(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】油水分離器ユニット
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20240129BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20240129BHJP
【FI】
C02F1/28 T
C02F1/20 A
(21)【出願番号】P 2022118444
(22)【出願日】2022-07-26
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 まり子
(72)【発明者】
【氏名】高牟禮 英治
(72)【発明者】
【氏名】小池 和史
(72)【発明者】
【氏名】竹前 昭宏
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130844(JP,A)
【文献】特開2012-130845(JP,A)
【文献】特開平08-117759(JP,A)
【文献】中国実用新案第2683631(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/20、28
B01J20/00-34
B01D19/00-04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に含まれる油を吸着することで該被処理水を浄化するように、処理槽容器内に、油を吸着する吸着材が充填された油水分離器ユニットであって、
前記処理槽容器が、軸心が上下方向に起立された自立状態にベース部の上に直接的又は介在物を介して設置されるように円筒体状に形成され、
処理槽容器を覆って保護するように、フレーム骨格構造を有しないで板状の部材によって構成されてベース部に支持された状態に配されるカバー部を備え、
前記ベース部の上に、操作部が自立した状態に設置され、
該操作部が、前記処理槽容器及び前記ベース部を覆う部材の一部となっており、
前記被処理水が圧縮空気から生じるドレン水であって、該ドレン水を含む前記圧縮空気が導入されて気液分離がなされる空間を形成するように設けられた気液分離チャンバーが、前記ベース部の上に前記介在物として設置され、前記気液分離チャンバーの上に、前記処理槽容器が設置され、
前記処理槽容器の上端閉塞部の上面中央部に、吊下げ用の被掛け部が設けられていることを特徴とする油水分離器ユニット。
【請求項2】
前記処理槽容器が、前処理槽と後処理槽とに上下に少なくとも2分割されて設けられていることを特徴とする
請求項1記載の油水分離器ユニット。
【請求項3】
前記カバー部の少なくとも一部が金属材に依らない再生可能材料によって設けられていることを特徴とする
請求項1又は2に記載の油水分離器ユニット。
【請求項4】
前記再生可能材料が段ボールであって、該段ボールによって構成された前記カバー部に、該カバー部が前記処理槽容器を収納するための収納箱を形成できるように、収納箱形成用の折り目が設けられていることを特徴とする
請求項3記載の油水分離器ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水に含まれる油を吸着することで該被処理水を浄化するように、処理槽容器内に、油を吸着する吸着材が充填された油水分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油水分離器としては、油吸着材が配置されるフィルタ用容器を構成する筒体の開口部側に規定された配置部には、筒体における他方の開口部から開口部に向かう第1の向きでの筒体内における板材の移動を規制する4つの移動規制用凸部が形成され、板材は、板面が筒体の筒長方向に対して直交するように筒体内に配置した状態で筒体に対して筒長方向に沿って移動させたときに各凸部に対する板材の当接を回避可能な当接回避用凹部が筒体における各凸部の形成位置に対応して4つ形成されると共に、各凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された凸部当接部がフィルタ用容器内の油吸着材によって各凸部に対して上記の第1の向きで押し付けられて第1の向きでの移動が規制された状態で配置部に配置されている(特許文献1参照)油水分離装置が、本出願人によって提案されている。
【0003】
また、被処理水の一例であるドレン水を発生させる圧縮空気除湿装置としては、そのドレン排出回路装置として、ドレン受け槽の底部に設けられたドレン出口に連通してドレン液を下方へ誘導して排出させるドレン排出流路と、ドレン排出流路を開閉させるドレン排出開閉弁と、ドレン受け槽の気体空間部とドレン排出流路の圧気体溜り部との間を連通して圧気体溜り部の圧気体を抜くように、気体空間部に一端口が配され、圧気体溜り部に他端口が配される圧気体抜き管路とを備え、ドレン排出流路のドレン排出開閉弁までの中途部であって、圧気体抜き管路の他端口よりもドレン排出開閉弁の側にドレン液を溜めることができるように、流路を拡大させる部位としてのドレンタンクが接続されている(特許文献2参照)ものが、本出願人によって提案されている。
【0004】
本発明に係る油水分離器は、一例として、圧縮空気除湿装置で発生して圧縮空気と共に圧送されるドレン水が、前記特許文献2のドレン排出回路装置を介し、被処理水として導入され、その被処理水に含まれる油を吸着して浄化する場合に、極めて有効に利用できる機器となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-255295号公報(第1頁)
【文献】特開2019-55347号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油水分離器ユニットに関して解決しようとする問題点は、ベース部の上方に設置された油水分離器を箱形のケーシングで覆う場合、ベース部の上に、箱体を形成するためのケーシングの骨格となる柱や梁を備えるフレーム骨格構造を構築し、そのフレーム骨格構造に、ケーシング板を装着する形態になっており、油水分離器としての十分な性能や構造強度などの仕様を含めた設置条件に対して、過剰な構成を備えていることにある。
【0007】
そこで本発明の目的は、ベース部の上に、箱体を形成するためのフレーム骨格構造(ケーシングの骨格となる柱や梁を備える構造)を設けることなく、油水分離器を効果的に覆うことができる油水分離器ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る油水分離器ユニットの一形態によれば、被処理水に含まれる油を吸着することで該被処理水を浄化するように、処理槽容器内に、油を吸着する吸着材が充填された油水分離器を備える油水分離器ユニットであって、前記処理槽容器が、軸心が上下方向に起立された自立状態にベース部の上に直接的又は介在物を介して設置されるように円筒体状に形成され、前記処理槽容器を覆って保護するように、フレーム骨格構造を有しないで板状の部材によって構成されて前記ベース部に支持された状態に配されるカバー部を備える。
【0009】
また、本発明に係る油水分離器ユニットの一形態によれば、前記ベース部の上に、操作部が自立した状態に設置され、該操作部が、前記処理槽容器及び前記ベース部を覆う部材の一部となっていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る油水分離器ユニットの一形態によれば、前記被処理水が圧縮空気から生じるドレン水であって、該ドレン水を含む前記圧縮空気が導入されて気液分離がなされる空間を形成するように設けられた気液分離チャンバーが、前記ベース部の上に前記介在物として設置され、前記気液分離チャンバーの上に、前記処理槽容器が設置されていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る油水分離器ユニットの一形態によれば、前記処理槽容器の上端閉塞部の上面中央部に、吊下げ用の被掛け部が設けられていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る油水分離器ユニットの一形態によれば、前記処理槽容器が、前処理槽と後処理槽とに上下に少なくとも2分割されて設けられていることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る油水分離器ユニットの一形態によれば、前記カバー部の少なくとも一部が金属材に依らない再生可能材料によって設けられていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る油水分離器ユニットの一形態によれば、前記再生可能材料が段ボールであって、該段ボールによって構成された前記カバー部に、該カバー部が前記処理槽容器を収納するための収納箱を形成できるように、収納箱形成用の折り目が設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る油水分離器ユニットによれば、ベース部の上に、フレーム骨格構造を設けることなく、油水分離器を効果的に覆うことができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る油水分離器の形態例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る油水分離器ユニットの形態例を斜視分解図である。
【
図3】
図2に示した形態例の組み立てられた状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る油水分離器の形態例を示す中央縦断面図である。
【
図6】本発明に係る油水分離器の処理槽容器の形態例を示す斜視分解図である。
【
図7】本発明に係る油水分離器の処理槽容器における充填された吸着材の押え板による保持に関する形態例を示す斜視図である。
【
図9】本発明に係る油水分離器における吸着材の配置に関する形態例を模式的に示す中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に関連する油水分離器の形態例を、添付図面(
図1~9)に基づいて詳細に説明する。なお、この形態例は、被処理水に含まれる油を吸着することでその被処理水を浄化するように、処理槽容器20内に、油を吸着する吸着材が充填された油水分離器になっている。
【0017】
本発明に係る油水分離器によれば、処理槽容器20が、軸心が上下方向(実質的に鉛直方向)に起立された自立状態にベース部の上に直接的に又は介在物を介して設置されるように円筒体状に形成されると共に下端部にシール用フランジ部21を備え、そのシール用フランジ部21には、処理槽容器20の下端を閉塞する下端閉塞部25(
図6参照)と、ベース部100の側に連結される設置用連結部77(
図1、2、4、5参照)とが設けられている。
【0018】
本形態例のシール用フランジ部21は、
図1、6などに示すように、円筒体状の処理槽容器20の下端部でドーナツ状に外側へ張り出した形態に固定されて設けられた下端フランジ24と、水密シールをするパッキン23と、円板状の下端閉塞部25と、ボルト・ナット・ワッシャーで構成される締結部材とを備える構成になっている。また、このシール用フランジ部21には、設置用連結部77として、本形態例では、後述する気液分離チャンバー70に連結するための連結孔26が設けられている。また、ベース部100(基部)は、処理槽容器20を支持するための土台となっており、
図1などに示すように、フォークリフトで運搬できるように、一対のフォーク爪用挿入穴101を備えている。
【0019】
そして、本発明に係る油水分離器によれば、
図4に示すように、処理槽容器20の下端部には、前記吸着材が充填されていないスペースとして設けられた被処理水導入部の空スペース41と、その被処理水導入部の空スペース41へ外側から連通されるように円筒体状の周側壁(前処理槽の周側壁20A)に設けられた処理槽の入口81(前処理槽の処理槽の入口81A)とを備える。
【0020】
この本発明に係る油水分離器によれば、処理槽容器20を、ベース部100の上方に安定的に載置し易く、剛性強度を確保できる形態とし、合理的且つ容易に設置でき、保守保全が容易にできるという特別有利な効果を奏する。すなわち、本発明では、円筒体状の形状とシール用フランジ部21の形状とによって、圧力容器の形態となっており、構造的な剛性強度を高めることができると共に、処理槽容器20を、ベース部100の上面或いは後述する気液分離チャンバー70の上端面(チャンバーの上端閉塞部78の上面)などの被設置側の上面に安定的に載置できる。本形態例について、さらに具体的には、シール用フランジ部21の下端閉塞部25を備える形状によって、その下端閉塞部25の下端面と、チャンバーの上端閉塞部78(
図5参照)の上面との面同士を、直に当接させて合せることで、気液分離チャンバー70の上に処理槽容器20を安定的に載置できる。そして、被処理水導入用の流路を、周側壁(前処理槽の周側壁20A)に設けられた処理槽の入口81において外側から内側へ連通するように容易に接続できるため、合理的且つ容易に設置することができる。
【0021】
また、本形態例において、気液分離チャンバー70から処理槽容器20内へ導入される被処理水は、被処理水導入部の空スペース41内で実質的に偏ることなく自由に移動可能な状態となる。このため、空スペース41内に導入された被処理水は、円筒状の処理槽容器20内で偏りなく充満することとなり、処理槽容器20をベース部100の上面或いは気液分離チャンバー70の上端面などの被設置側の上面に安定的に載置できる。しかも、被処理水は、処理槽容器20の下面に露出する状態の吸着材の全面に対して実質的にバランスよく接触する状態に流れることができ、充填された吸着材の全体により均等に油分が吸着されることになり、吸着材のフィルタとしての油吸着量を増大させて寿命を延長できるように、効率的に浄化されることになる。
さらに、円筒体状の周側壁の外側に、処理槽の入口81からの接続部を設けたことで、内部に構造物がないため、保守保全の際に分解洗浄を容易に行うことができる。
【0022】
また、本形態例では、処理槽容器20の上端部に前記吸着材が充填されていないスペースとして設けられた処理水出口部の空スペース44(
図4参照)と、その処理水出口部の空スペース44から外側へ連通されるように設けられた処理槽の出口82とを備え、処理槽容器20の上端閉塞部27の上面中央部に、吊下げ用の被掛け部95が設けられている。なお、本形態例では、吊下げ用の被掛け部95が、後処理槽(B)の上端面を構成する後処理槽の上端閉塞部27Bの上面中央部に設けられ、処理槽容器20の軸心の延長線上に位置している。
【0023】
なお、
図1などに示すように、本形態例の吊下げ用の被掛け部95は、アイボルトであり、処理槽容器の上端閉塞部27の上面中央部に溶接された断面がコの字状のチャンネル鋼材に固定されたナットに螺合した状態で配されている。これによれば、吊下げ用の被掛け部95を、処理槽容器20の重心の上に配置することができ、本発明に係る油水分離器を、フックでバランスよく吊り上げて移動・運搬できる。
【0024】
また、本形態例の処理槽の出口82は、処理水出口部の空スペース44から外側へ連通されるように円筒体状の周側壁(後処理槽の周側壁20B)に設けられているため、吊下げ用の被掛け部95に邪魔されることなく、その処理槽の出口82に連通される排水管などの流路配管を適宜に接続できる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、処理水出口部の空スペース44に連通する部位であれば、上端閉塞部27(後処理槽の上端閉塞部27B)であっても、吊下げ用の被掛け部95が実質的に邪魔をしない部分に、貫通孔を穿設して処理槽の出口82を配置してもよいのは勿論である。吸着材を通過して浄化処理された処理水は、処理水出口部の空スペース44内で、通水抵抗が低くなって実質的に偏ることなく自由に移動可能な状態となる。このため、この処理水出口部の空スペース44に処理槽の出口82が連通していれば、その処理水は、吸着材の全体をより均等に通過して浄化され、通水抵抗が小さい状態で、適切に排出されることになる。なお、本形態例では、
図6に示すように、処理槽容器20の周側壁上端の2箇所に外方へ張り出した形状に設けられたブラケット部28に、連結孔29が設けられており、複数段に処理槽を連結可能な形態になっている。
【0025】
また、本形態例の油水分離器では、前記被処理水が圧縮空気から生じるドレン水であって、そのドレン水を含む前記圧縮空気が導入されて気液分離がなされる空間を形成するように設けられた気液分離チャンバー70が、ベース部100の上に前記介在物として設置され、その気液分離チャンバー70の上に、処理槽容器20が設置されている。なお、この本形態例の気液分離チャンバー70は、処理槽容器20と同様に円筒体状に形成されており、内部圧力に対して構造的に強い圧力容器の形態となっている。
【0026】
これによれば、圧縮空気除湿装置のドレン部からの導入される圧縮空気とドレン水と処理できる油水分離器を、合理的に構成できる。すなわち、大気圧よりも高い圧力の圧縮空気が導入される状態の油水分離器において、水より比重の軽い浮上する方向へ分離し易い油を、処理槽の水平断面の全面で吸着材によってより均等に捕捉・吸着するように、被処理水を下から上へ流して油分を吸着する本形態例の方式が、合理的に適用できる。そして、本形態例は、気液分離チャンバー70の上に処理槽容器20が設置される形態であるため、設置床面積を最小化できるように、全体形状として縦長に自立した形態に合理的に配置することができる。なお、圧縮空気の圧力は、大気圧よりも高く、例えば、2気圧から10気圧程度の範囲の中で所要の圧力に設定することができる。
【0027】
また、本形態例では、
図1、2などに示すように、気液分離チャンバー70のベース部100への固定形態として、据付用固定部75が、3箇所(角度が120度の円周等分位置)に設けられている。これによれば、据付用固定部75の数を最小化でき、据え付け作業が容易になる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、据付用固定部75の数を4箇所以上に設けても良いのは勿論である。
【0028】
本形態例による据付用固定部75の具体的な構成例としては、気液分離チャンバー70の周側壁下端の3箇所に外方へ張り出した形状に設けられたチャンバー下端のブラケット部74に、チャンバー固定孔74aが設けられ、ボルト・ナット・ワッシャーで構成される固定手段74bによって、気液分離チャンバー70がベース部100に固定される形態になっている。
【0029】
また、本形態例では、
図1、5などに示すように、気液分離チャンバー70と処理槽容器20との連結形態として、設置用連結部77が、2箇所(角度が180度の反対位置)に設けられている。これによれば、設置用連結部77の数を最小化でき、設置作業が容易になる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、設置用連結部77の数を3箇所以上に設けても良いのは勿論である。
【0030】
本形態例による設置用連結部77の具体的な構成例としては、気液分離チャンバー70の周側壁上端の2箇所に外方へ張り出した形状に設けられたチャンバー上端のブラケット部76に、チャンバー連結孔76aが設けられる共に、処理槽容器20(前処理槽(A))のシール用フランジ部21(前処理槽下端のシール用フランジ部21A)の2箇所(角度が180度の反対位置)に、連結孔26(前処理槽下端の連結孔26A)が設けられ、ボルト・ナット・ワッシャーで構成される締結部材によって、処理槽容器20が気液分離チャンバー70に連結される形態になっている。
【0031】
そして、本形態例に係る被処理水の流路の気液分離チャンバー70から処理槽容器20へ接続は、
図4などに示すように、チャンバーの出口73を構成するように取り付けられた管継手と、処理槽の入口81を構成するように取り付けられた管継手と、その両管継手の間に接続される連結チューブ80aとによって構成される被処理水供給用の連通管状部80によってなされている。この流路の接続作業は、管継手と管との接続であり、気液分離チャンバー70や処理槽容器20の外側で接続するため、容易に行うことができる。なお、連結チューブ80aを透明とすることで、被処理水の流れ状態や水抜き状態などを適切に確認できる。
【0032】
なお、気液分離チャンバー70は、チャンバーの入口72から被処理水を含む前記圧縮空気が導入され、気液を分離することで重力の作用によって、その内部の上側が気相部72aとなり、被処理水が降下し、その内部の下側が、被処理液が滞留する液相部(ドレン水滞留スペース73a)となる。このため、本形態例では、被処理水を含む前記圧縮空気が導入されるチャンバーの入口72が、チャンバーの周側壁71の上部側に設けられ、被処理水が排出されるチャンバーの出口73が、チャンバーの周側壁71の下部側(底側)に設けられている。また、本形態例では、チャンバーの上端閉塞部78が気液分離チャンバー70の天板を構成しており、チャンバーの下端閉塞部79が気液分離チャンバー70の底板を構成している。
【0033】
また、本形態例では、処理槽容器20が、前処理槽(A)と後処理槽(B)とに上下に少なくとも2分割されて設けられ、前処理槽(A)と後処理槽(B)の各々の下端部にシール用フランジ部21A、21Bを備えている。より具体的には、
図5、6などに示すように、前処理槽下端のシール用フランジ部21Aは、前処理槽の周側壁20Aの下端部でドーナツ状に外側へ張り出した形態に固定されて設けられた前処理槽の下端フランジ24Aと、水密シールをする前処理槽のパッキン23Aと、前処理槽の下端閉塞部25Aと、設置用連結部77の一部として前処理槽下端の連結孔26Aとを備える構成になっている。また、後処理槽下端のシール用フランジ部21Bは、後処理槽の周側壁20Bの下端部でドーナツ状に外側へ張り出した形態に固定されて設けられた後処理槽の下端フランジ24Bと、水密シールをする後処理槽のパッキン23Bと、後処理槽の下端閉塞部25Bと、前後槽連結部35の一部として後処理槽下端の連結孔26Bとを備える構成になっている。これによれば、処理槽容器20が分割されるため、保守保全が行い易くなると共に、フランジ形状によって構造強度及び剛性を高めることができ、全体形状の自立性を高めることができる。なお、シール用フランジ部21A、21Bは、後述するように吸着寿命を迎えた処理槽容器20を再生工場に返送し、吸着材を詰め替える際に分解するため、ユーザに於いては分解できない組立構造(一例として特殊ネジ)になっているとよい。
【0034】
また、
図2に示す本形態例では、ベース部100の上に操作部200が自立した状態に設置されているように構成できる。さらに、ベース部100の上に複数の処理槽容器20が自立した状態に設置されているように構成できる。これによれば、装置ユニットのバリエーションを多くすることができる。
なお、前処理槽(A)に係る特定箇所、部材には符号Aを付し、後処理槽(B)に係る特定箇所、部材には符号Bを付す。例えば、前処理槽(A)に係るシール用フランジ部は21A、パッキンは23A、下端フランジは24A、下端閉塞部は25A、連結孔は26Aであり、後処理槽(B)に係るシール用フランジ部は21B、パッキンは23B、下端フランジは24B、下端閉塞部は25B、連結孔は26Bである。
【0035】
次に、本発明に係る油水分離器ユニットの形態例を、添付図面(
図2、3など)に基づいて詳細に説明する。なお、この油水分離器ユニットは、被処理水に含まれる油を吸着することでその被処理水を浄化するように、処理槽容器20内に、油を吸着する吸着材が充填された油水分離器を備える油水分離器ユニットになっている。
【0036】
本発明に係る油水分離器によれば、処理槽容器20が、軸心が上下方向(実質的に鉛直方向)に起立された自立状態にベース部100の上に直接的又は介在物を介して設置されるように円筒体状に形成されている。なお、本形態例では、処理槽容器20の下端部にシール用フランジ部21を備え、そのシール用フランジ部21には、処理槽容器20の下端を閉塞する下端閉塞部25と、ベース部100の側に連結される設置用連結部77とが設けられている。
【0037】
そして、本発明に係る油水分離器ユニットによれば、処理槽容器20を覆って保護するように、フレーム骨格構造を有しないで板状の部材によって構成されてベース部100に支持された状態に配されるカバー部90を備えている。また、本形態例では、
図2、3に示すように、ベース部100の上に、操作部200が自立した状態に設置され、その操作部200が、処理槽容器20及びベース部100を覆う部材の一部となっている。すなわち、本形態例では、ベース部の上に箱体を強固に形成するためのフレーム骨格構造(ケーシングの骨格となる柱や梁を備える構造)がなく、カバー部90を構成する部材として、上板91、背板92、左右の側板93、93があり、前面を覆う部位としての操作盤或いは配電盤などの操作部200が配置された形態となっている。なお、本形態例のような操作部200が配されていない形態においては、前面についても、カバー部90の一部として、上板91、背板92及び左右の側板93、93と同様の板状の部材によって構成できるのは勿論である。
【0038】
本発明に係る油水分離器ユニットによれば、ベース部100の上に箱体を形成するためのフレーム骨格構造を設けることなく、板状の部材によって構成されたカバー部90が、油水分離器を効果的に覆うことができるという特別有利な効果を奏する。すなわち、この油水分離器ユニットによれば、ユニットとしての構造を簡略化することができることで、重量の低減や製造コストの低減を図ることができ、油水分離器としての十分な性能や構造強度などの仕様を含めた設置条件について、適切に過不足なく満足できると共に、過剰な構成を備えること回避できる構造となっている。
【0039】
また、本形態例では、操作部200を、カバー部90の前面を構成する部材として兼用したことで、その前面の部分のケーシング板材などを設ける必要がなく、カバー部90の構成を簡易化して製造コストを低減することができる。なお、本発明はこの構成に限定されるものではなく、操作部200を本形態例のように設けないで、カバー部90の一部である前面についても、上板91、背板92や左右の側板93を構成するようなケーシング板材によって板状に構成してもよい。
【0040】
このようにカバー部90を構成できる理由としては、先ず、本発明に係る処理槽容器20の形態が、円筒体状に形成されていることで、処理槽容器20自体の耐圧力強度や剛性強度などの形態強度が圧力容器として十分に高く、自立した状態で適切に設置でき、周囲を強固に保護するケーシングの必要性がないことによる。
【0041】
また、このカバー部90を構成できる他の理由としては、本発明に係る処理槽容器20が、前述のように形態強度が十分に高く、運搬の際にも前述したようにアイボルトなどの吊下げ用の被掛け部95を上端部に直に設け、直接的に吊り上げることができる。このため、強固なフレーム骨格構造を設け、そのフレーム骨格構造にアイボルトなどの被掛け部を装着して吊り上げて移動・運搬することは、不要であることにもよる。
【0042】
本形態例では、前述したように、処理槽容器の上端閉塞部27の上面中央部に、吊下げ用の被掛け部95が設けられている。すなわち、
図1~3に示すように、本形態例の吊下げ用の被掛け部95は、アイボルトであり、フックを掛けてバランスよく吊り上げて移動・運搬できる。このため、フレーム骨格構造を必要とせず、重量の低減(軽量化)や製造コストの低減を図ることができる。なお、本形態例では、カバー部90を構成する上板91の中央部に貫通孔91aが設けられており、その貫通孔91aにアイボルトの螺子部が上側から挿入され、処理槽容器の上端閉塞部27の上面中央部に固着されたチャンネル鋼材に固定されたナットに螺合しており、アイボルトの被掛け部が上面に露出した形態になっている。
【0043】
さらに、このカバー部90を構成できる他の理由としては、本発明に係る油水分離器には、動力装置が装備されていないため、激しい振動が伝達されることがなく、高温になることもない。このため、カバー部90の強度を高める必要はなく、強固なフレーム骨格構造を要しないことにもよる。
【0044】
また、本形態例によれば、上板91、背板92、左右の側板93によって囲まれた4面が、フレーム骨格構造を有しないため、そのフレーム骨格構造を構成する部材に邪魔されることなく、広く開くことができ、保守保全をする際などのオープンスペースをより適切に設けることができる。
【0045】
また、本発明に係る油水分離器ユニットの形態例としては、カバー部90の少なくとも一部が金属材に依らない再生可能材料によって設けられていてもよい。これによれば、油水分離器ユニット(製品)の軽量化などによるリデュース、再生可能材料によるリユースやリサイクルによって、3Rを好適に実現でき、環境負荷低減に寄与できる。そして、再生可能材料の具体例としては、段ボールとすることができる。この段ボールによるカバー部90によれば、断熱性が高く、吸水性や吸油性も高いため、簡易な構成となるが、冬季の凍結防止などのための保温効果に優れるケーシングを構成できるなど、利点がある。
【0046】
また、本発明に係る油水分離器ユニットの形態例としては、前記再生可能材料が段ボールであって、該段ボールによって構成されたカバー部90に、そのカバー部90が処理槽容器20を収納するための収納箱を形成できるように、収納箱形成用の折り目が設けられていることを特徴とすることができる。これによれば、油水分離器ユニットを保守保全する際に、カバー部90を、処理槽容器20を輸送する際の梱包材として利用することができ、リユースやリサイクルを好適に行うことができる。なお、本形態例では、処理槽容器20を構成する部材も、リユースやリサイクルを行うことができる再生可能材によって構成されている。
さらに具体的には、吸着寿命が近づくと保守保全担当者は新しい処理槽容器20を手配し、吸着寿命を迎えた処理槽容器20と交換する。新しい処理槽容器20は再生可能材料のみで構成されているため、再生工場において他のユーザで使用されていた物をリユースし新しい吸着材に詰め替えられて、新しいカバー部90に収納されて送られてくる。そして、新しい処理槽容器20と新しいカバー部90に交換されて、吸着寿命を迎えた(古い)処理槽容器20は交換前の(古い)カバー部90に収納されて再生工場に返送される。この時、吸着寿命を迎えた処理槽容器20の吸着材類はサーマルリサイクルされ、押え板(板金)45、固定金具49はリユースされる。また、一例とした(古い)カバー部90は再生可能部材である段ボールのため、再生業者に引きとられリサイクルされる。このように、再生可能部材を使用し環境負荷を低減させることができる。
【0047】
次に、本発明に関連する油水分離器の形態例を、添付図面(
図4、5など)に基づいて詳細に説明する。なお、この形態例は、被処理水に含まれる油を吸着することでその被処理水を浄化するように、前記被処理水が下から上へ通過する筒体状の処理槽を形成するように設けられた処理槽容器20内に、油を吸着する吸着材が充填された油水分離器になっている。
【0048】
本発明に係る油水分離器によれば、処理槽容器20が、前処理槽(A)と下端が閉塞された後処理槽(B)との二つ以上に分割されて設けられていると共に、起立して柱状となるように、前処理槽(A)の上に後処理槽(B)が重ねられて設置されるように設けられている。
すなわち、本形態例では、下側の部位である前処理槽(A)と上側の部位である後処理槽(B)との二つに分割されており、被処理水の液面が下から上へ上昇して満杯となるように、圧力が作用する構造になっている。なお、本形態例では、処理槽容器20が前処理槽(A)と後処理槽(B)との二つに分割されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、三つ以上に分割した形態としてもよい。
【0049】
そして、本発明に係る油水分離器によれば、
図4に示すように、前処理槽(A)の上端部に前記吸着材が充填されていないスペースとして設けられた上流側の空スペース42と、その上流側の空スペース42から外側へ連通されるように前処理槽の周側壁20Aに設けられた前処理槽の出口82Aと、後処理槽(B)の下端部に前記吸着材が充填されていないスペースとして設けられた下流側の空スペース43と、その下流側の空スペース43へ外側から連通されるように後処理槽の周側壁20Bに設けられた後処理槽の入口81Bと、上流側の空スペース42と下流側の空スペース43とを連通させるように、前処理槽の出口82Aと後処理槽の入口81Bとを接続して連通させる連通管状部83とを備えている。
【0050】
なお、本形態例の連通管状部83は、上流側の空スペース42に連通する前処理槽の出口82Aの延長部を構成する上流側管継手と、下流側の空スペース43に連通する後処理槽の入口81Bの延長部を構成する下流側管継手と、前記上流側管継手と前記下流側管継手と間で連結される連結チューブ83aとによって構成され、上流側の空スペース42と下流側の空スペース43とを連通する被処理水の流路を形成している。この流路の接続作業は、管継手と管との接続であり、処理槽容器20の外側で接続されるため、容易に行うことができる。なお、本形態例の前処理槽の出口82A及び後処理槽の入口81Bは、処理槽の周側壁20A、20Bに貫通孔(開口)が穿設され、その開口に連通する接続口が設けられ、その接続口にそれぞれの管継手が装着されることで構成されている。また、連結チューブ83aを透明とすることで、被処理水の流れ状態や水抜き状態などを適切に確認できる。
【0051】
本発明に係る油水分離器によれば、処理槽容器20を、二つ以上に分割できる合理的な形態とすることができ、保守保全をする際に、分解や組み立て作業を容易にすることができるという特別有利な効果を奏する。すなわち、処理槽容器20内に供給された被処理水を抜いて、処理槽容器20(前処理槽(A)及び/又は後処理槽(B))の交換などのメンテナンス(保守保全)を行う場合、前記二つの処理槽を二つに分ける作業で被処理水が洩れてしまうことを防止できると共に、現場での組み立て作業(設置作業)における被処理水の流路の連通作業が、管継手と管との接続などによる処理槽容器20の外側で行うものとなり、極めて容易に行うことができ、それらの作業性を格段に改善することができる。具体的な作業としては、例えば、保守保全時に前処理槽の出口82A及び後処理槽の入口81Bの管継手から連結チューブ83aを脱着するが、夫々の管継手に連結チューブ83aと同一外径のいわゆるプラグをすることにより、前処理槽(A)、後処理槽(B)は夫々気密状態になり被処理水の漏れ防止が可能となる。また、閉止弁機構を有した管継手を採用することにより連結チューブ83aを脱着すると同時に前処理槽(A)、後処理槽(B)を夫々気密状態にすることも可能である。
また、前処理槽(A)の上に後処理槽(B)が重ねられて設置されることにより、省スペース化を図ることができると共に、並列設置した場合と異なり引き回しの配管がないため、保守保全時の水抜きの際に無駄なく排水できる。
さらに、上流側の空スペース42、下流側の空スペース43、前処理槽の出口82A、及び後処理槽の入口81Bを構成することによって、被処理水(ドレン水)が前処理槽(A)の下部より上方にドレン水 (液体)のみが通水されて油水分離される構成であるが、仮に微細な気体部分が入りこんだ場合でも空きスペース42の上部に気相が生じるように気体が溜り、後処理槽(B)には気体部分が入り込まない。これによれば、気体が吸着材に接するように入り込むことを阻止する一つの手段とすることができ、気体が吸着材の微細孔を塞ぐため吸着効果を阻害する現象を防止できる。
また、空きスペース42の上部で気相を溜めきれずに連結チューブ83aを経由し後処理槽(B)に入り込みかけた場合は、その連結チューブ83aで気泡を目視し保全対応できるという効果がある。
【0052】
また、前処理槽(A)と後処理槽(B)の二つに分割されているため、処理槽容器20として一体化された状態と比べて、それぞれの重量は実質的に半分であり、作業者が一人でも保守保全作業が可能な重量にすることができる。例えば、前処理槽(A)と後処理槽(B)の保守保全の作業において、気液分離チャンバー70に対する圧縮空気の導入を止め、大気開放すると、前処理槽(A)及び後処理槽(B)の被処理水が、気液分離チャンバー70に落下して、その気液分離チャンバー70内に貯留されることになる。これによれば、前処理槽(A)及び後処理槽(B)から、吸着材に含まれた状態で残留する被処理水を除いて、半分程度の被処理水が、連通管状部83及び被処理水供給用の連通管状部80を介して、気液分離チャンバー70内に落ちることになり、前処理槽(A)及び後処理槽(B)の重量は軽くなる。具体的には、例えば、この処理槽容器20の大きさが、直径30cmで高さが120cmに設定されている場合、前処理槽(A)と後処理槽(B)とは高さがそれぞれ60cmとなり、前処理槽(A)と後処理槽(B)のそれぞれの重量が、残留する被処理水の重量を含めて30kg程度になるため、一人の作業者によっても、分解や運搬の作業を適正に行うことが可能な重量となる。なお、20cは把持部(
図4、7参照)であり、作業を行う際に把持できる部分になっている。
【0053】
また、本形態例では、
図4に示すように、気液分離チャンバー70の下端側の部位であって前記被処理水であるドレン水が溜まるドレン水滞留スペース73aと、そのドレン水滞留スペース73aから外側へ連通されるようにチャンバーの周側壁71に設けられたチャンバーの出口73と、下端が閉塞された前処理槽(A)の下部に前記吸着材が充填されていないスペースとして設けられた被処理水導入部の空スペース41と、その被処理水導入部の空スペース41へ外側から連通されるように前処理槽の周側壁20Aに設けられた前処理槽の入口81Aと、ドレン水滞留スペース73aと被処理水導入部の空スペース41とを連通させるように、チャンバーの出口73と前処理槽の入口81Aとを接続して連通させる被処理水供給用の連通管状部80とを備える。
【0054】
これによっても、処理槽容器20の交換などの保守保全を行う場合、気液分離チャンバー70から処理槽容器20を取り外す作業で被処理水が流れ出してしまうことを防止できると共に、現場での組み立て作業(設置作業)において被処理水の流路の連通作業が例えば管継手と管との接続で極めて容易に行うことができ、それらの作業性を格段に改善することができる。具体的な作業としては、例えば、保守保全時にチャンバーの出口73、前処理槽の入口81Aの管継手から連結チューブ80aを脱着するが、夫々の管継手に連結チューブ80aと同一外径のいわゆるプラグをすることにより、気液分離チャンバー70、前処理槽(A)は夫々気密状態になり被処理水の漏れ防止が可能となる。また、閉止弁機構を有した管継手を採用することにより連結チューブ80aを脱着すると同時に気液分離チャンバー70、前処理槽(A)を夫々気密状態にすることも可能である。
【0055】
また、本形態例では、
図1、4などに示すように、前処理槽(A)における前処理槽の上端閉塞部27Aによって構成された上端面に、後処理槽下端のシール用フランジ部21Bにおける後処理槽の下端閉塞部25Bによって構成された下端面が、直に面同士で当接して載置されるため、安定的に設置することができる。そして、前処理槽(A)と後処理槽(B)とが、2箇所(角度が180度の反対位置)の前後槽連結部35によって連結されている。これによれば、前後槽連結部35の数を最小化でき、設置作業が容易になる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、前後槽連結部35の数を3箇所以上に設けても良いのは勿論である。
【0056】
本形態例による前後槽連結部35の具体的な構成例としては、
図5に示すように、前処理槽(A)の周側壁上端の2箇所(角度が180度の反対位置)に外方へ張り出した形状に設けられた前処理槽上端のブラケット部28Aに、前処理槽上端の連結孔29Aが設けられる共に、後処理槽(B)のシール用フランジ部21Bの2箇所(角度が180度の反対位置)に、連結孔26(後処理槽下端の連結孔26B)が設けられ、ボルト・ナット・ワッシャーで構成される締結部材によって、後処理槽(B)が前処理槽(A)に連結される形態になっている。このため、吸着材を詰め替えるためにシール用フランジ部21Aや21B自体を分解するときとは異なり、前処理槽(A)と後処理槽(B)の連結についてはユーザに於いて容易に連結又は分解できる構成となっている。
【0057】
また、本形態例では、処理水の出口である処理槽の出口82(後処理槽の出口82B)が、後処理槽(B)の上部に前記吸着材が充填されていないスペースとして設けられた処理水出口部の空スペース44に、外側へ接続して連通させるように、後処理槽の周側壁20Bの上端部に設けられている。これによれば、前述したように、吊下げ用の被掛け部95などの処理槽容器20の上端部に設けられるものに対して邪魔にならない部位に、処理槽の出口82(後処理槽の出口82B)を好適に配置することができる。そして、本形態例では、後処理槽(B)の周側壁上端の2箇所に外方へ張り出した形状に設けられた後処理槽上端のブラケット部28Bに、後処理槽上端の連結孔29Bが設けられており、さらに多段に処理槽を連結可能な形態になっている。
【0058】
次に、本発明に関連する油水分離器の形態例を、添付図面(
図7、8など)に基づいて詳細に説明する。なお、この形態例は、被処理水に含まれる油を吸着することでその被処理水を浄化するように、筒体状の処理槽容器内に、油を吸着する圧縮性のある吸着材が少なくとも一部に充填された油水分離器になっている。
なお、
図7、
図8は、処理槽容器20(20A、20B)の下端を上方に、上端を下方に配置した場合の斜視図であり、
図1~
図6の上下関係とは逆方向で見た状態を図示している。
【0059】
本発明に係る油水分離器によれば、前記処理槽容器内で、前記吸着材が圧縮されて保持されるように押え込む部材であって、剛性を有すると共に通液性を有する押え板を備える。本形態例の押え板は、ステンレススチールなどの金属板材で形成され、多数の貫通孔を板面に分散させた形態(有孔板)に設けることで、通液性を有する形態に設けられている。なお、本発明に係る押え板は、これに限定されるものではなく、耐油性や剛性強度などを十分に備えるものであれば、樹脂材で形成してもよいし、材質をハイブリッド化して構成してもよく、単なる平板状に限らず、リング状の補強構造を設けるなど形状的に剛性を高める形態としてもよいのは勿論である。
【0060】
そして、本発明に係る油水分離器によれば、押え板45が圧縮された前記吸着材の反発力に抗して所要の位置で保持されるように、処理槽容器20を形成する周側壁の少なくとも3箇所に透孔状に設けられた差し込み口46と、その差し込み口46の各々で処理槽容器20内へ差し込まれて押え板45を保持する差し込み保持材47とを備える。すなわち、差し込み口46と差し込み保持材47は、押え板45を挟んで吸着材とは上下方向で反対側に位置している。このため、吸着材の反発力を、差し込み口46に差し込まれた差し込み保持材47によって、押え板45を介して適切に受け止めることができる。なお、形態例では、
図8に示すように、差し込み口46を4箇所に設けた形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、5箇所以上に設けてもよいのは勿論であり、数を増やすことで、製造コストや作業性の面でデメリットはあるが、保持性能をより向上できるメリットがある。
【0061】
本発明に係る油水分離器によれば、処理槽容器20内に、油を吸着する吸着材を、合理的且つ容易に充填することができるという特別有利な効果を奏する。すなわち、本発明に係る油水分離器では、従来の特許文献1に示すような処理槽容器の内面に固定された移動規制用凸部がないため、吸着材をスムースに充填でき、吸着材の充填工程の作業性を向上できる。また、吸着材を交換するメンテナンス時にも、使用済みの吸着材の取り出し作業や新しい吸着材の充填作業(詰め替えの作業)を容易に行うことができる。
【0062】
また、本発明に係る油水分離器によれば、前述のように処理槽容器20の内面に凸部がなく滑らかな内周面になっているため、吸着材を、押え板45を介して圧縮させて充填する作業において、押え板45を押し込むために、エアシリンダ装置などの機械装置を利用し易い構造になっている。すなわち、吸着材を圧縮状態に詰め込む作業の機械化を容易に実現できる利点がある。
【0063】
また、本形態例では、前記吸着材の少なくとも一部が、繊維による油吸着材になっている。繊維による油吸着材は、例えば後述するような合成樹脂繊維で構成された不織布状や綿状などの油吸着材であって、圧縮性があり、圧縮された場合に反発力が生じるものである。なお、この繊維による油吸着材は、使用によって反発力が低下するため、製造段階では十分な量を十分に強く圧縮して押え付ける必要があり、前述のようにエアシリンダ装置などを利用する機械化によって充填作業を行うとよい。
【0064】
また、本形態例では、処理槽容器20が円筒体状に設けられ、押え板45が処理槽容器20の内部に同心状に内嵌されるように実質的に円形状に設けられている。すなわち、本形態例では、処理槽容器20の周側壁が円筒であり、その円筒の軸心に直交する面として配される円板の押え板45が、その円板の外周が、処理槽容器20の円筒の内周に小さなクリアランスで内嵌めされるように構成されている。これによれば、吸着材が押え板45によって押し込まれた状態に充填される処理槽容器20を備える油水分離器について、その対称性が高くなり、圧力容器としての構造強度を得られ易く、製造し易い形態とすることができる。
【0065】
また、本形態例では、
図7、8などに示すように、処理槽容器20内に、前記吸着材が充填されない空スペースを設けるように、差し込み口46が、周側壁(前処理槽の周側壁20Aや後処理槽の周側壁20B)における筒体端縁から実質的に平行に所要の間隔をおいた円周部位について円周等分位置に設けられている。これによれば、押え板45を、傾いたり離脱したりしないように、より均等且つ確実に保持できることになり、構造的な信頼性をより向上できる。
【0066】
また、本形態例では、処理槽容器20が、前処理槽(A)と後処理槽(B)とに上下に少なくとも2分割されて設けられており、その前処理槽(A)内と後処理槽(B)内において、押え板45が吸着材の充填状態を保持するように配されている。そして、
図4に示すように、前処理槽(A)の下端部の空スペースである被処理水導入部の空スペース41が設けられるように、前処理槽(A)の下端部に押え板45とその押え板45の下方に下端閉塞部25Aが配置され、後処理槽(B)の下端部の空スペースである下流側の空スペース43が設けられるように、後処理槽Bの下端部に押え板45とその押え板45の下方に下部閉塞部25Bが配置されている。
【0067】
さらに、本形態例では、差し込み保持材47がボルトであり、差し込み口46に、前記ボルトが螺合するナット48が固定されている。より具体的な例としては、ナット48が、周側壁(前処理槽の周側壁20Aや後処理槽の周側壁20B)に設けられた差し込み口46に溶接などによって液密シール状態に固定され、ボルト(差し込み保持材47)としては、ナット48との間でパッキンによって液密シールできるシールボルトを用いることができる。これによれば、簡易な構成で、差し込み口46と差し込み保持材47の機能を備えることができる。なお、本発明の差し込み保持材47としては、前述のようなボルトに限定されるものではなく、ピン状の形態でO-リングなどでシールできるものなど、外側から差し込むことができる他の形態のものを利用できるのは勿論である。
【0068】
また、本形態例では、
図4に示すように、前処理槽(A)の上端部の空スペースとしての上流側の空スペース42と、後処理槽(B)の上端部の空スペースとしての処理水出口部の空スペース44は、夫々が、前処理槽の上端閉塞部27A、後処理槽の上端閉塞部27Bによって構成されている容器の上蓋と、容器内上部に配される押え板45と、前記容器の上蓋と押え板45との間に介在されて該容器の上蓋の内面から所要の間隔を空ける状態に空スペースを設けることができるように押え板45の変位(移動)を阻止(規制)するスペーサーとして配された固定金具49とによって設けられている。なお、本形態例の固定金具49は、容器の蓋(前処理槽の上端閉塞部27Aや後処理槽の上端閉塞部27B)の内側に固着されて一体化されており、吸着材の充填作業において変位しないように配されている。
【0069】
次に、本発明に係る具体的な吸着材の充填作業の工程例について説明する。
図8などに示すように、シール用フランジ部21(
図6参照)の下端フランジ24を上にして、開口が上方へ開いた状態に置き、処理槽上層の空スペース(上流側の空スペース42や処理水出口部の空スペース44)を確保するため、固定金具49(
図4参照)に受けられるように押え板45を入れて置く。次に、吸着材(少なくとも一部の吸着材層として圧縮性のある吸着材を含むもの)を処理槽容器20の吸着材充填部(F)に入れ、その吸着材を、エアシリンダ装置(図示せず)で押え板45を介して押し込むことで吸着材充填部(F)に充填し、押え板45の上面の位置(
図8に示す充填工程において上側に位置する面の位置)が差し込み口46よりも若干下側となるように変位(移動)するまで押え付ける。そして、吸着材を押え板45ごと押え付けた状態で、差し込み保持材47であるシールボルトを、差し込み口46のナット48にねじ込み、その先端側の部分が、押え板45の前記上面に当接して保持できるようにする。本形態例では、4箇所の差し込み口46について同様に、差し込み保持材47(シールボルト)を固着する。その後で、エアシリンダ装置の押圧力を解除し、圧縮性のある吸着材の反発力によって押え板45が差し込み保持材47に当接して保持される。
【0070】
そして、本形態例では、前述のように押え板45が保持・固定され、
図6に示す構成を備えるシール用フランジ部21において、下端フランジ24にパッキン23を介して水密シール状態に下端閉塞部25を固定することで、空スペース(被処理水導入部の空スペース41や下流側の空スペース43)を適切に設けることができ、一つの処理槽として独立して用いることも可能な前処理槽(A)や後処理槽(B)を形成することができる。
以上の工程によれば、本形態例の前処理槽(A)及び後処理槽(B)のどちらも同様に合理的且つ容易に製造することができる。
【0071】
次に、本出願人が先に特願2022-72029号によって出願した内容であって、本発明に関連する油水分離器の吸着材に係る内部構造の形態例を、添付図面(
図9)に基づいて詳細に説明する。なお、
図9に示す形態例は、一つの処理槽容器20に、乳化された油が含まれる被処理水の油を吸着除去して該被処理水を浄化するように、該被処理水が通過される複数の被処理水通過層が配されている油水分離器になっている。
【0072】
本発明に係る油水分離器では、
図9に示すように、前記被処理水が通過される順で、乳化破壊材層31と、その乳化破壊材層31の下流側に配された層であって繊維材が集合された層によって油を吸着する油吸着繊維材層32とが配されて構成された繊維による油吸着部層30を備え、その繊維による油吸着部層30の下流側(後段側)に配された活性炭層50と、その活性炭層50の下流側に配された層であってゼータ電位を利用して乳化された油を吸着除去するゼータ電位吸着材層60を備える。なお、本形態例では、被処理水が、処理槽容器20の下(上流側)から上(下流側)へ通過するように、配管が接続される油水分離器になっている。ここで、「上」と「下」とは、重力が作用する方向(鉛直方向)の関係についての上下を意味している。また、ここで、被処理水が通過される「上流側」とは、油の吸着がなされる部位において相対的に前段側の位置であることを示し、被処理水が通過される「下流側」とは、油の吸着がなされる部位において相対的に後段側の位置であることを示す。
【0073】
また、本発明に係る油水分離器では、その適切な各吸着材の組成比(充填体積比)の目安として、例えば、油吸着繊維材層が70~90%、活性炭層が5~15%、ゼータ電位吸着材層が5~15%とすることができる。これによれば、その三つの吸着層でバランスが良く油を吸着できて同時期に寿命を迎えるように可及的に調整できることになり、油水分離器の寿命を最大化できる。
また、本発明に係る油水分離器では、被処理液が処理槽容器20の内周面に沿ってリークした状態になって通過しやすい。このため、繊維による油吸着部層30の乳化破壊材層31や油吸着繊維材層32は、従来技術においても要求されていることであるが、所定の密度で充填されていることを要する。すなわち、その乳化破壊材層31や油吸着繊維材層32の密度を上げることで、乳化破壊材層31や油吸着繊維材層32の周囲(外周)が処理槽容器20の内周面へ強く圧接できるため、前述したような被処理液がリークした状態になって通過する現象を抑えることができる。
【0074】
本形態例の繊維による油吸着部層30の前記被処理水が通過される順で上流側の一部を構成する乳化破壊材層31としては、アミン系の乳化破壊材を用いることができる。このアミン系の乳化破壊材としては、例えば、繊維材によってシート状に設けられることで、透水性などの通液性のあるシート状の処理水通過層に、プラスの電荷(正電荷)を帯びさせるアミン系の正電荷材料が担持されたものを利用することができる。このような正電荷を帯びた乳化破壊材層31によれば、乳化されることでマイナスの電荷(負電荷)を帯びたコロイド状の微細な油粒子を、引き寄せて凝集させて凝集油とし、乳化を破壊することができる。これによって、コロイド状の油粒子に比較してサイズが大きくなった凝集油を、下流側の層である油吸着繊維材層32で、高効率に吸着除去することができる。
【0075】
本形態例の繊維による油吸着部層30の前記被処理水が通過される順で下流側の一部を構成する油吸着繊維材層32は、オイルフェンスなどの油吸着材として常用されている素材を利用したものであり、ポリプロピレンなどの化学繊維によるものとセルロースが主成分の天然繊維によるものがあるが、化学繊維の方が油の浸透にムラがなく望ましい。
【0076】
また、この油吸着繊維材層32の形態は、例えば、綿(わた)状、シート状、又はそのシート状のものを短冊状などにカットして形成されたチップ状のものがある。なお、この油吸着繊維材層32に係るシート状とは、繊維材がバインドされることによって不織布状に形成されてシート状に設けられたもの(不織布状のシート)や、その不織布状のシートが両面に配されて且つその両面の間に挟まれて綿状の繊維が所要の厚さに配されたものなど、織布状を含めて、繊維材が集合されて所望の厚さがあって平面状に広がる層状の形態に構成されたものの全てが含まれる。ところで、チップ状にカットされて形成されたものにあっては、その断面積の大きさや形態(例えば短冊状の形態の大きさ)を適宜に変えることで、求められる吸着仕様に合わせて、その吸着効率を変化・調整させることができる。
【0077】
本形態例の活性炭層50とは、例えば、粒状の活性炭が所要の厚さの層となるように、層状に堆積した状態に設けられたものや、繊維状に形成されたものが集合されて所要の厚さに形成されたものなど、通液性があるように層状に設けられたものであればよい。なお、本形態例に係る吸着容量を含む油の吸着作用としては、石炭系のロッド状の活性炭の方が、植物系の活性炭など他の活性炭に比べて、その性能が高い傾向にある。
【0078】
本形態例のゼータ電位吸着材層60とは、正電荷に帯電されて微細素材の集合体を層状に堆積させたものであり、例えば、基材となる繊維径がマイクロサイズのファイバー(微細繊維)であって、そのファイバーに特殊な加工によってプラスの電荷を持たせたもので、水中でマイナスに帯電している物質(本発明ではコロイド状の油粒子)を、ゼータ電位を利用して強力に吸着するものを用いることができる。
【0079】
本形態例の油水分離器では、そのゼータ電位吸着材層60の一例として、特許文献3に記載された水処理用吸着材(電荷吸着ファイバー)を利用することができる。このゼータ電位吸着材層60を構成するゼータ電位吸着材は、繊維径が30~50μmオーダーの繊維材(セルロース等の基質)にゼータ電位材が担持されたものになっている。
また、本発明に係るゼータ電位吸着材層60を構成する他のゼータ電位吸着材としては、セルロースの基材に、パーライトやケイソウ土の微粒子がレジンを介して担持されたものを利用することができる。
【0080】
以上に説明した複数の被処理水通過層を構成する吸着材の特徴について、以下に簡単に説明する。
油吸着繊維材層32を構成する油吸着繊維材(化学繊維)は、浮上油、凝集油を吸着でき、油の浸透にムラがないが、乳化油に対しては初期に性能を発揮しにくい。また、油吸着繊維材層32を構成する油吸着繊維材(天然繊維)は、浮上油、凝集油を吸着できるが、乳化油に対しては初期に性能を発揮しにくく、油の浸透にムラがある。また、活性炭層50を構成する活性炭は、乳化油に対しては最も吸着量が多く、COD(有機物質)も除去できるが、浮上油、凝集油はほとんど吸着できない。そして、ゼータ電位吸着材層60を構成するゼータ電位吸着材は、乳化油に対しても初期から高性能を発揮でき、細菌も除去できるが、浮上油、凝集油はほとんど吸着できない。
【0081】
また、活性炭やゼータ電位吸着材は浮上油や凝集油をほとんど吸着できないため、その活性炭やゼータ電位吸着材の前に油吸着繊維材を配置することが効果的である。乳化破壊材と油吸着繊維材は、適宜に交互に配置しても良い。また、活性炭とゼータ電位吸着材は、凝集した油を吸着できる量は油吸着材に比べて少ないため、十分な量の油吸着繊維材を使用するとよい。なお、活性炭とゼータ電位吸着材は初期の白濁防止と以降の低油分濃度維持のために必要な量のみ使用すればよい。
【0082】
本発明に係る油水分離器によれば、油分離性能を初期性能から格段に向上させ、被処理水を高度に浄化することができるという特別有利な効果を奏する。例えば、圧縮空気より発生した油の濃度が低いドレン水を、極めて適切に浄化処理できる。すなわち、初期から高性能(例えば、油分濃度1mg/L以下)を発揮し、呼び水も不要とすることができ、凝集した油から乳化した油まで様々なドレンを処理できる。また、活性炭を配置していることにより、化学的酸素要求量COD(有機物質)の低減も望め、ゼータ電位吸着材を配置していることにより、細菌の低減も望め、処理水のスライム発生を抑制できる。なお、ゼータ電位吸着材は他の油吸着材に比べて高価であるが、必要な量は限られるため、大幅にはコストアップしない。
【0083】
また、本形態例の油水分離器では、
図9の矢印で示すように、前記被処理水が下から上へ通過するように形成された処理槽容器20内に、前記複数の被処理水通過層が配され、その被処理水通過層として、繊維による油吸着部層30(乳化破壊材層31と油吸着繊維材層32とを含む被処理水通過層)、活性炭層50及びゼータ電位吸着材層60を含むように設けられている。すなわち、本形態例では、
図9に示すように、一つの処理槽容器20内に、被処理水通過層の各層が配され、被処理水が、各油吸着層に対して下側から浸透して透過されることで通過され、油を吸着作用によって分離して浄化されるように形成されている。このように形成されることで、一つの処理槽容器20による一つの油水分離器として簡易に構成でき、配管接続や保守管理を集中して行うことができる形態になっている。また、油は水より軽く浮き易く、凝集した油は水平に広がり易いため、本形態例のように水平に置かれた層が積層された形態の各被処理水通過層によれば、油を均一に効率良く吸着できる利点がある。
【0084】
また、本形態例の油水分離器では、
図9に示すように、繊維による油吸着部層30が複数段設けられている。なお、本形態例では、二段の繊維による油吸着部層30が配された構成になっている。また、本形態例によれば、処理槽容器20は、円筒状の槽が、鉛直方向に二段に重ね合わせた形状となっており、下側の槽が(A)前処理槽となっており、上側の槽が(B)後処理槽となっている。なお、本形態例の(A)前処理槽と(B)後処理槽の各容器(二つの容器)は、それぞれ上下の端部にフランジ24を備え、その重ね合わせたフランジ24、24においてパッキン23を介して締結部材22によって水密シール状態に連結されている。なお、本形態例の締結部材22は、ボルト、ナット、ワッシャーによって構成されているが、これに限定されるものではなく、既知の他の締結手段を用いてもよい。
【0085】
このように一つの処理槽容器20を二段の円筒状の槽によって構成することで、製造し易い形態とすることができる。なお、本形態例の処理槽容器20は、具体例として、直径が約30cm、高さが約100cmであり、製造中には高さ方向に二分割された形態になっている。このため、被処理水通過層の各層を、各円筒状の槽内に配し易く、製造し易い形態になっている。
【0086】
本形態例の(A)前処理槽では、
図9に示すように、下側(底側)から上側へ順に、(1)押え板(板金)、(2)破壊材(乳化破壊材層31を構成)、(3)油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層32を構成)、(4)破壊材(乳化破壊材層を構成)・(3)油吸着材の流出防止(後述の油吸着材(15)と同じでもよい)、(5)押え板(板金)が配されている。
【0087】
本形態例の(B)後処理槽では、
図9に示すように、下側(底側)から上側へ順に、(6)押え板(板金)、(7)破壊材(乳化破壊材層31を構成)・後述の(8)油吸着材の流出防止(後述の油吸着材(15)と同じでもよい)、(8)油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層32を構成)、(9)油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)・異なる吸着材の混合防止、(10)活性炭(活性炭層50を構成)、(11)油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)・異なる吸着材の混合防止、(12)ゼータ電位吸着材(ゼータ電位吸着材層60を構成)、(13)油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)・異なる吸着材の混合防止、(14)油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層を構成)・(12)ゼータ電位吸着材の流出を防止、(15)油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)・(14)油吸着材の流出防止、(16)押え板(板金)が配されている。また、(A)前処理槽と(B)後処理槽との間、即ち、両方の(5)(6)押え板の間には、空スペース40が設けられている。
【0088】
なお、本形態例の押え板(板金)としては、透液性を有するように多数の孔が形成された金属製の円形平板状の有孔板が用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸着材を処理槽容器20内に適切に保持できるように剛性を備える形態であって耐油性などの他の仕様を満足できればよく、例えば樹脂製であってよいのは勿論である。また、乳化破壊材層31やシート状の油吸着繊維材層は、単層のシートで構成されてもよいが、複数枚のシートを重ね合わせた形態によって構成されてもよいのは勿論である。さらに、本形態例のチップ状の油吸着繊維材層32は、シート状の油吸着繊維材が短冊状にカットされたものを処理槽容器20内にランダムに詰め込んだ形態に構成されているが、これに限定されず、油吸着の効果がある繊維の集合体を綿状に詰め込んだ形態として構成されてもよい。また、積層される(6)押え板や各吸着材層などの周囲(外周)と、処理槽容器20の内周面とを、例えばシリコン接着剤などのシール手段で固定・接合状態とすることで、被処理水がリークして吸着効率が低下することを抑制・防止することができる。
【0089】
また、本形態例のゼータ電位吸着材層60を構成する電荷吸着ファイバー(ゼータ電位吸着材)については、本形態例のシート状の油吸着繊維材層によって構成された油吸着材(14)などの代わりに、不織布袋などに入れることで、そのゼータ電位吸着材の流出を防止するようにしてもよい。
【0090】
さらに、本形態例では、処理槽容器20が、円筒状の槽容器を二段に重ね合わせることで構成されているが、これに限定されるものではなく、三段以上に重ねてもよいし、反対に一つの槽容器内に全ての被処理水通過層を配してもよく、さらに、槽容器を複数に分割して配管によって接続し、各被処理水通過層を上述したような順で配置することも可能である。また、本発明では、少なくとも、被処理水が通過される上流側から下流側への順で、繊維による油吸着部層30、活性炭層50、ゼータ電位吸着材層60という三つの構成要素が配置された位置関係が存在すればよく、その三つの構成要素の間や前後に、他の吸着材層や他の空スペースなどの他の層状の構成要素が付加されることを排除するものではない。
【0091】
また、本形態例の油水分離器では、
図9に示すように、複数段の繊維による油吸着部層30の間に、吸着材が存在しない空間である空スペース40が設けられている。このように、吸着材が存在しない空間(空スペース40)を設けると、その空スペース40が被処理水だけによって満たされた状態になり、一旦、浸透のムラが解消される。これによれば、被処理水をより均一に浄化処理できる。なお、本形態例では、処理槽容器20(A)と処理槽容器20(B)との間である両者の合せ部のみに、空スペース40が設けられた構成となっている。これによれば、各処理槽容器20(A)、(B)の限られたスペース内に各吸着層を構成するそれぞれの吸着材を効率良く充填できると共に、合せ部であって稠密に充填した形態とすることが難しい部分を逆に利用して空スペース40の構成部位にすることで、その空スペース40を合理的且つ容易に設けることができる。
【0092】
以上に説明した
図9の実施例(本形態例)によれば、乳化された油が含まれる被処理水の油の吸着除去に関し、ゼータ電位吸着材層60を配さなかった以外は同等の構成と条件のものと比較して、初期性能(油の浄化効率)を、約10倍程度向上させることができた。また、本形態例によれば、乳化された油が含まれる被処理水の油の吸着除去に関し、その被処理水の総処理量についても、十分に高い性能を得ることができた。
【0093】
なお、活性炭層50とゼータ電位吸着材層60との配置を反対にした場合(ゼータ電位吸着材層60を活性炭層50に対して被処理水の流れの上流側に配置した場合であって他の条件は同じ)に比べ、本形態例の方が、被処理水の総処理量を約15%程度多く処理することができた。これによれば、ゼータ電位吸着材層60を構成するゼータ電位吸着材に比較して吸着容量の大きな活性炭の性質を適切に利用することができ、油水分離器の寿命を長期化できる利点がある。
【0094】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0095】
(A) 前処理槽
(B) 後処理槽
(F) 吸着材充填部
(1) 押え板(板金)
(2) 破壊材(乳化破壊材層31を構成)
(3) 油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層32を構成)
(4) 破壊材(乳化破壊材層を構成)
(5) 押え板(板金)
(6) 押え板(板金)
(7) 破壊材(乳化破壊材層31を構成)
(8) 油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層32を構成)
(9) 油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)
(10) 活性炭(活性炭層50を構成)
(11) 油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)
(12) ゼータ電位吸着材(ゼータ電位吸着材層60を構成)
(13) 油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)
(14) 油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層を構成)
(15) 油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)
(16) 押え板(板金)
20 処理槽容器
20A 前処理槽の周側壁
20B 後処理槽の周側壁
20c 把持部
21 シール用フランジ部
21A 前処理槽下端のシール用フランジ部
21B 後処理槽下端のシール用フランジ部
22 締結部材
23 パッキン
23A 前処理槽のパッキン
23B 後処理槽のパッキン
24 下端フランジ(フランジ)
24A 前処理槽の下端フランジ
24B 後処理槽の下端フランジ
25 下端閉塞部
25A 前処理槽の下端閉塞部
25B 後処理槽の下端閉塞部
26 連結孔
26A 前処理槽下端の連結孔
26B 後処理槽下端の連結孔
27 上端閉塞部
27A 前処理槽の上端閉塞部
27B 後処理槽の上端閉塞部
28 ブラケット部
28A 前処理槽上端のブラケット部
28B 後処理槽上端のブラケット部
29 連結孔
29A 前処理槽上端の連結孔
29B 後処理槽上端の連結孔
30 繊維による油吸着部層
31 乳化破壊材層
32 油吸着繊維材層
35 前後槽連結部
40 空スペース
41 被処理水導入部の空スペース
42 上流側の空スペース
43 下流側の空スペース
44 処理水出口部の空スペース
45 押え板
46 差し込み口
47 差し込み保持材
48 ナット
49 固定金具
50 活性炭層
60 ゼータ電位吸着材層
70 気液分離チャンバー
71 チャンバーの周側壁
72 チャンバーの入口
72a 気相部
73 チャンバーの出口
73a ドレン水滞留スペース(液相部)
74 チャンバー下端のブラケット部
74a チャンバー固定孔
74b 固定手段
75 据付用固定部
76 チャンバー上端のブラケット部
76a チャンバー連結孔
77 設置用連結部
78 チャンバーの上端閉塞部
79 チャンバーの下端閉塞部
80 被処理水供給用の連通管状部
80a 連結チューブ
81 処理槽の入口
81A 前処理槽の入口
81B 後処理槽の入口
82 処理槽の出口
82A 前処理槽の出口
82B 後処理槽の出口
83 連通管状部
83a 連結チューブ
90 カバー部
91 上板
91a 貫通孔
92 背板
93 側板
95 吊下げ用の被掛け部
100 ベース部
101 フォーク爪用挿入穴
200 操作部
【要約】
【課題】ベース部の上に、箱体を形成するためのフレーム骨格構造を設けることなく、油水分離器を効果的に覆うことができる油水分離器ユニットを提供する。
【解決手段】被処理水に含まれる油を吸着することで該被処理水を浄化するように、処理槽容器20内に、油を吸着する吸着材が充填された油水分離器を備える油水分離器ユニットであって、処理槽容器20が、軸心が上下方向に起立された自立状態にベース部100の上に直接的又は介在物を介して設置されるように円筒体状に形成され、処理槽容器20を覆って保護するように、フレーム骨格構造を有しないで板状の部材によって構成されてベース部100に支持された状態に配されるカバー部90を備える。
【選択図】
図2