(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240129BHJP
G02B 19/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
G03F7/20 505
G02B19/00
(21)【出願番号】P 2017250763
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】300091670
【氏名又は名称】株式会社アドテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 克朗
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】安藤 達哉
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-100561(JP,A)
【文献】特開2004-039871(JP,A)
【文献】特開2006-186291(JP,A)
【文献】特開2006-019702(JP,A)
【文献】特開2010-157649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0296936(US,A1)
【文献】特開2006-066429(JP,A)
【文献】特開平05-267124(JP,A)
【文献】特開2009-086015(JP,A)
【文献】特開2005-055881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 9/00
H01L21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を露光するための照明光を射出する露光光源であって複数の半導体レーザを含むものと、前記照明光が入射される2次元空間変調器と、前記基板を照明光に対して移動させて走査露光するためのステージと、前記露光光源と前記2次元空間変調器との間の照明光の光軸上に配置される光学フィルタと、を備え
、前記基板を走査方向に沿って連続的に移動させることに並行して、前記基板上の照射エリアに形成する露光パターンに対応する像を、前記2次元空間変調器において、画素単位で移動させながら形成する露光装置において、
前記光学フィルタは、前記光軸を中心に回転するように配置されており、
前記光学フィルタを回転させない初期状態において、前記光学フィルタの透過率は、前記光軸に対して垂直に横切る平面内で第1の方向には変化するが前記第1の方向と直角な第2の方向には変化せず、
前記初期状態においては、前記第1の方向の中心位置における前記光学フィルタの積算透過率が最も低く、周辺へ向かうにしたがって前記光学フィルタの積算透過率が高くなり、
前記光学フィルタを前記初期状態から90°回転させた状態においては、前記第1の方向の中心位置における前記光学フィルタの積算透過率が最も高く、周辺へ向かうにしたがって前記光学フィルタの積算透過率が低くなる、露光装置。
【請求項2】
前記光学フィルタを前記初期状態から30°回転させた状態においては、前記第1の方向の中心位置における前記光学フィルタの積算透過率が最も低く、周辺へ向かうにしたがって前記光学フィルタの積算透過率が高くなり、この際、前記初期状態に対して比較的緩やかに前記光学フィルタの積算透過率が増加する、請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記光学フィルタを前記初期状態から60°回転させた状態においては、前記第1の方向の中心位置を含む中心領域における前記光学フィルタの積算透過率が低く、前記中心領域から外側の領域へ向かうにしたがって前記光学フィルタの積算透過率が緩やかに増加する、請求項1又は2に記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にパターンを露光する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に配線パターン等を形成するため、光源として複数の半導体レーザ(以下、LDと記載する)を設け、マスクを用いることなく直接基板に露光する直接描画露光装置が知られている。このような直接描画露光装置では、LDを多数並べてそれぞれの光源から出射する光を被照明物体に一様に照射しようとしても、照明光学系から出射する光の指向性がガウス分布に近くなり照射領域の中心付近が強く周辺が弱くなる場合や、逆に照明の中心付近が弱く周辺が強くなる場合がある。このように照明光が均一でなくなると露光不良となりスループットが低下する。
【0003】
このような露光不良を防止するため、特許文献1の
図7に開示されているように、インテグレータやディフューザを設けて露光照明光を均一化する技術があるが、露光光源からの露光照明光をインテグレータへ入射させるためには極めて面倒な微調整が必要であり、時間を要していた。そのため、微調整を行わなかった場合、インテグレータへの入射光の調整不足により、露光照明光が不均一になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記課題を解決し、露光照明光の照射面での均一性を向上させることができる露光装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願において開示される発明のうち、代表的な露光装置は、基板を露光するための照明光を射出する露光光源であって複数の半導体レーザを含むものと、前記照明光が入射される2次元空間変調器と、前記基板を照明光に対して移動させて走査露光するためのステージとを備える露光装置において、前記露光光源と前記2次元空間変調器との間の照明光の光軸上に配置される光学フィルタを有し、前記光学フィルタは、前記光軸に対して垂直に横切る平面内で透過率が第1の方向には変化するが当該第1の方向と直角な第2の方向には変化せず、前記第1の方向の中心位置での透過率が最も高く、周辺へ向かうにしたがって透過率が低くなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、露光照明光の照射面での均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る露光装置の全体構成図である。
【
図2】
図1における照明光学系を説明するための図である。
【
図3】
図1における光学フィルタを説明するための図である。
【
図4】光学フィルタを設けない場合の積算照度を説明するための図である。
【
図5】光学フィルタを設けた場合の積算照度を説明するための図である。
【
図6】光学フィルタを設けない場合の積算照度のピーク値がシフトした場合を説明するための図である。
【
図7】光学フィルタをX方向に動かして位置決めした場合の積算照度を説明するための図である。
【
図8】光学フィルタを設けて回転させた場合の透過率を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を実施例に沿って説明する。なお、以下の説明において、同等な各部には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1は本願発明の実施形態に係る直接描画露光装置の全体構成図である。1は露光照明ユニットである。2は照明光学系であり、ここから光軸4aで示される方向へ出射され後述する光学フィルタ3を透過した露光照明光4は、ミラー5により、上方にある2次元空間変調器6に入射される。ここでは、2次元空間変調器6としてデジタルミラーデバイスを用いているので、2次元空間変調器をDMDと記載する。
【0011】
DMD6にはXY面内に多数の可動マイクロミラーがマトリックス状に配置されている。後述する制御装置7から各マイクロミラーにON/OFF信号が送られると、ONの信号を受けたマイクロミラーは一定角度傾き、入射した露光照明光を反射させて第1の投影レンズ8に入射させる。また、OFFの状態のマイクロミラーで反射された露光照明光4は第1の投影レンズ8には入射せず、露光には寄与しない。投影レンズ8を透過した露光照明光はマイクロレンズアレー9に入射する。DMD5のマイクロミラーの拡大像(又は縮小像)が形成されるマイクロレンズアレー9の位置にはそれぞれマイクロレンズが配置されている。各マイクロレンズにほぼ垂直に入射する露光照明光4(ON状態のマイクロミラーから来た露光照明光)は第2の投影レンズ10に入射し、第2の投影レンズ10を出射した露光照明光4は基板11上の照射エリア12内に露光パターンを形成する。この場合、露光照明ユニット1に対して基板11を走査方向であるY方向に沿って移動させながら露光することにより、基板11上に露光パターンが走査露光される。
【0012】
7は例えばプログラム制御の処理装置を主体にしたものによって実現される制御装置であり、露光照明ユニット1内の照明光学系2、DMD6、ステージ13の動作を制御する。14はステージ駆動部で、制御装置7からの制御指令を受けてステージ13をX、Y及びZ方向に移動させる。15は照度検出手段で、ステージ13上に固定され、例えばCCD型のラインセンサや照度計などの光学センサである。照度検出手段15の受光部のX方向の幅は照射エリア12のX方向の幅よりも十分広く設定されていて、制御装置7からの制御指令を受けてオンオフ制御され、露光照明光4を検出した場合は検出信号を制御装置7へ送信する。
【0013】
図2は、
図1における照明光学系2を説明するための図である。16は露光光源で、405nm付近(380~ 420nm)の波長の光が400mW程度の出力で出射する青及び紫色LDを基板の上に2次元配列して構成される。個々のLDからの出射光は、集光レンズ(集光光学系)17により、ディフューザ18を透過した後に光インテグレータ19に入射する。このディフューザ18は、波面を変化させる変調器であり、直結されたモータを駆動して回転されるガラス円板で構成される。光インテグレータ19を透過した光は、コンデンサレンズ(コリメートレンズ)20を通り、ミラー5で反射してDMD6に照射する。光インテグレータ19は、集光レンズ17により集光された2次元に配列された多数のLDからの出射光束を空間的に分解して多数の擬似2次光源を生成して重ね合わせて照明する光学系である。なお、露光光源16及びディフューザ18のモータは制御装置7により制御される。
【0014】
図3(a)及び(b)は、照明光学系2の近傍に配置される光学フィルタ3を説明するための図で(a)は光軸4aの方向から見た平面図、(b)は光軸4aに対して直角方向の積算透過率の変化を示す図である。光学フィルタ3は
図3(a)において破線で示すようにX方向に透過率の変化する円形領域21を有し、円形領域21のZ方向の透過率は全て同じである。
【0015】
円形領域21のX方向の積算透過率Tは、光学フィルタ3を設けてステージ13を駆動して照度検出手段15をY方向に移動させ照度むらの無い均一な露光照明光4を検出したときの照度検出値をX方向毎に積算した値をD1、光学フィルタ3を設けないで同様に行った場合の値をD2としたとき、次式(1)で表される。
T=(D1/D2)×100 (%) ・・・(1)
これは、円形領域21のX方向の中心位置X5に関して対称であって、中心位置X5から位置X1及び位置X9に向かって単調に増加するような分布となる。
【0016】
図4(a)及び(b)は、光学フィルタ3を設けない場合の積算照度を説明するための図である。
図4(a)は積算照度を示した図であり、
図4(b)は照射エリア12の照度分布を示したイメージ図である。
図4(b)において、黒色は積算照度の低い部分を、白色は積算照度の高い部分をそれぞれ示している。積算照度は、照度検出手段15をY方向に移動させ露光照明光4を検出した場合に、X方向毎の照度を積算した値である。X方向の中心位置xcが最も高く、位置xa及び位置xeに向かって積算照度が低下する。
【0017】
図5(a)及び(b)は、光学フィルタ3を設けた場合の照射エリア12の積算照度を説明するための図である。
図5(a)は積算照度を示した図であり、
図5(b)は照射エリア12の照度分布を示したイメージ図である。円形領域21の中心22と光軸4aの中心が一致するように光学フィルタ3を照明光学系2の近傍に位置決めすることにより、X方向の中心位置xcの積算照度が最も高くなるというような照度むらが良好に補正され、基板11上において
図5(b)に示すようにほぼ均一な照度分布が実現される。なお、本実施例では、透過率が円形領域21のX方向の中心位置X5から位置X1及び位置X9に向かって単調に増加するような分布の光学フィルタ3を用いた場合を説明したが、中心位置X5の透過率が最も高く中心位置X5から位置X1及び位置X9に向かって単調に減少するような分布の光学フィルタ3を用いても良い。この場合、X方向の中心位置xcが最も低く、位置xa及び位置xeに向かって積算照度が高くなる照射エリア12の照度分布を補正することができる。
【0018】
図6(a)及び(b)は、光学フィルタ3を設けない場合であって、積算照度の高くなる位置がX方向の中心位置からシフトしている場合を説明するための図である。
図6(a)は積算照度を示した図であり、
図6(b)は照射エリア12の照度分布を示したイメージ図である。積算照度の最も高くなる位置が位置xcから位置xbへシフトしていて、このような場合、
図5(a)と(b)を用いて説明した光学フィルタ3を設けても照度むらを十分に補正することができない。
【0019】
図7(a)及び(b)は、光学フィルタ3を設けた場合であって、積算照度の高くなる位置がX方向の中心位置からシフトさせた場合を説明するための図である。
図7(a)は積算照度を示した図であり、
図7(b)は照射エリア12の照度分布を示したイメージ図である。光学フィルタ3の中心位置X5を照明光学系2に対してX方向に動かして位置決めすることにより、
図7(a)及び(b)に示すように照度むらが補正され、ほぼ均一な照度分布が実現される。
【0020】
図8(a)及び(b)は、光学フィルタ3を設けてその中心22を基準として光学フィルタ3を回転させた場合の積算透過率を説明するための図で、(a)は光軸4aの方向から見た平面図、(b)は光軸4aに対して直角方向の積算透過率の変化を示す図である。光学フィルタ3を時計回りに30度回転させた場合がR1、60度回転させた場合がR2、90度回転させた場合がR3である。光学フィルタ3を回転させない場合がR0で、この場合
図3と同等の積算透過率となる。
【0021】
R0の位置から光学フィルタ3を30度回転させるとR1となり、X方向の中心位置X5が最も低く、位置X1及び位置X9に向かって積算照度が高くなる。光学フィルタ3を回転させない場合に対して比較的緩やかに中心位置X5からX1及びX9へ増加しているため、中心位置X5の照度が高くX1及びX9へ比較的緩やかに照度が低くなる場合に適用できる。
【0022】
R1の位置から光学フィルタ3を30度(R0の位置から60度)時計回りに回転させるとR2となり、X3からX7が低く、位置X1及び位置X9に向かって積算照度が2.5%程度高くなる。X3からX7の照度が高くX1及びX9へ緩やかに照度が低くなる露光照明光4に適用できる。
【0023】
R2の位置から光学フィルタ3を30度(R0の位置から90度)回転させるとR3となり、X3からX7が高く、位置X1及び位置X9に向かって積算照度が9%程度低くなる。X3からX7の照度が低く、X1及びX9へ緩やかに照度が高くなる露光照明光4に適用できる。
【0024】
以上の実施形態によれば、光学フィルタ3を設けたことで照度むらのある露光照明ユニット1を用いた場合でも均一な露光照明光4を照射することができる。また、光学フィルタ3を回転させることで様々な照度むらを補正し均一な露光照明光4を照射することが可能となる。
【0025】
なお、上述した実施形態では、基板11に対して露光照明ユニット1が1つ配置される場合を説明したが、露光照明ユニット1をX方向に2個以上設けて、同時に露光するようにしてもよい。この場合、一度に露光する面積が増えるのでスループットの向上が可能となる。
【0026】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく種々の変形が可能で有り、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。
【符号の説明】
【0027】
1 露光照明ユニット
2 照明光学系
3 光学フィルタ
4 露光照明光
5 ミラー
6 DMD
7 制御装置
8 第1の投影レンズ
9 マイクロレンズアレー
10 第2の投影レンズ
11 基板