(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】スリーブ付き包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20240129BHJP
B65D 77/38 20060101ALI20240129BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B65D77/04 B
B65D77/38
B65D81/34 P
(21)【出願番号】P 2019096872
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2022-04-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390018946
【氏名又は名称】尾西食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩文
(72)【発明者】
【氏名】味方 裕佳
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043360(JP,A)
【文献】特開2019-026271(JP,A)
【文献】特開2019-092814(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023835(US,A1)
【文献】特開2013-212879(JP,A)
【文献】特開2014-019471(JP,A)
【文献】特開2012-020790(JP,A)
【文献】実開平01-096845(JP,U)
【文献】特開2009-263008(JP,A)
【文献】特開2010-163192(JP,A)
【文献】特開2003-104394(JP,A)
【文献】特表2002-523315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 30/00-33/38
B65D 81/18-81/30
B65D 81/34
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前フィルムおよび後フィルムの周縁が接合されて形成された包装容器と、
前記包装容器が通される筒状のスリーブと、
を備え、
前記スリーブは、幅方向に延びる切込みを有し、前記切込みと前記スリーブの下端との間に、折り込むことで内方に突出可能な折り込み部を有し、
前記包装容器は、開封位置から一定範囲における前記周縁の接合が易剥離シールとなっており、開封後に前記前フィルムと前記後フィルムとを離間させるように力を加えることで剥離可能に構成され、
前記前フィルムおよび前記後フィルムのうち剥離された部位を前記スリーブに係止可能に構成されている、
スリーブ付き包装容器。
【請求項2】
前記包装容器は、前記易剥離シールよりも下方にチャックを備えて再密閉可能に構成されている、
請求項1に記載のスリーブ付き包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体と筒状のスリーブとを備えるスリーブ付き包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等が充填された平パウチ等の包装容器に、筒状のスリーブが取り付けられた、スリーブ付きパウチが知られている(例えば、特許文献1参照)。
使用者は、スリーブ越しに包装容器を把持することにより、包装容器内の食品等が高温であっても熱さを感じにくく、容易に喫食できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るスリーブは筒状であるため、内容物が重い等の場合に、スリーブ側面からの把持力で包装容器を支えきれない結果、包装容器がスリーブから抜け落ちる可能性がある。これを防ぐために、特許文献1に係るスリーブの一部は、接着剤により包装容器に取り付けられている。
このため、特許文献1に記載のスリーブ付きパウチを製造するには接着剤塗布の工程などが必要になり、製造過程が煩雑である。
【0005】
上記事情を踏まえ、本発明は、使用時に包装容器がスリーブから抜けることを抑制しつつ、簡便に製造できるスリーブ付き包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前フィルムおよび後フィルムの周縁が接合されて形成された包装容器と、包装容器が通される筒状のスリーブとを備えたスリーブ付き包装容器である。スリーブは、幅方向に延びる切込みを有し、切込みとスリーブの下端との間に、折り込むことで内方に突出可能な折り込み部を有する。
このスリーブ付き包装容器において、包装容器は、開封位置から一定範囲における周縁の接合が易剥離シールとなっており、開封後に前フィルムと後フィルムとを離間させるように力を加えることで剥離可能に構成され、前フィルムおよび後フィルムのうち剥離された部位をスリーブに係止可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用時に包装容器がスリーブから抜けることを抑制しつつ、簡便に製造できるスリーブ付き包装容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスリーブ付き包装容器の正面図である。
【
図2】同スリーブ付き包装容器に係る包装容器の正面図である。
【
図4】同スリーブ付き包装容器に係るスリーブの正面図である。
【
図5】同スリーブ付き包装容器の使用時において変形されたスリーブを示す図である。
【
図6】同スリーブ付き包装容器の使用時における一過程を示す図である。
【
図7】同スリーブ付き包装容器の使用時における一過程を示す図である。
【
図8】同スリーブ付き包装容器の変形例におけるスリーブの部分拡大図である。
【
図9】同スリーブの使用時における一過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について、
図1から
図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るスリーブ付き包装容器1を示す斜視図である。スリーブ付き包装容器1は、内容物が充填される包装容器10と、包装容器10に取り付けられたスリーブ50とを備えている。
【0010】
図2および
図3に、スリーブ50が取り付けられていない包装容器10を示す。本発明において、包装容器10の具体的構成は、内容物等に応じて様々に変更できる。本実施形態では、包装容器10の基本構成は、チャックを備えた再密閉可能なアルミパウチであり、内容物として、長期保存可能な食品が充填されている。この食品は、包装容器内に所定量の熱湯を入れて所定時間経過すると喫食可能な状態となる。必要に応じて、食品の他に脱酸素剤等の保存剤や、喫食に使用するスプーンやフォーク等が収容されてもよい。
【0011】
チャック付きアルミパウチの基本構造は公知である。以下、包装容器10の構成について、公知部分を含めて説明する。
図3は、包装容器10の模式断面図である。包装容器10は、
図2および
図3に示すように、それぞれ四角形の前フィルム11、後フィルム12、および底フィルム13の3枚のフィルムを熱融着により接合して形成されている。各フィルム11、12、13は、基材樹脂層と、アルミ蒸着層と、熱融着可能なシーラント層とを有する。
【0012】
基材樹脂層としては、ナイロンやポリエチレンテレフタレート(PET)等を例示できる。シーラント層としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)等を例示できる。アルミ蒸着層は、基材樹脂層に蒸着して形成してもよいし、一方の面にアルミ蒸着層を有するフィルムを基材樹脂層に接合して設けてもよい。各層の積層には、ドライラミネーションや押出ラミネーション等の各種方法を使用できる。
【0013】
包装容器10は、前フィルム11と後フィルム12との間に二つ折りした底フィルム13およびチャック21を挟んだ状態で、周縁が熱融着により接合されて密封されている。内容物Cは、チャック21と底フィルム13との間の空間に収容されている。
【0014】
包装容器10において、チャック21より上側の幅方向端部には、包装容器を開封する際のきっかけとなるノッチ22が形成されている。ノッチは一例である。開封のきっかけとなる構造の他の例としては、レーザ加工等による易破壊部などを例示できる。
【0015】
包装容器10の幅方向両端部において前フィルム11と後フィルム12とを接合する左シール14および右シール15のうち、チャック21とノッチ22との間に位置する部分14aおよび15aは、接合強度が低い易剥離シールとなっている。このため、使用者は、前フィルム11と後フィルム12とを離間させるように力を加えることにより、容易に易剥離シール14a、15aの部分で前フィルム11と後フィルム12とを剥離できる。
易剥離シール14a、15aの形成方法に特に制限はないが、熱融着温度を低くする方法や、易剥離シール14a、15aの幅を小さくする方法等を例示できる。
左シール14および右シール15の他の部分は、同様に易剥離シールであってもよいし、易剥離シールよりも強く接合されてもよい。
【0016】
図4は、スリーブ50の正面図である。スリーブ50は、紙等の材料で筒状に形成され、外周面の2か所が折られることにより平坦にされている。スリーブ50の外周面50aには、各種の印刷が施されてもよい。
平坦状態におけるスリーブ50の左右端部には、それぞれ幅方向に延びる切込みが3本形成されている。これにより、スリーブ50の下端と最も下側の切込み51aとの間の外周面が、スリーブ50の内方に折り込める第一折り込み部55とされている。さらに、残りの2本の切込み51b、51c間の外周面が、スリーブ50の内方に折り込める第二折り込み部56とされている。
切込み51aおよび51bは、左右端部から離れるにつれてスリーブの下端に近づいている。切込み51cは、左右端部から離れるにつれてスリーブの上端に近づいている。
【0017】
図1に示すように、包装容器10はスリーブ50に通されているが、包装容器10とスリーブ50とは接着されていない。
包装容器10における下端からチャック21までの距離L1(
図2参照)は、スリーブ50における下端から切込み51aの終点までの距離L2(
図4参照)より長くなっている。
【0018】
上記の様に構成されたスリーブ付き包装容器1の使用時の動作について説明する。
使用者は、スリーブ50から包装容器10を抜く、あるいは包装容器10を抜かずにスリーブ50に対して上方に移動させる。次に、ノッチ22をきっかけとして包装容器10の上部を左右方向に切り上部を除去する。これにより包装容器10が開封され、包装容器10の上部に開口部が形成される。続いて使用者は、保存剤やスプーン等の食品以外の物品を包装容器10内から取り出す。
【0019】
使用者は、第一折り込み部55を追ってスリーブ50の筒形状の内方に突出させる。これによりスリーブ50は、
図5に示すように、平坦な状態から少し膨らんだ筒形状になる。
【0020】
使用者は、包装容器10の下部をスリーブ50の上方からスリーブ内に進入させる。すると、包装容器の下部は、スリーブ50内に突出した第一折り込み部55に当たる。この状態でスリーブ50および包装容器10をテーブル上等に置くと、
図6に示すように第一折り込み部55の上部で包装容器10が支持され、第一折り込み部55よりも下方に移動しないように包装容器10が保持される。
上述した距離L1と距離L2との大小関係により、包装容器10がスリーブ50に保持された状態において、チャック21はスリーブ50外に位置している。このため、後述する各動作において、チャック21の開閉を簡便に行える。
【0021】
使用者は、包装容器内に熱湯を所定量入れ、チャック21を閉じる。熱湯を入れる際は、必要に応じて折り込まれた底フィルム13を展開し、熱湯を入れやすい状態に包装容器10を変形させてもよい。
熱湯の重さが加わることにより、包装容器10は、より大きい力で第一折り込み部55に押し当てられ、包装容器10が第一折り込み部55により支持された状態が安定する。
【0022】
熱湯を入れた後所定時間経過すると、包装容器10内の内容物が喫食可能な状態となる。使用者は、チャック21を開くとともに、開口部OP付近に位置する前フィルム11および後フィルム12に、互いに離間するように力を加える。すると、前フィルム11と後フィルム12とを接合していた易剥離シール14a、15aが破壊されて、チャック21の上方に位置する前フィルム11と後フィルム12とが分離する。
分離した前フィルム11および後フィルム12を使用者が
図7に示すようにスリーブ50側に折り返すと、包装容器10内へアクセスしやすくなり、喫食しやすくなる。さらに、前フィルム11および後フィルム12がスリーブ50の上部に係止されるため、包装容器10がより確実にスリーブ50に支持される。
【0023】
使用者は、スリーブ付き包装容器1をテーブルに置いた状態や把持した状態で内容物を喫食する。必要に応じて、第二折り込み部56を内側に折り込むと、折り込まれた部位に指を掛けてスリーブ付き包装容器1を把持しやすくしたり、チャック21をより大きく開いた状態として喫食しやすい状態にしたりできる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態のスリーブ付き包装容器1によれば、スリーブ50に形成された第一折り込み部55を内方に突出させることにより、包装容器10の下部を第一折り込み部55で支持できる。したがって、調理時や喫食時等に包装容器が抜け落ちることを好適に防止でき、包装容器10とスリーブ50とを接着剤等で接合する工程も不要である。
【0025】
また、包装容器10とスリーブ50とが接着剤で接合されていないため、使用時の操作の邪魔になる等の場合に包装容器10を容易にスリーブ50から容易に抜くことができる上、使用後の分別廃棄も容易である。
【0026】
包装容器10においては、チャック21とノッチ22との間において前フィルム11と後フィルム12とが易剥離シール14a、15aで接合されている。このため、ノッチ22より上側のフィルムを大きくして開封操作を容易にしつつ、開封後は前フィルム11と後フィルム12とを分離することにより、包装容器10内部へのアクセスを容易にできる。さらに、前フィルム11と後フィルム12を折り返してスリーブ50に係止することにより、スリーブ50から包装容器10が抜けることをより確実に防止できる。
本実施形態のスリーブ付き包装容器1は、上述した開封時の利点と開封後の利点とをすべて実現できる。
なお、前フィルム11と後フィルム12とを分離するタイミングは上記に限られず、使用者が適宜決定できる。例えば、熱湯を注ぐ前に前フィルム11と後フィルム12とを分離して、スリーブ50に係止すると、包装容器の開口端の位置が安定し、熱湯を注ぐ動作が容易になる。熱湯を入れた後は、包装容器の重量が増加するため、包装容器10が係止された状態がより安定する。
【0027】
加えて、第一折り込み部56の切込み51aは、左右端部から離れるにつれてスリーブの下端に近づいている。このため、第一折り込み部56が内方に折り込まれた際に、内方に突出する第一折り込み部55は、スリーブ50の上側に尖った形状となる。その結果、第一折り込み部55の上端が、包装容器10の下部において、折り込まれた底フィルム13の間に入りこみ(
図6参照)、包装容器10とスリーブ50とが確実に係止される。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0029】
例えば、包装容器に充填される内容物が長期保存を前提としない等の場合、包装容器はアルミ蒸着層を備えないパウチであってもよい。また、内容物の量や性質等に応じて底フィルムやチャックが省略されてもよい。
ただし、チャックを備えた構成の場合、チャックは前フィルムおよび後フィルムと強く接合されるため、開口側から前フィルムと後フィルムとを剥離していく際にストッパとして機能し、前フィルムと後フィルムとが必要以上に剥離されることを防止できる。チャックが不要の場合は、左右のシールにプラスチックの部材を強く接合してストッパのみ設けることもできる。
【0030】
また、前フィルムと後フィルムとの熱融着による通常の接合強度が、使用者に剥離可能な程度であれば、易剥離シールを設けずに全部位同一の熱融着で接合して包装容器10を形成してもよい。
【0031】
さらに、第一折り込み部を設ける位置や数は、上述した実施形態の態様に限定されない。
図8に示す変形例のスリーブ50Aでは、平坦な状態における幅方向中央部にも第一折り込み部55Aが形成されている。このようにすると、スリーブ50内に進入させた包装容器10の下端が
図9に示すように第一折り込み部55Aの上部の外側に入りこむため、より確実に包装容器10をスリーブ50Aに係止できる。
その他、第一折り込み部の数や位置を適宜設定することにより、使用時におけるスリーブの筒形状を安定させたり、より把持しやすくしたりすることが可能である。
【0032】
本発明のスリーブ付き包装容器において、折り返した前フィルムと後フィルムにより包装容器を十分にスリーブに係止できる場合は、必ずしも第一折り込み部がスリーブに設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 スリーブ付き包装容器
10 包装容器
11 前フィルム
12 後フィルム
14a、15a 易剥離シール
21 チャック
50、50A スリーブ
51a 切込み
55、55A 第一折り込み部(折り込み部)
OP 開口部