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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】種子除去装置、及び種子除去方法
(51)【国際特許分類】
   A23N 4/08 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A23N4/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021132662
(22)【出願日】2021-08-17
(65)【公開番号】P2023027520
(43)【公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521362863
【氏名又は名称】有限会社森満工業
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】満崎 俊二
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 啓司
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第2271675(US,A)
【文献】米国特許第2360103(US,A)
【文献】特開2017-200460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 1/00~17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部から本体部にかけて被加工物である果実を保持できる程度の所定の内径からなる貫通孔が形成された保持部材と、
該保持部材の前記本体部が嵌挿可能であり、内周縁に前記保持部材の基部が固定される嵌挿孔が円周に沿って略等間隔で形成され、鉛直軸を回転軸として回転駆動する回転台と、
該回転台の上方に位置し、前記保持部材から遠位にある退避位置と、先端部分が前記保持部材に保持された果実を貫通する貫通位置との間で往復動可能であり、果実の種子を下方に向けて押し出す種子押出部と、
前記回転台の下方であって前記種子押出部と対峙し、前記保持部材から遠位にある退避位置と前記保持部材に近接する近接位置との間で往復動可能であるとともに、前記近接位置にあるときに前記保持部材に保持された果実の外皮または果肉の一部に当接し前記種子押出部で押し出された種子が排出される排出孔が形成された当接部材を有する種子押出補助部と、を備える
種子除去装置。
【請求項2】
前記種子押出補助部が前記近接位置にあるときに、前記保持部材の本体部と前記種子押出補助部の先端との間に略1mm~5mmのクリアランスが形成される
請求項1に記載の種子除去装置。
【請求項3】
前記保持部材の前記基部には、前記回転台に形成された前記嵌挿孔の内周縁に嵌合する嵌合溝が形成された
請求項1または請求項2に記載の種子除去装置。
【請求項4】
前記種子押出部の先端から所定の範囲は、平面視で略十字状に形成された
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の種子除去装置。
【請求項5】
前記回転台の上方に位置するとともに前記種子押出部に隣接して配置され、前記保持部材から遠位にある退避位置と、先端が前記保持部材に保持された果実に当接する当接位置との間で往復動可能であり、前記種子押出部で種子が除去された外皮を含む果肉を下方に向けて押し出す果肉押出部を有する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の種子除去装置。
【請求項6】
前記種子押出部により押し出された種子を投入する投入口が形成され、該投入口から投入された種子を裏ごしする裏ごし器を有する
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の種子除去装置。
【請求項7】
回転駆動する回転台の円周に沿って略等間隔に設置され、被加工物である果実を保持できる程度の所定の内径からなる貫通孔が形成された保持部材に果実を投入する工程と、
前記回転台の回転駆動により、果実が投入された特定の前記保持部材が所定の位置に移動したときに、前記回転台の上方に位置し前記保持部材から遠位の退避位置にある種子押出部の先端が、前記保持部材に保持された果実を貫通する貫通位置まで鉛直下方に向けて移動する工程と、
前記種子押出部の先端が前記貫通位置まで移動するタイミングと同時に、前記回転台の下方であって前記種子押出部と対峙し、前記保持部材から遠位の退避位置にある種子押出補助部の先端が、前記保持部材に保持された果実の外皮または果肉の一部に当接するとともに、前記保持部材に近接する近接位置まで鉛直上方に向けて移動する工程と、を備える
種子除去方法。
【請求項8】
前記回転台の回転駆動により、種子が除去された外皮を含む果肉が保持された前記保持部材が所定の位置となったときに、前記回転台の上方に位置するとともに前記種子押出部に隣接して配置された果肉押出部の先端が鉛直下方に移動し、前記保持部材に保持されている果肉に当接することで前記保持部材から押し出す工程を有する
請求項7に記載の種子除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子除去装置、及び種子除去方法に関する。詳しくは、オリーブなどの核果類の果肉内部に存在する種子を効率的、かつ迅速に取り出すことができる種子除去装置、及び種子除去方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
核果類は球状の外形を有し、その果肉の内部に種子を有しているため、ジャムやドライフルーツをはじめとする加工食品用の原材料として用いる場合には、種子を予め取り除いておく必要がある。また近年では、健康志向の高まりもあり、核果類の種子に含まれる栄養素にも着目がされており、種子だけを原材料とした加工食品の開発も盛んに行われている。
【0003】
核果類から種子を取り除く装置として、例えば特許文献1には、はさみ状の種子除去装置が開示されている。具体的には、相対する柄部に連接して設けられた頭部の端部を枢着したはさみ状の器具であって、頭部の適所に相対して半円弧状の先端、及び周縁に切刃部を形成した掴み部片から構成されている。使用時には、掴み部片を果実へ手作業により挿入することで、果肉と種子の一体関係が切り離されることで、果肉と種子を容易に分離することが可能となっている。
【0004】
一方、特許文献2には機械的な種子除去装置が開示されている。特許文献2に係る種子除去装置は、種子の除去を行う果実を収容する収容部、果実の果肉部分から種子部分を除去する分離部、収容部の果実を分離部に押圧する押込部、収容部に収容された果実の種子の位置又は姿勢を修正する修正部から構成されている。特許文献2に係る発明によれば、種子を除去する際、種子が分離部に干渉することを抑制することができるため、種子の分離・除去作業を円滑に行い得るものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-222672号公報
【文献】特開2014-144006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した特許文献1に開示の種子除去装置においては、あくまで手作業によって種子を除去する必要があるため、例えば加工用に大量の核果類の種子を除去する用途には不向きであった。
【0007】
また、前記した特許文献2に開示の種子除去装置においては、作業の自動化を図ることができるものの、やはり一度に処理できる核果類の数が少なく、加工用に大量に核果類を処理する作業には不向きであった。
【0008】
さらに、核果類の中でも特にオリーブの果肉は薄いため、種子を取り除く際には果肉を傷つけないように細心の注意を払う必要があるが、前記した特許文献1、及び特許文献2に係る発明においては、その点に関する解決方法については何ら開示がされていない。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、オリーブなどの核果類の果肉内部に存在する種子を効率的、かつ迅速に取り出すことができる種子除去装置、及び種子除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の種子除去装置は、基部から本体部にかけて被加工物である果実を保持できる程度の所定の内径からなる貫通孔が形成された保持部材と、該保持部材の前記本体部が嵌挿可能であり、内周縁に前記保持部材の基部が固定される嵌挿孔が円周に沿って略等間隔で形成され、鉛直軸を回転軸として回転駆動する回転台と、該回転台の上方に位置し、前記保持部材から遠位にある退避位置と、先端が前記保持部材に保持された果実を貫通する貫通位置との間で往復動可能であり、果実の種子を下方に向けて押し出す種子押出部と、前記回転台の下方であって前記種子押出部と対峙し、前記保持部材から遠位にある退避位置と前記保持部材に近接する近接位置との間で往復動可能であるとともに、前記近接位置にあるときに前記保持部材に保持された果実の外皮または果肉の一部に当接し前記種子押出部で押し出された種子が排出される排出孔が形成された当接部材を有する種子押出補助部とを備える。
【0011】
ここで、基部から本体部にかけて被加工物である果実を保持できる程度の所定の内径からなる貫通孔が形成された保持部材を備えることにより、保持部材により被加工物である果実を保持することができる。また、保持部材には貫通孔が形成されていることにより、後記する通り、種子押出部により果実から押し出した種子を、貫通孔を通じて外部に排出することができる。
【0012】
また、保持部材の本体部が嵌挿可能であり、内周縁に保持部材の基部が固定される嵌挿孔が形成された回転台を備えることにより、回転台に形成された嵌挿孔に対して保持部材を着脱自在に設置することができる。従って、果実の大きさに応じて内径の異なる保持部材を回転台に形成された嵌挿孔に設置することができる。
【0013】
また、回転台には嵌挿孔が円周に沿って等間隔で形成されているとともに、回転台が回転駆動することにより、順次、種子の取り出し作業を実行することができるとともに、回転台の駆動中であっても保持部材に果実を容易に投入することができるため、作業性を高めることができる。
【0014】
また、回転台の上方に位置し、保持部材から遠位にある退避位置と、先端が保持部材に保持された果実を貫通する貫通位置との間で往復動可能であり、果実の種子を下方に向けて押し出す種子押出部を備えることにより、種子押出部の先端を果実の外皮から内部に向けて突き刺すことで、果実の内部にある種子を外部に押し出すことが可能となる。
【0015】
また、回転台の下方であって種子押出部と対峙し、保持部材から遠位にある退避位置と保持部材に近接する近接位置との間で往復動可能であるとともに、近接位置にあるときに保持部材に保持された果実の外皮または果肉の一部に当接し種子押出部で押し出された種子が排出される排出孔が形成された当接部材を有する種子押出補助部を備えることにより、種子押出部による押出操作の際に、果実の外皮または果肉の一部が種子押出補助部により下方から支持された状態となる。従って、種子押出部により果実の上方から下方に向けて外力が加えられた場合でも、種子のみが保持部材から排出孔を通じて外部に排出され、外皮や果肉は保持部材に保持された状態となるため、果実を種子と果肉に容易に分離することができる。
【0016】
また、保持部材と種子押出補助部とは近接した位置関係となるため、保持部材と種子押出補助部とは常に非接触の状態が保たれる。従って、保持部材と種子押出補助部が接触することによる衝撃で保持部材、或いは種子押出補助部の破損を防止することができる。
【0017】
また、種子押出補助部が近接位置にあるときに、保持部材の本体部と種子押出補助部の当接部との間に略1mm~5mmのクリアランスが形成される場合には、保持部材に保持されている果実に対して種子押出部による押出操作をした際に、果実から種子のみを取り出すことができるとともに、押出操作の衝撃を最も効果的に緩和して、種子とともに果肉部分が保持部材から押し出されることを防止することができる。
【0018】
また、保持部材の基部には、回転台に形成された嵌挿孔の内周縁に嵌合する嵌合溝が形成されている場合には、嵌合溝を嵌挿孔の内周縁に嵌合させることにより、保持部材を回転台に対して容易に脱着させることができる。
【0019】
また、種子押出部の先端から所定の範囲は、平面視で略十字状に形成されている場合には、種子押出部で果実から種子を押し出す際に、オリーブのように薄い外皮を有する果実の表面を傷付けることなく、種子のみを確実に取り出すことができる。
【0020】
また、回転台の上方に位置するとともに種子押出部に隣接して配置され、保持部材から遠位にある退避位置と、先端が保持部材に保持された果実に当接する当接位置との間で往復動可能であり、種子押出部で種子が除去された外皮を含む果肉を下方に向けて押し出す果肉押出部を有する場合には、種子を取り出した後の保持部材に保持されている果肉部分を保持部材から排出させることができる。そして、果肉部分を排出して空となった保持部材には、次の工程で種子の取り出し作業が行われる果実を新たにに投入するができる。
【0021】
また、種子押出部により押し出された種子を投入する投入口が形成され、投入口から投入された種子を裏ごしする裏ごし器を有する場合には、種子押出部で保持部材から排出された種子は裏ごし器の投入口に投入され裏ごし処理される。これにより、種子の周囲に付着した果肉をさらに削ぎ落とすことができる。
【0022】
前記の目的を達成するために、本発明の種子除去方法は、回転駆動する回転台の円周に沿って略等間隔に設置され、被加工物である果実を保持できる程度の所定の内径からなる貫通孔が形成された保持部材に果実を投入する工程と、前記回転台の回転駆動により、果実が投入された特定の前記保持部材が所定の位置に移動したときに、前記回転台の上方に位置し前記保持部材から遠位の退避位置にある種子押出部の先端が、前記保持部材に保持された果実を貫通する貫通位置まで鉛直下方に向けて移動する工程と、前記種子押出部の先端が前記貫通位置まで移動するタイミングと同時に、前記回転台の下方であって前記種子押出部と対峙し、前記保持部材から遠位の退避位置にある種子押出補助部の先端が、前記保持部材に保持された果実の外皮または果肉の一部に当接するとともに、前記保持部材に近接する近接位置まで鉛直上方に向けて移動する工程とを備える。
【0023】
ここで、回転駆動する回転台の円周に沿って略等間隔に設置され、被加工物である果実を保持できる程度の所定の内径からなる貫通孔が形成された保持部材に果実を投入する工程を備えることにより、果実を保持部材に投入することで、果実から種子を取り出すための事前準備が完了する。このとき、保持部材が設置される回転台が、例えば間欠回転駆動することにより、作業員が手作業で保持部材に果実を投入する際の作業性を高めることができる。
【0024】
また、回転台の回転駆動により、果実が投入された特定の保持部材が所定の位置に移動したときに、回転台の上方に位置し保持部材から遠位の退避位置にある種子押出部の先端が、保持部材に保持された果実を貫通する貫通位置まで鉛直下方に向けて移動する工程を備えることにより、種子押出部を鉛直下方に移動させることで、種子押出部の先端部分で果実の内部にある種子を押し出し、外部に排出することができる。
【0025】
また、種子押出部が貫通位置まで移動するタイミングと同時に、回転台の下方であって種子押出部と対峙し、保持部材から遠位の退避位置にある種子押出補助部の先端が、保持部材に保持された果実の外皮または果肉の一部に当接するとともに、保持部材に近接する近接位置まで鉛直上方に向けて移動する工程を備えることにより、保持部材に保持されている果実に対して種子押出部による押出操作をした際に、押出操作の衝撃を効果的に緩和して、種子とともに果肉部分が保持部材から押し出されることを防止することができる。
【0026】
また、回転台の回転駆動により、種子が除去された外皮を含む果肉が保持された保持部材が所定の位置となったときに、回転台の上方に位置するとともに種子押出部に隣接して配置された果肉押出部が鉛直下方に移動し、果肉を保持部材から押し出す工程を有する場合には、種子を取り出した後の保持部材に保持されている外皮を含む果肉部分を保持部材から排出させることができる。これにより、果実から分離した種子と果肉をそれぞれ分別して管理することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る種子除去装置、及び種子除去方法は、オリーブなどの核果類の果肉内部に存在する種子を効率的、かつ迅速に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態に係る種子除去装置の全体斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る種子除去装置の平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る種子除去装置の内部からみた斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る種子除去装置により被加工物から種子を取り出す工程を示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る種子除去装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る種子除去装置、及び種子除去方法ついて図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において説明の便宜上、種子除去装置を水平面に設置した状態において、上方に向かう方向を上方、上方の反対方向を下方、上方および下方により表される軸方向を鉛直方向、鉛直方向と垂直な方向を水平方向とそれぞれ定義する。
【0030】
<第1の実施形態>
図1乃至図4に示すように、本発明の第1の実施形態に係る種子除去装置1は、核果類の果肉内部に存在する種子を取り出して、果実を果肉と種子に分別するための装置であり、主に架台7に設置された一対の回転台2、回転台2の円周方向に沿って所定の間隔で設置された果実を保持するための保持部材3、保持部材3に保持された被加工物である果実の種子を取り出す種子押出部4、種子押出部4で種子を押し出す際に保持部材3で保持されている果実を支持する種子押出補助部5から構成されている。
【0031】
なお、以下の説明では、被加工物としてオリーブを適用した実施形態について説明するが、被加工物としてはオリーブに限定されるものではなく、果肉の内部に種子を有する核果類であれば本発明を適用できるものとする。
【0032】
[回転台]
回転台2は、平面視において左右に一対配置されたチタン製の円盤状からなるものである。回転台2の略中心部には上方に延在するシャフト21の一端が接続されている。シャフト21の中間部分にはスラストベアリング(符号を付さない)が接続されるとともに、後端は駆動源としてのステップモーター22の出力軸に接続されている。
【0033】
ここで、必ずしも、設置される回転台2は一対から構成されている必要はなく、何れか一方のみ、或いは3つ以上の回転台2が架台7に設置されていてもよい。
【0034】
ステップモーター22は、図示しない駆動回路により、回転台2の位置を割り出し、一方向(本発明の実施形態では時計回り)に略45°ずつ、所定の時間間隔で間欠的に駆動する。なお、ステップモーター22の回転速度は任意に変更することが可能であるとともに、回転角度についても、後記する保持部材の設置間隔に応じて適宜変更することが可能である。
【0035】
回転台2の中心部から半径方向に所定の位置には、円周方向に沿って等間隔に8個の嵌挿孔23が形成されている。係る嵌挿孔23の内周縁には、後記する保持部材3の基部31が固定される。
【0036】
[保持部材]
保持部材3は被加工物であるオリーブОを保持するための装置であり、弾性素材(例えばシリコン)から構成され、図4(a)に示すように基部31と、基部31の外径よりも短い外径である本体部32から構成されている。
【0037】
ここで、必ずしも、保持部材3は弾性素材から構成されている必要はない。但し、被加工物を保持部材3に投入した際に、被加工物の外皮が傷つくことを防止するためにも、保持部材3は弾性素材から構成されていることが好ましい。
【0038】
保持部材3は基部31から本体部32にかけて貫通孔が形成されており、その内径は投入されるオリーブOの平均径よりもやや小さく構成されている。従って、オリーブを保持部材3に投入すると、オリーブОは本体部32の所定の位置で保持された状態となる。なお、オリーブOの最大径は一様ではないため、本体部32の内径を可変させた数種類の保持部材3を準備しておくことで、投入するオリーブOの大きさに応じて使用する保持部材3を適宜変更することができる。
【0039】
保持部材3の基部31には、回転台2の嵌挿孔23の内周に嵌合可能な嵌合溝33が周設されている。ここで、基部31の最大径は回転台2の嵌挿孔23よりも大きく形成され、かつ本体部32の外径は嵌挿孔23の内径よりもやや小さく形成されている。従って、保持部材3を回転台2の嵌挿孔23に設置する際には、本体部32側から嵌挿孔23に挿入し、基部31を弾性変形させながら嵌合溝33を嵌挿孔23の内周縁に嵌合させることで、保持部材3を回転台2に対して強固に設置することができるとともに、脱着作業も容易なものとなる。
【0040】
[種子押出部]
種子押出部4は、回転台2の上方に位置し、種子押出ロッド41と種子押出ロッド41の後端部分に連結された種子押出シリンダ42から構成されている。種子押出ロッド41は種子押出シリンダ42の作動により、種子押出ロッド41の先端部分に形成された種子突部43が回転台2から離間した退避位置(図4(b))と保持部材3に保持されているオリーブОを貫通する貫通位置(図4(c))との間を往復動可能となっている。
【0041】
より具体的には、間欠回転駆動する回転台2に設置された一の保持部材3が種子押出ロッド41の種子突部43の真下に位置したときに種子押出シリンダ42が駆動して、種子押出ロッド41を退避位置から貫通位置まで鉛直下方に移動させるとともに、貫通位置から退避位置まで鉛直上方に往復動させるように連続運転を行う。種子押出シリンダ42は、回転台2を駆動するステップモーター22の出力信号と同期して作動するため、種子押出ロッド41の真下に順次移動してくる保持部材3に保持されているオリーブОに対して、種子押出ロッド41を確実に作動させて種子突部43をオリーブОに貫通させることができる。
【0042】
以上の種子押出部4の動作により、種子押出ロッド41の種子突部43が保持部材3を貫通する際に、種子突部43が保持部材3に保持されているオリーブОの内部を貫通させ、オリーブОの種子Sのみを下方に押し出すことが可能となる。このとき、種子押出部4により押し出された種子Sは種子排出路81を通じて排出口85から排出され、種子除去装置1の機外に設置された種子回収容器83に回収される。
【0043】
ここで、必ずしも、種子回収容器83は種子除去装置1の機外に設置する必要はない。種子除去装置1の機内の所定の位置に設置してもよく、種子回収容器83の設置位置は特に限定されるものではない。
【0044】
種子突部43の先端形状は、特に限定されるものではないが、本発明の実施形態においては略十字状に形成されている(図4(b))。このように、種子突部43の形状を略十字状に形成することで、種子突部43をオリーブОに貫通させた際に、種子押出ロッド41の種子突部43をオリーブОに当接した際の衝撃力を分散することができるため、オリーブОの外皮を含む果肉P、或いは種子Sの損傷を最小限にすることができる。
【0045】
[種子押出補助部]
種子押出補助部5は、回転台2の下方であって、種子押出部4と対峙して配置され、押上ロッド51と押上ロッド51に連結された押上シリンダ52から構成されている。押上ロッド51は押上シリンダ52の作動により上下動し、押上ロッド51の先端に備える当接部材53が回転台2から離間した退避位置と保持部材3の本体部32に近接する近接位置との間を往復動可能となっている。
【0046】
当接部材53は、種子押出ロッド41により押し下げられた種子Sが排出可能な排出孔54が貫通形成され、先端には凹状の段部55が形成されている。押上シリンダ52は種子押出シリンダ42と同様にステップモーター22と同期して作動し、種子押出ロッド41が貫通位置まで押し下げられると、それと同期して押上ロッド51も押し上げられ、当接部材53が退避位置から近接位置まで押し上げられる。
【0047】
即ち、オリーブОから種子Sを取り出す際には、図4(c)に示すように、種子押出ロッド41の種子突部43が貫通位置に位置するとともに、押上ロッド51の当接部材53は保持部材3に近接する近接位置まで移動する。このとき、保持部材3から露出するオリーブОの外皮の一部を当接部材53の段部55により下方から支持することができる。そして、オリーブОから取り出された種子Sのみを当接部材53に形成された排出孔54から排出させることができる。
【0048】
なお、当接部材53が近接位置にあるとき、保持部材3の本体部32と当接部材53との間には略1mm~5mmのクリアランスが確保される。このように、当接部材53と保持部材3とは接触しない程度の近接した位置関係であるため、オリーブОから種子Sを取り出す作業時に、オリーブOの外皮や果肉を保持して保持部材3から排出されることを防止しつつ、弾性素材からなる保持部材3が当接部材53と接触することにより損傷を受けることを防止することができる。
【0049】
ここで、必ずしも、当接部材53が近接位置にあるとき、保持部材3の本体部32と当接部材53との間のクリアランスが略1mm~5mmである必要はない。但し、発明者が検討した範囲では、種子Sの取り出し作業時に、当接部材53と本体部32との間に1mm~5mmのクリアランスが形成される場合には、保持部材3に保持されているオリーブОに対して種子押出部4による押出操作をした際に、押出操作の衝撃を最も効果的に緩和して、種子Sとともに果肉部分が保持部材から押し出されることを防止し、オリーブОから種子Sのみを効率的に取り出すことができる。
【0050】
なお、保持部材3の本体部32と当接部材53との間のクリアランスが1mm未満の場合には、機械的にクリアランスの確保が困難となる。一方、保持部材3の本体部32と当接部材53との間のクリアランスが5mmよりも大きい場合には、保持部材3に保持されているオリーブOの外径によっては当接部材53によりオリーブOの外皮を支持することができない虞がある。
【0051】
[果肉押出部]
果肉押出部6は、種子押出部4により種子Sが取り除かれた残余の部分(「果肉P」と定義する。)を保持部材3から排出させる機能を有しており、果肉押出ロッド61と果肉押出ロッド61の後端部分に連結された果肉押出シリンダ62から構成されている。
【0052】
果肉押出ロッド61の先端部分には、保持部材3に保持されたオリーブОの果肉Pを下方に押し出すための果肉突部63を有しており、果肉突部63を果肉Pに当接させることで、果肉Pを果肉保持部材3の本体部32から下方に向けて押し出すことが可能となる。このとき、果肉押出部6により押し出された果肉Pは、果肉排出路82を通じて排出され、回転台2の下方に設置された果肉回収容器84に回収される(図4(e))。
【0053】
ここで、必ずしも、果肉押出部6を有している必要はない。果肉Pの保持部材3からの取り出しは作業者による手作業により行うことも可能である。但し、果肉押出部6を有することにより、オリーブОの種子Sと果肉Pの分別を全行程において自動化できるため、作業効率を高めるという観点では、果肉押出部6は有していることが好ましい。
【0054】
また、必ずしも、果肉回収容器84は回転台4の下方に設置されている必要はなく、果肉回収容器84の設置位置は適宜変更することができる。
【0055】
果肉押出部6は、回転台2の上方であって、かつ種子押出部4に隣接する位置に配置されている。より詳しくは、平面視において種子押出ロッド41の真下に位置する保持部材3が、回転台2が時計回りに90度に移動した位置の直上に果肉押出ロッド61が位置するように配置されている。
【0056】
ここで、必ずしも、果肉押出部6の配置は前記した位置に限定されるものではない。種子Sが取り除かれた果肉Pを保持部材3から排出することができればよく、種子押出部4に対して回転台2の回転方向に向けて下流側の何れの位置に設けるようにしてもよい。
【0057】
果肉押出ロッド61は果肉押出シリンダ62の作動により、果肉押出ロッド61の先端部分に形成された果肉突部63が回転台2から離間した退避位置と保持部材3に保持されている果肉Pに当接する当接位置との間を往復動可能となっている。
【0058】
より具体的には、間欠回転駆動する回転台2に設置された一の保持部材3であって種子押出部4により種子Sが取り除かれた果肉Pのみを保持する保持部材3が(図4(d))、果肉押出ロッド61の真下に位置したときに果肉押出シリンダ62が駆動して、果肉押出ロッド61を退避位置から当接位置まで鉛直下方に移動させるとともに(図4(e))、当接位置から退避位置まで鉛直上方に往復動させるように連続運転を行う。
【0059】
果肉押出シリンダ62は、回転台2を駆動するステップモーター22の出力信号と同期して作動するため、果肉押出ロッド61の真下に順次移動してくる保持部材3に保持されている果肉Pに対して、果肉押出ロッド61を確実に作動させて果肉突部63を果肉Pに当接させ、保持部材3から果肉Pを下方に押し出すことが可能となる。
【0060】
次に、本発明の実施形態に係る種子除去装置1を用いた種子除去方法について図4に基づいて説明する。
【0061】
[工程1:保持部材の設置]
まず、被加工物であるオリーブOの大きさに合致した保持部材3を選択し、選択した保持部材3を回転台2の嵌挿孔23に設置する。保持部材3の嵌挿孔23への設置は、前記した通り、保持部材3の基部31を弾性変形させながら、嵌挿孔23の内周縁に基部31に形成された嵌合溝33を嵌合させて固定する。
【0062】
[工程2:保持部材へのオリーブの投入]
保持部材3を回転台2に設置したら、被加工物であるオリーブОを保持部材3に投入する(図4(a))。このとき、オリーブОが保持部材3の本体部32で支持されていることを確認し、オリーブОが保持部材3の貫通孔から落下してしまう場合には、内径のより小さな保持部材3に適宜取り換える必要がある。
【0063】
[工程3:種子の回収]
工程2で保持部材3へのオリーブOの投入が完了したら、電源を投入する。電源投入によりステップモーター22が駆動して回転台2が間欠回転駆動を開始し、それに同期して種子押出部4と種子押出補助部5も駆動する。
【0064】
まず、回転台2の回転により、オリーブOが保持された保持部材3が種子押出部3の真下に移動してくると(図4(b))、保持部材3の上方にある種子押出ロッド41が、種子押出シリンダ42により鉛直下方に向けて移動し、種子押出ロッド41の先端にある種子突部43がオリーブОを貫通する。種子押出ロッド41の移動と同期して、保持部材3の下方にある押上ロッド51が、押上シリンダ52により鉛直上方に向けて移動し、押上ロッド51の先端にある当接部材53と保持部材3とが近接した位置となる。そして、種子突部43により押し出された種子Sは、種子排出路81を通じて機外の種子回収容器83に回収される(図4(c))。
【0065】
[工程4:果肉の回収]
回転台2の回転駆動により、種子押出部4で種子Sが押し出され、果肉Pが保持された状態の保持部材3が果肉回収位置まで駆動すると(図4(d))、直上にある果肉押出部6の果肉押出ロッド61が果肉押出シリンダ62により鉛直下方に向けて移動する。そして、果肉押出ロッド61の先端にある果肉突部63が保持部材3で支持されている果肉Pに当接して下方に押し出すと、果肉Pは保持部材3から下方に向けて排出され、果肉回収路82を通じて果肉回収容器84に回収される(図4(e))。
【0066】
以上の工程を繰り返すことで、オリーブOを種子Sと果肉Pとに分別することができる。また、果肉Pが排出されて空になった保持部材3には新たにオリーブOを投入することで、連続的にオリーブOを種子Sと果肉Pとに分別することができ、一度に大量のオリーブOを分別処理することが可能となる。
【0067】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態にかかる種子除去装置1aについて図5に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と共通する構成については共通の符号を付するとともに、重複する説明については省略する。
【0068】
第2の実施形態に係る種子除去装置1aは、第1の実施形態の種子除去装置1に対して、分別された種子をさらに裏ごしを行うための裏ごし器9を備えている。裏ごし器9は、種子押出部4で分別された種子を投入する投入口91と、投入口91から投入された種子を裏ごしする裏ごし部92を有している。
【0069】
種子押出部4の作動により、保持部材3に保持されているオリーブOの内部から押し出された種子Sは、種子排出路81を通って投入口91から裏ごし部92に投入される。裏ごし部92に一定量の種子Sが投入されたら、裏ごし器9を作動させ、種子Sを裏ごしすることで、種子Sの表面に付着している果肉を取り除くことができる。
【0070】
第2の実施形態によれば、オリーブの種子と果肉をより細かく分別することができるため、例えば種子のみを用いる加工食品の製造や、果肉のみを用いる加工食品の歩留まりをより一層高めることが可能となる。
【0071】
以上、本発明に係る種子除去装置、及び機器の種子除去方法は、オリーブなどの核果類の果肉内部に存在する種子を効率的、かつ迅速に取り出すことができるものとなっている。
【符号の説明】
【0072】
1、1a 種子除去装置
2 回転台
21 シャフト
22 ステップモーター
23 嵌挿孔
3 保持部材
31 基部
32 本体部
33 嵌合溝
4 種子押出部
41 種子押出ロッド
42 種子押出シリンダ
43 種子突部
5 種子押出補助部
51 押上ロッド
52 押上シリンダ
53 当接部材
54 排出孔
55 段部
6 果肉押出部
61 果肉押出ロッド
62 果肉押出シリンダ
63 果肉突部
7 架台
8 排出部
81 種子排出路
82 果肉排出路
83 種子回収容器
84 果肉回収容器
85 排出口
9 裏ごし器
91 投入口
92 裏ごし部
O オリーブ
P 果肉
S 種子
図1
図2
図3
図4
図5