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特許7427414制御装置、レンズ装置、撮像装置、制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】制御装置、レンズ装置、撮像装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20240129BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240129BHJP
   G03B 13/34 20210101ALI20240129BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240129BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G02B7/04 E
G03B13/34
H04N23/60
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019192822
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021067802
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】圓山 智史
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-099605(JP,A)
【文献】特開2013-033247(JP,A)
【文献】特開2019-074671(JP,A)
【文献】特開2017-181979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 3/00 - 3/12
G03B 13/30 -13/36
G03B 21/53
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカシングに際して互いに異なる軌道で移動する第1のフォーカスレンズ群及び第2のフォーカスレンズ群と、前記第1のフォーカスレンズ群を駆動する第1のフォーカス駆動部と、前記第2のフォーカスレンズ群を駆動する第2のフォーカス駆動部とを有するレンズ装置を制御する制御装置であって、
前記第1のフォーカスレンズ群と前記第2のフォーカスレンズ群のそれぞれの位置と被写体距離との関係を示す関係情報を取得する取得手段と、
フォーカス駆動命令と前記関係情報とにより決定される前記第2のフォーカスレンズ群の目標位置に基づいて、前記第2のフォーカスレンズ群の駆動量及び駆動速度を示す第2の目標位置プロファイルを生成する生成手段と、
前記関係情報と、前記第1のフォーカスレンズ群の位置とを用いて、前記目標位置に向けて前記第2のフォーカスレンズ群を移動させている間における前記第1のフォーカスレンズ群の位置に対応する前記第2のフォーカスレンズ群の理想位置を算出し、当該理想位置と前記第2の目標位置プロファイルにおける前記第2のフォーカスレンズ群の位置とのずれを算出する算出手段と、
前記ずれに基づいて前記第2の目標位置プロファイルを補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された前記第2の目標位置プロファイルに基づいて前記第2のフォーカスレンズ群の位置を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記第1のフォーカスレンズ群の駆動量および速度に基づいて前記第2の目標位置プロファイルを生成することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記生成手段は、フォーカス駆動命令と前記関係情報とにより決定される前記第1のフォーカスレンズ群の目標位置に基づいて、前記第1のフォーカスレンズ群の駆動量及び駆動速度を示す第1の目標位置プロファイルをさらに生成し、
前記算出手段は、前記第1の目標位置プロファイルに基づいて前記理想位置を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記第1のフォーカスレンズ群の目標位置に対応する第2のフォーカスレンズ群の位置を前記理想位置として算出することを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1のフォーカスレンズ群の位置を検出する位置検出手段を有し、
前記算出手段は、前記位置検出手段により検出された前記第1のフォーカスレンズ群の位置に基づいて前記理想位置を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記位置検出手段により検出された前記第1のフォーカスレンズ群の位置に対応する第2のフォーカスレンズ群の位置を前記理想位置として算出することを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御手段による前記第2のフォーカスレンズ群の位置の制御は第1の周期で行われ、
前記算出手段による前記ずれの算出は第2の周期で行われ、
前記第2の周期は前記第1の周期よりも長いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記第2の目標位置プロファイルの補正が前記第1の周期で行われるよう前記ずれに基づく前記第2のフォーカスレンズの目標位置の補正量を分割することを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記補正手段は、前記ずれが所定の値よりも大きい場合には前記ずれに基づく前記第2のフォーカスレンズの目標位置の補正量にリミットを設けることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1のフォーカスレンズ群のフォーカス敏感度は、前記第2のフォーカスレンズ群のフォーカス敏感度よりも高いことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記第1のフォーカスレンズ群と、
前記第2のフォーカスレンズ群と、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の制御装置と、を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項12】
撮像素子と、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の制御装置と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
フォーカシングに際して互いに異なる軌道で移動する第1のフォーカスレンズ群及び第2のフォーカスレンズ群と、前記第1のフォーカスレンズ群を駆動する第1のフォーカス駆動部と、前記第2のフォーカスレンズ群を駆動する第2のフォーカス駆動部とを有するレンズ装置を制御する制御方法であって、
フォーカス駆動命令と、前記第1のフォーカスレンズ群と前記第2のフォーカスレンズ群のそれぞれの位置と被写体距離との関係を示す関係情報とにより決定される前記第2のフォーカスレンズ群の目標位置に基づいて、前記第2のフォーカスレンズ群の駆動量及び駆動速度を示す第2の目標位置プロファイルを生成するステップと、
前記第2のフォーカスレンズ群の理想位置と、前記第2の目標位置プロファイルにおける前記第2のフォーカスレンズ群の位置とのずれを算出するステップと、
前記ずれに基づいて前記第2の目標位置プロファイルを補正するステップと、
補正された前記第2の目標位置プロファイルに基づいて前記第2のフォーカスレンズ群の位置を制御するステップと、
を有し、
前記理想位置は、前記関係情報と前記第1のフォーカスレンズ群の位置とを用いて算出され、前記目標位置に向けて前記第2のフォーカスレンズ群を移動させている間における前記第1のフォーカスレンズ群の位置に対応する前記第2のフォーカスレンズ群の位置であることを特徴とする制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる軌跡で移動する複数のレンズ群を有するレンズ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置に取り付けられるレンズの中には、フォーカシングに際して移動するフォーカスレンズ群が2つ以上存在するものがある。例えば、1つのフォーカスレンズ群で主としてピントを調整し、別のフォーカスレンズ群でフォーカシングに伴う収差変動を補正することで、最短撮影距離を短くするような効果が得られる。
【0003】
特許文献1では、変倍のためのズームレンズを動かした際の2つのフォーカスレンズ群の目標位置の算出方法が記載されている。特許文献1の方法では、複数のフォーカスレンズ群の位置、焦点距離、被写体距離との関係を表した位置特性データから、目標位置を算出し、主としてフォーカシングを行うフォーカスレンズ群以外のレンズ群の動きが急峻になりすぎないようしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6487192号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法においては、位置特性データから目標位置を算出されている。しかしながら位置特性データとして記憶できるデータ量には限界があるため、実際には焦点距離、被写体距離に応じて、保存されているデータから補間演算が行われることがある。
【0006】
このとき、例えば合焦位置を計測するようにフォーカスレンズを高速に動かす際には短い周期で目標位置を算出する必要が生じるが、上記のような方法では目標値の算出が間に合わず十分に滑らかな動作とすることが難しくなる場合がある。このため、特許文献1の方法では複数のフォーカスレンズ群に対して十分な制御性が得られないおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、複数のフォーカスレンズ群の制御性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の制御装置は、フォーカシングに際して互いに異なる軌道で移動する第1のフォーカスレンズ群及び第2のフォーカスレンズ群と、前記第1のフォーカスレンズ群を駆動する第1のフォーカス駆動部と、前記第2のフォーカスレンズ群を駆動する第2のフォーカス駆動部とを有するレンズ装置を制御する制御装置であって、前記第1のフォーカスレンズ群と前記第2のフォーカスレンズ群のそれぞれの位置と被写体距離との関係を示す関係情報を取得する取得手段と、フォーカス駆動命令と前記関係情報とにより決定される前記第2のフォーカスレンズ群の目標位置に基づいて、前記第2のフォーカスレンズ群の駆動量及び駆動速度を示す第2の目標位置プロファイルを生成する生成手段と、前記関係情報と、前記第1のフォーカスレンズ群の位置とを用いて、前記目標位置に向けて前記第2のフォーカスレンズ群を移動させている間における前記第1のフォーカスレンズ群の位置に対応する前記第2のフォーカスレンズ群の理想位置を算出し、当該理想位置と前記第2の目標位置プロファイルにおける前記第2のフォーカスレンズ群の位置とのずれを算出する算出手段と、前記ずれに基づいて前記第2の目標位置プロファイルを補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された前記第2の目標位置プロファイルに基づいて前記第2のフォーカスレンズの位置を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のフォーカスレンズ群の制御性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のカメラシステム概略図である。
図2】実施例1のレンズ制御部の構成について表すブロックである。
図3】ズーム-フォーカス位置データを表したグラフである。
図4】第1フォーカスレンズ群の目標位置プロファイルの例である。
図5】第2フォーカスレンズ群の目標位置プロファイルの例である。
図6】第2フォーカスレンズ群の目標位置と理想位置を示すグラフである。
図7】第2フォーカスレンズ105の目標位置と、理想位置とのずれを示すグラフである。
図8】実施例1における補正値算出手段のブロック図である。
図9】実施例1における第2フォーカスレンズ群の制御に関するフローチャートである。
図10】変形例1におけるレンズ制御部の構成について表したブロック図である。
図11】実施例2における補正値算出手段のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の制御装置を有する交換レンズ(レンズ装置)及びカメラ本体(撮像装置)から成るレンズ交換式カメラ(カメラシステム)の実施例について、添付の図面に基づいて説明する。なお、各図において同じ構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
[実施例1]
図1に本実施例におけるカメラシステム10の構成について示す。カメラシステム10はレンズ装置100とカメラ本体200から構成される。レンズ装置100とカメラ本体200は不図示のマウントを介して機械的および、電気的に接続されており、マウントに設けられた端子より、電源供給およびレンズ-カメラ間の相互通信が行われる。
【0013】
レンズ装置100は、カメラ本体200の撮像素子201に被写体の光学像を結像させる光学系101を有する。光学系101には、変倍レンズ群102、絞り103、第1フォーカスレンズ群104、第2フォーカスレンズ群105が構成されている。すなわち、光学系101はズームレンズである。「レンズ群」とは、ズーミングとフォーカシングの一方で一体となって静止又は移動するレンズのまとまりであり、1つ以上のレンズを含んで構成される。
【0014】
変倍レンズ群102は、ズーム操作部113の操作により、光軸方向に駆動し、レンズ装置100の焦点距離を変更することができる。絞り103は不図示の絞り羽根により構成されており、絞り駆動部107によりアクチュエータを介して羽根を動かすことで光量調整を行うために用いられる。
【0015】
第1フォーカスレンズ群104は、第1フォーカス駆動部108によりアクチュエータを介して、光軸方向に移動されて合焦状態の調整や収差の調整が行われる。同様に第2フォーカスレンズ群105は、第2フォーカス駆動部110によりアクチュエータを介して、光軸方向に移動されて合焦状態の調整や収差の調整が行われる。
【0016】
第1フォーカス位置検出部109は、第1フォーカスレンズ群104の位置検出を行い、レンズ制御部106に第1フォーカスレンズ群104の位置を送信する。同様に第2フォーカス位置検出部111は、第2フォーカスレンズ群105の位置検出を行い、レンズ制御部106に第2フォーカスレンズ群105の位置を送信する。
【0017】
レンズ制御部106は制御装置として機能するものであり、CPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータである。レンズ制御部106は、絞り駆動部107、第1フォーカス駆動部108、第2フォーカス駆動部110に対し、それぞれの駆動指令値を送信し、絞り103、第1フォーカスレンズ群104、第2フォーカスレンズ群105の駆動を制御する。すなわち、レンズ制御部106は各フォーカスレンズ群を制御する制御手段としての機能を有する。この制御方法の詳細や手順については後述する。
【0018】
メモリ112は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等で構成された記憶手段である。絞り103、第1フォーカスレンズ群104、第2フォーカスレンズ群105を駆動させる上で必要な情報を記憶する。メモリ112に記憶されている代表的な情報としては、図3に示すような焦点距離および被写体距離と第1フォーカスレンズ群104の位置関係、第2フォーカスレンズ群105の位置関係を示す関係情報がある。以下では、この焦点距離、被写体距離に応じたレンズ位置の関係情報をズーム-フォーカス位置データと称する。レンズ制御部106はメモリに記憶された種々の情報を取得する取得手段としての機能を有する。
【0019】
ズーム操作部113は、ズーム環のように手動で変倍レンズ群102を動かす機構や、アクチュエータを用いて電動で変倍レンズ群を動かす機構に相当する。ズーム位置検出部114は、変倍レンズ群102の位置を検出し、レンズ制御部106に変倍レンズ群102の位置を送信する。
【0020】
カメラ本体200は、撮像素子201、信号処理部202、記録処理部203、デフォーカス検出部204、カメラ制御部205、メモリ206、電子ファインダー207、表示部208により構成される。
【0021】
撮像素子201は、光学系101からの光を受光し、光電変換によって電気信号を生成し、信号処理部202に対し送信する。撮像素子201は、撮像用の画素に加えて、不図示の合焦位置検出用の画素も有する。信号処理部202は、撮像素子201からの電気信号をデジタル信号に変換をする。
【0022】
信号処理部202は、デジタル信号に対して、ノイズ除去、色補正などの各種画像処理を行い、記録処理部203に画像データを送信する。記録処理部203は、入力された画像データを電子ファインダー207や表示部208に表示する。
【0023】
デフォーカス検出部204は、瞳分割を行うマイクロレンズを介して、撮像素子201の焦点検出用の画素に対して入射した光により得られた1対の被写体像の信号の位相差を検出する。検出された位相差によりデフォーカス量を決定し、デフォーカス量をカメラ制御部205に出力する。
【0024】
カメラ制御部205は、CPUを有する演算装置であり、記録処理部203、デフォーカス検出部204、メモリ206と電気的に接続されている。カメラ制御部205は、メモリ206に記録されたプログラムを読みだして実行したり、オートフォーカス制御に必要な情報をレンズ制御部106と通信したりする。またカメラ制御部205は、不図示の撮影スイッチ、各種設定スイッチ等のカメラ操作部からの入力に応じてカメラ本体200の制御を行う。
【0025】
次に、カメラ本体200からレンズ装置100に対して、フォーカスレンズを動かす命令が送信された時のレンズ制御部106の動作について順に説明する。
【0026】
レンズ制御部106は、カメラ本体200から駆動命令を受けると、まず第1フォーカスレンズ群104と第2フォーカスレンズ群105の駆動量を算出する。図3は、焦点距離と被写体距離と第1フォーカスレンズ群104の位置および第2フォーカスレンズ群105の位置の関係(ズーム-フォーカス位置データ)を表したグラフである。例えば、現在は最至近位置(MOD)にいて、無限位置(INF)まで駆動させるような命令を受けた場合を考える。
【0027】
第1フォーカスレンズ群104は、P1Sの位置からP1Eまで動かす必要があるため、駆動量としては、
P1E-P1S (1)
として計算することができる。同様に第2フォーカスレンズ群105の駆動量は、
P2E-P2S (2)
として計算することができる。図3のズーム-フォーカス位置データは、被写体距離がMOD、0.7m、1.0m、3.0m、5.0m、INFの7種のデータとしている。被写体距離が離散的なのは、メモリ112に記憶できる限られたデータ量の範囲内でズーム-フォーカス位置データを保存するためである。このため、2.0m~4.0mの位置まで移動するような命令が来た場合には、1.0mと3.0mのズーム-フォーカス位置データのデータから補間演算を行い、2.0mにおけるレンズ位置を求める。同様に3.0mと5.0mのデータから4.0mのレンズ位置を補間演算により求めることで、第1、第2レンズの駆動量を算出すれば良い。なお、焦点距離については連続的なデータのように示しているが、メモリ112に保存できるデータ量には限りがあることから、焦点距離に関しても有限個の離散データとして保存されている。焦点距離に関しても、被写体距離とレンズ位置との関係と同様に、隣接したデータから補間演算により対応する焦点距離のレンズ位置を求めることができる。
【0028】
次に、各フォーカスレンズ群の駆動速度の決め方について説明する。本実施例において、カメラ本体200は、駆動命令送信時に第1フォーカスレンズ群104の速度V1のみを指定する。これは、カメラ本体200にはフォーカスレンズ群を1つのみ有するレンズ装置も装着され得るため、カメラ本体200側のフォーカス制御処理を、レンズ装置のフォーカスレンズ群の数に依らず統一するためである。
【0029】
第2フォーカスレンズ群105の速度V2については、第1フォーカスレンズ群104と第2フォーカスレンズ群105駆動量の比から仮設定を行う。具体的には、式(3)のように計算する。
V2=(P2E-P2S)/(P1E-P1S)×V1 (3)
【0030】
図2は本発明に係るレンズ制御部106の詳細な構成について表したブロック図である。第1フォーカスレンズ群104、第2フォーカスレンズ群105の駆動量と速度が定まると、それぞれの駆動量、速度が、第1位置プロファイル生成手段1061と第2位置プロファイル生成手段1063に対して設定される。第1位置プロファイル生成手段1061は、図4に示すような予め定められた加速度α1で速度V1まで加速し、速度V1にて等速で進んだ後に減速し、位置P1Eで止まるような目標位置のプロファイルを生成する。同様に第2位置プロファイル生成手段1063は、図5に示すような予め定められた加速度-α2で速度-V2まで加速し、速度-V2にて等速で進んだ後に減速し、位置P2Eで止まるような目標位置のプロファイルを生成する。ここでは、説明の簡略化のために等加速度駆動、等速駆動の組み合わせとしたが、駆動に用いる位置プロファイルの導出方法はどのような手法を用いてもかまわない。第1位置プロファイル生成手段1061で生成された目標位置プロファイルは、位置制御周期毎に第1減算器1067に送信される。なお、目標位置プロファイルとは、各位置制御周期内での目標位置の時間的な集合により形成されるプロファイルであり、目標位置の時間変化を表すプロファイルということもできる。
【0031】
第1減算器1067では、第1フォーカス位置検出部109から受信した第1フォーカスレンズ群104の実際の位置と第1位置プロファイル生成手段1061から受信した目標位置(位置制御周期内での目標位置)との差分を演算する。そして、第1減算器1067は第1位置制御器1062に対し、位置偏差の送信を行う。第1位置制御器1062は、PID制御のような制御演算を行う位置制御器で、第1減算器1067から受信した位置偏差に応じて、第1フォーカスレンズ群104を目標位置に追従させるための操作量を第1フォーカス駆動部108に対し出力する。第1フォーカスレンズ群104は、上記のような演算が位置制御周期毎に繰り返されることにより、第1位置プロファイル生成手段1061からの目標位置に従い、P1S~P1E(最終目標位置)への移動を行う。
【0032】
軌道ずれ量算出手段1065は、第1位置プロファイル生成手段1061と第2位置プロファイル生成手段1063から、各レンズの目標位置を受信し、メモリ112に記録されているズーム-フォーカス位置データから軌道ずれ量を算出する。本実施例において起動ずれ量の演算周期は位置制御周期と同じである。軌道ずれ量算出手段1065は、第1位置プロファイル生成手段1061から受信した第1フォーカスレンズ群104の目標位置と、図3(a)のズーム-フォーカス位置データを用いて、被写体距離を算出する。図3(a)のズーム-フォーカス位置データは離散的なデータであるため、隣接するデータから補間演算をすることで第1フォーカスレンズ群104の目標位置に対応した被写体距離を求めることができる。
【0033】
このようにして得られた被写体距離と図3(b)のズーム-フォーカス位置データの関係より、第2フォーカスレンズ群105の理想位置(第1フォーカスレンズ群104の位置に対応した第2フォーカスレンズ群105の理想的な位置)を求めることができる。このように算出された第2フォーカスレンズ群105の位置を「理想位置」としたのは、図3(a),(b)のズーム-フォーカス位置データに示される通りに各レンズ群を配置させることが光学的に理想的であるためである。
【0034】
なお、光学的に理想的とは、設計通りの光学性能を発揮できる状態である、と言い換えることができる。フォーカスレンズ群が複数存在する場合には、互いの位置関係に応じて光学系の収差量が変化し得る。それゆえ、複数のフォーカスレンズ群の位置関係を設計値通りに保ちつつ駆動することが重要になる。
【0035】
図6に、第2位置プロファイル生成手段1063により生成された第2フォーカスレンズ群105の目標位置のプロファイル(実線)と、軌道ずれ量算出手段1065により算出した第2フォーカスレンズ群105の理想位置のプロファイル(破線)を示す。本実施例では、第1フォーカスレンズ群104と第2フォーカスレンズ群105の駆動量比から第2フォーカスレンズ群105の速度V2を仮設定し第2フォーカスレンズ群105の目標位置を設定している。このため、目標位置と理想位置がP2E(最終目標位置)に到着するまでに要する時間は同じである。しかしながら、両者のプロファイルには、第1フォーカスレンズ群104および第2フォーカスレンズ群105のズーム-フォーカス位置データにおける曲率の違いに起因する差が生じている。図7の破線に、第2フォーカスレンズ群105の目標位置と、理想位置とのずれ量のプロファイルを示す。軌道ずれ量算出手段1065では、このようなずれ量を演算周期(本実施例では位置制御周期と同じ)毎に算出し、補正値算出手段1066に出力する。
【0036】
補正値算出手段1066は、受信したずれ量から第2フォーカスレンズ群105の目標位置を補正するための補正値の算出を行う。図8は、補正値算出手段1066のブロック図である。軌道ずれ量算出手段1065から受信したずれ量は、リミット処理部1070にて、リミット処理が行われる。軌道ずれ量算出手段1065が算出したずれ量が過大な場合、第2フォーカスレンズ群105の目標位置を大きく補正してしまうことになる。このため、リミット処理部1070は、ずれ量に補正量が第2フォーカス駆動部110のアクチュエータの出力限界を超えないようにしたり、補正値が急峻となる結果駆動の騒音が大きくならないようにしたりするために補正値にリミット(上限値)を定める。例えば、例えばずれ量が所定値よりも大きくなった場合にリミットが設定されるようにすれば良い。
【0037】
リミット処理がされた補正量は、積分器処理をされて補正値として出力される。出力された補正値は、加算器1069で第2位置プロファイル生成手段1063により出力された第2フォーカスレンズ群105の目標位置と加算される。加算された信号は、第2フォーカスレンズ群105の補正後の目標位置として第2減算器1068に送られる。第2減算器1068では、第2フォーカス位置検出部111から得た第2フォーカスレンズ群105の実位置と差分を取り、第2フォーカスレンズ群105の位置偏差として、第2位置制御器1064に送信する。第2位置制御器1064は、第1位置制御器1062と同様にPID制御器のような制御器であって、第2フォーカスレンズ群105が目標位置に対して動くような操作量を第2フォーカス駆動部110に対して出力する。
【0038】
図7の実線は、軌道ずれ量算出手段1065、第2フォーカスレンズ群105をP2SからP2Eまで移動させるときの、補正値算出手段1066により補正された目標位置と理想位置のずれ量のプロファイルである。補正値を使用することで、第1フォーカスレンズ群104と第2フォーカスレンズ群105の位置関係のずれが小さくなっていることがわかる。
【0039】
次に、本実施例における第2フォーカスレンズ群105の制御方法について、図9のフローチャートを用いて説明する。図9のフローチャートは、第2フォーカスレンズ群105をP2Eまで駆動する駆動命令が出された時点から開始される。なお。図9における「S」はステップ(工程)を表す。図9のフローチャートはレンズ装置100内のレンズ制御部106で行われる。なお、本実施例はこれらのフローをコンピュータに実行させるプログラムとしても具現化可能である。
【0040】
S901では、軌道ずれ量算出手段1065が第1フォーカスレンズ群104の位置を取得する。本実施例においてS901で取得する第1フォーカスレンズ群104の位置とは、第1位置プロファイル生成手段1061が生成した第1フォーカスレンズ群104の目標位置である。なお、後述する変形例で説明するように、S901で取得される第1フォーカスレンズ群104の位置はこれに限定されない。第1フォーカスレンズ群104の位置としては第1フォーカスレンズ群104の現在の位置(実際の位置)を用いても良い。
【0041】
S902では、軌道ずれ量算出手段1065がズーム位置検出部114から現在のズーム位置に関する情報を取得する。なお、光学系101がズームレンズではなく単焦点レンズである場合にはこの工程は行う必要はない。
【0042】
S903では、軌道ずれ量算出手段1065が第2フォーカスレンズ群105の理想位置を算出する。第2フォーカスレンズ群105の理想位置は前述の通りである。すなわち、軌道ずれ量算出手段1065は第1フォーカスレンズ群の位置(本実施例では目標位置)と第1フォーカスレンズ群104のズーム-フォーカス位置データから第1フォーカスレンズ群104に関する被写体距離を算出する。そして、被写体距離と第2フォーカスレンズ群105のズーム-フォーカス位置データから、第1フォーカスレンズ群104の位置(本実施例では目標位置)に対応する第2フォーカスレンズ群105の理想位置を算出する。
【0043】
S904では、軌道ずれ量算出手段1065が第2フォーカスレンズ群105のずれ量を算出する。すなわち、軌道ずれ量算出手段1065は第2位置プロファイル生成手段が生成した第2フォーカスレンズ群105の目標位置からS903で算出した第2フォーカスレンズ群105の理想位置の差を算出し、それをずれ量とする。
【0044】
S905では、補正値算出手段1066がずれ量を補正値に換算する。
【0045】
S906では、加算器1069において第2位置プロファイル生成手段が生成した第2フォーカスレンズ群105の目標位置に、補正値算出手段1066が算出した補正値が加算され、補正された第2フォーカスレンズ群の目標位置が算出される。そして、この補正された目標位置に基づいて第2フォーカスレンズ群105の駆動制御が行われる。
【0046】
S907では、第2フォーカスレンズ群が最終目標位置P2Eに到達したか否かを判定する。到達していた場合には処理を終了し、到達していない場合にはS901に戻る。
【0047】
本実施例では第1フォーカスレンズ群104は第1位置プロファイル生成手段の出力に基づき駆動し、第2フォーカスレンズ群105の駆動制御にズーム-フォーカス位置データを用いている。このため、第1フォーカスレンズ群104と第2フォーカスレンズ群105の両方に対してズーム-フォーカス位置データを用いて精緻に制御する場合と比べて演算量が軽減でき、高速かつ滑らかに複数のフォーカスレンズ群を駆動できる。すなわち、以上の処理により、複数のフォーカスレンズ群の制御性を向上することができる。
【0048】
なお、本実施例では第2フォーカスレンズ群105の理想位置を算出するのに第1フォーカスレンズ群104の位置(目標位置)を用いた。このとき、第1フォーカスレンズ群104は第2フォーカスレンズ群104に比べてフォーカス敏感度(フォーカスレンズ群の移動量あたりの像面移動量)が大きいことが好ましい。これは第1フォーカスレンズ群104によって主たるフォーカシングを行うことを意味する。相対的にフォーカス敏感度が低いフォーカスレンズ群に対して本実施例の目標値の補正処理を行うことにより、より滑らかなフォーカス制御が可能となる。
【0049】
[変形例1]
次に、上述した実施例1の変形例について述べる。
【0050】
本変形例におけるレンズ制御部106の構成を図10に示す。
【0051】
本変形例は、軌道ずれ量算出手段1065に入力される第1フォーカスレンズ群104の位置情報が、第1位置プロファイル生成手段1061が生成する目標位置ではなく、第1フォーカスレンズ群104の実位置になっている点で実施例1と異なる。すなわち、軌道ずれ量算出手段1065には第1フォーカス位置検出部109により検出された第1フォーカスレンズ群104の位置が入力される。その後の処理については実施例1と同様である。
【0052】
第1フォーカスレンズ群104の実位置をもとに第2フォーカスレンズ群105の目標位置を補正することで、実施例1よりも第1フォーカスレンズ群104と第2フォーカスレンズ群105の位置関係のずれをより少ない状態を保ちながら駆動することができる。
【0053】
しかしながら、第1フォーカスレンズ群104の位置制御系の周波数特性と第2フォーカスレンズ群105の位置制御系の周波数特性が近い場合には、お互いの制御系が干渉し合うことも想定される。そのような場合には、実施例1のように第1フォーカスレンズ群104の目標位置を利用してずれ量を計算する方が好ましい。
【0054】
[変形例2]
実施例1では、第1フォーカスレンズ群104、第2フォーカスレンズ群105の位置制御周期と、軌道ずれ量算出手段1065の演算周期は同じとして説明をした。しかし、軌道ずれ量算出手段1065で行われているようなズーム-フォーカス位置データに対して補間処理を行い第2フォーカスレンズ群105の補正量を行う場合、ずれ量の演算に要する時間は位置制御周期よりも長くなってしまうことがある。
【0055】
本変形例では、位置制御周期よりもずれ量の演算周期が長い場合について述べる。
【0056】
図11は、本変形における補正値算出手段1066のブロック図である。実施例1と異なる点はリミット処理部1070の出力段に分割処理部1071が追加になっていることである。分割処理部1071では、軌道ずれ量算出手段1065により算出したずれ量を位置制御演算の1クロックあたりの補正量に換算する。例えば位置制御周期とずれ量の演算周期が10倍異なっているとき、分割処理部はずれ量を10分割に分けることで補正値を漸次的に変化させながら第2フォーカスレンズ群105の目標位置に足すことができる。
【0057】
なお、軌道ずれ量算出手段1065により算出されるずれ量自体が十分に小さい場合には、必ずしも分割処理を行う必要はない。アクチュエータの特性や急峻な動きによる騒音におり、適宜分割処理を設定すればよい。このような構成により、ズーム-フォーカス位置データを参照して演算の時間が掛かる軌道ずれ量算出手段1065と、位置制御周期を分けることが可能となり、位置制御に使われる目標位置を高速な演算周期で演算することが可能になる。
【0058】
なお、位置制御周期とずれ量の演算周期が10倍異なっているとすると、本変形例における図9に示すフローチャートのS901乃至S904の処理は、他の処理が10回行われるたびに1度行われ、これによりずれ量が更新される。そして、S905における処理においては分割処理部により分割された補正値が算出される。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 レンズ装置
106 レンズ制御部(制御装置)
1063 第2位置プロファイル生成手段(生成手段)
1065 軌道ずれ量算出手段(算出手段)
1066 補正値算出手段(補正手段)
1064 第2位置制御器(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11