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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】光学装置及びそれを用いた撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240129BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240129BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/08 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019196641
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021071541
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一郎
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/051645(WO,A1)
【文献】特開2014-048155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G01D 5/26-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材と、
該光学部材を移動させるための駆動手段と、
該駆動手段を制御する制御手段と、
反射部と該反射部よりも反射率が低い低反射部とを含む操作部材と、
前記反射部及び前記低反射部からの光のそれぞれの光量値を出力する検出手段とを有し、
前記制御手段は、前記検出手段からの出力に応じて前記駆動手段を制御し、
前記反射部は、導電性を有し、
前記操作部材は円筒形状をしており、前記操作部材の内径は、光軸方向に沿って変化し、前記反射部及び前記低反射部の前記光軸方向に直交する方向の幅は、前記光軸方向に沿って変化していることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
光学部材と、
該光学部材を移動させるための駆動手段と、
該駆動手段を制御する制御手段と、
反射部と該反射部よりも反射率が低い低反射部とを含む操作部材と、
前記反射部及び前記低反射部からの光のそれぞれの光量値を出力する検出手段とを有し、
前記制御手段は、前記検出手段からの出力に応じて前記駆動手段を制御し、
前記反射部は、導電性を有し、前記操作部材に固定された導体を介して接地されていることを特徴とする光学装置。
【請求項3】
前記操作部材は円筒形状をしており、前記操作部材の内径は、光軸方向に沿って変化し、前記反射部及び前記低反射部の前記光軸方向に直交する方向の幅は前記光軸方向に沿って変化していることを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記反射部及び前記低反射部からの光の光量値の差に応じて前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記操作部材は、前記光学部材の光軸を中心として回転するように構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記反射部と前記低反射部とは、前記操作部材の内周面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記低反射部は、前記操作部材に設けられた凹凸部を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記反射部は、複数備えられており、複数の前記反射部のそれぞれは、前記操作部材の半径方向に異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記反射部は、複数備えられており、複数の前記反射部は、同電位であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の光学装置と、前記光学部材からの光を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及びそれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ鏡筒の外周に設けられた操作リングの回転量を検出し、その検出量に基づいてアクチュエータを制御することでズーミングやフォーカシングを行うシステムが知られている。そして、ユーザーによる操作リングの操作に対し、快適なズーミングやフォーカシングを実現するため、操作リングの回転量の高精度な検出が求められる。
【0003】
特許文献1には、フォトリフレクタからの光を反射する反射面が内面に設けられた操作リングと、該光を遮光する遮光面が複数設けられ、操作リングの内側に配置された透明部材とを有する構成が開示されている。また、特許文献2には、操作リングの内面に反射面としての光沢面と遮光面としての非光沢面とが交互に設けられた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6020583号公報
【文献】特開2016-128849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように遮光のため操作リングとは別の部材を用いる場合、該別の部材が傾いたり部分的に浮いたりする可能性がある。これにより、フォトリフレクタの受光強度が変化してしまい、操作リングの回転量の検出精度の低下や、回転位置の誤認識が生じるおそれがある。一方、特許文献2のように、操作リング自体に非光沢面を設ける構成では、外部からの静電気を除去する対策が不十分である。
【0006】
本発明の目的は、静電気対策をすると共に、回転量の検出精度を向上させることができる操作部材を備えた光学装置及びそれを用いた撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の光学装置は、光学部材と、該光学部材を移動させるための駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段と、射部と該反射部よりも反射率が低い低反射部とを含む操作部材と、前記反射部及び前記低反射部からの光のそれぞれの光量値を出力する検出手段とを有し、前記制御手段は、前記検出手段からの出力に応じて前記駆動手段を制御し、前記反射部は、導電性を有し、前記操作部材は円筒形状をしており、前記操作部材の内径は、光軸方向に沿って変化し、前記反射部及び前記低反射部の前記光軸方向に直交する方向の幅は、前記光軸方向に沿って変化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
静電気対策をすると共に、回転量の検出精度を向上させることができる操作部材を備えた光学装置及びそれを用いた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る交換レンズ50の全長が縮んだ状態(沈胴)の断面図である。
図2】実施例1に係る交換レンズ50の全長が伸長した状態(TELE)の断面図である。
図3】実施例1に係る交換レンズ50とカメラ本体70のシステムブロック図である。
図4】実施例1におけるMFリング21とフォトリフレクタ22の断面図、及び反射面21sの部分的な展開図である。
図5】実施例2におけるMFリング221とフォトリフレクタ222の構成を示す部分斜視図である。
図6】実施例3におけるMFリング321とフォトリフレクタ322の構成を示す断面図である。
図7】実施例4におけるMFリング421と複数備えられたフォトリフレクタ422の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面の一点鎖線で示される光軸方向において、光学素子であるレンズを備えた光学系を有する交換レンズ50(光学装置)の物体側を前側、カメラ本体70(撮像装置)にバヨネット固定される固定側を後側と定義する。図1図2を参照して、本発明の実施例1に係る交換レンズ50について説明する。
【0011】
図1は、交換レンズ50の全長が縮んだ沈胴状態にある交換レンズ50の断面図である。図2は、交換レンズ50の全長が伸長したTELEの状態である交換レンズ50の断面図である。光学部材である1群レンズ1は、1群鏡筒2により保持されている。1群鏡筒2は1群筒3により保持され、1群筒3は光学調整のために1群鏡筒2を光軸方向と光軸方向に垂直な方向における面上で移動させることができる。
【0012】
上記のように、1群レンズ1は1群鏡筒2により保持されるが、1群鏡筒2は1群筒3により保持されている。2群レンズ4は補正レンズであり、レンズ保持枠である2群ユニット5により保持されている。2群ユニット5は、光軸に対して垂直な面上で移動することで、いわゆる手ブレを補正する光学防振機能を果たす。3群レンズ6は、3群鏡筒7により保持され、この3群レンズ6の被写体側には、光学防振機能を果たす2群ユニット5が保持されている。3群鏡筒7に固定された絞りユニット16は、光量調節を行う。絞りユニット16が固定された後に2群ユニット5が3群鏡筒7に固定される。4群レンズ8は4群鏡筒9により保持され、4群鏡筒9は3群鏡筒7に固定されている。フォーカスレンズ10は、フォーカス鏡筒11により保持されている。フォーカス鏡筒11は、3群鏡筒7に設けられた不図示の案内機構によって光軸に沿って移動可能に支持されている。5群レンズ12は、5群鏡筒13により保持されている。
【0013】
フォーカスモータ14は、フォーカス鏡筒11を移動させる駆動手段(駆動源)である。フォーカス鏡筒11により保持されたラック15は、フォーカスモータ14によって回転するスクリューに螺合する。フォーカスモータ14の駆動によりスクリューが回転し、そのねじ山に沿ってラック15が移動すると、ラック15を保持しているフォーカス鏡筒11が光軸方向へ移動する。
【0014】
フォーカスモータ14は、実施例1においてはステッピングモータであり、パルス入力をすることでフォーカス鏡筒11を移動させることが可能である。その際に、不図示のフォトインタラプタによってフォーカス鏡筒11の初期位置が検出され、初期位置からのパルス数を後述の制御手段(マイクロコンピュータ)によって制御することで、フォーカス鏡筒11を所望の合焦位置へ移動させることができる。
【0015】
カム環18は案内筒17の外周に回転可能に嵌合し、案内筒17は固定鏡筒19により固定されている。プリント基板25は、固定鏡筒19に固定されており、プリント基板25には、後述のレンズ保持枠制御手段である駆動用IC、マイクロコンピュータ等が配置されている。マウント26は、固定鏡筒19にビス固定されている。外観リングユニット20は、固定鏡筒19とマウント26に挟まれ固定されている。裏蓋27は、マウント26に固定されている。
【0016】
MFリング21(操作部材)は、固定鏡筒19を軸として回転可能に支持された円筒形状の部材であり、フォトリフレクタ22(検出手段)によりMFリング21の回転が検出され、信号として出力される。フレキシブル基板23は、固定鏡筒19の内面に固定され、フォトリフレクタ22への電力の供給や、フォトリフレクタ22の検出信号をプリント基板25へ提供する。フォトリフレクタ22は、フレキシブル基板23を介して固定鏡筒19に保持されており、発光部と受光部を備える。
【0017】
MFリング21の内面には、フォトリフレクタ22からの光を受光部へ反射する反射面21sが設けられている。MFリング21を回転させると、フォトリフレクタ22から発光された光が反射面21sで強く又は弱く反射され、このような強弱のある反射光をフォトリフレクタ22の受光部が受光する。フォトリフレクタ22は、受光した反射光のそれぞれの光量値を出力し、MFリング21の回転が検出され、MFリング21の回転方向や回転量に応じてフォーカスレンズ10の合焦制御が行われる。反射面21sの詳細は後述する。
【0018】
ワッシャ24は、導体であって、MFリング21の後側に固定されている。ワッシャ24を導体とする理由は後述する。接点ブロック28は、プリント基板25と不図示の配線(フレキシブルプリント基板など)によって接続され、マウント26にビス固定されている。実施例1の交換レンズ50は、カメラ本体70にマウント26でバヨネット固定されている。カメラ本体70に交換レンズ50がマウント26で固定されると、各レンズの動作を制御するプリント基板25は接点ブロック28を通してカメラ本体70と通信可能となる。撮像部78(撮像素子)はカメラ本体70に搭載されており、交換レンズ50を通過した被写体からの光を受け、その光を電気信号に変換するCMOSやCCD等の光-電気変換素子である。
【0019】
1群鏡筒2及び1群筒3は、1群筒3に設置された不図示のコロにてカム環18に係合されており、カム環18の光軸周りの回転に伴い光軸方向に移動させることができる。フィルタリング29は、NDフィルタやプロテクトフィルタ、フードなどの付属品を固定することが可能であり、1群筒3にビス固定されて、1群筒3と一体となって移動する。ネームリング30はフィルタリング29に固定されている。2群ユニット5に固定されたマスク31は、不要光をカットする。
【0020】
第1キーリング32は、案内筒17の物体側の先端に固定されている。第1キーリング32に設置された不図示の3ヵ所の突起が1群筒3の内面に設置された不図示の3ヵ所の直進溝にそれぞれ係合し、1群筒3の直進移動が支持されている。
【0021】
3群鏡筒7は、不図示のコロにてカム環18に係合されている。そして、3群鏡筒7は、2群ユニット5、絞りユニット16、4群鏡筒9、フォーカス鏡筒11及びその案内機構、駆動機構、5群鏡筒13と共にカム環18の光軸周りの回転に伴い光軸方向に移動可能となっている。
【0022】
第2キーリング33は3群鏡筒7に固定されており、第2キーリング33に設けられた不図示の3ヵ所の突起が1群筒3の内面に設けられた不図示の3ヵ所の直進溝にそれぞれ係合し、3群鏡筒7の直進移動が支持されている。
【0023】
第1の外観リング34及び第2の外観リング35は、マニュアルズームリング36の外面にそれぞれ固定されている。マニュアルズームリング36は、固定鏡筒19に回転自在に支持されている。カム環18は不図示のカム環コロを介してマニュアルズームリング36と連結されており、ユーザーがマニュアルズームリング36を回転させることでカム環18が回転する。カム環18の外面には1群筒3に設置された不図示のコロと係合する不図示のカム溝が設けられており、また、内面には3群鏡筒7に設置された不図示のコロと係合する不図示のカム溝が設けられている。これらのカム溝は、マニュアルズームリング36を回転させることで、交換レンズ50が図1の沈胴状態から交換レンズ50の全長が伸長した図2の撮影状態となる。そして、撮影状態においては、WIDE~TELE間で各レンズが光学的に所望のレンズ間隔となっている。
【0024】
マニュアルズームリング36の回転は不図示のセンサによって検出され、その検出信号はプリント基板25のICにより解析され、解析結果に基づいてマニュアルズームリング36の回転量とズーム位置が判断される。そして、マニュアルズームリング36のズーム位置に応じたフォーカス、防振、絞りの制御が行われる。マニュアルズームリング36には、マニュアルズームリング36を単に回転させるだけで撮影状態から沈胴状態にならないよう、不図示のロック機構が設けられている。
【0025】
シフトベース37は、光学防振機能を果たす2群ユニット5が光軸に対して垂直な面上で移動することを可能に支持する固定部材である。シフトカバー38は、シフトベース37に固定され、交換レンズ50に加わった衝撃などによって2群ユニット5がシフトベース37から光軸方向における像面側へ浮き上がることを防止する。
【0026】
マグネット39は、光軸に対して垂直な面上で移動することが可能であるように2群ユニット5に固定されている。略ドーナツ形状をしたコイル40は、シフトベース37に固定されている。マグネット39とコイル40によってレンズ保持枠駆動手段が構成されている。空芯部41は略ドーナツ形状をしたコイル40の中心穴である。コイル40は空芯部41を中心軸として導通線材が巻かれることによって形成され、その巻き軸方向と光軸が並行となるように配置される。
【0027】
ボビン42は、コイル40とレンズ保持枠位置検出手段であるホール素子43を保持している。コイル40とホール素子43への通電は、ボビン42に設置された不図示の端子を介して行われる。ホール素子43は空芯部41内に配置され、磁束変化を電流へ変換することで2群ユニット5の位置検出が行われる。実施例1においては、検出専用マグネットを用いることなく、駆動用として使用するマグネット39からの動磁界が検出されている。
【0028】
コイル40に信号電流が通電されると、この電流とマグネット39の磁束によってローレンツ力が発生し、そのローレンツ力が2群ユニット5の駆動力となる。その際の磁束変化がホール素子43で検出され、その検出値がレンズ保持枠制御手段であるレンズCPU51にフィードバックされ、2群ユニット5の駆動制御が行われる。
【0029】
ヨーク44は、マグネット39から全方向へ放射される一定量のS、Nの磁束を整流し、より高密度にコイル40側へ放射するようにする。更に、ヨーク44側、すなわち、絞りユニット16側への磁束の放射を防止する役割もある。
【0030】
このようなレンズ保持枠駆動手段(駆動アクチュエータ)が縦(ピッチ方向)と横(ヨー方向)それぞれに1つずつあり、それらの駆動アクチュエータを適切に制御することで、光軸と垂直な面上の所望の位置に2群ユニット5を移動させることができる。
【0031】
実施例1においては、光軸を中心とした回転方向の位相において、マグネット39と、絞りユニット16の駆動源となる不図示の絞りユニットモータがおおよそ同じ位置に配置されている。よって、マグネット39と絞りユニットモータとの間にヨーク44を配置することにより、マグネット39と絞りユニットモータの磁気干渉を防止もしくは軽減でき、この配置は駆動アクチュエータ性能の低下の抑制を配慮した構成である。
【0032】
2群ユニット5は、上記のような構成により、光軸と垂直な面上で駆動されることが可能であるが、その駆動範囲は不図示のメカ端によって規制されている。このメカ端を基準位置として、2群ユニット5の移動中心を決定する制御が可能である。
【0033】
次に、図3は、交換レンズ50及びカメラ本体70におけるカメラシステムの電気的構成を示す。まず、カメラ本体70内部の制御フローについて説明する。カメラCPU71はマイクロコンピュータにより構成される。カメラCPU71は、カメラ本体70内の各部の動作を制御する。また、カメラCPU71は、交換レンズ50の装着時にはレンズ側電気接点52、カメラ側電気接点72を介して、交換レンズ50内に設けられたレンズCPU51との通信を行う。カメラCPU71がレンズCPU51に送信する情報(信号)には、フォーカスレンズ10の駆動量情報、平行振れ情報及びピント振れ情報が含まれる。また、レンズCPU51からカメラCPU71に送信する情報(信号)には、撮像倍率情報が含まれる。なお、レンズ側電気接点52、カメラ側電気接点72には、カメラ本体70から交換レンズ50に電力を供給するための接点が含まれている。
【0034】
電源スイッチ73は、撮影者により操作可能なスイッチであり、カメラCPU71の起動、及びカメラシステム内の各アクチュエータやセンサ等への電力供給の開始をすることができる。レリーズスイッチ74は、撮影者により操作可能なスイッチであり、第1ストロークスイッチSW1と第2ストロークスイッチSW2とを有する。レリーズスイッチ74からの信号は、カメラCPU71に入力される。カメラCPU71は、第1ストロークスイッチSW1からのON信号の入力に応じて、撮影準備状態に入る。撮影準備状態では、測光部75による被写体輝度の測定と、焦点検出部76による焦点検出が行われる。
【0035】
カメラCPU71は、測光部75による測光結果に基づいて絞りユニット16の絞り値や撮像部78の撮像素子の露光量(シャッタ秒時)等を演算する。また、カメラCPU71は、焦点検出部76による撮影光学系の焦点状態の検出結果である焦点情報に基づいて、被写体に対する合焦状態を得るためのフォーカスレンズ10及びフォーカス鏡筒11の駆動量(駆動方向を含む)を決定する。なお、焦点情報は、デフォーカス量及びデフォーカス方向である。上記駆動量の情報(フォーカスレンズ10の駆動量情報)は、レンズCPU51に送信される。レンズCPU51は、交換レンズ50の各構成部の動作を制御する。
【0036】
更にカメラCPU71は、所定の撮影モードになると、2群ユニット5のシフト駆動、すなわち防振動作の制御を開始する。第2ストロークスイッチSW2からのON信号が入力されると、カメラCPU71は、レンズCPU51に対して絞り駆動命令を送信し、絞りユニット16を先に演算した絞り値に設定する。また、カメラCPU71は、露光部77に露光開始命令を送信し、不図示のミラーの退避動作や不図示のシャッタの開放動作を行わせ、撮像部78の撮像素子において、被写体像の光電変換、すなわち露光動作を行わせる。
【0037】
撮像部78からの撮像信号は、カメラCPU71内の信号処理部にてデジタル変換され、更に各種補正処理が施されて画像信号として出力される。画像信号(データ)は、画像記録部79において、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体に記録保存される。
【0038】
次に交換レンズ50内部の制御フローについて説明する。MFリング回転検出部53(フォトリフレクタ22)は、MFリング21の回転を検出し、ZOOMリング回転検出部54は、マニュアルズームリング36の回転を検出する。
【0039】
IS駆動部55は、防振動作を行う2群ユニット5の駆動アクチュエータとその駆動回路とを含む。AF駆動部56は、カメラCPU71から送信されたフォーカスレンズ10の駆動量情報に応じてフォーカスモータ14を通じてフォーカス鏡筒11のAF駆動を行う。
【0040】
電磁絞り駆動部57は、カメラCPU71からの絞り駆動命令を受けたレンズCPU51により制御されて、絞りユニット16を指定された絞り値に相当する開口状態に動作させる。
【0041】
角速度センサ58は、交換レンズ50に搭載され、プリント基板25に接続されている。角速度センサ58は、カメラシステムの角度振れであるピッチ方向振れとヨー方向振れのそれぞれの角速度を検出し、検出値を角速度信号としてレンズCPU51に出力する。レンズCPU51は、角速度センサ58からのピッチ方向及びヨー方向の角速度信号を電気的又は機械的に積分して、それぞれの方向での変位量であるピッチ方向振れ量及びヨー方向振れ量(これらをまとめて角度振れ量という。)を演算する。
【0042】
レンズCPU51は、上述した角度振れ量と平行振れ量の合成変位量に基づいてIS駆動部55を制御して2群ユニット5をシフト駆動させ、角度振れ補正及び平行振れ補正を行う。また、レンズCPU51は、ピント振れ量に基づいてAF駆動部56を制御してフォーカス鏡筒11を光軸方向に駆動させ、ピント振れ補正を行う。
【0043】
次に、実施例1のMFリング21の内面に設けられている反射面21sの反射パターン21p(回路パターン)について詳細に説明する。図4はMFリング21とフォトリフレクタ22の断面図、及び反射面21sの部分的な展開図を示している。図4において、紙面上下方向がMFリング21の回転方向である。
【0044】
MFリング21の内面には、所定の幅21wを有すると共に全周において、フォトリフレクタ22が発光する光を反射する反射面21sが設けられており、図4では、ハッチングで示された部分が環状の反射面21sである。環状の反射面21sに示された複数の白抜き部は低反射部21bであり、MFリング21の回転方向において低反射部21bと隣接する部分が反射部21aである。すなわち、反射面21sは、光を反射する反射部21aと低反射部21bがMFリング21の操作方向に交互に設けられた、反射パターン21pとして形成されている。
【0045】
低反射部21bでは反射部21aより光の反射率が低くなっている。このような反射パターン21pを備えるMFリング21の製造方法には、まずMFリング21が樹脂材料で成型される工程がある。反射パターン21pの形成には、反射面21sが形成されるMFリング21の内面の一部である環状の樹脂表面にシボ加工が行われる工程がある。そして、低反射部21bとなる範囲はシボ加工のまま残され、その他の部分には光を反射する表面を形成する表面処理の工程がなされることにより、反射パターン21pが形成される。表面処理は、MFリング21の表面に導電性材料を設けることで反射部21aが形成される。なお、低反射部21bは非常に微小な面積であるので、低反射部21bとなる範囲だけにシボ加工を行うわけではない。
【0046】
図4では、反射パターン21pとして形成された反射面21sの一部が展開図として示されているが、反射パターン21pはMFリング21の内面全周に設けられている。導体であるワッシャ24は、ワッシャ固定面21cに当接して固定される。
【0047】
実施例1においては、MFリング21の回転方向で反射部21aと低反射部21bが交互に等しいピッチ(P1=P2)で設けられている。MFリング21が回転すると、フォトリフレクタ22が発光する光は反射パターン21pにより、反射と低反射を繰り返され、フォトリフレクタ22の受光部への入射光に強弱がつけられる。この受光部への入射光により、フォトリフレクタ22からはMFリング21の回転の位置を検出する信号が出力される。この信号は、受光部が受ける光が一定量を超えていれば所定の電圧となるHi信号となり、受光部が受ける光が一定量を超えていなければLow信号となる、矩形波の信号である。(当然、矩形波にするためにデジタル処理などの電気処理がなされている。)更に、実施例1のフォトリフレクタ22は、1組の反射と低反射のパターンから位相の異なる2相の信号が出力されるタイプであり、この信号により高精度なMFリング21の回転検出を可能としている。
【0048】
実施例1の反射パターン21pは、シボ加工された反射面21sの表面に表面処理であるMID(Molded Interconnect Device)技術によって反射部21aが形成された導電性を有する回路パターンである。MID技術とは樹脂表面にパターンを形成する加工方法で、近年ではスマートフォンのアンテナやLED照明等でも使用される技術である。加工方法の一例としては、パターンを形成したい樹脂表面をレーザーで改質し、そこに触媒を付着させてメッキするという方法がある。なお、近年のMID技術ではさまざまなMID加工が確立されているが、実施例1ではその加工方法について限定しない。
【0049】
しかしながら、MID技術で加工した反射パターン21pは、導通可能ではあるが、センサやアクチュエータを接続して積極的に通電する用途には適さない。実施例1では、MID技術により反射面21sの表面にメッキにより所望の反射率が得られること、また、MFリング21の表面に直接反射パターン21pを加工できるということ、というメリットを活用している。MID技術により、反射板や遮光板等の、別部材を追加することなく、フォトリフレクタ22によるMFリング21の回転検出を実現している。そして、レーザー加工により、樹脂であるMFリング21の表面へ直接反射パターン21pを形成すれば、微細加工(おおよそピッチ0.1mm)が可能であり、高精度と小型化の両立が実現できる。
【0050】
なお、別部材を追加せずに反射パターン21pを作成する方法としては、例えば印刷等が考えらえる。しかしながら、回転検出の高精度化に伴ってより狭いピッチ(P1、P2)が要求されており、またこの加工が内面の全周に施されることを考慮すると、印刷に用いるマスキング工具による加工は困難である。また、樹脂成型によって作成されるMFリング21の金型を磨き上げることで樹脂部品表面の反射率を上げる(すなわち表面粗さRaを下げる)方法があるが、この方法もまた狭いピッチの加工は困難である。
【0051】
一方、実施例1の反射パターン21pは、ワッシャ固定面21cが設けられている側で反射部21aの一部が繋がった形状になっており、更にワッシャ固定面21cと反射パターン21pが繋がっている。そして、この反射パターン21pは、導体であるワッシャ24を介して固定鏡筒19やマウント26に接続され、そしてグランド(GND)に接地されるので、すべて同電位である。すなわち、反射パターン21pは、積極的な通電を行わないが、万が一の際のMFリング21の外側からの静電気に対して避雷針の役割を果たし、フォトリフレクタ22やその他センサ等の破壊を防止することができる。ちなみに固定鏡筒19も導体であり、実施例1ではカーボンを含む樹脂が採用されている。
【0052】
上記のように、MFリング21の回転方向において反射部21aと低反射部21bは、交互に等しいピッチで設けられているが、低反射部21bに梨地をつける場合、MFリング21の内径が光軸方向に沿って変化する形状となる。このような場合、反射部21a及び低反射部21bの光軸方向に直交する方向の幅を光軸方向に沿って連続的に変化させることで、MFリング21の内径が変化しているどのスラスト位置においても等しくピッチを維持することができる。
【0053】
(実施例2)
図5は、実施例2のMFリング221とフォトリフレクタ222の構成を示す部分斜視図である。交換レンズ50の構成としては、実施例1と基本的に同様であるので、同様な構成の部分は、実施例1と同符号を付し、詳細な説明は省略し異なる部分のみ説明する。後述の実施例3、4についても同様とする。
【0054】
実施例2の低反射部221bは、MFリング221の内周面に凹形状として形成されている。このように低反射部221bを凹形状として形成することにより、更に反射率を低下できる構成となっている。低反射部221bと交互に設けられている複数の反射部221aは、MFリング221に設けられたワッシャ固定面221cに配置されるワッシャ24とすべて繋がって導通している。すなわち、MFリング221の内周面には、凹凸部が設けられており、低反射部221bは、凹凸部の凹部により構成されている。
【0055】
反射パターン221pは、メッキの加工方法等によって形成されるので、反射部221aの反射率がバラつき、場合によっては反射率が低下するおそれもある。そこで、低反射部221bの形状が凹形状として構成され、更にフォトリフレクタ222の発光、受光に対し正対しないようにすることで、低反射部221bの反射率をより低下させる。そして、フォトリフレクタ222からのHi信号とLow信号の出力差をより確実に確保することができる。更に、低反射部221bの形状を凹形状として構成することにより、表面を梨地とすることも可能である。
【0056】
更に、反射部221aの樹脂表面を波型にする等、反射率を徐々に変化させてフォトリフレクタ222の検出信号を矩形波ではなくアナログ的な正弦波にすることも可能であり、それにより高精度な回転検出が可能となる。
【0057】
(実施例3)
図6は、実施例3のMFリング321とフォトリフレクタ322の構成を示す部分断面図である。実施例3のMFリング321の内面には、回転方向に沿って凹部321rが全周に渡って形成されており、この凹部321rの中に反射パターン321pが設けられている。
【0058】
このように反射パターン321pを凹部321rの中に形成することにより、外光による誤動作を防止することができる。更にMFリング321の一部を半径方向に薄くすることができるので、装置を小型化することができる。なお、反射パターン321pは、不図示のワッシャ固定面に配置されるワッシャ24と繋がって導通している。
【0059】
(実施例4)
図7は、実施例4のMFリング421と複数備えられたフォトリフレクタ422の構成を示す断面図である。実施例4では2つのフォトリフレクタ422が備えられており、それぞれが1相の出力であり、対応する反射パターン421p(回路)が2つ設けられている。2つの反射パターン421pは、MFリング421の半径方向において異なる位置に、段差を有するように設けられている。すなわち、フォトリフレクタ422と反射パターン421pの一組は、他の組のフォトリフレクタ422と反射パターン421pに対して半径方向にずれており、半径方向に高さが異なる。3D-MID技術では、高さが異なる反射パターン421pであっても1工程で加工できるため、それぞれの反射パターン421pのピッチや位相を合わせて加工可能であり、所望の位相差でフォトリフレクタ422の信号をそれぞれ出力することができる。2つの反射パターン421pは、MFリング421に設けられたワッシャ固定面421cに配置されるワッシャ24と繋がって導通している。
【0060】
なお、レイアウトが可能であればわざわざ反射パターン421pに段差をつける必要はないが、周辺部品との干渉や、MFリング421の外観などのニーズから反射パターン421pが十分に確保できない可能性もある。そこで3D-MID技術で反射パターン421pを作成すれば精度上問題はなく、一方、他部品とのレイアウト自由度が高くなることを考えれば、ひいては交換レンズ50及びカメラ本体70の小型化になる。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また設計機能を考慮した材質であれば、それを限定するものではない。また、本発明は、光学部材が移動することで変倍動作(ズーム動作)、合焦動作(フォーカス動作)、防振動作、光量調節動作を行う光学系を有する光学装置に適用される。
【符号の説明】
【0062】
14 フォーカスモータ(駆動手段)
21 MFリング(操作部材)
21a 反射部
21p 反射パターン(回路)
21b 低反射部
22 フォトリフレクタ(検出手段)
51 レンズCPU(制御手段)
図1
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図3
図4
図5
図6
図7