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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/06 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
H01H73/06 A
H01H73/06 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020039028
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140990
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖也
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-040446(JP,U)
【文献】実開昭60-188460(JP,U)
【文献】実開平01-083247(JP,U)
【文献】特開平03-246849(JP,A)
【文献】特開昭54-127585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路を開閉する機構部と、回路に過電流が流れたときに機構部を開動作させる過電流引外し装置とをベースに収納し、カバーで覆った回路遮断器であって、
過電流引外し装置は側面視で略L字状に形成されたヨークを備え、このヨークの垂直片部の上端とカバーとの間に、変形部を形成し
前記変形部は、ヨークの垂直片部の上端とカバーの何れかに貼着され、ヨークの垂直片部の上端とカバーの何れかに接触することで変形する変形部材であることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
回路を開閉する機構部と、回路に過電流が流れたときに機構部を開動作させる過電流引外し装置とをベースに収納し、カバーで覆った回路遮断器であって、
過電流引外し装置は側面視で略L字状に形成されたヨークを備え、このヨークの垂直片部の上端とカバーとの間に、変形部を形成し、
前記変形部は、カバーの裏面に形成されてヨークを保持するヨーク保持溝の内側からヨーク側に突出させた凸部であり、ヨークと接触することで変形することを特徴とする回路遮断器。
【請求項3】
前記ヨークは、垂直片部の上方に左右方向に突出する突出部を備え、これらの突出部の上端が前記ヨーク保持溝に保持され、前記変形部とこれらの突出部の上端が当接していることを特徴とする請求項2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記ヨークは、垂直片部の上端にアーマチャの収納部を備え、この収納部を形成する垂直片部の上端の一方を前記収納部側に更に突出させたことを特徴とする請求項2または3に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流引外し装置を備えた回路遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、回路に過電流が流れたときに回路を遮断する過電流引外し装置を備える。回路遮断器は下部のベースと上部のカバーとに分割されたケースを備え、過電流引外し装置はベースの内部に収納し、カバーで覆うことによって回路遮断器に取り付けられるのが普通である。
【0003】
従来、過電流引外し装置を構成するヨークとカバーとの寸法公差を考慮し、ヨークとカバーとの間に僅かな隙間を設けていた。そのため回路遮断器のハンドルをオフ操作したときの衝撃力によりヨークが強く振動し、ヨークに取り付けられたアーマチャの浮きや回動が生じ、回路遮断器がトリップ状態になる誤動作が生じるおそれがあった。
【0004】
そこで特許文献1に記載されているように、ヨークの上端をカバーの裏面と接触させれば、衝撃力の一部をカバーに逃がすことによりヨークの振動を抑制し、アーマチャの浮きや回動を抑制することができる。しかし前記したように、ヨークとカバーには寸法公差が生じるため、互いに標準寸法よりも大きく成形された場合にはカバーがヨークにより持ち上げられ、カバーとベースや、カバーと他のパーツとの間に好ましくない隙間が生ずるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-161278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、ハンドルを操作したときの衝撃力によるアーマチャの浮きや回動を防ぐとともに、カバーとベースや、カバーと他のパーツとの間に好ましくない隙間が生ずることを防止した回路遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、回路を開閉する機構部と、回路に過電流が流れたときに機構部を開動作させる過電流引外し装置とをベースに収納し、カバーで覆った回路遮断器であって、過電流引外し装置は側面視で略L字状に形成されたヨークを備え、このヨークの垂直片部の上端とカバーとの間に、変形部を形成し、前記変形部は、ヨークの垂直片部の上端とカバーの何れかに貼着され、ヨークの垂直片部の上端とカバーの何れかに接触することで変形する変形部材であることを特徴とするものである。
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、回路を開閉する機構部と、回路に過電流が流れたときに機構部を開動作させる過電流引外し装置とをベースに収納し、カバーで覆った回路遮断器であって、過電流引外し装置は側面視で略L字状に形成されたヨークを備え、このヨークの垂直片部の上端とカバーとの間に、変形部を形成し、前記変形部は、カバーの裏面に形成されてヨークを保持するヨーク保持溝の内側からヨーク側に突出させた凸部であり、ヨークと接触することで変形することを特徴とするものである。なお、前記ヨークは、垂直片部の上方に左右方向に突出する突出部を備え、これらの突出部の上端が前記ヨーク保持溝に保持され、前記変形部とこれらの突出部の上端が当接している構造とすることができる。また前記ヨークは、垂直片部の上端にアーマチャの収納部を備え、この収納部を形成する垂直片部の上端の一方を前記収納部側に更に突出させた構造とすることができる
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヨークの垂直片部の上端とカバーとの間に、変形部を形成したことによって、変形部を介してヨークとカバーとを接触させ、ハンドルを操作したときの衝撃力の一部をカバーに逃がすことができる。これにより、ハンドルを操作したときの衝撃力によるアーマチャの浮きや回動を防ぐことができる。また変形部がヨークとカバーの寸法公差を吸収するため、カバーとベースや、カバーと他のパーツとの間に好ましくない隙間が生ずることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の回路遮断器の外観斜視図である。
図2】カバーを除いた斜視図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4図3の分解図である。
図5】要部の拡大断面図である。
図6】要部の斜視図である。
図7】要部の分解斜視図である。
図8】変形部の説明図である。
図9図1のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は実施形態の回路遮断器の外観斜視図、図2はカバーを除いた斜視図、図3図1のA-A断面図である。これらの図に示されるように、実施形態の回路遮断器はベース10とカバー11とからなる上下に分割可能なケースを備えている。この実施形態ではベース10の下方にサブベース12が設けられているが、サブベース12は省略することもできる。13はベース10の前側に配置された電源側端子、14は後側に配置された負荷側端子、15はハンドルである。なお本明細書では、図2に示すように電源側端子13の方向を前、ハンドル15の方向を上、幅方向を左右とする。
【0012】
ベース10の内部には、ハンドル15と連動して可動接触子を動かし回路を開閉する公知の機構部と、回路に過電流や大電流等の異常電流が流れたときに機構部を開動作させる過電流引外し装置が組み込まれている。過電流引外し装置は、図5図6に示すように、ヨーク20、アーマチャ21、トリガーレバー22、ダッシュポット23等を備えている。
【0013】
ヨーク20は側面視で略L字状に形成されたもので、垂直片部24と底面部25を備えている。ダッシュポット23はヨーク20の底面部25に取り付けられており、その周囲にはコイル26が設けられている。コイル26の上端は隣接するL型形状の負荷側端子14に溶接されており、他端は可動接触子(図示略)への電線が接続されている。回路に過大な電流が流れるとダッシュポット23の頭部とアーマチャ21との間に磁気吸引力が作用し、ばね27に抗してアーマチャ21はダッシュポット23の頭部に引き寄せられる。その結果、アーマチャ21の脚部がトリガーレバー22に作用し、機構部をトリップさせて接点を開き、回路を遮断する。なお、アーマチャ21は図6図7に示すように、ヨーク20の上部に組付けられている。このような過電流引外し装置は従来と特に変わるものではない。
【0014】
ヨーク20の垂直片部24の下端部には取付部29が形成されており、この取付部29をベース10に設けられたスリット状のヨーク取付部(図3)に挿入することによって、ヨーク20はベース10に取り付けられる。この取付部29の一部を前後方向に折り曲げることによって、ヨーク20の前後方向の移動を抑制することができる。
【0015】
図6に示すように、この実施形態ではヨーク20の垂直片部24の上方に左右方向に突出する突出部30、31を備える。ベース10にカバー11を取り付けると、これらの突出部30、31の上端は図8に示すようにカバー11の裏面に形成された逆U字状のヨーク保持溝32に保持される。このヨーク保持溝32の内部には変形部33が形成されており、図9に示すように変形部33とこれらの突出部30、31の上端が当接している。なお、本発明においてはヨーク20の垂直部24の上端に設けたアーマチャ収納部40を形成する垂直部24の上端と、カバー11のヨーク保持溝32の間に変形部33が形成されてもよい。また、左右の突出部30、31の側面部とカバー11とが当接し、ヨーク20の左右方向の動きを規制している。
【0016】
この実施形態では変形部33はカバー11と一体成型された略半球状の凸部である。カバー11は樹脂製であり、変形部33は小さい突起であるため変形可能であり、ヨーク20とカバー11に寸法公差があっても常に当接させておくことができる。変形部33はヨーク20側に形成することもできる。このように変形部33はカバー11やヨーク20と一体成型するほか、ゴム製シートのような弾性シートや弾性テープなど、別体の変形部材をカバー11やヨーク20に貼着してもよい。ここで、変形部33は、弾性変形するものであってもよいし、塑性変形するものであってもよく、ベース10にカバー11が取り付けられ、ネジでベース10とカバー11が締め付けられたときに変形し、カバー11若しくはヨーク20に接触するものであれば如何なるものであってもよい。
【0017】
このようにヨーク20の垂直片部24の上端とカバー11との間に変形部33を形成すれば、ヨーク20とカバー11に寸法公差があっても、カバー11をベース10に取り付けたとき、変形部33を変形させることによってヨーク20とカバー11とを常に当接させることができる。このため、カバー11とベース10や、カバー11と他のパーツとの間に好ましくない隙間が生ずることがない。
【0018】
また、変形部33を介してヨーク20とカバー11とを常に当接させておくことができるため、ハンドル15をオフ操作し機構部を動作させたときにヨークが受ける衝撃力を、変形部33を介してカバー11に逃がすことができる。その結果、ヨーク20に支持されたアーマチャ21が衝撃力により浮き上がったり回動することを防ぐことができ、回路遮断器がトリップしてしまう誤動作をなくすことができる。
【0019】
以下に、この実施形態に特有の構成を説明する。
図6図7に示したように、この実施形態ではヨーク20の垂直片部24の上端に、アーマチャ収納部40が設けられている。アーマチャ21の左右には凹部41、42が形成されており、これらの凹部41、42を垂直片部24の上端に緩やかに嵌めこむことによって、アーマチャ21はヨーク20に支持されている。図6に示すアーマチャ収納部40を形成する垂直片部24の上端にはアーマチャ収納部40側に向かって内側に突出する第2の突出部43が形成されている。
【0020】
このように第2の突出部43を設けることによって、アーマチャ収納部40に収納されたアーマチャ21の上下方向の移動を抑制することができ、アーマチャ21の脱落や、アーマチャ21の浮きと回動によってヨーク20の上端部にアーマチャ21が挟み込まれ固着することを防ぐことができる。
【0021】
また図6に示すように、ヨーク20の垂直片部24には中央に切抜き部45が形成され、この切抜き部45に向かって第1の切抜き側突出部46と、第2の切抜き側突出部47が形成されている。第1の切抜き側突出部46にはヨーク20にアーマチャ21を取り付けたときのアーマチャ21の角度を調整するためのばね27の下端が係止される。
【0022】
また衝撃力によりアーマチャ21に浮きが生じた場合に、ヨーク20の上端にアーマチャ21が挟み込まれて固着するおそれがあるが、第2の切抜き側突出部47を形成することにより、浮きが生じた場合にもアーマチャ21の脚部が第2の切抜き側突出部47に当接し、アーマチャ21の過度の回動を抑制する。このため、ヨーク20の上端にアーマチャ21が挟み込まれることによるアーマチャ21の固着を防止することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 ベース
11 カバー
12 サブベース
13 電源側端子
14 負荷側端子
15 ハンドル
20 ヨーク
21 アーマチャ
22 トリガーレバー
23 ダッシュポット
24 垂直片部
25 底面部
26 コイル
27 ばね
28 アーマチャ収納部
29 取付部
30 突出部
31 突出部
32 ヨーク保持溝
33 変形部
40 アーマチャ収納部
41 凹部
42 凹部
43 第2の突出部
45 切抜き部
46 第1の切抜き側突出部
47 第2の切抜き側突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9