(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】電気衝撃用具用の整形外科用アダプタ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A61B17/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019090479
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ペディシニ
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/044348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具を電動の外科用衝撃用具とインターフェース接続するように構成されたアダプタであって、前記外科用衝撃用具が、アンビルを含み、かつ前記アンビルをアンビル軸に沿って前方及び後方に移動させるためのエネルギーを生成するように構成されており、前記アダプタが、
前記外科用衝撃用具の前方衝撃表面と係合するための前方衝撃のための表面と、
前記外科用衝撃用具の前記前方衝撃表面とは異なる前記外科用衝撃用具の後方衝撃表面と係合するための、前記前方衝撃のための表面とは異なる後方衝撃のための表面と、
第1の表面、第2の表面、及び第3の表面であって、前記アンビル軸に対して各々実質的に平行である、別個かつそれぞれの第1の平面、第2の平面、及び第3の平面を形成する、第1の表面、第2の表面、及び第3の表面と、を備え、
前記第1の表面、前記第2の表面、及び前記第3の表面は、前記アダプタが、前記アンビル軸の周りの別個かつそれぞれの第1の回転位置、第2の回転位置、及び第3の回転位置において、前記外科用衝撃用具に対して位置付けられることを可能にし、
前記外科用衝撃用具の動作中に、前記前方衝撃のための表面が前方衝撃力を受け取って、前記前方衝撃力が前記アダプタを通じて前記外科用器具に伝達されるように構成されており、かつ、前記後方衝撃のための表面が後方衝撃力を受け取って、前記後方衝撃力が前記アダプタを通じて前記外科用器具に伝達されるように構成されており、
前記前方衝撃のための表面及び前記後方衝撃のための表面が各々、前記外科用衝撃用具の前記動作中に、20~200mm
2の面積で、前記外科用衝撃用具と接触し、前記前方衝撃のための表面及び前記後方衝撃のための表面が各々
、15キロニュートン
までの衝撃力に耐えるように設計されている、アダプタ。
【請求項2】
前記アダプタの先端部分におけるインジケータ実指示(TIR)が5mm未満である、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記第1の平面、前記第2の平面、及び前記第3の平面とは異なり、前記アンビル軸に対して実質的に平行であり、かつ前記アダプタが、前記第1の回転位置、前記第2の回転位置、及び前記第3の回転位置とは異なる、前記アンビル軸を中心とする第4の回転位置において、前記外科用衝撃用具に対して位置付けられることを可能にする、第4の平面を形成する、第4の表面を更に備える、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項4】
前記外科用衝撃用具に近位の表面は、前記アダプタが、前記アンビル軸に沿った又は前記アンビル軸と平行な単一の運動で、前記外科用衝撃用具に接続することを可能にするように構成されている、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項5】
前記前方衝撃のための表面又は前記後方衝撃のための表面が、前記外科用衝撃用具に接続された解放カラーと係合及び係合解除して、前記アダプタを前記外科用衝撃用具から接続及び接続解除するように構成されている、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項6】
前記解放カラーが、前記解放カラーを前記外科用衝撃用具に向かって摺動させることによって、前記アダプタから係合解除するように構成されている、請求項5に記載のアダプタ。
【請求項7】
前記アダプタ及び前記外科用器具が、単一の構成要素である、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項8】
前記前方衝撃のための表面は、前記前方衝撃力を伝達するために、前記アンビル軸に対して実質的に垂直である、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項9】
前記後方衝撃のための表面は、前記後方衝撃力を伝達するために、前記アンビル軸に対して実質的に垂直である、請求項8に記載のアダプタ。
【請求項10】
前記第1の表面、前記第2の表面、及び前記第3の平面とは異なり、前記アンビル軸に対して実質的に平行であり、かつ前記アダプタが、前記第1の回転位置、前記第2の回転位置、及び前記第3の回転位置とは異なる、前記アンビル軸を中心とする第4の回転位置において、前記外科用衝撃用具に対して位置付けられることを可能にする、第4の平面を形成する、第4の表面を更に備える、請求項8に記載のアダプタ。
【請求項11】
前記外科用衝撃用具に近位の表面は、前記アダプタが、前記アンビル軸に沿った又は前記アンビル軸と平行な単一の運動で、前記外科用衝撃用具に接続することを可能にするように構成されている、請求項8に記載のアダプタ。
【請求項12】
前記アンビル軸に対して実質的に垂直な前記前方衝撃のための表面が、前記外科用衝撃用具に接続された解放カラーと係合及び係合解除して、前記アダプタを前記外科用衝撃用具から接続及び接続解除するように構成されている、請求項8に記載のアダプタ。
【請求項13】
前記解放カラーは、前記解放カラーを前記アンビル軸に沿って又は前記アンビル軸と平行に摺動させることによって、前記アダプタから係合解除するように構成されている、請求項12に記載のアダプタ。
【請求項14】
前記アダプタ及び前記外科用器具が、単一の構成要素である、請求項8に記載のアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年12月15日に出願された米国仮特許出願第62/599,616号、発明の名称「Orthopedic Adapter for an Electric Impacting Tool」に対する優先権を主張し、2018年3月28日に出願された米国特許出願第15/939,048号、発明の名称「Orthopedic Adapter for an Electric Impacting Tool」の一部継続出願である。本出願は、整形外科用衝撃装置を対象とする、以下の先行特許出願に関連する。2010年12月29日に出願され、現在は米国特許第8,695,726号である、米国特許出願第12/980,329号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2012年5月8日に出願され、現在は米国特許第8,393,409号である、米国特許出願第13/466,870号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2013年3月8日に出願され、現在は米国特許第8,602,124号である、米国特許出願第13/790,870号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2014年4月10日に出願され、現在は米国特許第9,901,354号である、米国特許出願第14/250,102号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2014年7月16日に出願され、現在は米国特許第8,936,105号である、米国特許出願第14/332,767号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2014年7月16日に出願され、現在は米国特許第8,936,106号である、米国特許出願第14/332,790号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2015年9月10に出願された米国特許出願第14/850,588号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2015年9月10に出願された米国特許出願第14/850,620号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2015年9月10日に出願された米国特許出願第14/850,639号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2015年9月10日に出願された米国特許出願第14/850,660号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2015年9月10日に出願された米国特許出願第14/850,674号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2015年9月10日に出願された米国特許出願第14/850,695号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2016;年1月11日に出願された米国特許出願第14/992,781号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2016年1月28日に出願された米国特許出願第15/009,723号、発明の名称「Battery Enclosure for Sterilizeable Surgical Tools Having Thermal Insulation」、2016年4月14日に出願された米国特許出願第15/098,662号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2017年2月22日に出願された米国特許出願第15/439,692号、発明の名称「Orthopedic Impacting Device Having a Launched Mass Delivering a Controlled,Repeatable & Reversible Impacting Force」、2017年3月1日に出願された米国特許出願第15/446,862号、発明の名称「Orthopedic Impacting Delivering a Controlled,Repeatable Impact」、2017年7月18日に出願された米国特許出願第15/544,317号、発明の名称「Battery Enclosure for Sterilizeable Surgical Tools Having Thermal Insulation」、2017年5月19日に出願された米国特許出願第15/600,234号、発明の名称「Orthopedic Impacting Delivering a Controlled,Repeatable Impact」、2017年5月19日に出願された米国特許出願第 15/600,284号、発明の名称「Orthopedic Impacting Device Having a Launched Mass Delivering a Controlled,Repeatable & Reversible Impacting Force」、2017年8月15日に出願された米国特許出願第15/677,933号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」、2017年10月20日に出願された米国特許出願第15/789,493号、発明の名称「Orthopedic Impacting Device Having a Launched Mass Delivering a Controlled,Repeatable & Reversible Impacting Force」、及び2017年12月28日に出願された米国特許出願第15/857,385号、発明の名称「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」。上記で特定した全ての出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、制御された反復可能な衝撃を外科用器具に提供するために、発射質量によって駆動される双方向の外科用衝撃のためのモータで駆動される用具を使用する処置を含む、整形外科処置などの外科用途に使用される電動の外科用衝撃用具のためのアダプタに関する。
【0003】
整形外科の分野では、人工関節などの人工器官は、患者の骨小腔内に埋め込まれるか、又は着座されることが多い。小腔は、典型的には、人工補綴が着座、又は埋め込まれる前に手術中に形成される。例えば、医師は、既存の骨を除去し、又は圧縮して小腔を形成してもよい。人工補綴は、通常、小腔の中に挿入されているステム、又は他の突出部を含む。
【0004】
小腔を作成するために、医師は、人工補綴のステムの形状に適合するブローチを使用してもよい。当該技術分野において既知の解決策は、ブローチを移植片領域内に推進するために、外科手術中に、医師が手動で打撃するためのブローチを備えたハンドルを提供することを含む。残念ながら、この手法は、粗雑で悪名高く不正確であり、骨に不要な機械的応力をもたらす。結果は、予測不可能であり得、特定の医師の技能に依存する。歴史的に、この手法は、多くの場合、小腔の場所及び構成に不正確さをもたらす。加えて、外科医は、ブローチを打撃し、骨及び人工補綴を操作するために、異常な量の物理的力及びエネルギーを費やすことを要求される。最も重要なことに、この手法は、医師が外科領域への不必要な更なる外傷を引き起こし、そうでなければ健康な組織、骨構造などを損傷するという危険性を伴う。
【0005】
人工小腔を作成するための別の技術は、ブローチを空気圧で、即ち圧縮空気によって駆動することである。この手法は、例えば、係留空気線が存在すること、空気が用具から無菌手術部位に排出されること、及び用具を操作する医師の疲労のために、衝撃用具の可搬性を妨げるという点で不利益である。この手法は、米国特許第5,057,112号に例示されているように、衝撃力又は頻度の正確な制御を可能にせず、代わりに作動時のジャックハンマーに非常によく似て機能する。やはり、正確な制御の尺度のこの欠如は、小腔の正確なブローチングをより困難にし、かつ不必要な患者の合併症及び外傷をもたらし得る。これらの種類の用具は、切削軸に対して垂直な広範囲の運動を伴う動きを生じさせる可能性があり、更に正確性及び精度を妨げる。いくつかの例では、そのような正確性及び精度、又はその欠如は、用具のアダプタに接続された外科用器具のインジケータ実指示(total indicator reading、「TIR」)を記述することによって定量化され得る。TIRは、例えば、表面(例えば、平面、円筒形など)に沿った輪郭の偏差を記述する測定値である。特定の実施例では、アダプタのTIRは、例示的な表面に沿ったアダプタの「平坦さ」を表すことができる。
【0006】
第3の技術は、小腔を作成するためのコンピュータ制御のロボットアームに依存する。この手法は、疲労及び正確性の問題を克服するが、それは非常に高い資本コストを有することに悩まされ、外科医が手動の手法から得ることができる触覚的なフィードバックを除外する。更に、この手法がフライス削りによるものでない限り、衝撃手段(空気圧式、電気式、又は手動式)が依然として必要とされる。
【0007】
他の技術は、発明者自身の仕事を使用し、リニア圧縮機、真空作動、又は機械的若しくはガスばねを含むハンマー投げ方法を含んでもよく、それらは全て電動である。しかしながら、ハンマー投げ方法では、被投質量(ハンマー)又はストライカによって作成された衝撃エネルギーを電動衝撃子内から外科用器具に結合するための既存の市販のアダプタの使用は、50%以上の損失が典型的である、内部エネルギーの外科用器具への非常に不十分な結合をもたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その結果として、既存のアダプタの様々な不利益を克服する、衝撃用具と外科用器具との間の改善されたアダプタに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の不利益を考慮して、股関節、膝、肩などに整形外科用衝撃を提供することができる外科用器具を用具に結合することを可能にするために、電気モータで駆動される整形外科用衝撃用具のためのアダプタが提供される。アダプタは、ブローチ、のみ、又は他のエンドエフェクタを保持し、ブローチ、のみ、又は他のエンドエフェクタを穏やかに叩くように、衝撃子から、制御された振動衝撃で小腔の中に力を送達することができ、その結果、人口補綴又は移植片により良好に適合する。アダプタはまた、ブローチ、移植片、カップ、ライナー、ヘッドボール、ネイル、ワイヤ、ピン、及び他の装置の配置及び取り外しにも使用することができる。更に、アダプタは、患者、外科用器具、又は外科処置に基づいて、衝撃設定を伝達するか、又はそうでなければ指示することによって、電動整形外科用衝撃子の追加の制御を可能にすることができる。アダプタは、適切な着座を更に可能にし、双方向の動きの場合には、人口補綴又は移植片の、移植片小腔の中への又は移植片小腔からの除去を可能にし、有益なことに、電動整形外科用衝撃子を案内する際に既存の外科医の技術を増補する。
【0010】
文脈を提供するために、電動整形外科用衝撃子の簡単な説明が提供される(他の類似の関連する装置もまた、上記で特定され、かつ参照により本明細書に組み込まれる関連出願に記載される)。電気モータで駆動される整形外科用衝撃用具は、電源(電池、燃料電池、又は圧縮ガスのカートリッジ)と、モータアセンブリと、コントローラと、ハウジングと、貯蔵エネルギーシステム、又は位置エネルギーを貯蔵及び解放することができるガスばね又は機械ばねなどの機構と、貯蔵エネルギー駆動システムによって前方向及び/又は後方向に動作するように付勢されたストライカとを含み、このストライカは、前方向又は後方向のいずれかに衝撃力を発生させることができる。
【0011】
一実施形態では、アダプタは、電動衝撃子と外科用器具との間で力を伝達するために使用される。更なる実施形態では、アダプタは、電動衝撃子(以下、用具と称する)から外科用器具に前方又は逆向きに衝撃を伝達するために使用される2つの別個の表面を有する。
【0012】
一実施形態では、外科用器具をアダプタと組み合わせることができる。
【0013】
一実施形態では、アダプタは、ストライカのエネルギーの少なくとも50%を外科用器具に伝達する。
【0014】
例示的な実施形態では、アダプタは、外科医又はロボットが、アダプタ及び外科用器具を患者の方へ、若しくはそれから離れるように押すか、又は引くかのいずれかであるか否かを用具に伝達する。
【0015】
更なる例示的な実施形態では、外科用器具(例えば、ブローチ、のみ、又は他のエンドエフェクタ)は、例えば、
図2Aに示すように、軸方向の位置合わせを依然として維持しながら、いくつかの位置に回転させることができ、アダプタは、4つの異なる位置で回転可能であり、各位置は90°回転される。これは、例えば、外科手術中の様々な解剖学的提示におけるアダプタ又はブローチの使用を容易にする。
【0016】
いくつかの実施形態では、アダプタは、患者に対してアダプタの空間的な位置を伝達するように構成されている。例えば、アダプタ又は衝撃子は、用具の相対位置及び/又は位置合わせを患者に伝達するセンサ及び/又はカメラを含んでもよい。これは、患者に関連し、アダプタ又は衝撃子上に位置決めされていない基準点を追跡することによって達成することができる。更なる実施形態では、センサは、外科手術ナビゲーションシステムと協調してアダプタ又は衝撃子の位置を伝達して、最適位置、計画された最終位置、又は任意の他の所望の位置と比較して、外科医又はロボットに位置を知らせるように構成されてもよい。
【0017】
例示的な実施形態では、用具のアダプタは、前方打撃表面又は第1の表面、及び後方打撃表面又は第2の表面の2つの衝撃点のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
例示的な実施形態では、アンビル及びアダプタは、単一の要素を含み、又は1つは、他方と一体であってもよい。
【0019】
例示的な実施形態では、アダプタの重量は、アンビル、ストライカ、又は衝撃子の他の被投質量よりも軽い。
【0020】
例示的な実施形態では、アダプタの重量は、衝撃子用具の重量の半分未満、好ましくは、衝撃子の重量の40%未満である。
【0021】
例示的な実施形態では、アダプタは、アンビル、ストライカ、又は衝撃子の他の被投質量と実質的に軸方向に一直線上にある。これは、骨が異方性材料であり、圧縮力、次いで張力、次いで剪断力に関して最も強いという点で予想外の利点を有する。力を一直線上に保つことにより、用具の動作は、骨に対する応力が低下し、より良好な結果をもたらす。
【0022】
例示的な実施形態では、アダプタは、外科用器具又は外科処置に基づいて、用具に力、頻度、及び投出設定を伝達することができる。
【0023】
例示的な実施形態では、アダプタは、粘弾性材料、又は用具から外科用器具に伝達される総エネルギーを制限する弾性ばね又は機械的ばねなどの緩衝機構を含むことができる。緩衝装置は、特定のレベルの緩衝又は特定の方向にのみ緩衝するなどの任意の所望の能力を提供するように選択又は構成されてもよい。例えば、緩衝装置は、用具からの衝撃エネルギーを10%又は50%、好ましくは少なくとも20%減少させることができ、緩衝装置は、前方向にのみエネルギーを緩衝させ、後方向により急激な衝撃力を残すことができる。
【0024】
例示的な実施形態では、アダプタは、アダプタが用具に適切に接続されていることを示す可聴又は視覚的合図を作り出す機構を含んでもよい。例えば、タブ、溝、隆起した縁部、及び他の類似の特徴は、用具又は外科用器具へのアダプタの適切な接続時に、定位置にスナップ嵌めされ、かつ可聴合図を生成するように構成されてもよい。視覚的合図はまた、アダプタが、用具又は外科用器具に適切に接続されていることを示してもよい。例えば、アダプタ、用具、若しくは外科用器具の窓又は他の指定された領域は、アダプタが正しく接続されていないときには赤色を表示し、アダプタが正しく接続されているときには緑色を表示することができる。
【0025】
例示的な実施形態では、アダプタは、移植片を配設する前に骨を最終的に整形するのに有用な切削歯を有する外科用器具に接続され得る。なお更なる実施形態では、切削歯のピッチ(衝撃方向の間隔)は、器具の電動の投掛未満であると判定される。なお更なる実施形態では、双方向の切削歯を有することが有益であり、これにより、前方衝撃及び後方衝撃の両方で骨整形が可能であることが見出された。
【0026】
これらは、本開示を特徴付ける新規の様々な特徴と共に本開示の他の態様と共に、本明細書に付属する特許請求の範囲に具体的に指摘され、本開示の一部を形成する。本開示、その動作上の有益性、及びその使用によって達成される特定の非限定的な目的をよりよく理解するために、本開示の例示的な実施形態が示され、かつ説明されている添付の図面及び詳細な説明を参照されたい。
【0027】
例示的な実装形態の上記の一般的な説明及び以下のその詳細な説明は、本開示の教示の例示的な態様にすぎず、限定的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成する添付の図面は、1つ又は2つ以上の実施形態を示し、記述と共にこれらの実施形態を説明する。添付の図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれていない。添付のグラフ及び図に示されている任意の値寸法は、例示のみを目的としており、実際の又は好ましい値若しくは寸法を表しても表さなくてもよい。適用可能な場合には、基礎となる特徴の説明を補助するためにいくつかの又は全ての特徴が示されていないことがある。図面は、以下のとおりである。
【
図1】一実施形態による、整形外科用衝撃用具の斜視図を示す。
【
図2A】一実施形態による、嵌入軸の周りの4つの異なる回転度を有する衝撃子を備えた例示的なアダプタの図を示す。
【
図2B】一実施形態による、3つの別個の部品としての例示的な衝撃子、アダプタ、及び外科用器具を示す。
【
図2C】接続された
図2Bの衝撃子、アダプタ、及び外科用器具を示す。
【
図4】質量比を計算するための衝撃用具の例示的な質量を示す。
【
図5】一実施形態による、整形外科用衝撃用具の出力に接続されたアダプタのTIRの測定のための例示的な位置を示す。
【
図6A】一実施形態による、整形外科用衝撃用具上にアダプタを挿入する際の、往復スリーブを備えた例示的なアダプタを示す。
【
図6B】一実施形態による、整形外科用衝撃用具からアダプタを除去する際の、往復スリーブを備えた別の例示的なアダプタを示す。
【
図7】少なくとも1つの方向に切削歯を提供することによって、骨を整形するために使用される、一実施形態による整形外科用器具を示す。
【
図8】衝撃子又は外科用器具と通信する特徴を含む、一実施形態によるアダプタを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面に関連して以下に記載される説明は、開示された主題の様々な例示的な実施形態の説明であることを意図している。特定の特徴及び機能性は、各々の例示的な実施形態に関連して説明されているが、開示された実施形態が、それらの特定の特徴及び機能性の各々なしで実施されてもよいことは、当業者に明らかであろう。
【0030】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「ある実施形態」と言及した場合、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が、開示された主題の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所での「一実施形態では」又は「ある実施形態では」という句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性を、1つ又は2つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせることもできる。更に、開示された主題の実施形態は、それらの修正及び変形を網羅することが意図されている。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象をも含むことに、留意しなければならない。即ち、特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」などという語は、「1つ又は2つ以上」の意味を有している。加えて、本明細書で使用され得る「左」、「右」、「頂部」、「底部」、「前部」、「後部」、「側部」、「高さ」、「長さ」、「幅」、「上部」、「下部」、「内部」、「外部」、「内側」、「外側」などの用語は、単に参照点を説明するだけであり、本開示の実施形態を任意の特定の配向又は構成に必ずしも限定するものではないことを理解されたい。更に、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単に、本明細書に開示されるような多くの部分、構成要素、工程、動作、機能、及び/又は点のうちの1つを特定するだけであり、同様に、本開示の実施形態を任意の特定の構成又は配向に必ずしも限定するものではない。
【0032】
更に、「およそ」、「約」、「近位」、「わずかな変動」という用語、及び同様の用語は、一般に、特定の実施形態において、20%、10%、又は好ましくは5%の限度内の識別された値、及びそれらの間の任意の値を含む範囲を指す。
【0033】
一実施形態に関連して説明された機能性の全ては、明示的に述べられた場合、又は特徴若しくは機能が、追加の実施形態と両立しない場合を除いて、以下に記載された追加の実施形態に適用可能であるように意図されている。例えば、所与の特徴又は機能が、一実施形態に関連して明示的に説明されているが、代替の実施形態に関連して明示的に言及されていない場合、本発明者は、その特徴又は機能が代替の実施形態と両立しない場合を除き、その特徴又は機能が、代替の実施形態に関連して展開、利用、又は実装され得ることを意図していることを理解されたい。
【0034】
改善されたアダプタが通信することができる例示的な用具をここで説明すると、モータで駆動される整形外科用衝撃用具は、制御された振動衝撃を提供される。モータは、Maxon Motor(登録商標)及び/又はPortescap(登録商標)から一般に入手可能なものなどの、ブラシレス、オートクレーブモータなどの電気であってもよい。モータは、電池式であってもよい。整形外科用衝撃用具へのエネルギー供給は、整形外科用衝撃用具のための無線可搬性及び伝達を提供することができる。用具は、単一及び複数の衝撃、並びに可変及び様々な方向、力、及び頻度の衝撃付与を実行する能力を含んでもよい。いくつかの実施形態では、衝撃エネルギーは調節可能である。特定の実施形態では、衝撃は、ブローチ、のみ、又は用具に接続された他のエンドエフェクタなどの外科用器具に伝達される。
【0035】
いくつかの実施形態では、用具は、ハウジングを含む。ハウジングは、用具の少なくとも1つの構成要素を確実に被覆及び保持することができ、Radel(登録商標)としても既知である、アルミニウム又はポリフェニルスルホン(Polyphenylsulfone、PPSF又はPPSU)などの外科用途に好適な材料で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジングは、モータアセンブリ、少なくとも1つの減速ギア、ばね要素、ストライカ又は発射質量、制御回路又はモジュール、アンビル、前方衝撃のための第1の若しくは前方打撃表面、及び後方衝撃のための異なる第2の若しくは後方打撃表面を含む。モータアセンブリは、回転モータ駆動部を変換するための線運動変換器を含んでもよい。ばね要素は、機械的ばね、弾性ばね、又はガスばねであってもよい。
【0036】
用具は、用具を快適かつ確実に保持するための任意のハンドグリップを備えたハンドル部分、又は使用中に、用具をロボットアセンブリに一体化するための好適なマウントインターフェース、並びにアダプタ、電池、位置センサ、方向センサ、及びねじれセンサを更に含むことができる。用具は、LED又は従来の白熱光源などの半導体光源によって集束された照明を更に送達して、外科医が用具を用いる外科的作業領域に光を提供することができる。アンビルは、インターフェース接続するアダプタを使用することを通じて、当該技術分野で既知の外科用器具ブローチ、のみ、又は他のエンドエフェクタに結合されてもよく、アダプタは、異なる切り出しサイズの迅速な変化を容易にするための迅速な接続機構を有してもよい。用具は、ハンドルなどの用具の特徴に対する組織クリアランスを得るために、アダプタが、異なる空間的な様式で位置付けられることを可能にする、軸方向に係止するが、回転可変である特徴を更に含んでもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、発射又は被投質量の軸は、動きの方向に沿って、アダプタの軸の20度以内、より好ましくは、アダプタの軸の10度以内に軸方向に位置合わせされている。そのような軸方向の位置合わせは、外科用器具に伝達されるエネルギーを最大化すること、並びに、軸外力の生成を最小化する観点から重要であり、骨折などの有害な外科手術結果に寄与することができる。本発明者は、軸方向の位置合わせのこれらの利点が、部分的には、骨が異方性材料である結果であり、それが剪断力に対してよりも圧縮力又は張力に対してより強くなることを発見した。
【0038】
発射質量又は被投質量、アンビル、及びアダプタに使用されている質量比及び材料は、被投質量の運動エネルギーが、外科用器具にいかに効率的に搬送されるかの観点から重要であることが、発明者によって判断された。特定の実施形態の目的のために、被投質量又はストライカ内の運動エネルギーの関数としての外科用器具へ送達されたエネルギーの比率は、伝達関数と称される。伝達関数は、用具がブローチング、衝撃付与、又は摘出外科処置をいかに効率的に実行しているかという観点において、性能の尺度として使用される。例えば、被投質量、アンビル、及びアダプタが、全て硬化ステンレス鋼でできている1つの設計では、被投質量の運動エネルギーに対する外科用器具に搬送されるエネルギーの比率、又は伝達関数が50%未満であることが見出された。被投質量と衝撃を受けた質量(アンビル、アダプタ、及び外科用器具の質量の合計)の質量比を増加させることによって、アダプタ及びシステムの効率、具体的には、アダプタ及びシステムの伝達関数は、60%以上、多くの場合では、75%近くまで増加した。
図4は、用具の一実施形態を示し、衝撃質量400及び被投質量402を含む前述の質量を示す。
【0039】
用具は、更なる実施形態では、ストライカとアダプタとの間に挿入されたコンプライアンス要素を含む。好ましくは、コンプライアンス要素は、十分に衝撃から回復し、総エネルギーに最小限の緩衝を付与する弾性材料である。一例として、ストライカがアンビルに衝突する接合面にウレタン成分を挿入することができる。別の例では、コンプライアンス要素は、前方向の衝撃力を低減するだけで後方向の急激な衝撃力に対する要望に影響を与えないような様式で挿入されてもよい。この種類のコンプライアンス要素は、衝撃の間のピーク力を制限して、そのようなピークが患者の骨に骨折を引き起こすのを防ぐことができ、更に、詰め込まれたブローチ又は他の外科用器具を後退させることができるようにするために必要な高いピーク力を維持することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、例えば、衝撃子は、ロボットに結合されているので、携帯型電源(電池)及び/又は用具のハンドグリップの必要性を潜在的に排除する。
【0041】
いくつかの実施形態では、アダプタを用具に結合することは、外科医が用具を回転させることを必要とせずに、外科用器具(ブローチ、のみ、又は他のエンドエフェクタ)の位置を変更することができるように、当該技術分野で既知の連結配列又は他の調整機構を含む。
【0042】
図1は、改善されたアダプタが通信することができる、整形外科用衝撃用具の一例の斜視図を示す。機械的ばねアセンブリシステムのモータ8は、筒形カム又は円筒形カム12及びカム従動子13を含む線運動変換器と組み合わされて、第1のばねピストン19a及び/又は発射質量若しくはストライカ15を作動させ、最終的に前方への衝撃力を発生させるために設けられている(また、後方への衝撃力を発生させるために第2のプッシャプレート26bに対して圧縮されている第2のばね2bと係合する第2のばねピストン19bが設けられる)。ピストンは、一般に、貫通要素又は押し出し要素を指し、複数の形状のうちのいずれかを有することができることに留意されたい。ばねアセンブリシステムは、いくつかの実施形態では、アンビル5を更に含む。
【0043】
筒形カム12は、モータ8と軸受支持体124との間に延在しているシャフト122上に長手方向に取り付けられた円筒形部分120、及び円筒形部分120から半径方向に、第1のウォーム端部126aから第2のウォーム端部126bまで円筒形部分120の長さに沿って螺旋状に突出しているウォーム126を含むことができる。
【0044】
軸受支持体124は、第2のプッシャプレート26bによって支持されているハウジング125、及びシャフト122を支持するためにハウジング125内に入れ子にされた軸受を含むことができる。
【0045】
ウォーム126は、例えば、表面が第1のプッシャプレート26aに面する後方表面126bs、及び、カム従動子13と接触し、ウォーム126が回転するとき、カム従動子13を第1のウォーム端部126aと第2のウォーム端部126bとの間の直線移動に追従させる、例えば、表面が第2のプッシャプレート26bに面するウォーム126の前方表面126fsを含むことができる。
【0046】
カム従動子13は、ウォーム126の前方表面126fsに接触しているカム従動子13を有し、かつ第1の方向42aに回転するウォーム126を有することによって、前方向に、例えば、第2のプッシャプレート26bに向かって、ウォーム126に沿って、変位させることができる。
【0047】
カム従動子13は、例えば、表面がプッシャプレート26aに面する、ウォーム126の後方表面126bsに接触しているカム従動子13を有し、かつ第1の方向42aと反対の第2の方向に回転するウォーム126を有することによって、後方向に、例えば、第1のプッシャプレート26aに向かって、ウォーム126に沿って、変位させることができる。
【0048】
バンパー14a及び14bは、ピストン19a及び19bの端面が、ストライカ15に衝突するのを防止するためにストッパとして機能する。
【0049】
筒形カム12は、小さい反復ストロークを通して、カム従動子13に当たる従来の垂直カムに依存し得る従来の線運動変換器と比較して、モータ8が、より大きい角度で回転することを可能にすることによって、整形外科用衝撃用具の効率を向上させることができる。即ち、筒形カム12は、エネルギーを得るためにモータがより多くの回転のラジアンを使用することを可能にし、したがって、電池上の電流流出を著しく減少させる。したがって、特定の実施形態では、筒形カム12によって提供される有益性を電流流出の減少に利用することによって、単一の一次電池を使用することができる。
【0050】
加えて、筒形カム12が、シャフト122の上に直接取り付けることができるので、筒形カム12は、場合によっては、中間ギアアセンブリを排除することを可能にし、それにより、整形外科用用具のコストを削減しながら効率を高めることができる。
【0051】
用具は、いくつかの実施形態では、制御された連続的な衝撃を容易にし、これは、例えば、電源又はモータに動作可能に結合されたトリガスイッチ30の位置に依存している。このような連続的な衝撃のために、トリガスイッチが起動された後に、及びトリガスイッチ30の位置に応じて、用具は、例えば、トリガスイッチの位置に比例する速度で完全な循環を経ることができる。したがって、単一の衝撃又は連続的な衝撃の動作モードのいずれかでは、外科用領域の作成又は整形は、外科医によって容易に制御され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、制御された連続的な衝撃は、コントローラ21によって少なくとも部分的に管理されている。コントローラ21は、例えば、連続的な衝撃モードのタイミングを監視及び管理するための処理回路を含んでもよい。いくつかの実施例では、コントローラ21は、マイクロコントローラ、チップ上のシステム、プログラマブル論理装置、及び/又は外科用衝撃用具のタイミングエネルギー解放のためのタイミング回路を含む、マイクロプロセッサを含んでもよい。コントローラは、外科用衝撃装置又は別の電源への電力コネクタの上又は内部に収容された電池などの電源と通信することができる。
【0053】
コントローラ21は、特定の実施形態では、実行されたときに、コントローラ21にエネルギー貯蔵及び解放を管理させて、反復可能な連続的な衝撃を可能にする、非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶された命令を含む。コントローラ21は、いくつかの実装態様では、位置センサ、RFIDタグ、近接センサ、又は運動センサなどの1つ又は2つ以上の通信装置又はセンサから信号を受信するための1つ又は2つ以上の受信機を含む。命令は、例えば、1つ又は2つ以上のセンサ、又は他の通信装置から受信された信号に基づいて、衝撃を開始するように、衝撃を一時停止するように、及び/又はエネルギー貯蔵及び解放のタイミングを適合させるように構成された命令を含んでもよい。
【0054】
コントローラは、いくつかの実装形態では、外科用衝撃装置の他の要素に信号を発行するための1つ又は2つ以上の出力要素を含む。いくつかの実施形態では、コントローラは、低電力事象又は不審な機械的故障事象などの事象に基づいて、可聴アラートを操作者に発行するための音声出力装置を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、筒形カム12アセンブリがその過程を完了すると、例えば、カム従動子13は、第1のウォーム端部126aと第2のウォーム端部126bとの間の後方表面126bs又は前方表面126fsのいずれかに沿って変位され、それは好ましくは、コントローラ21に動作可能に結合されているセンサ28を作動させる。センサ28は、筒形カム12の好ましい循環作業の調節を補助する。例えば、センサ28は、筒形カム12が、最小位置エネルギー貯蔵点又はその付近にあるように停止するようモータ8に信号を送ってもよい。したがって、1つの完全な循環では、前方又は後方衝撃力が、ブローチ、のみ、若しくは他のエンドエフェクタ、又は移植片若しくは人工補綴上に適用されてもよい。更なる実施形態では、次の循環を開始する前に、任意の所与の処置に対して、遅延を加えるか、又は衝撃の数を数えることが有益であり得、衝撃の速度を正確に制御することを可能にし、ひいては、外科医が、任意の所与の動作でのエネルギー送達の速度を正確に制御することを可能にする。なお更なる実施形態では、外科医の手の中での待ち時間を低減するために、最大位置エネルギー貯蔵点の付近で、筒形カム12を停止させることが有益であり得る。待ち時間は、定義されているように、外科医(又はユーザ)が、整形外科用衝撃用具を作動させ、用具が実際に衝撃を送達するまでの時間である。本発明者は、約100ミリ秒以下の待ち時間が、本質的に瞬間的な応答として現れると判断した。位置エネルギーの少なくとも一部が貯蔵された点で筒形カム12を停止させることによって、用具は、用具トリガ30の作動時に位置エネルギーのほぼ瞬間的な解放の効果を有する。
【0056】
ここで、概して
図2A~
図8を参照すると、整形外科用衝撃子が、それと共に使用するためのアダプタの様々な構成と共に示されている。
【0057】
図2Aは、衝撃軸210を中心とした4つの異なる回転のいずれかでアダプタ202を衝撃子200内に挿入することができる、外科用衝撃子200及びアダプタ202を示す。例えば、
図2Aに示すように、衝撃軸210、又はそれに沿ってアンビル若しくは質量が投げられた軸は、描かれたように水平に縦に左方向にかつ右方向に配向され、アダプタ202は、アダプタ202の縦軸を中心に、少なくとも4つの異なる平面を形成する少なくとも4つの表面212a、212b、212c、212dを備えたほぼ正方形の断面を有する。これらの平面は、衝撃軸又はアンビル軸と平行に走り、アダプタ202を4つの異なる回転配向で衝撃子200に挿入することを可能にする。当然ながら、4つの異なる回転を介した挿入は、
図2Aに例示された正方形の接合面を介して示されているが、追加の回転位置が可能であろう。例えば、六角形の接合面を備えたアダプタは、6つの異なる回転構成を有することができ、八角形の接合面を備えたアダプタは、8つの異なる回転構成を有することができる。異なる挿入角度は、外科医が、用具をより人間工学的な配向に保持する能力を維持しながら、外科用器具の複数の位置決めを可能にする。
【0058】
図2B及び
図2Cでは、衝撃子200、アダプタ202、及び外科用器具204(例えば、ブローチ)は、未接続状態と接続状態との両方で示されている。
【0059】
図3は、前方衝撃のための表面300及び後方衝撃のための表面302などのアダプタの複数の表面が、アダプタ及びその結果として外科用器具に対する近位及び遠位の両方の衝撃を可能にする実施形態を示す。近位及び遠位に衝撃を生じさせる能力は、器具が、小腔内に詰まったときに特に有用である。アダプタに直接逆向きへの吹き出しを加えることによって、詰まっていた器具を容易に小腔から取り除くことができる。表面積は、外科用衝撃子としての経時的な一般的な耐久性のために、1キロニュートン~50キロニュートン、より具体的には、約15キロニュートンの範囲の衝撃力に耐えるように設計されるべきであることが、本発明者によって発見された。一実施例では、衝撃子200と、前方衝撃のための表面300又は後方衝撃のための表面302との間の接触面積は、必要な衝撃力を伝達し、かつそれに耐えるために、20mm
2~200mm
2であるべきである。
【0060】
図5は、アダプタのインジケータ実指示(「TIR」)が測定され得る、アダプタ上の位置を示す。図に示すように、アダプタのTIRは、アダプタの先端500で測定されるべきであり、いくつかの実施形態では、アダプタは、TIRが5mm未満、より好ましくは、2mm未満になるように設計されるべきである。小さいTIRでは、整形外科用衝撃子の精度が向上する。使用時に、この精度は、小腔の歪みの最小化、横方向のエネルギー損失の減少、移植片の適合の改善、及び外科手術結果の改善になる。比較すると、他の既知の外科用器具は、20mm程度のTIRを有する。2mm以下のTIRは、著しい改善であり、著しくより正確な形態及び形状を備えた小腔を作り出す。
【0061】
図6A及び
図6Bは、往復スリーブを介した衝撃子へのアダプタ接続の挿入及び取り外し手順の一実施形態を示す。
【0062】
一実施形態では、往復スリーブは、解放カラー606、スナップリング604、及び保持クリップ602を含むことができる。
図6Aに示すように、アダプタ202は、衝撃子に向かって単一の挿入運動600を介して挿入され、衝撃子200への接続を固定する。その運動中に、解放カラー606内の保持クリップ602は、アダプタ202が内方に移動するにつれて引き離される。スナップリング604は、保持クリップ602をアダプタ202上の適所に係止するか、又は他の方法で着座させ、保持する。一実施例では、スナップリング604は、Oリングであってもよい。他の実施形態では、保持クリップ602は、内方半径方向の力を加え、保持クリップ602の位置を維持するために、ガータばねを使用して所定の位置に係止されてもよい。更なる実施形態では、スナップリング604は、弾性リングを含んでもよい。
【0063】
図6Bに示すように、アダプタ202は、いくつかの実施形態では、解放カラー606を押下することによって、衝撃子から接続解除することができる。解放カラー606は、解放カラー606が摺動し、カム表面608の狭い部分の保持クリップ602と接触することから、カム表面608の広い部分へと徐々に移動するにつれて、保持クリップ602を分離するように構成されたカム表面608を含む。保持クリップ602が、アダプタ202をクリアするのに十分に分離されたときに、アダプタ202は、衝撃子200から離れるように外方に移動され得る。代替実施例では、往復スリーブは、アダプタ202が衝撃子から接続解除された際に保持クリップ602を分離するために、カム表面608の代わりにピニオン及びラックを含むことができる。
【0064】
図7に示すように、アダプタと共に使用するための外科用器具、及び電動整形外科用衝撃子は、移植片を受容するために骨702を整形するための切削歯700を有する。一実施例では、切削歯700は、歯700が、衝撃子の軸と直線的に切削されるように、衝撃子の表面上に配列することができる。更なる実施形態では、歯は、膝などの圧入移植片の装具を改善するような様式で構成することができる。なお更なる実施形態では、アダプタと共に使用するための外科用器具は、接着性移植片との固着に利用可能な表面積を増大させる特徴を含んでもよい。
【0065】
図8は、情報を衝撃子に伝達し、外科医が衝撃子をより正確に制御することを可能にする、アダプタ202上に含まれるセンサ800の一例を示す。情報は、例えば、
図1のコントローラ21などのコントローラによって使用されて、例えば、衝撃のストローク、電力、又は頻度を調整することができる。例えば、アダプタがヘッドボールの着座に使用されている場合で、連続的な衝撃が望ましくない場合に、アダプタセンサは、衝撃を繰り返すよりもむしろ単発式作動の要件を衝撃子に伝達するように構成されてもよい。この状況では、外科医がヘッドボールの嵌入中に、移植片の陥没を引き起こす可能性が低くなるため、外科手術結果が改善される。アダプタは、同じセンサ又は第2のセンサ若しくは他の通信装置を使用して外科用器具と通信することによって、上記のヘッドボール配置用具の例のような、外科用器具及びその種類又は構成情報を検出してもよい。例えば、センサは、特定の外科用器具に適切なものに基本設定を調整するために、コントローラ21によって解釈され、コントローラ21によって使用された識別信号又はコードを伝達することができる。特定の実施例では、アダプタ上のRFIDセンサは、外科用器具の種類を判定するために外科用器具の受動型RFIDタグに問い合わせ、受動型RFIDタグから導出された識別信号又はコードをコントローラ21に提供することができる。別の実施例では、外科用器具上の物理的なマーキングは、アダプタに接続された外科用器具の種類を決定するために、機械的に識別されてもよい(例えば、アダプタの「調子に合わせる」)、又は電子的に識別されてもよい(例えば、アダプタのスキャニングセンサによって「スキャンされる」)。設定は、いくつかの実施例では、衝撃の頻度、衝撃の力、及び/又は衝撃の方向を含むことができる。いくつかの実施形態では、外科用器具は、アダプタと一体的に形成され、したがってアダプタから取り外し可能ではない。これらの実施形態では、アダプタは、外科用器具に関する情報を記憶し、その情報を外科用衝撃子に伝達してもよい。
【0066】
別の実施例として、頻度情報の伝達及び制御は、用具が、衝撃の動きの頻度を正確にかつ一貫して制御することを可能にする。ストライカの頻度を調整することによって、用具は、同じ衝撃の大きさを維持しながら、より大きな総時間加重振動衝撃を付与することができる。これにより、外科医は、外科用器具の切削速度をより良好に制御することができる。例えば、外科医は、外科用器具の動きの大部分の間に、より速い速度(より高い頻度の衝撃)での切削を選択し、次いで、外科用器具が所望の深さに近づくにつれて、切削速度を遅くすることができる。実際、用具の試験中に、毎秒3衝撃、好ましくは、毎秒10衝撃までのより高い頻度の衝撃速度が、1衝撃当たり実質的に一定のエネルギーと相まって、毎秒2~6ジュール、好ましくは、毎秒40ジュールまでを送達することが発見され、外科医が、特定の外科用器具をより良好に位置付けることを可能にした。これは、例えば、寛骨臼カップの着座時に見られ、毎秒2~6ジュールのエネルギーで、毎秒少なくとも3回の衝撃の衝撃頻度の場合、従来技術の手動打撃技術よりもはるかに優れた寛骨臼カップの位置制御をもたらした。電動整形外科用衝撃子の急速な衝撃能力の更なる予想外の利点では、本発明者は、外科用器具の動きがより流動的かつ連続的であった(即ち、木槌の打撃と同じように開始及び停止機能が少ない)ので、動作を実行するエネルギーが低減され得ることを発見した。急速な衝撃(例えば、毎秒3回を超える速度で)のこの利点は、静的摩擦と動的摩擦との間の工学的差異にその基礎を見出す。動的摩擦は、ほとんど常に静摩擦よりも小さく、したがって、ブローチ、移植片、又は他の外科用器具のより連続的な動きは、手術中の全体的な力の低減を可能にする。加えて、外科用器具のほぼ連続的な動きが、必要とされる総エネルギーを低下するだけでなく、より良好な外科手術結果をもたらすことは、手術室での本発明者の経験だった。広がった寛骨臼の特定の場合では、リーマーは、谷部と尖端を残す可能性がある。本明細書に記載されるより連続的な又はより高い頻度の衝撃を使用することによって、谷部及び尖端は低減され、効果的に解決される。これは、多くの解剖用死体検査室で明らかに見られる。具体的には、カップを寛骨臼に配置する際に、表面間のより密接な接触からより良好な定着結果が得られる。
【0067】
アダプタ、衝撃子、及び外科用器具の間で伝達されている情報は、設定又は他の識別情報の形態であってもよく、次いで、上記の例で説明したように構成設定を決定するために、表又はデータベース内で(例えば、コントローラ21によって)参照される。アダプタ、外科用衝撃子、及び外科用器具の間の伝達は、機械的、磁気的、電気的、又は無線を含む様々な方法で実行することができる。例えば、無線周波数識別(radio-frequency identification、RFID)又はBluetooth(登録商標)などの短距離無線通信プロトコルを使用して、アダプタ、衝撃子、及び外科用器具の間で情報を伝達することができる。一実施形態では、受動型RFID技術を使用して、外科用器具の種類に関する情報を検索し、それにより、外科用器具内に電源を提供することを回避することができる。別の実施例では、速度ダイヤルなどの手動速度設定は、機械的信号を外科用衝撃子に伝達し、それによって、コントローラにおける衝撃速度の調整を引き起こすことができる。
【0068】
特定の実施形態が記載されてきたが、これらの実施形態は、例示のためのみに提示され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。実際に、本明細書に記載される新規の方法、機器、及びシステムは、多様な他の形態で具現化され得、更に、本開示の趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載される方法、機器、及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物は、本開示の範囲及び趣旨の範囲内にあるものとして、そのような形態又は変形を網羅することを意図する。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) 外科用器具を電動外科用衝撃用具とインターフェース接続するように構成されたアダプタであって、前記外科用衝撃用具が、アンビルを含み、かつ前記アンビルをアンビル軸に沿って前方又は後方に移動させるためのエネルギーを生成するように構成されており、前記アダプタが、
前記外科用衝撃用具の前方衝撃表面と係合するための前方衝撃のための表面と、
前記外科用衝撃用具の前記前方衝撃表面とは異なる前記外科用衝撃用具の後方衝撃表面と係合するための、前記前方衝撃のための表面とは異なる後方衝撃のための表面と、
第1の表面、第2の表面、及び第3の表面であって、前記アンビル軸に対して各々実質的に平行である、別個かつそれぞれの第1、第2、及び第3の平面を形成する、第1の表面、第2の表面、及び第3の表面と、を備え、
前記第1の表面、前記第2の表面、及び前記第3の表面は、前記アダプタが、前記アンビル軸の周りの別個かつそれぞれの第1、第2、及び第3の回転位置において、前記外科用衝撃用具に対して位置付けられることを可能にし、
前記外科用衝撃用具の動作中に、前記前方衝撃のための表面又は前記後方衝撃のための表面が、前記アダプタを通じて前記外科用器具に衝撃を伝達する、アダプタ。
(2) 前記前方衝撃のための表面及び前記後方衝撃のための表面が各々、前記外科用衝撃用具の前記動作中に、20~200mm2の面積で、前記アンビルと接触する、実施態様1に記載のアダプタ。
(3) 前記第1、第2、及び第3の平面とは異なり、前記アンビル軸に対して実質的に平行であり、かつ前記アダプタが、前記第1、第2、及び第3の回転位置とは異なる、前記アンビル軸を中心とする第4の回転位置において、前記外科用衝撃用具に対して位置付けられることを可能にする、第4の平面を形成する、第4の表面を更に備える、実施態様1に記載のアダプタ。
(4) 前記外科用衝撃用具に近位の表面は、前記アダプタが、前記アンビル軸に沿った又は前記アンビル軸と平行な単一の運動で、前記外科用衝撃用具に接続することを可能にするように構成されている、実施態様1に記載のアダプタ。
(5) 前記前方衝撃のための表面又は前記後方衝撃のための表面が、前記外科用衝撃用具に接続された解放カラーと係合及び係合解除して、前記アダプタを前記外科用衝撃用具から接続及び接続解除するように構成されている、実施態様1に記載のアダプタ。
【0070】
(6) 前記解放カラーが、前記解放カラーを前記外科用衝撃用具に向かって摺動させることによって、前記アダプタから係合解除するように構成されている、実施態様5に記載のアダプタ。
(7) 前記アダプタ及び前記外科用器具が、単一の構成要素である、実施態様1に記載のアダプタ。
(8) 外科用器具を電動外科用衝撃子とインターフェース接続するように構成されたアダプタであって、前記外科用衝撃子が、アンビルを含み、かつ前記アンビルをアンビル軸に沿って移動させるためのエネルギーを生成するように構成されており、前記アダプタが、
第1の方向への衝撃を伝達するために、前記アンビル軸に対して実質的に垂直な表面と、
第1の表面、第2の表面、及び第3の表面であって、前記アンビル軸に対して各々実質的に平行である、別個かつそれぞれの第1、第2、及び第3の平面を形成する、第1の表面、第2の表面、及び第3の表面と、を備え、
前記第1の表面、前記第2の表面、及び前記第3の表面は、前記アダプタが、前記アンビル軸の周りの別個かつそれぞれの第1、第2、及び第3の回転位置において、前記外科用衝撃子に対して位置付けられることを可能にし、
前記外科用衝撃子の動作中に、前記アンビル軸に対して実質的に垂直な前記表面が、前記アダプタを通じて前記外科用器具に衝撃を伝達する、アダプタ。
(9) 前記アンビル軸に対して実質的に垂直な前記表面が、前記外科用衝撃子の前記動作中に、20~200mm2の面積で、前記アンビルと接触する、実施態様8に記載のアダプタ。
(10) 前記第1、第2、及び第3の平面とは異なり、前記アンビル軸に対して実質的に平行であり、かつ前記アダプタが、前記第1、第2、及び第3の回転位置とは異なる、前記アンビル軸を中心とする第4の回転位置において、前記外科用衝撃子に対して位置付けられることを可能にする、第4の平面を形成する、第4の表面を更に備える、実施態様8に記載のアダプタ。
【0071】
(11) 前記外科用衝撃子に近位の表面は、前記アダプタが、前記アンビル軸に沿った又は前記アンビル軸と平行な単一の運動で、前記外科用衝撃子に接続することを可能にするように構成されている、実施態様8に記載のアダプタ。
(12) 前記アンビル軸に対して実質的に垂直な前記表面が、前記外科用衝撃子に接続された解放カラーと係合及び係合解除して、前記アダプタを前記外科用衝撃子から接続及び接続解除するように構成されている、実施態様8に記載のアダプタ。
(13) 前記解放カラーは、前記解放カラーを前記アンビル軸に沿って又は前記アンビル軸と平行に摺動させることによって、前記アダプタから係合解除するように構成されている、実施態様12に記載のアダプタ。
(14) 前記アダプタ及び前記外科用器具が、単一の構成要素である、実施態様8に記載のアダプタ。