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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240129BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K27/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022169590
(22)【出願日】2022-10-24
(62)【分割の表示】P 2019196480の分割
【原出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2022186853
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 岳史
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287663(JP,A)
【文献】特開2016-098925(JP,A)
【文献】特開2012-062953(JP,A)
【文献】特開2013-228000(JP,A)
【文献】特開2012-062959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
31/00-31/05
F25B 31/00-31/02
39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を有する本体部および前記本体部の一面から突出した円筒部を有する弁本体と、前記円筒部に設けられた円環状の鍔部と、前記鍔部の外周縁に取り付けられる円筒状のキャンと、前記キャンの内側に配置されるローターと、前記弁室に設けられたポートに近づく方向およびポートから離れる方向に移動するように駆動される弁体と、前記キャンの外側に取り付けられるステーターユニットと、を有する電動弁であって、
前記本体部の一面と前記円筒部と前記鍔部とで溝部が環状に形成され、
前記ステーターユニットは、前記溝部を囲むように配置された筒状部を有し、
前記弁本体の円筒部と前記ステーターユニットの筒状部とに挟まれた状態で、前記溝部に環状の封止部材が配置されており、
前記円筒部は、外周面に雄ねじ部が設けられ、
前記雄ねじ部が螺合される雌ねじ部が、前記本体部の一面に開口するように設けられ、
前記封止部材は、前記本体部の一面に接して配置されており、
前記ステーターユニットの筒状部が、前記鍔部側から前記本体部の一面側に向かうにしたがって徐々に径が大きくなる内周面を有していることを特徴とする電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。特に、本発明は、キャンの内側にローターが設けられ、キャンの外側にステーターが設けられた電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動弁の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1の電動弁は、弁本体と、弁本体のポートを開閉する弁体と、弁本体の上方に配置された金属製のキャンと、キャンの内側に配置されたローターと、キャンの外側に配置されたステーターユニットと、を有する。この電動弁は、ステーターユニットから下方に向けて突出して弁本体の外周面を囲む筒状部と、この筒状部と弁本体との間をシールする2つのOリングとを備えている。これにより、キャンとステーターユニットが有するヨークとの間に水分が進入することを抑制して、異種金属間の電位差による腐食や塩害による発錆を抑制している。
【0003】
また、特許文献2に記載されている電動弁では、キャンとステーターユニットが有する樹脂モールドとの間にOリングを配置し、樹脂モールドの下端部にとりつけられる円環状のプレート部材によってOリングを支持している。これにより、特許文献1の電動弁と同様に、キャンとステーターユニットが有するヨークとの間に水分が進入することを抑制して、異種金属間の電位差による腐食や塩害による発錆を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5249634号
【文献】特許第5982168号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電動弁は、2つのOリングを収容する環状の凹溝を弁本体の外周面に設けているので、凹溝を形成するための切削加工が必要となる。また、特許文献2の電動弁では、Oリングを支持するための円環状のプレート部材が必要となる。そのため、加工工程や部材が増えて製造コストの増加を招いていた。また、凹溝やプレート部材を設けるため、電動弁が大型化していた。
【0006】
そこで、本発明は、水分の進入による腐食や錆を抑制できる小型で安価な電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
動弁は、弁室を有する弁本体と、前記弁本体の一面から突出した円筒部に設けられた円環状の鍔部と、前記鍔部の外周縁に取り付けられる円筒状のキャンと、前記キャンの内側に配置されるローターと、前記弁室に設けられたポートに近づく方向およびポートから離れる方向に移動するように駆動される弁体と、前記キャンの外側に取り付けられるステーターユニットと、を有する電動弁であって、前記弁本体の一面と前記弁本体の円筒部と前記鍔部とで溝部が環状に形成され、前記ステーターユニットは、前記溝部を囲むように配置された筒状部を有し、前記弁本体の円筒部と前記ステーターユニットの筒状部とに挟まれた状態で、前記溝部に環状の封止部材が配置されている。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁は、弁室を有する本体部および前記本体部の一面から突出した円筒部を有する弁本体と、前記円筒部に設けられた円環状の鍔部と、前記鍔部の外周縁に取り付けられる円筒状のキャンと、前記キャンの内側に配置されるローターと、前記弁室に設けられたポートに近づく方向およびポートから離れる方向に移動するように駆動される弁体と、前記キャンの外側に取り付けられるステーターユニットと、を有する電動弁であって、前記本体部の一面と前記円筒部と前記鍔部とで溝部が環状に形成され、前記ステーターユニットは、前記溝部を囲むように配置された筒状部を有し、前記弁本体の円筒部と前記ステーターユニットの筒状部とに挟まれた状態で、前記溝部に環状の封止部材が配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、弁本体の一面と弁本体の円筒部と鍔部で溝部が環状に形成されている。ステーターユニットは、溝部を囲むように配置された筒状部を有している。そして、弁本体の円筒部とステーターユニットの筒状部とに挟まれた状態で、溝部に環状の封止部材が配置されている。このようにしたことから、弁本体の円筒部の外周面を加工して環状の凹溝を設けたり、封止部材を支持する部材を設けたりすることなく、封止部材を配置できる。そのため、加工工程や部材を削減することができる。したがって、小型かつ安価な構成で水分の進入による腐食や錆を抑制できる。
【0009】
本発明において、前記円筒部は、外周面に雄ねじ部が設けられ、前記雄ねじ部が螺合される雌ねじ部が、前記本体部の一面に開口するように設けられ、前記封止部材は、前記本体部の一面に接して配置されている。このようにすることで、封止部材により雄ねじ部と雌ねじ部との螺合箇所に水分が進入することを抑制できる。
【0010】
本発明において、前記ステーターユニットの筒状部が、前記鍔部側から前記本体部の一面側に向かうにしたがって徐々に径が大きくなる内周面を有している。このようにすることで、ステーターユニットの内側にキャンを挿入して、環状に形成された溝部を囲むようにステーターユニットの筒状部を配置する際に、ステーターユニットの筒状部の内周面によって封止部材が本体部の一面側に向けて押されて、封止部材を本体部の一面に押し付けることができる。そのため、封止部材により雄ねじ部と雌ねじ部との螺合箇所に水分が進入することをより効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型かつ安価な構成で水分の進入による腐食や錆を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例に係る電動弁の縦断面図である。
図2】本発明の第2実施例に係る電動弁の縦断面図である。
図3】本発明の第3実施例に係る電動弁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例に係る電動弁について、図1を参照して説明する。本実施例の電動弁1は、例えば、冷凍サイクル等において冷媒流量を調整するために使用される。なお、第2実施例および第3実施例に係る電動弁も同様である。図1は、本発明の第1実施例に係る電動弁の軸線に沿う断面図(縦断面図)である。
【0014】
図1に示すように、電動弁1は、弁本体10と、鍔部材20と、キャン30と、駆動機構40と、弁体50と、ステーターユニット60と、封止部材70と、を有している。
【0015】
弁本体10は、例えば、真ちゅうやアルミニウム合金などの金属材料で構成されている。弁本体10は、円柱状の本体部11と、本体部11の上面11a(すなわち弁本体10の一面)から上方に向けて突出した円筒部12と、を一体に有している。本体部11の内部には、弁室13が設けられている。本体部11には、図1の左方に延びる導管14と、図1の下方に延びる導管15と、が取り付けられている。導管14は、弁室13に接続されている。導管15は、ポート16を介して弁室13に接続されている。円筒部12の内側空間は、弁室13に接続されている。
【0016】
鍔部材20は、例えば、ステンレスなどの金属材料で構成されている。鍔部材20は、円環板状に形成されている。鍔部材20の内周縁20aは、弁本体10の円筒部12の上端部にろう付けなどにより接合されている。
【0017】
弁本体10の本体部11の上面11aと、円筒部12の外周面12aと、鍔部材20の下面20cと、で凹んだ溝部25が環状に形成されている。
【0018】
キャン30は、例えば、ステンレスなどの金属材料で構成されている。キャン30は、上端が塞がれた円筒状に形成されている。キャン30の下端30aは、鍔部材20の外周縁20bに溶接などにより接合されている。キャン30の内側には、駆動機構40が配置される。
【0019】
駆動機構40は、弁体50を上下方向(開閉方向)に駆動する。駆動機構40は、ローター41と、弁軸ホルダー42と、ガイドブッシュ43と、弁軸44と、を有している。
【0020】
ローター41は、キャン30の内径より若干小さい外径を有する略円筒状に形成されている。ローター41は、永久磁石を有している。ローター41は、キャン30の内側に回転可能に配置されている。
【0021】
弁軸ホルダー42は、上端が塞がれた円筒状に形成されている。弁軸ホルダー42の上端部には支持リング45がかしめにより固定されており、支持リング45を介して、ローター41と弁軸ホルダー42とが一体的に結合されている。弁軸ホルダー42の内周面には、雌ねじ部42cが設けられている。
【0022】
ガイドブッシュ43は、外径が大きい大径円筒部43aと、大径円筒部43aの上端部に同軸に連設された外径が小さい小径円筒部43bと、を一体に有している。小径円筒部43bの外周面には、弁軸ホルダー42の雌ねじ部42cと螺合される雄ねじ部43cが設けられている。ガイドブッシュ43は、大径円筒部43aが弁本体10の円筒部12の内側に圧入されることにより、弁本体10と一体的に結合されている。
【0023】
弁軸44は、円柱状の胴部44aと、胴部44aの上端に同軸に連設された胴部44aより小径の上部小径部44bと、を有している。上部小径部44bは、弁軸ホルダー42を貫通して配置されており、抜け止めとなるプッシュナット46が取り付けられている。弁軸44は、弁軸ホルダー42と、弁軸44における胴部44aと上部小径部44bとの間の段部と、の間に配置された圧縮コイルばね47によって、下方に向けて押されている。
【0024】
弁軸ホルダー42には、上ストッパ体48が取り付けられている。ガイドブッシュ43の大径円筒部43aには、下ストッパ体49が取り付けられている。弁軸ホルダー42が回転することにより下限位置に至ると、上ストッパ体48が下ストッパ体49に当接して弁軸ホルダー42のさらなる回転が規制される。
【0025】
弁体50は、弁軸44の下端部に一体的に設けられている。弁体50は、駆動機構40によって上下方向に移動するように駆動され、弁室13に開口するポート16を開閉する。
【0026】
ステーターユニット60は、嵌合穴60aを有しており、嵌合穴60aにキャン30が嵌合されることによりキャン30の外側に配置される。ステーターユニット60は、ステーター61と、合成樹脂製のモールド62と、を有している。
【0027】
ステーター61は、ヨーク61aと、ヨーク61aにボビン61bを介して巻回されたコイル61cとを上下2段に配置して構成されている。このステーター61とローター41とでステッピングモータを構成する。
【0028】
モールド62は、ステーター61を覆うように配置されている。また、モールド62は、弁本体10側に向けて突出する円筒状の筒状部63を有している。筒状部63の内径は、弁本体10の本体部11の外径と同じである。筒状部63は、溝部25を囲むように配置されている。筒状部63の下端部の内側には、弁本体10の本体部11が嵌合されている。
【0029】
封止部材70は、ゴム材などの弾性材料で構成された円環状のOリングである。封止部材70は、弁本体10の本体部11の上面11aと、円筒部12の外周面12aと、鍔部材20の下面20cと、で環状に形成された溝部25に配置されている。封止部材70は、弁本体10の円筒部12の外周面12aとステーターユニット60の筒状部63の内周面63aとに挟まれた状態(圧縮状態)で配置されている。封止部材70により、ステーターユニット60の嵌合穴60aに水分が進入することを抑制する。本実施例において、封止部材70は、弁本体10の本体部11の上面11aに接している。
【0030】
電動弁1において、弁本体10(本体部11および円筒部12)、ポート16、キャン30、ローター41、弁軸ホルダー42、ガイドブッシュ43、弁軸44、弁体50、ステーター61および筒状部63は、それぞれの軸が軸線Lに一致する。換言すると、これらは全て同軸に配置されている。
【0031】
次に、電動弁1の動作について説明する。
【0032】
電動弁1は、コイル61cに一方向の電流を流すと、ステーター61が電磁力を発生してローター41が回転される。ローター41の回転とともに弁軸ホルダー42が回転して、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとのねじ送り作用により、弁軸ホルダー42が下方に移動する。弁軸ホルダー42とともに弁軸44も下方に移動して弁体50がポート16を閉じる。
【0033】
または、電動弁1は、コイル61cに他方向の電流を流すと、ステーター61が電磁力を発生してローター41が上記とは反対方向に回転される。ローター41の回転とともに弁軸ホルダー42が回転して、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとのねじ送り作用により、弁軸ホルダー42が上方に移動する。弁軸ホルダー42とともに弁軸44も上方に移動して弁体50がポート16を開く。
【0034】
以上より、本実施例の電動弁1によれば、弁本体10の上面11aと弁本体10の円筒部12と鍔部材20とで凹んだ溝部25が環状に形成されている。ステーターユニット60は、溝部25を囲むように配置された筒状部63を有している。そして、弁本体10の円筒部12とステーターユニット60の筒状部63とに挟まれた状態で、溝部25に封止部材70が配置されている。このようにしたことから、弁本体10の円筒部12の外周面を加工して環状の凹溝を設けたり、封止部材70を支持する部材を設けたりすることなく、封止部材70を配置できる。そのため、加工工程や部材を削減することができる。したがって、小型かつ安価な構成で水分の進入による腐食や錆を抑制できる。
【0035】
(第2実施例)
以下、本発明の第2実施例に係る電動弁について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の第2実施例に係る電動弁の軸線に沿う断面図(縦断面図)である。
【0036】
図2に示すように、第2実施例に係る電動弁2は、弁本体10Aと、鍔部材20と、キャン30と、駆動機構40と、弁体50と、ステーターユニット60Aと、封止部材70と、を有している。
【0037】
電動弁2は、上述した第1実施例の電動弁1と構成の異なる弁本体10Aおよびステーターユニット60Aを有すること以外は、電動弁1と同一(略同一含む)の構成である。以下の説明において、上述した第1実施例と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
弁本体10Aは、例えば、アルミニウム合金などの金属材料で構成されている。弁本体10Aは、直方体状の本体部11Aと、本体部11Aの上面11a(すなわち弁本体10Aの一面)から上方に向けて突出した円筒部12Aと、を有している。本体部11Aの内部には、弁室13が設けられている。本体部11Aには、図2の左方に延びる流路17と、図2の右方に延びる流路18と、が設けられている。流路17は、弁室13に接続されている。流路18は、ポート19を介して弁室13に接続されている。
【0039】
円筒部12Aの外周面12aの一部には、雄ねじ部12bが設けられている。本体部11Aには、上面11aに開口する雌ねじ部11bが設けられている。雄ねじ部12bが雌ねじ部11bに螺合されることで、本体部11Aと円筒部12Aとが一体的に結合されている。円筒部12Aの内側空間は、弁室13に接続されている。
【0040】
ステーターユニット60Aは、嵌合穴60aを有しており、嵌合穴60aにキャン30が嵌合されることによりキャン30の外側に配置される。ステーターユニット60Aは、ステーター61と、ケース62Aと、を有している。
【0041】
ケース62Aは、内側空間にステーター61を収容するように配置されている。また、ケース62Aは、弁本体10A側に向けて突出する円筒状の筒状部63Aを有している。筒状部63Aは、環状に形成された溝部25を囲むように配置されている。筒状部63Aの下端部は、弁本体10Aの本体部11Aの上面11aに接している。筒状部63Aの内周面63bは、鍔部材20側から上面11a側に向かうにしたがって徐々に径が大きくなるテーパ状に形成されている。
【0042】
本実施例の電動弁2も、上述した第1実施例の電動弁1と同様の作用効果を奏する。
【0043】
また、電動弁2は、弁本体10Aの円筒部12Aが、外周面12aに雄ねじ部12bが設けられ、雄ねじ部12bが螺合される雌ねじ部11bが、弁本体10Aの本体部11Aの上面11aに開口するように設けられている。そして、封止部材70が、弁本体10Aの本体部11Aの上面11aに接して配置されている。このようにすることで、封止部材70により雄ねじ部12bと雌ねじ部11bとの螺合箇所に水分が進入することを抑制できる。
【0044】
また、ステーターユニット60Aの筒状部63Aが、鍔部材20側から弁本体10Aの本体部11Aの上面11a側に向かうにしたがって徐々に径が大きくなる内周面63bを有している。このようにすることで、ステーターユニット60Aの内側にキャン30を挿入して、環状に形成された溝部25を囲むようにステーターユニット60Aの筒状部63Aを配置する際に、筒状部63Aの内周面63bによって封止部材70が弁本体10Aの本体部11Aの上面11a側に向けて押されて、封止部材70を上面11aに押し付けることができる。そのため、封止部材70により雄ねじ部12bと雌ねじ部11bとの螺合箇所に水分が進入することをより効果的に抑制できる。
【0045】
(第3実施例)
以下、本発明の第3実施例に係る電動弁について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の第3実施例に係る電動弁の軸線に沿う断面図(縦断面図)である。
【0046】
図3に示すように、第3実施例に係る電動弁3は、弁本体10Bと、鍔部材20と、キャン30と、駆動機構40Bと、弁体50Bと、ステーターユニット60Bと、封止部材70と、を有している。
【0047】
電動弁3は、上述した第1実施例の電動弁1と構成の異なる弁本体10B、駆動機構40B、弁体50Bおよびステーターユニット60Bを有すること以外は、電動弁1と同一(略同一含む)の構成を有する。以下の説明において、上述した第1実施例と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
弁本体10Bは、例えば、アルミニウム合金などの金属材料で構成されている。弁本体10Bは、直方体状の本体部11Bと、本体部11Bの上面11a(すなわち弁本体10Bの一面)から上方に向けて突出した円筒部12Bと、を有している。本体部11Bの内部には、弁室13が設けられている。本体部11Bには、図3の左方に延びる流路17と、図3の右方に延びる流路18と、が設けられている。流路17は、弁室13に接続されている。流路18は、ポート19を介して弁室13に接続されている。
【0049】
円筒部12Bの外周面12aの一部には、雄ねじ部12bが設けられている。本体部11Bには、上面11aに開口する雌ねじ部11bが設けられている。雄ねじ部12bが雌ねじ部11bに螺合されることで、本体部11Bと円筒部12Bとが一体的に結合されている。円筒部12Bの内側空間は、弁室13に接続されている。
【0050】
駆動機構40Bは、弁体50Bを上下方向(開閉方向)に駆動する。駆動機構40Bは、ローター81と、遊星歯車機構85と、案内部材95と、昇降軸96と、ボール97と、開弁ばね98と、を有している。
【0051】
ローター81は、キャン30の内径より若干小さい外径を有する略円筒状に形成されている。ローター81は、永久磁石を有している。ローター81は、キャン30の内側に回転可能に配置されている。ローター81の上端部は、ローター支持部材82を介してローター軸83に一体的に結合されている。このローター81と後述するステーターユニット60Bのステーター61とで、ステッピングモータを構成する。
【0052】
遊星歯車機構85は、ローター81の内側に配置されている。遊星歯車機構85は、太陽歯車86と、固定リング歯車87と、複数の遊星歯車88と、キャリア89と、出力歯車90と、出力軸91と、ギヤケース92と、を有している。太陽歯車86は、ローター支持部材82に一体に設けられている。固定リング歯車87は、円筒状のギヤケース92の上端に固定されている。遊星歯車88は、太陽歯車86と固定リング歯車87との間に配置されてそれぞれに噛み合っている。キャリア89は、複数の遊星歯車88を回転自在に支持する。出力歯車90は、複数の遊星歯車88に外側から噛み合う有底筒状に形成されている。出力軸91は、その上部が出力歯車90の底部に形成された孔に圧入等によって固定されている。ギヤケース92は、弁本体10Bの円筒部12Bの上端部に取り付けられている。
【0053】
案内部材95は、円筒状に形成されており、弁本体10Bの円筒部12Bの上端部の内側に配置されている。案内部材95の内周面には雌ねじ部95aが設けられている。
【0054】
昇降軸96は、円柱状に形成されており、案内部材95の雌ねじ部95aに螺合される雄ねじ部96aが外周面に設けられている。昇降軸96は、上端面から上方に突出する平板部96bが設けられている。平板部96bは、遊星歯車機構85の出力軸91に設けられたスリット91aに上下方向に移動可能に挿入されている。昇降軸96は、出力軸91の回転に伴って回転され、雄ねじ部96aと雌ねじ部95aとのねじ送り作用によって上下方向に移動する。
【0055】
ボール97は、昇降軸96と弁体50Bとの間に配置されている。開弁ばね98は、圧縮コイルばねで構成されており、弁体50Bと弁本体10Bとの間に配置されている。
【0056】
弁体50Bは、略円柱状に形成されている。弁体50Bの下端部は、ポート19と上下方向に対向して配置されている。弁体50Bの上端部は、ボール97を介して昇降軸96と接続されている。弁体50Bは、開弁ばね98によって上方に向けて押されている。
【0057】
ステーターユニット60Bは、嵌合穴60aを有しており、嵌合穴60aにキャン30が嵌合されることによりキャン30の外側に配置される。ステーターユニット60Bは、ステーター61と、合成樹脂製のモールド62Bと、を有している。
【0058】
モールド62Bは、ステーター61を覆うように配置されている。また、モールド62Bは、弁本体10B側に向けて突出する円筒状の筒状部63Bを有している。筒状部63Bは、環状に形成された溝部25を囲むように配置されている。筒状部63Bの下端部は、弁本体10Bの本体部11Bの上面11aに接している。筒状部63Bの内周面63bは、鍔部材20側から上面11a側に向かうにしたがって徐々に径が大きくなるテーパ状に形成されている。
【0059】
次に、電動弁3の動作について説明する。
【0060】
電動弁3は、コイル61cに一方向の電流を流すと、ステーター61が電磁力を発生してローター81が回転される。ローター81が回転されると遊星歯車機構85の出力軸91とともに昇降軸96が回転されて、昇降軸96の雄ねじ部96aと案内部材95の雌ねじ部95aとねじ送り作用により、昇降軸96が下方に移動する。昇降軸96によって弁体50Bが下方に押されて弁体50Bがポート19を閉じる。
【0061】
または、電動弁3は、コイル61cに他方向の電流を流すと、ステーター61が電磁力を発生してローター81が上記とは反対方向に回転される。ローター81が回転されると遊星歯車機構85の出力軸91とともに昇降軸96が回転されて、昇降軸96の雄ねじ部96aと案内部材95の雌ねじ部95aとねじ送り作用により、昇降軸96が上方に移動する。昇降軸96が上方に移動すると、開弁ばね98によって弁体50Bが上方に押されて弁体50Bがポート19を開く。
【0062】
本実施例の電動弁3も、上述した第2実施例の電動弁2と同様の作用効果を奏する。
【0063】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
(第1実施例)
1…電動弁、10…弁本体、11…本体部、11a…上面、12…円筒部、12a…外周面、13…弁室、14、15…導管、16…ポート、20…鍔部材、20a…内周縁、20b…外周縁、20c…下面、25…溝部、30…キャン、30a…下端、40…駆動機構、41…ローター、42…弁軸ホルダー、42c…雌ねじ部、43…ガイドブッシュ、43a…大径円筒部、43b…小径円筒部、43c…雄ねじ部、44…弁軸、44a…胴部、44b…上部小径部、45…支持リング、46…プッシュナット、47…圧縮コイルばね、48…上ストッパ体、49…下ストッパ体、50…弁体、60…ステーターユニット、60a…嵌合穴、61…ステーター、61a…ヨーク、61b…ボビン、61c…コイル、62…モールド、63…筒状部、63a…内周面、70…封止部材、L…軸線
(第2実施例)
2…電動弁、10A…弁本体、11A…本体部、11b…雌ねじ部、12A…円筒部、12b…雄ねじ部、17、18…流路、19…ポート、60A…ステーターユニット、62A…ケース、63A…筒状部、63b…内周面
(第3実施例)
3…電動弁、10B…弁本体、11B…本体部、11b…雌ねじ部、12B…円筒部、12b…雄ねじ部、17、18…流路、19…ポート、40B…駆動機構、50B…弁体、60B…ステーターユニット、62B…モールド、63B…筒状部、63b…内周面、81…ローター、82…ローター支持部材、83…ローター軸、85…遊星歯車機構、86…太陽歯車、87…固定リング歯車、88…遊星歯車、89…キャリア、90…出力歯車、91…出力軸、91a…スリット、92…ギヤケース、95…案内部材、95a…雌ねじ部、96…昇降軸、96a…雄ねじ部、96b…平板部、97…ボール、98…開弁ばね
図1
図2
図3