(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ナス漬け用調味料およびナス漬けの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20240129BHJP
A23B 7/022 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A23L27/20 Z
A23B7/022
(21)【出願番号】P 2021191119
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518443122
【氏名又は名称】内藤製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】島田 武博
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140912(JP,A)
【文献】特開2016-214164(JP,A)
【文献】特開2009-240209(JP,A)
【文献】特開2002-199841(JP,A)
【文献】特開2001-120175(JP,A)
【文献】月刊フードケミカル,第18巻,2002年,42-45頁
【文献】月刊フードケミカル,第32巻,2016年,64-67頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
日経テレコン
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、pH調整剤を含むナス漬け用調味料であって、
前記pH調整剤
の配合は、前記ナス漬け用調味料
もしくはその希釈液のpH
が7.0~9.0
となる量であり、
ミョウバンを実質的に含まない、ナス漬け用調味料。
【請求項2】
前記ミョウバンの含有率が0重量%である、請求項1に記載のナス漬け用調味料。
【請求項3】
前記環状オリゴ糖がシクロデキストリンである、請求項1または2に記載のナス漬け用調味料。
【請求項4】
前記pH調整剤が酢酸ナトリウムおよび/または炭酸水素ナトリウムである、請求項1から3のいずれか1項に記載のナス漬け用調味料。
【請求項5】
前記ナス漬け用調味料の固形分の重量を100重量%として、前記アスコルビン酸ナトリウムを5~30重量%、前記環状オリゴ糖を1~20重量%、前記pH調整剤を1~20重量%含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のナス漬け用調味料。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のナス漬け用調味料を使用する、ナス漬けの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナス漬け用調味料およびナス漬けの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナスの果皮に含まれるアントシアニン系色素であるナスニンは、酸化されやすく不安定であるため、変色を起こしやすい色素である。そのため、浸漬液にミョウバンまたは鉄等を加えて色鮮やかな青紫色のキレート化合物を形成させ、ナスニンの安定化を図る方法が古くから知られている。
【0003】
しかし、当該方法は、発色が鮮やかになりすぎるために、ナスが本来保有する天然の色調とは異なるものとなるという問題、ナス漬けの浸漬液へのナスニンの色流れ、果肉への色移り等が発生するという問題を有する。
【0004】
そこで、特許文献1には、ナスが本来有する天然の色合いを維持し、かつキレート色素の保存液への溶出および果肉への色移りを起こさないナス漬けを製造することを目的とする方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、pH6以下の最終調味液中であっても茄子からの色素の溶出を抑制することができるようにし、製品化段階における調味液中では、色出し目的としてのミョウバンを不使用とする茄子漬け方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-166465号公報
【文献】特開2002-199841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に記載の発明は、キレート色素の保存液への溶出を低減することは可能であるが、特許文献1に記載の発明は、塩浸漬液および調味液にミョウバンを含んでおり、特許文献2に記載の発明は、塩漬液にミョウバンを含んでいる。しかしながら、今日では、消費者の天然指向、自然指向の高まりを反映して、ミョウバンを用いずにナス漬けの退色を防止することができる技術が求められている。
【0008】
本発明の一態様は、実質的にミョウバンを含まず、ナス漬けの退色を防止し、かつ、呈味にも優れるナス漬け用調味料およびナス漬けの製造方法を実現することを目的とする。なお、本明細書において「ミョウバン」とは、食品添加物として汎用されている硫酸アルミニウムカリウムおよび/または硫酸アルミニウムアンモニウムをいう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ミョウバンを実質的に使用することなく前記課題を解決可能な成分の組み合わせについて鋭意検討した。その結果、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および所定のpH調整剤を用いることによって前記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を含む。
【0010】
<1>アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、pH調整剤を含むナス漬け用調味料であって、前記pH調整剤は、前記ナス漬け用調味料を含む液体のpHを7.0~9.0に調整することができるpH調整剤であり、ミョウバンを実質的に含まない、ナス漬け用調味料。
【0011】
<2>前記ミョウバンの含有率が0重量%である、<1>に記載のナス漬け用調味料。
【0012】
<3>前記環状オリゴ糖がシクロデキストリンである、<1>または<2>に記載のナス漬け用調味料。
【0013】
<4>前記pH調整剤が酢酸ナトリウムおよび/または炭酸水素ナトリウムである、<1>から<3>のいずれかに記載のナス漬け用調味料。
【0014】
<5>前記ナス漬け用調味料の固形分の重量を100重量%として、前記アスコルビン酸ナトリウムを5~30重量%、前記環状オリゴ糖を1~20重量%、前記pH調整剤を1~20重量%含有する、<1>から<4>のいずれかに記載のナス漬け用調味料。
【0015】
<6>前記<1>から<5>のいずれかに記載のナス漬け用調味料を使用する、ナス漬けの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、実質的にミョウバンを含まず、ナス漬けの退色を防止し、かつ、呈味にも優れるナス漬け用調味料およびナス漬けの製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例および比較例における色止め効果、色流れおよび色移り、並びに食感および味覚の判定基準の一部を写真で示す図である。
【
図2】実施例1において、調味料1を用い、5日間保存した場合のカットナスおよび調味料1の外観を示す図である。
【
図3】実施例2において、調味料2を用い、5日間保存した場合のカットナスおよび調味料2の外観を示す図である。
【
図4】実施例1および2における対照区の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能である。例えば、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0019】
〔1.ナス漬け用調味料〕
本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料は、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、pH調整剤を含むナス漬け用調味料であって、前記pH調整剤は、前記ナス漬け用調味料を含む液体のpHを7.0~9.0に調整することができるpH調整剤であり、ミョウバンを実質的に含まない、ナス漬け用調味料である。
【0020】
本発明者は、ミョウバンを実質的に含まず、ナス漬けの退色を防止し、かつ、日持ちおよび呈味にも優れるナス漬け用調味料の組成を検討した。後述する比較例に示すように、まず、比較例1と比較例2との対比から、酸化防止剤としてアスコルビン酸ナトリウムが好ましいことを見出した。次に、比較例3~5に示されるように、シクロデキストリンを添加し、ナス漬け用調味料のpHを中性に近づけることによって改善が見られた。そこで、前記pHを弱塩基性としたところ、良好な退色防止効果を得ることができ、本発明を完成するに至った(後述する実施例1~5)。
【0021】
したがって、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、ナス漬け用調味料を含む液体のpHを7.0~9.0に調整することができるpH調整剤を含有することにより、本願発明の課題を解決することができる。
【0022】
前記アスコルビン酸ナトリウムは、酸化防止剤として機能し得る。前記アスコルビン酸ナトリウムは、汎用性の観点から、L-アスコルビン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0023】
前記環状オリゴ糖としては、シクロデキストリンであることが好ましい。シクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、δ-シクロデキストリン、ε‐シクロデキストリン等を用いることができる。中でも、苦味、えぐ味等の味の改善、酸化および紫外線による色素の変色防止等に優れるため、β-シクロデキストリンを用いることが好ましい。
【0024】
前記pH調整剤は、本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料を含む液体のpHを7.0~9.0に調整し得る。前記pH調整剤としては、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムが好ましく、退色防止効果の向上性に優れるため、酢酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの組み合わせがより好ましい。前記組み合わせにおける酢酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの割合は、任意であってよい。
【0025】
前記ナス漬け用調味料は、固体であってもよく、液体であってもよい。固体としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、前記pH調整剤を含む粉末等の形態を挙げることができる。
【0026】
「ナス漬け用調味料を含む液体」とは、例えば、前記固体を水等の溶媒に溶解させた溶液;当該溶液を水等によってさらに希釈した希釈液;等を挙げることができる。前記pH調整剤は、前記溶液のpHを7.0~9.0に調整し得るものでもよいし、前記希釈液のpHを7.0~9.0に調整し得るものでもよい。
【0027】
例えば、前記溶液をそのままナスの浸漬液として用いうる場合は、当該溶液のpHが7.0~9.0となる量のpH調整剤を、前記固体の調製時に配合するなどして、前記溶液に含ませればよい。
【0028】
例えば、前記溶液が、希釈して用いる濃縮液である場合は、前記濃縮液の包装等に記載された規定の希釈倍率で前記溶液を希釈した希釈液のpHが7.0~9.0となる量のpH調整剤を、前記固体の調製時に配合するなどして、前記希釈液に含ませればよい。
【0029】
本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料は、ミョウバンを実質的に含まない。「ミョウバンを実質的に含まない」とは、ミョウバンを全く含まないか、または前記ナス漬け用調味料の固形分中のミョウバンの含有率が0.05重量%未満であることを意味する。前記含有率は、好ましくは0.01重量%未満であり、より好ましくは0.005重量%未満である。前記「ナス漬け用調味料の固形分」とは、前記ナス漬け用調味料から水分を除いた残余の成分をいう。
【0030】
前記ナス漬け用調味料は、実質的にミョウバンを含有せずともナス漬けの退色を防止し、かつ、呈味にも優れ、現状多く使用されているミョウバンを含むナス漬け用退色防止剤の代替とすることができる。そのため、ミョウバンを全く含まないこと、すなわち、前記ミョウバンの含有率が0重量%であることが最も好ましい。
【0031】
一方、前記ナス漬け用調味料の効果に影響を与えない程度の含有量のミョウバンを含むことまで、本発明から排除されるべきではない。例えば、ミョウバンを不純物として含むような場合は許容される。それゆえ、前記ナス漬け用調味料は、固形分におけるミョウバンの含有率が0.05重量%未満であってもよい。
【0032】
前記ナス漬け用調味料がミョウバンおよび炭酸水素ナトリウムを含有する場合、以下の反応が生じる。
2Alk(SO4)2 + 6NaHCO3 → 2Al(OH)3↓ + K2SO4+ 3Na2SO4+6CO2↑
水酸化アルミニウムは水不溶性であり、前記ナス漬け用調味料を白濁させ得るため、発生しないことが好ましい。しかし、ミョウバンの含有率が0.05重量%未満であれば、発生する水酸化アルミニウムはごく少量であるため、前記ナス漬け用調味料の色調に与える影響はごく小さい。そのため、前記ナス漬け用調味料は、前記含有率のミョウバンを含有していてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料は、前記ナス漬け用調味料の固形分の重量を100重量%として、前記アスコルビン酸ナトリウムを5~30重量%、前記環状オリゴ糖を1~20重量%、前記pH調整剤を1~20重量%含有することが好ましい。これにより、前記ナス漬け用調味料を含む液体のpHを7.0~9.0とし、かつ、実施例に記載されているように、退色防止効果を奏しやすい構成とすることができる。
【0034】
本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料は、その他の成分として、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン酸塩;硫酸第一鉄、鉄粉等の鉄化合物;グルタミン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グリシン等の調味料;精製塩、食塩等の漬け剤;等を適宜含んでいて良い。前記その他の成分は、一種であってもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記その他の成分は、前記ナス漬け用調味料の固形分の重量を100重量%として、前記アスコルビン酸ナトリウムを5~30重量%、前記環状オリゴ糖を1~20重量%、前記pH調整剤を1~20重量%含有させた上で、前記固形分の重量が100重量%となるように加えればよい。
【0036】
前記ナス漬け用調味料の固形分の重量を100重量%として、前記リン酸塩は1~20重量%含有してもよい。前記鉄化合物は0~5重量%含有してもよい。グルタミン酸ナトリウム等の調味料は5~30重量%含有してもよい。前記漬け剤は30~70重量%含有してもよい。
【0037】
前記ナス漬け用調味料は、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、前記pH調整剤、並びに必要に応じて前記その他の成分を計量して混合し、必要に応じて乾燥および粉砕等することによって、粉末製品として製造することができる。
【0038】
また、前記ナス漬け用調味料は、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、前記pH調整剤、並びに必要に応じて前記その他の成分を水に溶解させることによって、液体として製造することができる。
【0039】
例えば、前記液体は、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、前記pH調整剤、並びに必要に応じて前記その他の成分を、固形分の重量として5~10重量部、水100重量部に溶解させることによって調製することができる。
【0040】
前記ナス漬け用調味料は、実質的にミョウバンを含有しないにも関わらず、後述する実施例に示すように、ナスの表皮からの色抜け、ナスの表皮からナス漬け用調味料への色流れ、果肉への色移りが十分に抑制されたナス漬けを提供することができる。さらに、後述する実施例に示すように、ナスの浸漬から7日間経過後であっても、得られたナス漬けは優れた呈味性を示した。すなわち、前記ナス漬け用調味料は、ナス漬けの日持ちを向上させ、かつ、良好な呈味性を示すこともできる。
【0041】
〔2.ナス漬けの製造方法〕
本発明の一実施形態に係るナス漬けの製造方法は、本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料を使用する。
【0042】
前記ナス漬け用調味料については、前記〔1.ナス漬け用調味料〕にて説明したとおりである。前記ナス漬け用調味料が固体である場合は、例えば、当該固体を水等の溶媒に溶解させた溶液;当該溶液を水等によってさらに希釈した希釈液を調製し、当該溶液または希釈液をナスの浸漬液として用いることにより、ナス漬け用調味料を使用することができる。
【0043】
前記溶液としては、例えば、前述したように、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、前記pH調整剤、並びに必要に応じて前記その他の成分を、固形分の重量として5~10重量部、水100重量部に溶解させた溶液を用いることができる。
【0044】
また、前記ナス漬け用調味料が液体である場合は、当該液体をそのままナスの浸漬液として用いること、または、当該液体を希釈した希釈液をナスの浸漬液として用いることにより、前記ナス漬け用調味料を使用することができる。
【0045】
前記ナス漬け用調味料を使用する対象としてのナスの種類は、特に限定されるものではない。例えば、長ナス、中長ナス、大長ナス、丸ナス、卵型ナス、小丸ナス、米ナス等、いずれの種類のナスであってもよい。
【0046】
また、前記浸漬液に浸漬するナスの形態も、特に限定されるものではない。例えば、ナスを適当な大きさにカットしたカットナス、特にカットせず本来の形態を保持したナス、カットは行わず、ナスの表面に刃物で切れ込みを設け、果肉の一部が外部に露出したナス(例えば一本漬けに用いられるナス)などを用いることができる。
【0047】
前記浸漬液に浸漬するナスの量は特に限定されるものではなく、適量を選択すればよい。例えば、液体であるナス漬け用調味料100~200ml当たり、100gのナスを浸漬することができる。
【0048】
ナスを浸漬したナス漬け用調味料は、例えばフリーザーバックに入れ、7℃~10℃の条件下で、3~7日間程度の期間、保存することが好ましい。当該条件下の保存により、実質的にミョウバンを使用することなく、ナスの表皮からの色抜け、ナスの表皮からナス漬け用調味料への色流れ、果肉への色移りが十分に抑制され、かつ、漬物らしい食感および旨みを有するナス漬けを得ることができる。
【0049】
本発明の一実施形態に係るナス漬けの製造方法は、ナス漬けの退色防止を行うことができる。このため、本発明の一実施形態に係るナス漬けの製造方法は、ナス漬けの退色防止方法と言い換えることも可能である。
【0050】
例えば、特許文献1に記載の方法では、まず、ナスを、ミョウバンを含有する塩浸漬液に浸漬し、次いで、ミョウバンおよびシクロデキストリン類を含有し、所定の浸透圧を有する保存液に浸漬することによってナス漬物を製造している。
【0051】
これに対し、本発明の一実施形態に係るナス漬けの製造方法は、一種類のナス漬け用調味料を使用するだけで足りる。しかも、前記ナス漬け用調味料は実質的にミョウバンを含有しない。
【0052】
したがって、本発明の一実施形態に係るナス漬けの製造方法は、ミョウバンを使用せずにナス表皮の色落ち、色流れ、果肉への色移りを抑制し、かつ、ナス漬けの日持ちを向上させ、かつ、良好な呈味性を示すという優れた効果を奏するものであると言える。
【0053】
なお、本発明の一実施形態に係る前記ナス漬け用調味料およびナス漬けの製造方法は、前記効果を奏することから、持続可能な開発目標(SDGs)の目標2「飢餓をゼロに」および目標12「つくる責任つかう責任」の達成・実現に貢献することもできる。
【0054】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0055】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0056】
〔実施例1〕
以下の表1の「調味料1」の欄に記載した原料を、表1に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、当該溶液をナス漬け用調味料(以下、「調味料」)1とした。調味料1は、ミョウバンを含有していない。
【0057】
調味料1をフリーザーバッグに入れ、ナスの浸漬に備えた。調味料1の濃度は、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した。表中の対照区は、前記混合物の代わりに精製塩を用いた実験区である。対照区としては、精製塩4.8gを120mlの水に溶解させた溶液をフリーザーバッグに入れたものを用いた。前記精製塩としては、商品名:精製塩(日本食塩製造(株)製)を用いた。なお、精製塩とは、塩化ナトリウムの純度が99.5重量%以上になるように精製された食塩のことである。
【0058】
ナスを水洗した後、ヘタをカットして取り除き、縦に2分割し、約1cm幅で半月切りにした。得られたカットナスを1重量%の食塩水に漬けて、約5分間浸漬し、アクぬきを行った。十分に水切りをした後、カットナスを、カットナス100gに対し前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整された調味料1の入ったフリーザーバッグに投入し、手もみしながら十分に脱気した後に、ヒートシールを行って密封した。前記フリーザーバッグは、前記フリーザーバッグからの液漏れに備えるため、ポリエチレン袋に入れ、当該ポリエチレン袋を密封した。
【0059】
前記フリーザーバッグに入れたカットナスを7℃~10℃(冷蔵庫の野菜室の一般的な設定温度)の環境下で5日間保存し、調味料1のナスの色止め効果、ナスの果皮から調味料1への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度について確認した。
【0060】
表1に結果を示す。また、本明細書の実施例および比較例における色止め効果、色流れおよび色移り、並びに食感および味覚の判定基準を表2に示す。
【0061】
また、
図1に、表2に示した判定基準の一部を写真で示す。
図1において、例えば「色止め効果‐A」は、色止め効果が下記表2における「A」と判定される場合のナスおよび調味料の外観を表している。「色止め効果‐A」、「色止め効果‐C」、「色止め効果‐E」については、それぞれ、ナスがフリーザーバッグ内にある場合の写真を上段に、ナスをフリーザーバッグから出した直後の写真を下段に掲載している。「色流れ・色移り‐A」、「色流れ・色移り‐C」、「色流れ・色移り‐E」については、それぞれ、ナスがフリーザーバッグ内にある場合の写真を掲載している。
【0062】
図1に示すように、色止め効果を示す各写真におけるナスの果皮の色は、表2に示すとおりになっている。また、色流れ・色移りを示す各写真において、「色流れ・色移り‐A」では色流れ・色移りは全く発生していない。一方、「色流れ・色移り‐C」では、果肉への色移りは発生していないが、調味料が青みがかっている。さらに、「色流れ・色移り‐E」では、調味料の青みが「色流れ・色移り‐C」よりも濃くなり、果肉への色移りも発生している。
【0063】
【0064】
【0065】
表2中、「色抜け無し」とは、ナス漬け用調味料に浸漬直前のナスの果皮の色を基準として目視によって判断したときに、ナスの果皮の色に変化がないことを示す。
【0066】
「表皮の一部(10%以下)色抜け」とは、ナス漬け用調味料に浸漬直前のナスの果皮の色を基準として目視によって判断したときに、ナスの果皮の色が、基準の色よりも10%以下退色していると判断されたことを示す。
【0067】
「表皮の一部(10~20%)色抜け」とは、ナス漬け用調味料に浸漬直前のナスの果皮の色を基準として目視によって判断したときに、ナスの果皮の色が、基準の色よりも10~20%退色していると判断されたことを示す。
【0068】
「表皮の50%以上色抜け」とは、ナス漬け用調味料に浸漬直前のナスの果皮の色を基準として目視によって判断したときに、ナスの果皮の色が、基準の色よりも50%以上退色していると判断されたことを示す。
【0069】
また、表2中、「色流れ・色移り無し」とは、ナスを浸漬する前のナス漬け用調味料の色(無色透明)および果肉の色を基準として、目視によって判断したときに、前記ナス漬け用調味料および果肉への着色がないと判断されたことを示す。
【0070】
「調味料への色流れ有り」とは、ナスを浸漬する前のナス漬け用調味料の色を基準として、目視によって判断したときに、前記ナス漬け用調味料が、ナスの果皮から流れ出た色素によって着色したと判断されたことを示す。「果肉への色移り有り」とは、ナスを浸漬する前のナスの果肉の色を基準として、目視によって判断したときに、ナスの果肉が、ナスの果皮から流れ出た色素によって着色したと判断されたことを示す。
【0071】
図2は、調味料1を用い、5日間保存した場合のカットナスおよび調味料1の外観を示す図である。
図2の左図および右図は、共にフリーザーバッグ内にあるナスおよび調味料を示しており、右図は左図の拡大図である。
図4は、対照区の結果を示す図である。
図4の左図はフリーザーバッグ内にあるナスおよび調味料を示しており、右図は当該ナスをフリーザーバッグから出した直後の写真である。
【0072】
表1および
図2に示すように、調味料1を用いた場合、カットナスに対する色止め効果は「B」となっている。また、果皮から調味料1への色流れ、および果肉への色移りは観察されなかった。なお、基準の色とは、前述したように、ナス漬け用調味料に浸漬直前のナスの果皮の色である。
【0073】
一方、
図4の左図に示すように、ナスを浸漬した精製塩は茶色に着色し、腐敗していた。また、
図4の右図に示すように、果皮は退色が著しく、色止め効果は全く見られなかった。
【0074】
この結果より、本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料が、高いナス漬けの退色防止効果を奏することが明らかとなった。
【0075】
本発明者は、後述する比較例4および比較例5の結果を受けて、ナス漬け用調味料のpHを中性から弱アルカリ性とすることによって効果の改善が期待できると考えた。
【0076】
そこで、比較例5にて調製した比較調味料5の組成を変更し、pH調整剤である酢酸ナトリウムを用い、調味料1を調製した。調味料1は、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、およびpH調整剤を含み、pHが8.8であり、ミョウバンの含有率が0重量%である。つまり、調味料1は、本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料の要件を全て充足しているため、優れた退色防止効果を奏すると言える。
【0077】
〔実施例2〕
前記表1の「調味料2」の欄に記載した原料を、表1に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、当該溶液を調味料2とし、かつ、浸漬液とした。調味料2は、ミョウバンを含有していない。その他については実施例1と同じ作業を行い、調味料2のナスの色止め効果、ナスの果皮から調味料2への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度について確認した。
【0078】
結果を表1および
図3に示す。調味料2は、調味料1のpH調整剤である酢酸ナトリウムの一部を炭酸水素ナトリウムに置換し、キレート剤であるトリポリリン酸ナトリウムの含有量を低減させたものである。
【0079】
図3は、調味料2を用い、5日間保存した場合のカットナスおよび調味料2の外観を示す図である。
図3の左上図および右上図は、フリーザーバッグ内にあるナスおよび調味料を示しており、左下図および右下図は、それぞれ、左上図および右上図に示すフリーザーバッグから出した直後のナスの写真である。
図4は、前述のとおり、対照区の結果を示す図である。
【0080】
表1および
図3に示すように、調味料2を用いた場合、カットナスの全てが色抜けなしと判断され、果皮から調味料2への色流れ、および果肉への色移りは観察されなかった。
【0081】
よって、酢酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを併用することにより、本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料は、より一層高いナス漬けの退色防止効果を奏することが明らかとなった。
【0082】
〔実施例3〕
以下の表3の「調味料3」の欄に記載した原料を、表3に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、当該溶液を調味料3とし、かつ浸漬液とした。調味料3は、ミョウバンを含有していない。
【0083】
表中の「なす漬けの素 市販品」は、対照であり、つけもと(株)製の商品名「なす漬けの素」である。「なす漬けの素 市販品」については、原料の量を「○」および「-」で示している。これは、前記「なす漬けの素」の包装に示された原材料欄に、含有されていると記載されているものを「○」、含有されていることが記載されていないものを「-」で表したものである。
【0084】
「なす漬けの素 市販品」は、ナス100gに対し、前記「なす漬けの素」が10g、水が100mlとなるように溶解させた溶液を調製して用いた。前記「なす漬けの素」は、焼アンモニウムミョウバンを含有している。「対照区」は精製塩を用いた実験区である。
【0085】
実施例1と同様の方法によって、フリーザーバッグに入れたカットナスを調製した。フリーザーバッグ内の調味料3の濃度は、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した濃度である。
【0086】
当該カットナスを、7℃~10℃の環境下で1日間、3日間、および7日間保存した。それぞれの日数の経過後速やかに、調味料3のナスの色止め効果、ナスの果皮から調味料3への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度、並びに、ナスの食感および味覚について確認した。結果を表4に示す。
【0087】
〔実施例4〕
以下の表3の「調味料4」の欄に記載した原料を、表3に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、当該溶液を調味料4とし、かつ浸漬液とした。調味料4は、ミョウバンを含有していない。
【0088】
実施例1と同様の方法によって、フリーザーバッグに入れたカットナスを調製した。フリーザーバッグ内の溶液の濃度は、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した濃度である。
【0089】
実施例3と同様の方法によって、調味料4のナスの色止め効果、ナスの果皮から調味料4への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度、並びに、ナスの食感および味覚について確認した。結果を表4に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
調味料3は、調味料2を一剤式のナス漬け用調味料とすべく、調味料2にグルタミン酸ナトリウムを含有させ、精製塩の含有量を増加させた分、他の成分を減少させる処方としたものである。
【0093】
表4に示すように、調味料3は、調味料2(表1)と同様に、優れたナス漬けの退色防止効果を奏した。また、調味料3は、ナスを浸漬する期間を7日間とした場合でも、退色防止効果を持続していた。この退色防止効果は、市販のナス漬けの素を用いた場合と同等以上であった。
【0094】
さらに、調味料3の溶液に浸漬したナスは、食感および味覚も、市販のナス漬けの素に浸漬した場合と同等の優れた結果を示した。
【0095】
調味料4は、調味料3にキレート剤である硫酸第1鉄を加えたものであるが、退色防止効果、食感および味覚のいずれにおいても、調味料3と同様に優れた結果を示した。
【0096】
〔実施例5〕
本実施例では、ナスの一本漬けを行った。まず、ナスを水洗した後、ヘタを残したまま、ヘタの付近まで縦に切れ目を入れ、実の部分に凡その間隔で3か所浅く一周スジを入れた。
図2は、前記切れ目およびスジを入れる様子を示す図である。次に、ナスを1重量%の食塩水に漬けて、約5分間浸漬し、アクぬきを行った。十分に水切りをした後、予め調製しておいた調味料3または4の入ったフリーザーバッグに上記のナスを投入した。フリーザーバッグ内の調味料3または4の濃度は、ナス100gに対し、調味料3または4の原料の前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した濃度である。
【0097】
次に、前記フリーザーバッグを手揉みしながら十分に脱気した後にヒートシールを行って密封した。また、実施例1等と同様に、前記フリーザーバッグをポリエチレン袋に入れ、当該ポリエチレン袋を密封した。
【0098】
前記フリーザーバッグに入れたカットナスを7℃~10℃の環境下で1日間、3日間、5日間および7日間保存した。それぞれの日数の経過後速やかに、調味料3および4のナスの色止め効果、ナスの果皮から調味料3または4への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度、並びに、ナスの食感および味覚について確認した。結果を表5に示す。
【0099】
【0100】
表5に示すように、浸漬の形態を半月切りカットナスの浸漬から一本漬けに変更した場合も、表4に示したのと同様の優れた結果が得られた。
【0101】
〔比較例1〕
以下の表6の「比較調味料1」の欄に記載した原料を、表6に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、比較調味料1とし、かつ浸漬液とした。比較調味料1はミョウバンを含有していない。
【0102】
比較調味料1をフリーザーバッグに入れ、ナスの浸漬に備えた。比較調味料1の濃度は、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した。比較調味料1のpHは3.3であった。なお、表中の対照区は、実施例1で用いたものと同じである。
【0103】
その他は実施例1と同様にして、フリーザーバッグに入れたカットナスを7℃~10℃の環境下で5日間保存し、比較調味料1のナスの色止め効果、ナスの果皮から比較調味料1への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度について確認した。
【0104】
表6に示すように、供試したナスは、表皮の10~20%が色抜けし(色止め効果がC)、ナス表皮から比較調味料1への色素の溶出が顕著となり、比較調味料1がピンク色に着色し、一部のナスについては、果肉への色移りも見られた(色流れ・色移りがD)。
【0105】
〔比較例2〕
以下の表6の「比較調味料2」の欄に記載した原料を、表6に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、比較調味料2とし、かつ浸漬液とした。比較調味料2は、ミョウバンを含有していない。
【0106】
比較調味料2をフリーザーバッグに入れ、ナスの浸漬に備えた。比較調味料2の濃度は、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した。比較調味料2のpHは4.0であった。
【0107】
その他は実施例1と同様にして、フリーザーバッグに入れたカットナスを7℃~10℃の環境下で5日間保存し、比較調味料2のナスの色止め効果、ナスの果皮から比較調味料2の前記溶液への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度について確認した。
【0108】
比較調味料2は、比較例1の結果を受けて、酸化防止剤をL-アスコルビン酸からL-アスコルビン酸ナトリウムに変更したものである。この変更によって、表6に示すように、色止め効果について、果皮の色が、基準の色よりも10%以下退色したという結果が得られた(色止め効果がB)。一方、果肉への色移りは見られなくなったが、色流れは比較調味料1を用いた場合と同等であり、不十分であった(色流れ・色移りがC)。このように、全体としては、未だ満足のゆくナス漬け用調味料とはならなかった。
【0109】
【0110】
〔比較例3〕
以下の表7の「比較調味料3」の欄に記載した原料を、表7に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、当該溶液を比較調味料3とし、かつ浸漬液とした。比較調味料3はミョウバンを含有していない。
【0111】
比較調味料3をフリーザーバッグに入れ、ナスの浸漬に備えた。比較調味料3の濃度は、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した。比較調味料3のpHは5.1であった。なお、表中の対照区は、実施例1で用いたものと同じである。
【0112】
その他は実施例1と同様にして、フリーザーバッグに入れたカットナスを7℃~10℃の環境下で5日間保存し、比較調味料3のナスの色止め効果、ナスの果皮から比較調味料3への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度について確認した。
【0113】
比較調味料3では、比較例2の結果を受け、酸化防止剤としてL-アスコルビン酸ナトリウムを用いた。また、ブドウ糖が持つ切り花の延命効果がナスの色止め等に適用可能か否かを調べるため、ブドウ糖を原料として試用した。しかし、比較調味料2と同程度の不十分な結果となった。
【0114】
〔比較例4〕
以下の表7の「比較調味料4」の欄に記載した原料を、表7に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、当該溶液を比較調味料4とし、かつ浸漬液とした。比較調味料4はミョウバンを含有していない。
【0115】
比較調味料4をフリーザーバッグに入れ、ナスの浸漬に備えた。比較調味料4の濃度は、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した。比較調味料4のpHは5.1であった。
【0116】
その他は実施例1と同様にして、フリーザーバッグに入れたカットナスを7℃~10℃の環境下で5日間保存し、比較調味料4のナスの色止め効果、ナスの果皮から比較調味料4への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度について確認した。
【0117】
比較調味料4は、ブドウ糖に代えて環状オリゴ糖(β-シクロデキストリン)を用いたこと以外は、比較調味料3と同じ組成である。この場合、比較調味料4のpHは、比較調味料3のpHと同じであった。また、果肉への色移りは見られなかったが、色止め効果、色流れに対する効果は、比較調味料2および3と同様であり、未だ不十分であった。
【0118】
〔比較例5〕
以下の表7の「比較調味料5」の欄に記載した原料を、表7に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、当該溶液を比較調味料5とし、かつ浸漬液とした。比較調味料5はミョウバンを含有していない。
【0119】
比較調味料5をフリーザーバッグに入れ、ナスの浸漬に備えた。比較調味料5の濃度は、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した。比較調味料5のpHは6.8であった。
【0120】
その他は実施例1と同様にして、フリーザーバッグに入れたカットナスを7℃~10℃の環境下で5日間保存し、比較調味料5のナスの色止め効果、ナスの果皮から比較調味料5への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度について確認した。
【0121】
比較調味料5は、比較調味料4に含有されていたリンゴ酸を無添加としたものである。そのため、比較調味料5のpHは、比較調味料4のpHよりも中性に近づいていた。
【0122】
比較調味料5のナスの色止め効果は、比較調味料2~4と同程度であった。つまり、カットナスに対する色止め効果について、果皮の色が、基準の色よりも10%以下退色したという結果であった。
【0123】
また、果肉への色移りは見られなかった。果皮から比較調味料5への色流れは、比較調味料4を用いた場合よりも良好となった。しかし色流れが僅かに発生し、比較調味料5が淡青色に着色していたため、未だ満足のゆくナス漬け用調味料とはならなかった(色流れ・色移りがB)。
【0124】
【0125】
〔比較例6〕
本比較例では、実施例1で調製した調味料1からL-アスコルビン酸ナトリウムまたはβ-シクロデキストリンを除外することが退色防止効果に与える影響について検討した。なお、調味料1および対照区の調製法は、実施例1に記載したとおりである。
【0126】
以下の表8の「比較調味料6」および「比較調味料7」の欄に記載した原料を、それぞれ、表8に記載した重量%で混合した。得られた混合物を水に溶解させて溶液を調製し、当該溶液を、それぞれ比較調味料6および比較調味料7とした。比較調味料6および比較調味料7は、ミョウバンを含有していない。
【0127】
比較調味料6および比較調味料7を、それぞれフリーザーバッグに入れ、ナスの浸漬に備えた。比較調味料6の濃度および比較調味料7の濃度は、それぞれ、ナス100gに対し、前記混合物が8g、水が120mlとなるように調整した。実施例1と同じ作業を行い、各調味料のナスの色止め効果、ナスの果皮から調味料への色素の溶出(色流れ)、ナスの果皮から果肉への色移りの程度について確認した。
【0128】
【0129】
表8に示すように、調味料1からL-アスコルビン酸ナトリウムを除いた比較調味料6を用いた場合、色止め効果は「D」と判断された。つまり、「表皮の一部(10~20%)色抜け」と判断されたナスと、「表皮の50%色抜け」と判断されたナスとが混在しており、色止め効果は調味料1と比べて明らかに低下していた。また、色流れ、色移りについても「D」と判断された。つまり、調味料への色流れが発生しており、果肉への色移りが発生しているナスも見られた。
【0130】
調味料1からβ-シクロデキストリンを除いた比較調味料7を用いた場合、色止め効果は「C」と判断された。つまり、供試したナスは、表皮の一部(10~20%)が色抜けしていた。また、色流れ、色移りについては、「B」と判断された。つまり、果肉への色移りが発生しているナスは見られなかったが、調味料7への色流れが僅かに発生し、調味料7が淡青色に着色していた。
【0131】
このように、比較調味料6および比較調味料7を用いた場合、退色防止効果は調味料1と比べて大きく低下することが明らかとなった。つまり、本発明の一実施形態に係るナス漬け用調味料は、アスコルビン酸ナトリウム、環状オリゴ糖、および、ナス漬け用調味料を含む液体のpHを7.0~9.0に調整することができるpH調整剤を含み、かつ、ミョウバンを実質的に含有しないという構成を備えるがゆえに、優れた退色防止効果を奏することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、現状多く使用されているミョウバンを含むナス漬け用退色防止剤の代替品として利用することができる。