(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240129BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240129BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01G4/33 102
(21)【出願番号】P 2019176951
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】武 宜成
(72)【発明者】
【氏名】青柳 善雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 秀俊
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513218(JP,A)
【文献】特表2009-515353(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069363(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0020267(US,A1)
【文献】特開2013-026540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G4/00-4/10
H01G4/14-4/22
H01G4/224
H01G4/255-4/40
H01G13/00-17/00
H01L21/822
H01L27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si基材と、
前記Si基材に設けられ、第1誘電体層、前記第1誘電体層の一方の面に設けられ第1導電材料から成る第1電極層、及び前記第1誘電体層の他方の面に設けられた第2電極層を有するMIM構造体と、
前記Si基材に設けられた第1外部電極と、
前記Si基材に設けられた第2外部電極と、
前記第1電極層と前記第1外部電極とを接続する接続導体と、を備え、
前記接続導体は、前記Si基材と接する接触部を有
し、
前記第1電極層と前記第1外部電極との間の電流経路に垂直な方向における前記接続導体の断面積は、前記接触部において最小となる、
キャパシタ。
【請求項2】
前記接続導体は、前記第1導電材料よりも融点が低い第2導電材料によって構成される、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記第2導電材料はアルミニウムである、請求項2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記Si基材の一面には複数のトレンチが設けられており、
前記MIM構造体は、前記複数のトレンチのうちの少なくとも一つに埋め込まれるように前記Si基材に設けられている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記複数のトレンチは、前記MIM構造体が埋め込まれていない少なくとも一つの空トレンチを含み、
前記少なくとも一つの空トレンチは、前記接触部によって少なくとも部分的に覆われている、請求項
4に記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記空トレンチの深さ方向における寸法は、前記MIM構造体が埋め込まれているトレンチの深さ方向における寸法より小さい、請求項
5に記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記第2電極層と前記第2外部電極とを接続し、前記第1導電材料よりも融点が低い第3導電材料から成る引出導体を備える、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記引出導体は、前記Si基材と接触しないように設けられる、請求項
7に記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記接続導体を複数備え、
前記MIM構造体は、互いに並列に接続された複数のセクションを有し、
前記複数のセクションのそれぞれに対して前記接続導体が設けられている、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項10】
前記MIM構造体は、前記第2電極層の上に設けられた第2誘電体層、及び前記第2誘電体層の上に設けられた第3電極層を更に有し、
前記第3電極層と前記第1外部電極とを接続し、前記第3電極層を構成する材料よりも融点が低い前記第2導電材料から成る他の接続導体を備える、請求項
2に記載のキャパシタ。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載のキャパシタを備える回路基板。
【請求項12】
請求項
11に記載の回路基板を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタの一種として、薄膜プロセスにより形成されたMIM構造体を備え、このMIM構造体により容量を発生させる薄膜キャパシタが知られている。薄膜キャパシタにおいては、小型化又は高容量化のために、単位面積あたりの発生容量を向上させることが求められている。
【0003】
従来から、単位面積あたりの容量を向上させることが可能なトレンチキャパシタが知られている。トレンチキャパシタにおいては、基材にトレンチが形成されており、このトレンチに容量を発生させるためのMIM構造体が埋め込まれている。このMIM構造体は、誘電体からなる誘電体層と導体からなる電極層とが交互に積層された積層体である。トレンチキャパシタにおいては、基材の厚さ方向に延びるトレンチの側面にも誘電体層及び導体層が設けられるため、単位面積あたりの容量を向上させることができる。従来のトレンチキャパシタは、例えば、以下の特許文献1~特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016-0020267号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016-0284694号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014-0145299号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレンチキャパシタにおいては、電極層に挟まれた誘電体層において絶縁破壊が起こることがある。例えば、製造時に誘電体層に欠陥が生じた場合や誘電体層において劣化が生じた場合、当該欠陥や劣化がある部位において絶縁破壊が起こりやすい。誘電体層において絶縁破壊が起こると、破壊箇所を流れる電流によってジュール熱が発生し、このジュール熱によって溶融した電極層が当該破壊箇所の周囲に流動する。この流動した電極層によって、当該誘電体層の両面に設けられている電極層同士がショートするので、トレンチキャパシタにおける通常の故障モードはショートモードとなる。
【0006】
トレンチキャパシタにおいてショートモードでの故障が発生すると、当該トレンチキャパシタに接続されている回路の構成部品に本来は印加されない電流(すなわち、過電流)が印加されてしまう。このような本来は想定されていない電流の印加は、当該回路の誤作動や破壊の原因となる。このような他回路への不要な電流の印加を防止するために、トレンチキャパシタにおいて望ましい故障モードはオープンモードである。
【0007】
本開示の目的の一つは、誘電体層での絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをオープンモードにすることができるキャパシタを提供することである。本開示のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るキャパシタは、Si基材と、Si基材に設けられ、第1誘電体層、第1誘電体層の一方の面に設けられ第1導電材料から成る第1電極層、及び第1誘電体層の他方の面に設けられた第2電極層を有するMIM構造体と、Si基材に設けられた第1外部電極と、Si基材に設けられた第2外部電極と、第1電極層と第1外部電極とを接続する接続導体と、を備え、接続導体は、Si基材と接する接触部を有する。
【0009】
このキャパシタの接続導体は、Si基材と接する接触部を有している。MIM構造体において絶縁破壊によるショートが発生した場合、過電流によって接続導体が発熱して溶融する。接続導体が接触部を有していることにより、溶融した第2導電材料は接触部の近傍においてSi基材内に拡散する。これにより、接触部の近傍において接続導体が断線して、MIM構造体と第1外部電極との電気的な接続が切断される。したがって、絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをオープンモードにすることができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、接続導体は、第1導電材料よりも融点が低い第2導電材料によって構成されていてもよい。この構成によれば、MIM構造体において絶縁破壊によるショートが発生した場合、過電流によって接続導体が溶融しやすい。したがって、より確実に接触部の近傍において接続導体を断線させることができ、絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをより確実にオープンモードにすることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、第2導電材料はアルミニウムであってもよい。アルミニウムはSi基材内に拡散しやすいので、MIM構造体において絶縁破壊によるショートが発生した際に、より確実に接触部の近傍において接続導体を断線させることができる。したがって、絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをより確実にオープンモードにすることができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、Si基材の一面には複数のトレンチが設けられており、MIM構造体は、複数のトレンチの内の少なくとも一つに埋め込まれるようにSi基材に設けられていてもよい。この構成によれば、キャパシタの寸法を維持したまま静電容量を大きくすることができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、第1電極層と第1外部電極との間の電流経路に垂直な方向における接続導体の断面積は、接触部において最小となっていてもよい。この構成によれば、過電流が接続導体に流れた際に接触部が発熱しやすくなる。したがって、特に接触部において第2導電材料が溶融しやすくなるので、より確実に接触部の近傍において接続導体を断線させることができ、絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをより確実にオープンモードにすることができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、複数のトレンチは、MIM構造体が埋め込まれていない少なくとも一つの空トレンチを含み、少なくとも一つの空トレンチは、接触部によって少なくとも部分的に覆われていてもよい。この構成によれば、過電流が接続導体に流れた際に溶融した第2導電材料が空トレンチ内に流入するので、より確実に接触部の近傍において接続導体を断線させることができる。したがって、絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをより確実にオープンモードにすることができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、空トレンチの深さ方向における寸法は、MIM構造体が埋め込まれているトレンチの深さ方向における寸法より小さくてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、キャパシタは、第2電極層と第2外部電極とを接続し、第1導電材料よりも融点が低い第3導電材料から成る引き出し電極を備えてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、引き出し電極は、Si基材と接触しないように設けられていてもよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、キャパシタは接続導体を複数備え、MIM構造体は、互いに並列に接続された複数のセクションを有し、複数のセクションのそれぞれに対して接続導体が設けられていてもよい。この構成によれば、MIM構造体において絶縁破壊によるショートが発生した場合、ショートした箇所を含むセクションに対して設けられた接続導体のみが切断されるので、故障によるキャパシタの静電容量の変動を小さくすることができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、MIM構造体は、第2電極層の上に設けられた第2誘電体層、及び第2誘電体層の上に設けられた第3電極層を更に有し、第3電極層と第1外部電極とを接続し、第3電極層を構成する材料よりも融点が低い第2導電材料から成る他の接続導体を備えてもよい。この構成によれば、ショートした電極層に接続された接続導体のみが切断されるので、故障によるキャパシタの静電容量の変動を小さくすることができる。
【0020】
本発明の一実施形態は、上記の何れかのキャパシタを備える回路基板に関する。
【0021】
本発明の一実施形態は、上記の回路基板を備える電子機器に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、誘電体層での絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをオープンモードにすることができるキャパシタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係るキャパシタの模式的な平面図である。
【
図2】
図1のキャパシタをI-I線で切断した断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図1のキャパシタのトレンチ部分を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図1のキャパシタの接続導体を概略的に示す上面図である。
【
図5a】ショートが発生する前の接続導体を概略的に示す断面図である。
【
図5b】ショートが発生した後の接続導体を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図1のキャパシタの内部構造を示す等価回路図である。
【
図7a】
図1のキャパシタの製造方法を説明するための図である。
【
図7b】
図1のキャパシタの製造方法を説明するための図である。
【
図7c】
図1のキャパシタの製造方法を説明するための図である。
【
図7d】
図1のキャパシタの製造方法を説明するための図である。
【
図7e】
図1のキャパシタの製造方法を説明するための図である。
【
図7f】
図1のキャパシタの製造方法を説明するための図である。
【
図8】他の実施形態に係るキャパシタを示す断面図である。
【
図9】他の実施形態に係るキャパシタを示す上面図である。
【
図10】
図9のキャパシタの内部構造を示す等価回路図である。
【
図11】他の実施形態に係るキャパシタを示す上面図である。
【
図13】
図11のキャパシタの内部構造を示す等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。特に、後述する電極層や誘電体層は、実際には非常に薄い膜であるが、各図面においては、説明の便宜のために視認できる程度の厚さを有するように記載されている。
【0025】
図1~
図3を参照して、一実施形態に係るキャパシタ1について説明する。これらの図に示されているキャパシタ1は、薄膜プロセスにより作成されたMIM構造体を有する薄膜キャパシタである。本実施形態において、キャパシタ1は、基材の厚さ方向に延びるトレンチ内にMIM構造体が設けられたトレンチキャパシタである。キャパシタ1は、トレンチキャパシタでなくてもよい。
図1は、キャパシタ1の模式的な平面図であり、
図2は、キャパシタ1をI-I線で切断した断面を模式的に示す断面図である。
図3は、キャパシタ1のトレンチ部分を拡大して示す断面図である。
【0026】
図示のように、一実施形態に係るキャパシタ1は、基材10と、基材10に設けられたMIM構造体20と、MIM構造体20を覆うように設けられた保護層40と、第1外部電極2と、第2外部電極3と、接続導体50と、引出導体60と、を備える。第1外部電極2及び第2外部電極3は、保護層40の外側に設けられる。第1外部電極2は、詳しくは後述するように、接続導体50を介してMIM構造体20を構成する電極層と電気的に接続される。第2外部電極3は、引出導体60を介してMIM構造体20を構成する電極層と電気的に接続される。
【0027】
キャパシタ1は、外部電極2及び外部電極3を回路基板に設けられたランドに接合することにより、当該回路基板に実装される。この回路基板は、様々な電子機器に搭載され得る。キャパシタ1が実装された回路基板を備える電子機器には、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ゲームコンソール、及びこれら以外のキャパシタ1が実装された回路基板を備えることができる任意の電子機器が含まれる。
【0028】
図1及び
図2においては、互い直交するX方向、Y方向、及びZ方向が示されている。本明細書においては、これらの図に示されているX方向、Y方向、及びZ方向を基準としてキャパシタ1の構成部材の向きや配置を説明することがある。具体的には、文脈上別に解される場合を除き、キャパシタ1の「幅」方向、「長さ」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1のX軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZ軸に沿う方向とする。本明細書においてキャパシタ1及びその構成部材の上下方向に言及する際には、文脈上別に解される場合を除き、Z軸の正方向がキャパシタ1の上方向とされ、Z軸の負方向がキャパシタ1の下方向とされる。
【0029】
一実施形態において、基材10は、Si等の材料から成る。一実施形態において、基材10は、概ね直方体の形状に形成されており、その幅方向(X軸方向)の寸法は例えば50μm~5000μmとされ、その長さ方向(Y軸方向)の寸法は例えば50μm~5000μmとされ、その厚さ方向(Z軸方向)の寸法は例えば5μm~500μmとされる。本明細書において具体的に示される基材10の寸法は例示に過ぎず、基材10は任意の寸法をとることができる。
【0030】
基材10は、上面10aと、当該上面10aとは反対側の下面10bと、上面10aと下面10bとを接続する側面10cと、後述のトレンチ11を画定する壁部13とを有する。
図1の実施形態において基材10は略直方体状であり、本明細書中では、当該基材10の上面10aと下面10bとを接続する4つの面をまとめて側面10cという。基材10には、その上面10aからZ軸方向に沿って延伸する複数のトレンチ11が形成されている。複数のトレンチ11の各々は、Z軸方向に所定の深さを有するように形成される。本明細書においては、Z軸方向をトレンチ11の深さ方向と呼ぶことがある。
図1に示されているように、複数のトレンチ11の各々は、その平面視の形状が、X軸方向に沿って延びる辺とY軸方向に沿って延びる辺とで画定される略長方形となるように形成されている。図示の実施形態において、複数のトレンチ11の各々は、平面視において、X軸方向に沿って延びる辺がY軸方向に沿って延びる辺よりも短くなるように形成されている。
【0031】
一実施形態において、複数のトレンチ11の各々は、単位面積あたりの高容量化を実現するために、高アスペクト比を有するように形成される。つまり、複数のトレンチ11の各々は、その幅(例えば、X軸方向の辺の長さ)に対する深さ(Z軸方向の寸法)の比が大きくなるように形成される。複数のトレンチ11の各々の幅(X軸方向における寸法)は例えば0.1μm~5μmとされ、その深さ(Z軸方向における寸法)は例えば1μm~100μmとされる。本明細書において具体的に示されるトレンチ11の寸法は例示に過ぎず、トレンチ11は任意の寸法をとることができる。また、トレンチ11の平面視における形状は長方形形状に限られず、トレンチ11は任意の形状をとることができる。一実施形態において、トレンチ11は、その深さ(Z軸方向における寸法)が40μmであり、その幅(X軸方向における寸法)が1.0μmとなるように構成される。
【0032】
トレンチ11は、例えばSi基板の表面にトレンチ11のパターンに対応する開口が形成されたマスクを形成した後、エッチングにより当該Si基板をエッチングすることで形成され得る。トレンチ11のエッチング加工は、ボッシュプロセスを用いた深掘りRIE(深掘り反応性エッチング)等の反応性イオンエッチング法により行われ得る。
【0033】
複数のトレンチ11のうち隣接するトレンチ11同士は壁部12によって隔てられている。言い換えると、壁部12は、基材10の一部であり、隣接するトレンチ11を互いから離隔させるように構成される。壁部12は、上面10aに沿った第1方向(すなわち、Y軸方向)に延びる複数の主壁部13と、第1方向と直交し上面10aに沿った第2方向(すなわち、X軸方向)に延びる複数の副壁部14と、を含む。壁部12の詳細な構成については、後述する。
【0034】
続いて、MIM構造体20について説明する。前述のように、基材10には、MIM構造体20が設けられる。図示のように、その一部がトレンチ11の各々に埋め込まれるように、基材10に設けられている。
【0035】
MIM構造体20は、基材10の上面10a及びトレンチ11に追従する形状を有するように構成される。MIM構造体20は、第1導電層と、第2導電層と、第1導電層と第2導電層とに挟まれた誘電体層とを有する。すなわち、MIM構造体20は、導電層と誘電体層とが交互に積層された積層体である。一実施形態におけるMIM構造体20は、下部電極層22(第1導電層)と、当該下部電極層22の上に設けられた誘電体層21と、当該誘電体層21の上に設けられた上部電極層23(第2導電層)と、を有する。本明細書においてMIM構造体20における上下方向に言及する場合には、下部電極及び上部電極という慣用されている名称と整合性をとるために、Z軸方向に沿う上下方向ではなく、基材10により近い側を「下」とし、基材10からより遠い側を「上」として説明がなされることがある。MIM構造体20は、2層以上のMIM層を含んでもよい。例えば、MIM構造体20が2層のMIM層を有する場合には、下部電極層22、誘電体層21、及び上部電極層23から構成される第1層目のMIM層の上に第2層目のMIM層が形成される。例えば、第2層目のMIM層は、上部電極層23の上に設けられた誘電体層と、この誘電体層の上に設けられた電極層と、を備えることができる。この場合、上部電極層23は、第1層目のMIM層の上側の電極層としての機能と、第2層目のMIM層の下側の電極層としての機能を兼ねる。
【0036】
誘電体層21の材料として、BST(チタン酸バリウムストロンチウム)、BTO(チタン酸バリウム)、チタン酸ストロンチウム(STO)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化チタン(TiO2)、及びこれら以外の誘電体材料を用いることができる。誘電体層21の材料は、本明細書で明示的に説明されたものには限定されない。
【0037】
誘電体層21は、例えば、ALD(原子層堆積)法、スパッタ法、CVD法、蒸着法、めっき法、又はこれら以外の公知の方法により形成される。誘電体層21は、その膜厚が例えば1nm~500nmとなるように形成される。一実施形態において、誘電体層21の膜厚は、30nmとされる。
【0038】
下部電極22及び上部電極23の材料として、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、導電性シリコン、もしくはこれら以外の金属材料、これらの金属元素の一又は複数を含む合金材料、及び前記金属元素の化合物を用いることができる。一実施形態においては、下部電極層22及び上部電極層23の材料として、窒化チタン(TiN)が用いられる。下部電極層22及び上部電極層23の材料は、本明細書で明示的に説明されたものには限定されない。
【0039】
下部電極層22及び上部電極層23は、例えば、ALD(原子層堆積)法、スパッタ法、蒸着法、めっき法、又はこれら以外の公知の方法により形成される。一実施形態において、下部電極層22は、その膜厚が例えば1nm~500nmとなるように形成される。一実施形態において、上部電極23は、その膜厚が例えば1nm~500nmとなるように形成される。一実施形態において、下部電極層22及び上部電極層23の膜厚はそれぞれ30nmとされる。下部電極層22及び上部電極層23の膜厚はそれぞれ30nmとされる。下部電極層22及び上部電極層23の膜厚は、本明細書で明示的に説明されたものに限定されない。
【0040】
続いて、保護層40について説明する。保護層40は、外部環境からMIM構造体20を保護するために、MIM構造体20及び基材10を覆うように設けられる。保護層40は、例えば、外部から受ける衝撃等の機械的ダメージからMIM構造体20を保護するように設けられる。図示の実施形態において、保護層40は、パッシベーション膜40A及び層間絶縁膜40Bの2つの薄膜から構成されている。保護層40の材料として、ポリイミド等の樹脂材料、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)、及びこれら以外の絶縁材料を用いることができる。保護層40は、例えば、スピンコート法により感光性ポリイミドを塗布し、この塗布されたポリイミドを露光、現像、及びキュアすることにより形成される。保護層40は、その膜厚が例えば200nm~5000nmとなるように形成される。一実施形態において、保護層40の膜厚は3000nmとされる。保護層40の材料及び膜厚は、本明細書で明示的に説明されたものには限定されない。
【0041】
保護層40とMIM構造体20(又は基材10)との間には、不図示のバリア層が設けられていてもよい。バリア層は、トレンチキャパシタ1の耐候性を向上させるために、主にMIM構造体20の上に設けられる。一実施形態において、バリア層は、保護層40から放出される水分や大気中の水分がMIM構造体20に到達しないように、MIM構造体20と保護層40との間に設けられる。バリア層は、水素ガスバリア性に優れた薄膜であってもよい。バリア層の材料として、アルミナ(Al2O3)、酸化シリコン(SiO2)、酸窒化シリコン(SiON)、ジルコニア(ZrO2)、及びこれら以外の絶縁材料を用いることができる。バリア層は、例えば、スパッタ法、CVD法、又はこれら以外の公知の方法により形成される。バリア層は、その膜厚が例えば5nm~500nmとなるように形成される。一実施形態において、バリア層の膜厚は50nmとされる。バリア層の材料及び膜厚は、本明細書で明示的に説明されたものには限定されない。
【0042】
続いて、外部電極2及び外部電極3について説明する。外部電極2及び外部電極3は、保護層40の上側に、Y軸方向において互いから離間するように設けられる。外部電極2及び外部電極3は、例えば、保護層40の外側に金属材料を含む導体ペーストを塗布することにより形成される。外部電極2及び外部電極3は、めっきによって形成されてもよい。外部電極2及び外部電極3の材料として、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、もしくはこれら以外の金属材料、又は、これらの金属元素の一又は複数を含む合金材料を用いることができる。外部電極2及び外部電極3には、必要に応じて、半田バリア層及び半田漏れ層の少なくとも一方が形成されてもよい。
【0043】
保護層40のY軸負方向の端の近くには溝41が設けられており、Y軸正方向の端の近くには溝42が設けられている。溝41及び溝42はいずれも、X軸方向に沿って延伸するとともに保護層40をZ軸方向に貫通する用に設けられている。溝41には引出電極2aが設けられ、溝42には引出電極3aが設けられている。
【0044】
引出電極2aの上端は外部電極2に接続され、引出電極2aの下端は、後述の接続導体50に接続され、MIM構造体20の下部電極層22と電気的に接続される。引出電極3aの上端は外部電極3に接続され、引出電極3aの下端は、引出導体60を介してMIM構造体20の上部電極23に接続される。
【0045】
引出電極2a、3aの材料として、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、もしくはこれら以外の金属材料、又は、これらの金属元素の一又は複数を含む合金材料を用いることができる。引出電極2a、3aは、蒸着法、スパッタ法、メッキ法、又はこれら以外の公知の方法により形成される。
【0046】
次に、
図4をさらに参照して、接続導体50について説明する。
図4は、接続導体50を概略的に示す上面図である。
図2及び
図4に示されるように、接続導体50は、MIM構造体20の下部電極層22と第1外部電極2とを電気的に接続している。より具体的に、接続導体50は引出電極2aを介して第1外部電極2と電気的に接続されている。接続導体50は、第1外部電極2の下方において、保護層40のパッシベーション膜40Aと層間絶縁膜40Bとの間に設けられており、層間絶縁膜40Bに沿った形状を有している。接続導体50は、基材10と接する第1接触部(接触部)51と、下部電極層22と接触する第2接触部52と、外部電極2に接続された引出電極2aと接触する第3接触部53と、層間絶縁膜40Bの開口の側壁に沿って延びる複数の接続部54とを有する。第1接触部51、第2接触部52、及び第3接触部53は、基材10の上面10aに沿って延びる。複数の接続部54のそれぞれは、Z軸方向に沿って延びる。キャパシタ1の上面から見て、第2接触部52及び第3接触部53はそれぞれX軸方向に長辺を有する長方形状を呈する。
【0047】
図示の実施形態では、キャパシタ1の上面から見て(すなわち、Z軸方向から見て)、X軸方向における第2接触部52の寸法L2は、X軸方向における下部電極層22の寸法と同一である。X軸方向における第3接触部53の寸法L3は、X軸方向における引出電極2aの寸法と同一である。図示の実施形態では、X軸方向における下部電極層22の寸法とX軸方向における引出電極2aの寸法とは同一である。第2接触部52と第1接触部51との間、及び第3接触部53と第1接触部51との間では、第1接触部51に向かうにつれてX軸方向における接続導体50の寸法が徐々に小さくなっている。X軸方向における接続導体50の寸法は、第1接触部51において最も小さくなる。すなわち、図示の実施形態では、第1接触部の寸法L1<L2=L3となっている。このような構造により、下部電極層22から第1外部電極2に向かう電流経路に垂直な方向における接続導体50の断面積は、第1接触部51において最小となる。これにより、第1接触部51における抵抗が高くなり、当該第1接触部51が発熱しやすくなる。したがって、第1接触部51において接続導体50を確実に断線させることができる。第1接触部51から延びる接続部54と基材10の上面10aとがなす角度αは、90°以下である。このように、角度αを90°以下にすることにより、接続導体50の予期しない断線を抑制できる。
【0048】
接続導体50は、下部電極層22及び上部電極層23を構成する導電材料(第1導電材料)よりも融点が低い導電材料(第2導電材料)によって構成されてもよい。一例として、接続導体50はアルミニウムによって構成される。接続導体50を構成する材料はアルミニウムに限定されず、銅等であってもよい。接続導体50の第2接触部52は、上部電極層23に接続されていてもよい。接続導体50は、MIM構造体20と第2外部電極3とを電気的に接続していてもよい。この場合、接続導体50の第3接触部53は引出電極3aに接続される。接続導体50が設けられる位置は第1外部電極2の下方に限定されず、適宜変更可能である。例えば、接続導体50がMIM構造体20と第2外部電極3とを電気的に接続している場合、接続導体50は第2外部電極3の下方に設けられてもよい。
【0049】
引出導体60は、上部電極層23と引出電極3aとの間に介在する。引出導体60により、上部電極層23と第2外部電極3とが電気的に接続されている。引出導体60は、基材10と接触しないように設けられる。引出導体60は、下部電極層22及び上部電極層23を構成する導電材料(第1導電材料)よりも融点が低い導電材料(第3導電材料)によって構成される。一例として、引出導体60はアルミニウムによって構成される。引出導体60を構成する材料(第3導電材料)は、接続導体50を構成する材料(第2導電材料)と同一の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。接続導体50の第2接触部52が上部電極層23に接続される場合、引出導体60は下部電極層22に接続されてもよい。接続導体50がMIM構造体20と第2外部電極3とを電気的に接続する場合、引出導体60はMIM構造体20と引出電極2aとの間に介在し、第1外部電極2と電気的に接続されてもよい。
【0050】
次に、
図5a及び
図5bを参照して、接続導体50の作用効果について説明する。
図5aは、ショートが発生する前の接続導体50を概略的に示す断面図である。
図5bは、ショートが発生した後の接続導体50を概略的に示す断面図である。キャパシタ1において、MIM構造体20にショート等の故障が発生すると、当該キャパシタ1に接続されている回路の構成部品に本来は印加されない電流(すなわち、過電流)が印加されてしまう。このような本来は想定されていない電流の印加は、当該回路の誤作動や破壊の原因となる。このような他回路への不要な電流の印加を防止するために、キャパシタ1において望ましい故障モードはオープンモードである。
図5aに示されるように、MIM構造体20にショートが発生していない状態においては、接続導体50によって第1外部電極2とMIM構造体20とが電気的に接続され、外部の回路(不図示)に対してキャパシタ1が作動可能に接続されている。MIM構造体20にショートが発生すると、過電流が接続導体50に流れ、当該接続導体50が発熱して溶融する。このとき、接続導体50の第1接触部51は基材10に接触しているので、溶融した接続導体50の材料(すなわち、第2導電材料)は、第1接触部51の近傍において基材10内に拡散する。これにより、
図5bに示されるように、第1接触部51の近傍において接続導体50が断線し、MIM構造体20と第1外部電極2との電気的な接続が切断される。このように、接続導体50はヒューズとしての機能を有しており、キャパシタ1の内部構造を示す等価回路図は
図6のようになる。したがって、絶縁破壊に起因する故障の故障モードをオープンモードに誘導し、外部の回路の誤作動や破壊を抑制できる。
【0051】
次に、
図7a~
図7fを参照して、キャパシタ1の製造方法について説明する。まず、基材10となるSiウェハWを準備し、トレンチ11のパターンに対応したマスクをSiウェハWの上面に形成する。次に、
図7aに示されるように、SiウェハWをエッチングすることにより、複数のトレンチ11を形成する。SiウェハWのエッチングは、例えばボッシュプロセス等を用いたドライエッチングによってなされる。
【0052】
次に、SiウェハWからマスクを除去し、SiウェハWの上面に沿って、下部電極層22、誘電体層21、及び上部電極層23を含むMIM構造体20を形成する。これにより、
図7bに示されるように、SiウェハWの上面及びトレンチ11の内部にMIM構造体20が形成される。誘電体層21は、例えばジルコニアから形成され、下部電極層22及び上部電極層23はTiNから形成され得る。MIM構造体20に含まれる各層(すなわち、下部電極層22、誘電体層21、及び上部電極層23)は、ALD法によって形成され得る。誘電体層22の材料はジルコニアには限られず、下部電極層22及び上部電極層23の材料はTiNには限られない。下部電極層22、誘電体層21、及び上部電極層23は、ALD法以外の様々な公知の方法により形成されてもよい。
【0053】
次に、
図7cに示されるように、保護層40の一部となる層間絶縁膜40BをMIM構造体20及びSiウェハW上に形成する。このとき、層間絶縁膜40Bをパターニングして、SiウェハW(すなわち、基材10)が露出する開口O1、下部電極層22が露出する開口O2、及び上部電極層23が露出する開口O3を形成する。
【0054】
次に、層間絶縁膜40Bに沿って、接続導体50を構成する材料(すなわち、第2導電材料)の薄膜を形成し、パターニングを行う。この工程により、
図7dに示されるように、接続導体50及び引出導体60が形成される。開口O1内には接続導体50の第1接触部51が形成され、開口O2内には接続導体50の第2接触部52が形成される。引出導体60は、開口O3に対応した箇所に形成される。
【0055】
次に、
図7eに示されるように、層間絶縁膜40B上にパッシベーション膜40Aを形成する。このとき、パッシベーション膜40AのうちMIM構造体20の上側に設けられている部分のY軸方向の両端の各々の近くに、それぞれ溝を設ける。一方の溝からは接続導体50が露出し、他方の溝からは引出導体60が露出する。この工程により、パッシベーション膜40A及び層間絶縁膜40Bを含む保護層40が形成される。
【0056】
次に、めっき法などにより、溝の内部に引出電極2a,3aを形成すると共に、保護層40の表面に第1外部電極2及び第2外部電極3を形成する(
図7f参照)。最後に、ウェハを個片化する。以上の工程により、複数のキャパシタ1が得られる。
【0057】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係るキャパシタ1は接続導体50を有し、接続導体50は、基材10と接する第1接触部51を有している。MIM構造体20において絶縁破壊によるショートが発生した場合、過電流によって接続導体50が発熱して溶融する。接続導体50が第1接触部51を有していることにより、溶融した接続導体50の材料は、第1接触部51の近傍において基材10内に拡散する。これにより、第1接触部51の近傍において接続導体50が断線して、MIM構造体20と第1外部電極2との電気的な接続が切断される。したがって、絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをオープンモードにすることができる。
【0058】
また、キャパシタ1の接続導体50は、下部電極層22及び上部電極層23を構成する導電材料(第1導電材料)よりも融点が低い導電材料(第2導電材料)によって構成されている。このため、MIM構造体20において絶縁破壊によるショートが発生した場合、過電流によって接続導体50が溶融しやすい。したがって、より確実に第1接触部51の近傍において接続導体50を断線させることができ、絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをより確実にオープンモードにすることができる。
【0059】
接続導体50を構成する導電材料(第2導電材料)は、例えばアルミニウムである。アルミニウムはSiの基材10内に拡散しやすいので、MIM構造体20において絶縁破壊によるショートが発生した際に、より確実に第1接触部51の近傍において接続導体30を断線させることができる。
【0060】
基材10の一面には複数のトレンチ11が設けられており、MIM構造体20は、複数のトレンチ11のうちの少なくとも一つに埋め込まれるように基材10に設けられている。これにより、キャパシタ1の寸法を維持したまま静電容量を大きくすることができる。
【0061】
第1電極層22から第1外部電極2に向かう電流経路に垂直な方向における接続導体50の断面積は、第1接触部51において最小となっている。これにより、過電流が接続導体50に流れた際に第1接触部51が発熱しやすくなる。したがって、特に第1接触部51において第2導電材料が溶融しやすくなるので、より確実に第1接触部51の近傍において接続導体50を断線させることができる。よって、絶縁破壊に起因するショートが発生した場合であっても故障モードをより確実にオープンモードにすることができる。
【0062】
次に、
図8を参照して他の実施形態に係るキャパシタ100について説明する。
図8は、他の実施形態に係るキャパシタ100を示す断面図である。
図8に示されるように、他の実施形態に係るキャパシタ100は、キャパシタ1と同様に、下部電極層22と第1外部電極2とを接続する接続導体50を有する。他の実施形態に係るキャパシタ100は、MIM構造体20が埋め込まれていない空トレンチ11Aを有する点で、キャパシタ1と相違している。空トレンチ11Aは基材10に少なくとも1つ設けられている。空トレンチ11Aは、接続導体50の第1接触部51によって少なくとも部分的に覆われている。空トレンチ11Aの全体が接続導体50の第1接触部51によって覆われていてもよい。空トレンチ11Aの深さ方向における寸法は、MIM構造体20が埋め込まれているトレンチ11の深さ方向における寸法より小さくなっている。キャパシタ100の上面から見て、空トレンチ11Aの開口面積は、トレンチ11の開口面積より小さい。
【0063】
上記のキャパシタ100によれば、過電流が接続導体50に流れた際に溶融した接続導体50の材料(すなわち、第2導電材料)の基材10への拡散に加え、第2導電材料が空トレンチ11A内に流入するので、より確実かつ速やかに第1接触部51の近傍において接続導体50を断線させることができる。したがって、絶縁破壊に起因する故障の故障モードをより確実にオープンモードに誘導することができる。
【0064】
次に、
図9及び
図10を参照して、他の実施形態に係るキャパシタ200について説明する。
図9は、他の実施形態に係るキャパシタ200を示す上面図である。
図10は、
図9のキャパシタ200の内部構造を示す等価回路図である。
図9においては、第1外部電極、第2外部電極、及び保護層等を省略し、MIM構造体及び接続導体を実線で示している。
【0065】
図9に示されるように、キャパシタ200のMIM構造体20は、複数のセクションを有している。図示の実施形態では、MIM構造体20は8つのセクション20A~20Hに分割されている。セクション20A~20Hのそれぞれが1つのキャパシタとして静電容量を発生させる。キャパシタ200は、接続導体50を複数備え、複数のセクション20A~20Hのそれぞれに対して接続導体50が設けられている。それぞれの接続導体50の一端は対応するセクションの下部電極層22に接続され、それぞれの接続導体50の他端は、第1外部電極2に接続される。また、キャパシタ200は、それぞれのセクションの上部電極層23に接続される引出導体60を複数備える。複数の引出導体60は、第2外部電極に接続される。このような構造により、キャパシタ200複数のセクション20A~20Hは、
図10に示されるように互いに並列に接続されている。図示の実施形態では、キャパシタ200の長辺方向(すなわち、Y軸方向)に沿って並ぶセクションに接続された各接続導体50の第3接触部53同士は連続しており、1つの電極として形成されている。複数の接続導体50の第3接触部53が連続して構成された電極は、キャパシタ200の短辺方向に沿って延びていてもよい。
【0066】
上記のキャパシタ200によれば、MIM構造体20において絶縁破壊によるショートが発生した場合、キャパシタ1と同様に接続導体50が断線するので、MIM構造体20と第1外部電極2との電気的な接続が切断される。したがって、絶縁破壊に起因する故障の故障モードをオープンモードに誘導することができる。また、ショートした箇所を含むセクションに対して設けられた接続導体50のみが切断されるので、故障によるキャパシタ200の静電容量の変動を小さくすることができる。
【0067】
次に、
図11~
図13を参照して、他の実施形態に係るキャパシタ300について説明する。
図11は、他の実施形態に係るキャパシタ300を示す上面図である。
図12は、
図11のキャパシタを概略的に示す断面図である。
図13は、
図11のキャパシタの内部構造を示す等価回路図である。
図11においては、第1外部電極、第2外部電極、及び保護層等を省略し、MIM構造体及び接続導体を実線で示している。
【0068】
図11に示されるように、キャパシタ300のMIM構造体20は、キャパシタ200と同様に複数のセクション20A~20Hに分割されている。キャパシタ300のMIM構造体20は複数の誘電体層を含み、セクション20A~20Hのそれぞれに接続導体50とは異なる電極層に接続された他の接続導体70を備えている。他の接続導体70は、接続導体50と同様に基材10に接触する第1接触部を有し、ショートが発生した際に断線してMIM構造体20と第1外部電極との電気的な接続が切断されるように構成される。図示の実施形態では、
図11に示されるように、MIM構造体20は、下側から順に第1電極層A1、第1誘電体層B1、第2電極層A2、第2誘電体層B2、第3電極層A3、第3誘電体層B3、及び第4電極層A4を備える7層構造である。接続導体50は第1電極層A1に接続され、他の接続導体70は第3電極層A3に接続されている。
図12は、接続導体50の第1接触部51を通るXZ平面に沿ったキャパシタ300の断面を示している。
図12において他の接続導体70の第1接触部は、接続導体50の第1接触部51のY軸正方向側に隠れている。接続導体50及び接続導体70は、複数のセクション20A~20Hのそれぞれに対して設けられており、第1外部電極2に接続される。このような構造により、キャパシタ300の内部構造を示す等価回路図は、
図13のようになる。MIM構造体20に含まれる電極層及び誘電体層の数は特に限定されない。MIM構造体20が更に多くの電極層及び誘電体層を含む場合には、接続導体70に加えて更に他の接続導体を設けてもよい。MIM構造体20に含まれる全ての電極層の各々に接続導体が設けられていてもよい。図示の実施形態では、キャパシタ300のMIM構造体20は複数のセクションに分割されているが、キャパシタ300のMIM構造体20は分割されていなくてもよい。
【0069】
上記のキャパシタ300によれば、MIM構造体20において絶縁破壊によるショートが発生した場合、キャパシタ1と同様に接続導体50及び/又は接続導体70が断線するので、MIM構造体20と第1外部電極2との電気的な接続が切断される。したがって、絶縁破壊に起因する故障の故障モードをオープンモードに誘導することができる。また、キャパシタ300では、ショートした電極層に接続された接続導体のみが切断されるので、故障によるキャパシタの静電容量の変動を小さくすることができる。
【0070】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0071】
1…キャパシタ、10…基材、10a…上面、11…トレンチ、11A…空トレンチ、20…MIM構造体、50,70…接続導体、51…第1接触部(接触部)、60…引出導体。