IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエムエス−パテント アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許-フレキシブル多層圧縮空気ライン 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】フレキシブル多層圧縮空気ライン
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240129BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20240129BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B1/08 B
F16L11/04
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019023726
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2019147375
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】18156389.1
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510022808
【氏名又は名称】エーエムエス-パテント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク シュテッペルマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ シュトゥルツェル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ホフマン
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0096615(US,A1)
【文献】国際公開第2011/136869(WO,A1)
【文献】特開2004-262244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/08
B32B 27/34
F16L 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部(2)に接する内層(3)、内層(3)に直接隣接する中間層(4)、および中間層(4)に直接隣接する外層(5)の3層から成るプラスチックラインであって、
内層(3)が、PA12、PA612、PA616の群より選択される少なくとも2種のポリアミドの混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、PA612の割合が、内層を形成する成形組成物の20~40質量パーセントの範囲であり、
中間層(4)が、PA612および/またはPA616をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、
外層(5)が、PA12、PA612、PA616の群より選択される少なくとも2種のポリアミドの混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、PA612の割合が、外層を形成する成形組成物の20~40質量パーセントの範囲である、プラスチックライン。
【請求項2】
内層(3)が、PA12とPA612との混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、
PA612の割合が、内層(3)を形成する成形組成物の少なくとも20質量パーセントを占めることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチックライン。
【請求項3】
内層(3)が、PA12とPA612との混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、
PA612の割合が、内層(3)を形成する成形組成物の20~40質量パーセントの範囲、又は25~35質量パーセントの範囲を占めることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチックライン。
【請求項4】
外層(5)が、PA12とPA612との混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、
PA612の割合が、外層(5)の成形組成物の少なくとも20質量パーセントを占めることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプラスチックライン。
【請求項5】
外層(5)が、PA12とPA612との混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、
PA612の割合が、外層(5)の成形組成物の20~40質量パーセントの範囲、又は25~35質量パーセントの範囲を占める
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項記載のプラスチックライン。
【請求項6】
内層(3)と外層(5)のいずれも、PA12とPA612との混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、
それぞれの場合、PA612の割合が、各層(3、5)の成形組成物の合計の20~40質量パーセントの範囲、又は25~35質量パーセントの範囲を占めることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項7】
内層(3)および/または外層(5)、或いは両方の層(3、5)の成形組成物が以下の成分:
(A)78~96質量パーセントの、PA12、PA612、PA616の群より選択される少なくとも2種のポリアミドの混合物、
(B)2~20質量パーセントの耐衝撃性改良剤、
(C)2~15質量パーセントの可塑剤、
(D)0~5質量パーセントの、(B)および(C)以外の添加剤
から成り、(A)~(D)の和が100質量パーセントを占める
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項8】
内層(3)および/または外層(5)、或いは両方の層(3、5)の成形組成物が以下の成分:
(A)85~95質量パーセントの、PA12、PA612、PA616の群より選択される少なくとも2種のポリアミドの混合物、
(B)2~8質量パーセント、又は3~6質量パーセントの耐衝撃性改良剤、
(C)~10質量パーセントの可塑剤、
(D)0~5質量パーセントの、(B)および(C)以外の添加剤
から成り、(A)~(D)の和が100質量パーセントを占める
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項9】
コンポーネント(A)の組成が以下:
(A1)50~90質量パーセントのポリアミドPA12、
(A2)10~50質量パーセントのポリアミドPA612
であり、(A1)~(A2)の和がコンポーネント(A)の100質量パーセントを占めることを特徴とする、請求項7又は8に記載のプラスチックライン。
【請求項10】
コンポーネント(A)の組成が以下:
(A1)60~72質量パーセントのポリアミドPA12、
(A2)28~40質量パーセントのポリアミドPA612
であり、(A1)~(A2)の和がコンポーネント(A)の100質量パーセントを占めることを特徴とする、請求項7又は8に記載のプラスチックライン。
【請求項11】
コンポーネント(A)がポリアミドPA12とポリアミドPA612との混合物から成り、その比が1:1~5:1の範囲であるか、又は1.2:1~4:1の範囲であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のプラスチックライン。
【請求項12】
中間層(4)の成形組成物が以下の成分:
(a)60~92質量パーセント、又は70~90または72~90質量パーセントの以下の群:PA612、PA616より選択されるポリアミド、
(b)5~25質量パーセント、又は10~20質量パーセント、又は12~18質量パーセントの耐衝撃性改良剤、
(c)3~18質量パーセント、又は4~14質量パーセント、又は7~11質量パーセントの可塑剤、
(d)0~5質量パーセントの、(b)および(c)以外の添加剤
から成り、(a)~(d)の和が100質量パーセントを占める
ことを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項13】
添加剤(D、d)の割合が、0.1~3質量パーセントの範囲であり、又は0.5~1質量パーセントの範囲であり、
かつ/または添加剤(D、d)が、酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、熱安定剤、顔料、マスターバッチ分散媒、導電性添加剤、滑剤またはそれらの混合物の群の少なくとも1種の補助剤より選択される
ことを特徴とする、請求項7~12のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項14】
耐衝撃性改良剤(B、b)が、
(i)酸修飾されたエチレン-α-オレフィンコポリマー、
(ii)酸無水物でグラフトされたエチレン/α-オレフィンコポリマー
(iii)無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/α-オレフィンコポリマー
又は
(iv)それらの混合物
であることを特徴とする、請求項7~13のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項15】
耐衝撃性改良剤(B、b)が、
(i)酸修飾されたエチレン/ブチレンコポリマー、酸修飾されたエチレン/プロピレンコポリマー、又は酸修飾されたエチレン-プロピレン/エチレン-ブチレンコポリマー、
(ii)酸無水物でグラフトされたエチレン/ブチレンコポリマー、酸無水物でグラフトされたエチレン/プロピレンコポリマー、又は酸無水物でグラフトされたエチレン-プロピレン/エチレン-ブチレンコポリマー
(iii)無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/ブチレンコポリマー、無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/プロピレンコポリマー、又は無水マレイン酸でグラフトされたエチレン-プロピレン/エチレン-ブチレンコポリマー
又は
(iv)それらの混合物
であることを特徴とする、請求項7~13のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項16】
可塑剤(C、c)として、BBSAを含む、N-置換スルホンアミド可塑剤のクラスのものを含む、ヒドロキシ安息香酸エステルベース及び/又はスルホンアミドベースの可塑剤が選択されることを特徴とする、請求項7~15のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項17】
層(3~5)の少なくとも1つ、又は全ての層が、添加剤(D、d)として、CuIベースの銅安定剤を含む銅安定剤を、CuIの割合で、各層(3~5)の成形組成物の合計の0.01~0.10質量パーセントの範囲で、または各層の成形組成物の合計の0.03~0.07質量パーセントの割合で有することを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項18】
少なくとも1つの層の1種または複数種のポリアミド、又は全ての層(3~5)の複数種のポリアミドが、ISO 307(2007)に準拠して20℃の温度でm-クレゾール中で測定して、2.0~2.4、又は2.05~2.35の範囲の相対溶液粘度を有することを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項19】
少なくとも1つの層の1種または複数種のポリアミドが、160~240℃または175~220℃の範囲の融点を有することを特徴とする、請求項1~18のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項20】
少なくとも1つの層の1種または複数種のポリアミドが、175~180℃の範囲の融点を有するポリアミドPA12であるか、及び/又は、少なくとも1つの層の1種または複数種のポリアミドが、210~215℃の範囲の融点を有するポリアミドPA612であることを特徴とする、請求項1~19のいずれかに記載のプラスチックライン。
【請求項21】
3層が、押出吹込成形、タンデム押出成形、被覆工程または(共)押出加工作業を含む、連続および/または不連続作業で、中空体、パイプもしくはラインに形成されることを特徴とする、請求項1~20のいずれかに記載のプラスチックラインの製造方法。
【請求項22】
請求項1~20のいずれかに記載のプラスチックラインの、内圧100barまでの条件下、又は90barまでの条件下、又は80~100barの範囲の条件下を含む、自動車分野における圧縮空気ブレーキラインとしての使用を含む、自動車分野における使用を含む、圧縮空気ラインとしての使用を含む、圧力ラインとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料の多層ライン、特に自動車分野における圧縮空気用の熱可塑性材料の多層ライン、そのようなラインの製造方法、およびそのようなラインの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック、特にポリアミド製の層状構造をベースとする圧縮空気ラインの使用が最新技術となって既に相当な期間が経過している。ここでは特に高温において、破裂圧力強度に関する要件および必要な機械的特性(たとえば衝撃靭性、破断伸び)のため、広範囲の異なる温度で高い熱堅牢性、高い長さ安定性、および高耐圧性を示す多層パイプを使用することが好まれている。
EP-A-2842736は、少なくとも50%のPA11またはPA12の外層を有し、PAのモノマー単位が、ここではPA11およびPA12を除外して、平均して少なくとも8個の炭素原子を含むPAを、少なくとも50%程度まで含む成形組成物から構成される内層を備える、圧縮空気ブレーキラインについて記載している。PAのモノマー単位が平均して少なくとも8個の炭素原子を含むPAを少なくとも50%程度まで含む成形組成物で作製されている最も内側の層をさらに設けてもよい。例として、外側から内側に向かってPA12/PA612/PA12のパイプ構築体を製造し、フープ強度またはフープ応力と呼ばれる比較応力を測定した。
EP-A-1378696は、他の圧縮空気ラインを開示している。ここでは、中間層は常に、ポリアミドとポリオレフィンとの混合物であるか、またはポリエーテルブロックとポリアミドブロックとのコポリマーをベースとするかのどちらかである。内層および外層は同じ設計であり、具体的にはポリアミド11またはポリアミド12から構成される。同様に可能なのは、ポリアミド6およびポリアミド66または他の系である。混合物は提案されていない。具体的な実施例が挙げられず、その代わりに一般的なリストのみがあり、このことは提案されている構造物の性能が再生できないことを意味している。
EP-A-2409830は、ポリアミドのフレキシブルブレーキラインについて記載している。一般的に、非常に異なる多層構築体が記載されている。外層は必ず単一のポリアミドから成り、内層は外層と同一の材料、すなわちPA6またはPA66の一定の構築体の場合、ならびにPA6、PA66、PA610およびPA612の、他の構築体の場合が提案されている。混合物はポリエーテル-ポリアミドコポリマーに関してのみ記載されている。さらに、中間層が開示される場合、中間層はEVOH、プロピレンポリマーまたは異なる未指定のポリマーから成る。
【0003】
EP-A-1717022の課題は蒸気または液体を輸送する多層パイプを提供することである。最も一般的な意味で、たとえばポリアミド610、任意選択でさらにポリアミド11と混合した単一の必須の層と、内側または外側の追加の層から構成される2層ラインが請求されている。この追加の層は1種のポリアミド、すなわちPA11またはPA12のみから成り、任意選択で追加の添加剤を伴うが、この層に他のポリアミドはない。本例は2層ラインを使用しており、3層ラインを使用する場合は必ず内側および外側にポリアミド11の層を有し、中間層はポリアミド610またはポリアミド610とポリアミド11との混合物のどちらかから成る。
WO-A-2011/136869は様々なポリアミド製の単層ラインおよび多層ラインについて記載している。ここでは破裂圧力要件は繊維強化層などにより満たされている。3層構築体としてはここではたとえば繊維を含むこの種の層のみを提示している。具体的な実施例が挙げられず、その代わりに一般的なリストが示されているのみであり、したがって提案されている構造物の性能が再生できない。
ポリアミドを第2のポリアミド以外の熱可塑性の、たとえばポリエステル(具体的にはテレフタル酸ポリブチレン)と合わせた他の構築体もある。DE-A-4112662にはPA12/PA12+ポリエステル/PA12の構築体が記載されている。
米国特許出願公開第2004/096615号はPA6の層およびコポリマーPA6/12ベースのラクタム6およびラクタム12の層を有する構築体を有する多層ラインを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】EP-A-2842736
【文献】EP-A-1378696
【文献】EP-A-2409830
【文献】EP-A-1717022
【文献】WO-A-2011/136869
【文献】DE-A-4112662
【文献】米国特許出願公開第2004/096615号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、とりわけ、非常に良好な破裂圧力および対応する基準に準じた低抽出量を有する多層圧縮空気ラインを提供することである。本発明の他の目的は、機械的に堅牢なラインを提供することである。本発明の目的は請求項1に規定した構築体により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は具体的には以下の3層:
内部に接する内層、
内層に直接隣接する中間層、
および中間層に直接隣接する外層
から成るプラスチックラインに関する。
この構築体において、内層は、PA12、PA612、PA616の群より選択される少なくとも2種のポリアミドの混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成る。
中間層は、PA612および/またはPA616をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成る。
外層は、PA12、PA612、PA616の群より選択される少なくとも2種のポリアミドの混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成る。
【0007】
ポリアミドPA612およびPA616は常に、ヘキサメチレンジアミンならびにそれぞれ1,12-ドデカン二酸および1,16-ヘキサデカンニ酸から構成されるホモポリマーとして構築される(ISO 1874-1:1992(E)およびEN ISO 16396-1:2015も参照)。
提案のラインの第1の好ましい実施形態は、内層が、PA12とPA612との混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成ることを特徴とする。
提案のラインの第2の好ましい実施形態は、外層が、PA12とPA612との混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成ることを特徴とする。
第1および第2の実施形態について、いずれの場合も、PA612の割合が、各層の全成形組成物の少なくとも20質量パーセント、好ましくは20~40質量パーセントの範囲、特に好ましくは25~35質量パーセントの範囲を占めることが好ましい。
本プラスチックラインの他の好ましい実施形態は、内層および外層がいずれも、PA12とPA612との混合物をベースに形成されているか、または実質的にそれらから成り、いずれの場合も、PA612の割合が、各層の全成形組成物の少なくとも20質量パーセント、好ましくは20~40質量パーセントの範囲、特に好ましくは25~35質量パーセントの範囲を占めることを特徴とする。
中間層は好ましくはPA612のみをベースに、他のポリアミド成分なしに形成されている。
【0008】
ここで、特定の層が「ポリアミドxxをベースに」形成されていると言うとき、これは好ましくは今述べたポリアミドxx以外の成形組成物がポリアミドxx以外の他のポリアミド成分を含まないことを意味する。
内層、外層、好ましくは内層および外層の成形組成物は、好ましくは以下の成分:
(A)78~96質量パーセント、好ましくは85~95質量パーセントの、PA12、PA612、PA616の群より選択される少なくとも2種のポリアミドの混合物、
(B)2~20質量パーセント、好ましくは2~8質量パーセント、特に好ましくは3~6質量パーセントの耐衝撃性改良剤、
(C)2~15質量パーセント、好ましくは4~10質量パーセント、特に好ましくは5~7質量パーセントの可塑剤、
(D)0~5質量パーセントの、(B)および(C)以外の添加剤
から成る。
ここで、(A)~(D)の和は各層を形成する全成形組成物の100質量パーセントを占める。
内層および外層の成形組成物は好ましくは同一または準同一である。
【0009】
コンポーネント(A)の組成は好ましくは以下のとおりである:
(A1)50~90質量パーセント、好ましくは60~72質量パーセントのポリアミドPA12、
(A2)10~50質量パーセント、好ましくは28~40質量パーセントのポリアミドPA612。
ここで(A1)~(A2)の和はコンポーネント(A)の100質量パーセントを占める。
別法としてまたはさらに、コンポーネント(A)がポリアミドPA12とポリアミドPA612との混合物から成り、その比が1:1~5:1の範囲であり、特に好ましくは1.2:1~4:1の範囲である場合もある。
中間層の成形組成物は優先的に以下の成分:
(a)60~92質量パーセント、好ましくは70~90または72~90質量パーセントの、以下の群:ここではポリアミド612のみが好ましいが、PA612、PA616より選択される少なくとも1種のポリアミド、
(b)5~25質量パーセント、好ましくは10~20質量パーセント、特に好ましくは12~18質量パーセントの耐衝撃性改良剤、
(c)3~18質量パーセント、好ましくは4~14質量パーセント、特に好ましくは7~11質量パーセントの可塑剤、
(d)0~5質量パーセントの、(b)および(c)以外の添加剤
から成る。
ここで、(a)~(d)の和は100質量パーセントを占める。
【0010】
少なくとも1つの層の1種または複数種のポリアミド、好ましくは全ての層のポリアミドは、ISO 307に準拠して20℃の温度でm-クレゾール中で測定して、2.0~2.4、好ましくは2.05~2.35の範囲の相対溶液粘度を有することが好ましい。
さらに好ましくは、それらは160~240℃または好ましくは175~220℃の範囲の融点、ポリアミドPA12として選択された場合は175~180℃の範囲の融点、ポリアミドPA612として選択された場合は210~215℃の範囲の融点を有する。
添加剤(D、d)の割合は、好ましくは0.1~3質量パーセントの範囲であり、好ましくは0.5~1質量パーセントの範囲である。
添加剤(D、d)は優先的に、酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、熱安定剤、顔料、マスターバッチ分散媒、導電性添加剤、滑剤またはそれらの混合物の群の少なくとも1種の補助剤より選択される。
【0011】
好ましい安定剤はヨウ化銅(I)およびヨウ化カリウム/ステアリン酸カルシウムの組み合わせである。他の実施形態では有機安定剤の使用が好ましい。他の好ましい実施形態では内層は銅安定剤(cupper stabilization)を、外層は有機安定剤を含む。
少なくとも1つの層、好ましくは全ての層は、添加剤と関連して、優先的に好ましくはCuIベースの銅安定剤を、CuIの割合で、各層の全成形組成物の0.01~0.10質量パーセントの範囲で、または0.03~0.07質量パーセントの割合で有する。
他の好ましい実施形態は、耐衝撃性改良剤(B、b)が、酸修飾されたエチレン-α-オレフィンコポリマー、特に好ましくは酸無水物、より詳細には無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/α-オレフィンコポリマー、より詳細にはこうして修飾されたまたはこうしてグラフトされたエチレン/ブチレン、エチレン/プロピレン、またはエチレン-プロピレン/エチレン-ブチレンコポリマーおよびそれらの混合物であることを特徴とする。
可塑剤(C、c)として、ヒドロキシ安息香酸エステルベースかつ/またはスルホンアミドベースの可塑剤、好ましくはN-置換スルホンアミド可塑剤のクラスのものから、特に好ましくはBBSAが選択されるならばさらに好ましい。
【0012】
好適なヒドロキシ安息香酸エステルベースの可塑剤には、たとえば以下:ヘキシルオキシエトキシエチルp-ヒドロキシベンゾエート、ヘキシルオキシプロポキシプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、ヘキシルオキシブトキシブチルp-ヒドロキシベンゾエート、オクチルオキシエトキシエチルp-ヒドロキシベンゾエート、オクチルオキシプロポキシプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、オクチルオキシブトキシブチルp-ヒドロキシベンゾエート、2’-エチルヘキシルオキシエトキシエチルp-ヒドロキシベンゾエート、2’-エチルヘキシルオキシプロポキシプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、2’-エチルヘキシルオキシブトキシブチルp-ヒドロキシベンゾエート、デシルオキシエトキシエチルp-ヒドロキシベンゾエート、デシルオキシプロポキシプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、デシルオキシブトキシブチルp-ヒドロキシベンゾエート、またはそれらの混合物のような系が含まれる。
本発明はさらに、以上に記載したような、好ましくは3層が連続および/または不連続作業で、好ましくは押出吹込成形、タンデム押出成形、被覆工程または(共)押出加工作業で、中空体、特に好ましくはパイプもしくはラインまたは容器に形成されることを特徴とするプラスチックラインの製造方法に関する。
最後に本発明はそのようなプラスチックラインの、圧力ライン、特に圧縮空気ライン、好ましくは自動車分野で、特に好ましくは自動車分野の圧縮空気ブレーキラインとしての使用、好ましくは内圧100barまで、特に好ましくは90barまで、とりわけ好ましくは80~100barの範囲の条件下での使用に関する。
他の実施形態は従属請求項に示されている。
本発明の好ましい実施形態を以下に図面を参照しながら記載する。図面は説明に役立つにすぎず、いずれの制約を課すものとも解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】経路方向に直交する断面図で圧縮空気ラインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は主経路方向に横断する面で本発明による圧縮空気ライン1の例を示している。
断面積は主経路方向にわたって一定であってもよい。言い換えれば、パイプは実質的に中空円筒形状を有してもよい。
別法として、断面積は主経路方向にわたって変化し、たとえば波形パイプの形をとってもよい。
内部2はパイプ壁に囲まれている。半径方向に外側に向かって、内部2にはまず内層3が続き、内層3は、内部2に隣接しこれを取り囲む内表面7を伴う。この内層はポリアミド12とポリアミド612との混合物をベースに、他の異なるポリアミド成分なしに形成される。
【0015】
内層3に中間の接着促進剤層なしに直接隣接して、中間層4が続く。中間層4は他の異なるポリアミド成分なしにポリアミド612をベースに形成されている。
この中間層4の外側にやはり中間の接着促進剤層なしに直接隣接し、外層5が続く。外層5はポリアミド12とポリアミド612との混合物をベースに、他の異なるポリアミド成分なしに形成されている。外層5の外表面6はラインを外側から取り囲む。
【0016】
使用する出発原料:
PA12 ISO 3146に準拠して測定してTm=178℃、ポリアミド0.5gのm-クレゾール100mL溶液として測定してηrel=2.25の高粘度ポリアミド12。
PA612 ISO 3146に準拠して測定してTm=215℃、ポリアミド0.5gのm-クレゾール100mL溶液として測定してηrel=2.15のポリアミド612。
WM 商標名Uniplex 214でLanxessから入手可能な可塑剤の、N-ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)。
SZM 1.2g/10分のMVR(ASTM D1238)(230℃/2.16kgで測定)およびISO 11357-2(2013)に準拠して測定して-60℃のTgを有し、三井化学株式会社から入手可能なTafmer MC201。Tafmer MC-201は無水マレイン酸でグラフトされたエチレン-プロピレンコポリマーとエチレン-ブチレンコポリマーとの混合物の形をとった耐衝撃性改良剤、すなわち67%EPコポリマー(20mol%プロピレン)+33%EBコポリマー(15mol%1-ブテン)のg-MAH(-0.6%)ブレンドである。
安定剤 ヨウ化銅(I)、ステアリン酸カルシウム、ヨウ化カリウムを8:1:49の比で。
SMB BASF(ドイツ、ルートウィヒスハーフェン)から入手可能なPEをベースとするカーボンブラックベースの(40%)カラーマスターバッチである、Euthylen Black。
【表1】
【0017】
試験片の製造:
240から260℃の間の溶融温度で-140mbarの減圧下で押出速度16m/分でパイプを共押出成形した。使用した試験片は12mmの外径、1.5mmの肉厚を有するパイプであった。
どの場合でも外径12mmの試験片に5回試験を実施した。
パイプの長さは試験要件に準拠して適合させた。
測定のためのパイプの構築:
3層を以下のように構築されている:外層0.15mm、中間層1.2mm、内層0.15mm、総肉厚1.5mm。
【0018】
【表2】
【0019】
この材料に実施した試験および先に記載したパイプの構築体は以下のとおりであった:
基準で異なる方法が示されまたは要求されていない限り、測定は50%の相対湿度で実施した。
抽出可能な画分:DIN 73378(1996)、Section 6.4.4に準拠した試験:DIN 53738に準拠して18±1時間の抽出時間にわたってmethod Aで試験を行う。パイプ試料は微粉砕機を使用して微粉砕する。抽出はDIN ISO 3310-1に準拠して500μmおよび3.15mmの網ふるいで律速してペレット画分を使用して行う。使用する抽出液はエタノールである。
成形組成物について測定した破壊応力、破断伸び(50mm/分)および弾性率(1mm/分):ISO 527(2012)に準拠して1mm/分の引張速度でISO 3167に適合した引張試験片について測定する。
振り子式衝撃:DIN 73378(1996) Section 6.4.6に準拠して試験する。
比較応力:製造された成形品の破裂圧力をDIN 73378(1996)に基づく方法で15cmの長さ、12mmの外径および1.5mmの肉厚の寸法を有する中空体について測定する。パイプの組成と無関係な、材料特性としての比較応力をDIN 73378(1996) Section 3.2の式(1)を使用して内圧応力下で求めたパイプの破裂圧力から計算する。
相対粘度:DIN EN ISO 307(2007)、20℃の温度で0.5質量%強度のm-クレゾール溶液中にて。
熱挙動:融点Tm、融解エンタルピーおよびガラス転移温度(Tg):ISO standard 11357-1(2016)、-2(2013)および-3(2011)、ペレット、示差走査熱量測定(DSC)を20℃/分の加熱速度で実施する。
【0020】
【表3】
【0021】
本結果は圧縮空気ブレーキラインの内層および外層の成形組成物にPA612を添加することの驚くべき効果を示している。意外にも、十分な振り子式衝撃に加えて、比較応力に向上が、抽出量に減少が認められた。したがって、実験の証拠をベースにPA612とPA12との混合物により、最適化した機械的特性およびラインの抽出可能な画分の量の向上が可能になることを示すことができる。
【符号の説明】
【0022】
1 圧縮空気ライン
2 内部
3 内層
4 中間層
5 外層
6 外表面
7 内表面
図1