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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】繰出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/00 20060101AFI20240129BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A45D40/00 D
A45D40/00 M
B65D83/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020199153
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086884
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 真弥
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131821(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0337439(US,A1)
【文献】実開昭59-136713(JP,U)
【文献】実開平6-85615(JP,U)
【文献】国際公開第2020/049700(WO,A1)
【文献】特開2003-169714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに螺旋方向が逆向きの第1螺旋溝及び第2螺旋溝が内周面に軸線方向に並べて設けられるとともに前記第2螺旋溝の側となる上端が繰出し口となる有底円筒状のケース体と、
軸線方向に延びる第1縦溝、前記第1縦溝から周方向に延びる係止溝及び上端から下方に向けて軸線方向に延びる第2縦溝を備え、前記ケース体の内部に軸線を中心として相対回転自在に配置された第1スリーブと、前記第2螺旋溝に係合可能な第1凸部及び係合孔を備え、破断可能な第1弱化連結部を介して前記第1スリーブに同軸かつ一体に連結されて一部が前記繰出し口から外部に突出する第2スリーブとを有し、前記第2スリーブの内部に内容物を収納可能なスリーブ体と、
前記係合孔に係合可能な突起を外周面に備え、前記スリーブ体の内側に軸線方向に相対移動自在に配置された筒状体と、前記第1縦溝を貫通して前記第1螺旋溝に係合する第2凸部を備え、破断可能な第2弱化連結部を介して前記筒状体に同軸かつ一体に連結された中皿部材と、を有し、前記筒状体と前記中皿部材とで内容物を支持する繰出し部材と、を備え、
前記ケース体に対して前記第2スリーブが相対回転すると前記繰出し部材が前記ケース体に対して繰出し方向に相対移動して内容物が前記第2スリーブから外部に繰り出され、前記繰出し部材がストローク端まで移動すると、前記突起が前記係合孔に係合して前記筒状体が前記第2スリーブに回り止めされるとともに前記第2凸部が前記係止溝に係合して前記中皿部材及び前記第1スリーブが前記ケース体に回り止めされ、さらに前記ケース体に対して前記第2スリーブが相対回転すると前記第1弱化連結部及び前記第2弱化連結部が破断するとともに前記第1凸部が前記第2縦溝に進入しつつ前記第2螺旋溝に係合して前記第2スリーブと前記筒状体とが前記ケース体の内部に向けて移動して前記内容物が前記第2スリーブからさらに外部に繰り出されるように構成されていることを特徴とする繰出し容器。
【請求項2】
前記第1スリーブに対する前記第2スリーブの軸線を中心とした相対回転を規制する規制位置と、前記第1スリーブに対する前記第2スリーブの軸線を中心とした相対回転を規制しない規制解除位置とに移動可能な規制部材を備えている、請求項1に記載の繰出し容器。
【請求項3】
前記規制部材は、前記規制位置にあるときに前記第1凸部に係合して前記第2スリーブを回り止めする第1規制部と、前記規制位置にあるときに前記第2縦溝に係合して前記第1スリーブを回り止めする第2規制部とを備えている、請求項2に記載の繰出し容器。
【請求項4】
前記規制部材は筒状の操作体を有し、前記操作体において前記繰出し口に、前記規制位置と前記規制解除位置との間で軸線の方向に沿って移動自在に装着されている、請求項3に記載の繰出し容器。
【請求項5】
前記規制部材は筒状の操作体を有し、前記操作体が前記ケース体の内周面とのねじ結合により、前記規制位置と前記規制解除位置との間で軸線の方向に螺旋状に移動自在に装着されている、請求項3に記載の繰出し容器。
【請求項6】
前記ケース体の内周面に、前記繰出し口と前記第2螺旋溝との間に位置して、前記第1凸部を周方向に移動可能に支持するとともに前記第2螺旋溝に連なる周方向溝が設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の繰出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形の内容物を収納する繰出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布対象物に塗布可能な固形の内容物を収納する容器として、繰出し容器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、筒状のケース体と、ケース体の内側に軸線を中心とした相対回転自在に配置されたスリーブ体と、スリーブ体の内側に軸線方向に相対移動自在に配置され繰出し部材とを有し、ケース体に対するスリーブ体の回動操作により、繰出し部材に支持された棒状の内容物をスリーブ体の上端から外部に繰り出して使用することができるようにした繰出し容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-253235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の繰出し容器においては、内容物が固形とはいえ比較的柔らかいものであるため、繰出し部材を、筒状体と筒状体の下端に連なる中皿とで構成される有底筒状の形態とし、その内側で内容物の下部を支持する構成とする必要がある。そのため、繰出し部材をストローク端にまで繰り出したとしても内容物を最後まで使い切ることは困難であり、内容物が残留し易いという問題があった。
【0006】
また、ケース体に対するスリーブ体の回動操作により、内容物がスリーブ体から外部に徐々に繰り出される構成であるので、内容物の残量が少なくなったことを使用者が認識することも困難であった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内容物の残量を低減することができるとともに内容物の残量が少なくなったことを使用者が認識することが可能な繰出し容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の繰出し容器は、互いに螺旋方向が逆向きの第1螺旋溝及び第2螺旋溝が内周面に軸線方向に並べて設けられるとともに前記第2螺旋溝の側となる上端が繰出し口となる有底円筒状のケース体と、軸線方向に延びる第1縦溝、前記第1縦溝から周方向に延びる係止溝及び上端から下方に向けて軸線方向に延びる第2縦溝を備え、前記ケース体の内部に軸線を中心として相対回転自在に配置された第1スリーブと、前記第2螺旋溝に係合可能な第1凸部及び係合孔を備え、破断可能な第1弱化連結部を介して前記第1スリーブに同軸かつ一体に連結されて一部が前記繰出し口から外部に突出する第2スリーブとを有し、前記第2スリーブの内部に内容物を収納可能なスリーブ体と、前記係合孔に係合可能な突起を外周面に備え、前記スリーブ体の内側に軸線方向に相対移動自在に配置された筒状体と、前記第1縦溝を貫通して前記第1螺旋溝に係合する第2凸部を備え、破断可能な第2弱化連結部を介して前記筒状体に同軸かつ一体に連結された中皿部材と、を有し、前記筒状体と前記中皿部材とで内容物を支持する繰出し部材と、を備え、前記ケース体に対して前記第2スリーブが相対回転すると前記繰出し部材が前記ケース体に対して繰出し方向に相対移動して内容物が前記第2スリーブから外部に繰り出され、前記繰出し部材がストローク端まで移動すると、前記突起が前記係合孔に係合して前記筒状体が前記第2スリーブに回り止めされるとともに前記第2凸部が前記係止合溝に係合して前記中皿部材及び前記第1スリーブが前記ケース体に回り止めされ、さらに前記ケース体に対して前記第2スリーブが相対回転すると前記第1弱化連結部及び前記第2弱化連結部が破断するとともに前記第1凸部が前記第2縦溝に進入しつつ前記第2螺旋溝に係合して前記第2スリーブと前記筒状体とが前記ケース体の内部に向けて移動して前記内容物が前記第2スリーブからさらに外部に繰り出されるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の繰出し容器は、上記構成において、前記第1スリーブに対する前記第2スリーブの軸線を中心とした相対回転を規制する規制位置と、前記第1スリーブに対する前記第2スリーブの軸線を中心とした相対回転を規制しない規制解除位置とに移動可能な規制部材を備えているのが好ましい。
【0010】
本発明の繰出し容器は、上記構成において、前記規制部材は、前記規制位置にあるときに前記第1凸部に係合して前記第2スリーブを回り止めする第1規制部と、前記規制位置にあるときに前記第2縦溝に係合して前記第1スリーブを回り止めする第2規制部とを備えているのが好ましい。
【0011】
本発明の繰出し容器は、上記構成において、前記規制部材は筒状の操作体を有し、前記操作体において前記繰出し口に、前記規制位置と前記規制解除位置との間で軸線の方向に沿って移動自在に装着されているのが好ましい。
【0012】
本発明の繰出し容器は、上記構成において、前記規制部材は筒状の操作体を有し、前記操作体が前記ケース体の内周面とのねじ結合により、前記規制位置と前記規制解除位置との間で軸線の方向に螺旋状に移動自在に装着されているのが好ましい。
【0013】
本発明の繰出し容器は、上記構成において、前記ケース体の内周面に、前記繰出し口と前記第2螺旋溝との間に位置して、前記第1凸部を周方向に移動可能に支持するとともに前記第2螺旋溝に連なる周方向溝が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内容物の残量を低減することができるとともに内容物の残量が少なくなったことを使用者が認識することが可能な繰出し容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態である繰出し容器の正面視での縦断面図である。
図2】(a)は図1に示すスリーブ体の正面視での縦断面図、(b)は同図(a)におけるA-A線に沿う断面図、(c)は図1に示すスリーブ体の底面図である。
図3】(a)は図1に示す繰出し部材の正面視での縦断面図、(b)は図1に示す繰出し部材の側面視での縦半断面図、(c)は図1に示す繰出し部材の底面図である。
図4】繰出し部材がストローク端にまで移動した状態の繰出し容器の正面視での縦断面図である。
図5】スリーブ体及び筒状体がケース体の内部に移動した状態の繰出し容器の正面視での縦断面図である。
図6】規制部材を備えた変形例の繰出し容器の正面視での縦断面図である。
図7図6に示す変形例の繰出し容器の側面視での縦断面図である。
図8】(a)は図6に示す規制部材の正面視での縦断面図、(b)は図6に示す規制部材の側面視での縦半断面図、(c)は図6に示す規制部材の底面図である。
図9】(a)は規制位置にある規制部材の要部を示す断面図であり、(b)は規制解除位置にある規制部材の要部を示す断面図である。
図10】変形例の規制部材の正面視での縦半断面図である。
図11】(a)は規制位置にある変形例の規制部材の要部を示す断面図であり、(b)は規制解除位置にある変形例の規制部材の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施の形態である繰出し容器1について詳細に例示説明する。
【0017】
なお、本明細書及び特許請求の範囲においては、上下方向は繰出し容器1の軸線Oに沿う方向とし、上は、繰出し容器1から内容物2が繰り出される方向とする。また、径方向は、繰出し容器1の軸線Oを通るとともに軸線Oに垂直な方向を意味するものとする。
【0018】
繰出し容器1は、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布対象物に塗布可能な固形の内容物2を収納する用途に用いられるものである。本実施の形態では、内容物2は略円柱状の口紅である。
【0019】
なお、固形の内容物2は、形状を留めておける程度の堅さを有するものを意味し、例えば半練り状のものなど、ある程度の柔らかさのものを含む。
【0020】
図1に示すように、繰出し容器1はケース体10を有している。例えば合成樹脂製とされるケース体10は、周壁11と底壁12とを一体に有する有底円筒状となっており、その上端(図1中において上側の端)は内容物2がケース体10から繰り出される繰出し口13となっている。周壁11は軸線Oと同軸の円筒状である。本実施の形態では、ケース体10の上端にキャップ体14が取り付けられており、内容物2はキャップ体14に設けられた開口14aを通してケース体10から繰り出されるようになっている。
【0021】
ケース体10の内周面には、第1螺旋溝15と第2螺旋溝16が設けられている。第1螺旋溝15は、軸線Oを中心として螺旋状に延びる断面矩形の溝となっており、ケース体10の底壁12と上下方向中間付近との間に設けられている。第2螺旋溝16は、軸線Oを中心として螺旋状に延びる断面矩形の溝となっており、ケース体10の上下方向中間付近と繰出し口13との間に設けられている。このように、ケース体10の内周面には、第1螺旋溝15と第2螺旋溝16とが、第1螺旋溝15よりも第2螺旋溝16が繰出し口13の側に位置するように軸線Oの方向に並べて設けられている。
【0022】
第1螺旋溝15と第2螺旋溝16は、互いに軸線Oを中心とした螺旋方向が逆向きとなっている。すなわち、第1螺旋溝15は、軸線Oを中心とした周方向の一方側に向けて進むと徐々に底壁12から繰出し口13の側に進むように傾斜した螺旋状であるのに対し、第2螺旋溝16は、軸線Oを中心とした周方向の一方側に向けて進むと徐々に繰出し口13から底壁12の側に進むように第1螺旋溝15とは逆方向に傾斜した螺旋状となっている。なお、第1螺旋溝15と第2螺旋溝16のピッチは、互いに同一でも相違してもよい。
【0023】
本実施の形態では、ケース体10は、周壁11の内側に、周壁11とは別体の下側筒体17が嵌め込まれるとともに、周壁11及び下側筒体17とは別体の上側筒体18が下側筒体17の上側に重ねて嵌め込まれ、下側筒体17の内周面に第1螺旋溝15が設けられ、上側筒体18の内周面に第2螺旋溝16が設けられた構成となっている。このような構成とすることにより、内周面に第1螺旋溝15と第2螺旋溝16とを備えたケース体10を、容易かつ精度よく製造することができる。
【0024】
なお、ケース体10は、下側筒体17及び上側筒体18を設けることなく、周壁11の内周面に第1螺旋溝15と第2螺旋溝16とを設けた構成としてもよく、下側筒体17及び上側筒体18のいずれか一方のみを下側筒体17ないし上側筒体18に設け、他方を周壁11の内周面に設けた構成としてもよい。
【0025】
ケース体10の内側にはスリーブ体20が配置されている。
【0026】
スリーブ体20は、ケース体10の内部に軸線Oを中心としてケース体10に対して相対回転自在に配置された第1スリーブ21と、破断可能な第1弱化連結部22を介して第1スリーブ21に同軸かつ一体に連結されて一部が繰出し口13から外部に突出する第2スリーブ23とを有している。本実施の形態では、スリーブ体20は合成樹脂製の射出成型品となっており、第2スリーブ23は、その下端において第1スリーブ21の上端に第1弱化連結部22を介して連結されている。
【0027】
図2に示すように、第1スリーブ21は、軸線Oに沿う方向に延びる第1縦溝21aと第1縦溝21aから周方向に延びる係止溝21bとを備えている。本実施の形態では、第1縦溝21aは第1スリーブ21の下端から上方に向けて真っ直ぐに延びており、係止溝21bは第1縦溝21aの上端に連なっている。
【0028】
また、第1スリーブ21は、その上端から下方に向けて軸線Oに沿う方向に延びる第2縦溝21cを備えている。本実施の形態では、第2縦溝21cは、第1縦溝21aの延長線上に設けられているが、周方向にずれて設けられてもよい。
【0029】
本実施の形態では、第1スリーブ21は、軸線Oを挟んで対称に、一対の第1縦溝21a、係止溝21b及び第2縦溝21cが設けられた構成とされているが、第1縦溝21a、係止溝21b及び第2縦溝21cがそれぞれ1つずつ設けられた構成としてもよく、あるいは、第1縦溝21a、係止溝21b及び第2縦溝21cがそれぞれ軸線Oを中心として等間隔に3つ以上並べて設けられた構成としてもよい。また、第2縦溝21cは、第1縦溝21a及び係止溝21bとは異なる数だけ設けられてもよい。
【0030】
第2スリーブ23は、その外径が第1スリーブ21の内径よりも小さくなっており、第1弱化連結部22が破断した状態において第1スリーブ21の内側に進入することができるようになっている。第2スリーブ23は、その内部に内容物2を収納することができる。
【0031】
第2スリーブ23の外周面には、第1凸部23aが一体に設けられている。第1凸部23aは、第2縦溝21cに対応した数だけ設けられる。本実施の形態では、第2スリーブ23の外周面には、一対の第2縦溝21cに対応して、軸線Oを挟んで対称に一対の第1凸部23aが設けられている。第1凸部23aは、第2スリーブ23の外周面から径方向外側に向けて突出する円柱状となっており、その外径は第2螺旋溝16及び第2縦溝21cの溝幅よりも僅かに小さくなっている。
【0032】
図1に示すように、第2スリーブ23の第1凸部23aが設けられている部分はケース体10の内部に収納されており、第1凸部23aがキャップ体14に係止されることでスリーブ体20はケース体10に対して抜け止めされている。
【0033】
また、ケース体10の内周面には、繰出し口13と第2螺旋溝16との間に位置して、周方向に延びる周方向溝19が設けられている。本実施の形態では、周方向溝19は、第2螺旋溝16とキャップ体14との間に第2螺旋溝16に連ねて設けられている。一対の第1凸部23aは周方向溝19に係合し、周方向溝19に沿って移動自在となっている。周方向溝19は第2螺旋溝16に連なっているので、第1弱化連結部22が破断して第2スリーブ23が第1スリーブ21の内側に進入する際、第1凸部23aは、第2螺旋溝16及び第2縦溝21cに係合し、これらに沿ってケース体10に対して下方に向けて移動することができる。
【0034】
第2スリーブ23には、係合孔23bが設けられている。本実施の形態では、第2スリーブ23には、それぞれの第1凸部23aの上側に位置して一対の係合孔23bが設けられている。
【0035】
第1弱化連結部22は、第1スリーブ21と第2スリーブ23とを全周に亘って連結する他の部分よりも厚みが薄い膜状に形成されており、第1スリーブ21に対して第2スリーブ23が軸線Oを中心として相対回転したときに破断して第1スリーブ21と第2スリーブ23とを分離するように構成されている。
【0036】
スリーブ体20の内側には、繰出し部材30が配置されている。
【0037】
図1図3に示すように、繰出し部材30は、スリーブ体20の内側に軸線Oに沿う方向にスリーブ体20に対して相対移動自在に配置された筒状体31と、破断可能な第2弱化連結部32を介して筒状体31に同軸かつ一体に連結された中皿部材33とを有している。本実施の形態では、繰出し部材30は合成樹脂製の射出成型品となっており、中皿部材33は、筒状体31の内側に第2弱化連結部32を介して連結されている。
【0038】
筒状体31と中皿部材33とで区画された中皿部材33よりも上側の部分は、有底円筒状となっており、この部分の内側には内容物2の下端部が収納されている。すなわち、繰出し部材30は、筒状体31と中皿部材33とで区画された有底円筒状部分において、内容物2の下端部を支持している。したがって、繰出し部材30がケース体10に対して図1における上方に相対移動すると、内容物2は繰出し部材30により押されてスリーブ体20の第2スリーブ23の上端から外部に向けて繰り出される。
【0039】
筒状体31には、第2弱化連結部32が設けられた部分から下方に向けて延びる一対の切欠き溝31aが設けられ、筒状体31の当該切欠き溝31aにより区画された一対の円弧状部分の外周面には、それぞれ突起31bが一体に設けられている。突起31bは、第2スリーブ23に設けられる係合孔23bと同数だけ設けられる。突起31bは、それぞれ筒状体31の外周面から径方向外側に向けて突出しており、繰出し部材30がケース体10に対して上方のストローク端にまで移動したときに、第2スリーブ23に設けられた対応する係合孔23bに係合することができる。係合孔23bと突起31bの周方向幅及び上下方向幅はいずれも互いに略同一となっており、突起31bが係合孔23bに係合すると、筒状体31は第2スリーブ23に周方向及び上下方向に拘束され、第2スリーブ23と一体化される。
【0040】
中皿部材33は、筒状体31とともに有底円筒状部分を構成する中皿本体33aと、中皿本体33aから下方に延びる一対の脚部33bとを一体に有しており、一対の脚部33bの外周面には、それぞれ第2凸部33cが一体に設けられている。第2凸部33cは、第1縦溝21aに対応した数だけ設けられる。本実施の形態では、中皿部材33には、一対の第1縦溝21aに対応して、軸線Oを挟んで対称に一対の第2凸部33cが設けられている。第2凸部33cは、脚部33bの外周面から径方向外側に向けて突出する円柱状となっており、その外径は第1螺旋溝15、第1縦溝21a及び係止溝21bの溝幅よりも僅かに小さくなっている。
【0041】
それぞれの第2凸部33cは、対応する第1縦溝21aを貫通して第1螺旋溝15に係合し、第1縦溝21a及び第1螺旋溝15に沿って移動自在となっている。また、第2凸部33cが第1縦溝21aに係合することで、繰出し部材30はスリーブ体20に回り止めされた状態となっている。したがって、ケース体10に対してスリーブ体20が軸線Oを中心として相対回転すると、第2凸部33cが第1螺旋溝15に沿って移動することで繰出し部材30はスリーブ体20に対して繰出し方向(図1において上方)に相対移動し、内容物2を第2スリーブ23の上端から外部に繰り出すことができる。繰出し部材30がスリーブ体20に対して上方に相対移動する際、筒状体31は第2スリーブ23の内周面に対して摺動し、これにより第2スリーブ23の内側に収納されている内容物2は効率よく外部に繰り出される。
【0042】
第2弱化連結部32は、筒状体31と中皿部材33とを全周に亘って連結する他の部分よりも厚みが薄い膜状に形成されており、筒状体31に対して中皿部材33が軸線Oを中心として相対回転したときに破断して筒状体31と中皿部材33ととを分離するように構成されている。
【0043】
詳細は図示しないが、繰出し容器1は、ケース体10のキャップ体14に着脱自在に篏合固定されて第2スリーブ23を覆うキャップを備えた構成とすることもできる。
【0044】
次に、上記構成の繰出し容器1の作動について説明する。
【0045】
まず、ケース体10を一方の手などで保持しつつ、他方の手などで第2スリーブ23をケース体10に対して軸線Oを中心とした一方側(順方向)に相対回転させる。ケース体10に対して第2スリーブ23が相対回転すると、第2凸部33cが第1螺旋溝15に沿って移動することで繰出し部材30はケース体10及びスリーブ体20に対して繰出し方向に相対移動して内容物2が第2スリーブ23の上端から外部に繰り出される。第2スリーブ23の上端から外部に繰り出された内容物2は、塗布対象物に塗布して使用することができる。使用者は、必要に応じて第2スリーブ23の回転操作量を調整することで、所望の量の内容物2を第2スリーブ23の上端から外部に繰り出すことができる。
【0046】
内容物2が順次繰り出され、図4に示すように、繰出し部材30がケース体10に対してストローク端(第2凸部33cが第1螺旋溝15の上端に達した位置)まで上方に移動すると、繰出し部材30の筒状体31に設けられた一対の突起31bが、それぞれ第2スリーブ23に設けられた対応する係合孔23bに係合し、筒状体31が第2スリーブ23に回り止めされた状態に一体化される。また、中皿部材33に設けられた第2凸部33cが第1スリーブ21に設けられた第1縦溝21aから係止溝21bに移動して係止溝21bに係合し、これにより中皿部材33及び第1スリーブ21がケース体10に対して回転操作方向に回り止めされる。したがって、繰出し部材30がケース体10に対してストローク端に達した後、回転操作がさらに行われてケース体10に対して第2スリーブ23がさらに相対回転すると、第2スリーブ23が第1スリーブ21に対して軸線Oを中心として相対回転して第1弱化連結部22が破断して第1スリーブ21と第2スリーブ23が分断されるとともに、筒状体31が中皿部材33に対して軸線Oを中心として相対回転して第2弱化連結部32が破断して筒状体31と中皿部材33が分断される。
【0047】
第1スリーブ21と第2スリーブ23が分断されるとともに筒状体31と中皿部材33が分断された後、回転操作がさらに行われると、第2スリーブ23に設けられた第1凸部23aが第1スリーブ21に設けられた第2縦溝21cに進入しつつ第2螺旋溝16に係合し、第1凸部23aが第1螺旋溝15とは螺旋方向が逆向きの第2螺旋溝16に沿って移動することで、第2スリーブ23とこれと一体化された筒状体31とがケース体10の内部に向けて移動する。このとき、第1スリーブ21はその下端がケース体10の底壁12に当接することでケース体10に対する下方への相対移動が規制され、中皿部材33は第2凸部33cが第1スリーブ21に設けられた係止溝21bに係止されることでケース体10に対する下方への相対移動が規制されているので、第2スリーブ23と筒状体31のみがケース体10の内部に向けて移動する。
【0048】
図5に示すように、第2スリーブ23と筒状体31がケース体10の内部に向けて移動すると、内容物2が第2スリーブ23の上端からさらに外部に繰り出される。このとき、筒状体31も第2スリーブ23とともにケース体10に保持された中皿部材33に対して下方に相対移動するので、筒状体31の内側に配置されていた内容物2の下端側の部分は、筒状体31がケース体10の内部に向けて移動することで徐々に第2スリーブ23の上端から外部に繰り出されることになる。したがって、筒状体31の内側に配置されていた内容物2の下端側の部分も第2スリーブ23の上端から外部に繰り出して使用することができるので、内容物2の残量を少なくすることができる。
【0049】
また、繰出し部材30がケース体10に対してストローク端に達するまでは、ケース体10に対する第2スリーブ23の突出量が変化しないまま第2スリーブ23の上端から内容物2が繰り出され、繰出し部材30がケース体10に対してストローク端に達して内容物2の残量が少なくなった後には、第2スリーブ23と筒状体31がケース体10の内部に向けて移動することで第2スリーブ23が内容物2に対して相対的に下方に移動して内容物2が第2スリーブ23の上端から繰り出されることにより、内容物2の残量が少なくなった後に使用感が変化することになるので、使用者に内容物2の残量が少なくなったことを容易に認識させることができる。
【0050】
図6図7に変形例として示すように、繰出し容器1は、内容物2を繰り出すためにケース体10に対する第2スリーブ23の回転操作が連続して行われた場合であっても、不意に第1弱化連結部22及び第2弱化連結部32が破断されることを防止するための規制部材40を備えた構成とすることもできる。
【0051】
なお、変形例の繰出し容器1は、規制部材40が設けられている点と、第1螺旋溝15がケース体10の周壁11の内周面に一体に設けられている点以外は、基本的に図1に示す繰出し容器1と同様の構成である。
【0052】
規制部材40は、第1スリーブ21に対する第2スリーブ23の軸線Oを中心とした相対回転を規制する規制位置と、第1スリーブ21に対する第2スリーブ23の軸線Oを中心とした相対回転を規制しない規制解除位置とに移動可能な構成となっている。初期状態において規制部材40は規制位置となっており、ケース体10に対する第2スリーブ23の回転操作が連続して行われても、規制部材40により第1スリーブ21に対する第2スリーブ23の軸線Oを中心とした相対回転が規制されていることから第1弱化連結部22が破断されることが防止される。また、規制部材40により第1スリーブ21に対する第2スリーブ23の軸線Oを中心とした相対回転が規制されることで、筒状体31に対する中皿部材33の軸線Oを中心とした相対回転も規制されるので、第2弱化連結部32が破断されることも防止される。使用者は、必要に応じて規制部材40を規制位置から規制解除位置に移動させることで、上記の通りの回転操作により、第1弱化連結部22及び第2弱化連結部32を破断して、残りの内容物2を繰り出させることができる。
【0053】
図8に示すように、規制部材40は筒状の操作体41を有している。操作体41は、キャップ体14の内側において、繰出し口13に、規制位置と規制解除位置との間で軸線Oの方向に沿って移動自在に装着されている。操作体41の外周面には軸線Oの方向に離れて一対の周溝41a、41bが設けられている。操作体41は、キャップ体14の内周面に設けられた円環状の突部14bが周溝41aに係合することで規制位置に保持され、規制位置から上方に引き上げられて突部14bが周溝41bに係合することで規制解除位置に保持される。
【0054】
より具体的には、操作体41の下端には、一対の第1凸部23aに対応する一対の第1規制部42が一体に設けられている。第1規制部42は、規制部材40が規制位置にあるときに対応する第1凸部23aに係合して第2スリーブ23を操作体41に対して回り止めするものである。本実施の形態では、第1規制部42は第1凸部23aの外径に対応した溝幅の下向き開口の溝を備えた構成とされており、図6に示すように、対応する第1凸部23aに上側から係合して第2スリーブ23を操作体41に対して回り止めするようになっている。一方、操作体41が規制解除位置に移動すると、第1規制部42と第1凸部23aの係合が解除される。
【0055】
また、操作体41の下端には、一対の第2縦溝21cに対応する一対の第2規制部43が一体に設けられている。第2規制部43は、規制部材40が規制位置にあるときに対応する第2縦溝21cに係合して第1スリーブ21を操作体41に対して回り止めするものである。本実施の形態では、第2規制部43は第2縦溝21cの溝幅に対応した幅の下向き開口の板片として構成されており、図7図9(a)に示すように、規制部材40が規制位置にあるときに、第2縦溝21cに上側から係合して第1スリーブ21を操作体41に対して回り止めするようになっている。一方、操作体41が上方に引き上げられて規制部材40が規制解除位置に移動すると、図9(b)に示すように、第2規制部43と第2縦溝21cの係合が解除される。
【0056】
このように、規制部材40が規制位置にあるときには、第1規制部42が第1凸部23aに係合して第2スリーブ23が操作体41に対して回り止めされるとともに第2規制部43が第2縦溝21cに係合して第1スリーブ21が操作体41に対して回り止めされることで、第1スリーブ21と第2スリーブ23とが操作体41を介して互いに回り止めされ、回転操作により第1弱化連結部22及び第2弱化連結部32が破断されることが防止される。
【0057】
図10に変形例として示すように、規制部材40は、操作体41の外周面にねじ41cを備え、ねじ41cがケース体10の内周面にねじ結合することで、規制位置と規制解除位置との間で軸線Oの方向に螺旋状に移動自在に装着された構成とすることもできる。
【0058】
この場合においても、規制部材40が規制位置にあるときには、第1規制部42が第1凸部23aに係合して第2スリーブ23が操作体41に対して回り止めされるとともに、図11(a)に示すように、第2規制部43が第2縦溝21cに係合して第1スリーブ21が操作体41に対して回り止めされ、ケース体10に対する第2スリーブ23の回転操作により第1弱化連結部22及び第2弱化連結部32が破断されることが防止される。
【0059】
また、操作体41をケース体10に対して回転操作することで、図11(b)に示すように、規制部材40を規制位置から規制解除位置に移動させて、第1規制部42と第1凸部23aの係合及び第1規制部42と第1凸部23aの係合を解除し、ケース体10に対する第2スリーブ23の回転操作により第1弱化連結部22及び第2弱化連結部32を破断可能な状態に切り替えることができる。
【0060】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 繰出し容器
2 内容物
10 ケース体
11 周壁
12 底壁
13 繰出し口
14 キャップ体
14a 開口
14b 突部
15 第1螺旋溝
16 第2螺旋溝
17 下側筒体
18 上側筒体
19 周方向溝
20 スリーブ体
21 第1スリーブ
21a 第1縦溝
21b 係止溝
21c 第2縦溝
22 第1弱化連結部
23 第2スリーブ
23a 第1凸部
23b 係合孔
30 繰出し部材
31 筒状体
31a 切欠き溝
32 第2弱化連結部
33 中皿部材
33a 中皿本体
33b 脚部
33c 第2凸部
40 規制部材
41 操作体
41a 周溝
41b 周溝
41c ねじ
42 第1規制部
43 第2規制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11