(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】スプールバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 11/07 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
F16K11/07 C
F16K11/07 D
(21)【出願番号】P 2022501942
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005975
(87)【国際公開番号】W WO2021166969
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020026388
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】川戸 惟寛
(72)【発明者】
【氏名】西村 直己
(72)【発明者】
【氏名】星 政輝
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-152347(JP,U)
【文献】実開昭60-034154(JP,U)
【文献】特開2014-238169(JP,A)
【文献】中国実用新案第208503125(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104533866(CN,A)
【文献】実開昭62-146069(JP,U)
【文献】特公昭48-004653(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のランド部を有するスプールと、
内部に前記スプールが軸方向に移動可能に配置され、入力ポートと出力ポートが形成され、内部に小径部を有するスリーブと、を備え、
前記スプールの移動により、前記ランド部と前記小径部の間を通過する流体の圧力や流量を調整するスプールバルブであって、
前記スリーブの小径部と前記スプールのランド部とが径方向に重なる箇所の間の空間である調整部が複数形成されており、かつ前記入力ポートの軸方向両側に隣接する2つの前記調整部の断面積よりも小さい断面積の前記調整部を区画する前記小径部と前記ランド部とがガイド部を構成しているスプールバルブ。
【請求項2】
前記ガイド部により構成される調整部は、前記入力ポートの軸方向両側の少なくとも一方の調整部と軸方向に隣接して設けられている請求項1に記載のスプールバルブ。
【請求項3】
前記調整部において、前記ガイド部により構成される調整部の断面積が最小である請求項1または2に記載のスプールバルブ。
【請求項4】
前記ガイド部を構成するランド部は、前記ランド部のうち最も前記スプールを付勢するスプリング側に配置されている請求項1ないし3のいずれかに記載のスプールバルブ。
【請求項5】
前記ガイド部により構成される調整部は、前記入力ポートおよび前記出力ポートを挟んで軸方向両側の調整部に設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載のスプールバルブ。
【請求項6】
前記ガイド部を構成するランド部は、前記ランド部のうち軸方向寸法が最長である請求項1ないし5のいずれかに記載のスプールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の機器に使用され、流体回路における制御流体の圧力や流量を制御するスプールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
スプールバルブは、例えば、エア、油圧、モータ、ソレノイド等を用いた駆動部の駆動により軸方向に移動するスプールを用いて、流体回路における制御流体の圧力や流量を制御するものである。従来のスプールバルブとして、スリーブに収納されたスプールと、スプールの一端側に配置されソレノイドにより軸方向の駆動力を生じさせる駆動部とを備え、ポンプやアキュムレータ等の圧力源と負荷との間に配置され、スプールの移動により圧力や流量が調整された制御流体を負荷へ向けて供給するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなスプールバルブは、スプールを駆動部へ向けて付勢するスプリングが配置されており、駆動部によりスプールをスプリングの付勢力に抗して軸方向に移動させ、スリーブに対するスプールの相対位置を目標位置とすることにより、入力ポートと出力ポートとを連通する流路を目標の通過面積に調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001‐263529号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなスプールバルブは、スプールバルブの起動時にスプールの摺動性が悪くなることがあった。これは、高圧の流体を使用する場合に顕著であって、長時間の停止状態や温度低下によってスプールの外周面とスリーブの内周面との狭い隙間に溜まった流体が変質しやすくなることや、高圧の流体がスプールをスリーブの内面に周方向に偏って押し付けることが原因であると考えられる。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、スプールを円滑に動作させることができるスプールバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のスプールバルブは、
複数のランド部を有するスプールと、
内部に前記スプールが軸方向に移動可能に配置され、入力ポートと出力ポートが形成され、内部に小径部を有するスリーブと、を備え、
前記スプールの移動により、前記ランド部と前記小径部の間を通過する流体の圧力や流量を調整するスプールバルブであって、
前記スリーブの小径部と前記スプールのランド部とが径方向に重なる箇所の間の空間である調整部が複数形成されており、かつ前記入力ポートの軸方向両側に隣接する2つの前記調整部の断面積よりも小さい断面積の前記調整部を区画する前記小径部と前記ランド部とがガイド部を構成している。
これによれば、起動時において、入力ポートの軸方向両側に隣接する調整部から流体を逃がすことができるとともに、ガイド部によりスプールを軸方向にガイドすることができるため、スプールを円滑に動作させることができる。
【0008】
前記ガイド部により構成される調整部は、前記入力ポートの軸方向両側の少なくとも一方の調整部と軸方向に隣接して設けられていてもよい。
これによれば、流体が流入してくる入力ポートとガイド部との軸方向の距離が短いため、スプールの傾斜が抑制され、スプールを円滑に動作させることができる。
【0009】
前記調整部において、前記ガイド部により構成される調整部の断面積が最小であってもよい。
これによれば、スプールの傾斜が抑制され、スプールを円滑に動作させることができる。
【0010】
前記ガイド部を構成するランド部は、前記ランド部のうち最も前記スプールを付勢するスプリング側に配置されていてもよい。
これによれば、スプールの傾斜がさらに抑制され、スプールを円滑に動作させることができる。
【0011】
前記ガイド部により構成される調整部は、前記入力ポートおよび前記出力ポートを挟んで軸方向両側の調整部に設けられていてもよい。
これによれば、スプールがガイド部により軸方向に離れた2箇所で支持されるため、スプールの傾斜が防止され、スプールを円滑に動作させることができる。
【0012】
前記ガイド部を構成するランド部は、前記ランド部のうち軸方向寸法が最長であってもよい。
これによれば、ガイド部を構成するランド部と小径部との接触面積を大きくすることができるため、小径部に対するランド部の押し付け力を分散させ、スプールを円滑に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1におけるスプールバルブを示す部分断面図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるスプールバルブのオフ状態におけるバルブ部を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施例1におけるスプールバルブのオン状態におけるバルブ部を示す拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施例2におけるスプールバルブのオフ状態におけるバルブ部を示す拡大断面図である。
【0014】
本発明に係るスプールバルブを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係るスプールバルブにつき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図1の正面側から見て左右側をスプールバルブの左右側として説明する。
【0016】
スプールバルブ1は、例えば車両の自動変速機等の油圧により制御される機器に用いられ、流体回路における作動油等の制御流体の圧力や流量を制御するものである。
【0017】
図1に示されるように、スプールバルブ1は、バルブとして流体の流量を調整するバルブ部2がソレノイドを用いた駆動部3に一体に取り付けられて構成されている。尚、本実施例の駆動部3は、一般的なソレノイドの構成であるため詳細な説明を省略する。
【0018】
図1および
図2に示されるように、本実施例のスプールバルブ1は、図示しないソレノイドのコイルに通電されていないオフ状態において、入力ポート11と出力ポート12との間の流路が閉塞されるノーマルクローズタイプのスプールバルブである。
【0019】
図1に示されるように、バルブ部2は、円筒状のスリーブ21と、スリーブ21の内部に液密に収容され軸方向に移動可能なスプール22と、スプール22の軸方向右端部に取り付けられスプール22を軸方向左方に付勢するコイル状のスプリング23と、スリーブ21の軸方向右端部にカシメ固定されスプリング23を保持するリテーナ24と、から主に構成されている。尚、スリーブ21、スプール22、リテーナ24は、アルミ、鉄、ステンレス、樹脂等の材料により形成されている。
【0020】
図1~
図3に示されるように、スリーブ21は、軸方向両端が開放する円筒状に形成され、径方向に貫通する入力ポート11、出力ポート12、フィードバックポート13、排出ポート14および呼吸ポート15がそれぞれ設けられている。
【0021】
図2および
図3に示されるように、スリーブ21には、スプール22が軸方向に移動可能に収容される貫通孔21aが設けられている。尚、スリーブ21の内周面、すなわち貫通孔21aの内周面は断面円形に形成されている。
【0022】
貫通孔21aには、その内周面に軸方向左側から軸方向右側に向かって順に呼吸ポート15が開口する第1環状凹部21bと、排出ポート14が開口する第2環状凹部21cと、出力ポート12が開口する第3環状凹部21dと、入力ポート11が開口する第4環状凹部21eと、フィードバックポート13が開口する第5環状凹部21fと、が設けられている。尚、フィードバックポート13は、スリーブ21の外周部において図示しない絞りを介して出力ポート12と連通している。
【0023】
また、貫通孔21aには、その内周面に第1環状凹部21bと第2環状凹部21cとの間に形成される第1小径部210aと、第2環状凹部21cと第3環状凹部21dとの間に形成される第2小径部210bと、第3環状凹部21dと第4環状凹部21eとの間に形成される第3小径部210cと、第4環状凹部21eと第5環状凹部21fとの間に形成される第4小径部210dと、第5環状凹部21fの軸方向右側に形成される第5小径部210eと、が設けられている。各小径部は、後述するスプール22の各ランド部と対応して配置されている。
【0024】
尚、本実施例おいて、調整部P(P1,P2,P3,P4,P5)とは、スリーブの小径部とスプールのランド部が径方向に重なる箇所(以下、「小径部に径方向に重なるランド部」を「小径部に対応するランド部」ともいう。)の間の空間を意味し、当該調整部Pの内外周はスプールのランド部とスリーブの小径部とによって区画されており、当該調整部Pを区画するスリーブの小径部における内径断面積と該小径部に径方向に重なる箇所のランド部の外径断面積との面積差ΔS(ΔS1,ΔS2,ΔS3,ΔS4,ΔS5)、すなわち、調整部Pの断面積について以下言及する。
【0025】
例えば、本実施例において、入力ポート11の軸方向両側の調整部P3,P4を区画する小径部は、第3小径部210cおよび第4小径部210dである。
【0026】
また、本実施例において、調整部P5を区画する小径部は、第5小径部210eであって、ガイド部Gを構成している。尚、ガイド部Gは、調整部Pの内、面積差ΔSが最小となる調整部を区画する小径部とランド部から構成されている。言い換えると、ガイド部Gは面積差ΔSが最小となる調整部を区画している。
【0027】
また、本実施例において、第1小径部210a、第2小径部210b、第3小径部210cおよび第4小径部210dの内径は、それぞれ略同一径に構成され、第5小径部210eの内径は前述の各小径部の内径よりも小径に構成されている。
【0028】
図2および
図3に示されるように、スプール22は、断面円形の円柱状に形成され、軸方向左側から軸方向右側に向かって順にスプール22の軸方向左端面22aを有する第1ランド部22bと、第1ランド部22bよりも小径に形成される第1小径部22cと、第1小径部22cよりも大径に形成される第2ランド部22dと、第2ランド部22dよりも小径に形成される第3ランド部22fと、から主に構成されている。
【0029】
尚、本実施例において、入力ポート11の軸方向両側の調整部P3,P4を区画するランド部は、第2ランド部22dである。
【0030】
また、本実施例において、ガイド部Gにおける調整部P5を区画するランド部は、第3ランド部22fである。すなわち、ガイド部Gは、スリーブ21の第5小径部210eとスプール22の第3ランド部22fにより構成される。
【0031】
尚、実施例1において、第1ランド部22bの外径と第2ランド部22dの外径は、略同一径に構成され、第3ランド部22fの外径は、第1ランド部22bおよび第2ランド部22dの外径よりも小径に構成されている。
【0032】
スプール22の軸方向左端面22aには、駆動部3を構成するロッド5の軸方向右端面が当接している。尚、
図3に示されるように、スプールバルブ1のオン状態においては、スプール22はロッド5と共に軸方向に移動可能となっている。
【0033】
スプール22の第3ランド部22fの軸方向右端面に形成される環状面部22gには、スプール22を軸方向左方に付勢するコイル状のスプリング23の一端が当接している。スプリング23は、第3ランド部22fの環状面部22gとスリーブ21の軸方向右端部にカシメ固定されるリテーナ24との間で圧縮保持されている。
【0034】
スリーブ21の第1小径部210a、第2小径部210b、第3小径部210c、第4小径部210dおよび第5小径部210eの内周面と、スプール22の第1ランド部22b、第2ランド部22dおよび第3ランド部22fの外周面との間には、それぞれ径方向に僅かな隙間が設けられており、スプール22は軸方向に円滑に移動可能となっている。
【0035】
詳しくは、
図2に示されるスプールバルブ1のオフ状態において、入力ポート11の軸方向左側の調整部P3を区画する第3小径部210cにおける内径断面積ID
3と第3小径部210cに対応する第2ランド部22dの外径断面積OD
2との面積差ΔS3(=ID
3-OD
2)と、入力ポート11の軸方向右側の調整部P4を区画する第4小径部210dにおける内径断面積ID
4と第4小径部210dに対応する第2ランド部22dの外径断面積OD
2との面積差ΔS4(=ID
4-OD
2)とは、略同一に構成されている(ΔS3=ΔS4)。
【0036】
また、ガイド部Gにおける調整部P5を区画する第5小径部210eにおける内径断面積ID5と第5小径部210eに対応する第3ランド部22fの外径断面積OD3との面積差ΔS5(=ID5-OD3)は、上述した入力ポート11の軸方向両側の調整部P3,P4における面積差ΔS3,ΔS4よりも小さく構成されている(ΔS3=ΔS4>ΔS5)。
【0037】
尚、スプールバルブ1のオフ状態において、調整部P1を区画する第1小径部210aにおける内径断面積ID1と第1小径部210aに対応する第1ランド部22bの外径断面積OD1との面積差ΔS1(=ID1-OD1)は、入力ポート11の軸方向両側の調整部P3,P4における面積差ΔS3,ΔS4と略同一に構成されている(ΔS1=ΔS3=ΔS4)。
【0038】
すなわち、実施例1のスプールバルブ1のオフ状態において、ガイド部Gにおける調整部P5の面積差ΔS5は、最小となるように構成されている。
【0039】
尚、
図3に示されるスプールバルブ1のオン状態において、調整部P2を区画する第2小径部210bにおける内径断面積ID
2と第2小径部210bに対応する第1ランド部22bの外径断面積OD
1との面積差ΔS2(=ID
2-OD
1)は、調整部P1の面積差ΔS1と略同一に構成されている(ΔS1=ΔS2)。
【0040】
すなわち、実施例1のスプールバルブ1における全ての調整部Pのうちガイド部Gにおける調整部P5の面積差ΔS5が最小となるように構成されている。
【0041】
これにより、第3ランド部22fの外周面がスリーブ21の第5小径部210eの内周面に支持された状態で軸方向にガイドされ、スプール22が円滑に移動可能となっている。
【0042】
また、入力ポート11の軸方向両側の調整部P3,P4における面積差ΔS3,ΔS4は、ガイド部Gにおける調整部P5における面積差ΔS5よりも大きく構成されている。これにより、スプールバルブ1のオフ状態において、入力ポート11と出力ポート12との間の流路が第2ランド部22dにより閉塞された状態であっても、入力ポート11が開口する第4環状凹部21e内の流体の一部が入力ポート11の軸方向両側の隙間を通して軸方向に隣接する第3環状凹部21dおよび第5環状凹部21fに流出可能となっている(
図2の黒矢印を参照)。
【0043】
尚、スプールバルブ1のオフ状態および稼働状態において、第4環状凹部21eから第3環状凹部21dおよび第5環状凹部21fに流出する流体の量は、流体回路における制御流体の圧力や流量の制御に影響を与えない程度に設定される。
【0044】
これによれば、スプールバルブ1の起動時において、入力ポート11の軸方向両側の調整部P3,P4、すなわちスリーブ21の第3小径部210cおよび第4小径部210dにおける内周面と第3小径部210cおよび第4小径部210dに対応するスプール22の第2ランド部22dの外周面との間の隙間から第4環状凹部21e内の流体を逃がすことができるとともに、ガイド部Gにおける調整部P5を区画するスプール22の第3ランド部22fの外周面をスリーブ21の第5小径部210eの内周面により支持し軸方向にガイドすることができるため、スプール22を円滑に動作させることができる。
【0045】
また、スプールバルブ1は、ノーマルクローズタイプであり、スプールバルブ1の起動時において、入力ポート11の軸方向両側の隙間に溜まった流体の影響を受けやすい構造であるが、上述したように起動時に流体を第4環状凹部21e内から第3環状凹部21dおよび第5環状凹部21fへ逃がすことができるため、スプールバルブ1の応答性が効果的に高められている。
【0046】
また、スプールバルブ1の起動時において、入力ポート11からスリーブ21内の第4環状凹部21eに高圧の流体が流入した場合であっても、高圧の流体の一部を入力ポート11の軸方向両側の調整部P3,P4における隙間を通して第4環状凹部21e内から第3環状凹部21dおよび第5環状凹部21fへ逃がすことにより、第4小径部210d内における圧力の過度な上昇を抑制し、ガイド部Gにおける調整部P5を区画する第5小径部210eの内周面に支持される第3ランド部22fの外周面に対する押し付け力を弱めることができるため、スプール22を円滑に動作させやすい。
【0047】
また、スプール22の外周面とスリーブ21の内周面は、共に断面円形である。これにより、スプール22の外周面とスリーブ21の内周面との間の隙間が周方向にバランスよく形成されるため、スプール22がスリーブ21内の流体の影響を受け難くなり、スプール22の動作を安定させることができる。
【0048】
また、ガイド部Gにおける調整部P5は、入力ポート11の軸方向右側の調整部P4と軸方向に隣接して設けられている。これにより、高圧の流体が流入してくる入力ポート11が開口する第4環状凹部21eとガイド部Gにおける調整部P5を区画する第5小径部210eとの軸方向の距離を短くすることができるため、スプール22の傾斜が抑制され、スプール22を円滑に動作させることができる。
【0049】
また、スプールバルブ1において、ガイド部Gにおける調整部P5の面積差ΔS5が最小である。これにより、ガイド部Gにおける調整部P5の隙間が最も小さく、スプール22の傾斜によって第3ランド部22fの外周面が第5小径部210eの内周面に即座に当接するため、スプール22の傾斜が抑制され、スプール22を円滑に動作させることができる。
【0050】
また、ガイド部Gにおける調整部P5を区画する第3ランド部22fは、その軸方向右端面に形成される環状面部22gにスプール22を付勢するスプリング23に一端が当接している。すなわち、第3ランド部22fは、スプール22に形成されるランド部のうち最もスプリング23に近い位置に配置されている。これにより、ガイド部Gにおける調整部P5においてスプリング23による調芯性が高い第3ランド部22fの外周面が第5小径部210eの内周面によりガイドされるため、スプール22の傾斜がさらに抑制され、スプール22を円滑に動作させることができる。
【0051】
また、ガイド部Gにおける調整部P5を区画する第3ランド部22fは、スプール22に形成されるランド部のうち軸方向寸法が最長に構成されている。これにより、ガイド部Gにおける調整部P5を区画する第3ランド部22fの外周面と第5小径部210eの内周面との間の接触面積を大きくすることができるため、入力ポート11から流入する高圧の流体による第3ランド部22fの第5小径部210eへの押し付け力を分散させ、スプール22を円滑に動作させることができる。
【0052】
尚、スプールバルブ1を機器に取り付ける際に、図示しない抜け止めピンが挿入される溝30は、軸方向寸法が最長に構成されるガイド部Gにおける調整部P5を区画する第5小径部210eの一部と対応するスリーブ21の外周部分に設けられている。これにより、バルブ部2の軸方向寸法をコンパクトに構成することができる。
【0053】
また、スリーブ21の内周面の第1小径部210a、第2小径部210b、第3小径部210cおよび第4小径部210dの内径をそれぞれ略同一径に構成し、スプール22の第1ランド部22b、第2ランド部22dおよび第3ランド部22fの外径を変更することにより、スプールバルブ1の製造時におけるスリーブ21およびスプール22の加工を行いやすくなっている。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2に係るスプールバルブにつき、
図4を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0055】
図4に示されるように、実施例2におけるスプールバルブ101は、スプール122の第1ランド部122bと第2ランド部122dの外径が略同一径に構成され、第3ランド部122fの外径は、第1ランド部122bおよび第2ランド部122dの外径よりも小径に構成されている。
【0056】
また、第1小径部210a’の内径は、第2小径部210b、第3小径部210c、第4小径部210dの内径よりも小径かつ、第5小径部210eの内径よりも大径に構成されている。
【0057】
詳しくは、
図4に示されるスプールバルブ101のオフ状態において、調整部P1を区画する第1小径部210a’における内径断面積ID
101と第1小径部210a’に対応する第1ランド部122bの外径断面積OD
1との面積差ΔS101(=ID
101-OD
1)と、ガイド部Gにおける調整部P5を区画する第5小径部210eにおける内径断面積ID
5と第5小径部210eに対応する第3ランド部122fの外径断面積OD
3との面積差ΔS5(=ID
5-OD
3)は、略同一に構成されている(ΔS101=ΔS5)。
【0058】
すなわち、実施例2のスプールバルブ101において、面積差ΔSが最小となる調整部P1,P5が入力ポート11と出力ポート12を挟んで軸方向両側の調整部に設けられている。
【0059】
これによれば、スプール122が調整部P1,P5により軸方向に離れた2箇所のガイド部Gで支持されるため、スプール122の傾斜が防止され、スプール122を円滑に動作させることができる。
【0060】
尚、調整部P1における面積差ΔS101は、軸方向右側のガイド部Gにおける調整部P5における面積差ΔS5と略同一に構成されるものに限らず、入力ポート11の軸方向両側の調整部P3,P4における面積差ΔS3,ΔS4よりも小さく構成されるものであれば、ガイド部Gにおける調整部P5における面積差ΔS5よりも僅かに大きく構成されてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0062】
例えば、前記実施例では、スプールバルブの駆動部としてのソレノイドを用いたものについて説明したが、これに限らず、スプールバルブの駆動部は、エア、油圧、モータ等が選択されてもよい。
【0063】
また、前記実施例では、スリーブの貫通孔には、その内周面に軸方向左側から軸方向右側に向かって順に呼吸ポートが開口する第1環状凹部と、排出ポートが開口する第2環状凹部と、出力ポートが開口する第3環状凹部と、入力ポートが開口する第4環状凹部と、フィードバックポートが開口する第5環状凹部と、が設けられるものとして説明したが、これに限らず、ポートと環状凹部との対応関係は、機器の流体回路の構成等に応じて適宜変更されてよい。例えば、前記実施例と同様にスプールバルブがノーマルクローズタイプである場合、各環状凹部に対応して軸方向左側から軸方向右側に向かって呼吸ポート、フィードバックポート、入力ポート、出力ポート、排出ポートの順に形成されていてもよい。
【0064】
また、スプールバルブがノーマルオープンタイプである場合、各環状凹部に対応して軸方向左側から軸方向右側に向かって呼吸ポート、フィードバックポート、排出ポート、出力ポート、入力ポートの順、または呼吸ポート、入力ポート、出力ポート、排出ポート、フィードバックポートの順に形成されていてもよい。
【0065】
また、前記実施例では、スプールバルブの起動時において、入力ポートの軸方向両側の調整部の隙間から第4環状凹部内の流体を第3環状凹部および第5環状凹部へ逃がす態様について説明したが、これに限らず、入力ポートの軸方向両側の調整部の隙間の少なくとも一方から第4環状凹部内の流体を逃がすことができるものであればよい。
【0066】
また、前記実施例では、入力ポートの軸方向両側の調整部の面積差が略同一の大きさに構成される態様について説明したが、ガイド部における調整部の面積差よりも大きいものであれば、入力ポートの軸方向両側の調整部の面積差が異なっていてもよい。例えば、入力ポートの軸方向右側の調整部の面積差を入力ポートの軸方向左側の調整部の面積差よりも大きく構成し、第4環状凹部内の流体をフィードバックポートが開口する第5環状凹部へ向けて多く逃がすことにより、出力ポートが開口する第3環状凹部への制御流体の漏れを抑制することができる。
【0067】
また、逆に入力ポートの軸方向左側の調整部の面積差を入力ポートの軸方向右側の調整部の面積差よりも大きく構成し、第4環状凹部内の流体を出力ポートが開口する第3環状凹部へ向けて多く逃がすことにより、起動時において出力ポートや排出ポートを通してスリーブ内で変質した流体を外部に排出させやすくすることができる。
【0068】
また、スプールの外周面とスリーブの内周面は、断面円形のものに限らず、例えば断面楕円形や断面多角形状等であってもよい。
【0069】
また、面積差が最小となるガイド部における調整部は、入力ポートの軸方向両側の調整部と軸方向に隣接していなくてもよい。
【0070】
また、面積差が最小となるガイド部における調整部を区画するランド部は、軸方向寸法が最長になるように構成されるものに限らず、他のランド部と軸方向寸法が略同一であってもよいし、最短になるように構成されていてもよい。
【0071】
また、前記実施例では、スリーブに3つのランド部が形成されるものとして説明したが、ランド部の数は2つ以上であればよい。
【0072】
また、小径部の内径は異なる径に構成されていても、小径部の複数が同径に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 スプールバルブ
2 バルブ部
3 駆動部
11 入力ポート
12 出力ポート
13 フィードバックポート
14 排出ポート
15 呼吸ポート
21 スリーブ
21a 貫通孔
21b 第1環状凹部
21c 第2環状凹部
21d 第3環状凹部
21e 第4環状凹部
21f 第5環状凹部
22 スプール
22b 第1ランド部
22c 第1小径部
22d 第2ランド部
22f 第3ランド部(ガイド部を構成するランド部)
23 スプリング
101 スプールバルブ
122 スプール
122b 第1ランド部
122d 第2ランド部
122f 第3ランド部(ガイド部を構成するランド部)
210a 第1小径部
210a’ 第1小径部(ガイド部を構成する小径部)
210b 第2小径部
210c 第3小径部
210d 第4小径部
210e 第5小径部(ガイド部を構成する小径部)
G ガイド部
P 調整部
ΔS 面積差