(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
F04B 39/02 20060101AFI20240129BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20240129BHJP
F04B 53/18 20060101ALI20240129BHJP
F04D 29/046 20060101ALI20240129BHJP
F04F 5/20 20060101ALI20240129BHJP
F16N 21/02 20060101ALI20240129BHJP
F16N 29/00 20060101ALI20240129BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F04B39/02 P
F04B39/02 W
F04B53/00 E
F04B53/18
F04D29/046 D
F04F5/20 A
F16N21/02
F16N29/00 E
F16N31/00 C
(21)【出願番号】P 2019099000
(22)【出願日】2019-05-28
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000151058
【氏名又は名称】株式会社電業社機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】野村 育生
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-264578(JP,A)
【文献】特開2007-146670(JP,A)
【文献】特開2002-322982(JP,A)
【文献】実開昭61-058846(JP,U)
【文献】実開昭56-148194(JP,U)
【文献】特開2013-228063(JP,A)
【文献】特開平07-116730(JP,A)
【文献】実開昭60-025360(JP,U)
【文献】特開2010-091005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
F04B 23/00-23/14、
53/00-53/22
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
F04F 5/20
F16N 21/02、29/00、31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体又は液体を作動流体とし、潤滑油によって潤滑される軸受ユニットによってロータを回転可能に軸支してなる
送風機、圧縮機及びポンプのいずれかである回転機械であって、
前記軸受ユニットの前記ロータの貫通部を包囲して前記軸受ユニットに取り付けられ内側に軸受内空間が形成される軸受カバーと、
前記軸受カバーの底部に形成され前記軸受内空間に開口した落下孔に接続され前記落下孔から落下する前記潤滑油を内部の油溜まり空間の下部に貯留可能な油溜まり部と、
前記油溜まり空間の上部に接続経路を介して接続され負圧を発生させる負圧源とを備え、
前記接続経路が、
前記潤滑油が貯留される前記油溜まり空間の下部ではなく、前記潤滑油が無い前記油溜まり空間の上部に
直接開口して接続され
た吸引管であり、
前記負圧源が、前記接続経路を介して
前記潤滑油が無い前記油溜まり空間の上部及び前記落下孔を負圧と
し、前記接続経路に前記潤滑油を吸引させずに、負圧とした前記落下孔から前記油溜まり部へと前記軸受内空間内の前記潤滑油を吸い出し可能であることを特徴とする回転機械。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機械において、
前記油溜まり部が、前記落下孔に接続された油溜まり部上部と、
前記油溜まり部上部との間に前記油溜まり空間を形成して前記油溜まり部上部の下部に取り外し可能に取り付けられた油溜まり部下部とを備えていることを特徴とする回転機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転機械において、
前記油溜まり部が、前記油溜まり空間内の前記潤滑油の量を測定可能な油量センサを備えていることを特徴とする回転機械。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の回転機械において、
前記軸受カバーの底部における前記落下孔の周囲の少なくとも一部に、前記落下孔に向けて傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする回転機械。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の回転機械において、
前記負圧源が、前記回転機械の負圧発生部若しくは吐出流体、又は前記回転機械とは別に備えた圧縮機の圧縮空気の流動を利用して負圧を発生させるエゼクタを備えていることを特徴とする回転機械。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の回転機械において、
前記軸受ユニットが、内部に前記潤滑油としてグリースを供給可能なグリース供給口を上部に有していることを特徴とする回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油によって潤滑される軸受ユニットによってロータを回転自在に軸支して成る送風機、圧縮機、ポンプ等の回転機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸受の潤滑方式には、軸受ユニット内の油浴( オイルバス) に貯留された潤滑油に軸受の少なくとも一部を浸漬させて該軸受を潤滑する油浴潤滑式や、給油ポンプによって潤滑油を軸受ユニット内に強制的に供給して軸受を潤滑する強制循環潤滑式等があり、運転条件に応じて適切な潤滑方式が適宜採用される。
【0003】
上記油浴潤滑式や強制循環潤滑式等の潤滑方式を採用する軸受を備える回転機械の軸受ユニットにおいては、ロータが高速で回転するため、軸受ユニット内にオイルミストが発生し、このオイルミストが軸封部であるラビリンス等の隙間を通過して軸受ユニット外へ漏れ出てしまい、付近の設備等を汚したり、送風機や圧縮機が設置されている建屋内の空気を汚染する等の環境汚染を引き起こすという問題があった。
【0004】
上記問題を解決する手段として、ベーパファン等の吸引ファンによって軸受ユニット内を負圧に保持し、吸引ファンによって引かれたオイルミストを放出管に導き、放出管の出口に接続されたオイルミストセパレータによってオイルミストから油分を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、上記方法では、吸引ファンとこれを駆動する電動モータ等の駆動源とが別途必要となり、設備の大型化やコストアップを招くため、この対策として、本出願人は、特別な設備を要することなく、簡単な構成で安価にオイルミストの飛散を確実に防ぐことができるオイルミスト飛散防止システムを先に提案した(特許文献2及び3参照)。
【0006】
これらのオイル飛散防止システムでは、軸受ユニット内を吸引管によって吸込ノズルに接続し、その接続経路である吸引管の途中にオイルミストセパレータを設けて構成されている。
上記オイル飛散防止システムを備えた回転機械では、ロータが高速で回転駆動されると、ロータに取り付けられたインペラも本体ケーシング内で高速で回転し、例えば空気を吸込管から吸込ノズルを経て吸引してこれを昇圧し、この昇圧された空気を吐出ノズルから吐出管へと吐出する。そして、このように回転機械が駆動されると、吸込空気が吸込ノズル内を高速で流れるため、この吸込ノズル内の圧力は負圧となる。
【0007】
他方、軸受ユニット内でロータが高速で回転すると、軸受ユニット内にはオイルミストが発生するが、互いに連通する軸受ユニット内は、吸引管及びオイルミストセパレータを介して吸込ノズル内に連通しているため、軸受ユニット内において発生したオイルミストは、吸込ノズル内の負圧に引かれて吸引管を流れてオイルミストセパレータに導かれる。該オイルミストセパレータでは、油分が除去され、油分が除去された清浄な空気のみが吸引管を通って吸込ノズルへと吸引されて他の吸込空気と共に本体ケーシング内での圧縮に供される。
【0008】
従って、上記オイル飛散防止システムによれば、軸受ユニット内に発生したオイルミストを吸引する負圧源として回転機械自体に発生する負圧(吸込ノズル内の負圧)を利用するため、吸引ファンやこれを駆動する駆動源等の設備を別途設ける必要がなく、各軸受ユニット内に発生するオイルミストの飛散を、コストアップを招くことなく簡単な構成で確実に防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-173736号公報
【文献】特開2004-251378号公報
【文献】特許第4714009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
従来のオイル飛散防止システムを備えた回転機械では、オイルミストセパレータによって油分を除去するが、オイルミストが吸引管の途中で液化・油化してしまい、吸引管が詰まってしまう場合があった。このため、オイルミストになり難い潤滑油としてグリースを採用することも考えられるが、液状のグリースが吸引管に直接入り込むと、やはり吸引管が詰まり易いという不都合があった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、吸引管内の油詰まりを抑制することが可能な回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る回転機械は、気体又は液体を作動流体とし、潤滑油によって潤滑される軸受ユニットによってロータを回転可能に軸支してなる回転機械であって、前記軸受ユニットの前記ロータの貫通部を包囲して前記軸受ユニットに取り付けられ内側に軸受内空間が形成される軸受カバーと、前記軸受カバーの底部に形成され前記軸受内空間に開口した落下孔に接続され前記落下孔から落下する前記潤滑油を内部の油溜まり空間に貯留可能な油溜まり部と、前記油溜まり空間の上部に接続経路を介して接続され負圧を発生させる負圧源とを備えていることを特徴とする。
【0013】
この回転機械では、軸受カバーの底部に形成され軸受内空間に開口した落下孔に接続され落下孔から落下する潤滑油を内部の油溜まり空間に貯留可能な油溜まり部と、油溜まり空間の上部に接続経路を介して接続され負圧を発生させる負圧源とを備えているので、負圧及び重力により落下孔から潤滑油が落下又は吸引されて油溜まり部内の油溜まり空間に貯留されることで、接続経路(吸引管等)に潤滑油が詰まることを抑制可能である。
すなわち、負圧源により接続経路,油溜まり空間及び落下孔が負圧となり、軸受内空間の底部から液状の潤滑油が落下孔を介して吸引されると共に重力によって油溜まり部の軸受内空間内に落下する。特に、自身の重さだけでは落下孔から落ちないような粘度の高い潤滑油であっても、負圧源の負圧により、落下孔から油溜まり部へと強制的に吸い出すことが可能になる。また、接続経路は油溜まり空間の上部に接続され、軸受内空間の底部に貯留された液状の潤滑油を吸引しないことで、接続経路内で潤滑油が詰まることが抑制される。
【0014】
第2の発明に係る回転機械は、第1の発明において、前記油溜まり部が、前記落下孔に接続された油溜まり部上部と、前記油溜まり部上部との間に前記油溜まり空間を形成して前記油溜まり部上部の下部に取り外し可能に取り付けられた油溜まり部下部とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この回転機械では、油溜まり部が、油溜まり部上部と、油溜まり部上部に取り外し可能に取り付けられた油溜まり部下部とを備えているので、油溜まり部が上下に分解可能であり、油溜まり部下部を取り外すことで、貯留された潤滑油を容易に取り出し、回収することができる。したがって、油溜まり部のメンテナンスが容易となる。
【0015】
第3の発明に係る回転機械は、第1又は第2の発明において、前記油溜まり部が、前記油溜まり空間内の前記潤滑油の量を測定可能な油量センサを備えていることを特徴とする。
すなわち、この回転機械では、油溜まり部が、油溜まり空間内の潤滑油の量を測定可能な油量センサを備えているので、油溜まり空間内の潤滑油量を油量センサで監視することで、溜まった潤滑油が接続経路の吸込口に至る前に潤滑油を取り出すことができ、溜まった潤滑油が接続経路に吸い込まれてしまうことを抑制可能となる。
【0016】
第4の発明に係る回転機械は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記軸受カバーの底部における前記落下孔の周囲の少なくとも一部に、前記落下孔に向けて傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この回転機械では、軸受カバーの底部における落下孔の周囲の少なくとも一部に、前記落下孔に向けて傾斜した傾斜面が形成されているので、傾斜面により軸受カバー底部の潤滑油をスムーズに落下孔へ落下させる又は吸い寄せることができる。
【0017】
第5の発明に係る回転機械は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記負圧源が、前記回転機械の負圧発生部若しくは吐出流体、又は回転機械とは別に備えた圧縮機の圧縮空気の流動を利用して負圧を発生させるエゼクタを備えていることを特徴とする。
すなわち、この回転機械では、負圧源が、回転機械の負圧発生部若しくは吐出流体、又は回転機械とは別に備えた圧縮機の圧縮空気の流動を利用して負圧を発生させるエゼクタを備えているので、真空ポンプ等を用いずに負圧を発生させることができ、設備コストを低減することができる。
【0018】
第6の発明に係る回転機械は、第1から第5の発明のいずれかにおいて、前記軸受ユニットが、内部に前記潤滑油としてグリースを供給可能なグリース供給口を上部に有していることを特徴とする。
すなわち、この回転機械では、軸受ユニットが、内部に潤滑油としてグリースを供給可能なグリース供給口を上部に有しているので、軸受ユニットの上部から供給されたグリースがロータやボールベアリングに供給された後、余分なグリースを下部の落下孔から油溜まり部へ落下させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の回転機械によれば、軸受カバーの底部に形成され軸受内空間に開口した落下孔に接続され落下孔から落下する潤滑油を内部の油溜まり空間に貯留可能な油溜まり部と、油溜まり空間の上部に接続経路を介して接続され負圧を発生させる負圧源とを備えているので、負圧及び重力により落下孔から潤滑油が落下又は吸引されて油溜まり部内の油溜まり空間に貯留されることで、接続経路に潤滑油が詰まることを抑制可能である。
したがって、本発明の回転機械では、吸引管等の接続経路において潤滑油の詰まりが抑制されることで、メンテナンスの頻度が少なくて済むと共に、グリースのような粘度の高い潤滑油を使用しても、常時はロータ又はベアリングにグリースが保持されるが、グリース供給口からグリースを補給して不要な古いグリースがロータ又はベアリングから押し出されて軸受カバーの底部にグリースが溜まることで落下孔が閉塞されて負圧がたつことにより、断続的に潤滑油を油溜まり部に自動的に回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る回転機械の第1実施形態において、モータ側の軸受ユニットを示す側断面図である。
【
図2】第1実施形態において、回転機械を示す全体構成図である。
【
図3】本発明に係る回転機械の第2実施形態において、モータ側の軸受ユニットを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明における回転機械の第1実施形態を、
図1及び
図2に基づいて説明する。
【0022】
本実施形態における回転機械1は、送風機、圧縮機、ポンプ等を含むものであって、
図1及び
図2に示すように、気体又は液体を作動流体とし、潤滑油Gによって潤滑される軸受ユニット2A,2Bによってロータ3を回転可能に軸支してなる回転機械である。
【0023】
本実施形態の回転機械1は、軸受ユニット2A,2Bのロータ3の貫通部を包囲して軸受ユニット2A,2Bに取り付けられ内側に軸受内空間S1が形成される軸受カバー4と、軸受カバー4の底部に形成され軸受内空間S1に開口した落下孔4aに接続され落下孔4aから落下する潤滑油Gを内部の油溜まり空間S2に貯留可能な油溜まり部7と、油溜まり空間S2の上部に接続経路5を介して接続され負圧を発生させる負圧源6とを備えている。
【0024】
上記負圧源6が、回転機械1の負圧発生部若しくは吐出流体(気体、液体)、又は回転機械1とは別に備えた圧縮機の圧縮空気の流動を利用して負圧を発生させるエゼクタEを備えている。
また、油溜まり部7は、落下孔4aに接続された油溜まり部上部7aと、油溜まり部上部7aとの間に油溜まり空間S2を形成して油溜まり部上部7aの下部に取り外し可能に取り付けられた油溜まり部下部7bとを備えている。
【0025】
なお、油溜まり部下部7bは、油溜まり部上部7aの下部にボルト等によって取り外し可能に固定されている。
油溜まり部7は、内部に貯留される潤滑油Gの量が視認可能なアクリル等の透明な材料で形成されることが好ましい。
【0026】
上記軸受ユニット2A,2Bは、内部に潤滑油Gとしてグリースを供給可能なグリース供給口11bを上部に有している。
上記ロータ3は、本体ケーシング12内に収容されたインペラ(図示略)が取り付けられて本体ケーシング12内に配されており、両端部が本体ケーシング12の両端を貫通している。
【0027】
本体ケーシング12の両端部から延出しているロータ3の両端部は、軸受ユニット2A,2Bにより回転可能に軸支されている。
なお、ロータ3は、その一端部が電動モータ等の駆動源13に直結されており、駆動源13によって回転駆動される。
【0028】
上記本体ケーシング12の一端部には吸込ノズル14が下方に向かって突設されていると共に、他端部には、吐出ノズル15が下方に向かって突設されている。
上記吸込ノズル14には、吸込管16が接続され、上記吐出ノズル15は、吐出管17が接続されている。
【0029】
モータ側の軸受ユニット2Bは、転がり軸受であるボールベアリング10と、ボールベアリング10を収納する軸受ケース11と、軸受ケース11の開口端面を閉塞する上記軸受カバー4とを備えている。
上記軸受カバー4は、軸受ケース11の開口端面を閉塞する一対の軸受蓋部4A,4Bを備えている。
【0030】
一対の軸受蓋部4A,4Bのうち一方(4A)は、内側にボールベアリング10との間に軸受内空間S1を有していると共に、底部に落下孔4aが形成されている。
すなわち、上記落下孔4aは、ボールベアリング10に対してグリース供給口11aとは反対側に設けられている。
【0031】
上記落下孔4aの直下には、油溜まり部7が接続されている。すなわち、油溜まり部7の油溜まり部上部7aが落下孔4aの直下に接続されている。
また、軸受カバー4底部における落下孔4aの周囲の少なくとも一部には、落下孔4aに向けてテーパ状の傾斜面4cが形成されている。
【0032】
一対の軸受蓋部4A,4Bのロータ3が貫通する部位には、それぞれシーリング4bが施されている。
軸受ケース11の上部には、上記グリース供給口11bが形成されており、グリース供給口11b上に取り付けられた供給ロート11bから潤滑油Gとしてグリースを軸受ユニット2A,2B内に供給可能となっている。
【0033】
上記吐出管17内には、通気管6aの一端が接続されている。なお、通気管6aの他端は、大気に開放されている。
上記通気管6aの途中には、第1圧力調整弁6bとエゼクタEとが接続されている。
また、一対の軸受ユニット2A,2Bには、対応する吸引管5A,5Bの一端が接続されている。すなわち、吸引管5A,5Bの一端が、対応する軸受ユニット2A,2Bの油溜まり部7の上部(油溜まり部上部7a)に接続されている。
【0034】
一対の吸引管5A,5Bの他端は、それぞれ連通管6cの一端に接続されており、連通管6cの途中には、第2圧力調整弁6dが接続されている。
上記連通管6cの他端は、エゼクタE内に接続されている。すなわち、回転機械1が運転されると、インペラの回転等によって本体ケーシング12内が昇圧され、その圧縮空気(吐出流体)の一部が吐出管17から外部に排出されると共に、吐出管17に接続された通気管6aを介してエゼクタEへと流れる。
【0035】
通気管6aに接続されたエゼクタEでは、圧縮空気の一部が流れ込んで負圧が発生する。すなわち、エゼクタEでは、通気管6aからの吐出流体(圧縮空気)の流動を利用して負圧が発生する。
また、エゼクタEで負圧を発生させると、エゼクタEに接続されている連通管6c及び一対の吸引管5A,5Bを介して油溜まり部7(油溜まり空間S2)及び軸受内空間S1も負圧となる。すなわち、連通管6c及び一対の吸引管5A,5Bが、エゼクタEと油溜まり部7との接続経路5となっている。
【0036】
なお、吐出管17から吐出される圧縮空気を第1圧力調整弁6bで圧力調整することで、エゼクタEで圧縮空気の流動によって発生する負圧も調整可能である。
また、エゼクタEで発生した負圧は、連通管6c及び吸引管5A,5Bを介して油溜まり空間S2及び軸受内空間S1に伝わるが、油溜まり空間S2及び軸受内空間S1に伝わる負圧は連通管6cに接続された第2圧力調整弁6dで調整することが可能である。
【0037】
このように本実施形態の回転機械1では、軸受カバー4の底部に形成され軸受内空間S1に開口した落下孔4aに接続され落下孔4aから落下する潤滑油Gを内部の油溜まり空間S2に貯留可能な油溜まり部7と、油溜まり空間S2の上部に接続経路5を介して接続され負圧を発生させる負圧源6とを備えているので、負圧及び重力により落下孔4aから潤滑油Gが落下又は吸引されて油溜まり部7内の油溜まり空間S2に貯留されることで、接続経路5(吸引管5A,5B等)に潤滑油Gが詰まることを抑制可能である。
【0038】
すなわち、負圧源6により接続経路5,油溜まり空間S2及び落下孔4aが負圧となり、軸受内空間S1の底部から液状の潤滑油Gが落下孔4aを介して吸引されると共に重力によって油溜まり部7の軸受内空間S1内に落下する。特に、自身の重さだけでは落下孔4aから落ちないような粘度の高い潤滑油Gであっても、負圧源6の負圧により、落下孔4aから油溜まり部7へと強制的に吸い出すことが可能になる。
【0039】
例えば、グリースのような粘度の高い潤滑油Gを使用しても、常時はロータ3又はベアリング10にグリースが保持されるが、
図1に示すように、グリース供給口11bからグリースを補給して不要な古いグリースがロータ3又はベアリング10から押し出されて軸受カバー4の底部にグリースが溜まることで落下孔4aが閉塞されて負圧がたつことにより、断続的に潤滑油Gを油溜まり部7に自動的に回収することが可能になる。
また、接続経路5は油溜まり空間S2の上部に接続され、軸受内空間S1の底部に貯留された液状の潤滑油Gを吸引しないことで、接続経路5内で潤滑油Gが詰まることが抑制される。
【0040】
また、軸受カバー4の底部における落下孔4aの周囲の少なくとも一部に、落下孔4aに向けて傾斜した傾斜面4cが形成されているので、傾斜面4cにより軸受カバー4底部の潤滑油Gをスムーズに落下孔4aへ落下させる又は吸い寄せることができる。
【0041】
また、油溜まり部7が、油溜まり部上部7aと、油溜まり部上部7aに取り外し可能に取り付けられた油溜まり部下部7bとを備えているので、油溜まり部7が上下に分解可能であり、油溜まり部下部7bを取り外すことで、貯留された潤滑油Gを容易に取り出し、回収することができる。したがって、油溜まり部7のメンテナンスが容易となる。
さらに、負圧源6が、回転機械1の負圧発生部若しくは吐出流体(気体、液体)、又は回転機械1とは別に備えた圧縮機の圧縮空気の流動を利用して負圧を発生させるエゼクタEを備えているので、真空ポンプ等を用いずに負圧を発生させることができ、設備コストを低減することができる。
【0042】
次に、本発明に係る回転機械の第2実施形態について、
図3を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0043】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、油溜まり部7内の潤滑油Gの量を外部から目視で確認するのに対し、第2実施形態の回転機械では、
図3に示すように、油溜まり部27が、油溜まり空間S2内の潤滑油Gの量を測定可能な油量センサ29を備えている点である。
すなわち、第2実施形態では、
図3に示すように、例えば軸受ユニット22Bにおいて、油溜まり部27の内面に潤滑油Gが一定量を超えると信号を発信する油量センサ29が設置されている。
【0044】
上記油量センサ29は、例えばフロート式,光学式,静電容量式,超音波式,電磁誘導式などの既存の液面レベルスイッチが採用可能である。
油量センサ29は、例えば油溜まり部下部7b内において吸引管5A,5Bの吸込口(接続部)より若干下に設置されている。
【0045】
このように第2実施形態の回転機械では、油溜まり部27が、油溜まり空間S2内の潤滑油Gの量を測定可能な油量センサ29を備えているので、油溜まり空間S2内の潤滑油量を油量センサ29で監視することで、溜まった潤滑油Gが接続経路5(吸引管5A,5B)の吸込口に至る前に潤滑油Gを取り出すことができ、溜まった潤滑油Gが接続経路5に吸い込まれてしまうことを抑制可能となる。
【0046】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、上述したようにエゼクタを備えた負圧源を採用することが好ましいが、真空ポンプ等を備えた負圧源を採用しても構わない。
また、上記実施形態では、潤滑油としてグリースをグリース供給口から軸受ユニット内に供給しているが、軸受ユニット内の油浴(オイルパス)に潤滑油を貯留して、軸受の一部を浸漬させて軸受を潤滑する油浴潤滑式や、給油ポンプによって潤滑油を軸受ユニット内に強制的に供給して軸受を潤滑する強制循環潤滑式等を採用しても構わない。
【0048】
さらに、上記実施形態では、オイルミスト化し難いグリースを採用しているため、オイルミストセパレータを設けていないが、オイルミスト化し易い潤滑油を採用する場合、オイルミストセパレータを設けても構わない。この場合、例えば上記連通管の途中等にオイルミストセパレータを接続する。
このようなオイルミスト化し易い潤滑油であっても、落下孔及び油溜まり部を通過する際に少なくとも一部が液化し、油溜まり部に貯留されることから、吸引管で液化して詰まることを抑制可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…回転機械、2A,2B.22B…軸受ユニット、3…ロータ、4…軸受カバー、4a…落下孔、5…接続経路、6…負圧源、7,27…油溜まり部、7a…油溜まり部上部、7b…油溜まり部下部、11a…グリース供給口、29…油量センサ、G…潤滑油、E…エゼクタ、S1…軸受内空間、S2…油溜まり空間