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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240129BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240129BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
G06F3/12 329
G06F3/12 353
G06F3/12 305
G06F3/12 308
B41J29/38 350
H04N1/401
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019144469
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2020057367
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2018182954
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村澤 孝大
(72)【発明者】
【氏名】土屋 興宜
(72)【発明者】
【氏名】望月 勇吾
(72)【発明者】
【氏名】山縣 辰広
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真夫
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-108569(JP,A)
【文献】特開2013-180418(JP,A)
【文献】特開2011-211506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
B41J29/00-29/70
H04N1/40-1/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1記録装置で印刷される第1の複数パッチを含む印刷物に関する第1情報を取得する第1取得手段であって、前記第1の複数パッチの各々において、第1方向に所定の幅を有し、かつ前記第1方向と交差する第2方向に伸びる複数の線が、前記第1方向に略同一の間隔で設けられ、前記第1の複数パッチは、第1パッチと第2パッチとを含み、前記第1パッチに含まれる前記複数の線間における第1の略同一の間隔は、前記第2パッチに含まれる前記複数の線間における第2の略同一の間隔と異なる、前記第1取得手段と、
所定の印刷データにおける線の幅と、前記所定の印刷データに基づいて第2記録装置で印刷される印刷物における線の幅と、の関係を示す第2情報を取得する第2取得手段と、
前記第1情報及び前記第2情報に基づき、前記第2記録装置で印刷するためのデータを処理する際に用いられる線の幅を調整するための調整値を決定する決定手段と、
を有し、
前記第1情報は、前記第1記録装置で印刷された複数パッチのうちの、前記第1方向において隣り合っている2つの線がくっついている少なくとも1つのパッチを示す情報であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記調整値のデータを前記第2記録装置に伝送する伝送手段を更に有し、
前記伝送手段は、プリンタコマンドを用いて、または、前記情報処理装置で生成される前記印刷データにプリンタコマンドを付加することで、前記調整値のデータを前記第2記録装置に伝送することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2記録装置は、前記情報処理装置から伝送された前記調整値のデータに基づき前記調整値を設定する設定手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記印刷データにおいて、描画対象の線の始点と終点との座標が指定されており、
前記描画対象の線の角度に応じて、前記設定手段によって設定された前記調整値を補正する補正手段を更に有することを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第2記録装置は、前記設定手段により設定された前記調整値に基づき、前記印刷データに含まれる線幅を示す値を変更する変更手段を更に有することを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記印刷データは、用紙種と印刷品位とを指定する印刷条件を含み、
前記第2記録装置は、印刷条件に従って記録ヘッドの走査速度を決定する第1決定手段を更に有することを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第2記録装置は、
前記印刷条件で指定された用紙種に対応する前記調整値の変化率を決定する、第2決定手段と、
前記走査速度に対応する前記調整値の変化率を決定する、第3決定手段と、
前記第2決定手段によって決定された変化率と、前記第3決定手段によって決定された変化率とに基づき、前記設定手段によって設定された前記調整値を補正する補正手段と、
を更に有することを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1取得手段は、前記第1記録装置で印刷した第2の複数パッチを含む印刷物に関する第3情報をさらに取得し、
前記第2の複数パッチのそれぞれにおいて、前記第2方向に所定の幅を有し且つ前記第1方向に延びる線が、前記第2方向に略同一の間隔で、複数設けられており、
前記第2の複数パッチは、第3パッチと第4パッチとを含み、前記第3パッチに含まれる前記複数の線間における第3の略同一の間隔は、前記第4パッチに含まれる前記複数の線間における第4の略同一の間隔と異なる、
前記決定手段は、前記第3情報にさらに基づき、前記第2記録装置に対応する前記調整値を決定することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記決定手段は、前記第1方向に延びる線と前記第2方向に延びる線とのそれぞれに対する前記調整値を決定することを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第1情報は、前記第1記録装置で印刷された複数パッチのうちの、前記第1方向において隣り合っている2つの線がくっついているパッチの全てを示す情報であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第1の複数パッチを印刷するための印刷データにおいて、各パッチに含まれる複数の線は、前記第1方向において間をあけて配置されており、
前記第1情報は、前記第1の複数パッチを含む印刷物において前記第1方向において隣接する2つの線がくっついているパッチのうち、対応する前記印刷データにおいて隣接する2つの線の間隔が最も大きい1つのパッチを示す情報であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記第1の複数パッチを印刷するための印刷データにおいて、各パッチに含まれる複数の線は、前記第1方向において間をあけて配置されており、
前記第1情報は、前記第1の複数パッチを含む印刷物において前記第1方向において隣接する2つの線がくっついているパッチのうち、対応する前記印刷データにおいて隣接する2つの線の間隔が最も大きい1つのパッチと、前記第1の複数パッチを含む印刷物において前記第1方向において隣接する2つの線がくっついていないパッチのうち、対応する前記印刷データにおいて隣接する2つの線の間隔が最も小さい1つのパッチと、を示す情報であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第1情報をユーザから受け付けるための入力手段をさらに有し、
前記第1取得手段は、前記入力手段から前記第1情報を取得することを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
ユーザに前記第1情報の入力を促すための表示を行う表示手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記第1パッチにおいて、前記第1方向において隣接する第1の線と第2の線との間の間隔と、前記第1方向において隣接する第2の線と第3の線との間の間隔とは、同一であり、
前記第2パッチにおいて、前記第1方向において隣接する第4の線と第5の線との間の間隔と、前記第1方向において隣接する第5の線と第6の線との間の間隔とは、同一である、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項16】
制御手段を有する情報処理装置の制御方法であって、
前記制御手段が、第1記録装置で第1の複数パッチを含む印刷物を印刷する場合に、出力に関する第1情報を取得するステップであって、前記第1の複数パッチの各々において、第1方向に所定の幅を有し、かつ前記第1方向と交差する第2方向に伸びる複数の線が、前記第1方向に略同一の間隔で設けられ、前記第1の複数パッチは、第1パッチと第2パッチとを含み、前記第1パッチに含まれる前記複数の線間における第1の略同一の間隔は、前記第2パッチに含まれる前記複数の線間における第2の略同一の間隔と異なる、ステップと、
前記制御手段が、所定の印刷データにおける線の幅と、該所定の印刷データに基づいて第2記録装置で印刷される印刷物における線の幅と、の関係を示す第2情報を取得するステップと、
前記制御手段が、前記第1情報及び前記第2情報に基づき、前記第2記録装置で印刷するためのデータを処理する際に用いられる線の幅を調整するための調整値を決定するステップと、
を有し、
前記第1情報は、前記第1記録装置で印刷された複数パッチのうちの、前記第1方向において隣り合っている2つの線がくっついている少なくとも1つのパッチを示す情報であることを特徴とする方法。
【請求項17】
コンピュータに、制御手段を有する情報処理装置の制御方法であって、前記制御手段が、第1記録装置で第1の複数パッチを含む印刷物を印刷する場合に、出力に関する第1情報を取得するステップであって、前記第1の複数パッチの各々において、第1方向に所定の幅を有し、かつ前記第1方向と交差する第2方向に伸びる複数の線が、前記第1方向に略同一の間隔で設けられ、前記第1の複数パッチは、第1パッチと第2パッチとを含み、前記第1パッチに含まれる前記複数の線間における第1の略同一の間隔は、前記第2パッチに含まれる前記複数の線間における第2の略同一の間隔と異なる、ステップと、前記制御手段が、所定の印刷データにおける線の幅と、該所定の印刷データに基づいて第2記録装置で印刷される印刷物における線の幅と、の関係を示す第2情報を取得するステップと、前記制御手段が、前記第1情報及び前記第2情報に基づき、前記第2記録装置で印刷するためのデータを処理する際に用いられる線の幅を調整するための調整値を決定するステップと、を有し、
前記第1情報は、前記第1記録装置で印刷された複数パッチのうちの、前記第1方向において隣り合っている2つの線がくっついている少なくとも1つのパッチを示す情報であることを特徴とする方法を実行させるための、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷機間の出力を合わせる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図面を印刷するとき、線幅の情報はユーザが図面からその情報(図面情報とする)を読み取る上でとても重要な情報である。例えば、太い線で外形線を表現し、細い線で寸法線や引き出し線を表現する。しかし、印刷機(記録装置ともいう)の様々な要因によって印刷機ごとに線幅が異なることから、異なる印刷機を用いて印刷した場合、異なる線幅で印刷される結果、ユーザが図面情報を誤認してしまう虞がある。
【0003】
一方、印刷機自身の変動要因による線幅変化を調整するため、線幅調整機能を備えた印刷機がある。このような機能は自機種の変動要因に関する補正機能となっていることが多い。特許文献1には、線幅を太くする画素数を手動で入力することにより、線幅を一律で太くする線幅調整機能が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の手法を用いて、異なる記録装置間で線幅を合わせようとする場合、目標の記録装置に合うように線幅調整値の変更を繰り返しながら印刷を行い、ユーザが目視によって比べながら、線幅が一番合う線幅調整値を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-15589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、繰り返し目視で比べながら線幅調整値を決定するため、ユーザにとって非常に煩雑な作業となる。
【0007】
そこで本開示は、上記の課題に鑑み、同じ画像データに基づいて複数の記録装置でそれぞれ印刷された印刷物上の線幅を合わせるための線幅調整値をユーザが容易に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、第1記録装置で印刷される第1の複数パッチを含む印刷物に関する第1情報を取得する第1取得手段であって、前記第1の複数パッチの各々において、第1方向に所定の幅を有し、かつ前記第1方向と交差する第2方向に伸びる複数の線が、前記第1方向に略同一の間隔で設けられ、前記第1の複数パッチは、第1パッチと第2パッチとを含み、前記第1パッチに含まれる前記複数の線間における第1の略同一の間隔は、前記第2パッチに含まれる前記複数の線間における第2の略同一の間隔と異なる、前記第1取得手段と、所定の印刷データにおける線の幅と、前記所定の印刷データに基づいて第2記録装置で印刷される印刷物における線の幅と、の関係を示す第2情報を取得する第2取得手段と、前記第1情報及び前記第2情報に基づき、前記第2記録装置で印刷するためのデータを処理する際に用いられる線の幅を調整するための調整値を決定する決定手段と、を有し、前記第1情報は、前記第1記録装置で印刷された複数パッチのうちの、前記第1方向において隣り合っている2つの線がくっついている少なくとも1つのパッチを示す情報であることを特徴とする情報処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、同じ画像データに基づいて複数の記録装置でそれぞれ印刷された印刷物上の線幅を合わせるための線幅調整値をユーザが容易に設定できるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態における印刷システムの構成を示すブロック図。
図2】記録ヘッドの走査と、サテライトを含むインク滴の着弾との関係を示す図。
図3】線の向きと、線幅との関係を示す図。
図4】線幅が変化する要因を示す図。
図5】第1の実施形態における線幅調整値を求める処理のフローチャート。
図6】第1の実施形態における複数の線幅検知画像を有するパッチ画像を示す図。
図7】線幅検知画像の印刷結果を示す図。
図8】第1の実施形態における線幅検知画像を選択するためユーザに提示される画面。
図9】第1の実施形態における線幅補正処理を伴う印刷処理のフローチャート。
図10】第1の実施形態における線幅調整値の算出例を示す図。
図11】第1の実施形態における膨張フィルタを示す図。
図12】第1の実施形態における縮小フィルタを示す図。
図13】第1の実施形態における最も簡単な線幅検知画像を模式的に表した図。
図14】第2の実施形態における線幅補正処理を伴う印刷処理のフローチャート。
図15】第2の実施形態における線幅調整値の変化率を決定するために用いられるテーブル。
図16】第1の実施形態で用いるテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。但し、以下に記載されている内容はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態における印刷システムの構成を説明するブロック図である。図1に示すように、印刷システムは、ホストPC(画像処理装置、情報処理装置などと呼ぶ)101と、第1の記録装置108と、第2の記録装置116とを有する。尚、第2の記録装置116は、線幅を合わせる際にターゲットとなる記録装置であることから、目標記録装置116と呼ぶ。
【0013】
画像処理装置101とは具体的には、ホストPCやタブレットPCなどである。画像処理装置101において、CPU102は、HDD104に格納されているプログラムに従ってRAM103をワークエリアとしながら各種処理を実行する。例えば、CPU102は、ユーザがタッチパネル(不図示)を用いて入力した指示に対応するコマンドをキーボード・マウスインターフェース106(以下、インターフェースをI/Fと略記する)を介して受信する。そして、CPU102は、受信したコマンドやHDD104に格納されているプログラムに従って記録装置108が記録可能な画像データを生成し、該生成した画像データを記録装置108に送信する。
【0014】
また、画像処理装置101(CPU102)は、データ転送I/F107を介して記録装置108から受信した画像データに対し、HDDに格納されているプログラムに従って所定の処理を行う。CPU102は、その処理結果などの様々な情報をディスプレイI/F105を介して不図示のディスプレイに表示する。画像処理装置101(CPU102)は、目標記録装置116に対しても、前述の記録装置108に対する処理と同様の処理を行うことができる。
【0015】
一方、記録装置108において、CPU111は、ROM113に格納されているプログラムに従ってRAM112をワークエリアとしながら各種処理を実行する。また、記録装置108は、高速な画像処理を行うための画像処理アクセラレータ109を備える。画像処理アクセラレータ109は、CPU111より高速な画像処理を実行可能なハードウェアである。画像処理アクセラレータ109は、CPU111が画像処理に必要なパラメータとデータをRAM112の所定のアドレスに書き込むことにより起動される。画像処理アクセラレータ109は、RAM112に書き込まれたパラメータとデータを読み込んだ後、このデータに対し所定の画像処理を実行する。尚、画像処理アクセラレータ109は必須な構成要素ではなく、記録装置108が画像処理アクセラレータ109を備えずとも、同等の処理をCPU111が実行して良い。また、RAM112に書き込むパラメータはROM113に格納されていても良いし、フラッシュメモリやHDDなどのストレージ(不図示)に格納されていても良い。
【0016】
ここで、CPU111または画像処理アクセラレータ109が行う所定の画像処理について説明する。この所定の画像処理は、入力された印刷データを各走査におけるインクのドット形成位置を示すデータにまで加工する処理であり、入力された印刷データに対する色変換処理と量子化処理とが含まれる。色変換とは、入力された印刷データを、記録装置で扱うインク色のデータに変換する処理である。例えば、入力された印刷データに含まれる画像データが、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標で画像を示す場合、sRGB画像データ(即ち、各画素がRGBそれぞれの色値を持つ画像データ)を、記録装置で扱うインク色の画像データに変換する。尚、本例における「記録装置で扱うインク色の画像データ」とは、各画素がKCMYそれぞれの色値を持つ、ビットマップ形式の画像データである。尚、本明細書では、レッドをR、グリーンをG、ブルーをBとそれぞれ一文字で表し、同様に、各インク色も一文字で、具体的には、ブラックをK、シアンをC、マゼンダをM、イエローをYと表す。
【0017】
前述の色変換は、マトリクス演算処理や三次元LUTを用いた処理等の既知の手法を用いて実現される。前述したように、本実施形態の記録装置108は、4色(つまりKCMY)のインクを用いることから、RGB信号の画像データは、K、C、M、Y各8ビットの色信号から成る画像データに変換される。各インク色の色信号の値は、各インクの付与量に対応する。尚、用いるインクとしては、K、C、M、Yの4色のインクを例に挙げたが、画質向上の為に、濃度の薄いライトシアン(Lc)やライトマゼンタ(Lm)やグレー(Gy)のインク等、その他のインクを用いても良い。そのような場合は、用いるインクに応じた色信号が生成されることになる。
【0018】
色変換処理の後、インクの色信号を持つ画像データに対して量子化処理を行う。この量子化処理は、画像データの階調のレベル数を下げる処理である。本実施形態では、各画素について画像データの値と比較するための閾値を配列したディザマトリックスを用いて量子化を行う。このような量子化処理を経て、最終的には各ドット形成位置にドットを形成するか否かを示す2値データを生成する。尚、マルチパス方式で印刷する場合には、各回の走査に対応した間引き画像用のデータを生成するため、量子化処理後のデータに対してマスクパターン等を用いて、画像を間引く処理を行う。
【0019】
所定の画像処理を終えた後、記録ヘッドコントローラ114によって、記録ヘッド115へ記録データが送信される。これとともに、CPU111は、記録ヘッド115を動作させるキャリッジモータを駆動し、さらに紙を搬送するための搬送モータも駆動する。これにより、記録ヘッド115は紙上を走査しながらインクを紙面に吐出する結果、紙上に画像が形成される。記録ヘッド115は、Kインクを吐出するノズル列115K、Cインクを吐出するノズル列115C、Mインクを吐出するノズル列115M、Yインクを吐出するノズル列115Yを有する。
【0020】
記録ヘッド115において、1つの吐出口(ノズルともいう)からインクが吐出される際、インクの表面張力の影響から複数のインク滴となって吐出される。本明細書では、各ノズル列が伸長する方向と交差する方向に沿って、記録ヘッドが走査するものとして、この方向を主走査方向と呼ぶ。一方、紙が搬送される方向を副走査方向と呼ぶ。この主走査方向および副走査方向の定義については、記録装置108と目標記録装置116とで共通のものとする。
【0021】
本明細書では、紙に到達するインク滴のうち最も大きいインク滴を主滴、それ以外のインク滴をサテライトと記載する。サテライトは1つとは限らず、複数できることもある。主滴とサテライトの着弾する位置は、主に、図2に示すように記録ヘッドの走査速度(以下、単純に「走査速度」と記載する)、記録ヘッドと紙との間の距離によって決まる。
【0022】
画像処理装置101は、通信回線118を介して、記録装置108および目標記録装置116と接続されている。但し、記録装置108と目標記録装置116とが常に同時に画像処理装置101と接続されている必要はなく、必要に応じて切断されていても良い。尚、本例では、目標記録装置116がインクジェットプリンタであるものとして説明するが、目標記録装置は、レーザービームプリンタや複写機、LEDプロッタなどの記録装置であっても良い。また、本例では、通信回線118はイーサネット(登録商標)であるものとして説明するが、通信回路は、USBハブ、無線のアクセスポイントを用いた無線通信ネットワーク、Wifiダイレクト通信機能を用いた接続であっても良い。
【0023】
<線幅特性の変化の発生要因について>
以下、線幅特性の変化の発生要因を説明する。図3は、主滴の着弾位置とサテライトの着弾位置とのずれに起因する線幅の変化を模式的に表した図である。図3(a)は、副走査方向に沿って伸長する線を印刷した結果を表す図であり、図3(b)は、主走査方向に沿って伸長する線を印刷した結果を表す図である。図3(a)に示す線では、主滴301とサテライト302が横並びになり、線幅が主滴の直径より大きくなっている。これに対し、図3(b)に示す線では、主滴303のサテライトの上に主滴304が着弾する結果、主滴303のサテライトは表面に見えてこない。従って、図3(b)に示す線の線幅は、主滴303の直径と同じになる。このように、同じ線幅の線を紙面上に印刷する場合であっても、主走査方向に沿って伸長する線より副走査方向に沿って伸長する線の方が太く印刷されることになる。
【0024】
線幅特性の変化の発生要因は他にもある。図4で表しているように、具体的な発生要因として、インクの吐出タイミングずれや紙の搬送ずれによる主滴の着弾位置の誤差や、主滴の紙面上におけるドット径と用紙とインクとによるインクの滲み度合い等が挙げられる。
【0025】
<線幅調整値を求める処理について>
以下、本実施形態における、目標記録装置116の線幅に合わせるための線幅調整値を求める処理について、図5を用いて説明する。
【0026】
ステップS501において、画像処理装置101は、線幅検知画像のデータを含む印刷データを目標記録装置116に送信し、目標記録装置116は、画像処理装置101から送信された印刷データに基づき、線幅検知画像を用紙に印刷する。「線幅検知画像」とは、目標記録装置116で印刷させることにより、目標記録装置116の線幅特性として線幅変化量を検知するための画像である。尚、以下では、「ステップS~」を単純に「S~」と記載する。
【0027】
ここで、線幅検知画像について、図6を用いて説明する。図6は、複数(本例では16個)の線幅検知画像を含む画像(パッチ画像とする)の印刷画像データを表す図である。パッチ画像601に含まれる各線幅検知画像は、1200dpiの解像度における1画素の幅の線(1画素線とする)から成る画像であり、線の方向と周波数特性との組み合わせパターンがそれぞれ異なる。
【0028】
具体的に、画像データがベクターデータである場合について述べる。この場合、図中のタテの行に示す様に、縦方向(第2方向とする)に延び、且つ、横方向(第1方向とする)の線幅が0.21mmである黒色の線が複数設けられた線幅検知画像が複数含まれる。各線幅検知画像の複数の線は、横方向に同じ間隔で配置されている。そして、それぞれの線幅検知画像は、横方向に隣接する2つの線の間隔が互いに異なる。図中のタテの行において、(1)の線幅検知画像は、複数の線が0.21mmの間をあけて配置され、(2)の線幅検知画像は、該複数の線が0.42mmの間をあけて配置される。また、(3)の線幅検知画像は、該複数の線が0.63mmの間をあけて配置され、(4)の線幅検知画像は、該複数の線が0.84mmの間をあけて配置される。このように、パッチ画像は、図の横方向に隣接する2つの線の距離が次第に広くなっていく複数の線幅検知画像を含んでいる。
【0029】
これに対し、画像データがラスターデータである場合、1画素線が1画素の間隔を空けて配置された画像、1画素線が2画素の間を空けて配置された画像というように、パッチ画像は、隣接する2つの線の間隔の画素数が次第に増えていく画像を含んでいる。横方向で隣り合う画像間で、隣接する2つの線の間隔が1画素ずつ増えていくように複数の線幅検知画像を配置することで、線幅を高精度に検知することができる。
【0030】
また、図6に示すように、パッチ画像601は、縦方向に延びる線(縦線)が横方向に縞状に並ぶ複数の線幅検知画像と、横方向に延びる線(横線)が縦方向に縞状に並ぶ複数の線幅検知画像とを含んで良い。さらに、図6に示すように、パッチ画像は、ななめ方向に延びる線が縞状に並ぶ複数の線幅検知画像を含んでも良い。このように、ななめの線が並ぶ線幅検知画像を含ませることは、前述したサテライトの影響に対して有効であり、サテライトの影響を受ける主走査方向と副走査方向との線に関して、各線幅を高精度に検知することを可能にする。
【0031】
印刷するデータは、ビットマップなどのラスターデータやベクターデータなどがある。ラスターデータが、圧縮アルゴリズムなどで圧縮されている場合は、デコード処理を行う。圧縮データのフォーマットとしては、不可逆圧縮のJPEG(Joint Picture Expert Group)で規定されている圧縮方法と、可逆圧縮のRL(Run Length)圧縮方法とがある。圧縮方法としては、既存の如何なる方法を用いても構わない。非圧縮データを転送する場合、画質劣化無く転送することができる。ベクターデータを転送する場合、文字などベクターデータにできるものは限定されているが、非圧縮データより小さいデータ量で画質劣化無く転送することができる。ベクターデータには、PDL(ページ記述言語)や図面用のプリンタ制御コードなどがある。この場合、線幅を数値として定義することができる。可逆圧縮のラスターデータやベクターデータであれば、劣化なくデータをプリンタに伝えることができるため、より正確な線幅検知を行うことができる。
【0032】
画像データがベクターデータであれば、記録装置側でベクターデータからラスターデータに変換するときの記録装置の特性も検知することができる。例えば、ベクターデータにおいて線幅が数値(具体的には画素数)で定義されているとき、1.5画素を、ラスターデータでは切り捨てとして1画素で表現するのか、或いは、切り上げとして2画素で表現するのかの違いなどを検知することができる。但し、このような違いを検知する場合、パッチ画像は、互いに線幅が異なる複数の線幅検知画像を含む必要がある。例えば、線幅0.21mmの複数の線が配置された線幅検知画像、線幅0.31mmの複数の線が配置された線幅検知画像、線幅0.41mmの複数の線が配置された線幅検知画像などである。
【0033】
図5の説明に戻る。S502において、S501で印刷した線幅検知画像のなかから、隣接する2つの線が繋がり、線間の隙間を視認できない線幅検知画像をユーザが選択することにより、目標記録装置116で印刷された線の線幅を検知する。「繋がっている」とは、線幅変化が原因で隣り合った線がくっついていることを指し、この繋がっている状態について、図7を用いて説明する。図7は、パッチ画像が印刷された印刷物を示す図である。画像701~708は、印刷物における複数の線幅検知画像に対応する。画像701から画像703においては、配置された複数の線が繋がっており、画像704から画像708においては繋がっていない。そのため、隣接する2つの線の隙間が視認できない画像として選択される画像は、画像701から画像703である。一実施形態としては、画像処理装置101のCPU102が、図8のような選択用画面801と、隙間が視認できない全ての画像を選択することをユーザに促すメッセージ等とを、ディスプレイI/F105に表示させる。図8の選択用画面801は、破線802で囲まれた画像がユーザに選択された状態を示す。このように、ユーザに画像を選択させることで、選択された画像を示す情報の入力を受け付ける。ユーザに隙間が視認できない全ての画像を選択させることにより、隙間を視認できない画像のうち、隣接する2つの線の間隔が最も大きい画像がどの画像であるかがわかるため、線幅調整値を容易に設定することが可能となる。他の実施形態としては、線幅検知画像それぞれに番号が振られており、繋がっている線幅検知画像に対応する番号を、画像処理装置101または記録装置108にユーザが入力する形態が考えられる。また、印刷物上の線幅を示す情報として、隣接する2つの線が接触する間隔を示す情報を取得することができれば、上記形態に限られない。例えば、隙間を視認できない画像のうち隣接する2つの線の間隔が最も大きい1つの画像をユーザに選択させるように促す表示をしてもよい。また、隙間を視認できる画像のうち隣接する2つの線の間隔が最も小さい1つの画像をユーザに選択させるように促す表示をしてもよい。
【0034】
S503において、S502で選択された画像を示す情報に基づき、目標記録装置116における変化後の線幅値を推定し、記録装置108の線幅調整値を決定する。変化後の線幅値とは、用紙に印刷された印刷物上の線の線幅値を意味する。印刷された線の線幅は、例えばベクターデータにおいて規定していた線幅から、印刷のための画像データの処理および印刷動作による変化要因によって変化している可能性がある。本ステップを実行する主体に関しては、S502の入力先が画像処理装置101の場合、主体は画像処理装置101であり、S502の入力先が記録装置108の場合、主体は記録装置108である。
【0035】
以下、S503における、目標記録装置116における印刷後の線幅値の推定手法について、図7を用いて説明する。用紙を搬送する方向に対応する副走査方向の線である縦線からなる「タテ」の行の4つの線幅検知画像を参照する。すると、線幅0.21mmの線が0.21mmの間を空けて配置された線幅検知画像が印刷された画像701と、同様の線が0.42mmの間を空けて配置された線幅検知画像が印刷された画像703とにおいて、横方向に隣り合う線が接触していることが分かる。このことから、画像データ上で副走査方向において線幅0.21mmである線は、印刷物上で線幅0.63mmの線であると推定できる。また、記録ヘッドが走査する方向である主走査方向の線である横線から成る「ヨコ」の行の4つの線幅検知画像を参照する。すると、画像データ上で0.21mmの線幅で0.21mmの間を空けて配置された線幅検知画像が印刷された画像702において、隣り合っている線がくっついている。このことから、主走査方向において線幅0.21mmである線は、印刷物上で線幅0.42mmの線であると推定できる。
【0036】
次に、S503における、記録装置108の線幅調整値の決定手法について説明する。S503にて線幅調整値を決定するために、記録装置108の線幅に関する特性を取得する。記録装置108の線幅に関する特性は、記録装置108が印刷する際の処理において、線幅に影響を与える要因についての指標値である。その一例として、画像データにおける線幅値に対する、該画像データに基づいて記録装置108で印刷された印刷物における線幅との関係を示す情報がある。そして、記録装置108での印刷における線幅の変化の度合いを取得する方法を、以下で説明する。取得方法の一例として、以下のようにして印刷後の線幅値を予め測定しておく方法が挙げられる。ベクターデータの画像データで示される、主走査方向線幅が0.21mmである複数の縦線が等間隔に配置された画像、及び、副走査方向線幅が0.21mmである複数の横線が等間隔に配置された画像を普通紙の標準品位の印刷設定で、記録装置108で印刷する。そして、これらの画像が印刷された印刷物を、顕微鏡などで光学的に拡大し、印刷物の画像データとして取得する。目標記録装置116に印刷させるパッチ画像の画像データで示される線幅と同じ線幅を示すデータを使って記録装置108に線を印刷させると、印刷結果の線幅同士を直接比較することができ、換算する処理等を省略できる。そして、印刷物上で線を構成する画素の線幅に対応する方向の画素数を計測し、光学的な拡大率とカメラの撮像解像度から推定することができる。また、予め目標記録装置116で印刷するパッチ画像と同様のパッチ画像を印刷させて、目視にて推定しても良い。そして、予め該測定した印刷後の線幅値のデータを、記録装置108のROM113に格納しておく。
【0037】
また、別の方法として、線幅調整値の決定時に記録装置108において目標記録装置116で印刷したパッチ画像と同様のパッチ画像を印刷させる方法がある。記録装置108において目標記録装置116で印刷したパッチ画像と同じパッチ画像のデータに基づいてパッチ画像を印刷させることにより、上記の印刷後の線幅値の推定方法と同様の方法を用いて記録装置108における印刷後の線幅値を測定することができる。このときに用いる記録装置108の印刷設定は、ユーザが選択可能である。そのため、ユーザが最も利用する印刷設定で線幅調整を行うことができる。この場合の、記録装置108における画像データにおける線幅値と印刷物における線幅値との関係の推定手法について、説明する。「タテ」の行の複数の線幅検知画像のうち、隣り合っている線が接触している画像が、線幅0.21mmの線が0.21mmの間を空けて配置された画像だけであるとすると、副走査方向の線における印刷後の線幅は0.42mmであると推定できる。そして、「ヨコ」の行の4つの線幅検知画像のうち、隣り合う線が接触している画像が、線幅0.21mmの線が0.21mmの間を空けて配置された画像も含め、全ての線幅検知画像で非接触とすると、主走査方向の線の印刷後の線幅は0.21mmと推定できる。これをユーザが選択し、画像処理装置に入力させる方法は目標記録装置116についてしたときと同様にすることができる。
【0038】
記録装置108において複数の印刷設定において線幅調整を行う場合は、線幅調整を行いたい設定数分の調整を行い、線幅調整値を記録装置108のROM113に格納しておく。このとき、記録装置108によって印刷された印刷物上の線幅値と目標記録装置116によって印刷された印刷物上の線幅値との差分が、記録装置108の線幅調整値となる。例えば、画像データ上で線幅0.21mmの線を記録装置108によって印刷された印刷物上での線幅値が、主走査方向の線に対しては0.21mm、副走査方向の線に対しては0.42mmであるとする。その場合、記録装置108の普通紙の標準品位の印刷設定における線幅調整値は、主走査方向の線に対しては0.21(=0.42-0.21)mm、副走査方向の線に対しては0.21(=0.63-0.42)mmとなる。以上のように、目標記録装置116が印刷したパッチ画像に基づく入力と、記録装置108の線幅に関する特性とに基づいて、線幅調整値を容易に設定することが可能となる。なお、画像処理装置は、目標記録装置116の線幅特性と記録装置108との線幅特性との両方を反映したユーザからの情報を画像処理装置に入力することもできる。例えば、目標記録装置116が印刷したパッチ画像の各線幅検知画像の番号と記録装置108のパッチ画像の各線幅検知画像の番号との図16のような対応表を用意しておく。対応表には、目標記録装置116、記録装置108について選択した各線幅検知画像の番号から一つの調整値が定まるようなマトリクスが示されている。ユーザは選択した対応表に記載の調整値を画像処理装置に入力し、画像処理装置は入力された調整値に基づいて記録装置108の線幅調整値を決定することもできる。また対応表には調整値そのものではなく、調整値と対応する記号や番号等の情報が選択した線幅検知画像から決まるようになっていてもよい。
【0039】
図5の説明に戻る。S504において、ステップ503で算出した記録装置108の線幅調整値を記録装置108に設定する。線幅調整値を画像処理装置101で算出した場合、画像処理装置101から記録装置108に伝送される線幅調整値のデータに基づいて、記録装置108は、目標記録装置116に線幅を合わせるための線幅調整値を設定する。線幅調整値のデータを伝送する方法としては、画像処理装置101が記録装置108に送るプリンタコマンドを用いても良いし、或いは、画像処理装置101で生成される印刷データに付加する方法を採用しても良い。プリンタコマンドを用いた場合、または、線幅調整値を記録装置108で算出した場合、線幅調整値のデータは、記録装置108のRAM112またはROM113に格納される。以上が、本実施形態における線幅調整値を求める処理の内容である。
【0040】
<線幅調整値を用いた線幅補正処理について>
以下、本実施形態における線幅補正処理を伴う印刷処理について、図9を用いて説明する。
【0041】
S901では、画像処理装置101において、印刷データを生成する。印刷データは、印刷する画像を表すデータ、並びに、用紙種、印刷品位、用紙サイズ、画像回転処理の有無、およびレイアウト等の入力情報を含んでいる。印刷する画像を表すデータは、ベクターデータの場合とラスターデータの場合とがある。画像処理装置101で生成された印刷データは、記録装置108へ送信され、印刷データが記録装置108に入力される。尚、以下では、印刷する画像を表すデータがベクターデータの場合について述べる。
【0042】
S902では、記録装置108のCPU111は、線幅調整値に基づいて、印刷するベクターデータの線描画コマンドの線幅値を変更する。まず、印刷データに含まれる、用紙サイズを示す情報と、画像回転処理の有無を示す情報と、レイアウトの情報とに基づき、画像データの縦線が主走査方向の線か副走査方向の線かを判定する。そして、その判定結果に応じて、縦線に対する線幅調整値と、横線に対する線幅調整値を決定する。例えば、前述した、主走査方向の線に対する線幅調整値が0.21mm、副走査方向の線に対する線幅調整値が0.21mmのケース(図7参照)を例に挙げて説明する。このケースでは、S902にて、縦線が主走査方向の線であると判定されると、縦線に対する線幅調整値が0.21mm、横線に対する線幅調整値が0.21mmとなる。
【0043】
ここで、ベクターデータ内の線が縦線か横線かを判定する処理について、図10を用いて説明する。印刷する画像を表すデータがベクターデータであるため、線の始点と終点の座標が指定されている。線1001のように始点と終点のY座標が同じ場合は横線、線1002のように始点と終点のX座標が同じ場合は縦線と判定する。尚、このとき、始点と終点のX座標またはY座標が厳密に同じである必要は無い。或いは、始点と終点とのX座標またはY座標を用いる代わりに、始点と終点の位置から線の傾きを示す角度を算出し、該算出した角度に基づいて、縦線か横線かを判定しても良い。例えば、X軸を0度として、100度以下80度以上の範囲または260度以上280度以下の範囲の1値を角度として持つ線を縦線、-10度以上10度以下の範囲または170度以上190度以下の範囲の1値を角度として持つ線を横線と判定する。或いは、角度によって、前述の線幅調整値から変更された補正値を用いても良い。その場合、線の補正値C1は、縦線の線幅調整値をCv、横線の線幅調整値をCh、X軸を0度とした線の角度をθとすると、下記の式(1)によって算出できる。
【0044】
【数1】
【0045】
描画対象の線の線幅調整値を算出し、該算出した線幅調整値をベクターデータの線幅値に加算することで線幅調整を行う。
【0046】
S903において、CPU111または画像処理アクセラレータ109は、既知の方法を用いてベクターデータをラスタライズする。S904において、CPU111または画像処理アクセラレータ109は、前述の色変換処理を行う。S905において、CPU111または画像処理アクセラレータ109は、前述の量子化処理を行う。S906において、記録ヘッドコントローラ114による記録ヘッド115への記録データ送信、CPU111によるキャリッジモータおよび搬送モータの駆動などを含む、前述の印字制御が行われる。
【0047】
以上の処理を行うことにより、目標記録装置116で印刷した線幅検知画像に基づいて線幅調整値を算出し、該算出した線幅調整値に従って線幅調整を行った記録装置108で印刷した結果を簡単に取得することができる。また、主走査方向の線と副走査方向の線との夫々に対する線幅調整値を算出することや、線の角度に基づき線幅調整値を算出することが可能となり、主走査方向と副走査方向とで最適な線幅調整が行われた記録装置108による印刷結果を取得することが可能となる。また、ベクターデータにおける線幅値に対して調整することができるため、細やかな調整が可能となる。
【0048】
尚、図6で示した線幅検知画像はそれぞれ、黒線のみから成る画像であり、黒線の線幅を検出する画像であるが、線幅検知画像として、赤線や青線などの色線から成る画像を含んでも良い。その場合、線の色に応じて前述の処理を行い、線の色毎に線幅調整値を算出する。線幅調整時には、線描画コマンド内の色情報を参照し、色に応じて線幅調整値を切り替えて用いる。こうすることにより、色毎に最適な線幅調整が行われた印刷結果を取得することが可能となる。
【0049】
上記では、ベクターデータの線幅値を変更することにより線幅を調整しているが、ラスタライズ後にフィルタ処理を行うことによりラスターデータに対して線幅調整処理を行うことができる。かかる処理は、印刷データがラスターデータであった場合にも有効な処理である。
【0050】
まず、ラスターデータに対する線幅補正処理の一実施形態として、線幅を増やす膨張フィルタを用いる場合について、図11を用いて説明する。図11に示す各フィルタは、膨張フィルタの一種である最大値フィルタである。最大値フィルタは、フィルタ内の最大値を出力値とするフィルタである。図11(a)に示す3×3フィルタをかけると線幅が増え、具体的には、1画素線が3画素線になる。図11(d)のようにフィルタサイズを大きくすることにより、増加させる線幅の画素数を制御することができる。例えば、線幅調整値が0.21mmの場合は、2×2フィルタを用いて、線幅を1画素分増やす処理を行うことになる。また、縦線と横線とで異なる線幅調整値を適用する場合は、2×3フィルタのように縦と横とで異なる画素数のフィルタを用いれば良い。また、縦方向と横方向とで個別にフィルタ処理を行っても良い。例えば、図11(b)のような3×1フィルタと図11(f)のような1×4フィルタを用いることにより、縦線と横線とで異なる線幅調整を適用することができる。さらに、縦方向と横方向とで個別のフィルタ処理を行うことで、フィルタの演算処理を簡略化することができるため、高速なフィルタ処理を実現することが可能となる。
【0051】
一実施形態として、ラスターデータがsRGB色空間を用いて表現されている場合の処理について説明する。sRGB色空間において、白画素の画素値は(R,G,B)=(255,255,255)である。そのため、フィルタ処理の対象となる値は、sRGB色空間における座標(255,255,255)の点からの距離とする。フィルタ内の画素において、この距離が最大となる画素が出力画素となる。この距離(Lとする)は、画素値を(R1,G1,B1)とすると、下記の式(2)を用いて算出できる。
【0052】
【数2】
【0053】
尚、式(2)では平方根を取っていない。その理由は、最大値フィルタについては、フィルタ内の値の大小関係さえ分かれば良いので、平方根を取る必要はないためである。平方根を取らないことで演算量を削減でき、フィルタ処理を高速化することができる。
【0054】
また、図面データには自然画やグラフィックなどのグラデーションを持った画像が含まれていることがある。この場合、フィルタ処理を一意にかけてしまうと、グラデーションに対してもフィルタ処理がかかってしまい画像劣化の原因となる。そのため、フィルタ内の白画素以外の画素について、これらの画素値が同一でなかった場合に、フィルタ処理後の画素値ではなく、オリジナル画像の画素値を出力するかの判定処理を行っても良い。このような判定処理を行うことにより、図面で描かれる線は同一の色であるため、線だけにフィルタ処理を適用することが可能になる。そのため、自然画やグラフィックなどのグラデーションの画像劣化を抑制することができる。
【0055】
次に、ラスターデータに対する線幅補正処理の一実施形態として、線幅を減らす縮小フィルタを用いる場合について、図12を用いて説明する。図12に示す各フィルタは、縮小フィルタの一種である最小値フィルタである。最小値フィルタは、フィルタ内の最小値を出力値とするフィルタである。縮小フィルタを用いると、線が消滅する可能性があるため、縮小フィルタを用いる際は、フィルタ対象画素内の白画素でない画素の数が所定数以下にならないような処理を行う必要がある。具体的には、最小値フィルタが3×3フィルタであった場合は、9画素のうち3画素は白画素でない画素が残るように処理を行う。また、縦線と横線とで異なる線幅調整を適用したい場合は、前述した膨張フィルタと同様の処理を行えば良い。
【0056】
以上の処理を行うことにより、ラスターデータに対しても線幅調整が可能となる。また、ラスターデータに対してフィルタ処理を行うことにより、曲線や円などの直線以外の線に対しても線幅調整が可能となる。
【0057】
尚、前述のフィルタ処理は、S904における色変換の後のデータに対して行っても良い。こうすることにより、インク色毎の線幅調整が可能となり、インクの粘度や色材濃度などの特性に依る紙面上の滲み率を考慮した線幅調整が可能となる。この場合、印刷する線幅検知画像には、同じインク色の線から成る画像が含まれる。
【0058】
<線幅検知処理の具体例について>
以下、本実施形態における線幅補正処理の具体例について、図13を用いて説明する。図13(a)は、最も簡単な線幅検知画像を示す図であり、この線幅検知画像は、3本の縦線から成る。図13(a)に示すように、線1301と線1302の間隔(線間距離ともいう)と、線1302と線1303の間隔とは異なっている。ここでは一例として、線1301~線1303についてはいずれも線幅は0.21mmとし、線1301と線1302との間隔は0.42mm、線1302と線1303との間隔は0.84mmとする。
【0059】
図13(a)に示す線幅検知画像を印刷すると、図13(b)~図13(d)に示すような各状態を検出することができる。図13(b)に示す状態からは、線1301と線1302がくっついておらず、かつ、線1302と線1303がくっついていないことから、印刷後の線幅値は0.42mm未満と推定できる。図13(c)に示す状態からは、線1301と線1302がくっついており、かつ、線1302と線1303がくっついていないことから、印刷後の線幅値は0.42mm以上0.84mm未満と推定できる。図13(d)に示す状態からは、線1301と線1302がくっついており、かつ、線1302と線1303がくっついていることから、印刷後の線幅値は0.84mm以上と推定できる。このように図13(a)のような線幅検知画像を用いることで、インクと用紙との消費を抑えつつ、元の印刷データの線幅と印刷物上の線幅との関係を簡単に検知することができる。
【0060】
尚、線と線の間隔は、図13(a)のような2パターンでなくても良い。多くのパターンを設けることにより、変化後の線幅値を検知する精度を上げることができる。また、図6に示したパッチ画像のように、各線幅検知画像が、線と線の間隔を同じとする線のみで構成されても良い。こうすることにより、ユーザが目視で判定する場合に、線と線とがくっついているか否かを分かり易くすることができる。さらに、線と線の間隔を、ある一定の範囲内とすることにより、スキャナや測色機、濃度センサなどのセンサを用いて、線がくっついているかを自動で判定することも可能となる。自動で判定した結果をS502の結果とすることで、目視による判定が不要となるため、より簡単に線幅を調整することが可能となる。
【0061】
<本実施形態の効果について>
本実施形態によれば、同じ画像データに基づいて複数の記録装置でそれぞれ印刷される印刷物上の線幅を合わせるための線幅調整値を、ユーザが容易に設定することが可能となる。
【0062】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、線幅調整値を算出した印刷条件以外の印刷条件では、線幅の合致精度が低下する。また、線幅の合致精度を上げようとすると、印刷条件毎に調整値を設定するというユーザにとって煩雑な作業が必要になってしまう。本実施形態では、このような課題に対処するために、テーブルを用いて線幅調整値の変化率を決定する。尚、以下では既述の実施形態との差分について主に説明し、既述の実施形態と同様の内容については説明を適宜省略する。
【0063】
<線幅補正処理について>
以下、本実施形態における線幅補正処理について、図14を用いて説明する。
【0064】
S1401は、第1の実施形態におけるS901(図9参照)と同様である。
【0065】
S1402において、CPU111は、S1401で入力された印刷データに含まれる印刷条件に基づき、線幅調整値を補正する。本ステップで補正された線幅調整値を、補正線幅調整値と呼ぶ。本ステップで用いる印刷条件は、用紙種と印刷品位である。
【0066】
図15(a)は、S1402で用いるテーブルの一例を示す。図15(a)に示すような、用紙種と、印刷品位と、走査速度との関係を保持するテーブルをROM113に予め格納しておき、S1402にてCPU111がこのようなテーブルを参照することで、記録ヘッド115の走査速度を決定する。走査速度が速いほど、主滴の着弾位置とサテライトの着弾位置との間の距離や主滴の着弾誤差が増加するため、線幅が増加する。
【0067】
また、ROM113には、図15(c)に例示するような、記録ヘッド115の走査速度と、主走査方向の変化率と、副走査方向の変化率との関係を保持するテーブルも予め格納されている。図15(a)のテーブルを参照して走査速度を求めた後、図15(c)のテーブルを参照してこの走査速度に対応する線幅調整値の変化率を決定する。走査速度は、主滴の着弾位置とサテライトの着弾位置との間の距離に影響を及ぼすが、主走査方向と副走査方向とで影響の度合いが異なるため、図15(c)に示すように、各走査速度に対応する主走査方向の変化率と副走査方向の変化率とは異なる。
【0068】
また、用紙種によって紙面上のドットの滲み度合いが変化する。そのため、図15(b)に例示するようなテーブルをROM113に予め格納しておき、このようなテーブルを参照することによって、用紙種に応じた変化率を決定する。尚、ドットの滲み度合いは、主走査方向と副走査方向とで変わらない。従って、用紙種ごとの変化率は、図15(b)に示すように、走査方向に依らない値となる。
【0069】
一実施形態としては、所定の印刷条件での線幅と、他の印刷条件での線幅との比率を計算することにより、変化率を求めることができる。例えば、記録装置108で最も細い線を印刷できる印刷条件での線幅と、他の印刷条件での線幅との比率を変化率として算出しても良い。ドット滲み度合いに依る変化率、および、記録ヘッド速度に依る変化率を、線幅調整値に乗算することにより線幅調整値を補正する。具体的には、補正線幅調整値C2は、線幅調整値をC1、ドット滲み度合いによる変化率をCd、記録ヘッド速度による変化率をCcとすると、下記の式(3)を用いて算出できる。
【0070】
【数3】
【0071】
S1403~S1407は、第1の実施形態におけるS902~S906(図9参照)と同様である。以上が、本実施形態における線幅補正処理の内容である。
【0072】
<本実施形態の効果について>
本実施形態によれば、ユーザが印刷条件を変更した場合であっても、該変更した印刷条件に合うように線幅調整値が補正されるので、ユーザが線幅調整値を合わせるための作業を行わずに済む。
【0073】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0074】
101 情報処理装置
102 CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16