(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】トイレユニット
(51)【国際特許分類】
E03D 11/00 20060101AFI20240129BHJP
E03D 11/11 20060101ALI20240129BHJP
A47K 11/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
E03D11/00 A
E03D11/11
A47K11/00
(21)【出願番号】P 2022003086
(22)【出願日】2022-01-12
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2021172956
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598067289
【氏名又は名称】中家 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中家 正行
(72)【発明者】
【氏名】中家 淳
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-195960(JP,A)
【文献】特開2007-117284(JP,A)
【文献】特開2016-209223(JP,A)
【文献】特開2016-011545(JP,A)
【文献】特開2005-074008(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112796544(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/00
E03D 11/11
A47K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を送出する便器(12)と、
前記便器(12)から汚水を吸い込む吸引装置(16)と、
前記吸引装置(16)の下方に設けたパック装置(13)と、
を有し、
前記吸引装置(16)は、
前記便器(12)から延びる排水管(25)が接続される吸込口(31)と、
前記吸込口(31)から吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる一時タンク(32)と、
前記一時タンク(32)内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構(33)と、
前記一時タンク(32)の下方に設けた排出口(34)と、
前記排出口(34)を密封できる、開閉可能な蓋(35)と、
を有し、
前記吸込機構(33)に繋がる吸引口(48)は前記吸込口(31)よりも上方に配されており、
前記パック装置(13)は、
前記排出口(34)から排出された汚水をパッケージ化して密封する
ために、
筒状の熱可塑性樹脂製フィルム(62)が格納部(61)に格納され、
前記排出口(34)より下に、筒状の熱可塑性樹脂製フィルム(64)の上端が配されて、内側下方に向かってほどけていくように配置され、
前記筒状の熱可塑性樹脂製フィルム(64)を筒長方向に分かれた二か所で熱溶着して密封する熱溶着手段(72,74)と、前記熱溶着手段(72,74)が熱溶着した箇所の間を周方向に切断する切断手段(73)とを有する
トイレユニット。
【請求項2】
洗浄水を送出する便器(12)と、
前記便器(12)から汚水を吸い込む吸引装置(16)と、
前記吸引装置(16)の下方に設けたパック装置(13)と、
を有し、
前記吸引装置(16)は、
前記便器(12)から延びる排水管(25)が接続される吸込口(31)と、
前記吸込口(31)から吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる一時タンク(32)と、
前記一時タンク(32)内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構(33)と、
前記一時タンク(32)の下方に設けた排出口(34)と、
前記排出口(34)を密封できる、開閉可能な蓋(35)と、
を有し、
前記吸込機構(33)に繋がる吸引口(48)は前記吸込口(31)よりも上方に配されており、
前記パック装置(13)は、
前記排出口(34)から排出された汚水をパッケージ化して密封する
ために、
筒状の熱可塑性樹脂製フィルム(62)が格納部(61)に格納され、
前記排出口(34)より下に、筒状の熱可塑性樹脂製フィルム(64)の上端が配されて、内側下方に向かってほどけていくように配置され、
前記筒状の熱可塑性樹脂製フィルム(64)を熱溶着して密封する熱溶着手段(76)を有する
トイレユニット。
【請求項3】
前記パック装置(13)は、
前記熱溶着手段(76)が熱溶着した箇所を周方向に切断する切断手段(77)を有する
請求項
2に記載のトイレユニット。
【請求項4】
前記排出口(34)が、前記蓋(35)を閉鎖するように付勢する閉鎖機構(36)を有し、
前記閉鎖機構(36)が掛ける荷重は、
前記一時タンク(32)内に所定量の汚水が蓄積されていたら、その汚水の重みにより前記蓋(35)が開放されるように調整された
請求項1
乃至3のいずれかに記載のトイレユニット。
【請求項5】
前記蓋(35)の開閉と、前記吸込機構(33)の稼働/停止を制御できる制御装置(45)を有し、
前記制御装置(45)は、
前記蓋(35)を閉鎖し、
前記吸込機構(33)を稼働し、前記汚水を前記便器(12)から吸込み、前記排水管(25)から吸い込みきった後に、吸込機構(33)を停止し、
この停止と同時又はそれより後に、前記蓋(35)を開放して、前記一時タンク(32)に蓄えた汚水を前記パック装置(13)へと落下させ、
前記の落下の後に、前記熱溶着手段(72,74,76)による熱溶着を行うように実行する
請求項
1乃至4のいずれかに記載のトイレユニット。
【請求項6】
前記熱溶着と、前記切断手段(73,77)による切断とを、同時に又は前記熱溶着の後に前記切断を行うように実行する、
請求項3を引用せずに請求項2を引用する場合をのぞく、請求項
5に記載のトイレユニット。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれかに記載のトイレユニットを用いて、
洗浄水を用いて便器(12)を洗浄するステップ、
汚水を吸引装置(16)で吸込むステップ、
吸引装置(16)からパック装置(13)へ汚水を投下するステップ、
パック装置(13)で汚水をパッケージ化するステップ
を実行するトイレユニットの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトイレユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下水道が無い場所で用いられるトイレユニットでは、使用後の便器から汚水を汚水タンクへと移送する。汚水タンクが便器の真下にある場合はそのまま汚水を落下させればよいが、それでは汚水タンクから臭いが直接上がってくる。このため、便器下方に水を常時満たす領域を形成させ、一旦その領域から配管が上がった後に、汚水タンクへと繋がる構造が採用されることがある。
【0003】
このような配管構造をしているため、汚水にある程度の圧力を掛けて流さなければならない。大量の水で流すという手法もあるが、トイレユニットを設置しなければならない箇所は上水道が無い場所であることが多く、使用する洗浄水はできるだけ節約することが望ましい。
【0004】
これに対して、使用する水を節約しながら便器から汚水を排出させるために、ポンプで吸い上げることが考えられる。例えば特許文献1には、排出ポンプを介装した圧送排出機構部5を備えることで排出対象汚水(洗浄用水+汚物)を圧送排出して、洗浄用水の使用水量を減少させる節水トイレが提案されている。特許文献2でもポンプ24による排水が提案されている。
【0005】
一方、下水道だけでなく汚水タンクを用意できない状況でも利用可能なポータブルトイレとして、便座の下に設けた密封装置により、排泄物を熱可塑性樹脂フィルムでパッケージ化することが特許文献3で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-059306号公報
【文献】特開2021-31867号公報
【文献】特開2019-4933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載のポータブルトイレの仕組みは、便座の下に密封装置を設けてフィルム袋で受けるという構造上、水洗トイレに組み込むことができなかった。
【0008】
そこでこの発明は、水洗トイレを利用しながら、汚水タンクや下水道も使わずに排泄物を処理できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、
洗浄水を送出する便器と、
前記便器から汚水を吸い込む吸引装置と、
前記吸引装置の下方に設けたパック装置と、
を有し、
前記吸引装置は、
前記便器から延びる排水管が接続される吸込口と、
下方に設けた排出口と、
を有し、
前記パック装置は、
前記排出口から排出された汚水をパッケージ化して密封する
トイレユニットにより上記の課題を解決したのである。
【0010】
すなわち、洗浄水により洗浄できる便器に、その便器から延びる排水管を介して汚水を吸い込む吸引装置を取り付け、水洗の便器に蓄えた排泄物と流される洗浄水とをまとめて吸い込み、この吸引装置の真下にパック装置を配することで、水洗便器でのパッケージ化を実現した。
【0011】
さらにこの発明にかかるトイレユニットは、
前記吸引装置が、
前記吸込口から吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる一時タンクと、
前記一時タンク内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構と、
前記一時タンクの下方に設けた排出口と、
前記排出口を密封できる、開閉可能な蓋と、
を有し、
前記吸込機構に繋がる吸引口は前記吸込口よりも上方に配されている構造を採用することができる。吸引した排泄物と洗浄水をいったん一時タンクに蓄えた後にまとめて落下させてパッケージ化できるため、パッケージ化のタイミングが制御しやすく、前記吸引装置内の汚水残存量も抑えることができるため、より効率的に運用でき、臭いも残りにくくなる。
【0012】
この構造を採用して、前記吸込口より上方に前記吸込機構に繋がる吸引口を設けることで、前記吸込口から吸い込んだ前記汚水は、前記一時タンクが満杯にならない限りは前記吸込機構にまでは到達しない。前記一時タンクの容量を、一旦吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる程度の量を確保すれば、一回の利用で生じる汚水を全て吸い込んでも汚水は前記吸込機構そのものには吸い込まれずに到達しない。必要な汚水を吸込みきったところで一時タンクの下方に設けた排出口の蓋を開放すれば、汚水が前記吸込機構に到達することなく、下方のパック装置へと移せるので、前記吸込機構が汚水を吸い込まずに済む。なお、前記吸引口が前記吸込口より上方にあればよく、前記吸込機構自体が前記吸込口より上に配されていてもよいし、前記吸引口と吸引管で接続された前記吸込機構自体が前記吸込口より下に配されていてもよい。これにより、前記吸込機構にフィルタを設けてそれを交換するといったメンテナンスが不要になり、また、軸受などの壊れやすい部品を含む前記吸込機構が汚水に浸漬されることがないので、前記吸込機構が汚水により劣化する事態をほぼ防ぐことができる。これにより、パッケージ化が特に要求される災害時など補修困難な環境で、トイレ利用者が集中して酷使される状況であっても故障しにくく、安定的な運用が可能となる。
【0013】
この発明にかかるトイレユニットでは、
前記排出口が、前記蓋を閉鎖するように付勢する閉鎖機構を有し、
前記閉鎖機構が掛ける荷重は、前記一時タンク内に所定量の汚水が蓄積されていたら、その汚水の重みにより前記蓋が開放されるように調整された実施形態を採用できる。この実施形態では、汚水を吸い込んでいる最中は、閉鎖機構による付勢した力と、吸込機構による吸引力とが合わさることで、汚水が追加されてもしばらくは蓋が開放されないまま吸引を続けることができる。一時タンクに所定量の汚水が溜まったところで、閉鎖機構による付勢した力と吸引力とを超える荷重がかかり、蓋が開放されるように調整しておくと、蓋の開放を汚水の蓄積に連動させて自動的に行うことができ、パック装置への投下をスムーズに進行させることができる。これらの運用を電子的な時間計測やセンサによる情報などによる制御がなくとも行うことができる。特に開閉装置がエラーを起こしやすい過酷な設置環境において望ましく、災害時の長期運用でも故障しにくい。
【0014】
この発明にかかるトイレユニットでは、筒状の熱可塑性樹脂製フィルムを筒長方向に分かれた二か所で熱溶着して密封する熱溶着手段と、前記熱溶着手段が熱溶着した箇所の間を周方向に切断する切断手段とを有する構造を採用できる。筒長方向とは筒状のフィルムの長さ方向であり、周方向とは筒状のフィルムの周方向である。なお、実際には熱溶着した部分はシート状になっているため、周方向はシートの幅方向にあたる。熱可塑性樹脂の熱溶着により密封が可能になり、筒状の熱可塑性樹脂製フィルムを用いることで、順次パッケージ化を進めて、端部から小分けになったパックにして廃棄していくことが可能となる。
【0015】
また、この発明にかかるトイレユニットでは別の形態として、筒状の熱可塑性樹脂製フィルムを熱溶着して密封する熱溶着手段を有する構造を採用できる。熱可塑性樹脂の熱溶着により密封が可能になり、筒状の熱可塑性樹脂製フィルムを用いることで、順次パッケージ化を進めて、端部から連なって個々に汚物がパック化された連続体のパックにして廃棄していくことが可能となる。さらに、この発明にかかるトイレユニットでは、前記熱溶着手段が熱溶着した箇所を周方向に切断する切断手段を有する構造も採用できる。
【0016】
またこの発明にかかるトイレユニットでは、別の実施形態として、
前記蓋の開閉と、前記吸込機構の稼働/停止を制御できる制御装置を有し、
前記制御装置は、
前記蓋を閉鎖し、
前記吸込機構を稼働し、前記汚水を前記便器から吸込み、前記排水管から吸い込みきった後に、吸込機構を停止し、
この停止と同時又はそれより後に、前記蓋を開放して、前記一時タンクに蓄えた汚水を前記パック装置へと落下させ、
前記の落下の後に、前記熱溶着手段による熱溶着を行うように実行する実施形態を採用できる。
この実施形態では、蓋の開放とそれに続く熱溶着と切断とを制御装置によってタイミングを定めて行う。汚水の一時タンクへの吸込みと落下を、確実なタイミングで実行し、その後に的確なタイミングでパッケージ化を行うことができる。制御装置によるコストを許容でき、制御装置がエラーを起こしにくい環境であると好ましい。
【0017】
さらにその実施形態では、前記熱溶着と、前記切断手段による切断とを、同時に又は前記熱溶着の後に前記切断を行うように実行する実施形態も採用できる。的確なタイミングで、パッケージを小分けにして筒状の熱可塑性樹脂フィルムから分離させて個別に廃棄することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明のトイレユニットを用いて、便器の下ではなく便器とは別に設置した吸引装置及びパック装置により、洗浄水を用いた水洗トイレでありながら、その排泄物及び洗浄後の廃棄物をパッケージ化して廃棄することができる。これにより、排水処理が困難になりやすい災害時であっても、雨水その他から水さえ補給できれば水洗トイレを使用する快適な環境を提供することができるとともに、その廃棄物処理を固めた物体として処理することができる。また、介護現場で従来は水洗トイレを設置困難であった場所であっても、水洗トイレを導入しながら、発生した汚物をパッケージ化して衛生的な処理ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)この発明にかかるトイレユニットの第一の実施形態例を示す側面断面図、(b)第二の実施形態例の第一の実施形態例との相違点部分を示す部分断面図
【
図2】(a)吸引装置の実施形態例図、(b)ファンとモーターの実施形態例図、(c)吸引装置の別の実施形態例図
【
図4】(a)実施形態にかかるトイレユニットの吸引開始前の状態図、(b)吸引開始後の状態図、(c)一時タンクに汚水が到達した状態図、(d)一時タンクに汚水を吸引しきった状態図、(e)パック装置へ落下させる状態図
【
図5】(a)汚水を投下する時点でのパック装置の状況図、(b)汚水がフィルム内に投入された時点でのパック装置の状況図、(c)熱溶着手段により密封する時点でのパック装置の状況図、(d)カッターによりフィルムを切断する時点でのパック装置の状況図、(e)パックを分離した時点でのパック装置の状況図、(f)フィルムを降下させた時点でのパック装置の状況図
【
図6】(a)パック装置の第三の実施形態例図、(b)熱溶着手段により密封しようとする時点でのパック装置の状況図、(c)ローラでフィルムをスクロールさせる途中のパック装置の状況図、(d)カッターによりフィルムを切断する時点でのパック装置の状況図、(e)パックを分離した時点でのパック装置の状況図、(f)フィルムを降下させて次の使用の準備ができた時点でのパック装置の状況図
【
図7】(a)パック装置の第四の実施形態例図、(b)汚水Pを透過して熱溶着手段により密封しようとする段階の状況図、(c)熱溶着手段による密封した時点でのパック装置の状況図、(d)ローラでフィルムをスクロールさせる途中のパック装置の状況図、(e)フィルムを降下させて次の使用の準備ができた時点でのパック装置の状況図,(f)パッケージ化を繰り返した後のパック装置の状況図
【
図8】この発明にかかるトイレユニットにおける制御装置の配線例図
【
図9】この発明にかかるトイレユニットを運用する手順のフロー例図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明について具体的な実施形態を挙げて説明する。
図1(a)に第一の実施形態にかかるトイレユニット11の側面断面図を示す。なお、機能図解をするため実際の大きさ比よりも吸引装置16及びパック装置13を大きく書いている。
【0021】
この実施形態にかかるトイレユニット11には、洗浄水を送出して洗浄できる便器12が備えてある。図では洋式便器1つを備えた実施形態を記載しているが、和式便器でもよいし、男性小用便器でもよい。ただし、一旦蓄えた排泄物を洗浄水とまとめて吸引するため、和式便器又は洋式便器であると運用しやすい。必要なときに機械的に又は電子的に操作した場合のみノズル23から洗浄水が噴き出る。ただし、それらの弁や操作部等はここでは略記する。このノズル23に供給する洗浄水は、水道水が使用できる場合はノズル23の元を水道に繋げ、普段は弁で閉鎖しておき、電磁弁による開放や物理的操作により弁を開放することで利用できる。水道水が使用できない場合は、雨水や浄化水、その他の汲んできた水などを蓄えた洗浄水タンクを用意しておき、この洗浄水タンクからポンプでノズル23への給水を行う構造が利用できる。この場合、このポンプを動作させることでノズル23から洗浄水が噴き出る。以下の説明はポンプによる操作を例にして記述するが、本発明はこれに限定されない。
【0022】
便器12内には水が蓄えられている。使用時にはこれに排泄物と洗浄水とが含まれる汚水Pとなる。便器12の下部は排水管25に繋がっている。なお、図示しないが、排水管25又はそれとの接続部に、逆流を防ぐための逆止弁を設けておくとよい。排水管25は、便器12内の水面を維持するために、一旦便器12の水面より高い位置を経由するか、又は便器12の水面より高い位置まで到達する。排水管25の先は、吸引装置16の吸込口31に接続される。吸引装置16は、ノズル23からの洗浄水の噴出と合わせて駆動し、便器12から汚水Pを吸い込む。
【0023】
吸引装置16が吸い込んだ汚水Pは、吸引装置16の下方に設けたパック装置13でパッケージ化して密封する。パッケージ化とは、袋に詰めて、当分の間は漏れることなく塊として取り扱えるようにすることである。パッケージ化の手段は限定されないが、熱可塑性樹脂製のフィルムからなる袋を用いて、熱溶着により密封可能とするのが好適である。臭いも漏れないようになっているとより好ましい。
【0024】
吸引装置16の構造例を
図2に示す。吸引装置16は、便器12から延びる排水管25が接続される吸込口31と、吸込口31から吸い込んだ汚水Pを一時的に収容できる一時タンク32と、一時タンク32内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構33と、一時タンク32の下方に設けた排出口34と、排出口34を密封できる、開閉可能な蓋35とを有する。
【0025】
吸込口31は排水管25に、空気が漏れる隙間が生じないように密封して接続されている。吸込機構33による吸込み圧力を低下させないためである。
【0026】
一時タンク32は、便器12の一回分に使用される洗浄水よりも大きな一時収容容量を有する。具体的には、一回分の洗浄水の使用量に加えて追加されることが想定される一回分の汚物量を加算した容量よりも大きな一時収容容量を有している。洗浄水と汚物とが合わさった一回分の汚物を一時的に収容できることが必要だからである。限定されるものではないが、3リットル程度確保しておくと概ね運用上の問題はない。なお、ここで一時タンク32の一時収容容量とは、吸込口31の下側の縁31aよりも下に位置する容量である。吸込口31の下側の縁31aよりも上の部分にまで水位が上がると、吸込口31から便器12へ逆流する恐れがあるため、縁31aよりも上側の空間は、排出口34へ導入するまでの一時的な収容の役に立たない。なお、一回の使用ごとに収容した分を、後述する排出口34から排出するため、2回分の使用量を超える一時収容容量を確保しなくてもよい。
【0027】
吸込機構33は、一時タンク32内の気体を排出するものであり、具体的構成としては、モーター51と、モーター51に接続された回転軸54と、回転軸54の周りに据えられたファン52,53と、ファン52,53を格納する吸引室55と、気体を排出する排出口56とを有する。吸引室55内に格納されるファン52,53の構成は特に限定されないが、単独のファンのみであると、隙間から逆に空気が入ってきたりして、吸引する力が足りなくなりやすい。このため、
図2(b)の展開図に例示するような、回転ファン53と固定ファン52とを組み合わせたりした、密封性の高いファンを採用することが望ましい。吸込機構33としては例示する形態に限らず、真空吸引できる程度の吸込み圧力を生じさせることができるものであれば、特に限定されない。
【0028】
ただし、吸込機構33に繋がる吸引口48は吸込口31よりも上方に配されることが必要である。上方であるとはすなわち、吸込口31の下側の縁31aの位置よりも、吸込機構33の気体を吸い込む部分の最も下側の位置が、上方にあることを意味する。そのように配置すると、吸込口31から吸い込まれた汚水Pが吸込機構33に吸い込まれることをほぼ防止できる。より望ましくは、吸込口31の上側の縁31bの位置よりも、吸引口48の最も下側の位置が上方にある形態である。
図2(a)の実施形態では、吸込機構33の全部を吸込口31の上側の縁31bの位置よりも上に配置している。なお、吸引口48が吸込口31より上にあるのであれば、吸込機構33自体は吸込口31より下にあってもよい。このような実施形態の例を
図2(c)に示す。吸引口48の先はホース状の吸引管49に繋がり、吸込機構33側の吸い込み口である接続口50にまで繋がっている。
【0029】
上記いずれの形態でも、吸込口48は吸込口31よりも上方に配されることで、吸込機構33が汚水Pを吸い込まずに済むため、吸込機構33のファン52,53やモーター51が汚れることを防ぐためのフィルタなどを設置する必要がなくなる。これにより、定期的なフィルタ掃除のメンテナンスが要らなくなり、フィルタが介在することで吸込み圧力が低減することも防止でき、安定した出力でトイレユニットを運用することができる。
【0030】
排出口34は、一時タンク32の下方に設けられ、一時タンク32に一時的に収容された汚水Pをパック装置13へ落下させるものである。一時タンク32の下方とは一時タンク32の底にある汚水Pも排出できる位置であることをいうが、構造上タンクの底面に下方向に向いて設けられていると好ましい。
【0031】
第一の実施形態の拡大図を
図3(a)に示す。排出口34に設けられる蓋35は、排出口34を密封して閉鎖でき、また開放も可能である。ここで密封とは、蓋35が閉鎖されている際には汚水Pがパック装置13に落下せず、一時タンク32内に留めておける程度の気密性・水密性が確保できればよく、汚水Pの一部が落下するも大半がとどまる程度の漏れがあってもよい。ただし、気密性・水密性が高いことが望ましい。
【0032】
蓋35を閉鎖する機構としては、例えば、電気的に制御装置45からの指示によってモーターなどで駆動する開閉装置41を設ける第一の実施形態と、物理的な重量による閉鎖機構36を設ける第二の実施形態とが挙げられる。第一の実施形態では、蓋35を開閉自在にする回動軸37があり、この回動軸37に対する蓋35を駆動させる開閉装置41が設けられている。
【0033】
第二の実施形態の場合は、蓋35を開閉自在にする回動軸37の蓋35とは反対側に、所定の質量を有して蓋35を閉鎖するように付勢するように荷重を掛ける閉鎖機構36を取り付ける。
図3(b)にこの第二の実施形態での蓋35付近の拡大図を示す。
図3(a)における開閉装置41が閉鎖機構36に変更されたものである。閉鎖機構36が掛ける荷重は、蓋35に内側からかかる力が無ければ蓋35を閉鎖し、一時タンク32内に所定量の汚水Pが蓄積されていたらその汚水Pの重みにより蓋35が開放されるように調整する。ここで所定量とはある程度調整できるが、便器12の一回分の洗浄水の量か、それに想定される汚物の量を加算した量の範疇で適宜調整するとよい。このように適切な調整をすると、前記閉鎖機構に電子的な制御機構を設けることなく、吸込機構33が便器12から適切に汚水Pを吸い込む変化に従って、自動的に蓋35を閉鎖し、必要なタイミングで開放させることができる。ただし、制御装置45を用いる第一の実施形態の方が精度の高い制御がしやすい。
【0034】
どちらの実施形態の場合でも、パック装置13の上部には取り外し可能な天板60があり、この天板60の上に吸引装置16が載せられる。天板60の中央には穴68が空けられている。穴68には、吸引装置16の排出口34が挿入される。天板60の下の格納部61には、熱可塑性樹脂製のフィルムのチューブセット62が収容されている。チューブセット62自体は長い円筒形のフィルムを山折り谷折りを繰り返して折り畳んで高さを圧縮して収容可能とし、中心から一方に引っ張ることで元の筒状に広げることができるものである。
図3では折り畳んだ断面部分が見えている。なお、形態としてはこのような山折り谷折りを繰り返した形状に限定されず、中心から巻いてドーナツ状にした形状でもよいし、その他の形状でもよい。いずれの形状であっても、格納されたフィルムが内側下方に向かってほどけていくように配置する。ほどけた筒状のフィルム64を下方へ引き出すため、格納部61の底面63も同様に中央に穴69が空けられている。一方、新たなチューブセット62を格納部61に収容する際には、天板60を取り外して行う。
【0035】
底面63の下には、フィルム64をほどいて下方へ移送する力を付加する移送手段となるローラ71a,71bが設けてある。位置は必ずしも図の配置である必要はないが、構造上は後述するカッター73a,73bよりも上に設けてあることが好ましい。また、移送手段としてローラ71a,71bを図では左右二か所に設けているが、特にこの形態には限定されず、必要なタイミングでフィルム64を下方へ移送することができる力を掛けることができるものであれば、移送手段は特に構造も限定されない。
【0036】
ローラ71a,71bの下には、上部熱溶着手段72a,72b、カッター73a,73b、下部熱溶着手段74a,74bが、それぞれフィルム64を挟んで設けられている。カッター73a,73bが交差する箇所と上下の熱溶着手段同士が対向する箇所との間の上下間隔は2~4cm程度確保されていると作業精度が安定して好ましい。上部熱溶着手段72a,72bと下部熱溶着手段74a,74bは、熱可塑性樹脂製であるフィルム64を溶融させることができる加熱機能とともに、左右から合わせることでフィルム64を密封することができる機構である。図では模式的に記載しており、溶融及び密封できる機能を持つものであれば記載された形態に限定されるものではない。熱可塑性樹脂製フィルムの種類にもよるが、100℃前後で加熱して溶着できるフィルムを選び、それに対応した温度で上部熱溶着手段72a,72bと下部熱溶着手段74a,74bを加熱するとよい。加熱するのはフィルム64を密封する直前のみでよく、加熱に必要なエネルギーはバッテリー程度でも十分に利用できる。
【0037】
カッター73a,73bはフィルム64の左右から近づいて、熱溶着された部分(底密着部65及び上密着部67)の間を切断することができる切断手段である。これも図に示したのは例示であり、このような構造に限定されない。完全に切断するものでもよいし、フィルム64にミシン目を入れて、人の手で容易に切断できるようにするものでもよい。速やかに切断するのであれば、カッター73a,73bを120~200℃程度に加熱して、フィルムを融かしながら切断するようにするとより好ましい。この場合、加熱するのは切断時のみであり、加熱するのは刃の先端だけでよいので、加熱に必要なエネルギーはバッテリー程度で十分に賄うことができる。
【0038】
これらローラ71a,71b、上部熱溶着手段72a,72b、カッター73a,73b、下部熱溶着手段74a,74bを有する駆動機構70の下には、フィルム64の先端である底密着部65を底として汚水Pを収容した部分を収容できる空間である収容部66がある。カッター73a,73bで切断された後の、汚水Pを密封したパック79がここに分離される。図では全体を囲っているが、使用後にパック79を取り出しできるように開閉装置が設けられていてもよいし、一方が開放されて取り出し可能にしておいてもよい。図ではパック79一つ分を格納して使用するたびに取り出す収容部66を記載しているが、収容部66がそのままゴミ箱として多数のパック79を収容できるようにして後でまとめて廃棄できるようにしていてもよい。
【0039】
この発明にかかるトイレユニットの使用手順例を順に説明する。まず、この閉鎖機構36による蓋35の閉鎖と開放の手順例を、
図4を用いて説明する。なお、見やすさのため図中で天板60の記載を省く。便器12を使用した直後の状態を
図4(a)に示す。トイレユニット11に供えられた所定のスイッチやボタンなどが操作された指示に従って、ポンプを駆動させてノズル23から洗浄水を放出する。この段階では蓋35は開閉装置41によって閉鎖されている。洗浄水の放出による洗浄開始と同時か、その洗浄に引き続いて、吸引装置16の吸込機構33を駆動させると、蓋35が閉鎖されているため、一時タンク32内の気体が排出されることに従って、排水管25内の汚水Pが吸い上げられる吸込み圧力が生じる。これにより、便器12内の汚水Pが排出される(
図4(b))。吸込み圧力が続くと、排水管25内の汚水Pは一時タンク32に到達して一時的に収容されていく(
図4(c))。汚水Pを吸込みきると(
図4(d))、排水管25が閉鎖されないため、吸込機構33が可動していても、汚水Pはそれ以上吸われなくなる。こうなると吸込機構33を停止してよい。吸込機構33を停止するのが望ましいタイミングは、排水管25内の汚水Pを吸い込みきったタイミングであるため、排水管25の内部容量と吸込機構33の出力から概算で求めることができるため、タイマーで制御しておくとよい。一方、この吸込機構33を停止するタイミングに合わせて、開閉装置41も開放するように制御するとよい。開閉装置41が蓋35を開放すると、汚水Pはパック装置13へと落下する(
図4(e))。落下は自由落下によるため、5~10秒程度で完了する。落下し終えたタイミングで開閉装置41は蓋35を再び閉鎖する。
【0040】
なお、開閉装置40の代わりに、荷重により閉鎖する閉鎖装置を設ける実施形態も採用できる。その場合の使用手順例を、対応する
図4に合わせて順に説明する。便器12を使用した直後の状態を
図4(a)の段階では蓋35は上記閉鎖機構による荷重によって閉鎖されている。例えば、上記閉鎖装置となる荷重の重りを配する箇所としては、例えば
図4における開閉装置41の位置が挙げられる。洗浄水の放出による洗浄開始と同時か、その洗浄に引き続いて、吸引装置16の吸込機構33を駆動させると、蓋35が閉鎖されているため、一時タンク32内の気体が排出されることに従って、排水管25内の汚水Pが吸い上げられる吸込み圧力が生じる。これにより、便器12内の汚水Pが排出される(
図4(b))。吸込み圧力が続くと、排水管25内の汚水Pは一時タンク32に到達して一時的に収容されていく(
図4(c))。この時点で蓋35にかかる荷重は、蓄えられた汚水Pも吸われる吸込み圧力によって低減されることもあり、上記閉鎖機構により閉鎖するように掛ける荷重を上回るほどではないので、蓋35は閉鎖されたまま、吸込み圧力が持続する。汚水Pを吸込みきると(
図4(d))、排水管25が閉鎖されないため、吸込機構33が可動していても、汚水Pはそれ以上吸われなくなり、汚水Pの全荷重が蓋35に掛かる。こうなると吸込機構33を停止してよい。吸込機構33を停止するのが望ましいタイミングは、排水管25内の汚水Pを吸い込みきったタイミングであるため、排水管25の内部容量と吸込機構33の出力から概算で求めることができるため、タイマーで制御しておくとよい。一方、上記閉鎖機構が掛ける荷重はこの段階での汚水Pの全荷重より小さく調整しているので、蓋35は閉鎖しきれなくなり、開放される。一旦開放されると、汚水Pの勢いもあるため、上記閉鎖機構の荷重があってもある程度汚水Pはパック装置13へと落下する(
図4(e))。さらに、一旦開放された蓋35が戻るまで時間がかかるような機械的機構を設けておいてもよい。
【0041】
続いて、パック装置13によるパッケージ化の手順例を、
図5を用いて説明する。吸引装置16から落下した汚水Pがフィルム64の中心に空けられた部分に投下される。この状態を
図5(a)に示す。この状態ではローラ71a,71bは回転しておらず、上部熱溶着手段72a,72b、カッター73a,73b、下部熱溶着手段74a,74bの間は開いており、フィルム64の間から底密着部65まで到達可能となっている。ここに汚水Pが投下されることで、収容部66内のフィルム64内に導入された状態を
図5(b)に示す。基本的には便器12の使用一回分の汚水Pがこのようにしてフィルム64内に溜められる。
【0042】
次にこの溜められた部分をパッケージ化する。駆動機構70のうち、上部熱溶着手段72a,72b、下部熱溶着手段74a,74bの間が接近し、フィルム64を汚水Pが溜まっている部分よりも上部でフィルムを密封する。それぞれの熱溶着手段は、電気により加熱される金属製の表面を有しており、その表面同士が対向しており、フィルム64を挟む際に短時間のみ通電して加熱して密封するとよい。まず上部熱溶着手段72a,72b同士、下部熱溶着手段74a,74b同士がフィルム64を挟んで密着し、挟んだフィルム64を熱溶着する。下部熱溶着手段74a,74bに挟まれて熱溶着された部分が上密着部67となって密封され、これにより下部の汚水Pが溜まった部分が密封される。この状態を
図5(c)に示す。一方、上部熱溶着手段72a,72bに挟まれて熱溶着された部分が、次の底密着部65となる。ただしこの段階ではまだフィルム64が切断されていない。それぞれの熱溶着した部分の上下方向の長さは1cm以上5cm以下であると好ましい。短すぎると十分に密封できない場合がある。一方で長すぎると無駄となってしまう。引き続いてカッター73a,73bが接近して交差し、上部熱溶着手段72a,72bにより形成される底密着部65になる部分と、下部熱溶着手段74a,74bにより形成される上密着部67になる部分との間を分離するように切断する。この状態を
図5(d)に示す。この間の長さ、すなわち上部熱溶着手段72a,72bの下端と下部熱溶着手段74a,74bの上端との間の長さは、1cm以上4cm以下であるとよい。短すぎると切断位置がこの間から外れやすい。一方、長すぎてもフィルム64の無駄となってしまう。
【0043】
カッター73a,73bにより切断されてパック79を分離した状態を
図5(e)に示す。パック79の上端は、下部熱溶着手段74a,74bにより密封された上密着部67である。パック79の下端は、同様の作業を一回前に行った段階で形成された底密着部65である。このパック79を収容部66から取り除いたり、収容部66の下方にまとめたりして、収容部66内の次に作業する場所を空ける。場所が空いたら、フィルム64をチューブセット62からほどいて下げるようにローラ71a,71bを回転させる。フィルム64の下部が収容部66にまで降りてきて、次の汚水Pの投下を待つ状態となる。この状態が
図5(f)となる。
【0044】
この発明にかかるトイレユニットの、パッケージ化が異なる第三の実施形態を、
図6を用いて説明する。初期状態を
図6(a)に示す。基本的な構成は
図3~5に示す実施形態と同様であるが、
図3に示す実施形態に比べて、熱溶着手段76a,76bが上下に分かれていない代わりに縦方向に長くなっている。熱溶着する部分の上下方向長さとしては、2cm以上10cm以下程度であると好ましい。短すぎると密封が十分ではなくなるおそれがあり、長すぎるとフィルム64の無駄となってしまう。また、カッター77a,77bは熱溶着手段76a,76bで熱溶着する箇所(密着部78)よりも下に設けられており、熱溶着後に移送手段によって下方にスクロールされた密着部78を切断できるように配されている。
【0045】
まず、汚水Pを投下した後に、熱溶着手段76a,76bが接近して、フィルム64が汚水Pが溜まっているよりも上部で密封された状態を
図6(b)に示す。フィルム64の密封された部位を密着部78とする。ここまでで便器12の使用一回分の汚水Pがフィルム64内にパッケージ化される。引き続いて、ローラ71a,71bが回転して、フィルム64を下げていき、密着部78の位置がカッター77a,77bによって切断される位置の中央付近になるようにする(
図6(c))。そこでカッター77a,77bを接近させて密着部78の中央付近をカットすると(
図6(d))、下には小分けに分離された汚水Pを含むパック79が密封されて残り、上には底密着部65となるように下端を閉じたフィルム64が残る(
図6(e))。パック79を取り除いた後、フィルム64を下げるようにローラ71a,71bを回転させて、次の汚水Pの投下を待つ状態にする(
図6(f)。
【0046】
この発明にかかるトイレユニットの、パッケージ化が異なるさらに別の第四の実施形態を、
図7を用いて説明する。初期状態を
図7(a)に示す。
図6(a)に示す実施形態から、カッター77a,77bを省いたものである。また、熱溶着手段76a,76bの長さは
図6の実施形態よりも小さくてよい。
【0047】
まず、汚水Pを投下した後に(
図7(b))、熱溶着手段76a,76bが接近して、フィルム64が汚水Pが溜まっているよりも上部で密封された状態を
図7(c)に示す。フィルム64の密封された部位を密着部78とする。ここまでで便器12の使用一回分の汚水Pがフィルム64内にパッケージ化される。引き続いて、ローラ71a,71bが回転して、フィルム64を下げていく(
図7(d))。
図6の実施形態と違って密着部78を切断しないので、次の汚水Pの投下を受け入れられるところまで下げていく。この状態を
図7(e)に示す。密封されたパック79は繋がったままであるが、収容部66に十分な容積を確保しておけば、そのまま運用し続けることができる。この状態からさらに同様にパッケージ化を繰り返して行った状態を
図7(f)に示す。
【0048】
この発明にかかるトイレユニットは、これらの機構の制御を行う制御装置45を有しているとよい。この
図3に示す実施形態を実行するトイレユニット全体を制御する機構のブロック図を
図8に示す。また、これを実行するフローチャート例を
図9に示す。初期状態では蓋35は閉鎖されており、吸込機構33は停止している。熱溶着手段72,74とカッター73は加熱されていない(S101)。便器12については、ノズル23から洗浄水を送出するポンプが制御装置45により制御される。便器12を使用した(S102)使用者が、洗浄の指示としてボタン42を押下する(S103)と、その押下した動作が電気信号として制御装置45に伝わる。これを受けた制御装置45はポンプを動作させる(S104・
図4(a))。ポンプが動作されて洗浄水が送出されて汚水Pが溜まったタイミングで、制御装置45は吸込機構33を動作させて汚水Pを吸引装置16に吸い込ませる(S105・
図4(b)(c))。汚水Pがまとめて一時タンク32に吸い込まれたら(S106・
図4(d))、制御装置45は吸込機構33を停止し、かつ蓋35を電気的に開放させる指示を出す(S107・
図4(e))。あるいは、前記閉鎖機構により自動的に蓋35を開放される。いずれにしても蓋35が開放されて、汚水Pはまとめてフィルム64内に落下する(
図5(a)(b))。いったん汚水Pを一時タンク32に吸い込みきってから落下させることで、残存量を最小限にし、臭いが残りにくくなる。なお、落下後は蓋35を閉鎖する(S108)。
【0049】
次に制御装置45は、上部熱溶着手段72a,72bと下部熱溶着手段74a,74bとを加熱させながら接近させて、熱溶着を行わせる(S111・
図5(c))。加熱はフィルムの種類にもよるが100℃程度であり、溶着させる部分のみ熱すればよいため、昇温は速やかに行うことができるので、制御装置45の指示とともに加熱開始すればよく、待機中は加熱しておく必要はない。続いて制御装置45はカッター73a,73bを交差させて、フィルム64を切断する(S112・
図5(d))。熱溶着と切断とはほぼ同時か、熱溶着の2~3秒後に行うとよい。特に、熱溶着とわずかにタイミングをずらす方が、確実に切断しやすくなるので好ましい。カッター73a,73bを加熱して切断する場合も、待機中は加熱しておく必要はなく、切断の直前のみ加熱すればよい。切断が終わったら制御装置45は、上部熱溶着手段72a,72b、カッター73a,73b、下部熱溶着手段74a,74bを互いに引き離すように動作させる(S113・
図5(e))。この段階では既に加熱を終了している。その後、制御装置45はローラ71a,71bを動作させて、フィルム64を降下させる(S114・
図5(f))。降下させるフィルム64の長さは、上密着部67で密封される段階でパック79の内容量が2~3リットル程度確保できる程度まで下げるとよい。
【0050】
なお、
図6に示す実施形態を用いる場合は、熱溶着手段76a,76bで熱溶着を行わせた後、ローラ71a,71bによるスクロールを行ってから、カッター77a,77bでの切断を行うとよい。それ以外は基本的に同様の手順で行うことができる。また、
図7に示す実施形態を用いる場合は、さらにカッター77a,77bでの切断を省くことになる。
【0051】
この発明にかかるトイレユニットを制御装置45で的確に制御して運用すると、ノズル23からの洗浄水の送出と、吸込機構33と蓋35の開閉、駆動機構70の動作に使用する電力を最小限に抑えることができ、例えばソーラーパネルによる発電とバッテリーに充電した電気程度で十分に動作することができ、商用電源が確保できない状況であっても運用可能である。また、商用電源を使用できる環境であっても、加熱や動作を行う時間が抑えられているため、省エネルギーでの運用が可能である。これにより、災害時や介護現場などでも、洗浄水が使える快適な便器の使用とともに、その使用により出る汚水Pを、パッケージ化された廃棄物である塊として処理することができ、衛生的にも、臭いの抑制としても、好適な環境を提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
11 トイレユニット
12 便器
13 パック装置
16 吸引装置
23 ノズル
25 排水管
31 吸込口
31a 下側の縁
31b 上側の縁
32 一時タンク
33 吸込機構
34 排出口
35 蓋
36 閉鎖機構
37 回動軸
41 開閉装置
42 ボタン
45 制御装置
48 吸引口
49 吸引管
50 接続口
51 モーター
52 固定ファン
53 可動ファン
54 回転軸
55 吸引室
56 排出口
60 天板
61 格納部
62 チューブセット
63 底面
64 フィルム
65 底密着部
66 収容部
67 上密着部
68 穴
69 穴
70 駆動機構
71a,71b ローラ
72a,72b 上部熱溶着手段
73a,73b カッター
74a,74b 下部熱溶着手段
76a,76b 熱溶着手段
77a,77b カッター
78 密着部
79 パック
P 汚水