測定者の呼吸状態を判別する呼吸状態判別方法であって、前記波形データを前記被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は前記被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別する第1工程と、前記呼吸波形データを所定の時間間隔で区切った区間毎に呼吸状態を判別し、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した前記区間に対して、前記所定の時間間隔とは異なる時間間隔で呼吸状態の判別を行う第2工程と、を有する。
【0018】
本発明の一態様の呼吸状態判定プログラムは、被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データに基づいて、前記被測定者の呼吸状態を判別する呼吸状態判別装置が備えるコンピュータを、前記波形データを前記被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は前記被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別する波形判別手段と、前記呼吸波形データを所定の時間間隔で区切った区間毎に呼吸状態を判別し、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した前記区間に対して、前記所定の時間間隔とは異なる時間間隔で呼吸状態の判別を行う呼吸状態判別手段と、して機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被測定者の呼吸状態をより正確に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態の呼吸状態判別システムの概略構成図である。
図2図2は、実施形態の呼吸状態判別装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態の呼吸状態を判別するための画像フィルタを示す模式図であり、(A)は被測定者が不在を示す画像フィルタ、(B)は粗体動を示す画像フィルタ、(C)は呼吸安定を示す画像フィルタ、(D)は呼吸不安定を示す画像フィルタ、(E)は小体動を示す画像フィルタである。
図4図4は、実施形態の波形データを示す模式図であり、(A)は睡眠計で検出された波形データを画像データ化した波形画像を示し、(B)は所定時間間隔の区間で区切られた波形画像を示し、(C)は呼吸状態が判別された波形画像を示す。
図5図5は、実施形態の呼吸状態判別処理のうち第1判別処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態の呼吸状態判別処理のうち第2判別処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態の呼吸状態判別処理の結果を示す図であり、(A)は呼吸波形データを1分間で区切った判別結果を示す図であり、(B)は第1判別処理による判別結果を示す図であり、(C)は第2判別処理による判別結果を示す図である。
図8図8は、実施形態の無呼吸リスク判定の閾値等を示す模式図である。
図9図9は、実施形態の呼吸状態の判別結果の出力画像である。
図10図10は、実施形態の呼吸状態の判別結果の出力画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0022】
図1は、本実施形態の呼吸状態判別システム10の概略構成図である。呼吸状態判別システム10は、睡眠計12及び呼吸状態判別装置14を備える。
【0023】
睡眠計12は、マットレス部20及び本体部22を備える。マットレス部20は、検出部24を備え、例えば寝具25の下側に配置される。すなわち、被測定者は、マットレス部20が配置された寝具25で睡眠する。
【0024】
検出部24は、精製水等の流体が内封された内部空間を有する略袋状の部材である流体室が設けられ、流体室の内部空間の圧力の変化を検出するセンサ(例えば、圧力センサ又は電波センサ等)を備える。そして、検出部24は、センサの検出結果に応じた圧力の変化を示す信号を生成して出力する。すなわち、検出部24によって、睡眠時の被測定者から発せられる胸部の動き(呼吸)及び体動に伴う振動が検出される。なお、本実施形態の検出部24は、流体室の内部空間の圧力の変化を検出するが、これに限られず、検出部24は、流体室の内部空間の圧力それ自体を検出するものであってもよい。すなわち、検出部24は、被測定者の睡眠の質の評価のためには流体室の内部空間における圧力の値の変化を把握できれば充分であり、具体的な圧力の値それ自体の把握は不用である。
【0025】
本体部22は、検出部24によって検出された信号の処理を含む種々の処理を行うものであり、種々の情報を表示する表示部26及び操作部28が設けられている。表示部26は、被測定者の測定結果等及び各種ガイダンス等の表示を行う。操作部28は、電源をオン/オフする操作及び測定・評価処理の開始/終了等の操作に係る操作部材である。
【0026】
本体部22は、検出部24によって検出された信号を、被測定者の胸部の動き及び体動の時間変化を示す波形データとし、波形データを呼吸状態判別装置14へ送信する。なお、本体部22と呼吸状態判別装置14とは、一例として、無線通信によって波形データ等、各種データの送受信が可能とされているが、これに限らず、有線通信によってデータの送受信が可能とされてもよい。また、波形データは、本体部22において可搬型記憶媒体に記憶され、呼吸状態判別装置14が可搬型記憶媒体から読み取ってもよい。
【0027】
呼吸状態判別装置14は、被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データに基づいて、被測定者の呼吸状態を判別する処理(以下「呼吸状態判別処理」という。)を行う情報処理装置であり、呼吸状態の判別結果等の画像を表示するディスプレイ30を備える。
【0028】
ここで、被測定者の胸部の動きに基づいて呼吸状態を正しく判別することは、呼吸周期の個人差が大きいことから難しい。そこで、本実施形態の呼吸状態判別処理は、波形データを被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別する。そして、呼吸状態判別処理は、呼吸波形データのうち、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した区間に対しては異なる時間間隔で再度判別を行う。
【0029】
これにより、呼吸状態判別処理は、被測定者の呼吸周期が異なっても、より正確に被測定者の呼吸状態を判別できる。
【0030】
なお、本実施形態において、呼吸波形データを用いて判別される呼吸状態は、例えば、被測定者の睡眠時における呼吸安定、呼吸不安定、及び相対的に小さな体動(以下「小体動」という。)である。また、非呼吸波形データを用いて判別される状態は、例えば、被測定者が睡眠計12上に不在及び寝返りなどの相対的に大きな体動(以下「粗体動」という。)である。なお、本実施形態では、上述のように小体動も呼吸状態として扱う。この理由は、詳細を後述するように、小体動が呼吸安定又は呼吸不安定に誤判定される可能性があるためである。
【0031】
また、呼吸状態判別装置14は、判別された被測定者の呼吸状態に基づいて、睡眠中の被測定者が安定した呼吸を行った時間割合を算出し、この時間割合に基づいて被測定者の睡眠時における無呼吸リスクを判定する。
【0032】
図2は、本実施形態の呼吸状態判別装置14の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【0033】
本実施形態の呼吸状態判別装置14は、図2に示されるように、CPU(Central Processing Unit)等で構成される演算部40、各種プログラム及び各種データ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)42、演算部40による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)44、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶部46、並びに睡眠計12、印刷装置、及び他の情報処理装置等との間でデータの送受信を行う通信部48を備える。なお、呼吸状態判別装置14は、睡眠計12からの波形データを通信部48で受信し、記憶部46に逐次記憶してもよいし、睡眠計12で取得された波形データを、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記憶媒体を介して睡眠計12から取得してもよい。
【0034】
本実施形態の演算部40は、呼吸状態判別処理を実行するための機能として、波形判別部50、呼吸状態判別部52、呼吸安定割合算出部54、無呼吸リスク判定部56、及び判別結果出力制御部58を備える。本実施形態において、各機能は一例として演算部40が記憶部46に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これに限らず、各機能は、呼吸状態判別装置14が備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の個別のハードウェアによって実現されてもよい。
【0035】
波形判別部50は、波形データを被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別する。なお、本実施形態の波形判別部50は、波形データを予め定められた時間間隔(以下「初期時間間隔」という。」)で区切った区間毎に呼吸波形データ又は非呼吸波形データに判別する。なお、初期時間間隔は、一例として1分である。
【0036】
呼吸状態判別部52は、呼吸波形データを所定の時間間隔で区切った区間毎に呼吸状態を判別し、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した区間に対して、上記所定の時間間隔とは異なる時間間隔で呼吸状態の判別を行う。
【0037】
なお、本実施形態の呼吸状態判別部52は、呼吸波形データを第1時間間隔で区切った区間毎の判別結果が所定の呼吸状態である区間に対して、第1時間間隔とは異なる第2時間間隔で区切って呼吸状態を判別する。このように、本実施形態の呼吸状態判別部52は、誤判定されやすい所定の呼吸状態に判別した第1時間間隔とは異なる第2時間間隔で区切って呼吸状態を再度判別するので、被測定者の呼吸状態をより正確に判別できる。
【0038】
なお、第2時間間隔は、例えば、第1時間間隔を1分とした場合には2分であり、第1時間間隔を2分とした場合には1分である。このように第1時間間隔と第2時間間隔との差を2倍又は1/2倍にする理由は、呼吸周期の個人差が一般的に約2倍程度(呼吸周期の長い人は呼吸周期の短い人の約2倍程度)のためである。
【0039】
呼吸安定割合算出部54は、呼吸状態判別部52によって判別された呼吸状態に基づいて、睡眠中の被測定者が安定した呼吸を行った時間割合(以下「呼吸安定割合」という。)を算出する。
【0040】
無呼吸リスク判定部56は、呼吸安定割合算出部54によって算出された呼吸安定割合に基づいて被測定者の睡眠時における無呼吸リスクを判定する。
【0041】
判別結果出力制御部58は、呼吸状態判別部52による被測定者の呼吸状態の判別結果に基づいて、被測定者の呼吸状態の時間変化を示す画像を画像出力手段に出力させる。なお、画像出力手段は、例えば、ディスプレイ30及び印刷装置である。
【0042】
ここで、本実施形態の波形判別部50及び呼吸状態判別部52は、波形データを画像データ(以下「波形画像」ともいう。)として取得し、複数種類の呼吸状態の何れの状態を示しているのかを判別する画像判別器50A,50Bを用いて、波形データを区切った区間毎に呼吸状態等を判別する。すなわち、波形判別部50は画像判別器50Aを備え、呼吸状態判別部52は画像判別器50Bを備える。
【0043】
図3は、本実施形態の画像判別器50A,50Bによって呼吸状態を判別するための画像フィルタ60を示す模式図である。図3(A)は被測定者が不在を示す画像フィルタ60A、図3(B)は粗体動を示す画像フィルタ60B、図3(C)は呼吸安定を示す画像フィルタ60C、図3(D)は呼吸不安定を示す画像フィルタ60D、図3(E)は小体動を示す画像フィルタ60Eである。これらの画像フィルタ60は、各種呼吸状態等を示す典型的な波形であり、ディープラーニング(deep learning)により作成される。
【0044】
図4は、本実施形態の波形データを示す模式図である。図4(A)は、睡眠計12で検出された波形データを画像データ化した波形画像を示す。なお、睡眠計12で検出された波形データを画像データ化する際には、予めノイズ除去等の各種フィルタ処理が行われてもよい。
【0045】
図4(B)は、予め定められた時間間隔である区間70で区切られた波形画像を示す。この時間間隔は、上述の初期間間隔、第1時間間隔、及び第2時間間隔に相当する。
【0046】
図4(C)は呼吸状態が判別された波形画像を示す。区間70毎に画像フィルタ60A~60Cのうち最も一致する画像フィルタ60が選択され、一致した画像フィルタ60が示す呼吸状態等が各区間70の呼吸状態等として判別される。図4(C)において、区間70A,70B,70Kは被測定者が不在であり、区間70C,70D,70Jは呼吸安定であり、区間70Eは呼吸不安定であり、区間70F,70Gは粗体動であり、区間70H,70Iは小体動である。なお、区間70A,70B,70F,70G,70Kが非呼吸波形データとされ、区間70C,70D,70E,70H,70I,70Jが呼吸波形データとされる。
【0047】
次に、図5,6を参照して、本実施形態の呼吸状態判別処理を説明する。本実施形態では呼吸状態判別処理として第1判別処理及び第2判別処理について説明する。
【0048】
図5は、本実施形態の第1判別処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
ここで、呼吸安定、呼吸不安定、及び小体動のうち、呼吸不安定と小体動とは判別が難しい。具体的には、例えば、呼吸が短時間止まった後、呼吸が再開するときに、ピクッとした瞬間的な体動が発生することがある。この瞬間的な体動が含まれる区間の時間間隔が短い場合には、小体動と判別される可能性があるが、実際には呼吸不安定な状態で生じる体動であるため、呼吸不安定と判別されるべきである。ここで、より長い時間間隔で区間を区切ることにより、この瞬間的な体動が含まれる区間には、この瞬間的な体動の前に呼吸が短時間止まったことを示す呼吸波形が含まれるため、呼吸不安定であることの判別がし易くなる。
【0050】
また、呼吸安定と呼吸不安定とは判別が難しい。具体的には、例えば、呼吸不安定な状態において、呼吸と呼吸の間の時間が長くなることがある。このような状態で、ある区間に1回分の呼吸のみ含まれる場合には、小体動として判別される可能性があるが、実際には呼吸不安定と判別されるべきである。ここで、より長い時間間隔で区間を区切ることにより、1つの区間に複数回の呼吸が含まれる可能性が高くなるため、呼吸不安定であることの判別がし易くなる。
【0051】
以上のことから、第1判別処理では、呼吸不安定とは判別しなかった第1時間間隔の区間70を、第1時間間隔より短い第2時間間隔で区切って呼吸安定、呼吸不安定、及び小体動の何れかに再度判別する。
【0052】
このような第1判別処理によれば、1回目の判別で呼吸不安定とは判別されなかった第1時間間隔の区間70をより短い第2時間間隔で区切った区間70で再度判別するので、被測定者の呼吸状態をより正確に判別できる。
【0053】
以下、図5に示されるフローチャートの流れに沿って、第1判別処理を説明する。
【0054】
まず、ステップS100では、睡眠計12が取得して記憶部46に記憶されている波形データ(以下「生波形データ」という。)を演算部40が読み込む。
【0055】
次のステップS102では、演算部40が生波形データを呼吸用フィルタ処理し、呼吸波形データにする。なお、呼吸用フィルタ処理とは、例えばバンドパスフィルタを用いた処理である。より具体的には、検出部24からの生波形データには呼吸成分より周期の短い脈拍成分が混じっているため、ステップS102では、バンドパスフィルタを用いて呼吸成分を取り出す。
【0056】
次のステップS104では、波形判別部50が、生波形データを初期時間間隔である1分間隔で区切った波形画像の区間70に対して画像フィルタ60を用いて判別を行う。なお、1分間毎の区間70に区切った生波形データを生波形1分間データともいう。
【0057】
ステップS106では、生波形1分間データの判別結果が不在又は粗体動であるか否かを波形判別部50が判定し、肯定判定の場合はステップS108へ移行し、当該区間70の判別結果を不在又は粗体動に確定させる。一方、否定判定の場合はステップS110へ移行する。
【0058】
ステップS110では、呼吸状態判別部52が、ステップS102で生成した呼吸波形データを第1時間間隔として2分間の区間70で区切って画像データ化(波形画像化)とし、区間70毎に画像フィルタ60を用いて判別を行う。なお、2分間毎の区間70に区切った呼吸波形データを呼吸波形2分間データともいう。
【0059】
また、生波形データで不在又は粗体動と判別された区間70に対応する呼吸波形2分間データの区間70は、非呼吸波形データであるため呼吸状態の判別からは除外される。すなわち、本実施形態では、生波形データは不在又は粗体動の確定に用いられ、呼吸波形データは呼吸状態(呼吸安定、呼吸不安定、小体動)の判定に用いられる。このように、不在又は粗体動に分類された状態は誤判定の可能性が低いので、ステップ106の処理によって判定を確定させることができる。
【0060】
ステップS112では、呼吸波形2分間データの判別結果が呼吸不安定であるか否かを呼吸状態判別部52が判定し、肯定判定の場合はステップS114へ移行し、当該区間70の判別結果を呼吸不安定に確定させ、ステップS122へ移行する。一方、ステップS112で否定判定となった場合はステップS116へ移行する。
【0061】
ステップS116では、ステップS110で呼吸安定又は小体動と判別された呼吸波形2分間データを、呼吸状態判別部52が第1時間間隔である1分間の区間70で区切った波形画像とし、この区間70毎に画像フィルタ60を用いて再度判別を行う。なお1分間毎の区間70に区切った呼吸波形データを呼吸波形1分間データともいう。
【0062】
次のステップS118では、呼吸波形1分間データの判別結果が呼吸不安定であるか否かを呼吸状態判別部52が判定し、肯定判定の場合はステップS114へ移行し、当該区間70の判別結果を呼吸不安定に確定させ、ステップS122へ移行する。一方、否定判定の場合は、呼吸波形1分間データの判別結果が呼吸安定又は小体動であると呼吸状態判別部52が判別した場合であり、ステップS120へ移行して当該区間70の判別結果を呼吸安定又は小体動に確定させ、ステップS122へ移行する。
【0063】
ステップS122では、波形判別部50が、演算部40に読み込まれた生波形データの最初から最後までの判別が終了したか否かを判定し、肯定判定の場合は本第1判別処理を終了する。一方、否定判定の場合はステップS104へ戻り、生波形データの最後に至るまで判別を繰り返し行う。
【0064】
なお、第1判別処理において、1回目の判別結果が呼吸不安定でない区間70、すなわち1回目の判別結果が呼吸安定又は小体動の区間70に対して2回目の判別を行っているが、これに限らず、1回目の判別結果が呼吸安定でない区間70、すなわち呼吸不安定又は小体動の区間70に対して2回目の判別を行ってもよい。しかしながら、図5に示されるフローチャートのように、1回目の判別によって呼吸安定と判別した区間70を再度判別することで、実際には呼吸不安定と判別されるべき区間70を呼吸安定に誤判別することを抑制できる。
【0065】
一方、図6は、本実施形態の呼吸状態判別処理のうち第2判別処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
第2判別処理では、小体動に判別した第1時間間隔の区間70を含み、第1時間間隔より長い第2時間間隔で区切った区間70を呼吸安定、呼吸不安定、及び小さな体動の何れかに再度判別する。
【0067】
このような第2判別処理によれば、1回目の判別で小体動に判別された区間70を含み、より長い第2時間間隔で区切った区間70を再度判別するので、被測定者の呼吸状態をより正確に判別できる。
【0068】
以下、図6に示されるフローチャートの流れに沿って、第2判別処理を説明する。
【0069】
まず、ステップS200では、睡眠計12が取得して記憶部46に記憶されている生波形データを演算部40が読み込む。
【0070】
次のステップS202では、演算部40が生波形データを呼吸用フィルタ処理し、呼吸波形データにする。
【0071】
次のステップS204では、波形判別部50が、生波形データを初期時間間隔である1分間で区切った波形画像(生波形1分間データ)の区間70に対して画像フィルタ60を用いて判別を行う。
【0072】
ステップS206では、生波形1分間データの判別結果が不在又は粗体動であるか否かを波形判別部50が判定し、肯定判定の場合はステップS208へ移行し、当該区間70の判別結果を不在又は粗体動に確定させ、ステップS222へ移行する。一方、否定判定の場合はステップS210へ移行する。
【0073】
ステップS210では、呼吸状態判別部52が、ステップS202で生成した呼吸波形データを第1時間間隔として1分間の区間70で区切って波形画像(呼吸波形1分間データ)とし、区間70毎に画像フィルタ60を用いて判別を行う。
【0074】
ステップS212では、呼吸波形1分間データの判別結果が小体動であるか否かを呼吸状態判別部52が判定し、肯定判定の場合はステップS216へ移行する。一方、判別結果が呼吸不安定又は呼吸不安定である場合、すなわち否定判定の場合は、ステップS214へ移行し、当該区間70の判別結果を呼吸安定又は呼吸不安定に確定させる。
【0075】
ステップS216では、第1時間間隔で区切って小体動に判別された区間70を含むように呼吸波形データを第2時間間隔で区切った区間70に対して呼吸状態の判別を行う。なお、ステップS216では、一例として、第1時間間隔で区切って小体動に判別した区間70の先頭と、2回目の判別のために第2時間間隔で区切った区間70の先頭とが一致するように区切る。
【0076】
ステップS218では、呼吸波形2分間データの判別結果が呼吸安定又は呼吸不安定であるか否かを呼吸状態判別部52が判定し、肯定判定の場合はステップS214へ移行し、当該区間70の判別結果を呼吸安定又は呼吸不安定に確定させ、ステップS222へ移行する。一方、否定判定の場合は、呼吸波形2分間データの判別結果が小体動であると呼吸状態判別部52が判別した場合であり、ステップS220へ移行して当該区間70の判別結果を小体動に確定させ、ステップS222へ移行する。
【0077】
ステップS222では、波形判別部50が、演算部40に読み込まれた生波形データの最初から最後までの判別が終了したか否かを判定し、肯定判定の場合は本第2判別処理を終了する。一方、否定判定の場合はステップS204へ戻り、生波形データの最後に至るまで判別を繰り返し行う。
【0078】
図7は、本実施形態の呼吸状態判別処理の結果を示す図である。図7では、色分けされている各正方形領域が区間70を示している。そして、左から右方向及び上から下方向が時間経過を示す。すなわち、左端から右端までの区間70が時間的に連続し、右端の区間70と当該区間70の下段左端の区間70とが時間的に連続する。
【0079】
図7(A)は呼吸波形データを1分間で区切った判別結果を示す図である。すなわち、図7(A)に示される判別結果は、異なる時間間隔で複数回の判別を行った結果ではないため、誤判別が生じていると考えられる。
【0080】
一方、図7(B)は第1判別処理による判別結果を示す図であり、図7(C)は第2判別処理による判別結果を示す図である。図7(A)と図7(B)又は図7(A)と図7(C)とを比較すると、図7(A)では小体動に判別された区間70が、図7(B)又は図7(C)では呼吸安定とのように正しく判別されている。また、図7(A)で呼吸不安定に判別されたものの、図7(B)又は図7(C)では呼吸安定とのように判別された区間70もある。
【0081】
次に、本実施形態の呼吸状態判別装置14による無呼吸リスク判定について説明する。
【0082】
まず、呼吸状態判別装置14は、呼吸状態判別部52による呼吸状態の判別結果に基づいて、呼吸安定割合算出部54が呼吸安定割合を算出する。下記(1)式は、呼吸安定割合の算出式の一例である。
【0083】
【数1】
【0084】
(1)式に示されるように、呼吸安定割合算出部54は、呼吸安定の区間数と呼吸不安定の区間数と小体動の区間数の和で、呼吸安定の区間数を除算した値を呼吸安定割合として算出する。(1)式から分かるように、本実施形態の呼吸安定割合算出部54は、被測定者の不在の区間70だけでなく粗体動の区間70も睡眠状態ではないため、呼吸安定割合の算出からは除外している。
【0085】
そして、無呼吸リスク判定部56が呼吸安定割合に基づいて被測定者の睡眠時における無呼吸リスクを判定する。ここで、図8は、本実施形態の無呼吸リスク判定の閾値等を示す模式図である。図8に示されるように無呼吸リスク判定部56は、呼吸安定割合を予め設定された閾値A,Bで区切り、その無呼吸リスクを判定する。
【0086】
このように、呼吸状態判別装置14は、睡眠時無呼吸状態に見られるチェンストークス現象が含まれている呼吸不安定の区間70の割合を、明らかに睡眠中でない不在及び粗体動の区間70を測定全体から差し引き、睡眠中と考えられる区間70で除して求める。そして、呼吸状態判別装置14は、呼吸不安定の割合によって、PSG(polysomnography:睡眠ポリグラフ検査)による無呼吸の割合であるAHI/AI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数 / Apnea Index:無呼吸指数)比較を行う。これにより、呼吸状態判別装置14は、睡眠時無呼吸症と関係のある軽症以下、中等症、重症に関連するように区切った閾値A,Bで、被測定者の睡眠中の呼吸の安定度合いを、呼吸安定、呼吸やや不安定、不安定、の三段階に分類することで、無呼吸症のリスクを判定して被測定者に示す。
【0087】
図9及び図10は、本実施形態の呼吸状態の判別結果を示す出力画像80の一例である。この出力画像80は、判別結果出力制御部58によってディスプレイ30に表示されたり、記録媒体に印刷されて印刷装置から出力される。なお、図9は、呼吸の安定度合いが高い例を示し、図10は呼吸の安定度合いが低い例を示している。図9及び図10に示されるように、呼吸の安定度が高い場合と呼吸の安定度が低い場合とでは、表示される色が異なるため、被測定者の呼吸の安定度を直感的に把握できる。
【0088】
出力画像80は、図9及び図10の破線で囲まれた領域が呼吸状態の判別結果に相当し、測定日毎の呼吸状態の時間変化を色分けにより示す。これにより、被測定者は、呼吸状態の時間変化を直感的に認識可能となる。すなわち、自身の呼吸状態が不安定になっている睡眠時間帯を被測定者が認識可能となる。また、測定日毎の呼吸安定割合及び無呼吸リスク判定の結果も出力画像80に含まれる。このような出力画像80により、被測定者は自身の呼吸状態の傾向を簡易に知ることができ、自分自身での実行する対策によって呼吸状態の改善を行うことができる。
【0089】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0090】
例えば、上記実施形態では画像フィルタ60を用いて呼吸状態の判別を行う形態について説明したが、本実施形態はこれに限られず、例えば、所定時間間隔で区切られた波形データの区間70毎に、波形データの振幅又は周期に対する所定の閾値を適用して呼吸状態を判別してもよい。
【0091】
また、呼吸状態判別装置14は、閾値を用いて波形データから非呼吸波形データを判別する一方、波形データから非呼吸波形データを除いた呼吸波形データに対しては、上記実施形態のように画像フィルタ60を用いて呼吸状態を判別してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、呼吸波形データに含まれる呼吸状態を呼吸安定、呼吸不安定、及び小体動とし、非呼吸波形データを不在及び粗体動とする形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、小体動を非呼吸波形データに含んでもよいし、呼吸不安定を不安定の度合いに応じて複数段階に細分化してもよい。
【0093】
本実施形態の呼吸状態判別処理は、波形データを被測定者の呼吸状態の判別に用いる呼吸波形データ、又は被測定者の呼吸状態の判別に用いない非呼吸波形データに判別するが、本実施形態はこれに限られない。例えば、呼吸状態判別処理は、波形データを被測定者が睡眠状態であるときの波形を示す睡眠状態波形データ、又は被測定者が睡眠状態でないときの波形を示す非睡眠状態波形データに判別してもよい。この形態の場合、睡眠状態波形データを用いて判別される状態は、例えば、被測定者の睡眠時における呼吸安定、呼吸不安定、及び小体動である。また、非睡眠状態波形データを用いて判別される状態は、例えば、被測定者が睡眠計12上に不在及び粗体動である。
【0094】
また、上記実施形態では、呼吸安定割合の算出において小体動の区間数も用いる形態について説明したが、本実施形態はこれに限られず、呼吸安定割合の算出に小体動の区間数を用いない形態としてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、呼吸波形データのうち、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した区間70に対して、異なる時間間隔で再度(2回)の判別を行う形態について説明したが、本実施形態はこれに限られず、誤判別が生じやすい所定の呼吸状態に判別した区間70に対して、異なる時間間隔で3回以上の判別を行う形態としてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、睡眠計12のマットレス部20が配置された寝具25で睡眠する被測定者の呼吸状態を判別する形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、被測定者の胸部の動きを検出可能なウェアラブルセンサを用いて被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データを取得してもよいし、被測定者の胸部の動きを検出可能な撮像デバイスを用いて被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データを取得してもよい。また、このようなウェアラブルセンサ又は撮像デバイスを用いて取得した被測定者の胸部の動きの時間変化を示す波形データに基づいて、睡眠時以外の呼吸状態を判別してもよい。
【符号の説明】
【0097】
14 呼吸状態判別装置
50 波形判別部(波形判別手段)
52 呼吸状態判別部(呼吸状態判別手段)
54 呼吸安定割合算出部(算出手段)
56 無呼吸リスク判定部(判定手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10