(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】造花の作製方法
(51)【国際特許分類】
A41G 1/00 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A41G1/00 W
A41G1/00 B
(21)【出願番号】P 2022144916
(22)【出願日】2022-09-12
【審査請求日】2023-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522295863
【氏名又は名称】大森 悦代
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】大森 悦代
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-021798(JP,A)
【文献】実公昭28-004965(JP,Y1)
【文献】特開昭49-055472(JP,A)
【文献】特開2021-008690(JP,A)
【文献】実開昭53-067593(JP,U)
【文献】特開2016-176171(JP,A)
【文献】ろうそくの炎で真竹を曲げる,2021年09月06日,https://www.youtube.com/watch?v=lngunUUgNpo
【文献】竹の火曲げ,2021年02月28日,https://www.youtube.com/watch?v=jyST47vFGxs
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の熱可塑性発泡樹脂シートの一方の長辺側に、他方の長辺側を支持されて前記熱可塑性発泡樹脂シートの長手方向と交差する方向に変位可能な複数の突状片を並列状に形成
し、前記熱可塑性発泡樹脂シートを、複数の前記突状片と、当該突状片を支持する巻回縁とを有するシートとする工程と、
炎の放射熱を直に受ける前記熱可塑性発泡樹脂シートの一面側の裏の他面側が凸にカールするように、前記巻回縁を手で持って長手方向に沿って動かしながら
前記一面側を前記炎にかざ
す、複数の突状片をカールさせる工程と、
前記熱可塑性発泡樹脂シートを同心円状に巻回して生花の花芯部に相当する部分を形成する工程と、
を含むことを特徴とする造花の作製方法。
【請求項2】
前記炎として、ロウソク、アルコールランプ、オイルランプまたはガスランプの炎を用いることを特徴とする請求項1に記載の造花の作製方法。
【請求項3】
前記複数の突状片をその先端部が尖った形状に形成することを特徴とする請求項2に記載の造花の作製方法。
【請求項4】
前記各突状片の先端部を前記炎の熱で溶融させて表面性状を変化させることを特徴とする請求項3に記載の造花の作製方法。
【請求項5】
前記複数の突状片をカールさせる工程において、前記同心円状の中心側に比べて外側ではカールの度合いが大きくなるようにすることを特徴とする請求項2に記載の造花の作製方法。
【請求項6】
前記花芯部に相当する部分を形成する際に、生花のめしべに相当するベップを挟んで巻回することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の造花の作製方法。
【請求項7】
熱可塑性発泡樹脂シートから前記生花の花びらに相当する部分を複数枚形成し、該複数枚の花びらに相当する部分を前記炎で加熱して変形させ、その後前記花芯部に相当する部分の下面に固定することを特徴とする請求項6に記載の造花の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性発泡樹脂シートを用いた造花の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、造花の材料には紙や布が用いられているが、耐水性、耐候性等の観点から屋外や浴室での使用が制限される等の問題があるため、プラスチックも採用されるようになっている。しかしながら、プラスチックは透光性が低いために見栄えが良くなく、生花の質感との間には大きな隔たりがあることを否めない。
【0003】
この問題に対処すべく、特許文献1には、熱可塑性発泡樹脂シートからなる複数の花びらを備えた造花が開示されている。熱可塑性発泡樹脂シートは気泡を含んでいるため良好な透光性を有し、プラスチックが持つ生花との質感の隔たりを低減するのに寄与している。また、熱可塑性発泡樹脂シートは加熱して軟らかくした状態で指等によりランダムに変形させることができ、生花の自然形状に近付けることができるという利点も有している。特許文献1ではその
図3に示すように、熱可塑性発泡樹脂シートから切り出した花びら用片をヒートガンを用いて加熱した後、うねらせたり湾曲させて花びらを形成するようになっている。
【0004】
なお、透光性の良いプラスチックを用いた造花自体は目新しいものではなく古くから知られている。例えば特許文献2には、帯状の気泡性合成樹脂薄板の一方の長辺側に複数の切り込みを入れ、切り込み間に位置する各細条片の先端部を三角形状に尖らせたものを同心円状に巻回してなる造花が開示されている。巻回した後、根元を紐や針金で縛ることにより多数の細条片を広げてボリューム感を出す構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-8690号公報
【文献】実公昭37-5566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、花芯部に相当する部分は電球とこれを覆う筐体とからなる機械的構成で、その周りを熱可塑性発泡樹脂シートで形成した花びらで覆うようになっており、花芯部に相当する部位の造花構成については開示がない。
【0007】
特許文献2には、気泡性合成樹脂薄板を用いた花芯部に相当する構成が開示されているといえるが、上記のように生花の花芯部の自然な広がり感(ボリューム感)は単に根元を縛ることにより機械的になされており、造花とは言え、生花との間には優雅さの観点から大きな隔たりがある。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、生花の花芯部に相当する部分を容易且つ優雅に形成することができる造花の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の造花の作製方法は、テープ状の熱可塑性発泡樹脂シート(2)の一方の長辺(2a)側に、他方の長辺(2b)側を支持されて熱可塑性発泡樹脂シート(2)の長手方向(X方向)と交差する方向(Z方向)に変位可能な複数の突状片(4)を並列状に形成する工程と、熱可塑性発泡樹脂シート(2)を手(H1、H2)で持ってその一面側を長手方向(X方向)に沿って動かしながら炎(10a)にかざして複数の突状片(4)をカールさせる工程と、熱可塑性発泡樹脂シート(2)を同心円状に巻回して生花の花芯部に相当する部分(16)を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る造花の作製方法によれば、位置固定された炎に熱可塑性発泡樹脂シートを手に持ってかざしながら動かすことで容易に突状片をカールさせることができ、カール形成後に熱可塑性発泡樹脂シートを同心円状に巻回することで滑らかに湾曲した突状片によるボリューム感と優雅さを有する花芯相当部を形成することができる。
【0011】
また、上記の造花の作製方法では、炎(10a)として、ロウソク(10)、アルコールランプ、オイルランプまたはガスランプの炎を用いることを特徴とする。これによれば、いずれも自然のゆらぎを呈する炎であるので、目視しながらリアルタイムでカールの度合いを調整することができ、繊細で精度の高いカール成形を行うことができる。
【0012】
また、上記の造花の作製方法では、複数の突状片(4)をその先端部(4a)が尖った形状に形成することを特徴とする。これによれば、突状片の繊細な形状により、優雅さを高めることができる。
【0013】
また、上記の造花の作製方法では、各突状片(4)の先端部(4a)を炎(10a)の熱で溶融させて表面性状を変化させることを特徴とする。これによれば、突状片を形成する段階で生じる人工的な切断の痕跡を消すことができ、優雅さを一層高めることができる。
【0014】
また、上記の造花の作製方法では、複数の突状片(4)をカールさせる工程において、同心円状の中心側に比べて外側ではカールの度合いが大きくなるようにすることを特徴とする。これによれば、花芯相当部の下面に花びら相当部を固定した場合の固定箇所を覆うことができ、造花の外観の見劣りを抑制することができる。
【0015】
また、上記の造花の作製方法では、生花の花芯部に相当する部分(16)を形成する際に、生花のめしべに相当するベップ(14)を挟んで巻回することを特徴とする。これによれば、生花により近い構成とすることができ、造花の品質向上を図ることができる。
【0016】
また、上記の造花の作製方法では、熱可塑性発泡樹脂シートから生花の花びらに相当する部分(20)を複数枚形成し、該複数枚の花びらに相当する部分(20)を炎(10a)で加熱して変形させ、その後花芯部に相当する部分(16)の下面に固定することを特徴とする。これによれば、優雅でボリューム感のある造花を容易に作製することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生花の花芯部に相当する部分を容易且つ優雅に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る造花の作製方法における突状片の形成工程を示す図で、(a)はテープ状の熱可塑性発泡樹脂シートにハサミで複数の切り込みラインを入れた状態を示す平面図、(b)はハサミで三角形状の突状片に整形した状態を示す平面図である。
【
図2】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートをロウソクの炎にかざして突状片をカールさせる工程を示す斜視図である。
【
図3】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートとロウソクの炎との関係を示す側面図で、(a)は炎に対する熱可塑性発泡樹脂シートの距離や角度を示す図、(b)は特定の部位の突状片のカールの度合いを変えることを説明するための図である。
【
図4】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートにおける突状片の先端部の性状を変化させる動作を示す図で、(a)は炎に対する熱可塑性発泡樹脂シートの位置関係を示す側面図、(b)は性状変化を指せない場合の突状片の先端部の斜視図、(c)は性状変化をさせた場合の突状片の先端部の斜視図である。
【
図5】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートを同心円状に巻回する工程の巻き始めの状態を示す写真画像図である。
【
図6】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートを同心円状に巻回する工程の途中状態を示す写真画像図である。
【
図7】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートを同心円状に巻回する工程の完了状態を示す写真画像図である。
【
図8】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートを同心円状に巻回して形成した花芯相当部の概要断面図である。
【
図9】
図8で示した花芯相当部の下面に固定する花びら相当部の作製工程を示す図で、(a)は適宜の面積を有する熱可塑性発泡樹脂シートから切り取った花びら相当部の処理前の形状を示す平面図、(b)は炎で加熱した後に生花の花びらに似せて指で変形させた状態を示す斜視図である。
【
図10】
図8で示した花芯相当部の下面に花びら相当部を固定した造花における花びら相当部の固定部位が外部から視認できないように突状片で覆われることを示す概要断面図である。
【
図11】
図10で示した造花を上面から見た写真画像図である。
【
図12】
図1(b)で示した突状片を機械的に一度に形成する工具の刃の形状を示す平面図である。
【
図13】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートにおける突状片の変形例を示す平面図で、(a)は台形状とした場合を示す図、(b)は同心円状の外側に向かって突状片の高さが漸増する例を示す図である。
【
図14】
図1(b)で示した熱可塑性発泡樹脂シートを突状片のカールが内向きとなるように巻回する場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
[突状片の形成工程]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る造花の作製方法における突状片の形成工程を説明する。
図1に示すように、柔軟性を有するテープ状(帯状の概念を含む)の熱可塑性発泡樹脂シート(以下、単に「シート」と称する)2の一方の長辺2a側に、他方の長辺2b側を支持されてシート2の長手方向(X方向)と交差する方向(Z方向)に変位可能な複数の突状片4を並列状に形成する。
【0021】
具体的には、
図1(a)に示すように、シート2の一方の長辺2a側から他方の長辺2b側に向かって長手方向に一定の幅W、Y方向に一定の長さ(深さ)L1の複数の切り込みラインCLをハサミで形成し、他方の長辺2b側を除いてシート2から切り離された突状片4の前段形状である短冊状片40を長手方向に並列した状態に複数形成する。他方の長辺2b側における切り込みラインCLが存在しない部分、すなわちY方向の幅がL2の部分である巻回縁6は、各突状片4をカールさせた後にシート2を同心円状に巻回するときの持手部となる。
【0022】
次に、
図1(b)に示すように、短冊状片40をその先端部(自由端部)が鋭角に尖った三角形状となるように両側または片側をハサミで切り落として、目的の突状片4を複数形成する。すなわち、複数の突状片としての短冊状片40をその先端部が尖った形状にして二等辺三角形状の突状片4を形成する。ここでは切り込みラインCLをハサミで形成する工程を例示したが、切り込みラインCLに対応する複数の刃を備えた不図示の工具で押し切って全切り込みラインCLを機械的に一度に形成するようにしてもよい。また、ハサミで切り落として最終的な突状片4の形状を得る工程を例示したが、
図12に示すように、平面視がジグザク形状の刃8を備えた不図示の工具で押し切って、切り込みラインCLを形成する工程を省いて全突状片4を機械的に一度に形成するようにしてもよい。
【0023】
[突状片をカールさせる工程]
次に、
図2に示すように、複数の突状片4を形成したシート2を左右の手H1、H2で持ってその一面側を長手方向に沿って動かしながら、ロウソク10の炎10aにかざして複数の突状片4をカールさせる工程を行う。勿論シート2を片手で持って動かしてもよい。
図2において、符号12はロウソク10の受け皿を示している。
【0024】
一般にロウソク10の炎10aの表面温度は900℃前後であり、プラスチックの融点は高くても300℃前後である。シート2の一面側を炎10aに適宜の距離をもってかざすとその放射熱により加熱され、放射熱を直に受ける一面側と他面側との間の熱膨張の度合いの差により他面側が凸となるように各突状片4がカール(湾曲)する。各突状片4のカール形状は常温環境下で冷却されることにより固定される。シート2の厚みは例えば0.5~2mm程度が好適であるが、目的とする造花の種類によって上記の数値範囲は異なる。シート2の長さや幅の寸法も目的とする造花の種類によって異なる。
【0025】
各突状片4に対する炎10aによる加熱条件は微妙に異なるので、突状片4のカール状態を目で確認しながら、基本的にはシート2を長手方向に沿って左右に動かしながらカールの度合い(曲がり具合)を調整する。さらに詳細には、
図3(a)に示すように、炎10aにシート2を近付けたり遠ざけたりすることにより炎10aとシート2間の距離dを調整したり、炎10aに対するシート2の角度θを変えたりしてカールの度合いを調整する。また、
図3(b)に示すように、複数の突状片4をカールさせる工程において、同心円状の中心側に比べて外側(
図2における範囲R)ではカールの度合いが大きくなるようにする。
図3(b)において符号4Fは同心円状の中心側に位置する突状片を、4Rは外側に位置する突状片を示している。外側の突状片4Rのカールの度合いを大きくする理由については後述する。
【0026】
各突状片4をカールさせる工程において重要な点は、カールさせるための熱源がロウソク10の炎10a、換言すれば、自然のゆらぎを呈する位置固定された炎10aであるということである。自然のゆらぎを呈する位置固定された炎10aであるが故に、上記のように、軽量のシート2を手で持って動かすという簡単な操作で目視によるリアルタイムでのカールの微調整が可能となる。
【0027】
特許文献1のように、熱源として高温の熱風を吹き出すヒートガンを使用した場合、加熱によるカール形成はできるものの、風速によるカールの変形が常時伴うので、突状片4の実際のカールの度合いを正確に認識することができない。すなわち、ヒートガン等の熱風を吹き出す熱源は、熱可塑性発泡樹脂シートを単に変形させるために加熱する手段としては有効であるものの、突状片4のような小片をカールさせる等のデリケートな熱源としては不向きである。また、この種の熱源としては従来よりアイロン等が知られているが、押圧面積が広いために各突状片4を個々にあるいは狭小範囲での独立した加熱が困難であるとともに、カールの度合いはアイロン等を取り除いた後に発現するため、カールの度合いをリアルタイムで認識することができない。さらに、非常に軽いシート2側を位置固定し、重量のあるアイロン等を移動させる方式では作業効率の低下を避けられない。
【0028】
[突状片の先端部の表面性状改変工程]
各突状片4をカールさせた後またはカールの形成工程中に、
図4(a)に示すように、各突状片4の先端部4aを炎10aの熱で溶融させて表面性状を変化させる。この場合、例えばシート2を二点鎖線で示すカール形成の姿勢から実線で示す位置に角度を変えて、突状片4の先端部4aを炎10aに近付ける。
図4(b)はカールさせただけの状態の突状片4の先端部4aを示している。この状態では切断された表面性状がそのまま視認される。切断面がはっきり見えると、観る者にとって人工的な感じが強く残り、造花といえども外観の見劣りを招来する。突状片4の先端部4aを炎10aに近付けて溶融状態にすると、
図4(c)に示すように、溶融により切断の痕跡が消失し、生花の自然形状に近付くように表面性状が変化する。これによって突状片4の外向きの滑らかな湾曲広がり(カール)による優雅さが一層引き立てられる。
【0029】
突状片4の先端部4aのみを局所的に溶融状態にできるのは、上端が細く纏まるロウソク10の炎10aの利点である。この利点を含め、上記の突状片4のカール形成工程に好適な炎としては、ロウソク10の炎10aに限定されず、アルコールランプの炎、オイルランプの炎、ガスランプの炎を採用できる。
【0030】
[生花の花芯部に相当する部分を形成する工程]
各突状片4のカール形成工程後、カールした各突状片4の先端部4aが外向きとなるように、換言すれば各突状片4の凸形状が内向きとなるように、シート2を同心円状に巻回していく。この場合、
図5に示すように、花芯部に相当する部分を形成する際に、すなわち巻き始め部分に生花のめしべに相当するベップ14を、1本~数本挟んで巻回する。
図6は巻回の途中状態を示し、
図7は巻回完了の状態を示している。なお、ベップ14の挟み込みは必ずしも必要ではない。
【0031】
図8は、シート2の巻回完了の状態を示す概要断面図である。
図8において奥側の突状片4は適宜省略している。巻回完了後は不図示の接着剤で接着したり、シート2自体を溶融させて同心円状に巻回した状態を固定化する。例えば巻回縁6に紫外線硬化樹脂を塗りながら巻回し、巻回完了後に紫外線を照射して固定化する。この固定化により、生花の花芯部に相当する部分である花芯相当部16が完成する。符号18は花芯相当部16の基部を示しており、巻回縁6の同心円状の巻回によって形成される。
【0032】
[花びらに相当する部分の形成及び固定工程]
図9(a)に示すように、適宜の面積を有する不図示の熱可塑性発泡樹脂シートから生花の花びらに相当する部分である花びら相当部20を切り取って複数枚形成する。該複数枚の花びら相当部20を炎10aで加熱して軟らかくし、
図9(b)に示すように、指でうねらせたりシワを形成したりして生花の花びらに似るように変形させる。その後、花芯相当部16の下面、具体的には基部18の側面に固定する。花びら相当部20の固定は、花芯相当部16の固定と同様に接着剤で固定したり、花びら相当部20自体の一部を溶融して固定する。
【0033】
図10は、上述した本実施形態に係る造花の作製方法によって作製された造花22の概要断面図である。
図10において奥側の突状片4や花びら相当部20は適宜省略している。花芯相当部16に対する花びら相当部20の固定が外部から視認できると造花22の人工性が顕著となり、造花とはいいながらもその外観の見劣りを招来する。この問題を解消すべく、本実施形態では上述のように突状片4のカール形成工程において、同心円状の外側の突状片4Rのカールの度合いを大きくするようにしている。このようにすれば、花びら相当部20の固定部分がカール度合いの大きい突状片4Rで覆われ、目24で視認されない。これにより造花22の外観の見劣りが抑制されるとともに、生花に対する疑似度が向上する。
図11は造花22を上面側から見た写真画像図である。
【0034】
上記のように、本実施形態に係る造花の作製方法によれば、ボリューム感のある優雅な造花22を、身近に存在するロウソク10の炎10a等を熱源として簡単な操作で容易に作製することができる。熱可塑性発泡樹脂シートは耐水性、耐候性に優れるので、屋外や浴室等における置物やアクセサリーにも適している。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では突状片4を先端が尖った三角形状としたが、
図13(a)に示すように先端をカットして全体形状が台形状となる突状片4Bとしてもよく、
図13(b)に示すように、同心円状の外側に向かって高さが漸増する突状片4Cとしてもよい。また、上記実施形態では突状片4のカールが外向きとなるようにシート2を同心円状に巻回する構成を例示したが、
図14に示すように、突状片4のカールが内向きとなるようにシート2を同心円状に巻回するようにしてもよい。このようにすれば、例えば菊の花の蕾形状を呈する造花を作製することができる。また、上記実施形態では一種類のシート2を同心円状に巻回する構成を例示したが、突状片4の形状やサイズが異なる複数種類のシート2を巻回して多層構造としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
2 熱可塑性発泡樹脂シート
2a 一方の長辺
2b 他方の長辺
4、4B、4C、4F、4R 突状片
4a 先端部
6 巻回縁
10 ロウソク
10a 炎
14 ベップ
16 花芯相当部
18 基部
20 花びら相当部
22 造花
X 長手方向
Z 長手方向と交差する方向
【要約】
【課題】生花の花芯部に相当する部分を容易且つ優雅に形成することができる造花の作製方法を提供する。
【解決手段】テープ状の熱可塑性発泡樹脂シート2の一方の長辺側に、他方の長辺側を支持されて熱可塑性発泡樹脂シート2の長手方向(X方向)と交差する方向に変位可能な複数の突状片4を並列状に形成する工程と、熱可塑性発泡樹脂シート2を左右の手H1、H2で持ってその一面側を長手方向に沿って動かしながらロウソク10の炎10aにかざして複数の突状片4をカールさせる工程と、熱可塑性発泡樹脂シート2を同心円状に巻回して生花の花芯部に相当する部分を形成する工程と、を含む。
【選択図】
図2