(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】動力制御装置および動力制御方法
(51)【国際特許分類】
B66F 19/00 20060101AFI20240129BHJP
B66D 3/18 20060101ALI20240129BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B66F19/00 Z
B66D3/18 E
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021527528
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021333
(87)【国際公開番号】W WO2020255676
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2019113099
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(73)【特許権者】
【識別番号】516230250
【氏名又は名称】イノベーション・ラボラトリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120101
【氏名又は名称】畑▲崎▼ 昭
(72)【発明者】
【氏名】大柴 岳人
(72)【発明者】
【氏名】茅山 裕
(72)【発明者】
【氏名】原本 貴美
(72)【発明者】
【氏名】横田 幸信
(72)【発明者】
【氏名】寺田 知彦
(72)【発明者】
【氏名】三枝 友仁
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531593(JP,A)
【文献】特開2006-124055(JP,A)
【文献】国際公開第2012/096570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 19/00 - 19/02
B66D 1/00 - 5/34
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が座った状態で荷の昇降を補助する動力制御装置であって、
作業者が座る座面部と、
前記座面部を支持する基台部と、
前記基台部または前記座面部に取り付けられると共に、前記基台部または前記座面部から上方に延伸する支持部材と、
前記支持部材の少なくとも一部によって送出および巻き取りがガイドされる線状部材と、
前記線状部材を収納する収納部材と、
前記線状部材の先端部に取り付けられると共に、作業者が装着または保持する先端部材と、
前記線状部材を前記収納部材に収納するまたは該収納部材から送出する駆動力を与える駆動手段と、
前記駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
前記座面部に作業者が座った際の荷重を検出する荷重センサと、を備え、
前記制御手段は、前記荷重センサでの作業者の体重の検出結果に応じて、前記駆動手段の駆動によって前記線状部材に与える張力を調整する、
ことを特徴とする動力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力制御装置であって、
前記支持部材は、
前記座面部のうち作業者が座る向きの背面側において前記基台部に取り付けられている支柱部と、
前記支柱部の先端から分岐していると共に、前記支柱部よりも前記座面部の正面側に延伸している一対のアーム部と、
を有していることを特徴とする動力制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力制御装置であって、
前記支柱部は、複数の長尺部材から構成されていて、隣接する長尺部材は軸支機構で連結されていて、
前記軸支機構のうちの少なくとも1つには、隣接する前記長尺部材のうちの前記一対のアーム部側の第1長尺部材を基準位置に向けて付勢する付勢機構が設けられていて、
前記第1長尺部材は、前記一対のアーム部側の端部が前記基準位置から前記正面側に向かって回動可能としている、
ことを特徴とする動力制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の動力制御装置であって、
前記駆動手段は、駆動モータであると共に、
前記線状部材を前記収納部材から送出する向きの前記駆動モータの回転方向を正転方向とした場合、前記制御手段は、前記線状部材を引き出す際に、前記正転方向とは逆の逆転方向に回転させるように前記駆動モータを駆動させる制御を行い、
前記制御手段は、前記線状部材の引き出し終了後に前記線状部材を前記収納部材側に向けて戻すと前記駆動モータの負荷状態から判断した場合に、前記駆動モータを正転方向に駆動させる、
ことを特徴とする動力制御装置。
【請求項5】
作業者が座った状態で荷の昇降を補助する動力制御装置の動力制御方法であって、
前記動力制御装置は、
作業者が座る座面部と、
前記座面部を支持する基台部と、
前記基台部または前記座面部に取り付けられると共に、前記基台部または前記座面部から上方に延伸する支持部材と、
前記支持部材の少なくとも一部によって送出および巻き取りがガイドされる線状部材と、
前記線状部材を収納する収納部材と、
前記線状部材の先端部に取り付けられると共に、作業者が装着または保持する先端部材と、
前記線状部材に駆動力を与える駆動手段と、
座面部に作業者が座った際の荷重を検出する荷重センサと、
を備えると共に、
前記駆動手段の駆動を制御する制御ステップと、
前記制御ステップでの制御に基づいて、前記駆動手段が前記線状部材を前記収納部材に収納するまたは該収納部材から送出する駆動力を与える駆動ステップと、
前記制御ステップに先立って前記荷重センサによって、前記座面部に作業者が座った際の荷重を検出する検出ステップを備え、
前記制御ステップにおいては、前記検出ステップにおける作業者の体重の検出結果に応じて、前記駆動手段の駆動によって前記線状部材に与える張力を調整する、
ことを特徴とする動力制御方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の動力制御方法であって、
前記駆動手段は、駆動モータであり、
前記駆動ステップにおいて、前記線状部材を前記収納部材から送出する向きの前記駆動モータの回転方向を正転方向とした場合、前記制御ステップにおいては、前記線状部材を引き出す際に、前記正転方向とは逆の逆転方向に回転させるように前記駆動モータを駆動させる制御を行うと共に、
さらに前記制御ステップにおいては、前記線状部材の引き出し終了後に前記線状部材を前記収納部材側に向けて戻すと前記駆動モータの負荷状態から判断した場合に、前記駆動モータを正転方向に駆動させる制御を行う、
ことを特徴とする動力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の作業負担を軽減するための動力制御装置および動力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば工場等では、床等に置かれている荷物を運ぶ場合、現状では作業者が腰を曲げて荷物を持ち上げた後に、所望の位置に移動して荷物を置いている。しかしながら、このような作業は、腰を始めとして、作業者の身体への負荷が大きい。
【0003】
これに対して、特許文献1には、荷物を吊り上げる荷吊り上げ機構を備える装置が開示されている。特許文献1に開示されている装置は、エンドエフェクタ、吊り上げケーブル、ウィンチおよびカウンタウェイト等を備えていて、吊り上げケーブルがウィンチによって引き寄せられ、エンドエフェクタに繋がっているか接している荷物を吊り上げる構成が示されている。また、荷物が使用者前方で高い位置にあるときには、腰部屈曲延長軸の周りで荷物の平衡を保つために、カウンタウェイトが使用者のさらに後部に移動する構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、作業時の負荷を軽減する作業アシスト装置について開示されている。この作業アシスト装置は、背面支持部と、フレームとを備え、補助モータの駆動によって、ハンドチェーンを引く動作をアシスト可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-531593号公報
【文献】特開2017-024086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の構成は、作業者が装着する構成を基本とするものであり、かかる装置を装着しなくても済む作業においては、逆に作業者に負荷が掛かってしまう。また、特許文献1に開示の構成は、エンドエフェクタを用いた吊り上げであるので、作業性が悪い場合がある。また、特許文献1に開示の構成は、作業者が座ったまま、荷物を持ち上げる作業をアシストするものではなく、立ち仕事で荷物を持ち上げる際の作業をアシストするものである。したがって、特許文献1に開示の構成は、座面を備えていなく、また座った状態で荷物を持つために腰をかがめると、逆に作業者に負荷が掛かってしまう。
【0007】
また、特許文献2に開示の構成も、作業者が装着することを基本とするものであり、かかる装置を装着しなくても済む作業においては逆に作業者に負荷が掛かってしまう。また、特許文献2に開示の構成は、ハンドチェーンを引く動作をアシストするものである。したがって、特許文献2に開示の構成は、座面を備えていなく、また座った状態で腰をかがめた荷物の持ち上げをアシストできない。
【0008】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、座った状態で荷物を持ち上げる作業をアシストすることが可能な動力制御装置および動力制御方法を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、作業者が座った状態で荷の昇降をアシストするアシストチェアであって、作業者が座る座面部と、前記座面部を支持する基台部と、前記基台部または前記座面部に取り付けられると共に、前記基台部または前記座面部から上方に延伸する支持部材と、前記支持部材の少なくとも一部によって送出および巻き取りがガイドされる線状部材と、前記線状部材を収納する収納部材と、前記線状部材の先端部に取り付けられると共に、作業者が装着または保持する先端部材と、前記線状部材を前記収納部材に収納するまたは該収納部材から送出する駆動力を与える駆動手段と、前記駆動手段の駆動を制御する制御手段と、前記座面部に作業者が座った際の荷重を検出する荷重センサと、を備え、前記制御手段は、前記荷重センサでの作業者の体重の検出結果に応じて、前記駆動手段の駆動によって前記線状部材に与える張力を調整する、ことを特徴とするアシストチェアが提供される。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、支持部材は、座面部のうち作業者が座る向きの背面側において基台部に取り付けられている支柱部と、支柱部の先端から分岐していると共に、支柱部よりも座面部の正面側に延伸している一対のアーム部と、を有している、ことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、支柱部は、複数の長尺部材から構成されていて、隣接する長尺部材は軸支機構で連結されていて、軸支機構のうちの少なくとも1つには、隣接する長尺部材のうちの一対のアーム部側の第1長尺部材を基準位置に向けて付勢する付勢機構が設けられていて、第1長尺部材は、一対のアーム部側の端部が基準位置から正面側に向かって回動可能としている、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、駆動手段は、駆動モータであると共に、線状部材を収納部材から送出する向きの駆動モータの回転方向を正転方向とした場合、制御手段は、線状部材を引き出す際に、正転方向とは逆の逆転方向に回転させるように駆動モータを駆動させる制御を行い、制御手段は、線状部材の引き出し終了後に線状部材を収納部材側に向けて戻すと駆動モータの負荷状態から判断した場合に、駆動モータを正転方向に駆動させる、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の第2の観点によると、作業者が座った状態で荷の昇降を補助する動力制御装置の動力制御方法であって、前記動力制御装置は、作業者が座る座面部と、前記座面部を支持する基台部と、前記基台部または前記座面部に取り付けられると共に、前記基台部または前記座面部から上方に延伸する支持部材と、前記支持部材の少なくとも一部によって送出および巻き取りがガイドされる線状部材と、前記線状部材を収納する収納部材と、前記線状部材の先端部に取り付けられると共に、作業者が装着または保持する先端部材と、前記線状部材に駆動力を与える駆動手段と、座面部に作業者が座った際の荷重を検出する荷重センサと、を備えると共に、前記駆動手段の駆動を制御する制御ステップと、前記制御ステップでの制御に基づいて、前記駆動手段が前記線状部材を前記収納部材に収納するまたは該収納部材から送出する駆動力を与える駆動ステップと、前記制御ステップに先立って前記荷重センサによって、前記座面部に作業者が座った際の荷重を検出する検出ステップを備え、前記制御ステップにおいては、前記検出ステップにおける作業者の体重の検出結果に応じて、前記駆動手段の駆動によって前記線状部材に与える張力を調整する、ことを特徴とする動力制御方法が提供される。
【0016】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、駆動手段は、駆動モータであり、駆動ステップにおいて、線状部材を収納部材から送出する向きの駆動モータの回転方向を正転方向とした場合、制御ステップにおいては、線状部材を引き出す際に、正転方向とは逆の逆転方向に回転させるように駆動モータを駆動させる制御を行うと共に、さらに制御ステップにおいては、線状部材の引き出し終了後に線状部材を収納部材側に向けて戻すと駆動モータの負荷状態から判断した場合に、駆動モータを正転方向に駆動させる制御を行う、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、座った状態で荷物を持ち上げる作業をアシストすることが可能な動力制御装置および動力制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るアシストチェアの構成を示す斜視図である。
【
図2】発明の一実施の形態に係るアシストチェアの概略的な構成を示す図である。
【
図3】
図2のアシストチェアにおいて作業者が着座した状態を示す側面図である。
【
図4】
図3の状態から作業者が前傾姿勢を取った状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係る動力制御装置としてのアシストチェア10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、Z方向とは、アシストチェア10の上下方向を指し、Z1側とはアシストチェア10の上側を指し、Z2側とはアシストチェア10の下側を指す。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係るアシストチェア10の構成を示す斜視図である。
図2は、本発明の一実施の形態に係るアシストチェア10の概略的な構成を示す図である。
図1および
図2に示すように、アシストチェア10は、基台部20と、座面部30と、支持部材40と、巻取機構50と、ワイヤ60と、グローブ70と、駆動モータ80と、制御部90と、荷重センサ100と、バッテリーユニット110とを主要な構成要素としている。
【0021】
図2に示すように、基台部20は、フレーム部21を有していて、このフレーム部21がカバー25で覆われている。なお、フレーム部21は、上下方向(Z方向)に延伸するフレーム支柱部22と、フレーム支柱部22の下方側(Z2側)で分岐しているフレーム分岐部23とを有している。フレーム分岐部23は、少なくとも3本存在することで、アシストチェア10の安定性を図ることができる。
【0022】
また、それぞれのフレーム分岐部23の先端部には、車輪を有するキャスター24が取り付けられている。それにより、アシストチェア10が床面に対して移動自在となっている。しかしながら、アシストチェア10は、キャスター24を設けない構成を採用しても良い。また、キャスター24は、駆動モータ80または別途のモータにより、駆動力が伝達される構成であっても良い。この場合には、たとえば3つ以上のキャスター24の少なくとも1つは向きを変えることが不能であるが駆動力が伝達される構成とすることができ、残りの従動的なキャスター24は方向転換するために向きを変える構成とすることができる。ただし、駆動力が伝達されるキャスター24に、方向転換するための方向転換機能を持たせる構成とすることもできる。この方向転換機能は、作業者自身の操作により、または上述した駆動モータ80や別途のモータの駆動力によって、方向転換する構成とすることができる。
【0023】
また、カバー25は、フレーム部21に取り付けられている各種部材(巻取機構50、駆動モータ80、制御部90、荷重センサ100およびバッテリーユニット110等)を覆う部材であり、当該各種部材を保護している。また、作業者が座面部30に着座した場合に、作業者の脚等が駆動モータ80や制御部90等の各種部材に触れるのを防止している。なお、巻取機構50、駆動モータ80、制御部90およびバッテリーユニット110等からの排熱性を良好とするために、カバー25には排熱孔が設けられていても良い。通常、作業者の脚は、アシストチェア10の正面側に位置するので、排熱孔はカバー25の正面に対する背面や、側面に設けることが好ましい。しかしながら、カバー25の正面に排熱孔を設けるようにしても良い。
【0024】
また、作業者が着座する座面部30は、フレーム部21の上方側(Z1側)に支持されている。この座面部30は、作業者が着座可能であれば、その形状や材質は、いかなるものであっても良い。たとえば、座面部30は、硬質な板やプレート等の硬質部材を構成要素としても良い。また、座面部30は、上述した硬質部材と共に、または硬質部材を備えずに弾性やクッション性を備える材質を構成要素としても良い。
【0025】
また、座面部30の下方側(Z2側)に、作業者が腰を持ち上げるのを補助する補助機構を備える構成としても良い。この補助機構は、座面部30を持ち上げるためにスプリングを備える構成とすることができる。また、座面部30の正面側を支点として回動するように、回動支点を設ける構成とすることができる。この場合、作業者は自身の腰を持ち上げ易くなり、たとえば床等に置かれている荷物を持ち上げ易くなる。また、作業者が腰を持ち上げた場合でも、所定の高さまでは座面部30が作業者のヒップに当接するので、アシストチェア10にカウンタウェイトを与える領域を広げることが可能となる。
【0026】
また、作業者の体の向きに合わせて、座面部30を回転させる回転機構を設けるようにしても良い。回転機構としては、対向する2つの金属板の間に、スラストベアリングを配置する回転盤を採用することができるが、その他の構成を採用しても良い。また、荷物を持ち上げる動作では、回転しない方が好ましい場合もある。そのため、回転機構は、必要に応じて回転をロックできる回転ロック機構を備えていても良い。なお、回転機構としては、座面部30が従動的に回転する構成が挙げられるが、駆動モータ80または別途の駆動手段によって、座面部30が回転する動力が与えられる構成としても良い。
【0027】
また、作業者の腰の高さに合わせられるように、座面部30の高さ位置を調整可能な高さ調整機構を設けるようにしても良い。たとえば、気体の圧力を利用したガス圧方式のシリンダを備えた高さ調整機構を用いても良く、雄ネジ部と雌ネジ部を用いたネジ式の高さ調整機構を用いても良く、その他の方式の高さ調整機構を用いても良い。
【0028】
また、座面部30は、正面側および背面側を結ぶ前後方向に移動可能なスライド機構を備える構成としても良い。この場合、作業者が床等に置かれている荷物を持ち上げるために、作業者が腰を持ち上げずに移動できる領域が広がる。
【0029】
また、支持部材40は、その付け根側が基台部20に取り付けられているが、当該付け根は座面部30の固定的な部位に取り付けられていても良い。この支持部材40は、支柱部41と、アーム連結部42と、一対のアーム部43とを備えている。支柱部41は、長尺状の長尺部材44を備えている。この支柱部41は、たとえば2つ以上の長尺部材44が、軸支機構45を介して接続されていても良い。この場合には、隣り合う長尺部材44同士の角度を維持できる機構を設けることが好ましい。
【0030】
また、隣り合う長尺部材44を連結する軸支機構45のうちの少なくとも1箇所には、ある角度位置を基準角度(基準位置)として、その基準角度に向けてバネ等によって付勢する付勢機構を備えると共に、軸支機構45を介して一対のアーム部43側の長尺部材44(長尺部材44aとする;第1長尺部材に対応)が、基準角度(基準位置)から床面等に倒れる側に容易に回動する構成としても良い。この場合には、作業者が腰をかがめた前傾姿勢を取った際に、一対のアーム部43側の長尺部材44(長尺部材44aとする)が、その前傾姿勢に追従するように上端側(Z1側)が前方側に移動する。しかしながら、作業者が前傾姿勢から荷物を持ち上げる等して元の着座姿勢に戻った場合には、付勢機構の作用によって、長尺部材44aは基準角度に復帰する。したがって、必要以上に、ワイヤ60の長さを長くせずに済む。また、長尺部材44aが、作業者の前傾姿勢に追従して前方側に移動させることができるので、荷物を持つ際に、ワイヤ60は、グローブ70を斜め方向側に引っ張るのではなく垂直方向に近い角度で引っ張ることができる。
【0031】
また、アーム連結部42は、支柱部41の先端側または中途部から横方向(正面と背面を結ぶ前後方向に直交する方向)に延伸している。
図1に示す構成では、アーム連結部42の中央部分に支柱部41の先端部分が連結されている。また、アーム連結部42の両端部には、それぞれアーム部43が連結されていて、そのアーム部43が前方側に向かい延伸している。
【0032】
また、巻取機構50は、線状部材としてのワイヤ60を巻き取る巻取ドラム51(収納部材に対応)を備えている。巻取ドラム51は、駆動モータ80によって駆動されることで、ワイヤ60を巻き取ったり、ワイヤ60を送出する駆動力が与えられる。この巻取ドラム51以外に、巻取機構50は、ワイヤ60をガイドする滑車52を適宜備えている。
【0033】
また、本実施の形態においては、巻取機構50(巻取ドラム51)が反転することでワイヤ60を巻き取り、巻取機構50(巻取ドラム51)が正転することでワイヤ60を引き出すものとする。本アシストチェアを利用する利用者が荷物を持ち上げる時に、巻取機構50(巻取ドラム51)が反転することでワイヤ60を巻き取り、利用者が荷物を持ち上げる力をアシストする機構である。また、利用者が荷物を下ろすときに、巻取機構50(巻取ドラム51)が逆転することでワイヤ60を送り出し、利用者が荷物を下ろす作業をアシストする。この際に、この巻取機構50においては不図示のブレーキ機構を搭載しているものとする。このブレーキ機構は、荷重または下ろす速度が大きくなるほどブレーキの強さが強くなることで、利用者が荷物を下ろす際に自然なアシストを実現するものである。
【0034】
なお、巻取ドラム51は、本実施の形態では、一方側のアーム部43から下方側(Z2側)に向かうワイヤ60と、他方側のアーム部43から下方側(Z2側)に向かうワイヤ60の2本のワイヤ60を同時に巻き取り可能としている。しかしながら、2つの巻取ドラム51を設ける構成を採用しても良い。また、滑車52は、上述した支柱部41やアーム連結部42にも適宜設けるようにするのが好ましいが、これらに滑車52を設けない構成としても良い。
【0035】
また、ワイヤ60は、線状部材に対応する。このワイヤ60は、上述した巻取ドラム51に巻き取られる。そのため、ワイヤ60の一端部は、巻取ドラム51に固定されているが、このワイヤ60の他端側には、先端部材としてのグローブが取り付けられている。先端部材がグローブ70の場合、そのグローブ70の中に作業者自身の手を入れて荷物を把持することができる。ここで、グローブ70は、ワイヤ60によって張力を与えることができる。このため、たとえば床に置かれた荷物を、作業者が腰をかがめてグローブ70で把持し、その後にワイヤ60によってグローブ70が引っ張られると、作業者がかがめた腰を元の位置に戻すのに要する力を低減することができる。このため、荷物を把持する際の作業性を向上させることができる。
【0036】
また、駆動モータ80は駆動手段に対応し、巻取ドラム51を回転するための駆動力を与える。この駆動モータ80の正転または逆転により、ワイヤ60が巻取ドラム51によって巻き取られたり、その逆に巻取ドラム51からワイヤ60が送り出される。
【0037】
なお、
図2に示す構成では、駆動モータ80は、巻取ドラムfすsssす51のみに駆動力を与えている。しかしながら、駆動モータ80は、キャスター24の少なくとも1つに対して駆動力を与える構成であっても良い。この場合、キャスター24が有する車輪を回転させる駆動力を与える。しかしながら、キャスター24が方向転換機能を有する場合には、駆動モータ80は、車輪を回転させる駆動力を与えるのに加え、または車輪を回転させる駆動力を与えずに、キャスター24が方向転換するための駆動力を与える構成としても良い。ただし、別途のモータにより、キャスター24の車輪を回転させる駆動力と、方向転換のための駆動力のうちの少なくとも一方を与えても良い。
【0038】
また、制御部90は制御手段に対応し、駆動モータ80の駆動を制御する部分である。この制御部90は、たとえばスイッチ操作に応じて電流や電圧の大きさを制御するモータドライバが該当する。しかしながら、制御部90は、たとえばCPU(central processing unit)、RAM(random access memory)、ROM(read only memory)を備えるコンピュータが該当するものとしても良く、コンピュータとモータドライバが該当するものとしても良い。
【0039】
また、制御部90には、作業者が着座した際の荷重を検出する荷重センサ100からの信号が入力される。荷重センサ100は、座面部30に作業者が着座した際に、その作業者の重量に基づく荷重を測定するセンサである。この荷重センサ100での荷重の測定により、後述するようにワイヤ60の張力を調整可能となっている。なお、荷重センサ100は、上述した荷重の測定のみならず、座面部30において作用する重心位置を算出するようにしても良い。この場合、たとえば直線状ではない3箇所以上の位置に荷重センサ100を配置することで、制御部90は重心位置を算出することが可能となる。同様に、巻取機構50のブレーキ機構に代えて制御部90が電気的に駆動モータ80のブレーキ制御を行ってもよい。
【0040】
また、バッテリーユニット110は、駆動モータ80を駆動させる電力を与える部分である。このバッテリーユニット110は、電力を蓄える部分であり、蓄えられた電力は駆動モータ80や制御部90に供給される。このようなバッテリーユニット110としては、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン蓄電池が代表例として挙げられるが、その他の蓄電池が該当しても良い。
【0041】
なお、バッテリーユニット110は、比較的大きな重量を有していることが多い。このため、アシストチェア10の姿勢の安定化のためには、バッテリーユニット110は、アシストチェア10を構成する各部材の中でも、相対的に下方側(Z2側)に配置することが好ましい。たとえば、
図2に示す構成では、バッテリーユニット110は、フレーム支柱部22よりも下方側(Z2側)に配置されている。ただし、バッテリーユニット110を配置する高さ位置は、フレーム支柱部22の下端と同程度の高さ位置としても良く、フレーム支柱部22の下端よりも高い位置に配置しても良い。また、作業者が着座した状態で正面側に向かって腰をかがめた場合を考慮すると、アシストチェア10の前方側に荷重が作用するので、バッテリーユニット110は、正面側よりも背面側に位置する方が、アシストチェア10が前方側に転倒するのを防止する点から好ましい。しかしながら、バッテリーユニット110は、前後方向の中央に配置しても良く、正面側に配置しても良い。
【0042】
また、バッテリーユニット110に加えて、比較的重量の大きな駆動モータ80、巻取機構50および制御部90の少なくとも1つを、バッテリーユニット110と同程度の高さ位置に配置しても良く、バッテリーユニット110よりも低い位置に配置しても良い。
【0043】
<作用について>
以上のような構成を有するアシストチェア10の作用について、以下に説明する。なお、以下の作用の説明においては、アシストチェア10の制御的な構成(たとえば検知手段等)についても併せて説明する。
【0044】
アシストチェア10を作業者が使用する場合、そのアシストチェア10を荷物の存在する所望の位置に移動させる。このとき、キャスター24が駆動モータ80等の動力で移動できる場合には、その動力によってキャスター24を駆動させて、アシストチェア10を所望の位置に移動させる。また、たとえば荷物を搬送するコンベヤの荷物取り出し部位等のように、予め定められた固定的な位置に、アシストチェア10を設置しても良い。
【0045】
その移動後、または予め定められた固定的な位置で、作業者は、座面部30に着座する。
図3は、アシストチェア10において、作業者が着座した状態を示す側面図である。すると、座面部30に作用した作業者の重量に基づく荷重は、荷重センサ100により測定され(検出ステップに対応)、その荷重に関する情報が制御部90に送信される。すなわち、作業者が足を床から離した状態で座面部30に着座すれば、作業者の重量がそのまま座面部30に作用するが、作業者が足を床につけて、その足にも作業者の重量の一部が作用している場合には、作業者の残りの重量が座面部30に作用する。したがって、作業者の重量に基づく荷重とは、作業者が座面部30に着座した際に、実際に座面部30に作用している荷重を指す。
【0046】
なお、作業者が座面部30に着座した際に、回転機構で座面部30の回転位置を調整したり、高さ調整機構で座面部30の高さを調整するようにしても良い。
【0047】
図4は、
図3の状態から作業者が前傾姿勢を取った状態を示す側面図である。上記のように作業者が座面部30に着座した後に、作業者はグローブ70に手を入れて、荷物を把持する。このとき、隣り合う長尺部材44が軸支機構45で連結されている場合には、作業者が
図4に示すような腰をかがめた前傾姿勢を取った際に、一対のアーム部43側の長尺部材44aは、その前傾姿勢に追従して、該長尺部材44aの先端側が荷物側(床面側)に向かうように回動する。すなわち、長尺部材44aは、作業者の前傾姿勢に追従して前方側に移動する。この場合、作業者が荷物を持つ際に、ワイヤ60は、グローブ70を斜め方向側に引っ張るのではなく垂直方向に近い角度で引っ張る。このため、作業者が荷物を持ち上げる動作を、違和感なくアシストすることができる。
【0048】
また、上述のように、作業者の前傾姿勢に追従して、長尺部材44aが回動する場合には、必要以上に、ワイヤ60の長さを長くせずに済む。なお、軸支機構45には、ある角度位置を基準角度(基準位置)として、その基準角度に向けてバネ等によって付勢する付勢機構を備えるようにしても良い。この場合には、作業者が前傾姿勢から荷物を持ち上げる等して元の着座姿勢に戻った場合には、付勢機構の作用によって、長尺部材44aは基準角度に復帰する。
【0049】
ここで、通常は、荷物を持つためにグローブ70が移動するので、ワイヤ60は引き出されることになる。その場合、ワイヤ60の引き出しを検知する検知手段により、制御部90は、ワイヤ60の引き出しを検知する。このワイヤ60の引き出し状態では、制御部90は、巻取ドラム51からワイヤ60が容易に引き出されるように、駆動モータ80の作動を制御する(制御ステップに対応)。たとえば、駆動モータ80に電流を導通させないように制御したり、その逆に、ワイヤ60を巻取ドラム51から送り出す方向に駆動モータ80を回転させる(駆動ステップに対応)。
【0050】
しかしながら、巻取ドラム51からワイヤ60を引き出す際に、または巻取ドラム51からワイヤ60を引き出す動作が停止した際に、制御部90は、若干の引き出し抵抗を与えるように(すなわちワイヤ60を軽く巻き取る方向に回転させるように)、駆動モータ80の駆動を制御しても良い。
【0051】
ここで、上述したようなワイヤ60の引き出しを検知する検知手段としては、たとえばワイヤ60の引き出しに伴う駆動モータ80の回転による電流を検出する機能を持たせたモータドライバとしても良く、また巻取ドラム51から外部との間でワイヤ60の移動を検出する部分(たとえば滑車)に設けても良い。滑車が検知手段として機能する場合、たとえばロータリエンコーダ等を利用することができる。しかしながら、ワイヤ60の引き出しを検知する検知手段は、これらには限られず、種々の物を利用することができる。
【0052】
上述したようなワイヤ60の引き出しの後に、作業者は、荷物を把持する。このとき、作業者は腰をかがめて荷物を把持する場合が多い。この把持状態では、駆動モータ80が作動して、巻取ドラム51をワイヤ60の巻き取り方向に回転させる。すると、グローブ70には、ワイヤ60を介して引っ張り方向の力が与えられる。
【0053】
このため、作業者は、荷物を持ち上げ易くなる。ここで、このような引っ張り力が作用しない場合には、作業者は腰をかがめた状態で荷物を持ち上げる必要がある。このため、作業者にかかる負荷が大きくなっていて、場合によっては腰等のような体の一部を痛めてしまう場合がある。
【0054】
しかしながら、上述のように、ワイヤ60を介してグローブ70に引っ張り力が与えられるので、作業者には、荷物を持ち上げる力がサポートされる。このため、作業者は、比較的軽い力で荷物を持ち上げることが可能となる。
【0055】
ここで、上述のように、巻取ドラム51からワイヤ60を引き出す際に、または巻取ドラム51からワイヤ60を引き出す動作が停止した際に、制御部90は、ワイヤ60を軽く巻き取る方向に回転させるように、駆動モータ80の駆動を制御する場合、次のメリットがある。すなわち、ワイヤ60を軽く巻き取る向きの駆動力を駆動モータ80がワイヤ60に与えた状態で、作業者がワイヤ60を引き出すと、駆動モータ80は逆転状態となるが、その逆転状態の後に荷物を持ち上げると、駆動モータ80の駆動でワイヤ60を巻取ることができるので、駆動モータ80は正転状態となる。すると、駆動モータ80に作用する負荷が軽くなるので、駆動モータ80の電流に変化が生じる。かかる電流の変化を制御部90または制御部90とは別途の手段(モータドライバ等)で検知すると、その検知をトリガとして、制御部90は、ワイヤ60の巻き取り方向に駆動モータ80を駆動させることができる。
【0056】
ここで、作業者が座面部30に着座し、その状態で作業者が腰をかがめた前傾姿勢を取ると、アシストチェア10には、支持部材40が前方側に向かって倒れる向きの回転モーメントが発生する。この状態で、作業者がさらに荷物を持ち上げると、その回転モーメントが一層大きくなるので、アシストチェア10は、支持部材40が前方側に向かって倒れ易くなる。したがって、支持部材40が前方側に向かうようにアシストチェア10が倒れないようにするためには、駆動モータ80によってワイヤ60に及ぼす張力(アシスト力)を強くし過ぎずに、適切な張力(アシスト力)となるように駆動力を適切に制御することが好ましい。
【0057】
一方、座面部30には、作業者が着座しているので、座面部30には、作業者の重量に基づく荷重が作用している。この荷重は、アシストチェア10が倒れるのを防止するアンカーウェイトとして作用させることができる。このため、荷重センサ100で荷重を測定し、その荷重の作用に基づいて適切に演算した結果としての張力(アシスト力)をワイヤ60に及ぼすように制御部90が駆動モータ80の駆動を制御している。このため、支持部材40が前方側に向かうようにアシストチェア10が倒れない状態でありつつも、最大限の張力(アシスト力)をワイヤ60に及ぼす状態となっている。
【0058】
以上のようにして、作業者が腰をかがめた状態(前傾姿勢)から元の姿勢に戻るという、最も作業者に負荷のかかる動作において、荷物の持ち上げをアシストする。このアシストにおいては、荷物の荷重によって、支持部材40が前方側に向かうようにアシストチェア10が倒れてしまうのを防止している。
【0059】
<効果について>
以上のような構成の、動力制御装置に対応するアシストチェア10は、作業者が座る座面部30と、座面部30を支持する基台部20と、基台部20または座面部30に取り付けられると共に、基台部20または座面部30から上方に延伸する支持部材40と、支持部材40の少なくとも一部によって送出および巻き取りがガイドされるワイヤ60と、ワイヤ60を収納する巻取ドラム51とを備える。また、アシストチェア10は、ワイヤ60の先端部に取り付けられると共に、作業者が装着または保持するグローブ70と、ワイヤ60を巻取ドラム51に収納するまたは巻取ドラム51から送出する駆動力を与える駆動モータ80と、駆動モータ80の駆動を制御する制御部90と、を備える。
【0060】
このような構成によると、作業者が座面部30に着座した状態で、作業者が荷物をグローブ70を用いて保持し、その状態で制御部90が駆動モータ80を駆動させる制御を行う(制御ステップに対応)ことで、駆動モータ80の駆動(駆動ステップに対応)によって荷物を持ち上げる作業をアシストすることができる。したがって、作業者が座面部30に着座した状態で荷物を持ち上げる負荷を軽減することができる。特に、作業者が腰をかがめた前傾姿勢で荷物を持ち上げる作業において、負荷が軽減されるので、腰等のような体の一部を痛めてしまう虞を低減可能となる。
【0061】
また、本実施の形態では、支持部材40は、座面部30のうち作業者が座る向きの背面側において基台部20に取り付けられている支柱部41と、支柱部41の先端から分岐していると共に、支柱部41よりも座面部30の正面側に延伸している一対のアーム部43と、を有している。
【0062】
このように、支柱部41は、一対のアーム部43を支持しているので、その一対のアーム部43の間の位置に、作業者の頭を位置させることができる。このため、一対のアーム部43の上下動が容易となるので、支持部材40は、作業者の荷物の持ち運びの動作に、一層追従させることが可能となる。
【0063】
さらに、本実施の形態では、支柱部41は、複数の長尺部材44から構成されていて、隣接する長尺部材44は軸支機構45で連結されていて、軸支機構45のうちの少なくとも1つには、隣接する長尺部材44のうちの一対のアーム部43側の長尺部材44aを基準位置に向けて付勢する付勢機構が設けられている。そして、長尺部材44aは、一対のアーム部43側の端部が基準位置から正面側に向かって回動可能としている。
【0064】
このため、長尺部材44aは、軸支機構45を支点として回動することができる。したがって、作業者が腰をかがめた状態(前傾姿勢)を取る場合には、長尺部材44aの上端側(Z1側)が前方かつ下側(Z2側)に向かうように長尺部材44aおよび一対のアーム部43を回動させることができる。それにより、一対のアーム部43から延出する69の長さを短くすることができるので、必要以上に、ワイヤ60の長さを長くせずに済む。また、長尺部材44aおよび一対のアーム部43が、作業者の前傾姿勢に追従して前方側に移動させることができるので、荷物を持つ際に、ワイヤ60は、グローブ70を垂直方向に近い角度で引っ張ることができる。このため、グローブ70を斜め方向側に引っ張る場合と比較して、作業者の荷物の持ち上げ動作を違和感なくアシストすることができる。
【0065】
また、本実施の形態では、アシストチェア10は、座面部30に作業者が座った際の荷重を検出する荷重センサ100を備え、制御部90は、荷重センサ100での作業者の体重の検出結果に応じて、駆動モータ80の駆動によってワイヤ60に与える張力を調整している。
【0066】
このため、荷重センサ100で座面部30に作業者が座った際の体重を検出した場合(検出ステップに対応)、その検出結果に応じて、支持部材40が前方側に向かうようにアシストチェア10が倒れないように、駆動モータ80の駆動によるワイヤ60の張力を調整することができる。したがって、アシストチェア10が前方に倒れない状態でありつつも、最大限の張力(アシスト力)をワイヤ60に及ぼすことが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態では、ワイヤ60を巻取ドラム51から送出する向きの駆動モータ80の回転方向を正転方向とした場合(駆動ステップに対応)、制御部90は、ワイヤ60を引き出す際に、正転方向とは逆の逆転方向に回転させるように駆動モータ80を駆動させる制御を行う(制御ステップに対応)。また、制御部90は、ワイヤ60の引き出し終了後にワイヤ60を巻取ドラム51側に向けて戻すと駆動モータ80の負荷状態から判断した場合に、駆動モータ80を正転方向に駆動させるように制御している(制御ステップに対応)。
【0068】
このため、荷物を持ち上げる前のワイヤ60を引き出す動作では駆動モータ80は逆転状態であるが、荷物を持ち上げた後には駆動モータ80は正転状態となるので、駆動モータ80に生じる電流の変化から、作業者の荷物の持ち上げを検知することができる。このため、上記の検知をトリガとして、制御部90は、ワイヤ60の巻き取り方向に駆動モータ80を駆動させることができる。したがって、別途の検知手段を用いなくても、作業者の荷物の持ち上げ動作を適切にアシストするように、制御部90は駆動モータ80の作動を制御することができる。
【0069】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0070】
上述の実施の形態では、線状部材として、ワイヤ60について説明している。しかしながら、線状部材は、ワイヤ60には限られない。たとえば、チェーンやベルト等の長尺でありながら容易に向きを変える部材も、線状部材に該当する。
【0071】
なお、線状部材のベルトとしては、両端が存在するベルトであっても良いが、両端が存在しない環状の無端のベルトであっても良い。線状部材が、無端ベルトの場合には、環状の最下端側の部位を、先端部材に対応させることができ、グローブ70を省略する構成とすることができる。また、無端ベルトにおいて、環状の最下端側の幅を広くした幅広部を設けるようにしても良い。この幅広部に荷物の下端側を載せたり、または幅広部を荷物に巻き付ける等すれば、作業者が握力を及ぼした状態で荷物を持たずに、荷物に手を添えた状態で駆動モータ80を駆動させると、荷物を持ち上げることができる。この場合、幅広部は、先端部材に対応する。
【0072】
また、上述の実施の形態では、先端部材はグローブ70としている。しかしながら、先端部材は、グローブ70には限られない。たとえば、荷物の下側に容易に差し込むことが可能な差込部を有する部材(たとえばL字型の金具)を、先端部材としても良い。このような差込部を有する部材を先端部材とする場合、作業者は、握力を及ぼして荷物を保持せずに済む。したがって、作業者の負荷を軽減することができる。
【0073】
また、上述の実施の形態では、座面部30は、
図1および
図2等に示すように、床面等に対して水平に設けられている。しかしながら、着座部は、床面等に対して水平ではなく傾斜するように設けられていても良い。この場合、作業者が着座せずに、中腰状態または寄りかかる部位として機能させることができる。このため、作業者が、作業内容に応じて座面部30から即座に離れて移動することができる。
【0074】
また、上述の実施の形態におけるアシストチェア10の設置場所は、いかなる場所であっても良い。たとえば、工場内の荷物の持ち上げが必要な現場や、物流において荷物の持ち上げが必要な現場、ショッピングセンター内で、商品を棚に配置する等の現場が代表例として挙げられる。しかしながら、アシストチェア10の設置場所は、これらには限られない。たとえば、比較的大きな商品を売るショッピングセンター内で、来客が着座した状態で買い物をするためのカートとして用いても良い。また、アシストチェア10は、たとえば市場内で荷物を運ぶための簡易的なターレットトラック(通称;ターレ)の機能を備える構成とすることもできる。この場合にも、アシストチェア10は、作業者が荷物を持ち上げた後に、その荷物を載置する部位(たとえば載置用の荷台やかご等)を備える構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0075】
10…アシストチェア、20…基台部、21…フレーム部、22…フレーム支柱部、23…フレーム分岐部、24…キャスター、25…カバー、30…座面部、40…支持部材、41…支柱部、42…アーム連結部、43…アーム部、44…長尺部材、44a…長尺部材(第1長尺部材に対応)、45…軸支機構、50…巻取機構、51…巻取ドラム、52…滑車、60…ワイヤ(線状部材に対応)、70…グローブ(先端部材に対応)、80…駆動モータ(駆動手段に対応)、90…制御部(制御手段に対応)、100…荷重センサ、110…バッテリーユニット