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  • 特許-注油器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】注油器
(51)【国際特許分類】
   F04B 13/00 20060101AFI20240129BHJP
   F16N 13/02 20060101ALI20240129BHJP
   F16N 13/16 20060101ALI20240129BHJP
   F16N 23/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F04B13/00 A
F16N13/02
F16N13/16
F16N23/00
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019094444
(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2020063735
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】10 2018 217 636.1
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515234440
【氏名又は名称】エスカーエフ・ルブリケイション・システムズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・クロイツケンパー
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト・リンデマン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ヴィット
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-057970(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第104358996(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 13/00
F16N 13/02
F16N 13/16
F16N 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定量の潤滑剤を収容するための中空空間(4)と、作動状態では前記中空空間(4)内にある前記潤滑剤を吐出し、かつ非作動状態では前記潤滑剤を収容するために前記中空空間(4)を解放するよう形成されたドージングピストン(6)と、流体を介して制御可能であり、かつ前記ドージングピストン(6)を作動させるために形成された作動ピストン(8)とを有している注油器(1)において、前記中空空間(4)、前記ドージングピストン(6)、および前記作動ピストン(8)が、段付穴(10)内に配置されており、前記段付穴(10)が、注油器のハウジング内に設けられており、止まり穴として形成されていることを特徴とする、注油器。
【請求項2】
前記流体を前記作動ピストン(8)に送給するため、前記段付穴(10)が前記作動ピストン(8)の領域内で、径方向に延びる開口部(16)を有している、請求項1に記載の注油器。
【請求項3】
前記流体が、空気または油である、請求項1または2に記載の注油器。
【請求項4】
前記作動ピストン(8)が、周りを取り囲むスリーブパッキン(14)を備えており、前記スリーブパッキン(14)が前記段付穴(10)と共に流体密に密封している、請求項1から3のいずれか一項に記載の注油器。
【請求項5】
前記段付穴(10)が前記作動ピストン(8)の領域内では第1の直径および前記ドージングピストン(6)の領域内では第2の直径を有しており、前記第1の直径が前記第2の直径より小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載の注油器。
【請求項6】
前記潤滑剤を前記中空空間(4)に送給するため、前記段付穴(10)が前記中空空間(4)の領域内で、径方向に延びる開口部(26)を有している、請求項1から5のいずれか一項に記載の注油器。
【請求項7】
前記作動ピストン(8)がバネ要素(18)を介して前記ドージングピストン(6)と接続している、請求項1から6のいずれか一項に記載の注油器。
【請求項8】
前記注油器(1)がマイクロドージング注油器である、請求項1から7のいずれか一項に記載の注油器。
【請求項9】
前記中空空間(4)内にある前記潤滑剤の前記量が5mm3未満である、請求項8に記載の注油器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプリアンブルに基づく、規定量の潤滑剤を収容するための中空空間を有する注油器に関する。
【背景技術】
【0002】
注油器は、潤滑物質を搬送およびドージングするために使用される。この場合、潤滑物質の供給は中枢の容器または中枢の配管から行われ、注油器は、規定量の潤滑剤を潤滑部位に供するため、容器または配管と接続している。とは言えこれまでの注油器では、ある特定の少ないドージング量の一定の繰返し精度を規定の誤差で可能にすることはできない。これはなかでも、このような注油器の配置および組立てにより、少ないドージング量を困難にする部品誤差が生じるせいである。例えばドージングピストンの不利な直径/ストローク比もその一つであり、この直径/ストローク比は、これまでの注油器では3mmの直径および0.43mmのストロークによって規定されている。とりわけこの小さなストロークは、ドージング量に影響を及ぼさずに部品誤差を許容することがほぼ不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それゆえ本発明の課題は、少ないドージングを小さな誤差変動で可能にする注油器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、特許請求項1に基づく注油器によって解決される。
【0005】
注油器は、規定量の潤滑剤を収容するための中空空間と、作動状態では中空空間内にある潤滑剤を吐出し、かつ非作動状態では潤滑剤を収容するために中空空間を解放するよう形成されたドージングピストンと、流体を介して制御可能であり、かつドージングピストンを作動させるために形成された作動ピストンとを有している。
【0006】
ドージングピストンが静止しているときは、中空空間内に潤滑剤がある。その後、流体を介して作動ピストンが制御されると、作動ピストンがドージングピストンの方向に移動し、ドージングピストンを作動させる。するとドージングピストンは、潤滑部位に潤滑剤を供給するため、中空空間内にある潤滑剤を吐出する。
【0007】
ここで提案している注油器によれば、中空空間、ドージングピストン、および作動ピストンは、止まり穴として形成された段付穴内に配置されている。この段付穴は、注油器のハウジング内に設けることができる。この場合、部品の組立ては止まり穴の一方の側からのみ行われ、これにより、部品を穴内に2つの異なる側から挿入しなくてよいので、部品の互いに対するアライメントが簡略化される。これにより部品間の許容効果が減少する。さらにこれは、一方の側から穿孔を行えばよいだけなので製造費の減少にもなる。そのうえ小さな誤差により、前もって規定されるドージング量が部品の取付けによってまったくまたは少なくとも非常に少ししか影響を及ぼされないことを保証できる。
【0008】
一実施形態によれば、流体を作動ピストンに送給するため、段付穴は作動ピストンの領域内で、径方向に延びる開口部を有している。この流体は、とりわけ空気、例えば圧縮空気、または油であることができる。径方向に延びる開口部は、流体を作動ピストンに送給するため、流体送給ユニットと接続することができる。導入される流体または空気は、作動ピストンに作用し、作動ピストンをドージングピストンの方向にずらす。こうすることで、ドージングピストンが潤滑剤を吐出するために作動する。
【0009】
導入される流体が作動ピストンの傍らを流れすぎる可能性がないことを保証するため、作動ピストンは、周りを取り囲むスリーブパッキンを備えることができ、このスリーブパッキンが段付穴と共に流体密に密封する。このようなスリーブパッキンは、流体が作動ピストンに作用し、かつ作動ピストンの傍らを通りすぎて段付穴内に広がらないことを保証する。
【0010】
さらなる一実施形態によれば、段付穴は作動ピストンの領域内では第1の直径およびドージングピストンの領域内では第2の直径を有しており、第1の直径は第2の直径より小さい。段付穴がさらなる段を有していてもよく、止まり穴の閉じた端部に最小の直径および開いた端部に最大の直径が形成される。これはとりわけ、スリーブパッキンを備えた作動ピストンを、最初は、段付穴に沿って表面を擦ることなく大きな直径にのみ通せるという利点を有している。こうすることで、作動ピストンを挿入する際にパッキンが損傷しない。段付穴の最後の部分だけには、作動ピストンを正確にぴったり嵌め込まなければならず、しかしながらこれは、直径の小さい領域の長さが短いので、パッキンに悪影響を及ぼさず、つまり「折れ曲がる危険」は明らかに小さい。
【0011】
さらなる一実施形態によれば、潤滑剤を中空空間に送給するため、段付穴は中空空間の領域内で、径方向に延びる開口部を有している。この径方向に延びる開口部は、とりわけ潤滑剤送給ユニットと接続することができる。加えてこの領域内の段付穴は、潤滑剤を吐出する際の圧力平衡を可能にするため、通風口も有することができる。潤滑剤送給ユニットは、中枢の潤滑剤容器または潤滑剤配管と接続することができる。ドージングピストンが作動しておらず、かつ潤滑剤を収容するために中空空間を解放している場合、潤滑剤送給ユニットから潤滑剤が中空空間内に導入される。ドージングピストンが作動すると、この場合、潤滑剤が中空空間から吐出されると同時に中空空間内への潤滑剤送給が阻止される。こうすることで常に、中空空間内に存在する量の潤滑剤だけが吐出されることを保証でき、これにより、吐出される潤滑剤の精確なドージング量を保証できる。
【0012】
さらなる一実施形態によれば、作動ピストンはバネ要素を介してドージングピストンと接続している。このバネ要素により、作動ピストンが、流体によって作動させられるとバネ要素の予応力に反してドージングピストンに押し付けられ、その後、バネ要素の予応力により再びドージングピストンから押し離されることを達成できる。これに関しバネ要素は、その予応力またはプリロード長により、ドージングストロークを規定できる。
【0013】
さらなる一実施形態によれば、この注油器はマイクロドージング注油器であり、中空空間内にある潤滑剤の量は5mm3未満であることが好ましい。とりわけ、中空空間内にある潤滑剤の量は3mm3未満である。
【0014】
好ましいのは、この注油器により、このドージング量の狂いが最大で+/-10%であることが達成されることである。これはドージングピストンが、直径に対するストロークの比が約1であるストロークおよび直径を有することで達成される。とりわけ、ストロークは約1.5mmおよび直径は約1.6mmであることができる。このようにピストン直径は、最大3mmの既知の直径に比べて1.6mmに小さくなっている。同時にストロークは1.5mmに長くなっており(これまでは0.43mm)、これにより、はるかに正確なドージングを実現可能である。この直径/ストローク比により、既知の注油器に比べてストロークが大きくなっているので、比較的大きな部品誤差が許容される。
【0015】
さらなる利点および有利な実施形態は、明細書、図面、および請求項に示されている。これに関してはとりわけ、明細書および図面の中で示した特徴の組合せは、純粋に例示的なものであり、したがって特徴は単独でまたは別の組合せでも存在することができる。
【0016】
以下に、図面に示した例示的実施形態に基づいて本発明をより詳しく説明する。これに関し、例示的実施形態および例示的実施形態で示した組合せは、純粋に例示的なものであり、本発明の保護範囲を定める意図はない。保護範囲は、係属中の請求項によってのみ規定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】好ましい1つの例示的実施形態に基づく注油器の断面図である。
図2図1からの注油器の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、同じ要素または機能的に同じ作用をする要素に同じ符号を付している。
【0019】
図1および図2は、注油器1を断面図および透視図で示しており、注油器1はハウジング2内に取り付けられている。注油器1は、規定量の潤滑剤を収容するための中空空間4を有している。注油器1は、ドージングピストン6および作動ピストン8をさらに有している。中空空間4、ドージングピストン6、および作動ピストン8は、ハウジング2内の段付穴10内に配置されており、段付穴10は止まり穴として形成されている。
【0020】
動作中は、潤滑剤を潤滑部位に導くために作動ピストン8によりドージングピストン6を作動させ、これによりドージングピストン6は中空空間4内に移動し、すなわちその中にある潤滑剤を注油器から吐出する。潤滑剤の導出方向は矢印12で示している。
【0021】
作動ピストン8の領域内では、段付穴内に径方向の開口部16が設けられており、径方向の開口部16は流体送給ユニット(不図示)と接続可能である。この径方向の開口部16を介し、一方では作動ピストンを作動させるために流体を段付穴10内に導入することができる。さらに、作動ピストン8の後退を可能にするため、この空気を再び排出することができる。流体は、とりわけ圧縮空気であることができる。
【0022】
圧縮流体、例えば圧縮空気が、径方向の開口部16を介して導入されると、この圧縮空気は、作動ピストン8を押し、これにより作動ピストン8をバネ要素18の予応力方向とは逆に移動させる。ドージングピストンは、バネ要素18によって規定されるドージングストローク20を有している。このドージングストローク20は例えば約1.5mmであることができ、かつドージングピストンの直径は約1.6mmであることができる。この比により、製造時の不精確さに対し、比較的大きな許容範囲を保証することができる。
【0023】
作動ピストン8の移動により、ドージングピストン6が中空空間4内に移動し、そこにある潤滑剤が圧力により逆止弁22を介して吐出される。その後、作動ピストン8が再び後退するかまたはバネ要素18により再び元の位置に後退させられると、ドージングピストン6も後退し、逆止弁22もバネ要素24により、中空空間4を外に向かって再び密封するために元の位置に移動する。
【0024】
流体、とりわけ圧縮空気は、径方向の開口部16を介して段付穴10内に導入され、この段付穴10は作動ピストンの領域内では中空空間17を形成している。圧縮流体または圧縮空気が制御されずに中空空間17から漏れ出たりしないことを保証するため、作動ピストン8の周りにスリーブパッキン14が配置されている。スリーブパッキン14は、作動ピストン8を段付穴に対して流体密に密封している。それでも流体または空気がスリーブパッキン14の傍らを流れすぎる場合には、さらなるパッキン34が注油器1の周りに設けられ、これらのパッキン34が段付穴10に対して密封する。これらのパッキン34は、個々の部分を、なかでも中空空間4を、出ていく潤滑剤に対して密封することにも役立つ。
【0025】
段付穴10は中空空間4の領域内で、径方向の開口部26を有しており、径方向の開口部26は潤滑剤送給ユニット(不図示)と接続することができる。ドージングピストン6が非作動状態にある、つまり中空空間4が解放されている場合、潤滑剤送給ユニットを介して新たな潤滑剤が中空空間4内に導入される。これに関し径方向の開口部26は加えて、中空空間4の圧力平衡を可能にするために通気ネジ28をさらに有している。このような通気口は、作動ピストン8を作動させる際の圧力平衡を可能にするため、同様に作動ピストン8の領域内で通気口30としておよびバネ要素18の領域内で通気口32として設けられている。
【0026】
上述の注油器により、5mm3未満/ストロークの少ないドージング量の場合に誤差が+/-10%のドージング精度を可能にすることができる。これは一方では、注油器が、止まり穴として形成された段付穴内に配置されることで達成される。すなわち注油器の個々の部品を段付穴内に一方の側から嵌め込むことができ、これにより部品の互いに対するより正確な配置が可能である。他方で+/-10%の誤差は、ドージングピストンが約1.5mmのストロークおよび約1.6mmの直径を有することで達成される。この直径/ストローク比により、既知の注油器に比べてストロークが大きくなっているので、比較的大きな部品誤差が許容される。
【符号の説明】
【0027】
1 注油器
2 ハウジング
4 中空空間
6 ドージングピストン
8 作動ピストン
10 段付穴
12 導出方向
14 スリーブパッキン
16 径方向の開口部
17 中空空間
18 バネ要素
20 ドージングストローク
22 逆止弁
24 バネ要素
26 径方向の開口部
28 通気ネジ
30 通気口
32 通気口
34 パッキン
図1
図2