(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】受電装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240129BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240129BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240129BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240129BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2019156802
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】立和 航
【審査官】宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537598(JP,A)
【文献】特開2019-041541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00
H02J50/12
H02J50/60
H02J50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置であって、
無線で送電する際に前記受電装置とは異なる物体を検出する検出処理を行う送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられ
る受電電力を示す情報を送信する送信手段と、
前記送電装置が特定の能力を有するかを判定する判定手段と、を有し、
前記送信手段
は、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第1の受電電力を示す第1の情報を送信した後で、かつ前記送電装置が特定の能力を有すると判定した後で、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第2の受電電力を示す第2の情報を送信し、当該第2の情報を送信した後で、前記第2の受電電力よりも大きい第3の受電電力であって前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第3の受電電力を示す第3の情報を送信することを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記第1の受電電力は、前記第2の受電電力より小さいことを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記
特定の能力は、前記パラメータを、前記受電装置の受電電力と、当該受電電力と対応する前記送電装置の送電電力との3つ以上の組
に基づいて算出する能力
であり、
前記送電装置が前記特定の能力を有するかを示す情報を取得する取得手段を、さらに有し、
前記送信手段は、前記送電装置が前記
特定の能力を有することに基づいて、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる3つ以上の受電電力を示す情報を送信することを特徴とする請求項1
又は2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記送信手段は、前記送電装置が前記
特定の能力を有さないことに基づいて、前記パラメータの算出に用いられる受電電力を示す情報として、2つの受電電力を示す情報のみを送信することを特徴とする請求項
3に記載の受電装置。
【請求項5】
前記
特定の能力を有するかを示す情報は、前記送電装置が対応するWireless Power Consortiumの規格のバージョン情報に基づく情報であることを特徴とする請求項
3又は
4に記載の受電装置。
【請求項6】
前記
特定の能力を有するかを示す情報は、Wireless Power Consortiumの規格で規定される、Power Transmitter Identification Packetと、Power Transmitter Capability Packetと、Proprietary Packetのうち、いずれか一つに含まれる情報であることを特徴とする請求項
3又は
4に記載の受電装置。
【請求項7】
前記第1の受電電力は、前記受電装置が有する負荷に電力を供給しないときの受電電力であることを特徴とする請求項
1乃至6
のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項8】
前記負荷は、バッテリであることを特徴とする請求項7に記載の受電装置。
【請求項9】
前記第2の受電電力は、前記受電装置が有する負荷に電力を供給することを開始した直後の受電電力であることを特徴とする請求項
1乃至8のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項10】
受電装置が行う制御方法であって、
無線で送電する際に受電装置とは異なる物体を検出する検出処理を行う送電装置から無線で受電する送電装置から無線で受電する受電工程と、
前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられ
る受電電力を示す情報を送信する送信工程
と、
前記送電装置が特定の能力を有するかを判定する判定工程と、
を有し、
前記送信工程
は、
前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第1の受電電力を示す第1の情報を送信する第1の送信工程と、
前記第1の送信工程の後で、かつ前記判定工程の後に、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第2の受電電力を示す第2の情報を送信する第2の送信工程と、
前記第2の送信工程の後で、前記第2の受電電力よりも大きい第3の受電電力であって前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第3の受電電力を示す第3の情報を送信する第3の工程と、を有することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
受電装置であって、
無線で送電する際に前記受電装置とは異なる物体を検出する検出処理を行う送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置が特定の能力を有するかを示す情報を取得する取得手段と、
前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる受電電力を示す情報を送信する送信手段と、を有し、
前記送信手段は、前記送電装置が前記特定の能力を有する場合に、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第1の受電電力を示す第1の情報を送信し、当該第1の情報を送信した後に、現在受電している電力である第2の受電電力であって前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第2の受電電力を示す第2の情報を送信し、当該第2の情報を送信した後に、前記第2の受電電力よりも大きい第3の受電電力であって前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第3の受電電力を示す第3の情報を送信し、
前記送信手段は、前記送電装置が前記特定の能力を有さない場合に、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第1の受電電力を示す第1の情報を送信し、当該第1の情報を送信した後に、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる電力であって受電電力を最大とする状態で受電する電力を示す第4の情報を送信することを特徴とする受電装置。
【請求項12】
前記受電電力を最大とする状態で受電する電力とは、負荷に供給できる最大の電力であることを特徴とする請求項11に記載の受電装置。
【請求項13】
前記受電電力を最大とする状態で受電する電力とは、前記送電装置との交渉により決定される電力であることを特徴とする請求項11に記載の受電装置。
【請求項14】
前記特定の能力は、前記パラメータを、前記受電装置の受電電力と、当該受電電力と対応する前記送電装置の送電電力との3つ以上の組に基づいて算出する能力であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1乃至9
,11乃至14のいずれか1項に記載の受電装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電電力伝送に係る受電装置、送電装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線充電システム等の無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1には、無線充電の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(以下、「WPC規格」と呼ぶ)に準拠した送電装置と受電装置が記載されている。また、特許文献1には、WPC規格において、金属片などの導電性の物体の検出の精度を高めるために、キャリブレーション処理が規定されたことについて記載されている。
【0003】
キャリブレーション処理において、受電装置が異なる2つの状態それぞれにおいて、送電装置の送電電力とそれに対する受電装置の受電電力とが取得される。そして、この2つの送電電力と受電電力の組を用いて、実際に無線で送電されている際の受電電力又は送電電力に対してキャリブレーションするためのパラメータが算出される。このパラメータは、受電装置とは異なる物体の検出処理に用いられる。つまり、例えば、送電装置により無線で送電されている際の受電電力に対して、上述したパラメータを用いてキャリブレーションされた受電電力を推定し、実際の送電装置の送電電力とその推定された受電電力との差分である電力損失を算出することができる。そして、この電力損失が所定値を超えた場合、受電装置とは異なる物体による電力損失があると判定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、受電装置とは異なる物体の検出処理に用いられるパラメータの算出に、送電電力と受電電力の組が2組しか用いられていないため、検出精度が低くなる可能性がある。
【0006】
そこで、検出精度を上げるために、3つ以上の送電電力と受電電力の組を用いてパラメータの算出することが考えられるが、その場合に、送電装置において受電電力を示す情報を効率的に取得する方法については提案されていなかった。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明では、3つ以上の送電電力と受電電力の組を用いて受電装置とは異なる物体を検出する処理のためのパラメータを算出する送電装置に、効率的に受電電力を示す情報を取得させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による受電装置は、無線で送電する際に前記受電装置とは異なる物体を検出する検出処理を行う送電装置から無線で受電する受電手段と、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる受電電力を示す情報を送信する送信手段と、を有し、前記送信手段は、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第1の受電電力を示す第1の情報を送信した後で、かつ前記送電装置が特定の能力を有すると判定した後で、前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第2の受電電力を示す第2の情報を送信し、当該第2の情報を送信した後で、前記第2の受電電力よりも大きい第3の受電電力であって前記検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる第3の受電電力を示す第3の情報を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、3つ以上の送電電力と受電電力の組を用いて受電装置とは異なる物体を検出する処理のためのパラメータを算出する送電装置に、効率的に受電電力を示す情報を取得させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態に係る受電装置の構成例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る送電装置の構成例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る受電装置の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る送電装置の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図6】無線充電システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【
図7】(A)はI&Cフェーズの通信シーケンスを示す図であり、(B)はNegotiationフェーズの通信シーケンスを示す図であり、(C)はCalibrationフェーズの通信シーケンスを示す図である。
【
図8】本実施形態におけるキャリブレーション処理の結果を表す図である。
【
図9】実施形態と従来との異物検出処理の違いを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は本発明の技術的思想を説明するための一例にすぎず、本発明を実施形態で説明される構成や方法に限定することは意図されていない。
【0012】
<実施形態>
(システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線充電システム(無線電力伝送システム)の構成例を示す。本システムは、受電装置101と送電装置102を含んで構成される。以下では、受電装置をRXと呼び、送電装置をTXと呼ぶ場合がある。TX102は、充電台103に載置されたRX101に対して無線で送電する電子機器である。RX101は、TX102から無線により送られる電力を受けて、内蔵バッテリを充電する電子機器である。以下では、RX101が充電台103に載置された場合を例にして説明を行う。ただし、TX102がRX101に送電するうえで、RX101はTX102の送電可能範囲の中に存在していれば、充電台103の上に載置されなくてもよい。
【0013】
なお、RX101とTX102は無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RX101の一例はスマートフォンであり、TX102の一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。RX101及びTX102は、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RX101及びTX102は、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、TX102がスマートフォンであってもよい。この場合、RX101は、別のスマートフォンでもよいし、無線イヤホンであってもよい。また、RX101は、自動車であってもよい。また、TX102は、自動車内のコンソール等に設置される充電器であってもよい。
【0014】
また、本実施形態では、1つのRX101及びTX102が示されているが、複数のRX101が、1つのTX102又はそれぞれ別個のTX102から送電される構成においても適用することができる。
【0015】
本システムは、WPC規格に基づいて、無線充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、RX101とTX102は、RX101の受電コイルとTX102の送電コイルとの間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送を行う。なお、本システムに適用される無線電力伝送方式(非接触電力伝送方法)は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0016】
WPC規格では、RX101がTX102から受電する際に保証される電力の大きさが、Guaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えばRX101とTX102の位置関係が変動して受電コイルと送電コイルとの間の送電効率が低下したとしても、RX101の負荷(例えば、充電用の回路等)への出力が保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電コイルと送電コイルの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、TX102は、RX101内の負荷へ5ワットを出力することができるように制御して送電を行う。
【0017】
本実施形態に係るRX101とTX102は、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと実際の電力伝送が行われる前のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定され、各フェーズにおいて必要な送受電制御のための通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含む。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。
【0018】
Selectionフェーズでは、TX102が、Analog Pingを間欠的に送信し、物体が充電台103に載置されたこと(例えば充電台103にRX101や導体片等が載置されたこと)を検出する。つまり、Analog Pingは、物体の存在を検出するための検出信号である。TX102は、送電コイルに電圧又は電流を印加することにより、Analog Pingを送信する。そして、充電台103に物体が載置される場合と、物体が載置されていない場合とでは、送電コイルに印加される電圧や電流に変化が生じる。そこで、TX102は、Analog Pingを送信した時の送電コイルの電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出し、電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。
【0019】
Pingフェーズでは、TX102が、Analog Pingより電力が大きいDigital Pingを送信する。Digital Pingの大きさは、充電台103の上に載置されたRX101の制御部が起動するのに十分な電力である。RX101は、受電電圧の大きさをTX102へ通知する。つまり、RX101は、TX102にSignal Strengthパケット(以下、「SSパケット」と呼ぶ)を送信する。このように、TX102は、そのDigital Pingを受信したRX101からの応答を受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体がRX101であることを認識する。TX102は、受電電圧値の通知を受けると、I&Cフェーズに遷移する。
【0020】
I&Cフェーズでは、TX102は、RX101を識別し、RX101から機器構成情報(能力情報)を取得する。そのため、RX101は、ID Packet及びConfiguration PacketをTX102に送信する。ID PacketにはRX101の識別情報が含まれ、Configuration Packetには、RX101の機器構成情報(能力情報)が含まれる。ID Packet及びConfiguration Packetを受信したTX102は、アクノリッジ(ACK)で応答する。そして、I&Cフェーズが終了する。
【0021】
Negotiationフェーズでは、RX101が要求するGPの値やTX102の送電能力等に基づいてGPの値が決定される。また、RX101は、TX102の能力情報を取得する。
【0022】
Calibrationフェーズでは、RX101は、Recieved Power Packetを用いて、受電電力をTX102へ通知する。それに伴い、TX102は、その受電電力に対応する送電電力を取得し、受電電力と対応付けて記憶する。そして、TX102は、少なくとも2組の受電電力と送電電力を基に、異物検出処理のためのパラメータを算出し、記憶する。本実施形態では、後述するPower Transferフェーズでも、異物検出処理のためのパラメータを算出し、記憶する。
【0023】
ここで、キャリブレーション処理について説明を行う。このキャリブレーション処理において、RX101が異なる2つの状態それぞれにおいて、TX102の送電電力とRX101の受電電力とが取得される。そして、この2組の送電電力と受電電力を用いて、実際に無線で送電されている際の受電電力又は送電電力に対して、キャリブレーションするためのパラメータが算出される。例えば、受電電力をキャリブレーションする場合、キャリブレーションされた受電電力Pcalは、以下の式1のように表される。
【0024】
Pcal=a・Preceived+b・・・式1
ここで、Preceivedは、Power Transferフェーズにおいて、TX102から通知される受電電力であり、a、bはパラメータである。この2つパラメータは、以下の式2、式3で表される。
【0025】
a=(TP2-TP1)/(RP2-RP1)・・・式2
b=(RP2・TP1-TP2・RP1)/(RP2-RP1)・・・式3
ここで、RP1、RP2は、CalibrationフェーズにおいてRX101より通知される2つの受電電力である。より具体的には、RP1は、1回目のキャリブレーション処理でTX102が取得する受電電力であり、RP2は、2回目のキャリブレーション処理でTX102が取得する受電電力である。また、TP1、TP2は、RP1、RP2それぞれに対応する送電電力である。ここで、RP2はRP1より大きく、TP2は、TP1より大きい。
【0026】
電力損失PLは、以下の式4により表される。
【0027】
PL=Ptransmitted-Pcal・・・式4
ここで、Ptransmittedは、Power Transferフェーズにおいて、TX102から通知される受電電力に対応する送電電力である。
【0028】
この電力損失と、所定の閾値と比較することにより異物の有無が検出される。つまり、TX102は、式4で示される電力損失が所定の閾値より大きい場合、受電装置とは異なる物体である異物により電力損失が生じていると判定し、異物があると判定する。
【0029】
キャリブレーションする対象は、受電電力でなくても、送電電力でもよいし、電力損失であってもよい。また、キャリブレーションする方法は、線形補間を用いた推定や、べき級数を用いた推定などの非線形を用いることもできる。以下では、電力損失をキャリブレーションする場合について説明する。この場合、RX101の受電電力と、それに対応するTX102の送電電力との差である電力損失が算出され、受電電力と電力損失とが対応付けて記憶される。具体的には、RX101の負荷が異なる2つの状態それぞれにおける受電電力と電力損失が記憶され、その2つの受電電力と電力損失の組から、任意の受電電力における電力損失の期待値が線形補間により求められる。ただし、電力損失を算出するために、RX101の受電電力に対応するTX102の送電電力も取得される。
【0030】
異物検出処理において、この電力損失の期待値と、実際の電力損失との差が所定値を超えるかを判定し、超える場合に異物があると判定される。つまり、ここでいう、電力損失の期待値が、キャリブレーションされた電力損失である。
【0031】
キャリブレーションされた電力損失PLcalは、以下の式5、式6で表される。
【0032】
PLcal=c・(Preceived-RP1)+PL1・・・式5
c=(PL2-PL1)/(RP2-RP1)・・・式6
ここで、PL1、PL2は、上述したCalibrationフェーズにおいてRX101より通知される2つの受電電力RP1、RP2にそれぞれ対応する電力損失である。cは、異物検出処理を行うためのパラメータに相当する。
【0033】
従来のキャリブレーション処理は、RX101のバッテリに受電した電力が供給されない状態と、RX101のバッテリに対して最大電力を供給する状態の2つの状態でキャリブレーション処理が行われていた。その場合の線形補間で表される電力損失の期待値は、
図9(A)に示される。
図9(A)において、1回目のRX101から通知される受電電力とそれに対応する電力損失を点A、2回目のRX101から通知される受電電力とそれに対応する電力損失を点Bで示している。この2点に基づいて線形補間をしているため、受電電力の増加に対して、電力損失の期待値の増加が線形に変化することになる。
【0034】
しかし、実際には、受電電力の増加に対して、電力損失は線形に増加するとは限らない。電力損失が線形に増加しない場合、2点に基づく線形補間により算出した電力損失の期待値を用いて異物の有無の判定を行うと誤った判定結果となる可能性が生じる。そこで、本実施形態では、受電電力とそれに対応する電力損失の組を3つ以上用いて、異物検出処理を行うためのパラメータを算出する。これにより、異物の有無の判定精度、すなわち異物検出精度を向上させることができる。
【0035】
図9(B)において、点A、点B、点Cは、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる、3組の受電電力、電力損失を示す。点Aと点Cを結ぶ実線は、点Aが示す受電電力と電力損失の組を(RP1、PL1)、点Cが示す受電電力、電力損失の組を(RP2、PL2)としたときの、電力損失の期待値を示す線である。また、点Cと点Bを結ぶ実線は、点Cが示す受電電力と電力損失の組を(RP1、PL1)とし、点Bが示す受電電力、電力損失の組を(RP2、PL2)としたときの、電力損失の期待値を示す線である。また、
図9(B)に示す破線は、
図9(A)の実線を示す。このように、受電電力とそれに対応する電力損失の組を3つ以上用いることで、実際にRX101から取得する情報が多くなり、より多くの情報を用いて、電力損失の期待値を算出するため、より適切な期待値が算出することができる。そのため、より適切な期待値を用いることにより、異物検出精度を向上させることができる。なお、3点を用いて、非線形の関数により、電力損失の期待値が算出されるように構成してもよい。
【0036】
図9(C)は、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる点として、点A、点B、点Cに、さらに点D、点Eの2点を加えた例を示す。
図9(B)の場合よりも、実際にRX101から取得する情報が多くなっているため、より適切な期待値が算出することができる。そのため、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる受電電力の取得回数を増やすことにより、異物検出精度を向上させることができる。
【0037】
本実施形態では、受電電力の大きさと受電電力を取得する順番を規定することにより、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる受電電力を、効率よく取得することができる。すなわち、
図9(B)で示すような点A、点B、点Cにおいては、点A、点C、点Bの順で受電電力を取得している。点A、点B、点Cの順で受電電力を取得すると、点Aから点Bに一旦受電電力を上げて、点Bから点Cまで受電電力を下げる必要がある。それに対して、本実施形態のように、点A、点C、点Bの順で受電電力を取得すれば、点A、点C、点Bの順で、受電電力を上げるだけでよい。これにより、受電電力を上げた後に、下げるという処理を行う必要がなく、効率的に3つ以上の送電電力と受電電力の組を取得することができる。なぜなら、RX101は、バッテリ202の充電特性に合わせて、受電電力(送電電力)を、充電開始時には小さくし、時間の経過とともに段々と大きくし、最大値となるように制御するからである。より具体的には、この充電特性に合わせたRX101の動作に沿って、パラメータの算出に用いられる受電電力を示す情報をTX102に送信するため、効率的にその情報をTX102に取得させることができる。
【0038】
なお、点A、点C、点Bは、1回目、2回目、3回目のキャリブレーションの処理で得られる情報に限られない。つまり、本実施形態において、TX102が取得する受電電力と、その取得する順番は、以下の式7を満たせば、効率的に、3つ以上の送電電力と受電電力の組を取得することができる。
【0039】
P1<P2<P3・・・式7
ここで、P1、P2、P3は、n回目、n+1回目、n+2回目に取得される、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる受電電力である。なお、nは1以上の整数である。
【0040】
なお、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる受電電力を4回以上取得する場合、n+3回目の受電電力は、P2よりも大きければよい。つまり、n+3回目の受電電力は、P3よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。この構成であっても、効率的に、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる受電電力又は送電電力を取得することができる。また、n=2の場合、1回目に取得される、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる受電電力がP1よりも小さい場合、より効率的に、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる4つ以上の受電電力又は送電電力を取得することができる。ただし、1回目の受電電力がP1より大きい場合であっても、少なくとも2~4回目に取得される、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる3つの受電電力を、効率的に取得することができる。なお、nが3以上であっても、同様の効果を得ることができる。また、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる受電電力は、受電電力が小さいほうから大きくような順番で取得されるようにすることで、より効率的な取得に寄与する。
【0041】
さらに、点A、点C、点Bが1回目、2回目、3回目のキャリブレーションの処理で得られる情報である場合、つまり、n=1の場合には、異物検出処理を開始するまでの時間を短縮できる。点Aから点Bに一旦受電電力を上げる場合、異物検出処理を開始するには、点Bまで電力を上げて、その点Bにおける受電電力を取得する必要がある。一方、本実施形態によれば、点Aから点Cに受電電力を上げて、受電電力を取得し、パラメータの算出を行えば、点Bまで、受電電力を上げなくても、異物検出処理を実行することができる。つまり、点Cから点Bまで受電電力を上げる時間分、異物検出処理の開始を早くすることができる。さらに、点Cから点Bまで受電電力を上げる期間に異物検出処理を行うことができる。そして、異物検出処理に用いられるパラメータの算出に用いられる3つ以上の受電電力のうち3回目に取得する受電電力を取得する前に、先に算出したパラメータにより異物検出処理を開始することができる。
【0042】
Power Transferフェーズでは、送電の開始、継続、及び異物検出や満充電による送電停止等のための制御が行われる。Power Transferフェーズでは、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる受電電力の3回目以降の取得が行われるようにしてもよい。すなわち、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる3つ以上の受電電力のうち、1回目と2回目の受電電力の取得は、Calibrationフェーズで行われる。そして、異物検出処理のためのパラメータの算出に用いられる3つ以上の受電電力のうち3回目以降の受電電力の取得は、Power Transferフェーズで行われる。この構成により、Calibrationフェーズでとどまる時間を短縮し、Power Transferフェーズに早期に移行し、例えばRX101のバッテリへの充電の開始を早期に始めることができる。また、上述したように、Calibrationフェーズで取得した2つの受電電力とそれぞれに対応する送電電力又は電力損失から算出するパラメータを用いることで、Power Transferフェーズにおいて、異物検出処理を開始することができる。その後、3回目以降の受電電力の取得を行い、異物検出処理のためのパラメータを算出し、異物検出処理における検出精度を向上させることができる。
【0043】
TX102とRX101は、これらの送受電制御のための通信を、WPC規格に基づいて無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて送電電力に信号を重畳する通信により行う。また、TX102とRX101は、無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いて、送受電制御のための通信を行ってもよい。無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信の一例としては、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格に準拠する通信方式が挙げられる。また、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee、NFC(Near Field Communication)等の他の通信方式によって行われてもよい。無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信は、無線電力伝送で用いられる周波数とは異なる周波数により行われるようにしてもよい。
【0044】
(装置構成)
続いて、本実施形態に係る受電装置101(RX101)及び送電装置102(TX102)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。
【0045】
図2は、本実施形態に係るRX101の構成例を示す図である。RX101は、制御部201、バッテリ202、受電部203、検出部204、受電コイル205、通信部206、通知部207、操作部208、メモリ209、タイマ210、充電部211、能力情報取得部212、及びキャリブレーション要求部213を有する。
【0046】
制御部201は、例えばメモリ209に記憶されている制御プログラムを実行することにより、RX101の全体を制御する。すなわち、制御部201は、
図2で示す各機能部を制御する。また、制御部201は、RX101における受電制御に関する制御を行う。さらに、制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理に専用のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部201は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(Field Programmable Gate Array)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ209に記憶させる。また、制御部201は、タイマ210を用いて時間を計測しうる。
【0047】
バッテリ202は、RX101全体に対して、制御部201によるRX101の各部の制御や、受電と通信に必要な電力を供給する。また、バッテリ202は、受電コイル205を介して受信された電力を蓄電する。
【0048】
受電コイル205において、TX102の送電コイルから放射された電磁波により誘導起電力が発生し、受電部203は、受電コイル205において発生した電力を取得する。受電部203は、受電コイル205において電磁誘導により生じた交流電力を取得する。そして、受電部203は、交流電力を直流又は所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ202を充電するための処理を行う充電部211に電力を出力する。すなわち、受電部203は、RX101における負荷に対して電力を供給する。上述のGPは、受電部203から出力されることが保証される電力である。さらに、受電部203は、現在の受電電力を制御部201に通知することで、制御部201において、任意のタイミングで、そのタイミングの受電電力を知ることができるようにする。なお、受電電力の測定と制御部201への通知は、受電部203以外で行うように構成されていてもよい。
【0049】
検出部204は、WPC規格に基づいて、RX101が充電台103に載置されていることを検出する。検出部204は、例えば、受電部203が受電コイル205を介してWPC規格のDigital Pingを受信した時の受電コイル205の電圧値と電流値のうち少なくともいずれか一方を検出する。検出部204は、例えば、電圧値が所定の電圧閾値を下回る場合又は電流値が所定の電流閾値を超える場合に、RX101が充電台103に載置されていると判定することができる。
【0050】
通信部206は、TX102との間で、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部206は、受電コイル205から入力された電磁波を復調してTX102から送信された情報を取得し、その電磁波を負荷変調することによってTX102へ送信すべき情報を電磁波に重畳することにより、TX102との間で通信を行う。すなわち、通信部206で行う通信は、TX102の送電コイルから送信される電磁波に重畳されて行われる。
【0051】
通知部207は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を通知する。通知部207は、例えば、RX101の充電状態や、
図1のようなTX102及びRX101を含む無線電力伝送システムの電力伝送に関する状態を、ユーザに通知する。通知部207は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。
【0052】
操作部208は、ユーザからのRX101に対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部208は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、通知部207と操作部208とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
【0053】
メモリ209は、上述のように、識別情報や機器構成情報などの各種情報や制御プログラムなどを記憶する。なお、メモリ209は、制御部201と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。
【0054】
タイマ210は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
【0055】
充電部211は、受電部203から供給される電力により、バッテリ202に充電する。また充電部211は、制御部201の制御に基づいて、バッテリ202への充電を開始、または停止し、さらにバッテリ202への充電に使用する電力を、バッテリ202の充電状態に基づいて調整する。充電部211で使用する電力が変化すると、それに応じて受電部203から供給される電力、すなわちRX101における受電電力も変化する。ここで、充電部211は、RX101における負荷である。
【0056】
能力情報取得部212は、通信部206を用いて、TX102の能力情報をTX102から取得する。この能力情報には、TX102が異物検出処理に用いられるパラメータを、RX101の受電電力と、この受電電力と対応する送電電力の3つ以上の組から算出する能力を有するかを示す情報が含まれる。なお、以下において、この能力のことを、高精度異物検出処理能力と呼ぶ。
【0057】
能力情報取得部212は、制御部201とは別のプロセッサで動作するように構成されてもよいし、制御部201上で動作するプログラムにより実行されるようにしてもよい。能力情報取得部212は、例えばメモリ209に格納されたプログラムを実行することでその機能を果たすことができる。
【0058】
キャリブレーション要求部213は、通信部206を用いて、TX102にキャリブレーション処理の実施を要求する。キャリブレーション処理には、受電電力を取得し、その受電電力に対応する送電電力の取得や電力損失の算出を行い、受電電力と送電電力又は電力損失とを対応付けて記憶する処理が含まれる。また、キャリブレーション処理には、2つ以上の受電電力と、送電電力又は電力損失との組から、TX102が行う異物検出処理のためのパラメータを算出する処理も含まれる。キャリブレーション要求部213は、能力情報取得部212と同様に、制御部201とは別のプロセッサで動作するように構成されてもよいし、制御部201上で動作するプログラムにより実行されるようにしてもよい。また、キャリブレーション要求部213は、例えばメモリ209に格納されたプログラムを実行することでその機能を果たすことができる。
【0059】
図3は、本実施形態に係るTX102の構成例を示す図である。TX102は、一例において、制御部301、電源部302、送電部303、検出部304、送電コイル305、通信部306、通知部307、操作部308、メモリ309、及び、タイマ310を有する。
【0060】
制御部301は、例えばメモリ309に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TX102の全体を制御する。すなわち、制御部301は、
図3で示す各機能部を制御する。また、制御部301は、TX102における送電制御に関する制御を行う。さらに、制御部301は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部301は、例えばCPUやMPU等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部301は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部301は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ309に記憶させる。また、制御部301は、タイマ310を用いて時間を計測しうる。
【0061】
電源部302は、TX102全体に対して、制御部301によるTX102の制御や、送電と通信に必要な電力を供給する。電源部302は、例えば、商用電源またはバッテリである。バッテリには、商用電源から供給される電力が蓄電される。
【0062】
送電部303は、電源部302から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数電力に変換し、その交流周波数電力を送電コイル305へ入力することによって、RX101に受電させるための電磁波を発生させる。なお、送電部303によって生成される交流電力の周波数は、例えば数百kHz(例えば、110kHz~205kHz)程度である。送電部303は、制御部301の指示に基づいて、RX101に送電を行うための電磁波を送電コイル305から出力させるように、交流周波数電力を送電コイル305へ入力する。また、送電部303は、送電コイル305に入力する電圧(送電電圧)又は電流(送電電流)、又はその両方を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧又は送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧又は送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部303は、制御部301の指示に基づいて、送電コイル305からの送電が開始又は停止されるように、交流周波数電力の出力制御を行う。さらに、送電部303は、現在の送電電力を制御部301に通知することで、制御部301において、任意のタイミングで、そのタイミングの送電電力を知ることができるようにする。なお、送電電力の測定と制御部301への通知は、送電部303以外で行うように構成してもよい。
【0063】
検出部304は、WPC規格に基づいて、充電台103に物体が載置されているかを検出する。検出部304は、具体的には、充電台103のInterface Surfaceに物体が載置されたか否かを検出する。検出部304は、例えば、送電部303が、送電コイル305を介してWPC規格のAnalog Pingを送信した時の送電コイル305の電圧値と電流値の少なくとも一方を検出する。なお、検出部304は、インピーダンスの変化を検出してもよい。そして、検出部304は、電圧が所定電圧値を下回る場合又は電流値が所定電流値を超える場合に、充電台103に物体が載置されていると判定しうる。なお、この物体が受電装置であるかその他の異物であるかは、続いて通信部306によって送信されるDigital Pingに対して所定の応答の有無により判定される。すなわち、TX102が所定の応答を受信した場合には、その物体が受電装置であると判定され、そうでなければ、その物体が受電装置とは異なる物体であると判定される。
【0064】
通信部306は、RX101との間で、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部306は、送電コイル305から出力される電磁波を変調し、RX101へ情報を伝送して、通信を行う。また、通信部306は、送電コイル305から出力されてRX101において変調された電磁波を復調してRX101が送信した情報を取得する。すなわち、通信部306で行う通信は、送電コイル305から送信される電磁波に重畳されて行われる。
【0065】
通知部307は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を通知する。通知部307は、例えば、TX102の充電状態や、
図1のようなTX102とRX101とを含む無線電力伝送システムの電力伝送に関する状態を示す情報を、ユーザに通知する。通知部307は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。
【0066】
操作部308は、ユーザからのTX102に対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部308は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、通知部307と操作部308とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
【0067】
メモリ309は、識別情報や能力情報などの各種情報や制御プログラムなどを記憶する。また、能力情報には、高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報が含まれている。なお、メモリ309は、制御部301と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。
【0068】
タイマ310は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
【0069】
(処理の流れ)
続いて、RX101及びTX102が実行する処理の流れの例について説明する。
【0070】
[受電装置における処理]
図4は、RX101が実行する処理の流れの例を示すフローチャートである。本処理は、例えばRX101の制御部201がメモリ209から読み出したプログラムを実行することによって実現されうる。本処理には、能力情報取得部212、及びキャリブレーション要求部213における処理も含まれる。なお、以下に説明する本処理の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、RX101の電源がオンとされたことに応じて、バッテリ202若しくはTX102からの給電によりRX101が起動したことに応じて、又はRX101のユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、実行されうる。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
【0071】
RX101は、送受電に関する処理の開始後、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定される処理を実行し、自装置がTX102に載置されるのを待つ(S401)。そして、RX101は、例えば、TX102からのDigital Pingを検出することによって、TX102の充電台103に載置されたことを検出する。そして、RX101は、Digital Pingを検出すると、受電電圧値を含むSSパケットをTX102に送信する。
【0072】
RX101は、自装置がTX102の充電台103に載置されたことを検出すると、通信部206により、WPC規格のI&Cフェーズとして規定される処理を実行して、TX102へ識別情報と機器構成情報(能力情報)を送信する(S402)。
【0073】
図7(A)に、I&Cフェーズの通信の流れが示されている。I&Cフェーズでは、RX101は、Identification Packet(ID Packet)をTX102へ送信する(F701)。ID Packetには、RX101の識別情報であるManufacturer CodeとBasic Device IDのほかに、RX101の能力情報として対応しているWPC規格のバージョンを特定可能な情報要素が格納される。
【0074】
RX101は、さらに、Configuration PacketをTX102へ送信する(F702)。Configuration Packetには、RX101の能力情報として、以下の情報が含まれる。すなわち、RX101が負荷に供給できる最大電力を特定する値であるMaximum Power Valueや、WPC規格のNegotiation機能を有するか否かを示す情報である。
【0075】
TX102は、これらのパケットを受信すると、ACKを送信し(F703)、I&Cフェーズが終了する。なお、RX101は、WPC規格のI&Cフェーズの通信以外の方法で、RX101の識別情報と機器構成情報(能力情報)をTX102に通知してもよい。また、RX101の識別情報は、WPC規格のWireless Power IDであってもよいし、RX101の個体を識別可能な任意の他の識別情報であってもよい。能力情報として、上記以外の情報を含んでいてもよい。
【0076】
続いて、
図4に戻り、RX101はNegotiationフェーズの通信により、自装置が載置されたTX102の能力情報を取得する(S403)。能力情報には、TX102が、高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報が含まれる。続いて、RX101は、TX102と交渉してGPを決定する(S404)。
【0077】
図7(B)に、Negotiationフェーズの流れの一例が示されている。RX101は、General Request Packetを送信する(F711)。WPC規格において、General Request Packetは、通信相手である装置に対して様々な種類の情報を要求するためのパケットである。このパケットにより、要求する情報の種別を指定することができる。RX101は、要求する情報の種別としてPower Transmitter Identificationを指定し、TX102からPower Transmitter Identification Packetを取得する(F712)。このパケットには、TX102が対応しているWPC規格のバージョン情報であるMajor VersionとMinor Version、およびTX102のManufacturer Codeが含まれる。ここで、TX102が対応しているWPC規格のバージョンが所定のバージョンであれば、TX102が高精度異物検出処理能力を有すると判別できる。この場合、Power Transmitter Identificationが、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報に相当する。なお、Manufacturer Codeで、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを判別できる場合も同様である。
【0078】
また、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報は、他のパケットで取得されてもよい。例えば、RX101は、WPC規格のPower Transmitter Capability PacketやProprietary Packetにより、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報を取得してもよい。これらのパケットは、RX101からGeneral Request Packetで種別を指定することによりTX102から取得することができる。
【0079】
GPの決定は、
図7(B)において、Specific Request Packetと、それに対する応答により行われる。まず、RX101は、TX102に対してSpecific Request Packetを送信することで、要求するGPの値を通知する(F713)。RX101は、要求するGPの値を、自装置で必要な電力、TX102の能力情報やその他の情報に基づいて決定する。GPの値の例は、15ワットである。
【0080】
TX102は、自装置の送電能力に基づいて、RX101からの要求を受け入れるか否かを判定し、受け入れる場合はACK(肯定応答)を、受け入れない場合はNAK(否定応答)を、RX101へ送信する。なお、
図7(B)においては、TX102がACKを送信する例を示している(F714)。TX102がACKを送信した場合、GPの値は、RX101によって要求された値と同じとして決定され、RX101とTX102の双方のメモリに記憶される。一方、TX102がNAKを送信した場合、GPの値はデフォルトの小さな値、例えば5ワットとなる。デフォルトの値は、一例において、事前にRX101とTX102の双方のメモリに記憶される。なお、以上で述べたGPの決定方法は一例であり、GPは他の方法で決定されてもよい。
【0081】
続いて、
図4に戻り、RX101は、GPの決定後、受電部203に負荷(バッテリ202)が接続されない状態、すなわち受電電力を最小とした状態でキャリブレーション処理を行うようにTX102に要求する(S405)。なお、受電部203に負荷を接続するとは、受電部203で受電した電力が負荷に供給される状態を指し、直接的に受電部203に負荷が接続される場合も間接的に受電部203に負荷が接続される場合も含まれる。
【0082】
図7(C)に、Calibrationフェーズの流れが示されている。このキャリブレーションの要求は、通信部206を介するReceived Power Packetの送信によって行われる(F721)。Received Power Packetには、現在の受電電力である、Received Power Valueと、1点目のキャリブレーション処理を行うことを示す情報である、Mode=1という情報が含まれる。TX102は、キャリブレーション処理を行ったらACK(F722)を返す。TX102におけるキャリブレーション処理の詳細については後述する。
【0083】
図4に戻り、RX101は、受電部203に負荷(バッテリ202)を接続し、充電部211によりバッテリ202への充電を開始する(S406)。
【0084】
そして、RX101は、S403で取得したTX102の能力情報に基づき、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを判断する(S407)。TX102が高精度異物検出処理能力を有する場合(S407でYES)、RX101は、現在の受電電力でキャリブレーション処理を行うようにTX102に要求する(S408)。なお、この要求も、
図7(C)で示すReceived Power Packet(F721)によって行われる。この場合、F721で示すReceived Power Packetには、受電電力の他に、2点目のキャリブレーション処理を行うことを示す情報である、Mode=2という情報が含まれる。
【0085】
なお、RX101は、キャリブレーション処理を行うことを要求しない場合にも、
図7(C)のF721で示すReceived Power Packetによって、現在の受電電力を定期的にTX102に通知する。キャリブレーション処理を行うことを要求しない場合は、Received Power Packetには受電電力の他にMode=0という情報が含まれる。この定期的な通知は、S404でGPが決定された後、行われる。
【0086】
その後、RX101は、現在の受電電力が、前回キャリブレーション処理が行われたときの受電電力より所定値以上大きいかを判定する(S409)。この所定値は、メモリ209に予め記憶されているものであり、例えば0.5ワットであってもよいし、他の値でもよい。S409の判定が成立する場合(S409でYES)、現在の受電電力でキャリブレーション処理を行うようにTX102に要求する(S410)。この要求も、
図7(C)で示すReceived Power Packet(F721)によって行われてもよい。この場合、F721で示すReceived Power Packetには、受電電力の他に、3点目のキャリブレーション処理を行うことを示す情報である、Mode=3という情報が含まれていてもよい。また、Modeは、0、1、2以外の値であれば、他の値であってもよい。さらに、Received Power Packet以外のパケットにより、キャリブレーション処理を行うように要求するにしてもよい。
【0087】
S409の判定が成立しない場合(S409でNO)、S410の処理はスキップされる。
【0088】
続いて、RX101は、バッテリ202が満充電、または検出部204がDigital Pingを検出しているかを判定する(S411)。いずれかの判定が成立する場合(S411でYES)、受電部203への負荷(バッテリ202)の接続を切断して、受電を終了する(S412)。満充電の場合は、S412の処理において、TX102に対し、満充電となったため送電を停止するように通知する。この通知は、例えばWPC規格のEnd Power Transfer Packetによって行われる。一方、S411でNOの場合、S409の処理に戻る。
【0089】
以上に述べたS409~S411の処理ループにより、充電を行いながら、充電のための受電電力が所定値以上増加した場合に、3点以上のキャリブレーション処理を行うことを要求することができる。
【0090】
また、TX102が高精度異物検出処理能力を有さないと判定された場合(S407でNO)には、受電電力を最大とする状態で、2点目のキャリブレーション処理を行うことを要求する(S413)。この要求も、
図7(B)のReceived Power Packet(F721)を用いて行う。なお、RX101は、S403において、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報を取得できなかった場合にも、TX102は該能力を有さないと判定する。高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報を取得できない場合とは、以下のような場合である。すなわち、取得したPower Transmitter Identification Packetにより示されるTX102のバージョンが所定のバージョンではない場合や、パケットを所定時間内に受信できなかった場合が挙げられる。
【0091】
また、RX101は、受電電力を最大とする状態とは、受電電力を次のような電力とすることをいう。すなわち、RX101が負荷(バッテリ202)に供給できる最大の電力、載置から充電完了までの期間に負荷(バッテリ202)で必要となると予想される最大の電力、またはGPに基づく電力のいずれかである。
【0092】
S413の処理後、RX101は、受電電力をS406の電力に戻す(S414)。そして、RX101は、バッテリ202が満充電、または検出部204がDigital Pingを検出しているかを判定する(S415)。いずれかの判定が成立する場合(S415でYES)、受電部203への負荷(バッテリ202)の接続を切断して、受電を終了する(S412)。満充電の場合は、S412の処理において、TX102に対し、満充電となったため送電を停止するように通知する。この通知は、例えばWPC規格のEnd Power Transfer Packetによって行われる。S415でNOの場合、S415でYESとなるまでのS415の処理を定期的に繰り返す。
【0093】
以上、RX101における処理をまとめると、RX101は、TX102に載置されると、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報を取得する。TX102が該能力を有する場合は、3以上の状態でキャリブレーション処理を行うよう要求する。一方、TX102が該能力を有さない場合は、2つの状態でキャリブレーション処理を行うように要求する。
【0094】
[送電装置における処理]
続いて、TX102が実行する処理の流れの例について、
図5を用いて説明する。本処理は、例えばTX102の制御部301がメモリ309から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、TX102の電源がオンとされたことに応じて、TX102のユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、又は、TX102が商用電源に接続され電力供給を受けていることに応じて、実行されうる。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。なお、このTX102は、高精度異物検出処理能力を有している。
【0095】
送受電に関する処理において、TX102は、まず、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理を実行し、RX101の載置を待ち受ける(S501)。具体的には、TX102は、WPC規格のAnalog Pingを繰り返し、間欠的に送信し、充電台103に載置される物体の有無を検出する。そして、TX102は、充電台103に物体が載置されたことを検出した場合、Digital Pingを送信する。そして、そのDigital Pingに対する所定の応答(Signal Strength Packet)があった場合に、検出された物体がRX101であり、RX101が充電台103に載置されたと判定する。
【0096】
TX102は、RX101の載置を検出すると、通信部306により、前述のI&Cフェーズの通信を実行し、そのRX101から識別情報と機器構成情報(能力情報)を取得する(S502)。
【0097】
続いて、TX102は、RX101からGeneral Request Packet(
図7(B)のF711)を受信すると、自装置の能力情報を送信する(S503)。この能力情報は、Power Transmitter Identification Packet(
図7(B)のF712)を用いて送信される。Power Transmitter Identification Packetは、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報が含まれる。
【0098】
そして、TX102は、RX101の要求に基づいてGPを決定する(S504)。具体的には、受電装置の処理において説明したように、
図7(B)で示すSpecific Request Packetと、それに対する応答により行われる。
【0099】
その後、TX102は、RX101の要求に基づいてキャリブレーション処理を行う(S505)。ここで、キャリブレーション処理について説明する。RX101から受信するキャリブレーション処理の要求には、RX101における受電電力の情報と、何点目のキャリブレーション処理であるかの情報(上述したmodeが表す数値)が含まれる。TX102は、キャリブレーション処理の要求を受信すると、その時の送電部303における送電電力と、キャリブレーション処理の要求に含まれる受電電力の差から電力損失を求める。そして、何点目のキャリブレーション処理か、受電電力、電力損失を対応付けてメモリ309に記憶する。なお、電力損失に代えて送電電力が、受電電力に対応付けられて記憶されてもよいし、電力損失と送電電力の両方が受電電力と対応付けられて記憶されてれもよい。
【0100】
図8に、メモリ309に記憶される情報の一例を示す。例えば、
図8の行801の情報は、キャリブレーション処理の要求に、Mode=1、受電電力=0.4ワットが含まれている場合、キャリブレーション処理の結果を示す。電力損失は、キャリブレーションの要求を受信した後にTX102が最初に測定した送電電力が0.5ワットと、受電電力との差である0.1ワットとなる。そのため、行801のように、Mode=1、受電電力=0.4ワット、電力損失=0.1ワットの3つのデータが対応付けられて、メモリ309に記憶される。その後、TX102は、2回目のキャリブレーション処理の要求を受信すると、送電電力を測定し、さらに電力損失を算出し、メモリ309に、行802で示す内容を記憶する。以後、キャリブレーション処理の要求に応じて、同様の処理を実行し、データを追加する。
【0101】
次に、TX102は、2点でのキャリブレーション処理を実施済みか判定する(S506)。この判定は、Mode=2に対応するキャリブレーション処理の結果を記録したかどうかで行われる。2点目のキャリブレーション処理を実施済みでない場合(S506でNO)、S505に戻り、RX101の要求に基づいて、2点目のキャリブレーション処理を実施する。
【0102】
TX102は、2点目のキャリブレーション処理を実施済みである場合(S506でYES)、異物検出処理を開始する(S507)。TX102における異物検出処理は、以下のとおり行われる。まず、TX102は、RX101から定期的に現在の受電電力の情報を取得する。そして、TX102は、取得した受電電力における電力損失の期待値を、
図8で示す1点目と2点目のキャリブレーション処理の結果を用いて線形補間により求める。線形補間は、上記の式5、6を用いることができる。
【0103】
TX102は、受電電力を取得した後、最初に測定した送電電力と、取得した受電電力との差から電力損失を算出する。そして、その算出した電力損失と、期待値との差と、閾値とを比較する。その比較結果が所定値を超える場合、金属片などの異物による電力の損失があると判定し、送電範囲に異物があると判定する。そして、TX102は、制御部201により送電を制限する。具体的には、制御部201は、送電を停止するか、送電電力を下げるように、送電部303を制御する。また、制御部201は、RX101に、通信部306を介して、異物が存在することを通知してもよい。また、制御部201、送電電力を制限することを通知したりする。
【0104】
ここで、2点のキャリブレーション処理の結果が、
図8の行801と行802に示す内容であった場合を例として、具体的に説明する。例えば、現在の受電電力(RP)の値が0.7ワットである場合、行801(RP1=0.4ワット、PL1=0.1ワット)と行802(RP1=1.0ワット、PL2=0.3ワット)の数値を上記の式5、6に当てはめる。この場合、電力損失の期待値PLは、以下のとおりとなる。
【0105】
PL=(0.3-0.1)/(1.0-0.4)*(0.7-0.4)+0.1=0.2
そして、TX102は、受電電力を取得した後、最初に測定した送電電力と、現在の受電電力(RP=0.7ワット)との差から電力損失を算出する。そして、その電力損失の値と、期待値(PL)である0.2ワットが、所定値以上の場合は、異物において電力が損失されていると判断し、異物が送電範囲にあると判断する。所定値は、例えば1ワットのような絶対値でもよいし、例えば期待値に対して50パーセントというような相対値でもよい。この所定値に関する情報は、メモリ309に記憶されている。また、所定値は、受電電力や電力損失の期待値に応じて段階的に変化してもよい。
【0106】
また、TX102は、RX101に対して送電を行う(S508)。この送電の間も異物検出処理は実施される。
【0107】
TX102は、送電中にもキャリブレーション処理の要求を受け付ける。そして、TX102は、その要求に基づいて、3点目以降のキャリブレーション処理を行う(S509)。キャリブレーション処理の結果が3点以上ある場合は、上記の式5、6のパラメータを以下のように変更する。つまり、(RP1、PL1)、(RP2、PL2)は、現在の受電電力(RP)に、近い2点のキャリブレーション処理の結果を用いる。例えば、S509の処理により、
図8の行803が得られている場合であって、現在の受電電力(RP)の値が1.6ワットとする。その場合、(RP1、PL1)、(RP2、PL2)は、行802のデータ(1.0ワット,0.3ワット)と、行803のデータ(1.5ワット,0.4ワット)が選択される。このデータから、式5、6により電力損失の期待値(PL)が0.42ワットと求められる。その後の処理は、上述した異物検出処理と同様である。
【0108】
TX102は、RX101が満充電であるか、または異物を検出したか判定する(S510)。RX101が満充電であるかの判定は、RX101からのEnd Power Transfer Packetを通信部306により受信したか否かに基づいて行われる。通信部306がEnd Power Transfer Packetを受信した場合、RX101が満充電であると判定する。また、異物の検出の判定は、上述した異物検出処理により行われる。
【0109】
そして、TX102は、RX101が満充電であると判定した場合、または異物を検出した場合(S510でYES)、送電を停止する(S511)。なお、TX102は、送電中に異物を検出した場合には送電を停止した後で、S501のPingフェーズのDigital Pingの送信に戻るようにしてもよい。また、TX102は、RX101が満充電であると判定しなかった場合、または異物を検出しなかった場合(S510でNO)、S509の処理に戻る。
【0110】
[システムの動作]
図4、
図5を用いて説明したRX101とTX102の動作シーケンスについて、
図6を用いて説明する。このTX102は、高精度異物検出処理能力を有する。
図6では、上から下の方向に時間が流れるものとする。初期状態として、RX101はTX102に載置されておらず、またRX101の負荷(バッテリ202)は受電部203に接続されていないものとする。
【0111】
まず、TX102は、Analog Pingを送信し、物体が充電台103に載置されるのを待つ(F601、S501)。RX101が載置されると(F602)、Analog Pingの電圧又は電流に変化が生じる(F603)。その変化により、TX102は物体の載置を検出する(F604)。物体の載置を検出するとTX102は、Digital Pingを送信する(F605)。このDigital Pingを受信することにより、RX101は自装置がTX102に載置されたことを検出する(F606)。またTX102は、Digital Pingに対する応答により、充電台103に載置された物体がRX101であることを検出する。
【0112】
続いて、I&Cフェーズの通信により、RX101から、識別情報と機器構成情報(能力情報)がTX102に送信される(F607、S402、S502)。続いて、TX102は、RX101からの要求により、自装置の能力情報をRX101に送信する。この能力情報には、TX102が高精度異物検出処理能力を有するかを示す情報が含まれる(F608、S403、S503)。
【0113】
そして、RX101とTX102の間の交渉によりGPが決定される(F609、S404、S504)。この時点で、RX101において、負荷(バッテリ202)は受電部203に接続されていない状態である(F610)。この状態で、RX101は、TX102に対して、キャリブレーション処理の実施を要求する(F611、S405)。TX102は、この要求に基づいて、1点目のキャリブレーション処理を実施する(F612、S505)。
【0114】
次に、RX101は、負荷(バッテリ202)を受電部203に接続する(F613、S406)。TX102が高精度異物検出処理能力を有するため、RX101は、負荷(バッテリ202)に接続した直後の受電電力において、2点目のキャリブレーション処理を実施するように要求する(F614、S408)。TX102は、この要求に基づいて、2点目のキャリブレーション処理を実施する(F615)。
【0115】
この時点で、2点のキャリブレーション処理が実施済みであるため、TX102は、異物検出処理を開始する(F616、S507)。続いて、RX101とTX102は、異物検出処理を行いつつ、RX101に対して送電を行う(F617)。
【0116】
そして、RX101の受電電力が2点目のキャリブレーション処理時より所定値以上大きくなった場合(F618、S409)、RX101は、3点目のキャリブレーション処理を実施するように要求する(F619、S410)。TX102は、この要求に基づいて、3点目のキャリブレーション処理を実施する(F620)。
【0117】
従来、2点目のキャリブレーション処理は、負荷(バッテリ202)を受電部203に接続した後に、受電電力を最大まで上げた状態で行われていた。これに対して、本実施形態では、2点目のキャリブレーション処理は、負荷(バッテリ202)を受電部203に接続した直後の受電電力で行われている。すなわち、本実施形態により、受電電力を最大まで上げる処理を省略し、より短い時間で2点目のキャリブレーション処理を完了させて、異物検出処理を開始させることができる。RX101の充電台103への載置から異物検出処理の開始までの時間が短縮されるため、異物検出処理開始前に異物が充電台103に載置され、その後正しく異物検出できなくなるリスクを低減することができる。
【0118】
ただし、受電電力が大きくなった場合には、2点のキャリブレーション処理の結果を用いる異物検出処理では、精度が低減する。そのため、本実施形態では、3点以上のキャリブレーションが行われる。この3点以上のキャリブレーション処理の結果を用いれば、より精度の高い異物検出を行うことができる。
【0119】
なお、
図4において、TX102が高精度異物検出処理能力を有さない場合は(S407でNO)、受電電力を最大とする従来のキャリブレーション処理を行う(S413)。これにより、RX101において、高精度異物検出処理能力を有さないTX102に対する後方互換性が確保される。
【0120】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0121】
なお、
図4、
図5のフローチャ-トで示される処理の少なくとも一部がハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各処理を実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。また、FPGAと同様にして、Gate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0122】
101 受電装置
203 受電部
206 通信部
212 能力情報取得部