(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】血管内医療システムで使用するための非外傷性血塊回避構成遠位端を有するガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240129BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61B17/22
A61M25/09
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019106849
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ベイル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ギルバリー
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0228171(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0194993(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0029478(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0215208(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0031971(US,A1)
【文献】米国特許第05507729(US,A)
【文献】特開2017-093833(JP,A)
【文献】特開2000-254147(JP,A)
【文献】特開2000-107198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B、A61M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的血管内に位置する血塊に使用するための血管内医療システムであって、
コアワイヤによって形成されたガイドワイヤであって、細長い本体と、平坦な表面を有する平坦な遠位部分を含む非外傷性血塊回避構成遠位端と、を備えており、近位端から反対側の前記非外傷性血塊回避構成遠位端まで長手方向に延在し、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端の
前記平坦な表面の幅を画定する横方向が、前記平坦な表面に沿った方向に前記ガイドワイヤの前記長手方向に対して横断するように画定されている、ガイドワイヤと、
内腔を有するマイクロカテーテルであって、前記内腔が、前記マイクロカテーテルを通ってその近位端からその反対側の遠位端まで長手方向に画定されており、前記内腔が内径を有している、マイクロカテーテルと、を備え、
前記ガイドワイヤの前記細長い本体及び前記非外傷性血塊回避構成遠位端の少なくとも一部が、前記マイクロカテーテルの前記内腔を通して受容可能であり、
前記非外傷性血塊回避構成遠位端
の前記平坦な表面が可撓性材料で形成されており、
前記非外傷性血塊回避構成遠位端の
前記平坦な表面の前記幅は前記細長い本体の幅より広く、かつ、前記非外傷性血塊回避構成遠位端
の前記平坦な表面の厚さは前記細長い本体の厚さより薄く、
前記非外傷性血塊回避構成遠位端
の前記平坦な表面は近位方向に向かってテーパーし、前記細長い本体の遠位部分に接続されており、
前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、前記標的血管の内壁への損傷を防止し、かつ前記ガイドワイヤの任意の部分を穿通枝血管に挿入することを妨げるように設計されている、血管内医療システム。
【請求項2】
前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、以下の条件:
(i)前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端の前記平坦な表面が、前記標的血管の前記内壁と前記血塊との間を通過するとき、前記標的血管の前記内壁の輪郭と相補的な形状に変形可能であること、及び
(ii)前記ガイドワイヤが前記マイクロカテーテルの前記内腔を通って後退されるときに、前記非外傷性血塊回避構成遠位端の前記平坦な表面がカールするように湾曲して前記マイクロカテーテルの前記内腔に格納されること、を満たす、請求項1に記載の血管内医療システム。
【請求項3】
前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端
の前記平坦な表面が、非変形状態では、前記内腔の前記内径の2倍を超える前
記幅を有する、請求項2に記載の血管内医療システム。
【請求項4】
前記平坦な遠位部分が、その中に画定された少なくとも1つの開口を有する、請求項3に記載の血管内医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管構造組織及び分岐血管への外傷を最小限に抑えるように構成された遠位端を有する血管構造を通して前進可能な血管内医療システムに関する。具体的には、本発明は、急性虚血脳卒中後に閉塞した脳動脈を再構築するために使用されるガイドワイヤを対象とし、ガイドワイヤは、非外傷性血塊回避構成遠位端を組み込んでいる。
【背景技術】
【0002】
急性虚血性脳卒中は、脳の脳動脈内の血栓性又は塞栓性の閉塞物(例えば、妨害物)によって引き起こされる。閉塞は、典型的には、血管を通って移動し、脳の脳動脈内に最終的に詰まった、身体の別の部分から遊離される血液血塊によって引き起こされる。血塊は、経時的に血管内の血塊を小さくし、かつ更に適所に押し込み得る、拍動圧力勾配(すなわち、近位血栓面に作用する全身性血圧から遠位血栓面での逆行性の側方血流から圧力を引いた)を受ける。加えて、血塊と血管の内壁との間にある程度の生物学的接着が生じ得る。
【0003】
血栓除去術として既知の手順を使用して、機械的装置を使用して血管内の血栓、閉塞物、妨害物、又は血塊を除去することができる。血栓除去治療又は処置は、典型的には、脳卒中後の比較的短い期間(例えば、脳卒中の発症後約48時間未満)内の患者に対して実施され、典型的には約1.0mm超の直径を有する大型血管閉塞物に最適である。非侵襲的撮像、例えば、血管造影、主にCT血管造影(CTA)を使用して、血栓除去治療がその特定の患者に好適であるかどうかを判定するために血塊のサイズを判定する。
【0004】
血栓除去処置若しくは治療の間、医師若しくは介入医は、典型的には鼠径部内に位置する動脈内に、又は頸動脈を通る直接アクセスによって、脈管構造を通してガイドワイヤを血管内導入する。ガイドワイヤは、標的血塊、妨害物、又は閉塞物の近位側に面する場所まで脈管構造を通して前進される。ガイドワイヤが適切に位置付けられると、典型的には約1.0mm未満の外径を有するマイクロカテーテルは、マイクロカテーテルを通して軸方向に画定された内腔を通過するガイドワイヤ上を追跡する。
【0005】
これらのタイプの処置に一般的に使用されるガイドワイヤは、比較的小さい直径であり、そのため、マイクロカテーテルを通して長手方向に延在する内腔を画定する比較的小さい内径を有する内腔を容易に通過することができる。従来のガイドワイヤ外径サイズは、約0.010インチ~約0.014インチの範囲であり、マイクロカテーテルの内腔の内径範囲は、約0.016インチ~約0.027インチである。典型的には、使用されるガイドワイヤの外径は、0.014インチであり、マイクロカテーテルの内径は、0.021インチである。約0.010インチの外径を有するより小さいサイズのガイドワイヤ、及び約0.016インチの内径内腔を有するマイクロカテーテルが、特により小さい又はより遠位の血管で使用される場合がある。
【0006】
一部の医師又は介入医は、血塊に面する近位側でマイクロカテーテルの内腔内にガイドワイヤ遠位端又は先端を保持しながら、血塊を横切って、周って又は越えてマイクロカテーテルのみを前進させることを好む。つまり、ガイドワイヤの遠位端又は先端は、血塊を越えて又は周ってその遠位側へと横断することはない。この原理は、マイクロカテーテルの比較的柔らかく、かつ比較的可撓性の遠位端が、ガイドワイヤのものよりも脈管構造組織に対して外傷性が低いことである。多くの場合、その可撓性のために、ガイドワイヤの補助なく、血塊を横切って、周って又は越えてマイクロカテーテルを前進させることは非常に困難である。このような困難を克服するために、マイクロカテーテル及びガイドワイヤは、マイクロカテーテルの遠位区分の内側に位置付けられたガイドワイヤの遠位端又は先端と共に血塊を横切って前進させることができる。
【0007】
別様に、ガイドワイヤが最初に血塊を横切って前進されて、その後、マイクロカテーテルが続いてもよい。
図1を参照すると、最初に閉塞物若しくは血塊3を横切って前進されたとき、ガイドワイヤ30は、望ましくなく、(i)標的、主動脈、若しくは一次動脈15から分岐する穿通枝血管17に進入して、血管破損及び穿孔を引き起こす可能性があり得、かつ/又は(ii)血塊を横切って通過したときに血管組織に損傷又は破損を引き起こし得る。標的血管組織及び/若しくは穿通枝血管への損傷を最小限に抑えるか又は防止するために、ガイドワイヤがマイクロカテーテルの前に血塊を横切って前進されるとき、医師若しくは介入医は、
図15A~
図15Cに示されるように、その遠位端若しくは先端1500を湾曲した「J字形状」に曲げることによってガイドワイヤを意図的に変更又は改変して、マイクロカテーテルをその標的場所若しくは部位へと操縦又は誘導するのを支援することができる。J字形状の遠位端又は先端1500は、自由終端1510で終端する湾曲区分1505(180°未満の曲線を形成する)を含む。
図15Bは、血塊3に接近するガイドワイヤの先行技術のJ字形状の遠位先端1500を示す。ガイドワイヤが医師によって前方に押されると、J字形状の遠位端又は先端は、血管内壁と血塊との間を通過するときに抵抗(例えば摩擦)を受けながら、意図的に脱出し得る(すなわち、それ自体に又はその上に折り重なる)。このような脱出構成では、湾曲又はループ区分1505は、最初に血塊又は閉塞物3を通過し、それによって自由終端1510が穿通枝血管17に進入し、かつ血管組織を破損することが妨げられる。J字形状の遠位先端の脱出は、抵抗に対して(例えば、血管壁と血塊との間を、血塊を越えて横断するとき)前方に前進する際にのみ発生する。すなわち、J字形状の遠位端又は先端は、弛緩状態にある間、脱出されない(いかなる外部機械的力、摩擦、又は抵抗の適用も受けない)。しかしながら、そのような方法でガイドワイヤの遠位先端若しくは端を成形又は改変することは、医師又は介入医によって制御することが困難であり、場合によっては、形状又は改変された遠位端若しくは先端が、血塊を横切って若しくは周って通過することができない場合があり、かつ/又は、血塊を横切って又は周って通過する(又は通過しようと試みる)ときに、標的血管組織に有害な損傷又は破損を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、閉塞物を貫通することなく、又は標的神経血管の繊細な組織を損傷することなく、穿通枝血管のうちの1つの中への前進を妨げ、なお閉塞物と標的血管の内壁との間を、閉塞物を越えて、横切って、又は周って容易に通過するように、ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位先端若しくは端を構成することによって、機械的血栓除去処置で使用されるガイドワイヤに関連する前述の問題を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、標的神経血管の組織を損傷することなく、穿通枝血管への前進を妨げ、なお閉塞物と標的血管の内壁との間を、閉塞物を越えて、横切って、又は周って容易に通過するように、ガイドワイヤの遠位先端若しくは端を構成することによって、血管内医療処置(例えば、機械的血栓切除術)において使用するための改善されたガイドワイヤを対象とする。
【0010】
本発明の別の態様は、標的血管内に位置する血塊に使用するための血管内医療システムに関する。本システムは、コアワイヤによって形成されたガイドワイヤを含む。ガイドワイヤは、近位端から反対側の非外傷性血塊回避構成遠位端まで長手方向に延在し、非外傷性血塊回避構成遠位端の横方向は、ガイドワイヤの長手方向に対して横断するように画定されている。非外傷性血塊回避構成遠位端は、標的血管の内壁への損傷を防止し、かつガイドワイヤの任意の部分を穿通枝血管に挿入することを妨げるように設計されている。
【0011】
本発明の更に別の態様は、標的血管内に位置する血塊に使用するための血管内医療システムを使用する方法を対象とする。血管内医療システムは、その近位端からその反対側の遠位端まで長手方向に画定された内腔を有するマイクロカテーテルを含み、内腔は内径を有する。加えて、血管内医療システムは、コアワイヤによって形成され、かつマイクロカテーテルの内腔を通して受容可能なガイドワイヤを更に含む。ガイドワイヤは、近位端から反対側の非外傷性血塊回避構成遠位端まで長手方向に延在し、ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端の横方向は、ガイドワイヤの長手方向に対して横断するように画定される。本発明によると、非外傷性血塊回避構成遠位端は、標的血管の内壁への損傷を防止し、かつガイドワイヤの任意の部分を穿通枝血管に挿入することを妨げるように構成されている。本発明のシステムを使用する方法は、標的血管を通して、血塊の近位側に面する場所まで、ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端を前進させることを含む。次に、マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルの内腔内に受容されたガイドワイヤ上で、血塊の近位側に面する場所まで追跡される。ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端は、ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端のいかなる部分も血塊を貫通することなく、血塊の近位側の位置から血塊の遠位側に面する位置まで、標的血管の内壁と血塊との間を通過する。その後、マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルの内腔内に受容されたガイドワイヤ上で、血塊の遠位側に面する位置へと誘導される。マイクロカテーテルはまた、遠位アクセス、ガイド、又は中間カテーテルの導入のための支持を提供するために使用されてもよい。ここで、ガイドワイヤを除去してもよく、Stentriever若しくは任意の他の血塊回収装置などの機械的血栓除去装置を、マイクロカテーテルを通して妨害物の標的部位まで前進させ、かつ血塊若しくは閉塞物をガイドカテーテル若しくはシースに回収するために使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の上記の特徴及びその他の特徴は、本発明の実例となる実施形態の以下の詳細な説明及び図面より容易に明らかとなるであろう。ただし、複数の図面を通じて同様の参照符合は同様の要素を示すものとする。
【
図1】血塊、閉塞物、若しくは妨害物を横断した後に穿通枝血管内に望ましくなく導入された従来の遠位先端若しくは端を有するガイドワイヤを含む、例示的な先行技術の従来の機械的血栓除去システムである。
【
図2A】本発明による非外傷性血塊回避構成遠位先端若しくは端を有するガイドワイヤの例示的な図であり、非外傷性血塊回避構成遠位先端若しくは端は、中央開口部若しくは小穴を有するレモン形状構成に曲げられたコアワイヤであり、
図2Aのガイドワイヤは、弛緩状態又は非圧縮状態で例示されている(外部機械的力の適用を受けない)。
【
図2B】2B-2B線に沿った、
図2Aのガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成園医先端又は端の断面図である。
【
図3A】本発明によるガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の別の例示的な図であり、非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端は、シェパードのトリミング形状構成に曲げられたコアワイヤであり、
図3Aのガイドワイヤは、弛緩状態又は非圧縮状態で例示されている(外部機械的力の適用を受けない)。
【
図3B】3B-3B線に沿った、
図3Aのガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の断面図である。
【
図4】本発明の機械的血栓除去システムの例示的な図であり、
図2Aのガイドワイヤの非外傷性血栓回避構成遠位先端は、標的血管壁と妨害物との間の妨害物を介して標的血管を通して前進されており、ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端は、血塊を越えて又は周って通過した後に、穿通枝血管に進入することが妨げられている。
【
図5A】本発明によるガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の更に別の例示的な図であり、ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端は、パドル形状に切断又は型打ちされたコアワイヤの平坦な部分であり、パドル形状の遠位先端若しくは端は、弛緩状態又は非圧縮状態(外部機械的力の適用を受けない)で
図5Aに例示されている。
【
図5B】5B-5B線に沿った、
図5Aのガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の断面図である。
【
図6】弛緩状態又は非圧縮状態(外部機械的力の適用を受けない)内にある間の
図5Aのガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端、及びマイクロカテーテルの内腔内に受容されたガイドワイヤ上を誘導されたマイクロカテーテルを示す。
【
図7】ガイドワイヤがマイクロカテーテルを通して後退されるか又は引き戻されたときに圧縮状態にある(すなわち、マイクロカテーテルの内腔の内壁によって加えられる適用された外部機械的力を受けている)
図5Aのガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端を示し、パドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端の反対側の横方向縁部は、包まれるか、カールされるか、又は互いに向かって巻かれ、それによって、マイクロカテーテルの内腔の内径内で受容可能であるようにその直径を縮小させることができる。
【
図8A】標的血管の内壁と血塊との間を、血塊を越えて、周って、又は横切って前進するときの、
図5Aのガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端を例示し、ガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端は、標的血管の内壁の形状と相補的な形状に適合する。
【
図8B】標的血管の内壁と血塊との間を、血塊を越えて、周って、又は横切って前進するときの、
図5Aのガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端を例示し、ガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端は、標的血管の内壁の形状と相補的な形状に適合する。
【
図8C】標的血管の内壁と血塊との間を、血塊を越えて、周って、又は横切って前進するときの、
図5Aのガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端を例示し、ガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端は、標的血管の内壁の形状と相補的な形状に適合する。
【
図9】
図5Aのガイドワイヤのパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端が血管の内壁の形状にどのように適合するかを例示する、
図8Bの9-9線に沿った血管の断面図である。
【
図10A】弛緩状態又は非圧縮状態にある間(外部機械的力の適用を受けない)のガイドワイヤのコアワイヤの平坦なパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の1つの例示的な構成である。
【
図10B】10B-10B線に沿った、
図10Aのガイドワイヤの平坦なパドル形状の非外傷性血塊回避遠位先端又は端の断面図である。
【
図11A】閉鎖周辺部を有する小穴又は開口部を画定する、単一の中央部分が取り除かれた、ガイドワイヤのコアワイヤの平坦なパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の別の例示的な構成であり、ガイドワイヤのコアワイヤの平坦なパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端は、弛緩状態又は非圧縮状態にある(外部機械的力の適用を受けない)。
【
図11B】11B-11B線に沿った、
図11Aのガイドワイヤの平坦なパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の断面図である。
【
図12A】複数の部分が除去されて、それらの各々が閉鎖周辺部を有する複数の開口部を画定する、ガイドワイヤのコアワイヤの平坦なパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の更に別の例示的な構成であり、ガイドワイヤのコアワイヤの平坦なパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端は、弛緩状態又は非圧縮状態にある(外部機械的力の適用を受けない)。
【
図12B】12B-12B線に沿った、
図12Aのガイドワイヤの平坦なパドル形状の非外傷性血塊回避構成遠位先端又は端の断面図である。
【
図13】その外側表面の周りに配設された1つ又は2つ以上のコイルを有するガイドワイヤコアの部分断面図である。
【
図14】ポリマージャケット、コーティング、又は外層によって被覆されたガイドワイヤコアの部分断面図である。
【
図15A】ガイドワイヤの先行技術のJ字形状先端の部分斜視図である。
【
図15B】血塊(血塊の近位側上の)に近づくときの
図15Aの先行技術のJ字形状先端ガイドワイヤを示す。
【
図15C】血塊を越えて横断するときに脱出し、それにより自由終端ではなく、湾曲したループ区分が最初に血塊を横断する、
図15Aの先行技術のJ字形状の先端ガイドワイヤを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「遠位」又は「近位」という用語は、以下の説明において、治療医師若しくは医療介在医に対する位置又は方向に関して使用される。「遠位」又は「遠位に」とは、医師若しくは介在医から離れた位置又は離れる方向である。「近位」又は「近位に」又は「近接した」とは、医師若しくは医療介在医に近い位置又は向かう方向である。「閉塞物」、「血塊」、又は「妨害物」は、互換的に使用される。
【0014】
図4に例示されるように、本発明の機械的血栓除去システム5は、その遠位端20からその反対側の近位端まで長手方向に画定された内腔25を有するマイクロカテーテル10を含む。マイクロカテーテル10は、それ自体が、遠位アクセス、中間カテーテル、又はガイドカテーテル10’を通って長手方向に画定された内腔25’を通って受容又は前進され得る。コアワイヤによって形成されたガイドワイヤ30は、遠位端又は先端40と、それらの間に長手方向を画定する反対側の近位端と、を有する。横方向は、ガイドワイヤの長手方向に対して横断するように画定される。本発明によると、ガイドワイヤ30の遠位端又は先端40は、非外傷性血塊回避構成を有する。本発明によると、「非外傷性血塊回避構成」という用語は、任意の幾何学形状であり得、好ましくは、以下の3つの条件を満たす。第1の条件は、弛緩状態又は非圧縮状態にある間のガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端が、ガイドワイヤが受容されるマイクロカテーテルの内腔の内径よりも大きい、横方向に最も広い横幅を有する(すなわち、ガイドワイヤの近位端から遠位端まで延在する長手方向に対して横断する)ことである。好ましくは、最も広い横幅は、マイクロカテーテルの内径の約2倍である。したがって、最も広い横幅の好ましい範囲は、内径0.021インチを有するマイクロカテーテルに対して約0.030インチ~約0.050インチである。ガイドワイヤの遠位端又は先端のこの拡大された最も広い横幅は、穿通枝血管内への挿入を妨げ、したがって、その中の血管組織への損傷又は破損を防止する。第2の条件は、ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端が、標的血管の内壁の輪郭と相補的になるように、横方向に適合可能であることである。したがって、ガイドワイヤが標的血管の内壁と妨害物との間を通過して、妨害物を横切って、周って、又は越えて、標的血管を通して前進するとき、妨害物のどの部分も、ガイドワイヤによって貫通されず、ガイドワイヤは、標的血管壁に対して非外傷性である(損傷又は破損を引き起こさない)。ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端が満たすべき第3の条件は、外部機械的力の適用を受けたときに、横方向のその最も広い横幅が、マイクロカテーテルの内腔内に適合するように直径が縮小可能であることである。
【0015】
ガイドワイヤ30の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端40は、医師若しくは介入医によって事前成形され得るか、又は形成され得る。非超弾性材料(すなわち、以下に提供される超弾性形状記憶材料の定義を満たすことができない形状記憶合金材料)を使用して、医師若しくは介入医が、その非外傷性遠位先端の近位にコアワイヤの遠位端若しくは先端を事前に成形することができる。別様に、ニチノール(NiTi)などの超弾性形状のメモリ材料(すなわち、非常に高い歪み(最大約10%)に可逆的に変形可能である形状記憶合金材料)で作製されたコアワイヤは、例えば、製造プロセス中にヒートセットによって予め形成されてもよい。ガイドワイヤ全体が、この超弾性材料をそのコアワイヤとして含んでもよく、それにより耐久性が高くなり、したがって、閉塞物、血塊、又は妨害物を横切って複数回通過する場合の再使用に好適である。
【0016】
ガイドワイヤ30の本発明の非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端40の多くの変形又は構成が想到される。いくつかの例示的な実施例を図面に示し、かつ以下に詳細に記載する。他の構成も可能であり、したがって、本発明は、示されかつ記載される実施例にのみ限定されるものではない。
【0017】
図2Aは、弛緩状態又は非圧縮状態にある間(すなわち、外部機械的力の適用を受けない)の
図4のガイドワイヤ30の例示的な予め形成された非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端40の部分拡大図である。この例示的な実施形態では、ガイドワイヤのコアワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端40は、閉ループを形成するレモン形状に類似した構成に予め形成される。単一の小穴又は開口部45は、非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端40内に画定される。
図2Bには、予め形成されたコアワイヤの横方向の最も広い横幅を通る、
図2Aの2B-2B線に沿った断面図が示される。
【0018】
図3A及び
図3Bには、コアワイヤ30’がフック又はシェパードのトリミングとして構成された開ループ内に予め成形された、別の例示的な非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端40’の部分拡大図が示される。ガイドワイヤの予め成形されたフック又はシェパードのトリミング非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端40’を形成するとき、自由終端41は、ガイドワイヤの近位端に向かって戻る方向に延在して、180°を超える(外部機械的力の適用を受けない弛緩された非圧縮状態にある間)湾曲した開ループ区分を形成する。この構成により、ガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位端のいずれかの部分が穿通枝血管に進入することが妨げられる。加えて、コアワイヤの本発明の先端は、近位端に向かって後方に曲げられ(すなわち、脱出されて)、180度よりも大きい湾曲した開ループ区分を形成することにより、単一の点ではなく(
図1に例示される従来のガイドワイヤの鈍い先端と同様に)湾曲表面を提供する。予め成形された遠位端の表面は、閉塞物自体を貫通するのではなく、ガイドワイヤが閉塞物と標的血管の内壁との間を通過することを確実にしながら、標的血管組織への損傷を非外傷的に防止する。
【0019】
図3Aに例示される実施形態では、医師若しくは介入医は、自由終端41を把持し、マイクロカテーテル10の近位端における内腔25内への自由終端41の挿入前に、予め成形されたフック若しくはシェパードのトリミングの遠位端若しくは先端を真っ直ぐにする。ガイドワイヤの遠位端又は先端は、マイクロカテーテルの内腔を通して前進している間、その真っ直ぐな構成又は状態を維持する。マイクロカテーテルの遠位端から出ると、ガイドワイヤの遠位端40’は、
図3Aに示されるように、その元の湾曲した予め成形されたフック又はシェパードのトリミング構成(外部機械的力の適用を受けない弛緩状態又は非圧縮状態)に自動的に戻る。
【0020】
コアワイヤを予備成形又は予備成形して
図2A及び
図3Aに示されるような所望の幾何学形状を形成するのではなく、コアワイヤの遠位部分(円形の横方向断面を有する)は、代替的に、平坦化され、次に、所望の幾何学形状に切断又は型打ちされて、非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端を形成し得る。
図5Aに示される例示的な実施形態では、以後「平面パドル形状」40’’と称され、コアワイヤは、実質的に平面であり、コアワイヤのその残りの部分(平坦化されていない部分)の円形直径に対してその厚さが縮小されるように平坦化されている。所望の厚さまで平坦化されると、平面遠位端若しくは先端は、次に所望の形状(例えば、パドル形状)に切断又は型打ちされて、典型的には約0.0005インチ~約0.010インチの範囲の厚さ、好ましくは約0.001インチ~約0.005インチの範囲の厚さを有する、薄い支持構造体又は基材50を形成する。パドル形状の遠位端又は先端は、代替的に、溶接、はんだ付け、又は接合などによって、別個のコアワイヤの端上に、同一の指定された厚さ範囲を有する予め形成された平面パドル形状の遠位端又は先端を組み立てることによって達成され得る。一緒に組み立てられるか又は接合された2つの別個の構成要素は、パドルが組み立てられる前に形成された平面パドル及びコアワイヤが異なる材料で作製される用途に特によく適している。
図5Bの断面図に例示されるように、外側被覆又は層55は、支持構造体50の外側表面に適用されてもよい。外側被覆又は層55は、1つ若しくは2つ以上の被覆、コーティング層、又はフィルムを含み得る。例えば、外側被覆若しくは層55は、ポリマージャケットの外側表面に直接適用される潤滑性コーティング、例えば親水性材料を用いて又は用いずに、支持構造体若しくは基材50の外側表面に直接適用されるポリマージャケットを含み得る。外側ジャケットはまた、先端の蛍光透視可視性を向上させるために放射線不透過性充填剤を含んでもよい。
【0021】
平面パドル形状の遠位端又は先端40’’は、ガイドワイヤの近位端から遠位端までの方向に延在する、その長手方向軸60(
図6)に沿った非対称な設計を有し得る。このような非対称設計は、ガイドワイヤがマイクロカテーテル10の内腔25を通して後方に後退されるときに、パドル形状の遠位端又は先端の対向する横方向縁部を互いに向かって互いに向かってチューブ又は円筒に包むか、カールするか、又は巻くことを補助する。結果として、ガイドワイヤは、最小限の力でマイクロカテーテルの遠位端を通して後退又は引き戻されて得る。マイクロカテーテルの内腔内の平面パドル形状の遠位端又は先端40’’の横方向縁部をこのように包むか、カールするか、又は巻くことは、人の舌を巻くことと類似している。
図7は、その遠位端20を通してマイクロカテーテルの内腔内に後退されるか、又は引き戻された平面パドル形状の遠位端又は先端40’’の部分図の例示であり、パドルの横方向縁部を互いに向かって包むか、カールするか、又は巻く。互いに向かって包まれるか、カールされるか、又は巻かれると、対向する横方向縁部は、必ずしも必要ではないが、互いに物理的に接触し得る。更に、横方向縁部が、包まれるか、カールされるか、又は巻かれたときに互いに重なり合い、これが有益なことに、より広い幅のパドルがマイクロカテーテルの内腔内に適合することを可能にすることは、想到され、かつ本発明の意図される範囲内にある。マイクロカテーテル10の内腔25から出ると、ガイドワイヤのパドル形状の遠位端又は先端40’’は、その先の平面弛緩状態又は非圧縮状態(外部機械的力の適用を受けない)に自動的に復元される(
図5Aに示されるように)。
【0022】
パドルは、
図5A及び
図6に示されるように、その弛緩状態又は非圧縮状態にある間(適用された外部機械的力を受けない)、横方向65(ガイドワイヤの近位端から遠位端まで長手方向60に対して横断する)に沿ったその最も広い横幅(WW)は、マイクロカテーテル10の内腔25の内径(ID)よりも大きく、パドルが、ガイドワイヤが進入するのを防止することを意図される、穿通枝血管の直径よりも広い。最も広い最大横幅は、マイクロカテーテルの内径の約2倍である。例えば、弛緩状態又は非圧縮状態にある間に最も広い横幅(WW)を有するパドルは、好ましくは、約0.021インチの内径を有するマイクロカテーテルに対して、約0.030インチ~約0.050インチの範囲である。
【0023】
パドル形状の遠位端はまた、使用される材料及びその平坦な厚さに基づいて十分に可撓性であり、その結果、ガイドワイヤがマイクロカテーテルを通って後退されるか、又は引き戻されるとき、内腔のより小さい内径(ID)は、パドル形状の遠位端上に外部機械的力を適用して、内腔の内径よりも小さい直径でそれをカールさせ、かつ縮小させる。サイズがより大きいにもかかわらず、この圧縮状態にある間のパドルは、
図7に表されるように、マイクロカテーテル10の内腔25を容易に通過することができる。この圧縮状態では、包まれるか、カールされるか、又は巻かれたパドル形状の遠位端の最も広い直径(WD)は、マイクロカテーテル10の内腔25の内径(ID)よりわずかに小さい。
【0024】
コアワイヤの平坦な遠位端は、そのパドル形状(
図10A及び
図10B)に切断、型打ち、又は組み立てられた後に、平坦なパドル成形された形態内の材料を除去(例えば、切断又は型打ち)することによって更に修正され得る。平坦なパドル形状の遠位端若しくは先端からのこのような材料の除去は、有益なことに、(i)マイクロカテーテルの内腔を通してパドル形状の遠位端若しくは先端を後退させるか、又は引き戻すのに必要な力を最小限に抑えながら、ガイドワイヤの遠位端若しくは先端が血塊と標的血管の内壁との間をより容易にナビゲートすることができるように、可撓性を増加させ、かつ(ii)平坦なパドル形状の遠位端若しくは先端の上でポリマージャケット若しくは他の外側被覆、層、若しくはフィルムを一体化するのにより好適である。単一の中央部分は、平坦なパドル形状の遠位端先端から除去されてもよい。
図11A及び
図11Bに例示される実施例では、パドルの外側周辺部の形状に適合する単一の小穴又は開口部45’。開口部45’は、中央に位置する必要も、パドルの形状に適合する必要もないことに留意されたい。別の例が
図12A及び
図12Bに示されており、材料は、4つの開口部45’’を画定する1つ超の領域内でパドル形態内から除去される。パドルは、所望に応じて、任意の数の1つ又は2つ以上の開口部を有するように設計されてもよく、これらの開口部の各々は、他の開口部の形状及び/又はパドルの外側輪郭の形状に適合し得るが、これは必須ではない。
【0025】
図8A~
図8Cは、血管内に詰まった血塊又は閉塞物3を横切って通過するときの、
図5Aのガイドワイヤの平坦なパドル形状の遠位端の部分図である。
図9の断面図に示されるように、ガイドワイヤの平坦なパドル形状の遠位端40’’は、血塊のいかなる部分も貫通することなく、血塊と標的血管の内壁との間の境界面で血塊3を越えて又は周って通過する。パドル形状の遠位端は、点ではなく表面を形成するため、ガイドワイヤは、標的血管の組織を損傷することなく、標的血管の内壁と血塊との間を容易にナビゲートすることができる。更に、弛緩状態又は非圧縮状態にある(外部機械的力の適用を受けない)間のパドルの拡大幅は、血塊を横切って、越えて、又は周って通過した後のガイドワイヤが穿通枝血管に進入しないことを確実にする。ガイドワイヤのパドル形状の遠位端は、
図9に示されるように、血管の内壁に形状が一致するように容易に適合する。この能力は、血塊を越えて又は周って横断するために必要とされる力を低減し、かつより厄介なフィブリンが豊富な又は密な血塊越えて又は周ってより容易に横断することができる。
【0026】
可視性を助けるために、ガイドワイヤのコアワイヤは、撮像下(例えば、蛍光透視下)で可視の放射線不透過性材料で被覆されてもよい。例えば、放射線不透過性添加剤若しくは充填剤を含有するポリマージャケット若しくは外側被覆70は、
図13に例示されるように、ガイドワイヤ30の外側表面(
図14)及び/又はガイドワイヤ30の外側表面の周りに巻かれた外側コイル75(例えば、プラチナ合金又は他の放射線不透過性材料から作製される)に直接適用され得る。
【0027】
血栓除去処置又は治療中などの操作において、医師又は介入医は、本発明による非外傷性血塊回避構成遠位端又は先端を有するガイドワイヤを、典型的には鼠径部内に位置する動脈内の標的血管へと血管内導入する。ガイドワイヤは、標的血塊、妨害物、又は閉塞物の近位側に面する場所まで脈管構造を通して前進される。ガイドワイヤが適切に位置付けられると、マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルを通って軸方向に画定された内腔を通過するガイドワイヤ上を追跡する。本発明のガイドワイヤの非外傷性血塊回避構成遠位先端は、最初に血塊を横切って前進され、その後、マイクロカテーテルが続く。本発明の非外傷性血塊回避構成及びサイズの遠位端又は先端のため、ガイドワイヤは、標的血管の神経脈管組織を損傷することなく、血塊を周って又は越えて容易に通過するが、血塊の遠位側に到達すると、ガイドワイヤが穿通枝血管に進入することを防止する。ガイドワイヤの遠位端が血塊の遠位側に適切に位置付けられると、マイクロカテーテルは、血塊を周って又は越えてその遠位側へと横断するガイドワイヤ上を追跡する。マイクロカテーテルが血塊の遠位側に位置付けられた状態で、マイクロカテーテルが適所に留まる間、ガイドワイヤは、マイクロカテーテルを通して近位方向に後退されるか、又は引き戻され得る。マイクロカテーテルはまた、遠位アクセス、ガイド、又は中間カテーテルの導入のための支持を提供するために使用され得る。stentriever又は任意の他の血塊回収装置などの機械的血栓除去装置は、マイクロカテーテルを通して妨害物の標的部位まで前進され、かつ血塊又は閉塞物をガイドカテーテル又はシースに回収するために使用され得る。
【0028】
本発明のガイドワイヤは、機械的血栓除去処置で使用するために例示及び記載されているが、ガイドワイヤを用いる全ての神経血管又は血管内医療処置における使用に適用可能である。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施形態に適用されるような本発明の基本的な新規特徴を示し、記載し、かつ指摘してきたが、当業者であれば、例示されたシステム/装置の形態及び詳細、並びにそれらの操作における様々な省略、置換、及び変更を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施し得ることが理解されよう。例えば、同じ結果を達成するために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を実行する要素及び/又は工程のすべての組み合わせは、本発明の範囲内であることは明確に意図するところである。また、記載されるある実施形態から別の実施形態に要素を代用することも完全に意図、想到されるところである。図面は必ずしも一定の比率の縮尺で描かれておらず、それらは本質的に概念的なものにすぎない点も理解されるべきである。したがって、本明細書に添付の特許請求の範囲に示される内容によってのみ限定されるものとする。
【0030】
本明細書に引用されるすべての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は任意の他の参照文献の全容を参照によって本明細書にそれぞれ援用するものである。
【0031】
〔実施の態様〕
(1) 標的血管内に位置する血塊に使用するための血管内医療システムであって、
コアワイヤによって形成されたガイドワイヤであって、近位端から反対側の非外傷性血塊回避構成遠位端まで長手方向に延在し、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端の横方向が、前記ガイドワイヤの前記長手方向に対して横断するように画定されている、ガイドワイヤを備え、前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、前記標的血管の内壁への損傷を防止し、かつ前記ガイドワイヤの任意の部分を穿通枝血管に挿入することを妨げるように設計されている、血管内医療システム。
(2) 前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、以下の条件:
(i)前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、前記標的血管の前記内壁と前記血塊との間を通過するとき、前記標的血管の前記内壁の輪郭と相補的に、前記横方向に適合可能であること、及び
(ii)外部機械的力の適用を受ける圧縮状態にあるとき、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端の前記横方向の最も広い幅が縮小可能であること、を満たす、実施態様1に記載の血管内医療システム。
(3) 内腔を有するマイクロカテーテルを更に備え、前記内腔が、前記マイクロカテーテルを通ってその近位端からその反対側の遠位端まで長手方向に画定されており、前記内腔が内径を有し、
前記ガイドワイヤが、前記マイクロカテーテルの前記内腔を通して受容可能であり、
外部機械的力の適用を受けない非圧縮状態では、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避遠位端が、前記内腔の前記内径の2倍を超える前記横方向の前記最も広い幅を有する、実施態様2に記載の血管内医療システム。
(4) 前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、平面幾何学形状、及び前記コアワイヤの残りの非平坦部分の外径よりも小さい厚さを有する前記コアワイヤの平坦な遠位部分である、実施態様1に記載の血管内医療システム。
(5) 前記コアワイヤの前記平坦な遠位部分が、パドル幾何学形状を有する、実施態様4に記載の血管内医療システム。
【0032】
(6) 前記平坦な遠位部分が、その中に画定された少なくとも1つの開口を有する、実施態様4に記載の血管内医療システム。
(7) 前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、幾何学形状に予め形成された又は予め成形された前記コアワイヤである、実施態様1に記載の血管内医療システム。
(8) 前記予め形成された又は予め成形されたコアワイヤの前記幾何学形状が、閉ループである、実施態様7に記載の血管内医療システム。
(9) 前記閉ループが、レモン形状を形成する、実施態様8に記載の血管内医療システム。
(10) 前記非外傷性血塊回避構成遠位端の前記幾何学形状は、外部機械的力の適用を受けない非圧縮状態である間、自由終端を有する180°超の湾曲区分を形成する開ループであり、前記外部機械的力を受けない前記非圧縮状態である間、前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、脱出構成にある、実施態様7に記載の血管内医療システム。
【0033】
(11) 前記ガイドワイヤ及び前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、一緒に組み立てられた別個の構成要素である、実施態様1に記載の血管内医療システム。
(12) 標的血管内に位置する血塊に使用するための血管内医療システムを使用する方法であって、前記血管内医療システムが、内腔を有するマイクロカテーテルを含み、前記内腔が、前記マイクロカテーテルを通ってその近位端からその反対側の遠位端まで長手方向に画定されており、前記内腔が内径を有し、前記血管内医療システムが、コアワイヤによって形成され、かつ前記マイクロカテーテルの前記内腔を通して受容可能なガイドワイヤを更に含み、前記ガイドワイヤが、近位端から反対側の非外傷性血塊回避構成遠位端まで長手方向に延在し、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端の横方向が、前記ガイドワイヤの前記長手方向に対して横断するように画定されており、前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、前記標的血管の内壁への損傷を防止し、かつ前記ガイドワイヤの任意の部分を穿通枝血管に挿入することを妨げるように構成されており、前記方法が、
前記標的血管を通して、前記血塊の近位側に面する場所まで、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端を前進させる工程と、
前記マイクロカテーテルの前記内腔内に受容された前記ガイドワイヤ上の前記マイクロカテーテルを、前記血塊の前記近位側に面する前記場所まで追跡する工程と、
前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端のいかなる部分も前記血塊を貫通することなく、前記血塊の前記近位側の位置から前記血塊の遠位側に面する位置まで、前記標的血管の前記内壁と前記血塊との間に前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端を通過させる工程と、
前記マイクロカテーテルの前記内腔内に受容された前記ガイドワイヤ上の前記マイクロカテーテルを、前記血塊の前記遠位側に面する前記位置まで誘導する工程と、を含む、方法。
(13) 前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、以下の条件:
(i)非圧縮状態の前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避遠位端が、前記マイクロカテーテルの前記内腔の前記内径の2倍を超える、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端の前記横方向で最も広い幅を有すること、
(ii)前記標的血管の前記内壁と前記血塊との間を前記標的血管内で前進するとき、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、前記標的血管の前記内壁の輪郭に相補的に、前記横方向に適合可能であること、及び
(iii)前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端の前記横方向の前記最も広い幅が、外部力の適用を受けたときに、前記マイクロカテーテルの前記内腔内で受容可能であるように、直径が縮小可能であること、を満たす、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、平面幾何学形状、及び前記コアワイヤの残りの非平坦部分の直径よりも小さい厚さを有する前記コアワイヤの平坦な遠位部分である、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、幾何学形状に予め形成された又は予め成形された前記コアワイヤである、実施態様12に記載の方法。
【0034】
(16) 前記幾何学形状が、閉ループである、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記閉ループが、レモン形状を形成する、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記非外傷性血塊回避構成遠位端の前記幾何学形状は、外部機械的力の適用を受けない非圧縮状態である間、自由終端を有する180°超の湾曲区分を形成する開ループであり、外部機械的力を受けない前記非圧縮状態である間、前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、脱出構成にある、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記マイクロカテーテルの前記内腔内に後退させられたとき、前記ガイドワイヤの前記非外傷性血塊回避構成遠位端を横方向にカールし、それによって、前記マイクロカテーテルの前記内腔の前記内径よりも小さくなるようにその直径を縮小させる工程を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(20) 前記ガイドワイヤ及び前記非外傷性血塊回避構成遠位端が、一緒に組み立てられた別個の構成要素である、実施態様12に記載の方法。