(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法及び当該抽出方法を用いて抽出した複合リン脂質を含有する機能性素材
(51)【国際特許分類】
C07F 9/10 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
C07F9/10 A
(21)【出願番号】P 2022189036
(22)【出願日】2022-11-28
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】322008999
【氏名又は名称】GLB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201503
【氏名又は名称】久野 能裕
(72)【発明者】
【氏名】張 敏
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-332030(JP,A)
【文献】特開昭64-016795(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1664586(CN,A)
【文献】online,2021年06月20日,https://web.archive.org/web/20210620152029/https://www.glb-corp.net/index.html,Retrieved from the Internet, Retrieved on 2023.10.26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/10
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体器官から複合リン脂質を抽出する方法であって、
前記生体器官は、豚の脳であり、
前記豚の脳をペースト状の第1豚脳ペーストに加工後、前記第1豚脳ペーストを凍結させて凍結第1豚脳ペーストにする前処理工程と、
前記凍結させた前記凍結第1豚脳ペーストを摩砕してペースト状の第2豚脳ペーストにする摩砕工程と、
前記摩砕工程で摩砕した前記第2豚脳ペーストを加熱し、加熱後の前記第2豚脳ペーストに対してケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物を回収する脱脂工程と、
前記脱脂工程で回収した沈殿物に対してアルコール溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した濾液である複合リン脂質含有溶液を回収するアルコール抽出工程と、
前記アルコール抽出工程で回収した複合リン脂質含有溶液からアルコール成分を分離して、ペースト状の複合リン脂質含有体に濃縮する分離濃縮工程と、
前記分離濃縮工程で濃縮した前記ペースト状のグリセロリン脂質ペーストを希釈撹拌後、凍結乾燥することで、複合リン脂質粉末を生成する凍結乾燥工程を備えており、
前記前処理工程の前記凍結は、-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分以内で行い、
前記摩砕工程は、前記前処理工程で凍結させた前記凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持しつつ、且つ石臼式摩砕機を用いて前記凍結第1豚脳ペーストの豚脳細胞が破壊されるまで摩砕して、前記ペースト状の第2豚脳ペーストにすることを特徴とする豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法。
【請求項2】
前記前処理工程は、前記豚の脳を前記ペースト状の第1豚脳ペーストに加工後、前記第1豚脳ペーストを凍結させて、前記凍結させた凍結第1豚脳ペーストをフレーク状に切削することを特徴とする請求項1に記載の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法。
【請求項3】
前記脱脂工程のケトン系溶媒は、アセトンであり、
前記脱脂工程において加熱後の前記第2豚脳ペーストに対して前記ケトン系溶媒である前記アセトンを加えて加熱撹拌する際の加熱温度の範囲は、50℃以上65℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法。
【請求項4】
前記前処理工程の凍結は、-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分超過して継続して行うことを特徴とする請求項3に記載の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法。
【請求項5】
前記脱脂工程及び前記アルコール抽出工程における加熱及び加熱撹拌は、加熱時又は加熱前に反応容器、反応タンク及び反応液に対して不活性ガスを充填させて、不活性ガス雰囲気に置換した後に前記加熱及び前記加熱撹拌することを特徴とする請求項4に記載の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法。
【請求項6】
前記摩砕工程は、前記石臼式摩砕機に投入する直前の前記凍結第1豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-15℃~-5℃の温度範囲であり、前記石臼式摩砕機で前記凍結第1豚脳ペーストを摩砕した直後の前記第2豚脳ペーストに対して前記放射温度計を用いて測定した値が-5℃~5℃の温度範囲にすることで前記凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持することを特徴とする請求項5に記載の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法。
【請求項7】
前記摩砕工程は、前記凍結第1豚脳ペーストの前記豚脳細胞が破壊されて露出した前記凍結第1豚脳ペーストの前記豚脳細胞の膜成分である豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が50nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法及び当該抽出方法を用いて抽出した複合リン脂質を含有する機能性素材に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質とは、分子内に脂肪酸(長鎖カルボン酸)を結合した物質であり、当該分子から脂肪酸が遊離したもの及び遊離脂肪酸を含めた物質群を意味する。
脂質は、単純脂質と複合脂質に分類される。単純脂質とは、脂肪酸とアルコールがエステル結合した脂質であり、例として中性脂肪、コレステロールエステルが挙げられ、アセトンに可溶である。複合脂質とは、アルコールと脂肪酸のエステルに加えて、分子内にリン酸、糖、窒素化合物を含む脂質であり、例としてリン脂質、糖脂質が挙げられ、アセトンに不溶である。したがって、複合脂質は、親水性(リン酸など)と疎水性(脂肪酸)の両方を併せ持つ両親媒性物質である。複合脂質は、一般的に、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質に分類される。
【0003】
グリセロリン脂質は、グリセロール骨格をもつリン脂質の総称で、生体膜の主要脂質成分であり、例としてホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)などが挙げられる。
その他、認知症に有効な成分であるプラズマローゲンもグリセロリン脂質の一種である。
なお、プラズマローゲンは、グリセロール骨格のsn-1位に活性酸素と結合しやすいビニルエーテル結合を有するため、抗酸化作用が非常に高く、脳神経細胞の酸化抑制作用がある。また、プラズマローゲンは、脳神経細胞にダメージを与えるアミロイドβタンパクの蓄積を抑制する脳へのダメージ抑制作用、脳神経細胞の新生、学習記憶改善効果などに寄与する。
スフィンゴリン脂質とは、スフィンゴシン骨格をもつリン脂質の総称で、生体膜の主要脂質成分であり、例としてセラミド1-リン酸の誘導体であるスフィンゴミエリン、セラミド1-ホスホン酸の誘導体であるセラミドシリアチンなどが挙げられる。
複合リン脂質(複合脂質のうち、リン脂質に該当するもの)の原材料である生体組織器官としては、食用とされる動物から食用部位を回収した後の廃棄部位(牛、豚、鶏の肉、皮、内臓など)が挙げられるが、特に、脳は、世界各地で食用とされており、臓器の中で最も脂質に富んだ器官である。
【0004】
一般的に、複合リン脂質の製造方法としては、原材料である生体組織器官の細胞膜に含まれている複合リン脂質をアルコール抽出する方法が知られている。
例えば、「家禽ムネ肉を、(a)低温・低酸素雰囲気下でのミンチ化工程、(b)乳化分散剤を用いた低温下でのペースト化工程および(c)低温乾燥での粉末化工程の中から選ばれる少なくとも一つの工程によって形状変換することにより、リン脂質含有機能性素材を製造する方法であって、ブラズマローゲン型グリセロリン脂質とスフィンゴミエリンとの合計量中の前者の含有割合が85質量%以上であり、かつ総脂質中の全リン脂質の含有割合が40質量%以上であるリン脂質含有機能性素材を得ることを特徴とする、リン脂質含有機能性素材の製造方法。」が挙げられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複合リン脂質を抽出する原材料の動物組織としては、臓器の中で最も脂質に富んだ器官で、且つ食用である豚の脳が好適である。また、複合リン脂質を含む膜成分を細胞外部に取り出すためには、細胞を破壊することが好適である。
この点、特許文献1のプラズマローゲン型リン脂質の製造方法では、原材料の生体組織器官として家禽ムネ肉を用いてミンチ化、ペースト化をしている。
しかしながら、特許文献1のミンチ化において市販ミンチ機を用いて数mmサイズのミンチ処理をしても(「特許文献1 P14の12行目、13行目(実施例1 1.高次機能性リン脂質含有機能性ミンチ)」を参照)、単に挽肉状になるだけで細胞破壊には至らず、複合リン脂質を含む膜成分を細胞の外部に露出できず、特許文献1のペースト化においてカッターやミキサー乃至はプロセッサー(市販家電のフードプロセッサー)を用いたとしても(「特許文献1 P8の24行目[(b)工程]、同P19の13行目(実施例1 2.高次機能性リン脂質含有機能性ペーストの調整)」を参照)、ミンチ化と同様に、細胞破壊に至らず、複合リン脂質を含む膜成分を細胞の外部に露出できない。
そのため、複合リン脂質を抽出する初期段階の粉砕工程で、細胞を破壊して複合リン脂質を含む膜成分を細胞の外部に露出させていない問題点があった。
また、脳は、弾性体であり、臓器の中で最も脂質に富んだ器官のため、弾性、且つ滑り易い特性を有しており、粉砕工程で粉砕する際に工夫を施す必要があるという原材料を脳とした場合の特有の問題点があった。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、複合リン脂質を抽出する初期段階の粉砕工程で、体積膨張した豚脳細胞が破壊されて、複合リン脂質を含む膜成分が豚脳細胞の外部に露出することで、高濃度の複合リン脂質の抽出を実現させると共に、弾性、且つ滑り易い特性を有する脳を摩砕する際の摩砕困難化を回避した、豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法及び当該抽出方法を用いて抽出した複合リン脂質を含有する機能性素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法の特徴構成は、
生体器官から複合リン脂質を抽出する方法であって、
前記生体器官は、豚の脳であり、
前記豚の脳をペースト状の第1豚脳ペーストに加工後、前記第1豚脳ペーストを凍結させて凍結第1豚脳ペーストにする前処理工程と、
前記凍結させた前記凍結第1豚脳ペーストを摩砕してペースト状の第2豚脳ペーストにする摩砕工程と、
前記摩砕工程で摩砕した前記第2豚脳ペーストを加熱し、加熱後の前記第2豚脳ペーストに対してケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物を回収する脱脂工程と、
前記脱脂工程で回収した沈殿物に対してアルコール溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した濾液である複合リン脂質含有溶液を回収するアルコール抽出工程と、
前記アルコール抽出工程で回収した複合リン脂質含有溶液からアルコール成分を分離して、ペースト状の複合リン脂質含有体に濃縮する分離濃縮工程と、
前記分離濃縮工程で濃縮した前記ペースト状のグリセロリン脂質ペーストを希釈撹拌後、凍結乾燥することで、複合リン脂質粉末を生成する凍結乾燥工程を備えており、
前記前処理工程の前記凍結は、-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分以内で行い、
前記摩砕工程は、前記前処理工程で凍結させた前記凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持しつつ、且つ石臼式摩砕機を用いて前記凍結第1豚脳ペーストの豚脳細胞が破壊されるまで摩砕して、前記ペースト状の第2豚脳ペーストにさせた点にある。
【0009】
本構成の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法によれば、豚脳細胞の凍結により細胞内に形成した氷晶が細胞を体積膨張させた状態で、石臼式摩砕機を用いて摩砕する結果、石臼式摩砕機の上臼と下臼に相当する上下2枚のグラインダー(砥石)の間に凍結第1豚脳ペーストが挟まれて、圧縮・剪断・転がり摩擦の負荷によって、体積膨張した豚脳細胞が破壊されて、複合リン脂質を含む膜成分が豚脳細胞の外部に露出することで、高濃度の複合リン脂質の抽出が実現できる。
また、凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持することで、脳の弾性を喪失させて、且つ摩砕熱による融解開始に伴う豚脳油脂成分の分離を極力抑制した状態で摩砕する結果、弾性、且つ滑り易い特性を有する脳を摩砕する際の摩砕困難化を回避できるのと同時に、豚脳細胞の膜成分であるリン脂質の酸化を抑制することで、高濃度、且つ高品質の複合リン脂質の抽出が実現できる。
さらに、石臼式摩砕機を用いて、凍結第1豚脳ペーストの豚脳細胞が破壊されて露出した凍結第1豚脳ペーストの豚脳細胞の膜成分である豚脳複合リン脂質ナノ粒子は、丸みを帯びて一次粒子同士の接触面積が小さくなる。
その結果として、脱脂工程において、豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子同士の凝集である二次凝集が生じにくく、分散性が向上するため、脱脂工程のケトン系溶媒との馴染みが良くなり、複合リン脂質の抽出効率を向上できる。
【0010】
本発明に係る豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法において、
前記前処理工程は、前記豚の脳を前記ペースト状の第1豚脳ペーストに加工後、前記第1豚脳ペーストを凍結させて、前記凍結させた凍結第1豚脳ペーストをフレーク状に切削することが好ましい。
【0011】
本構成の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法によれば、フレーク状に切削したフレーク状凍結第1豚脳ペーストは、薄板状のため、石臼式摩砕機に対して投入した際に、球状等と比較して、隣接するフレーク状凍結第1豚脳ペースト同士の接触面積が大きくなり、且つ隣接するフレーク状凍結第1豚脳ペースト同士が、石臼式摩砕機の上臼と下臼に相当する上下2枚のグラインダー(砥石)と対向するように、積層状に堆積され易くなるため、効率良く摩砕できる。
【0012】
本発明に係る豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法において、
前記脱脂工程のケトン系溶媒は、アセトンであり、
前記脱脂工程において加熱後の前記第2豚脳ペーストに対して前記ケトン系溶媒である前記アセトンを加えて加熱撹拌する際の加熱温度の範囲は、50℃以上65℃以下であることが好ましい。
【0013】
本構成の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法によれば、加熱温度が50℃以上であれば、第2豚脳ペーストに含有する豚脳組織の成分である脂質が固まることなく、濾過装置の網を通して複合リン脂質、タンパク、膜タンパクが沈殿するのと同時に、加熱温度が65℃以下であれば、加熱温度が65℃に近づくにつれて、第2豚脳ペーストに含有する豚脳組織の成分である脂質のうち、アセトン可溶性の脂質の除去が次第に促進される結果として、脱脂が次第に良くなる。
【0014】
本発明に係る豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法において、
前記前処理工程の凍結は、-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分超過して継続して行うことが好ましい。
【0015】
本構成の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法によれば、豚脳細胞の外部に細胞外氷結晶が形成されて、細胞外凍結が発生した後、豚脳細胞の外部に形成された細胞外氷結晶が十分に成長して肥大化する。その結果、十分に成長して肥大化した細胞外氷結晶により、豚脳細胞壁が物理的な作用を受けることで破壊されて、複合リン脂質を含む膜成分が豚脳細胞の外部に露出することで、より高濃度の複合リン脂質の抽出が実現できる。
【0016】
本発明に係る豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法において、
前記脱脂工程及び前記アルコール抽出工程における加熱及び加熱撹拌は、加熱時又は加熱前に反応容器、反応タンク及び反応液に対して不活性ガスを充填させて、不活性ガス雰囲気に置換した後に前記加熱及び前記加熱撹拌することが好ましい。
【0017】
本構成の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法によれば、反応容器、タンク及び反応液から酸素を追い出すことで、複合リン脂質の酸化抑制となる結果として、本発明により抽出した複合リン脂質の酸化防止ができ、より一層高濃度且つ高品質の複合リン脂質の抽出が実現できる。
【0018】
本発明に係る豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法において、
前記摩砕工程は、前記石臼式摩砕機に投入する直前の前記凍結第1豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-15℃~-5℃の温度範囲であり、前記石臼式摩砕機で前記凍結第1豚脳ペーストを摩砕した直後の前記第2豚脳ペーストに対して前記放射温度計を用いて測定した値が-5℃~5℃の温度範囲にすることで前記凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持することが好ましい。
【0019】
本構成の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法によれば、凍結第1豚脳ペーストの凍結状態をより保持することで、脳の弾性を喪失させて、且つ融解開始に伴う豚脳油脂成分の分離をより抑制した状態で摩砕する結果、弾性、且つ滑り易い特性を有する脳を摩砕する際の摩砕困難化をより回避できるのと同時に、豚脳細胞の膜成分であるリン脂質の酸化を抑制することで、高濃度、且つより高品質の複合リン脂質の抽出が実現できる。
【0020】
本発明に係る豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法において、
前記摩砕工程は、前記凍結第1豚脳ペーストの前記豚脳細胞が破壊されて露出した前記凍結第1豚脳ペーストの前記豚脳細胞の膜成分である豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が50nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0021】
本構成の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法によれば、豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が50nm以上の場合、一次粒子同士の凝集である二次凝集がより生じにくく、分散性を向上でき、豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が100nm以下の場合、豚脳複合リン脂質ナノ粒子の比表面積がより増大する結果として、脱脂工程のケトン系溶媒との馴染みが良くなり、ケトン系溶媒を加えて濾過した複合リン脂質を含む沈殿物の回収が良くなるため、複合リン脂質の抽出効率をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明に係る豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法は、前処理工程、摩砕工程、脱脂工程、アルコール抽出工程、分離濃縮工程を備えている。下記に、各工程を説明する。
【0026】
<前処理工程>
前処理工程は、豚の脳をペースト状の第1豚脳ペーストに加工後、第1豚脳ペーストを凍結させて凍結第1豚脳ペーストにする工程である。
【0027】
本発明は、原材料である生体器官は、豚の脳を採用する。
原材料である生体器官の鮮度の高低と生体器官から抽出される複合リン脂質であるグリセロリン脂質の一種であるプラズマローゲンの含有量の増減は互いに相関関係がある。この点、豚の脳に関しては、豚処分後の豚の脳の冷凍保存期間が、半年経過すると豚の脳内に残存するプラズマローゲンの量はおよそ半分にまで減少すると一般的に考えられている。したがって、原材料である豚の脳の鮮度が高いほど、豚の脳細胞(豚脳細胞)から抽出される複合リン脂質のプラズマローゲンの含有量が多くなるのに対して、原材料である豚の脳の鮮度が低いほど、豚の脳細胞(豚脳細胞)から抽出される複合リン脂質のプラズマローゲンの含有量が少なくなる。
本発明においては、原材料である豚の脳の鮮度低下を防止するために、豚処分後の冷凍保存期間を短縮しており、豚処分後の冷凍保存期間を半年以内としている。
【0028】
「第1豚脳ペースト」とは、本発明の1回目のペースト加工で生成したものであり、前処理工程において、原材料である豚の脳をペースト状に加工したものを意味する。
豚の脳をペースト状の第1豚脳ペーストに加工する際は、コロイドミルを用いて行う。
原材料である豚の脳を直接凍結又は粗粉砕後に凍結でなく、一旦ペースト状に加工した上で凍結させた理由は、脳は、弾性体であり、臓器の中で最も脂質に富んだ器官のため、弾性、且つ滑り易い特性を有しており、摩砕機のグラインダー(摩砕用砥石)との馴染み、接触が良くないため、前処理工程の段階で一旦ペースト状にすることで、脳の弾性、且つ滑り易い特性を喪失させて、摩砕工程における摩砕機のグラインダー(摩砕用砥石)との馴染み、接触を良くするためである。
なお、コロイドミルのクリアランスは、2μmが好ましい。
【0029】
第1豚脳ペーストを凍結する際の温度設定は、-20℃以下である。
前処理工程の第1豚脳ペーストの凍結は、急速凍結の条件に基づいて、エアブラスト凍結機を用いて行う。具体的には、第1豚脳ペーストの凍結過程で、-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分以内で行う。
「急速凍結」とは、第1豚脳ペーストの凍結過程で、氷結晶が生成される温度帯(氷結晶生成温度帯)である-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分以内で凍結することで、細胞膜の内外の浸透圧の差に伴う細胞膜を通しての水分の移動が間に合わず、脱水が十分に起こる前に細胞内部より凍結(細胞内凍結)が発生することを意味する。
急速凍結では、下記の緩慢凍結と比較して、細胞内部に形成された細胞内氷結晶は大きく成長することはないが、細胞自体は少なからず体積膨張する。
【0030】
なお、前処理工程の第1豚脳ペーストの凍結は、緩慢凍結の条件に基づいて、温度変化の条件設定をした冷凍装置を用いて行ってもよい。具体的には、第1豚脳ペーストの凍結過程で、-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分超過して継続して凍結してもよい。
「緩慢凍結」とは、第1豚脳ペーストの凍結過程で、氷結晶が生成される温度帯(氷結晶生成温度帯)である-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分超過して継続して凍結することで、細胞外部より凍結(細胞外凍結)が発生することを意味する。
緩慢凍結では、細胞外部に形成された細胞外氷結晶が大きく成長して肥大化することで細胞が破壊される。
具体的に、第1豚脳ペーストの凍結過程で、-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分超過して継続して凍結した結果としては、まず、第1豚脳ペーストに含まれる豚脳細胞の外部の水分が凍結して細胞外氷結晶が形成される。次に、さらに冷却を続けると豚脳細胞膜の内外の浸透圧の差により、豚脳細胞の内部の水分の一部が豚脳細胞の外部に移動して当該細胞外氷結晶の表面で凍結することで細胞外凍結が発生して、当該細胞外氷結晶は成長して肥大化する。細胞外凍結は、細胞内の水分が外部に浸出するため、細胞自体が収縮するのと同時に、十分に成長して肥大化した細胞外氷結晶により、豚脳細胞壁が物理的作用を受けることで破壊されて、複合リン脂質を含む膜成分が豚脳細胞の外部に露出する。
【0031】
なお、前処理工程は、第1豚脳ペーストを凍結させた凍結第1豚脳ペーストをフレーク状に切削してもよい。この場合、豚脳細胞の凍結により細胞内に形成した氷晶が細胞を体積膨張させた状態を保持して摩砕工程に移行するために、フレーク状に切削する際に、凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持しつつ、切削する必要がある。
「フレーク状」とは、主面を形成する一対の板面と当該板面に対して直交する側面を備えており、厚さ3mm~8mm程度、長辺が50mm~150mm程度、短辺が10mm~30mm程度の略薄板状を意味する。
フレーク状に切削したフレーク状凍結第1豚脳ペーストにおける短軸bの長さに対する長軸aの長さの比(アスペクト比a/b)は、5以上が好ましく、7.5以上がより好ましく、15がより一層好ましい。
アスペクト比a/bが5以上であれば、フレーク状凍結第1豚脳ペーストが、摩砕工程の石臼式摩砕機に投入された際に、隣接するフレーク状凍結第1豚脳ペースト同士が細長く積層状に堆積され易くなるため、スペース的に効率よくフレーク状凍結第1豚脳ペーストを石臼式摩砕機に収納できる。また、アスペクト比a/bが7.5以上であれば、摩砕工程の石臼式摩砕機に投入された際に、隣接するフレーク状凍結第1豚脳ペースト同士がより細長く積層状に堆積され易くなるため、よりスペース的に効率良くフレーク状凍結第1豚脳ペーストを石臼式摩砕機に収納できる。さらに、アスペクト比a/bが15以上であれば、摩砕工程の石臼式摩砕機に投入された際に、隣接するフレーク状凍結第1豚脳ペースト同士がより一層細長く積層状に堆積され易くなるため、より一層スペース的に効率良くフレーク状凍結第1豚脳ペーストを石臼式摩砕機に収納できる。
「凍結状態を保持」とは、フレーカーに投入する直前の凍結第1豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-20℃~-10℃の温度範囲であり、フレーカーで凍結第1豚脳ペーストを切削した直後のフレーク状の第1豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-10℃~-5℃の温度範囲の状態を保つことを意味する。
凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持することで、脳の弾性を喪失させて、且つ剪断熱による融解開始に伴う豚脳油脂成分の分離を極力抑制した状態で切削する結果、弾性、且つ滑り易い特性を有する脳を切削する際の切削困難化を回避する。
【0032】
<摩砕工程>
摩砕工程は、前処理工程で凍結させた凍結第1豚脳ペーストを摩砕してペースト状の第2豚脳ペーストにする工程である。
具体的に、摩砕工程は、前処理工程で凍結させた凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持しつつ、且つ石臼式摩砕機を用いて凍結第1豚脳ペーストの豚脳細胞が破壊されるまで摩砕して、ペースト状の第2豚脳ペーストにする工程である。
【0033】
「凍結状態を保持」とは、石臼式摩砕機に投入する直前の凍結第1豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-15℃~-5℃の温度範囲であり、石臼式摩砕機で凍結第1豚脳ペーストを摩砕した直後のフレーク状の第2豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-5℃~0℃の温度範囲の状態を保つことを意味する。
「石臼式摩砕機」とは、2個の上臼と下臼からなる石臼を機械化した摩砕機である。
石臼式摩砕機を用いた摩砕の流れは、まず、2個の上臼と下臼に相当する固定されたグラインダー(摩砕用砥石)と回転駆動するグラインダー(摩砕用砥石)との間の間隔(クリアランス)を調整して摩砕対象物の粒径を調整する。次に、摩砕対象物をホッパーに投入することで、摩砕対象物が上記固定されたグラインダー(摩砕用砥石)と回転駆動するグラインダー(摩砕用砥石)との間に送り込まれる。その後、摩砕対象物が両グラインダーの間を通過することで摩砕対象物に対して圧縮・剪断・転がり摩擦の負荷がかかることにより摩砕される。
「豚脳細胞が破壊される」とは、豚脳細胞が摩砕されることで複合リン脂質を含む膜成分が豚脳細胞の外部に露出することであり、具体的には、固定されたグラインダー(摩砕用砥石)と回転駆動するグラインダー(摩砕用砥石)との間の間隔(クリアランス)の設定範囲が、10μm~20μmの範囲であることを意味する。この点、一般的に考えられている動物細胞の大きさは30μm~50μmであることを考慮すると、固定されたグラインダー(摩砕用砥石)と回転駆動するグラインダー(摩砕用砥石)との間の間隔(クリアランス)の設定範囲が、10μm~20μmの範囲の場合、「豚脳細胞が破壊された」に等しい。
「第2豚脳ペースト」とは、本発明の2回目のペースト加工であり、摩砕工程において、凍結第1豚脳ペーストを摩砕してペースト状に加工したものを意味する。
【0034】
なお、固定された固定グラインダー(摩砕用砥石)と回転駆動する回転グラインダー(摩砕用砥石)との間の間隔(クリアランス)の設定範囲は、10μm~20μmの範囲が好ましい。
クリアランスの設定範囲が10μm未満の場合、石臼式摩砕機の石臼に相当する2枚のグラインダー(摩砕用砥石)と摩砕対象物(フレーク状凍結豚脳ペースト)の間に発生する摩擦力が大きくなり過ぎて、摩砕対象物が焦げる可能性があるのに対して、クリアランスの設定範囲が20μm超過の場合、摩砕対象物の表面積が小さくなるため、脱脂工程、アルコール抽出工程におけるケトン系溶媒、アルコール溶媒との馴染みが悪くなり、複合リン脂質含有溶液の回収率が悪くなる。
クリアランスの設定範囲が10μm以上20μm以下の範囲であれば、上記摩砕対象物が焦げる可能性がなく、且つ上記複合リン脂質含有溶液の回収率が悪くなることもなく、摩砕対象物であるフレーク状凍結豚脳ペーストの豚脳細胞を完全に破壊できる。
【0035】
なお、「豚脳細胞が破壊される」意義の別の表現としては、豚脳細胞が摩砕されることで複合リン脂質を含む膜成分が豚脳細胞の外部に露出した複合リン脂質を含む膜成分である豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が50nm以上100nm以下の状態であることが挙げられる。この点、一般的に考えられている動物細胞の大きさは30μm~50μmであることを考慮すると、当該豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が50nm以上100nm以下の場合、「豚脳細胞が破壊された」に等しい。
豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径の測定方法については、下記の実施例で説明する。
なお、豚脳細胞を破壊した際の第1豚脳ペーストの豚脳細胞の膜成分である豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径は50nm以上100nm以下が好ましい。
豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が50nm未満の場合、豚脳複合リン脂質ナノ粒子同士の接触面積の増加に伴い、一次粒子同士の凝集である二次凝集がより生じやすくなり、分散性の低下の問題として脱脂工程のケトン系溶媒との馴染みがより悪くなり、ケトン系溶媒を加えて濾過した複合リン脂質を含む沈殿物の回収が悪くなる結果として、複合リン脂質の抽出効率がより低下する。
豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が100nm超過の場合、二次凝集が少なく、分散性に優れる反面、少なからず豚脳複合リン脂質ナノ粒子の比表面積が小さくなるため、脱脂工程のケトン系溶媒との馴染みがより悪くなり、ケトン系溶媒を加えて濾過した複合リン脂質を含む沈殿物の回収が悪くなる結果として、複合リン脂質の抽出効率がより低下する。
豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が50nm以上の場合、一次粒子同士の凝集である二次凝集がより生じにくく、分散性を向上でき、豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均粒子径が100nm以下の場合、豚脳複合リン脂質ナノ粒子の比表面積がより増大する結果として、脱脂工程のケトン系溶媒との馴染みが良くなり、ケトン系溶媒を加えて濾過した複合リン脂質を含む沈殿物の回収が良くなるため、複合リン脂質の抽出効率をより向上できる。
【0036】
<脱脂工程>
脱脂工程は、摩砕工程で摩砕した第2豚脳ペーストを加熱することで脂質が溶剤により抽出し易くなり、加熱後の第2豚脳ペーストに対してケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物を回収する工程であり、ケトン系溶媒、ケトン系溶媒に溶解した脂質及び豚の脳に含まれる水溶性物質が除去される。
具体的に、脱脂工程は、摩砕工程で摩砕した第2豚脳ペーストを加熱して、加熱後の第2豚脳ペーストに対して第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過して、第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物に対して第2ケトン系溶媒を加えて加熱攪拌後に濾過して、第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物を回収する工程である。
【0037】
「第1ケトン系溶媒」とは、摩砕工程で摩砕した第2豚脳ペーストを加熱した後の第2豚脳ペーストに対して加える、脱脂工程で1回目に加えるケトン系溶媒を意味し、第2豚脳ペーストから脱脂、脱水を目的に加える溶媒である。
「第2ケトン系溶媒」とは、第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物に対して加える、脱脂工程で2回目に加えるケトン系溶媒を意味し、第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物から脱脂、脱水を目的に加える溶媒である。
「第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物」とは、摩砕工程で摩砕した第2豚脳ペーストを加熱した後の第2豚脳ペーストのうち、第1ケトン系溶媒に溶解した脂質、水分などの夾雑物質が除去された後の複合リン脂質、タンパク、膜タンパクを意味する。
「第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物」とは、第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物のうち、第2ケトン系溶媒に溶解した脂質、水分などの夾雑物質が除去された後の複合リン脂質、タンパク、膜タンパクを意味する。
なお、脱脂工程で用いるケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトン、及びイソプロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に複合リン脂質の難溶性の観点で、アセトンがより好ましい。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いる。
なお、脱脂工程において、加熱及び加熱撹拌するのは、豚脳組織の成分である脂質が細胞膜から分離するのを促進させるためである。
【0038】
第1ケトン系溶媒の量としては、例えば、原材料である生体器官の豚の脳の質量に対して、好ましくは質量比1.0~5.0倍、より好ましくは質量比2.0~4.0倍、特に好ましくは3.0倍を用いる。
第2ケトン系溶媒の量としては、例えば、第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物の質量に対して、好ましくは質量比1.0~5.0倍、より好ましくは質量比2.0~4.0倍、特に好ましくは3.0倍を用いる。
【0039】
第1ケトン系溶媒及び第2ケトン系溶媒がアセトンの場合、脱脂工程において前記第2豚脳ペーストに対して第1ケトン系溶媒及び第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度の範囲は、50℃以上65℃以下が好ましく、特に56℃が好ましい。
加熱温度が50℃未満の場合、第2豚脳ペーストに含有する豚脳組織の成分である脂質が固まりやすくなり、次第に濾過装置の網が詰まる結果として、最終的に濾過できなくなるのに対して、加熱温度が65℃超越の場合、リン脂質の酸化値が高まり、リン脂質の品質劣化に繋がる。
加熱温度が50℃以上であれば、第2豚脳ペーストに含有する豚脳組織の成分である脂質が固まることなく、濾過装置の網を通して複合リン脂質、タンパク、膜タンパクが沈殿するのと同時に、加熱温度が65℃以下であれば、加熱温度が65℃に近づくにつれて、第2豚脳ペーストに含有する豚脳組織の成分である脂質のうち、アセトン可溶性の脂質の除去が次第に促進される結果として、脱脂が次第に良くなる。
加熱温度が56℃の場合、アセトンの沸点が56℃であるため、第2豚脳ペーストに含有する豚脳組織の成分である脂質のうち、アセトン可溶性の脂質の除去が一層促進される結果として、脱脂が一層良くなる。
【0040】
なお、一般的に、脂質は、酸化されやすい性質を有しており、生体器官から抽出した複合リン脂質の酸化値は、複合リン脂質の抽出工程における加熱温度と加熱時間と相関関係がある。即ち、加熱温度が高いほど複合リン脂質は酸化されやすくなり、熱分解により側鎖が脱離され、加熱時間が長いほど酸化されやすくなるため、結果として、複合リン脂質の酸化値の上昇に伴い、品質が低下する。この点、酸化に伴う複合リン脂質の酸化値の上昇を防止するために、脱脂工程の加熱及び加熱撹拌については、加熱前又は加熱時に反応容器、反応タンク及び反応液に対して不活性ガスを充填させて、不活性ガス雰囲気に置換した後に加熱及び加熱撹拌してもよい。
なお、「不活性ガス」としては、窒素、アルゴン、炭酸ガス(二酸化炭素)、ヘリウム、ネオン、クリプトン及びキセノンの群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特にコスト面で窒素がより好ましい。
【0041】
<アルコール抽出工程>
アルコール抽出工程は、脱脂工程で回収した沈殿物に対してアルコール溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した濾液である複合リン脂質含有溶液を回収する工程である。
具体的に、アルコール抽出工程は、脱脂工程で回収した沈殿物に対して第1アルコール溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過して、濾液である第1複合リン脂質含有溶液を回収した後、第1複合リン脂質含有溶液を回収した後の沈殿物に対して第2アルコール溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過して濾液である第2複合リン脂質含有溶液を回収する工程である。
アルコール抽出工程は、脱脂工程の後に行う結果として、脱脂工程で回収した沈殿物に含まれる残量毒性を減少させている。
【0042】
「第1アルコール溶媒」とは、脱脂工程で回収した沈殿物に対して加える、アルコール抽出工程で1回目に加えるアルコール溶媒を意味し、脱脂工程で回収した沈殿物から複合リン脂質を溶解するために加える溶媒である。
「第2アルコール溶媒」とは、第1複合リン脂質含有溶液を回収した後の沈殿物に対して加える、アルコール抽出工程で2回目に加えるアルコール溶媒を意味し、第1アルコール溶媒を加えて加熱濾過した後の沈殿物から複合リン脂質を溶解するために加える溶媒である。
なお、アルコール抽出工程で用いるアルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1~5のアルコールが挙げられる。特に、エタノールは、安全性が高く、豚の脳に含まれる脂質を天然由来比に近い比率で効率的に抽出できるので、本発明のアルコール抽出溶媒として好適である。
なお、アルコール抽出工程において、加熱及び加熱撹拌するのは、豚脳組織の成分である脂質が細胞膜から分離するのを促進させるためである。
なお、アルコール抽出工程における加熱撹拌の条件としては、例えば、30℃~60℃程度で加温して、1時間~10時間程度撹拌することが挙げられる。
【0043】
「脱脂工程で回収した沈殿物」とは、グリセロリン脂質、タンパク、膜タンパクを意味する。
「第1複合リン脂質含有溶液を回収した後の沈殿物」とは、グリセロリン脂質、タンパク、膜タンパクを意味する。
「第1複合リン脂質含有溶液」とは、第1アルコール溶媒とグリセロリン脂質の混合溶液を意味する。
「第2複合リン脂質含有溶液」とは、第2アルコール溶媒とグリセロリン脂質の混合溶液を意味する。
【0044】
アルコール抽出工程で用いるアルコール溶媒は、アルコールをそのまま用いることが好ましいが、含水アルコールを用いることも可能である。抽出溶媒として含水アルコールを使用する場合、含水アルコール中の水分含量としては、例えば0.1~40重量%、好ましくは5~30重量%、更に好ましくは10~20重量%が挙げられる。
第1アルコール溶媒の量としては、例えば、脱脂工程で第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物に対して、好ましくは質量比1.0~10.0倍、より好ましくは質量比2.0~8.0倍、さらに好ましくは質量比3.0~6.0倍を用いる。
第2アルコール溶媒の量としては、例えば、アルコール抽出工程の第1複合リン脂質含有溶液を回収した後の沈殿物に対して、好ましくは質量比1.0~10.0倍、より好ましくは質量比2.0~8.0倍、さらに好ましくは質量比3.0~6.0倍を用いる。
【0045】
なお、アルコール抽出工程の加熱及び加熱撹拌においても、酸化による複合リン脂質の酸化値の上昇に伴う、品質低下を防止するために、脱脂工程の加熱及び加熱撹拌と同様に、加熱前又は加熱時に反応容器、反応タンク及び反応液に対して不活性ガスを充填させて、不活性ガス雰囲気に置換した後に加熱及び加熱撹拌してもよい。「不活性ガス」の種類は、脱脂工程と同様である。
【0046】
<分離濃縮工程>
分離濃縮工程は、アルコール抽出工程で回収した複合リン脂質含有溶液からアルコール成分を分離して、ペースト状の複合リン脂質含有体に濃縮する工程である。
具体的に、分離濃縮工程は、アルコール抽出工程で回収した第1複合リン脂質含有溶液である第1アルコール溶媒とグリセロリン脂質の混合溶液と第2複合リン脂質含有溶液第2アルコール溶媒とグリセロリン脂質の混合溶液を混合させた後、真空濃縮装置を用いて混合溶液からアルコール成分を分離して、ペースト状の複合リン脂質含有体であるグリセロリン脂質ペーストに濃縮する工程である。
【0047】
真空濃縮の濃縮温度は、53℃以上60℃以下が好ましく、50℃以上55℃以下がより好ましく、60℃が特に好ましい。
真空濃縮の真空度は、-0.03MP以上-0.12MP以下が好ましく、-0.05MP以上-0.10MP以下がより好ましく、-0.08MPが特に好ましい。
【0048】
<凍結乾燥工程>
凍結乾燥工程は、分離濃縮工程で濃縮したペースト状のグリセロリン脂質ペーストを希釈撹拌後、凍結乾燥することで、複合リン脂質粉末を生成する工程である。
具体的に、凍結乾燥工程は、ペースト状のグリセロリン脂質ペーストを50℃~70℃の温水で希釈して撹拌後、凍結乾燥機を用いて、およそ設定温度-10℃~40℃、設定時間1分~90分、真空度0mbar~0.25mbarの範囲で行うことで、複合リン脂質粉末を生成する工程である。
【0049】
[実施例]
以下に、実施例1、2と比較例1~3を示して、本発明を具体的に説明する。
なお、豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均一次粒子径の測定方法としては、まず、株式会社日立サイエンスシステムズ製の走査型電子顕微鏡S-3000Nを用いて平面視像を撮影して、次に米国Media Cybernetics社製の画像解析Image-Pro Plusを用いて画像解析を行うことで、一次粒子の平均一次粒子径を得る。その後、無作為に選択した100以上の一次粒子の一次粒子径を測定して、それらの平均値を一次粒子の平均一次粒子径とした。
また、フレーク状凍結第1豚脳ペーストにおける短軸bの長さに対する長軸aの長さの比(アスペクト比a/b)の測定方法としては、まず、株式会社日立サイエンスシステムズ製の走査型電子顕微鏡S-3000Nを用いて平面視像を撮影して、次に米国Media Cybernetics社製の画像解析Image-Pro Plusを用いて画像解析を行い、その後、無作為に選択した100サンプルについて、フレーク状凍結第1豚脳ペーストの長軸a及び短軸bを測定して、長軸aを短軸bで除して、その平均値を求めることでアスペクト比を算出した。
【0050】
<実施例1>
前処理工程として、まず、豚処分後に1週間冷凍保存した豚の脳(45kg)を、金属製の籠に入れて、発砲機を用いて気泡で洗浄して、異物を手作業で除去した。
次に、コロイドミルを用いて、豚の脳をペースト状の第1豚脳ペーストに加工後、第1豚脳ペーストを-20℃の状態で48時間以上、凍結させた。この場合、-5℃以上-1℃以下の温度帯を20分で行った。
その後、フレーカー(株式会社日本キャリア工業製 F-253A)を用いて、第1豚脳ペーストを凍結させた凍結第1豚脳ペーストをフレーク状に切削した。
この場合、フレーカーに投入する直前の凍結第1豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-12℃であり、フレーカーで凍結第1豚脳ペーストをフレーク状に切削した直後のフレーク状の第2豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-7℃であった。
【0051】
摩砕工程として、まず、マスコロイダーのクリアランスは、10μmに設定後、フレーク状凍結第1豚脳ペーストを石臼式摩砕機であるスーパーマスコロイダー(増幸産業株式会社製 MKZA15-40J)を用いて摩砕して、ペースト状の第2豚脳ペーストにした。
この場合、石臼式摩砕機に投入する直前の凍結第1豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-10℃であり、石臼式摩砕機で凍結第1豚脳ペーストを摩砕した直後のフレーク状の第2豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が-5℃であった。
また、豚脳複合リン脂質ナノ粒子の一次粒子の平均一次粒子径を測定したところ、平均粒子径が73nmであった。
【0052】
脱脂工程として、まず、摩砕工程で摩砕した第2豚脳ペーストを70℃、15分間加熱して、加熱後の第2豚脳ペーストに対して原材料である豚の脳の質量と同質量45kgの第1ケトン系溶媒であるアセトンを加えて56℃、60分間加熱撹拌後に濾過した。
次に、第1ケトン系溶媒であるアセトンを加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物30kgに対して第2ケトン系溶媒であるアセトン60kgを加えて50℃、60分間加熱攪拌後に濾過して、第2ケトン系溶媒であるアセトンを加えて加熱撹拌後に濾過した沈殿物20kgを回収した。
【0053】
アルコール抽出工程として、まず、脱脂工程で回収した沈殿物20kgに対して第1アルコール溶媒であるエタノール140kgを加えて50℃、60分間加熱撹拌後に濾過して、濾液である第1複合リン脂質含有溶液8kgを回収した。
その後、第1複合リン脂質含有溶液を回収した後の沈殿物15kgに対して第2アルコール溶媒であるエタノール105kgを加えて50℃、60分間加熱撹拌後に濾過して濾液である第2複合リン脂質含有溶液6kgを回収した。
【0054】
分離濃縮工程として、まず、アルコール抽出工程で回収した第1複合リン脂質含有溶液である第1アルコール溶媒であるエタノールとグリセロリン脂質の混合溶液と第2複合リン脂質含有溶液第2アルコール溶媒であるエタノールとグリセロリン脂質の混合溶液を混合した。
その後、真空濃縮装置を用いて、真空濃縮の濃縮温度は53℃、真空濃縮の真空度は-0.08MPaの条件で、混合溶液からエタノールを分離して、ペースト状の複合リン脂質含有体であるグリセロリン脂質ペーストに濃縮した。
【0055】
凍結乾燥工程として、まず、濃縮したペースト状のグリセロリン脂質ペーストを60℃の温水で5倍希釈して撹拌した。
その後、凍結乾燥機(東富龍製 2012-045Aa 30m2)を用いて、設定温度-50℃~50℃の温度範囲で31時間以上の条件で凍結乾燥を行うことで、粘度が低い複合リン脂質粉末を生成した。
その後、当該複合リン脂質粉末に関して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量を測定した。実施例1の複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量の測定結果は表1のとおりである。
なお、リン脂質の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の解析条件及びプラズマローゲンの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の解析条件は、下記に記載のとおりであり、
【0056】
<実施例2>
実施例2は、脱脂工程において第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を52℃に設定し、第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を60℃に設定した以外は、実施例1と同様の条件で行った。実施例2の複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量の測定結果は表1のとおりである。
【0057】
<実施例3>
実施例3は、実施例1の前処理工程における凍結を、-5℃以上-1℃以下の温度帯を40分間継続して行うと共に、脱脂工程において第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を61℃に設定し、第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を55℃に設定した以外は、実施例1と同様の条件で行った。実施例3の複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量の測定結果は表1のとおりである。
【0058】
<比較例1~5>
比較例1は、実施例1の前処理工程における凍結第1豚脳ペーストをフレーク状に切削せずに、且つ実施例1の摩砕工程における石臼式摩砕機に換えて、市販家電のフードプロセッサーを用いて粉砕して行う以外は、実施例1と同様の条件で行った。比較例1の複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量の測定結果は表1のとおりである。
比較例2は、実施例1の摩砕工程において、石臼式摩砕機に投入する直前の凍結第1豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が2℃であり、石臼式摩砕機で凍結第1豚脳ペーストを摩砕した直後の第2豚脳ペーストに対して放射温度計を用いて測定した値が8℃の条件で石臼式摩砕機を用いて摩砕した以外は、実施例1と同様の条件で行った。比較例2の複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量の測定結果は表1のとおりである。
比較例3は、第1ケトン系溶媒及び第2ケトン系溶媒がアセトンの場合、脱脂工程において第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を41℃に設定し、第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を33℃に設定した以外は、実施例1と同様の条件で行った。比較例3では、脱脂工程において、第2豚脳ペーストに含有する豚脳組織の成分である脂質が固まり、濾過装置の網が詰まる結果、途中で濾過できなくなった。比較例3の複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量の測定結果は表1のとおりである。
比較例4は、第1ケトン系溶媒及び第2ケトン系溶媒がアセトンの場合、脱脂工程において第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を46℃に設定し、第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を30℃に設定した以外は、実施例1と同様の条件で行った。比較例4では、脱脂工程において、第2豚脳ペーストに含有する豚脳組織の成分である脂質が固まり、濾過装置の網が詰まる結果、途中で濾過できなくなった。比較例4の複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量の測定結果は表1のとおりである。
比較例5は、第1ケトン系溶媒及び第2ケトン系溶媒がアセトンの場合、脱脂工程において第1ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を73℃に設定し、第2ケトン系溶媒を加えて加熱撹拌する際の加熱温度を68℃に設定した以外は、実施例1と同様の条件で行った。比較例5の複合リン脂質粉末に含まれる各種成分量の測定結果は表1のとおりである。
【0059】
【0060】
[リン脂質 HPLC解析条件]
機器 Shimadzu LC-20AT
カラム Sepax WT-Silica-5 (250mm*4.6mm、 5μm)
移動相 ヘキサン/2-プロパノール/酢酸(1%) (8:8:1)
波長 205nm
流速 1.0ml/min
カラム温度 30℃
アプライ量 10μL
【0061】
[プラズマローゲン HPLC解析条件]
機器 Shimadzu LC-20AT(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(米国マサチューセッツ州ウォルサム)のLTQ Orbitrap高分解能質量分析計を併用)
カラム Atlantis T3 C18(2.1mm×150mm、3μm;ウォーターズ社(米国マサチューセッツ州ミルフォード)
移動相 酢酸アンモニウム水溶液 (A)/ イソプロパノール (B)/ メタノール (C) (8:8:1)
流速 200μL/min
カラム温度 40℃
【0062】
[プラズマローゲン HPLC解析 グラジエント条件]
【表2】
【0063】
本発明の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法を用いて抽出した豚の脳を原材料とした複合リン脂質を含有する機能性素材としては、食品原料、食品加工品、及び健康補助食品が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法によれば、高濃度の複合リン脂質の抽出に利用可能であると共に、当該抽出方法を用いて抽出した豚の脳を原材料とした複合リン脂質を含有する機能性素材である食品原料、食品加工品、及び健康補助食品に利用可能である。
【要約】 (修正有)
【課題】豚の脳を原材料とした高濃度の複合リン脂質の抽出を実現させると共に、弾性、且つ滑り易い特性を有する脳を摩砕する際の摩砕困難化を回避する、複合リン脂質の抽出方法、及び当該抽出方法を用いて抽出した複合リン脂質を含有する機能性素材を提供する。
【解決手段】豚の脳を原材料とした複合リン脂質の抽出方法は、前処理工程と、摩砕工程と、脱脂工程と、アルコール抽出工程と、分離濃縮工程を備えており、前処理工程の凍結は、-5℃以上-1℃以下の温度帯を30分以内で行い、摩砕工程は、前処理工程で凍結させた凍結第1豚脳ペーストの凍結状態を保持しつつ、且つ石臼式摩砕機を用いて凍結第1豚脳ペーストの豚脳細胞が破壊されるまで摩砕して、ペースト状の第2豚脳ペーストにすることを特徴とする。
【選択図】
図1