(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】圧電振動片及び圧電振動子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20240129BHJP
H03H 9/10 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H03H9/19 F
H03H9/10
(21)【出願番号】P 2019170856
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】皿田 孝史
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153873(JP,A)
【文献】特開2017-069734(JP,A)
【文献】特開2017-060123(JP,A)
【文献】特開2017-050750(JP,A)
【文献】特開2008-236439(JP,A)
【文献】特開2017-034667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATカット水晶基板により形成された圧電板と、
前記圧電板の外表面に形成され、前記圧電板を厚み滑り振動させる電極膜と、を備え、
前記圧電板は、
前記圧電板の厚さ方向に互いに対向する一対の主面を有する圧電板本体と、
前記主面から前記厚さ方向に膨出するように形成されたメサ部と、を備え、
前記電極膜は、
前記メサ部の頂面上に形成された励振電極と、
前記主面上に形成されると共に、前記メサ部に対して前記圧電板の面内方向に沿う第1方向に間隔をあけて配置されたマウント電極と、
前記励振電極と前記マウント電極との間に形成され、前記励振電極と前記マウント電極とを電気的接続する接続電極と、を備え、
前記接続電極は、
前記励振電極から、前記厚さ方向から見た平面視で前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び、前記主面上に引き出された第1引き出し電極と、
前記第1引き出し電極の引き出し端部から前記主面上を前記第1方向に沿って延び、前記マウント電極に繋がる第2引き出し電極と、を備え
、
前記第1引き出し電極の前記引き出し端部は、前記励振電極から前記第2方向に沿って離れるにしたがって、前記マウント電極側に向かって延びる傾斜縁部を有し、
前記傾斜縁部は、前記傾斜縁部と前記第2引き出し電極との接続角部の位置が、前記励振電極のうち前記マウント電極側に位置する縁部に対して、前記第1方向において同位置となるように形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片において、
前記第1引き出し電極は、前記励振電極のうち、前記励振電極における前記第1方向の中央部分よりも前記マウント電極側に位置する部分に繋がっている、圧電振動片。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電振動片において、
前記第1方向は、前記ATカット水晶基板における結晶軸のX軸に沿った方向とされ、
前記圧電板本体は、前記第2方向に沿って延びると共に前記第1方向に互いに対向する一対の第1側面と、前記第1方向に沿って延びると共に前記第2方向に互いに対向する一対の第2側面と、を備え、前記圧電板の厚さ方向から見た平面視で外形が四角形状に形成され、
前記第1引き出し電極は、前記第1側面から前記第1方向に、下記式(1)を満たす距離H(mm)だけ離間した位置に一部分が重なるように形成されている、圧電振動片。
0.8・(n・λ)≦H
≦1.2・(n・λ
)・・・(1)
〔式中、nは整数、λは厚み滑り振動時に前記圧電板に生じる屈曲振動の波長(mm)である。〕
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動片において、
前記励振電極は、前記圧電板の厚さ方向から見た平面視で外形が四角形状に形成され、
前記第1引き出し電極は、前記励振電極のうち四隅の角部を除く部分に繋がっている、圧電振動片。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の圧電振動片と、
導電性接着剤を介して前記圧電振動片が実装され、且つ前記圧電振動片を内部に収容するパッケージと、を備え、
前記圧電振動片は、前記マウント電極と前記導電性接着剤とが電気的接続された状態で、前記導電性接着剤にマウントされていることを特徴とする圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片及び圧電振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
厚み滑り振動を主振動とする圧電振動片として、水晶をATカットすることで形成された圧電振動片(いわゆるATカット振動片)が知られている。ATカット振動片は、小型化、高周波数化に適し、且つ他の振動モードで振動する圧電振動片に比べて周波数温度特性が優れている特性を有しているため、各種の電子機器、電子デバイス等に好適に利用される。特に、ATカット振動片は周波数温度特性が3次曲線となるので、広範囲で安定した周波数を得ることが可能とされ、携帯電話等に好適とされている。
【0003】
この種のATカット振動片では、CI値(クリスタルインピーダンス)やQ値等の周波数特性の向上を図るために、厚み滑り振動による主振動の振動エネルギーを該振動片の中央部に効率良く閉じ込める工夫がされている場合が多い。
【0004】
例えば下記特許文献1には、圧電板の中央部を厚く形成したメサ型の圧電振動片が開示されている。
この圧電振動片は、多段型のメサ構造とされた一対の振動部(メサ部)が両面に形成された圧電板と、圧電板の両面にそれぞれ形成された一対の電極膜と、を備えている。一対の振動部は、圧電板の中央部に位置するように形成されている。圧電板のうち振動部の周囲に配置される部分は、振動部よりも厚みが薄く形成された外周部とされている。
一対の電極膜は、振動部上に形成された励振電極と、外周部上に形成されたマウント電極と、励振電極とマウント電極とを電気的接続する接続電極と、をそれぞれ備えている。励振電極は、圧電板の厚み方向に向かい合うように配置されている。接続電極は、圧電板の長辺よりも内側寄りに配置されると共に、振動部の斜面上を通過しながら電極板の長辺に沿って直線状に延びるように形成され、励振電極とマウント電極とを接続している。
【0005】
このように構成された圧電振動片は、導電性接着剤等の実装部材を介して実装基板に対してマウントされることで、パッケージ内に収容される。具体的には、実装基板に形成された端子電極上に、例えばニードル式のディスペンサ等を利用して導電性接着剤をバンプ状に塗布し、該導電性接着剤に対してマウント電極をマウントさせる。これにより、導電性接着剤を通じて端子電極とマウント電極とを導通させた状態で、導電性接着剤を介して圧電板を保持することができ、圧電振動片を実装基板上に実装することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧電振動片は、パッケージ内に収容されることで、例えば電子チップ部品として各種の電子部品、電子デバイス等に組み込まれて利用される場合が多い。この種の電子チップ部品は、電子部品、電子デバイス等の小型化、薄型化等に対応して、さらなる小型化、薄型化が要求されることが予想される。
この場合、圧電振動片を収容するパッケージ自体のサイズをさらに小型化する必要があるので、圧電振動片とパッケージの内壁とがより接近した状態となり、圧電振動片と内壁との間に十分な隙間を確保することが難しくなることが予想される。そのため、導電性接着剤の塗布位置をパッケージの内壁から離れた位置に設定せざるを得ないといった制限が生じてしまう。
【0008】
従って、上記従来の圧電振動片(ATカット振動片)の場合には、圧電振動片に対する導電性接着剤の位置が、圧電板の長辺上ではなく、長辺よりも内側に寄った位置になってしまう。そのため、導電性接着剤は、接続電極に対して重なり合う範囲が拡大してしまい、接続電極上を伝わりながら振動部(メサ部)側に濡れ広がり易くなってしまう。これにより、導電性接着剤が振動部にまで達するおそれがあり、厚み滑り振動の振動特性を低下させてしまう可能性があった。
【0009】
従って、従来の圧電振動片では、パッケージのさらなる小型化を図った場合に安定且つ良好な振動特性を得ることが難しく、改善の余地があった。
さらに、導電性接着剤が接続電極上を濡れ広がり易いので、例えば圧電振動片のマウント後に行う検査の際に、導電性接着剤を視認することが難しくなってしまう。従って、例えば導電性接着剤の形成位置の品質管理を行うことが難くなり、適正な振動特性を有する圧電振動片を安定して提供することが難しくなってしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、導電性接着剤によって振動特性が影響を受けてしまうことを抑制することができ、安定且つ良好な振動特性を有する圧電振動片及び圧電振動子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る圧電振動片は、ATカット水晶基板により形成された圧電板と、前記圧電板の外表面に形成され、前記圧電板を厚み滑り振動させる電極膜と、を備え、前記圧電板は、前記圧電板の厚さ方向に互いに対向する一対の主面を有する圧電板本体と、前記主面から前記厚さ方向に膨出するように形成されたメサ部と、を備え、前記電極膜は、前記メサ部の頂面上に形成された励振電極と、前記主面上に形成されると共に、前記メサ部に対して前記圧電板の面内方向に沿う第1方向に間隔をあけて配置されたマウント電極と、前記励振電極と前記マウント電極との間に形成され、前記励振電極と前記マウント電極とを電気的接続する接続電極と、を備え、前記接続電極は、前記励振電極から、前記厚さ方向から見た平面視で前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び、前記主面上に引き出された第1引き出し電極と、前記第1引き出し電極の引き出し端部から前記主面上を前記第1方向に沿って延び、前記マウント電極に繋がる第2引き出し電極と、を備え、前記第1引き出し電極の前記引き出し端部は、前記励振電極から前記第2方向に沿って離れるにしたがって、前記マウント電極側に向かって延びる傾斜縁部を有し、前記傾斜縁部は、前記傾斜縁部と前記第2引き出し電極との接続角部の位置が、前記励振電極のうち前記マウント電極側に位置する縁部に対して、前記第1方向において同位置となるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る圧電振動片によれば、メサ部の頂面上に形成された励振電極と、圧電板本体の主面上に形成されたマウント電極とを接続する接続電極が、第1引き出し電極と第2引き出し電極とで構成されている。特に第1引き出し電極は、励振電極から、メサ部とマウント電極とが並ぶ方向である第1方向に交差する第2方向に沿って延びることで、主面上に引き出されるように形成されている。そして、第2引き出し電極は、主面上に引き出された第1引き出し電極の引き出し端部から主面上を第1方向に沿って延びることで、マウント電極に繋がるように形成されている。
【0013】
このように、励振電極から第2方向に沿って第1引き出し電極を主面上に一旦引き出した後、第2引き出し電極をマウント電極に繋げているので、第2引き出し電極の位置を第1引き出し電極の長さ分だけ圧電板のサイド寄りに位置させることができる。従って、圧電振動片をマウントさせるための導電性接着剤の位置を、パッケージとの接触を回避するために圧電板の中央寄りに配置した場合であっても、マウント電極と第2引き出し電極との接続部分を導電性接着剤から第2方向に離間させることができる。これにより、導電性接着剤が第2引き出し電極上を伝わりながら濡れ広がってしまうことを抑制することができる。そのため、導電性接着剤が第2引き出し電極上を伝わってメサ部まで到達することを抑制することができ、厚み滑り振動の振動特性に影響を与えてしまうことを防止することができる。
さらに、引き出し端部が傾斜縁部を有していることで、引き出し端部を通じて第1引き出し電極と第2引き出し電極とをよりスムーズに繋げることができる。従って、厚み滑り振動時に、接続電極での振動伝搬を抑制することができ、振動特性の安定化を図ることができる。
さらに、傾斜縁部と第2引き出し電極との接続角部の位置が、励振電極のうちマウント電極側に位置する縁部に対して第1方向において同位置となるように形成されている。そのため、先に述べた場合と同様に、屈曲振動の波長における腹となる位置に、励振電極のうちマウント電極側に位置する縁部を位置させることで、同時に接続角部の位置も、屈曲振動の波長における腹となる位置に位置させることが可能となる。従って、さらに効果的にスプリアス発振を抑制することが可能となる。
【0014】
(2)前記第1引き出し電極は、前記励振電極のうち、前記励振電極における前記第1方向の中央部分よりも前記マウント電極側に位置する部分に繋がっても良い。
【0015】
この場合には、接続電極全体の長さを短くすることができるので、接続電極の電気抵抗を小さくすることができる。従って、マウント電極及び接続電極を通じて励振電極に効率良く通電することができ、厚み滑り振動を効率良く発生させることができる。
【0016】
(3)前記第1方向は、前記ATカット水晶基板における結晶軸のX軸に沿った方向とされ、前記圧電板本体は、前記第2方向に沿って延びると共に前記第1方向に互いに対向する一対の第1側面と、前記第1方向に沿って延びると共に前記第2方向に互いに対向する一対の第2側面と、を備え、前記圧電板の厚さ方向から見た平面視で外形が四角形状に形成され、前記第1引き出し電極は、前記第1側面から前記第1方向に、下記式(1)を満たす距離H(mm)だけ離間した位置に一部分が重なるように形成されても良い。
0.8・(n・λ)≦H≦1.2・(n・λ)・・・(1)
〔式中、nは整数、λは厚み滑り振動時に前記圧電板に生じる屈曲振動の波長(mm)である。〕
【0017】
この場合には、メサ部とマウント電極とが並ぶ方向である第1方向を、厚み滑り振動時に該振動が大きく変位するX軸(結晶軸)に沿った方向とすることができる。ところで厚み滑り振動時、圧電板には主振動である厚み滑り振動に強く結合する屈曲振動(厚み屈曲振動)が励起されてしまうことが知られている。屈曲振動は、いわゆる副振動の1つであり、厚み滑り振動の振動を妨げる不要波であるため、屈曲振動の振動エネルギーをできるだけ抑制することが求められる。
【0018】
このような背景のもと、第1引き出し電極を、圧電板本体における第1側面から第1方向に、上記式(1)を満たす距離H(mm)だけ離間した位置に一部分が重なるように形成している。これにより、屈曲振動の波長λにおける腹となる位置に、圧電板本体の第1側面及び第1引き出し電極をそれぞれ位置させることが可能となる。これにより、不要波である屈曲振動を抑圧することができ、屈曲振動のエネルギーを抑制しながら厚み滑り振動を発生させることができる。従って、スプリアス発振を抑制することができ、さらに高品質な振動特性を具備する圧電振動片とすることができる。
なお、上記式(1)の距離Hの範囲を超えた場合には、屈曲振動の波長λにおける腹となる位置から圧電板本体の第1側面及び第1引き出し電極の位置が大きく外れ易く、屈曲振動の影響によって例えば振動特性にばらつきが生じる等、振動特性が低下するおそれがある。このようなことから、上記式(1)の通り距離Hの範囲を規定している。
【0019】
(4)前記励振電極は、前記圧電板の厚さ方向から見た平面視で外形が四角形状に形成され、前記第1引き出し電極は、前記励振電極のうち四隅の角部を除く部分に繋がっても良い。
【0020】
この場合には、励振電極の四隅の角部を残しておくことができるので、励振電極の外形形状が崩れ難く、メサ部に対して適切に電圧を印加させ易い。そのため、厚み滑り振動を安定的に発生させ易く、振動特性の安定化を図ることができる。
【0025】
(5)本発明に係る圧電振動子は、前記圧電振動片と、導電性接着剤を介して前記圧電振動片が実装され、且つ前記圧電振動片を内部に収容するパッケージと、を備え、前記圧電振動片は、前記マウント電極と前記導電性接着剤とが電気的接続された状態で、前記導電性接着剤にマウントされていることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る圧電振動子によれば、上述した圧電振動片を具備しているので、導電接着剤の位置を圧電板の中央寄りに配置したとしても、導電性接着剤が第2引き出し電極上を伝わりながら濡れ広がってしまうことを抑制することができる。そのため、導電性接着剤との接触を考慮して、圧電振動片とパッケージとの間に第2方向に大きな隙間を確保する必要がなく、圧電振動片とパッケージとの間の第2方向の間隔を狭くすることが可能である。これにより、パッケージのサイズを小さくすることができ、圧電振動子の小型化に繋げることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、導電性接着剤によって振動特性が影響を受けてしまうことを抑制することができ、安定且つ良好な振動特性を有する圧電振動片及び圧電振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る圧電振動子の分解斜視図である。
【
図2】
図1に示す圧電振動片をベース基板に対してマウントした状態を、リッド基板を外した状態で上方から見た圧電振動子の上面図である。
【
図3】
図2に示すA-A線に沿った圧電振動子の縦断面図である。
【
図6】
図4に示す矢印B方向から見た圧電振動片の側面図である。
【
図7】
図4に示す矢印C方向から見た圧電振動片の側面図である。
【
図8】
図5に示すD-D線に沿った圧電振動子の縦断面図である。
【
図9】人工水晶とATカット水晶基板との関係を示す図である。
【
図10】
図5に示すマウント電極及び接続電極の周辺を拡大した上面図である。
【
図11】
図5に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、圧電ウエハの両面にエッチング保護膜及びフォトレジスト膜を成膜した状態を示す断面図である。
【
図12】
図5に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、
図11に示すフォトレジスト膜を利用して外形パターンを形成した状態を示す断面図である。
【
図13】
図5に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、
図12に示す外形パターンにより、エッチング保護膜を利用してメサマスクを形成した状態を示す断面図である。
【
図14】
図5に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、
図13に示すメサマスクを利用して圧電ウエハをウェットエッチング加工し、第1メサ部及び第2メサ部を形成した状態を示す断面図である。
【
図15】
図5に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、
図14に示すエッチング保護膜及びフォトレジスト膜を除去した状態を示す断面図である。
【
図16】
図5に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、
図15に示す圧電ウエハの両面にエッチング保護膜及びフォトレジスト膜を成膜した状態を示す断面図である。
【
図17】
図5に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、
図16に示すエッチング保護膜を利用して外形マスクを形成した状態を示す断面図である。
【
図18】
図5に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、
図17に示す外形マスクを利用して圧電ウエハをウェットエッチング加工し、外形形成した状態を示す断面図である。
【
図19】
図18に示す圧電振動片を製造する際の一工程図であって、
図18に示すエッチング保護膜及びフォトレジスト膜を除去した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、圧電振動片を有する表面実装型の圧電振動子を例に挙げて説明する。
【0030】
図1~
図3に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、厚み滑り振動モードで振動する圧電振動片10と、導電性接着剤2を介して圧電振動片10が実装され、且つ圧電振動片10を内部に収容するパッケージ3と、を備えている。
【0031】
パッケージ3は、圧電振動片10を収容する収容凹部を有する実装基板であるベース基板4と、ベース基板4の収容凹部を閉塞する封口板であるリッド基板5と、を備え、ベース基板4にリッド基板5が積層された状態で接合された箱状に形成されている。リッド基板5によって閉塞された収容凹部内は、圧電振動片10を収容するキャビティ6として機能する。
なお、パッケージ3の詳細な構成については、後に説明する。
【0032】
本実施形態では、パッケージ3の厚み方向を上下方向L1といい、上下方向L1のうちベース基板4からリッド基板5に向かう方向を上方、その反対を下方という。さらに、パッケージ3の平面視で互いに直交する方向を第1方向L2及び第2方向L3という。
【0033】
本実施形態のパッケージ3は、第2方向L3に沿った長さよりも第1方向L2に沿った長さの方が長い平面視矩形状に形成されている。ただし、パッケージ3の形状は、この場合に限定されるものではなく、例えば第1方向L2に沿った長さが第2方向L3に沿った長さよりも短い平面視矩形状に形成されていても構わないし、第1方向L2に沿った長さと第2方向L3に沿った長さとが同等とされた平面視正方形状に形成されていても構わない。
【0034】
(圧電振動片)
図4~
図8に示すように、圧電振動片10は、
図9に示すATカット水晶基板20により形成された圧電板30と、圧電板30の外表面に形成され、圧電板30を厚み滑り振動させる電極膜60と、を備えている。なお、各図面では、電極膜60の膜厚を誇張して図示している。
【0035】
図9に示すように、ATカット水晶基板20は、ランバード加工によって結晶軸が明確に定義された人工水晶21をATカットすることで得られた基板である。結晶軸は、電気軸であるX軸、機械軸であるY軸、及び光学軸であるZ軸とされている。ATカットとは、これら3つの水晶軸のうち、Z軸に対してX軸回りに35度15分、傾いたZ’軸方向に人工水晶21を切り出す加工方法である。
ATカットによって切り出されたATカット水晶基板20を利用して作製された圧電振動片10は、周波数温度特性が安定していると共に、構造、形状等が単純で加工が容易とされ、CI値が低いという利点を有している。
【0036】
本実施形態では、圧電振動片10の各構成を説明する際、互いに直交し合うX軸、Y’軸、及びZ’軸からなるXY’Z’座標系を主に利用して説明する。なおY’軸は、X軸及びZ’軸に対して互いに直交する軸である。さらにXY’Z’座標系において、各図面中、矢印方向を+側、矢印とは反対の方向を-側として説明する。
【0037】
図4~
図8に示すように、圧電板30は、ATカット水晶基板20を、ウェットエッチング加工等によってY’軸が厚さ方向となるように平面視矩形状にされている。
具体的には、圧電板30は、外形がZ’軸に沿った長さよりもX軸に沿った長さの方が長い平面視矩形状に形成されている。ただし、圧電板30の外形形状は、この場合に限定されるものではなく、Z’軸に沿った長さの方がX軸に沿った長さの方よりも長い平面視矩形状に形成されていて構わないし、Z’軸に沿った長さとX軸に沿った長さとが同等とされた平面視正方形状に形成されていても構わない。
【0038】
なお、
図1に示すように、圧電振動片10はY’軸が上下方向L1に一致し、X軸が第1方向L2に一致し、且つZ’軸が第2方向L3に一致するようにパッケージ3内に実装される。
【0039】
図4~
図8に示すように、圧電板30は、該圧電板30の厚さ方向(Y’軸)に対向する一対の主面、すなわち第1主面32及び第2主面33を有する圧電板本体31と、第1主面32及び第2主面33から厚さ方向(Y’軸)にそれぞれ膨出するように形成された第1メサ部(本発明に係るメサ部)40及び第2メサ部(本発明に係るメサ部)50と、を備えている。
【0040】
第1主面32は、X軸及びZ’軸で画成される面内に形成され、且つY’軸の+側に形成されている。第2主面33は、X軸及びZ’軸で画成される面内に形成され、且つY’軸の-側に形成されている。
【0041】
さらに圧電板30は、平面視矩形状に形成されているので、圧電板本体31は4つの側面を有している。具体的には、圧電板本体31は、Z’軸(第2方向L3)に沿って延びると共に、X軸(第1方向L2)に互いに対向する一対の第1側面34、35と、X軸(第1方向L2)に沿って延びると共にZ’軸(第2方向L3)に互いに対向する一対の第2側面36、37と、を備えている。
先に述べたように、圧電板30は外形がZ’軸よりもX軸に長い平面視矩形状に形成されているので、第1側面34、35が短辺として機能し、第2側面36、37が長辺として機能する。
【0042】
一対の第1側面34、35のうち、X軸の+側に位置する側面を一方の第1側面34といい、X軸の-側に位置する側面を他方の第1側面35という。同様に、一対の第2側面36、37のうち、Z’軸の+側に位置する側面を一方の第2側面36といい、Z’軸の-側に位置する側面を他方の第2側面37という。
【0043】
第1メサ部40は、第1主面32からY’軸の+側に向けて膨出するように形成されていると共に、外形が平面視矩形状に形成されている。
具体的には、第1メサ部40は、圧電板本体31の外形形状に対応して、外形がZ’軸に沿った長さよりもX軸に沿った長さの方が長い平面視矩形状に形成されている。第1メサ部40は、圧電板本体31における中央部に配置されている。
【0044】
第2メサ部50は、第2主面33からY’軸の-側に向けて膨出するように形成されていると共に、外形が平面視矩形状に形成されている。
具体的には、第2メサ部50は、圧電板本体31の外形形状に対応して、外形がZ’軸に沿った長さよりもX軸に沿った長さの方が長い平面視矩形状に形成されている。第2メサ部50は、第1メサ部40と同様に、圧電板本体31における中央部に配置されている。これにより、第1メサ部40及び第2メサ部50は、圧電板30の厚さ方向に互いに向かい合うように形成されている。
【0045】
上述のように第1メサ部40及び第2メサ部50が形成されているので、第1メサ部40の周囲には第1主面32が第1メサ部40を囲むように矩形の枠状に露出していると共に、第2メサ部50の周囲には第2主面33が第2メサ部50を囲むように矩形の枠状に露出している。なお、圧電板本体31のうち、第1メサ部40及び第2メサ部50の周囲を囲む部分は、薄肉の外周部として機能する。
【0046】
第1メサ部40は、平面視矩形状の頂面41と、該頂面41に連設され、頂面41の周囲を囲むように配置された4つの側面と、を備えている。
頂面41は、X軸及びZ’軸で画成される面内に形成され、第1主面32に対して平行に配置されている。
4つの側面は、頂面41に対してX軸の+側に配置された第1メサ側面42と、頂面41に対してX軸の-側に配置された第2メサ側面43と、頂面41に対してZ’軸の+側に配置された第3メサ側面44と、頂面41に対してZ’軸の-側に配置された第4メサ側面45と、で構成されている。
【0047】
第1メサ側面42及び第2メサ側面43は、Z’軸(第2方向L3)に沿って延びると共に、X軸(第1方向L2)に互いに対向するように配置されている。第1メサ側面42は、頂面41から第1主面32側に向かう(下方に向かう)にしたがって、圧電板本体31における一方の第1側面34に向けて延びる傾斜面とされている。第2メサ側面43は、頂面41から第1主面32側に向かうにしたがって、圧電板本体31における他方の第1側面35に向けて延びる傾斜面とされている。
【0048】
第1メサ側面42及び第2メサ側面43の傾斜角度(第1主面32に対する仰角)は、例えばウェットエッチング加工時におけるエッチング時間、エッチング順番等に応じて変化するが、第1主面32に対してわずかな仰角となるように傾斜している。
なお、第1メサ側面42及び第2メサ側面43は、単一の傾斜面である必要はなく、例えば複数面が多面的に連設した傾斜面とされていても構わないし、湾曲しながら傾斜しても構わない。
【0049】
第3メサ側面44及び第4メサ側面45は、X軸(第1方向L2)に沿って延びると共に、Y’軸(第2方向L3)に互いに対向するように配置されている。第3メサ側面44は、頂面41及び第1主面32に対してほぼ垂直或いは僅かに傾斜している。図示の例では、第3メサ側面44は僅かに傾斜している。
【0050】
第4メサ側面45は、頂面41から第1主面32側に向かうにしたがって、圧電板本体31における他方の第2側面37に向けて延びる傾斜面とされている。なお、第4メサ側面45の傾斜角度は、第1メサ側面42及び第2メサ側面43の傾斜角度よりも大きい角度とされている。なお、第4メサ側面45は、人工水晶21の自然面であるm面をベースとした面とされている(
図9参照)。
【0051】
第2メサ部50は、第1メサ部40と同様に形成されている。
第2メサ部50は、平面視矩形状の頂面51と、該頂面51に連設され、頂面51の周囲を囲むように配置された4つの側面(第1メサ側面52、第2メサ側面53、第3メサ側面54及び第4メサ側面55)と、を備えている。
従って、第2メサ部50における頂面51、第1メサ側面52、第2メサ側面53、第3メサ側面54及び第4メサ側面55については、詳細な説明は省略する。ただし、第2メサ部50においては、第3メサ側面54が頂面51に対してZ’軸の-側に配置され、第4メサ側面55が頂面51に対してZ’軸の+側に配置されている。
【0052】
電極膜60は、第1メサ部40側及び第1主面32側に主に形成された第1電極膜61と、第2メサ部50側及び第2主面33側に主に形成された第2電極膜62と、を備えている。
なお、電極膜60としては、例えば金等の単層膜で形成しても構わないし、クロム等の下地層上に金等を積層した積層膜等で形成しても構わない。
【0053】
第1電極膜61は、第1メサ部40の頂面41上に形成された励振電極70と、圧電板本体31の第1主面32上に形成されると共に、第1メサ部40に対してX軸(第1方向L2)に間隔をあけて配置されたマウント電極71と、励振電極70とマウント電極71との間に形成され、励振電極70とマウント電極71とを電気的接続する接続電極72と、を備えている。
【0054】
励振電極70は、第1メサ部40の形状に対応して、外形が平面視矩形状となるように形成されている。具体的には、励振電極70は、外形がZ’軸に沿った長さよりもX軸に沿った長さの方が長い平面視矩形状に形成されている。これにより、励振電極70は四隅に角部70aを有している。
【0055】
マウント電極71は、第1主面32上において、圧電板本体31の一方の第1側面34と他方の第2側面37との角部に配置されていると共に、第1メサ部40よりもX軸の+側に配置され、Z軸’に沿って延びるように形成されている。
【0056】
なお、マウント電極71は第2主面33上にも形成されている。第1主面32上に形成されたマウント電極71と、第2主面33上に形成されたマウント電極71とは、互いにY’軸に向かい合うように形成されている。これにより、第2主面33上に形成されたマウント電極71は、圧電板本体31の一方の第1側面34と他方の第2側面37との角部に配置されていると共に、第2メサ部50よりもX軸の+側に配置されている。
【0057】
第1主面32上に形成されたマウント電極71と第2主面33上に形成されたマウント電極71とは、一方の第1側面34上及び他方の第2側面37上に形成された回り込み電極73を介して電気的接続されている。ただし回り込み電極73は、一方の第1側面34上にだけ形成されていても構わないし、他方の第2側面37上にだけ形成されていても構わない。
【0058】
接続電極72は、
図10に示すように、励振電極70からZ’軸(第2方向L3)に沿って延び、第1主面32上に引き出された第1引き出し電極75と、第1引き出し電極75の引き出し端部77から第1主面32上をX軸(第1方向L2)に沿って延び、マウント電極71に繋がる第2引き出し電極76と、を備えている。
【0059】
第1引き出し電極75は、励振電極70からZ’軸の-側に向けて引き出され、第4メサ側面45上を経由して第1主面32上まで引き出されている。第1引き出し電極75は、励振電極70のうち、該励振電極70におけるX軸(第1方向L2)の中央部分よりもマウント電極71側に位置する部分に繋がっている。つまり、第1引き出し電極75は、励振電極70のうち、マウント電極71側に位置する縁部70b付近に繋がっている。
【0060】
この際、第1引き出し電極75は、励振電極70の角部70aを除くように繋がっている。これにより、第1引き出し電極75のうちX軸の+側に位置する第1縁部75aは、励振電極70における上記縁部70bよりもX軸の-側に位置している。
なお、第1引き出し電極75における第1縁部75aは、第2引き出し電極76のうちZ’軸の+側に位置する第1縁部76aに対して略直角に交わるように繋がっている。
【0061】
第1引き出し電極75のうち、第1主面32上に引き出された引き出し端部77は、励振電極70からZ’軸(第2方向L3)に沿って離れるにしたがって、マウント電極71側に向かって延びる傾斜縁部77aを有している。これにより、引き出し端部77は、平面視三角形状に形成されている。
なお、傾斜縁部77aは、第1引き出し電極75のうち第1縁部75aよりもX軸の-側に位置する第2縁部75bに対して繋がっていると共に、第2引き出し電極76のうち第1縁部76aよりもZ’軸の-側に位置する第2縁部76bに対して繋がっている。
【0062】
傾斜縁部77aと第2引き出し電極76における第2縁部76bとの接続角部78の位置は、励振電極70のうちマウント電極71側に位置する縁部70bに対して、X軸(第1方向L2)において同位置となるように形成されている。
【0063】
第2引き出し電極76は、第1引き出し電極75の引き出し端部77からX軸(第1方向L2)に沿って直線状に延びるように形成され、マウント電極71に繋がっている。
なお、第2引き出し電極76における第2縁部76bは、圧電板本体31における他方の第2側面37よりもZ’軸の+側に位置している。これにより、第2引き出し電極76と圧電板本体31の他方の第2側面37との間には僅かな隙間が確保されている。
【0064】
上述のように構成された第1電極膜61において、第1引き出し電極75は、圧電板本体31における一方の第1側面34から、X軸(第1方向L2)に下記式(1)を満たす距離H(mm)だけ離間した位置に一部分が重なるように形成されている。
H=n・λ±20%・・・(1)
なお、式(1)において、nは整数である。λは厚み滑り振動時に圧電板30に生じる屈曲振動(厚み屈曲振動)の波長(mm)である。
【0065】
図示の例では、圧電板本体31における一方の第1側面34と、第1引き出し電極75における第1縁部75aとの間のX軸(第1方向L2)に沿った間隔が距離Hに設定されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば圧電板本体31における一方の第1側面34と、第1引き出し電極75における第2縁部76bとの間のX軸(第1方向L2)に沿った間隔が距離Hとなるようにしても構わない。
【0066】
さらに第1電極膜61において、励振電極70のうちマウント電極71側に位置する縁部70bと、圧電板本体31における一方の第1側面34との間のX軸(第1方向L2)に沿った間隔が、下記式(2)を満たす距離K(mm)だけ離間するように設定されている。
K=m・λ±20%・・・(2)
なお、式(2)において、mは上記n以外の整数である。λは厚み滑り振動時に圧電板30に生じる屈曲振動(厚み屈曲振動)の波長(mm)である。
【0067】
図4~
図8に示すように、第2電極膜62は、上述した第1電極膜61と同等の構成とされていると共に、第2主面33側から見た第2メサ部50に対する位置関係が、第1主面32側から見た第1メサ部40に対する第1電極膜61の位置関係と同等となるように形成されている。従って、第2電極膜62については、詳細な説明は省略する。
【0068】
第2電極膜62について簡単に説明すると、第2電極膜62は、第2メサ部50の頂面51上に形成された励振電極70と、圧電板本体31の第2主面33上に形成されると共に、第2メサ部50に対してX軸(第1方向L2)に間隔をあけて配置されたマウント電極71と、励振電極70とマウント電極71との間に形成され、励振電極70とマウント電極71とを電気的接続する接続電極72と、を備えている。
【0069】
励振電極70は、第2メサ部50の形状に対応して、外形が平面視矩形状となるように形成されている。マウント電極71は、第2主面33上において、圧電板本体31の一方の第1側面34と一方の第2側面36との角部に配置されている。また、マウント電極71は第1主面32上にも形成されている。第1主面32上に形成されたマウント電極71と、第2主面33上に形成されたマウント電極71とは、互いにY’軸に向かい合うように形成されている。これにより、第1主面32上に形成されたマウント電極71は、圧電板本体31の一方の第1側面34と一方の第2側面36との角部に配置されていると共に、第2メサ部50よりもX軸の+側に配置されている。
そして、第1主面32上に形成されたマウント電極71と第2主面33上に形成されたマウント電極71とは、一方の第1側面34上及び一方の第2側面36上に形成された回り込み電極73を介して電気的接続されている。
【0070】
第1引き出し電極75は、励振電極70からZ’軸の+側に向けて引き出され、第4メサ側面55上を経由して第2主面33上まで引き出された第1引き出し電極75と、第1引き出し電極75の引き出し端部77から第2主面33上をX軸(第1方向L2)に沿って延び、マウント電極71に繋がる第2引き出し電極76と、を備えている。
【0071】
(圧電振動子)
上述のように構成された圧電振動片10は、
図1~
図3に示すように、導電性接着剤2を介してベース基板4のベース面4a上にマウントされることで、パッケージ3内に収容されている。パッケージ3は、圧電振動片10の形状に対応して、第1方向L2に沿った長さの方が第2方向L3に沿った長さよりも長い直方体状に形成されている。
【0072】
ベース基板4は、底壁部7と、底壁部7の外周縁部に沿って上方に向けて延びた周壁部8と、を備え、上方に開口した有底筒状に形成されている。周壁部8は、圧電振動片10の周囲を囲む枠部であって、第2方向L3よりも第1方向L2に長い平面視矩形状に形成されている。
【0073】
底壁部7の上面は、上記ベース面4aとして機能する。このベース面4aには、一対のインナー電極9が第2方向L3に間隔をあけて形成されている。なお、インナー電極9は、例えば底壁部7を上下に貫通する図示しない貫通電極を介して底壁部7の下面側に形成された図示しないアウター電極に電気的に接続されている。
【0074】
ベース基板4は、例えばソーダ石灰ガラス材料やセラミックス材料等から形成されている。ただしベース基板4の材料は、この場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。さらにベース基板4としては、単層基板からなる単層構造としても構わないし、複数の基板を積層した積層構造としても構わない。
【0075】
リッド基板5は、周壁部8の形状に対応して、第2方向L3よりも第1方向L2に長い平面視矩形状に形成され、ベース基板4における周壁部8の上端開口縁に重なるように配置されている。リッド基板5は、周壁部8に対して密に接合されている。接合方法としては、特に限定されるものではないが、例えばシーム溶接、レーザ溶接、各種の接着、陽極接合による固着等が挙げられる。
ベース基板4に対するリッド基板5の接合によって、ベース基板4の内部が気密に封止されて、キャビティ6として機能する。
【0076】
導電性接着剤2は、例えばニードル式のディスペンサ等を利用して、一対のインナー電極9上にバンプ状に塗布されている。圧電振動片10は、第1電極膜61のマウント電極71及び第2電極膜62のマウント電極71が導電性接着剤2に対してそれぞれ重なるように載置されることでマウントされている。
これにより、圧電振動片10は、導電性接着剤2を介してベース基板4のベース面4a上に機械的に保持されると共に、インナー電極9とマウント電極71とがそれぞれ導通した状態となる。
【0077】
上述のように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板4に形成された一対のアウター電極間に所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナー電極9、マウント電極71及び接続電極72を介して、第1メサ部40側の励振電極70と、第2メサ部50側の励振電極70との間に駆動電圧を印加することができる。これにより、圧電板30を、主振動モードである厚み滑り振動させることができ、該振動を例えばMHz帯の発振周波数等として利用することができる。なお、厚み滑り振動時、圧電板30はX軸に沿って主に大きく変位することで、厚み滑り振動する。
【0078】
(圧電振動片及び圧電振動子の製造方法)
次に、上述のように構成された圧電振動片10及び圧電振動子1を製造する製造方法について簡単に説明する。
ランバート加工された
図9に示す人工水晶21をATカットしてATカット水晶基板20を取り出した後、ATカット水晶基板20に対して鏡面研磨加工等の所定処理を施すことで、
図11に示すように所定の厚みに調整された圧電ウエハ22を準備する。
【0079】
次いで、メサマスクの形成工程を行う。
本工程では、
図11に示すように、圧電ウエハ22の両面にエッチング保護膜80を、例えばスパッタリング法や蒸着法等により成膜すると共に、エッチング保護膜80上に、例えばスピンコート法等によりレジスト材料を塗布して、フォトレジスト膜81を成膜する。
【0080】
エッチング保護膜80としては、例えば厚さが数十nmのクロム(Cr)の金属層と、厚さが数十nmの金(Au)の金属層とが順次積層された積層膜を用いることが可能である。レジスト材料としては、例えば環化イソプレン等の環化ゴムを主体にしたゴム系ネガレジストを用いることが可能である。
【0081】
次いで、圧電ウエハ22の一方側の面を、第1メサ部40の外形パターンが形成された図示しないフォトマスクを用いて露光する。同様に、圧電ウエハ22の他方側の面を、第2メサ部50の外形パターンが形成された図示しないフォトマスクを用いて露光する。その後、圧電ウエハ22の両面に成膜されたフォトレジスト膜81をそれぞれ現像することで、
図12に示すように、圧電ウエハ22の両面に、フォトレジスト膜81を利用して第1メサ部40及び第2メサ部50の外形パターン82を形成することができる。
【0082】
次いで、外形パターン82をマスクとして、圧電ウエハ22の両面に成膜されたエッチング保護膜80をウェットエッチング加工して、マスクされていないエッチング保護膜80を選択的に除去する。これにより、
図13に示すように、圧電ウエハ22の両面に、第1メサ部40及び第2メサ部50の外形パターンのメサマスク83を形成することができる。
【0083】
続いて、メサ形成工程を行う。
本工程では、
図14に示すように、メサマスク83でマスクされた圧電ウエハ22をウェットエッチング加工して、マスクされていない圧電ウエハ22を選択的に除去する。なお、このときの薬液としては、例えばフッ酸を好適に用いることができる。これにより、圧電ウエハ22の両面に、第1メサ部40及び第2メサ部50の外形パターンを形成することができる。このとき、人工水晶21における結晶軸の異方性の関係により、第1メサ部40及び第2メサ部50には、自然結晶面であるm面が現れる。このm面が形成された部分が第4メサ側面45、55となる。
【0084】
ウェットエッチング加工後、
図15に示すように、マスクとして利用していたエッチング保護膜80及びフォトレジスト膜81を除去する。これにより、圧電ウエハ22の両面に、第1メサ部40及び第2メサ部50をそれぞれ形成することができる。
【0085】
続いて、外形マスク形成工程を行う。
本工程では、
図16に示すように、第1メサ部40及び第2メサ部50を形成した圧電ウエハ22の両面に、再びエッチング保護膜85を成膜すると共に、エッチング保護膜85上にフォトレジスト膜86を成膜する。なお、エッチング保護膜85及びフォトレジスト膜86の材質及び形成方法等は、メサマスク形成工程におけるエッチング保護膜80及びフォトレジスト膜81と同様である。
【0086】
次いで、圧電ウエハ22の両面を、圧電板30の外形パターンが形成された図示しないフォトマスクを用いてそれぞれ露光する。その後、圧電ウエハ22の両面に成膜されたフォトレジスト膜86をそれぞれ現像することにより、圧電ウエハ22の両面に成膜されたフォトレジスト膜86に、圧電板30の外形パターンを形成することができる。
次いで、外形パターンをマスクとして、圧電ウエハ22の両面に成膜されたエッチング保護膜85をウェットエッチング加工して、マスクされていないエッチング保護膜85を選択的に除去する。これにより、
図17に示すように、圧電ウエハ22の両面に圧電板30の外形パターンの外形マスク87を形成することができる。
【0087】
続いて、外形形成工程を行う。
本工程では、
図18に示すように、外形マスク87を介して圧電ウエハ22をウェットエッチング加工して、圧電板30の外形パターンを形成する。この際、メサ形成工程と同様に、例えば薬液としてフッ酸を好適に用いることができる。これにより、圧電板30を形成することができる。
次いで、
図19に示すように、マスクとして利用していたエッチング保護膜85及びフォトレジスト膜86を除去する。
【0088】
そして最後に、圧電板30の外表面上に、励振電極70等の各電極を含む第1電極膜61及び第2電極膜62からなる電極膜60を形成する電極膜形成工程を行うことで、
図4~
図8に示す圧電振動片10を製造することができる。
なお、電極膜形成工程としては、例えば圧電板30の外表面の全体に金属膜を成膜した後、電極膜60のパターンが形成された図示しない電極パターンをマスクとして、金属膜を選択的にエッチング加工(メタルエッチング)することで、電極膜60を形成することができる。なお、このときのエッチング加工としては、例えばドライエッチングでも構わない。
【0089】
次いで、上述のように製造した圧電振動片10を、パッケージ3内に実装する工程を行う。本工程では、
図1に示すように、ベース基板4のベース面4aに形成された一対のインナー電極9上に、例えばニードル式のディスペンサ等を利用して導電性接着剤2をバンプ状に塗布する。次いで、第1電極膜61のマウント電極71及び第2電極膜62のマウント電極71が導電性接着剤2に対してそれぞれ重なるように圧電振動片10を載置する。これにより、導電性接着剤2を介して圧電振動片10をベース面4a上にマウントすることができる。
【0090】
圧電振動片10のマウント後、例えば導電性接着剤2の形成位置が適切であるか否かの確認や、圧電振動片10が適切に厚み滑り振動するか否かの作動確認等を行った後、例えば所定の圧力環境下でベース基板4に対してリッド基板5を接合する工程を行う。これにより、
図1~
図3に示す圧電振動子1を製造することができる。
【0091】
特に、本実施形態の圧電振動片10によれば、
図4~
図8及び
図10に示すように、励振電極70とマウント電極71とを接続する接続電極72が、第1引き出し電極75と第2引き出し電極76とで構成されているうえ、第1引き出し電極75がZ’軸(第2方向L3)に沿って延びることで、第1主面32及び第2主面33上に引き出されるように形成されている。そして、第2引き出し電極76は、第1引き出し電極75の引き出し端部77から、第1主面32及び第2主面33上をX軸(第1方向L2)に沿って直線状に延びることで、マウント電極71に繋がるように形成されている。
【0092】
このように励振電極70からZ’軸(第2方向L3)に沿って第1引き出し電極75を第1主面32及び第2主面33上に一旦引き出した後、第2引き出し電極76をマウント電極71に繋げているので、第2引き出し電極76の位置を、第1引き出し電極75の長さ分だけ圧電板30の長辺寄り(一対の第2側面36、37)寄りに位置させることができる。
【0093】
従って、圧電振動片10をマウントさせるための導電性接着剤2の位置を、パッケージ3におけるベース基板4の周壁部8との接触を回避するために、圧電板30の中央寄りに配置した場合であっても、マウント電極71と第2引き出し電極76との接続部分を導電性接着剤2からZ’軸(第2方向L3)に離間させることができる。
これにより、導電性接着剤2が第2引き出し電極76上を伝わりながら濡れ広がってしまうことを抑制することができる。そのため、導電性接着剤2が第2引き出し電極76上を伝わって第1メサ部40及び第2メサ部50まで到達することを抑制することができ、厚み滑り振動の振動特性に影響を与えてしまうことを防止することができる。
【0094】
その結果、安定且つ良好な振動特性を具備する高品質な圧電振動片10とすることができる。しかも、導電性接着剤2の位置を、パッケージ3におけるベース基板4の周壁部8との接触を回避するために圧電板30の中央寄りに配置することができるので、パッケージ3の小型化に繋がる圧電振動片10とすることができる。
【0095】
さらに、導電性接着剤2が第2引き出し電極76上を伝わりながら濡れ広がってしまうことを抑制できるので、例えば圧電振動片10のマウント後に行う検査の際に、
図2に示すように、導電性接着剤2を視認し易い。従って、例えば導電性接着剤2の形成位置の品質管理を容易且つ適切に行うことが可能となる。これにより、適正な振動特性を有する圧電振動片10とすることができる。
【0096】
以上説明したように、本実施形態の圧電振動片10及び圧電振動子1によれば、導電性接着剤2によって振動特性が影響を受けてしまうことを抑制することができ、安定且つ良好な振動特性を具備させることができる。
特に、本実施形態の圧電振動子1によれば、
図2に示すように、導電性接着剤2との接触を考慮して、圧電振動片10とパッケージ3との間に第2方向L3に大きな隙間を確保する必要がなく、圧電振動片10とパッケージ3におけるベース基板4の周壁部8との間の第2方向L3の間隔を狭くすることが可能である。これにより、パッケージ3のサイズを小さくすることができ、圧電振動子1の小型化に繋げることができる。
【0097】
さらに、本実施形態の圧電振動片10では、第1引き出し電極75を、励振電極70のうち該励振電極70におけるX軸(第1方向L2)の中央部分よりもマウント電極71側に位置する部分に繋げている。そのため、接続電極72全体の長さを短くすることができるので、接続電極72の電気抵抗を小さくすることができる。従って、マウント電極71及び接続電極72を通じて励振電極70に効率良く通電することができ、厚み滑り振動を効率良く発生させることができる。
【0098】
さらに、第1引き出し電極75を励振電極70のうち四隅の角部70aを除く部分に繋げているので、励振電極70の四隅の角部70aを残しておくことができ。そのため、励振電極70の外形形状が崩れ難く、第1メサ部40及び第2メサ部50に対して適切に駆動電圧を印加させ易い。従って、厚み滑り振動を安定的に発生させ易く、振動特性の安定化を図ることができる。
【0099】
さらに、第1引き出し電極75の引き出し端部77が傾斜縁部77aを有しているので、引き出し端部77を通じて第1引き出し電極75と第2引き出し電極76とをよりスムーズに繋げることができる。従って、厚み滑り振動時に、接続電極72での振動伝搬を抑制することができ、振動特性の安定化を図ることができる。
【0100】
さらに
図10に示すように、第1引き出し電極75を、圧電板本体31における一方の第1側面34から第1方向L2(X軸)に、下記式(1)を満たす距離H(mm)だけ離間した位置に一部分が重なるように形成している。
H=n・λ±20%・・・(1)
【0101】
厚み滑り振動時、圧電板30には主振動である厚み滑り振動に強く結合する屈曲振動(厚み屈曲振動)が励起されてしまうことが知られている。屈曲振動は、いわゆる副振動の1つであり、厚み滑り振動の振動を妨げる不要波であるため、屈曲振動の振動エネルギーをできるだけ抑制することが求められる。
この点、第1引き出し電極75を上述した距離Hに着目した位置に形成することで、屈曲振動の波長λにおける腹となる位置に、圧電板本体31における一方の第1側面34及び第1引き出し電極75をそれぞれ位置させることが可能となる。これにより、不要波である屈曲振動を抑圧することができ、屈曲振動のエネルギーを抑制しながら厚み滑り振動を発生させることができる。従って、スプリアス発振を抑制することができ、さらに高品質な振動特性を具備する圧電振動片10とすることができる。
【0102】
なお、屈曲振動の波長λ(mm)は、第1メサ部40及び第2メサ部50を含む圧電板30の厚みTによって決定されることが知られている。さらに、厚み滑り振動における周波数(発振周波数)F(MHz)は、第1メサ部40及び第2メサ部50を含む圧電板30の厚みTに反比例し、F=1.67/Tの関係を満たすことが知られている。
さらには、屈曲振動の波長λ(mm)と周波数F(MHz)との関係に着目すると、以下の関係となることも知られている。これにより、上述した距離Hを算出することが可能となる。
・λ/2=(1.332/F)-0.0024
【0103】
なお、上記式(1)中、±20%を超えた場合には、屈曲振動の波長λにおける腹となる位置から圧電板本体31の一方の第1側面34及び第1引き出し電極75の位置が大きく外れ易く、屈曲振動の影響によって例えば振動特性にばらつきが生じる等、振動特性が低下するおそれがある。このようなことから、上記式(1)において±20%に規定している。
例えば、周波数Fが37.4(MHz)の場合において、第1引き出し電極75の位置を上記距離H(mm)から±20%の範囲で移動させたときのCI値を測定すると、19Ω~35Ωであったのに対し、±30%の範囲で移動させたときのCI値を測定すると、24Ω~85Ωの結果が得られた。従って、±20%を超えてしまうと、振動特性にばらつきが生じてしまう。
【0104】
さらに、励振電極70においても、マウント電極71側に位置する縁部70bと、圧電板本体31における一方の第1側面34との間のX軸(第1方向L2)に沿った間隔が、下記式(2)を満たす距離K(mm)だけ離間するように設定されている。
K=m・λ±20%・・・(2)
【0105】
そのうえで、第1引き出し電極75の傾斜縁部77aと第2引き出し電極76との接続角部78の位置が、励振電極70における縁部70bに対して第1方向L2(X軸)において同位置となるように形成されている。従って、先に述べた場合と同様に、屈曲振動の波長λにおける腹となる位置に、励振電極70における縁部70b及び接続角部78をそれぞれ位置させることができる。従って、スプリアス発振をさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0106】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【符号の説明】
【0107】
L2…第1方向
L3…第2方向
1…圧電振動子
2…導電性接着剤
3…パッケージ
10…圧電振動片
20…ATカット水晶基板
31…圧電板本体
32…圧電板本体の第1主面(主面)
33…圧電板本体の第2主面(主面)
34、35…第1側面
36、37…第2側面
40…第1メサ部(メサ部)
41…第1メサ部の頂面
50…第2メサ部(メサ部)
51…第1メサ部の頂面
60…電極膜
70…励振電極
70a…励振電極の角部
71…マウント電極
72…接続電極
75…第1引き出し電極
76…第2引き出し電極
77…引き出し端部
77a…傾斜縁部
78…接続角部