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特許7427360液体吐出装置、吐出制御方法および液体吐出ヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】液体吐出装置、吐出制御方法および液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240129BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B41J2/14 209
B41J2/01 501
B41J2/14 611
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018193584
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020059254
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 麻紀
(72)【発明者】
【氏名】三隅 義範
(72)【発明者】
【氏名】石田 譲
(72)【発明者】
【氏名】船橋 翼
(72)【発明者】
【氏名】松居 孝浩
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-51146(JP,A)
【文献】特開2017-217908(JP,A)
【文献】特開2015-221498(JP,A)
【文献】特開2015-214141(JP,A)
【文献】特開2018-79671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0036003(US,A1)
【文献】特開2008-105364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な液室と、前記液室内の液体を吐出するためのエネルギを発生する発熱抵抗体と、前記液室で前記発熱抵抗体を被覆して設けられ、前記液室内の液体に電界を形成可能な第1電極と、前記液室で前記第1電極と異なる位置に設けられ、前記液室内の液体に電界を形成可能な第2電極と、を備えた液体吐出手段と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加可能な電圧印加手段と、を備え、負の極性をもつイオンまたは表面に負の電荷を有するコロイド粒子である色材と、正の極性をもつイオンまたは表面に正の電荷を有するコロイド粒子とを含有する液体を吐出する液体吐出装置において、
前記電圧印加手段は、前記発熱抵抗体が駆動される駆動状態の前の待機状態では、前記第1電極の電位が前記第2電極の電位より低くなるように、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加し、前記発熱抵抗体の駆動と共に、前記第1電極の電位が前記第2電極の電位より高くなるように、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加し、
前記第1電極および前記第2電極には、イリジウム膜が形成されており、
前記電圧は、0.10V以上、2.5V以下であり、
前記電圧は、液体と前記第1電極との間で電気化学反応が生じない程度の電圧であり、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1電極と前記第2電極との間の経路を切替え可能なスイッチを備え、
前記待機状態と前記駆動状態との切替えに合わせて前記スイッチを切替えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記スイッチは、前記液体吐出手段が備えていることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
負の極性をもつ色材と、前記色材の分子量より小さい分子量である、正の極性をもつ金属イオンと、を含有する液体を吐出することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記電圧印加手段は、前記待機状態における前記第1電極と前記第2電極との間の電圧値よりも、前記駆動状態における前記第1電極と前記第2電極との間の電圧値を小さくすることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記電圧印加手段は、前記待機状態において前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する時間よりも、前記駆動状態において前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する時間を短くすることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記電圧印加手段は、前記発熱抵抗体の駆動を停止した後に、前記駆動状態における前記第1電極と前記第2電極との間への電圧の印加を停止することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液室内の液体を吐出するために液体を加熱する発熱抵抗体を覆う第1電極と、前記第1電極と異なる位置に形成された第2電極と、の間の電圧の印加を、液体の吐出に応じて制御し、負の極性をもつイオンまたは表面に負の電荷を有するコロイド粒子である色材と、正の極性をもつイオンまたは表面に正の電荷を有するコロイド粒子とを含有する液体を吐出する吐出制御方法において、
前記発熱抵抗体を駆動する駆動状態のの待機状態に、前記第1電極の電位が前記第2電極の電位より低くなり、前記発熱抵抗体の駆動と共に、前記第1電極の電位が前記第2電極の電位より高くなるように、前記第1電極と前記第2電極との間の電圧の印加を制御し、
前記第1電極および前記第2電極には、イリジウム膜が形成されており、
前記電圧は、0.10V以上、2.5V以下であり、
前記電圧は、液体と前記第1電極との間で電気化学反応が生じない程度の電圧であり、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1電極と前記第2電極との間の経路を切替え可能なスイッチを前記待機状態と前記駆動状態との切替えに合わせて切替えることを特徴とする吐出制御方法。
【請求項8】
液体を収容可能な液室と、
前記液室内の液体を吐出するためのエネルギを発生する発熱抵抗体と、
前記液室で前記発熱抵抗体を被覆して設けられ、前記液室内の液体に電界を形成可能な第1電極と、
前記液室で前記第1電極と異なる位置に設けられ、前記液室内の液体に電界を形成可能な第2電極と、を備え、負の極性をもつイオンまたは表面に負の電荷を有するコロイド粒子である色材と、正の極性をもつイオンまたは表面に正の電荷を有するコロイド粒子とを含有する液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいて、
前記発熱抵抗体が駆動される駆動状態のの待機状態では、前記第1電極の電位が前記第2電極の電位より低くなるように、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加され、
前記発熱抵抗体の駆動と共に、前記第1電極の電位が前記第2電極の電位より高くなるように、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加され、
前記第1電極および前記第2電極には、イリジウム膜が形成されており、
前記電圧は、0.10V以上、2.5V以下であり、
前記電圧は、液体と前記第1電極との間で電気化学反応が生じない程度の電圧であり、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1電極と前記第2電極との間の経路を切替え可能なスイッチを備え、
前記待機状態と前記駆動状態との切替えに合わせて前記スイッチを切替えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱抵抗体の作用によって液体を吐出する液体吐出装置、吐出制御方法および液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクコロイド粒子(インク中の成分)の表面電荷と同じ極性を有する電極を発熱抵抗素子の上層に設け、反対の極性を有する対向電極を離れた位置に設けることにより、インクコロイド粒子を発熱抵抗層より遊離させる方法が開示されている。更に、特許文献1には、発熱抵抗体の上層に設けた上部電極と対向電極との電位の方向を切り替える方法が開示されている。電極のクリーニングにおいて、必要に応じて電位の方向を切り替えることで、電極表面に電気的に吸着したインク中荷電物質を剥離しやすくでき、クリーニングを容易に行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-51146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コロイド粒子(液体中の成分)と反対の極性を有する上部電極と、コロイド粒子と同じ極性を有する対向電極を液室内に配する場合、液体中にコロイド粒子と反対の極性を有する荷電物質があると、その荷電物質が上部電極の表面に付着する懸念が生じる。付着した場合、発熱抵抗体の熱によりコゲ付きが生じ、吐出速度が低下することが懸念される。
【0005】
よって本発明は、液体吐出ヘッドの寿命の短期化を抑制し、安定した吐出動作を維持することが可能な液体吐出装置、吐出制御方法および液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の液体吐出装置は、液体を収容可能な液室と、前記液室内の液体を吐出するためのエネルギを発生する発熱抵抗体と、前記液室で前記発熱抵抗体を被覆して設けられ、前記液室内の液体に電界を形成可能な第1電極と、前記液室で前記第1電極と異なる位置に設けられ、前記液室内の液体に電界を形成可能な第2電極と、を備えた液体吐出手段と、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加可能な電圧印加手段と、を備え、負の極性をもつイオンまたは表面に負の電荷を有するコロイド粒子である色材と、正の極性をもつイオンまたは表面に正の電荷を有するコロイド粒子とを含有する液体を吐出する液体吐出装置において、前記電圧印加手段は、前記発熱抵抗体が駆動される駆動状態の前の待機状態では、前記第1電極の電位が前記第2電極の電位より低くなるように、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加し、前記発熱抵抗体の駆動と共に、前記第1電極の電位が前記第2電極の電位より高くなるように、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加し、前記第1電極および前記第2電極には、イリジウム膜が形成されており、前記電圧は、0.10V以上、2.5V以下であり、前記電圧は、液体と前記第1電極との間で電気化学反応が生じない程度の電圧であり、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1電極と前記第2電極との間の経路を切替え可能なスイッチを備え、前記待機状態と前記駆動状態との切替えに合わせて前記スイッチを切替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出ヘッドの寿命の短期化を抑制し、安定した吐出動作を維持することが可能な液体吐出装置、吐出制御方法および液体吐出ヘッドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体吐出装置を示した概略構成図である。
図2】1色分のヘッドユニットを示した外観斜視図である。
図3】液体吐出装置における制御系を示したブロック図である。
図4】吐出ヘッドを示した斜視図である。
図5】ヘッド用基板の一部を示した断面図である。
図6】ヘッド用基板における配線のレイアウトを示した図である。
図7】上部電極、対向電極における回路を示した図である。
図8】上部電極及び対向電極における電圧の状態を示すタイミング図である。
図9】発熱抵抗体の駆動パルスと上部電極及び対向電極の印加タイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態を適用可能な液体吐出装置500を示した概略構成図である。液体吐出装置500は、矢印Aの主走査方行に移動可能に構成されたキャリッジ505を備えている。キャリッジ505に搭載した吐出ヘッドから記録媒体に対して液体(以下、インクともいう)を吐出して記録を行う。シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのヘッドユニット410が装着されるキャリッジ505は、駆動プーリ503Aと従動プーリ503Bの周囲に架け渡された無端ベルト501の一部に取り付けられている。キャリッジモータ504を駆動源とする駆動プーリ503Aが回転すると、無端ベルト501が駆動プーリ503Aと従動プーリ503Bの周囲を回動し、キャリッジ505はガイドシャフト502に案内支持されながら主走査方向(矢印A方向)に往復移動する。
【0011】
キャリッジ505には、エンコーダセンサ508が取り付けられており、エンコーダセンサ508は、矢印A方向に延在するリニアスケール507のスリットを検出する。液体吐出装置500の制御部は、エンコーダセンサ508がリニアスケール507を検出した結果に基づいて、矢印A方向におけるキャリッジ505の位置を認識する。
【0012】
記録媒体Pは、上流側の搬送ローラ対510と下流側の搬送ローラ対511にニップされ、ヘッドユニット410の液体を吐出する吐出口が設けられた吐出口面に対向する位置における平滑性が維持されている。上流側の搬送ローラ対510と下流側の搬送ローラ対511は、後述する搬送モータによって回転し、記録媒体を矢印B方向に搬送する。
【0013】
液体吐出装置500の制御部は、キャリッジモータ504を駆動させながら、エンコーダセンサ508の検出結果に基づいて、吐出データに従ってヘッドユニット410から記録媒体Pに向けてインクを吐出する。これにより、1バンド分の画像が記録媒体Pに形成される。その後、制御部は搬送モータを駆動し、1バンド分に相当する距離だけ記録媒体Pを矢印B方向に搬送する。以上のような記録における主走査と搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに段階的に画像が形成される。
【0014】
矢印A方向における、キャリッジモータ504が設けられている側の端部には、吐出ヘッドの吐出状態を良好に維持するための回復ユニット512が配置されたホームポジションが設けられている。回復ユニット512には、液体吐出ヘッドの吐出口面を保護するためのキャップ部材513や、キャップ部材内を負圧にして吐出口より強制的にインクを排出させるための吸引ポンプ514等が設けられている。
【0015】
図2は、1色分のヘッドユニット410を示した外観斜視図である。ヘッドユニット410は、内部に液体を収容するタンク404に、液体を吐出する液体吐出ヘッド1(以下、単に吐出ヘッドともいう)が取り付けられている。ヘッドユニット410の一部周囲には、吐出ヘッド1に吐出データや電力を供給するための配線テープ402が配されている。また、配線テープ402には、ヘッドユニット410をキャリッジ505に装着したときに液体吐出装置500の本体と電気的に接続するための接点403が形成されている。
【0016】
なお、ここでは吐出ヘッド1とタンク404とが一体型となったヘッドユニット410を例示したが、吐出ヘッド1とタンク404とは分離されていてもよい。この場合、吐出ヘッド1のみがキャリッジ505に搭載され、液体吐出装置内のいずれかの位置に固定されたタンクより、チューブなどを介して吐出ヘッド1に液体を供給してもよい。この場合、吐出ヘッド1自体は、4色のインクに対応した1チップとすることもできる。更に、対応可能なインクの種類や数も上記に限定されるものではなく、1色のみであっても良いし、更に多くの種類のインクを備える形態であってもよい。
【0017】
図3は、液体吐出装置500における制御系を示したブロック図である。インターフェース1700は、液体吐出装置500と外部に接続されたホスト装置1000との間で情報の授受を行う。具体的には、ホスト装置1000より印刷コマンドや画像データを受信したり、液体吐出装置500のステータス情報をホスト装置1000に提供したりする。ホスト装置1000としては、コンピュータのほか、デジタルカメラやスキャナ、携帯端末とすることもできる。ホスト装置1000でプリントコマンドが発生すると、当該コマンドが画像データと共に、インターフェース1700を介して液体吐出装置500に入力される。
【0018】
制御部90は、MPU1701、ROM1702、DRAM1703、EEPROM1726およびゲートアレイ(G.A.)1704を有し、装置全体を制御している。EEPROM1726は、電源がOFFにされた状態でも、次に電源がONになった時に液体吐出装置500に必要な情報を記録しておくためのメモリである。ゲートアレイ1704は、MPU1701の指示のもと、インターフェース1700、MPU1701、DRAM1703、インターフェース1700の間でデータ転送制御を行う。
【0019】
MPU1701は、ROM1702に格納されているプログラムやパラメータに従って、DRAM1703をワークエリアとしながら様々な制御を行う。例えば、MPU1701は、CRモータドライバ1707を介してキャリッジモータ504を駆動することにより、キャリッジ505をA方向に移動させる。この際、ヘッドドライバ1705を介して、DRAM1703より吐出データを転送し、吐出ヘッド1を駆動することにより、記録媒体Pに1行分の画像が記録される。また、MPU1701は、1行分の記録主走査が行われるたびにLFモータドライバ1710を介して搬送モータ509を駆動し、記録媒体Pを所定の距離だけB方向に搬送する。このような記録主走査と搬送動作を交互に繰り返すことにより、ホスト装置から受信した画像データに基づいて記録媒体Pに画像を形成する。
【0020】
1ページ分の記録動作が終了した後などの適宜なタイミングで、MPU1701は、回復モータドライバ1706を介して回復系モータ1711を駆動し、吐出ヘッド1に対する吸引回復処理を実行する。更に、MPU1701は、電界調整器1709を介して、吐出ヘッド1内に配備された上部電極(第1電極)131、対向電極(第2電極)132の電位調整を行う。
【0021】
ROM1702には、以上説明したような様々な制御を行うためにMPU1701が使用する様々なパラメータが記憶されている。例えば、吐出ヘッド1の発熱抵抗素子に印加する電圧パルスの形状、上部電極131、対向電極132に印加する(印加可能な)電圧や印加するタイミング、記録媒体Pの搬送速度、キャリッジ505の走査速度等を挙げることができる。
【0022】
図4は、吐出ヘッド1を示した斜視図である。吐出ヘッド1は、ヘッド用基板100と流路形成部材120を備えている。流路形成部材120は、ヘッド用基板100の熱作用部108が形成された面に接合されている。ヘッド用基板100には、背面(矢印-Z方向側)から供給されたインクを流路形成部材120に供給する貫通口としての供給口107が形成され、本実施形態において供給口107は長手方向(矢印Y方向)に延在している。供給口107の両側には、インクを吐出する熱エネルギを生成するための熱作用部108が供給口107に沿って所定のピッチで矢印Y方向に配列している。
【0023】
流路形成部材120において、ヘッド用基板100の個々の熱作用部108に対応する部分には、インクを吐出するための吐出口121が形成されている。また、流路形成部材120には、供給口107から供給されたインクを個々の吐出口まで導く流路でありインクを収容可能な液室117が形成されている。供給口107から供給されたインクは、毛管力によって個々の液室117に導かれ、吐出口121の近傍でメニスカスを形成する。そして、吐出データに従って、発熱抵抗体に電圧パルスが印加されると、熱作用部108が急激に発熱し、これに接触するインクで膜沸騰が起こり、膜沸騰の作用によって所定量のインクが吐出口121から吐出される。
【0024】
図5は、ヘッド用基板100の一部を示した断面図である。ヘッド用基板100は、シリコン基板101の上にSiO2、SiNなどの絶縁材料からなる蓄熱層102が配され、蓄熱層102の表面の一部には、TaSiN等公知の材料で構成される発熱抵抗体層103が設けられている。また、発熱抵抗体層103の表面一部には、Al、Al-Si、Al-Cu等の金属材料からなる配線層104が形成されている。発熱抵抗体層103と配線層104とで構成される層に電圧が印加されると、配線層104が存在する領域は、配線層104に沿って電流が流れる。しかし、配線層104が存在しない領域は、発熱抵抗体層103に電流が流れ、その領域が熱作用部108(いわゆる発熱抵抗体)として機能する。
【0025】
ヘッド用基板100では、発熱抵抗体層103と配線層104とで構成される層であっても、熱作用部108が含まれる領域と、熱作用部108とは電気的に分離された領域とが存在する。熱作用部108が含まれる領域は、吐出データに従った吐出動作のための配線として使用される。一方、熱作用部108が含まれない領域は、上部電極と対向電極に電圧を印加するための配線として使用される。
【0026】
発熱抵抗体層103と配線層104とが配された領域を含む蓄熱層102の更に上層には、SiO2、SiNなどの絶縁材料からなる保護層105が形成される。吐出ヘッド1の実使用において、ヘッド用基板100の表面には、液室117内を流れるインクが接触することになる。しかし、保護層105が配されることにより、発熱抵抗体層(以下、発熱抵抗体ともいう)103や配線層104は、インク中に露出せず、発生した熱のみがインク内に伝達される。但し、ヘッド用基板100の端部であって、流路形成部材120が積層されない領域には、保護層105を配さない配線層が露出されたスルーホールが形成され、配線層104に電流を流すための端子106となる。保護層105の材質は上記に限るものではないが、700℃付近まで昇温しかつインクに接する為、耐熱性、機械的特性、化学的安定性、耐アルカリ性等に優れた膜特性が要求される。
【0027】
保護層105の表面の一部には、保護層105と電極層の密着性を向上させるための密着層116が配される。密着層116は、第1の電極となる上部電極131、第2の電極となる対向電極132(図5では不図示)がそれぞれ層として配される領域の保護層105上に積層される。また、密着層116は、電極層に電圧を印加するための配線経路の一部ともなり、保護層105に形成されたスルーホール110にて配線層と電気的に接続する。
【0028】
このような密着層116については、熱作用部108で発生する熱をできる限り損失無くインクに伝達可能な高い熱伝導性が求められる導電性材料であれば、特に限定されるものではない。しかし、部分的に液室内の液体と接触する場合には、耐液性を有する材料であることが好ましい。例えば、タンタルやニオブなどの金属材料であれば、後述するクリーニングでインク中に高い電圧がかけられても、表面に不動態膜を形成することができ、好ましく利用することができる。
【0029】
次に、本実施形態における2種類の電極について説明する。第1の電極である上部電極131は、熱作用部108の上部を被覆するように積層される電極である。本実施形態では、発熱抵抗体駆動前は、主にインク中の負の荷電物質を寄せ付けないために、第2の電極である対向電極132よりも低い電位をもつ電極として機能する。そして、発熱抵抗体の駆動後は、インク中の正の荷電物質を寄せつけないために、対向電極132よりも高い電位をもつ電極として機能する。その上で、上部電極131には、熱作用部108を物理的および化学的衝撃から保護する役割と、熱作用部108で発生する熱を瞬時にインクに伝達する熱伝導性が求められ、700℃程度の加熱により強固な酸化膜を形成しない材料であることが求められる。このような上部電極131の材料としては、IrまたはRuの単体、あるいはIrと他の金属との合金もしくはRuと他の金属との合金などが挙げられる。
【0030】
第2の電極となる対向電極132は、発熱抵抗体の駆動前は、インク中の負の荷電物質を上部電極131から遠ざけるために、上部電極131よりも高い電位をもつ正の電極として機能する。また、発熱抵抗体の駆動後の対向電極132は、インク中の正の荷電物質を遠ざけるために、上部電極131よりも低い電位を持つ負の電極として機能する電極である。対向電極132においては、上部電極131との間の電界を安定に維持(安定した電界を形成可能に)するため、導電率が低い酸化膜が形成され難く、電気化学反応によって溶出が生じない金属を含む材料であることが好ましい。製造の負荷を抑制するためには、上部電極131と同じ材料を用いて同じ製造工程で形成することが好ましい。
【0031】
図6は、ヘッド用基板100における配線のレイアウトを示した図である。複数の熱作用部108は、矢印Y方向に延在するインク供給口107の両側に配列されており、一方の側の複数の熱作用部108をカバーする状態で密着層116aが形成されている。そして、密着層116aの上には、個々の熱作用部108に対応した位置に上部電極131が形成されている。また、インク供給口107の両側であって、2列の上部電極131の内側には、密着層116bと対向電極132(第2の電極)とが矢印Y方向に延在するように形成されている。上部電極131が密着層116aを介して接続する配線層104(図5参照)と、対向電極132が密着層116bを介して接続する配線層104とは、互いに電気的に分断されている。これらの配線は、夫々が個別の端子106に接続されている。
【0032】
図7は、上部電極131、対向電極132における回路を示した図である。上部電極131と対向電極132とは、電源141およびスイッチ142を経由する配線経路143によって電気的に接続され、液室117内のインクを介すことにより電気的な閉回路が形成される。このような閉回路を、本実施形態ではコゲ抑制手段140と称する。コゲ抑制手段140のうち、上部電極131、対向電極132および配線経路143の一部を構成する配線層104(図5参照)は吐出ヘッド1に、残りの配線経路143、スイッチ142および電源141は吐出ヘッド1の外部に、設けられている。但し、スイッチ142については、吐出ヘッド1上に設けることも可能である。
【0033】
本実施形態では、負の極性をもつ成分と正の極性をもつ成分とを含む液体を吐出する。例えば、負の極性をもつイオンまたは表面に負の電荷を有するコロイド粒子である色材と、正の極性をもつイオンまたは表面に正の電荷を有するコロイド粒子とを含有する液体を吐出する。
【0034】
コゲ抑制手段140では、スイッチ142を切替えることで、2通りの回路から選択的に回路を選ぶことができるように構成されている。コゲ抑制手段140において、スイッチ142を電源141a側に閉じると、電源141aの作用により上部電極131は陰極となり対向電極132は陽極となる。これにより、液室117内のインクにおける陰イオンや陰性を有するコロイド粒子は、上部電極131から離れ対向電極132に向かう。このような電界が形成されている状態では、陰の極性をもつインク成分は、熱作用部108に付着しにくくなる。逆に、上部電極131には、陽イオンや陽性を有するコロイド粒子が近づいてくる。この段階では、発熱抵抗体103は駆動していないため発熱部の温度は低く、コゲ付きが発生することはない。
【0035】
図8は、上部電極131及び対向電極132における電圧の状態を示すタイミング図である。本実施形態では、液体の吐出、すなわち発熱抵抗体103の駆動に応じて、上部電極131と対向電極132との間の電圧の印加を制御する。具体的には、発熱抵抗体103を駆動する前の状態(待機状態)ではスイッチ142を電源141a側に閉じておく。その後、発熱抵抗体103に電流を流すための駆動パルスを入れる(駆動状態)と、駆動パルスを入れたのと同じタイミングでスイッチ142を電源141b側へ切り替える。すると、上部電極131は陽極となり、対向電極132は陰極となる。これにより、熱作用部108で発泡が起こるまでの間に、液体中の陽イオンや陽性を有するコロイド粒子は、上部電極131から離れ、対向電極132の方へ向かって移動する。そのため、熱作用部108の温度が急激に上昇し高温になっても、陽イオンや陽性を有するコロイド粒子による上部電極131上へのコゲ付きは抑制される。特に、インク中の成分のうちの、粒径が小さいものや、電荷量が高いものといった、動きやすい金属イオンの場合は、短い時間でも十分に上部電極131から離れることが可能である。
【0036】
また、スイッチ142を切替えたタイミングで、瞬間的にインク内の陰イオンや陰性を有するコロイド粒子は、上部電極131に向けて移動を開始する。しかし、上部電極131上は、すぐに気泡で覆われるため、熱作用部108が高温状態において、陰イオンや陰性を有するコロイド粒子が付着するのを抑制することができる。そのため、陰イオンや陰性を有するコロイド粒子による上部電極131上へのコゲ付きも抑制することが可能である。特に、顔料分散体のような粒径が上記金属イオンの粒径よりも大きく動きにくい粒子である(顔料分散体の分子量が金属イオンの分子量よりも十分に大きい)場合、このような短時間で上部電極131に付着しにくい。
【0037】
なお、スイッチ142を電源141b側へ切り替えるタイミングは、発熱抵抗体103に駆動パルスを入れるタイミングと同時であることが好ましいが、上部電極131上が気泡で覆われる前であれば多少遅れてもよい。つまり、上部電極131が気泡で覆われる前であれば、正の荷電粒子がインク中を移動して上部電極131から離れることが可能なので、コゲ付き抑制効果を得ることができる。しかし、陰の極性をもつ荷電物質が上部電極131に近づくのを極力抑えるため、電源141bの電圧は極力低くすること、また印加時間を短くすることが望ましい。すなわち、待機状態における上部電極131と対向電極132との間の電圧値よりも、駆動状態における上部電極131と対向電極132との間の電圧値を小さくすることが好ましい。また、待機状態における上部電極131と対向電極132との間に電圧を印加する時間よりも、駆動状態における上部電極131と対向電極132との間に電圧を印加する時間を短くすることが好ましい。また、発熱抵抗体103への駆動パルスをOFFとした後(駆動電圧印加を停止した後)に、上部電極131をOFFとすることが好ましい。このように、発熱抵抗体103の駆動前に、陰イオンや陰性を有するコロイド粒子を上部電極131から遠ざけ、駆動から最大発泡までの間で陽イオンや陽性を有するコロイド粒子を上部電極131から遠ざける。これによって、熱作用部が高温になった状態での陽イオンや陽性を有するコロイド粒子の上部電極131上への付着を減らすことができる。
【0038】
このような構成では、上部電極131上への付着を減らすと同時に、対向電極132への付着も減らすことができる。本実施形態のような極性の反転が行われず、対向電極132が上部電極131に対し、高い電圧の状態が継続すると、陰の荷電粒子が対向電極132に引き寄せられ、対向電極132に対する付着が起きる。その結果、対向電極132が電極として機能できる面積が縮小し、所望の効果が得られなくなる。
【0039】
しかし、本実施形態のように、上部電極131と対向電極132の極性の反転が可能な構成においては、高い電圧の状態が継続することなく、引き寄せられた陰の荷電粒子も、極性が反転することによって、対向電極132から離れることができる。その結果、継続して安定した、コゲ付き抑制効果を得ることができる。
【0040】
なお、コゲ付き抑制のために上部電極131と対向電極132との間に電圧を印加する際に、高い電圧を印加すると、上部電極131や対向電極132とインクとの間で電気化学反応が生じて電極を構成する材料がインクに溶出する可能性がある。そこで、コゲ付き抑制のためには電気化学反応が生じないような程度の電圧を印加する。例えば、上部電極131や対向電極132をイリジウム膜で設ける場合には、上部電極131と対向電極132との間の電圧が2.5V以下とすることが好ましい。また、インク中の荷電物質を上部電極131や対向電極132から安定的に反発させるために、これらに印加する電圧を0.10V以上とすることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態では、上部電極131と対向電極132との間にスイッチ142を設け、スイッチ142を切り替えることで、上部電極131と対向電極132の極性を反転する回路構成であるが、回路構成はこれに限定されない。すなわち、上部電極131と対向電極132の極性が反転可能な回路構成であればよい。例えば、上部電極131および対向電極132のうちのいずれか一方の電極をグランド電位のままとし、他方の電極に印加する電圧の正負を反転するような構成であってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、4色の各色に対応した吐出ヘッド1が、移動するキャリッジ505に搭載されたシリアル型のインクジェット記録装置を例に説明したがこれに限定されるものではない。つまり、図4に示したようなヘッド用基板100と流路形成部材120とを更に直列に繋ぎ、同色または異色のインクを吐出する長尺の吐出ヘッドとしてもよい。また、1色の長尺の吐出ヘッドとした場合、この長尺の吐出ヘッドを4色分用意して記録装置内に固定し、搬送される記録媒体に対し所定の周波数でインクを吐出するフルライン型のインクジェット記録装置に適用してもよい。このように、発熱抵抗体を用いて液体を吐出する吐出ヘッドにおいて、電気的な極性を有する物質を含有した液体を吐出する吐出ヘッドであれば、本発明は有効に機能させることができる。
(実施例)
【0043】
以下、本発明の効果を確認するために行った複数の検証例を比較例と共に説明する。
(検証1)
【0044】
図9は、検証で用いた発熱抵抗体の駆動パルスに対する上部電極及び対向電極における電圧印加のタイミング図である。検証1に用いた吐出ヘッドは、シリコン基板101に、SiO2から成る蓄熱層102、TaSiNから成る発熱抵抗体層103、Alから成る配線層104、SiNから成る保護層105を順次積層した。この際、配線層104の一部をエッチング除去し、発熱抵抗体層103が露出した部分を、吐出エネルギを発生するための熱作用部108とした。その後、保護層105上に、密着層116としてタンタルを100nm形成した後、イリジウム膜を50nm成膜した。イリジウム膜をパターニングし、上部電極131、対向電極132を形成しヘッド用基板100とした。更に、流路形成部材120を形成し、その他必要な端子を形成することにより、吐出ヘッド1を完成させた。
【0045】
このような吐出ヘッドに、顔料シアンインクが収容されたタンク404を接続して形成されるヘッドユニットを液体吐出装置500のキャリッジ505に装着した。なお、本検証1、以下で説明する検証2および比較例において、負の極性をもつ顔料分散体と正の極性をもつ銅イオンとを含有する顔料シアンインクを用いた。そして図9(a)で示す発熱抵抗体の駆動タイミングで、図9(b)のように発熱抵抗体の電圧がONとなる前は対向電極が陽極になるように1.5Vの電圧を印加し、発熱抵抗体の電圧がONになると同時に上部電極が陽極になるように0.5Vの電圧を印加した。なお、図9(a)に示すヒータの駆動条件はパルス幅0.4μsec、駆動周波数7.5kHzとした。図9(b)に示す対向電極のON時間は70μsec、上部電極のON時間は63μsecとした。この状態で吐出ヘッドに109回の吐出動作を行わせ、その後、液室内をクリアインクで置換して表面状態を観察した。
【0046】
その結果、熱作用部108にコゲ付きや付着物は確認されず、対向電極132にも付着物は確認されなかった。その後、画像データに従って通常の記録動作を行ったところ、良好な品位の出力画像を確認することができた。
(検証2)
【0047】
検証2に用いた吐出ヘッドは、検証1の吐出ヘッドに対し、上部電極131と対向電極132と、それぞれの端子の間にスイッチを配置した構成とし、吐出ヘッドを完成させた。
【0048】
このような吐出ヘッドで顔料シアンインクを用いて液体吐出装置500で吐出を行った。図9(a)で示す発熱抵抗体の駆動タイミングで、図9(c)のように、発熱抵抗体の電圧がONになる前は、対向電極が陽極になるように1.5Vの電圧を印加した。そして、発熱抵抗体の電圧がONになると同時に上部電極が陽極になるように0.5Vの電圧を印加し、その後、対向電極がOFFのまま上部電極の電圧がOFFとなる時間を設けた。なお、図9(a)に示すヒータの駆動条件はパルス幅0.4μsec、駆動周波数7.5kHとした。図9(c)に示す対向電極のON時間は100μsec、上部電極のON時間は10μsec、上部電極をOFFしてから次のヒータの駆動の前に対向電極をONするまでの時間を23μsecとした。この状態で吐出ヘッドに109回の吐出動作を行わせ、その後、液室内をクリアインクで置換して表面状態を観察した。その結果、熱作用部108へのコゲ付きや付着物は確認されず、対向電極132にも付着物は確認されなかった。
【0049】
その後、更に109回の吐出を行い、トータルで2×109回の吐出が終わった時点で、クリアインクで置換後再度表面状態を観察した。その結果、熱作用部108や対向電極132も、表面に付着物は確認されなかった。その後、画像データに従って通常の記録動作を行ったところ、良好な品位の出力画像を確認することができた。
【0050】
本検証においては、基板内に配置したスイッチ素子を用い、電圧印加の時間を精度よく制御を行った。そのため上部電極を陽極とする時間を短く設定することができ、陰イオンや陰性を有するコロイド粒子によるコゲ付きも十分に抑えることが可能である。よって、記録装置が出力する画像は初期の品位が維持されている。
(比較例1)
【0051】
検証1と同様の吐出ヘッドで顔料シアンインクを用いて液体吐出装置500で吐出を行った。上部電極131と対向電極132の間に、対向電極132が陽極となるように1.5Vの電圧を印加し、吐出のタイミングで切替を行うことなく吐出ヘッドに109回の吐出動作を行わせた。その後、画像データに従って通常の記録動作を行ったところ、初期の状態から品位の劣化した出力画像が確認された。また、液室内をクリアインクで置換して表面状態を観察したところ、熱作用部108が茶色に変色していたおり、更にその上に、付着物のコゲ付きが観察された。また、対向電極132の表面にはインク成分が薄く付着していた。熱作用部の茶色の物質に対し成分分析を行ったところ、Cuであることがわかった。インクに含まれる銅イオンがコゲとして熱作用部108の表面に析出したものと考えられる。
【0052】
このように、発熱抵抗体の駆動前は、上部電極の電圧は対向電極より低くなるように上部電極と対向電極とに電圧を印加し、発熱抵抗体が駆動されたと同時又は駆動された後は上部電極の電圧が対向電極より高くなるように上部電極と対向電極とに電圧を印加する。これによって、液体吐出ヘッドの寿命の短期化を抑制し、安定した吐出動作を維持することが可能な液体吐出装置、吐出制御方法および液体吐出ヘッドを実現することができた。
【符号の説明】
【0053】
1 液体吐出ヘッド
100 ヘッド用基板
108 熱作用部
131 上部電極
132 対向電極
142 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9