(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20240129BHJP
H04N 9/64 20230101ALI20240129BHJP
H04N 1/62 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
G06T1/00 510
H04N9/64 F
H04N1/62
(21)【出願番号】P 2019197998
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】新井 公崇
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-074317(JP,A)
【文献】特開2001-218078(JP,A)
【文献】特開2012-039274(JP,A)
【文献】特許第5406998(JP,B1)
【文献】特開2011-155352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
H04N 9/64
H04N 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮像して得られる第1画像データを取得する取得手段と、
前記第1画像データが表す第1画像
においてユーザに指定された注目領域の色相を表示手段が表示可能な最大彩度に対応する色相を用いて表現した第2画像を、前記表示手段に表示する表示制御手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1画像における注目領域の色相又は彩度を、前記表示手段の特性に応じて変換された場合に特定の彩度範囲の階調が保持されるように変換することによって、前記第2画像を表す第2画像データを生成する生成手段と、
前記第2画像を前記表示手段の特性に応じて変換する変換手段と、をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記変換された第2画像を前記表示手段に表示することを特徴とする請求項
1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記第1画像と前記第2画像とを前記表示手段の特性に応じて変換し、
前記表示制御手段は、前記変換された第1画像と第2画像とを併せて前記表示手段に表示することを特徴とする請求項
2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記特定の彩度範囲の階調は、高彩度色に対応する階調であることを特徴とする請求項
2又は請求項
3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、色相よりも彩度を優先して前記注目領域の色を変換することを特徴とする請求項
2乃至請求項
4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記第1画像における前記注目領域の色相を変換することを特徴とする請求項
2乃至請求項
5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記注目領域は複数の画素を含む領域であって、
前記注目領域を代表する色相を算出し、前記複数の画素それぞれに対して色を変換すべきか否かを前記代表する色相に応じて判定する判定手段をさらに有することを特徴とする請求項
5又は請求項
6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記代表する色相として、前記複数の画素それぞれに対応する色相の平均値を算出することを特徴とする請求項
7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記代表する色相に対応する前記表示手段が表示可能な最大の彩度と前記複数の画素それぞれに対応する彩度とを比較することによって、前記複数の画素それぞれに対して色を変換すべきか否かを判定することを特徴とする請求項
7又は請求項
8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記生成手段は、前記代表する色相が、前記表示手段が表示可能な最大の彩度に対応する色相になるように、前記注目領域の色相を変換することを特徴とする請求項
7乃至請求項
9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記生成手段は、前記第1画像における前記注目領域の彩度を変換することを特徴とする請求項
2乃至請求項
4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記生成手段は、高彩度色に対応する特定の階調を維持するように色の変換を行うためのルックアップテーブルを用いて、前記第1画像における前記注目領域の彩度を変換することを特徴とする請求項
11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記生成手段は、複数種類のルックアップテーブルから、ユーザの指示に応じて彩度の変換に用いる前記ルックアップテーブルを選択することを特徴とする請求項
12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記複数種類のルックアップテーブルには、階調を維持する彩度範囲が互いに異なる複数種類のルックアップテーブルが含まれることを特徴とする請求項
13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記ユーザの指示は、前記物体の色相を特定する指示であることを特徴とする請求項
13又は請求項
14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
コンピュータを請求項1乃至請求項
15のいずれか一項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項17】
物体を撮像して得られる第1画像データを取得する取得ステップと、
前記第1画像データが表す第1画像
においてユーザに指定された注目領域の色相を表示手段が表示可能な最大彩度に対応する色相を用いて表現した第2画像を、前記表示手段に表示する表示制御ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の色を評価するための画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物体をカメラで撮像して得られる画像データを用いて、物体上の2点間の色差を評価する技術がある。特許文献1は、表示された画像において指定された評価点間の色差を算出する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示装置に表示される画像は、表示装置が表現できない高彩度色を表示装置が表現できる色域内に圧縮変換して生成される。このため、実物とは彩度の階調が大きく異なる画像を参照しながら、色の評価をしたい領域を指定しなければならないという場合があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、物体の撮像画像を基に生成される、実物と彩度の階調が近い画像を参照しながら、画像上の評価領域を指定するための画像処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、物体を撮像して得られる第1画像データを取得する取得手段と、前記第1画像データが表す第1画像においてユーザに指定された注目領域の色相を表示手段が表示可能な最大彩度に対応する色相を用いて表現した第2画像を、前記表示手段に表示する表示制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物体の撮像画像を基に生成される、実物と彩度の階調が近い画像を参照しながら、画像上の評価領域を指定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図
【
図3】画像処理装置が実行する処理を示すフローチャート
【
図4】画素値をL
*a
*b
*値に変換する処理を示すフローチャート
【
図5】彩度の大小関係を判定する処理を示すフローチャート
【
図6】最大の彩度C
MAXを算出する処理を示すフローチャート
【
図8】表示画像データを生成する処理を示すフローチャート
【
図13】表示画像データを生成する処理を示すフローチャート
【
図15】彩度の変換方法を指定するためのUIを示す図
【
図18】画像処理装置が実行する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態は本発明を必ずしも限定するものではない。また、本実施形態において説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0010】
[第1実施形態]
<画像処理装置のハードウェア構成>
図1は画像処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。画像処理装置1は、CPU101、ROM102、RAM103を備える。また、画像処理装置1は、VC(ビデオカード)104、汎用I/F(インターフェース)105、SATA(シリアルATA)I/F106、NIC(ネットワークインターフェースカード)107を備える。CPU101は、RAM103をワークメモリとして、ROM102、HDD(ハードディスクドライブ)15などに格納されたOS(オペレーティングシステム)や各種プログラムを実行する。また、CPU101は、システムバス108を介して各構成を制御する。尚、後述するフローチャートによる処理は、ROM102やHDD15などに格納されたプログラムコードがRAM103に展開され、CPU101によって実行される。VC104には、表示装置17が接続される。汎用I/F105には、シリアルバス11を介して、マウスやキーボードなどの入力デバイス12や撮像装置13が接続される。SATAI/F106には、シリアルバス14を介して、HDD15や各種記録メディアの読み書きを行う汎用ドライブ16が接続される。NIC107は、外部装置との間で情報の入力及び出力を行う。CPU101は、HDD15や汎用ドライブ16にマウントされた各種記録メディアを各種データの格納場所として使用する。CPU101は、プログラムによって提供されるGUI(グラフィカルユーザインターフェース)を表示装置17に表示し、入力デバイス12を介して受け付けるユーザ指示などの入力を受信する。
【0011】
<画像処理装置の論理構成>
図2は画像処理装置1の論理構成を示すブロック図である。CPU101は、RAM103をワークメモリとして、ROM102又はHDD15に格納されたプログラムを読み出して実行することによって、
図2に示す論理構成として機能する。尚、以下に示す処理の全てがCPU101によって実行される必要はなく、処理の一部または全てがCPU101以外の一つまたは複数の処理回路によって行われるように画像処理装置1が構成されていてもよい。
【0012】
画像処理装置1は、画像取得部201、色変換部202、彩度判定部203、画像生成部204、色差算出部205、表示制御部206、指定受付部207を有する。画像取得部201は、物体を撮像して得られる撮像画像データを取得する。色変換部202は、撮像画像データが表す撮像画像が各画素に有する画素値(R,G,B)を、L
*a
*b
*値(L
*,a
*,b
*)に変換する。彩度判定部203は、撮像画像における注目領域の彩度と、注目領域の色相について表示装置17が表現できる最大の彩度と、の大小関係を判定する。画像生成部204は、注目領域の彩度に関する判定結果に基づいて、表示装置17に表示する表示画像を表す表示画像データを生成する。
図7は画像生成部204の論理構成を示すブロック図である。画像生成部204は、色相回転部2041及び画像変換部2042を有する。色相回転部2041は、注目領域の彩度に関する判定結果に基づいて、撮像画像の色相を変換する。画像変換部2042は、色相が変換された撮像画像を表す撮像画像データに基づいて、表示画像データを生成する。
【0013】
指定受付部207は、表示画像においてユーザに指定された領域を表す領域情報を受け付ける。色差算出部205は、ユーザに指定された領域間の色差を算出する。表示制御部206は、表示画像とユーザに指定された領域間の色差とを表示装置17に表示する。
【0014】
<画像処理装置が実行する処理>
図3は画像処理装置1が実行する処理を示すフローチャートである。以下、各ステップ(工程)は符号の前にSをつけて表す。尚、以下の処理は、入力デバイス12を介したユーザ指示により開始する。
【0015】
S301において、画像取得部201は、物体を撮像して得られる撮像画像データと、基準白色の色信号値(XW,YW,ZW,)と、を取得する。本実施形態における画像取得部201は、HDD15に予め保持されている撮像画像データと基準白色の色信号値(XW,YW,ZW,)とをHDD15から取得する。
【0016】
S302において、表示制御部206は、撮像画像データが表す撮像画像が各画素に有する画素値(R,G,B)を、表示装置17の特性に応じた色信号値(RD,GD,BD)に変換する。この変換においては、表示装置17が表現できない高彩度色が表示装置17が表現できる色域内に圧縮されている。変換には、画素値(R,G,B)と色信号値(RD,GD,BD)との対応関係を保持する色変換ルックアップテーブル(LUT)を用いる。さらに、表示制御部206は、色信号値(RD,GD,BD)を各画素に有する表示画像Aを表示装置17に表示する。表示画像Aは高彩度色が圧縮されているため、後述する表示画像Bと比べて、彩度の階調が撮像された物体と大きく異なる場合がある。
【0017】
S303において、指定受付部207は、表示画像Aにおいてユーザに指定された注目領域を表す領域情報を受け付ける。本実施形態における領域情報は、表示画像Aにおける座標(x,y)である。
【0018】
S304において、色変換部202は、撮像画像データが表す撮像画像が各画素に有する画素値(R,G,B)を、L
*a
*b
*値(L
*,a
*,b
*)に変換する。以下、画素値(R,G,B)をL
*a
*b
*値(L
*,a
*,b
*)に変換する処理の詳細を説明する。
図4は画素値(R,G,B)をL
*a
*b
*値(L
*,a
*,b
*)に変換する処理を示すフローチャートである。
【0019】
S401において、色変換部202は、式(1)に従って、注目画素の画素値(R,G,B)をXYZ値(X,Y,Z)に変換する。尚、係数(m11~m33)はカラーチャートを撮像及び測色した結果を用いて予め決定しておく。
【0020】
【0021】
S402において、色変換部202は、式(2),式(3),式(4),式(5)に従って、注目画素のXYZ値(X,Y,Z)をL*a*b*値(L*,a*,b*)に変換する。
【0022】
【0023】
S403において、色変換部202は、撮像画像における全ての画素の画素値をL*a*b*値に変換したか否かを判定する。全ての画素値を変換していなければ注目画素を更新してS401に処理を戻し、全ての画素値を変換していればS304の処理を終了してS305に処理を移行する。
【0024】
S305において、彩度判定部203は、撮像画像における注目領域の彩度と、注目領域の色相について表示装置17が表現できる最大の彩度と、の大小関係を判定する。以下、彩度の大小関係を判定する処理の詳細を説明する。
図5は彩度の大小関係を判定する処理を示すフローチャートである。
【0025】
S501において、彩度判定部203は、撮像画像における全ての画素について、式(6)に従って、彩度Cと色相Hとを算出する。
【0026】
【0027】
S502において、彩度判定部203は、注目領域の色相Hについて表示装置17が表現できる最大の彩度C
MAXを算出する。以下、最大の彩度C
MAXを算出する処理の詳細を説明する。
図6は最大の彩度C
MAXを算出する処理を示すフローチャートである。S601において、彩度判定部203は、表示装置17が表示可能な色の特性を表す情報を取得する。具体的には、彩度判定部203は、L
*CH色空間における表示装置17の色域の最外殻の座標群を表す情報を取得する。
【0028】
S602において、彩度判定部203は、注目領域における注目画素の明度L*,彩度C,色相Hを取得する。S603において、彩度判定部203は、L*CH色空間において注目画素に対応する座標(L*,C,H)と、明度軸上の座標(L*,0,0)と、を通るベクトルを生成する。S604において、彩度判定部203は、表示装置17の色域の最外殻を構成する三角形要素(ポリゴン)と生成したベクトルとの交点を算出し、交点の座標を記録する。交点の彩度軸の座標は、注目画素の色相Hについて表示装置17が表現できる最大の彩度CMAXである。S605において、彩度判定部203は、注目領域における全ての画素について最大の彩度CMAXを算出したか否かを判定する。注目領域における全ての画素について最大の彩度CMAXを算出していなければ注目画素を更新してS602に処理を戻し、注目領域における全ての画素について最大の彩度CMAXを算出していればS502の処理を終了してS503に処理を移行する。
【0029】
S503において、彩度判定部203は、注目領域における注目画素について、彩度Cと最大の彩度CMAXとを比較する。最大の彩度CMAXの方が大きい場合は注目画素の識別情報として0の値を保存し、彩度Cの方が大きい場合は注目画素の識別情報として1の値を保存する。S504において、彩度判定部203は、注目領域における全ての画素について彩度に関する判定を行ったか否かを判定する。注目領域における全ての画素について判定を行っていなければ注目画素を更新してS503に処理を戻し、全ての画素について判定を行っていればS305の処理を終了してS306に処理を移行する。
【0030】
S306において、画像生成部204は、注目領域の彩度に関する判定結果に基づいて、表示装置17に表示する表示画像Bを表す表示画像データを生成する。以下、表示画像Bを表す表示画像データを生成する処理の詳細を説明する。
図8は表示画像Bを表す表示画像データを生成する処理を示すフローチャートである。
【0031】
S801において、色相回転部2041は、注目領域における全ての画素について、明度L*,彩度C,色相Hと、彩度の判定結果である識別情報と、を取得する。S802において、色相回転部2041は、注目領域において、識別情報が1である画素の色相を代表する代表色相HREPを算出する。本実施形態における代表色相HREPは、識別情報が1である画素の色相の平均値である。尚、識別情報1は、彩度Cが表示装置17の色域外であることを表し、識別情報0は、彩度Cが表示装置17の色域内であることを表す。
【0032】
S803において、色相回転部2041は、表示装置17の色特性情報から、表示装置17が最大の彩度を表現できる色相HMAXを取得する。さらに、色相回転部2041は、代表色相HREPと色相HMAXとの差を、撮像画像の色相を回転させる回転角ΔHとして算出する。回転角ΔHは式(7)に従って算出する。
ΔH=HMAX-HREP・・・式(7)
S804において、色相回転部2041は、式(8)に従って、撮像画像における全ての画素の色相Hを回転角ΔHに応じて色相HRに変換する。
【0033】
【0034】
S805において、画像変換部2042は、撮像画像における注目画素のL*CH値(L*,C,HR)をXYZ値(X,Y,Z)に変換する。具体的には、画像変換部2042は、式(9)に従って、L*CH値(L*,C,HR)をL*a*b*値(L*,a*,b*)に変換する。さらに、画像変換部2042は、S402の変換と逆の変換を行うことによって、L*a*b*値(L*,a*,b*)をXYZ値(X,Y,Z)に変換する。
【0035】
【0036】
S806において、画像変換部2042は、注目画素のXYZ値(X,Y,Z)を、表示装置17の特性に応じた色信号値(RD,GD,BD)に変換する。変換には、XYZ値(X,Y,Z)と色信号値(RD,GD,BD)との対応関係を保持する色変換LUTを用いる。S807において、画像変換部2042は、撮像画像における全ての画素のL*CH値を色信号値(RD,GD,BD)に変換したか否かを判定する。全てのL*CH値を変換していなければ注目画素を更新してS805に処理を戻し、全てのL*CH値を変換していればS306の処理を終了してS307に処理を移行する。
【0037】
以上のS306の処理によって得られる、各画素に色信号値(RD,GD,BD)を有する表示画像を表示画像Bとする。この表示画像Bは、色相よりも彩度を再現することを優先した画像であり、表示装置17が出力できる最大の彩度を利用しているため、上述した表示画像Aに比べて注目領域の彩度の階調が撮像された物体に近い。
【0038】
S307において、表示制御部206は、表示画像Bを表示画像Aと並べて表示する。
図9は表示画像の表示例を示す図である。ウィンドウ901は表示画像Aを表示するウィンドウであり、ウィンドウ902は表示画像Bを表示するウィンドウである。実行ボタン903は色差の算出を実行するためのボタンであり、終了ボタン904は処理を終了するためのボタンである。矩形905は注目領域を表し、三角形906は注目領域との色差を算出したい参照領域を表す。入力デバイス12を介して注目領域と参照領域とが指定されることにより、指定受付部207は、注目領域及び参照領域の領域情報を受け付ける。実行ボタン903がユーザにより押下されることにより、処理をS308に移行する。
【0039】
S308において、色差算出部205は、注目領域と参照領域との色差を算出する。以下、領域間の色差を算出する処理の詳細を説明する。
図10は領域間の色差を算出する処理を示すフローチャートである。
【0040】
S1001において、色差算出部205は、注目領域の座標と参照領域の座標とを取得する。S1002において、色差算出部205は、注目領域におけるL*a*b*値(L*
1,a*
1,b*
1)の平均値と、参照領域におけるL*a*b*値(L*
2,a*
2,b*
2)の平均値と、を算出する。S1003において、色差算出部205は、式(10)に従って、注目領域のL*a*b*値の平均値と参照領域のL*a*b*値の平均値との色差ΔEを算出する。
【0041】
【0042】
S1004において、表示制御部206は、
図9の値表示領域907に色差ΔEを表示する。
【0043】
<第1実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態における画像処理装置は、物体を撮像して得られる画像データを取得する。取得した画像データが表す画像における注目領域の色相又は彩度を、表示手段の特性に応じて変換された場合に特定の彩度範囲の階調が保持されるように変換することによって、画像データを生成する。取得した画像データが表す画像と生成した画像データが表す画像とを表示装置の特性に応じて変換する。変換された2つの画像を併せて表示装置に表示する。これにより、物体の撮像画像を基に生成される、実物と彩度の階調が近い画像を参照しながら、画像上の評価領域を指定することができる。
【0044】
<変形例>
第1実施形態においては、画像取得部201が撮像画像データをHDD15から取得したが、画像取得部201が撮像装置13を制御して物体を撮像し、撮像画像データを取得してもよい。また、基準白色の色信号値(XW,YW,ZW,)についても、HDD15から取得せずに、表示画像A上でユーザに指定された基準白色点の色信号値を色信号値(XW,YW,ZW,)として取得してもよい。
【0045】
また、第1実施形態においては、S601~S605の処理によって最大の彩度CMAXを算出したが、色相Hと最大の彩度CMAXとの対応関係を保持するLUTを予め作成しておいて用いてもよい。
【0046】
また、第1実施形態においては、S601~S605の処理によって最大の彩度CMAXを算出したが、全ての色相それぞれについての最大の彩度から、彩度Cよりも大きく、かつ、対応する色相が色相Hと最も近い最大の彩度CMAXを選択してもよい。
【0047】
また、第1実施形態においては、注目領域と参照領域とのそれぞれについてL*a*b*値の平均値を算出したが、RGB値やXYZ値の平均値を算出した後にL*a*b*値に変換してもよい。
【0048】
また、第1実施形態においては、領域間の色の差を評価するために色差ΔE76を算出したが、色の差を評価できる値であれば他の公知の値を用いてもよい。
【0049】
また、第1実施形態においては、表示画像Aと表示画像Bとを並べて表示したが、表示画像Aにおけるユーザに指定された領域を表示画像Bにおいて対応する領域に置き換えて表示してもよい。この場合、S303において、指定受付部207は、表示画像Aにおいて、表示画像Bに置換して表示する領域を表す置換領域情報を受け付ける。S307において、表示制御部206は、置換領域情報に基づいて、表示画像Aの一部を表示画像Bの一部に置換して表示する。
図11は表示画像の表示例を示す図である。ウィンドウ1101は表示画像を表示するウィンドウである。実行ボタン1102は色差の算出を実行するためのボタンであり、終了1103は処理を終了するためのボタンである。矩形1104は注目領域を表し、三角形1105は注目領域との色差を算出したい参照領域を表す。点線1106に囲まれた領域は、表示画像Aのうち、表示画像Bに置換された領域を表す。これにより、画像を1つしか表示できない場合であっても、実物と彩度の階調が近い画像を参照しながら、画像上の評価領域を指定することができる。尚、置換して表示する領域は、ユーザにより指定された領域に限られず、例えば注目領域と色差が閾値以下の領域であってもよい。また、表示画像Aの一部を表示画像Bの一部に置換するのではなく、表示画像Aの一部に表示画像Bの一部を重畳して表示してもよい。
【0050】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、表示装置17が最大の彩度を出力できる色相に画像を変換して表示した。本実施形態においては、画像に対して高彩度色の階調を維持するように色変換を行い、色相を変換せずに表示画像の表示を行う。尚、本実施形態における画像処理装置1のハードウェア構成は第1実施形態のものと同様であるため、説明を省略する。以下において、本実施形態と第1実施形態とで異なる部分を主に説明する。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。
【0051】
<画像生成部204の論理構成>
画像生成部204は、注目領域の彩度に関する判定結果に基づいて、表示装置17に表示する表示画像を表す表示画像データを生成する。
図12は画像生成部204の論理構成を示すブロック図である。画像生成部204は、彩度変換部2043及び画像変換部2042を有する。彩度変換部2043は、注目領域の彩度に関する判定結果に基づいて、表示装置17が表示可能な彩度範囲のうち相対的に高彩度な色の階調を維持するように、撮像画像に対する色変換を行う。画像変換部2042は、彩度が変換された撮像画像を表す撮像画像データに基づいて、表示画像データを生成する。
【0052】
<表示画像データを生成する処理>
S306において、画像生成部204は、注目領域の彩度に関する判定結果に基づいて、表示装置17に表示する表示画像Bを表す表示画像データを生成する。以下、表示画像Bを表す表示画像データを生成する処理の詳細を説明する。
図13は表示画像Bを表す表示画像データを生成する処理を示すフローチャートである。
【0053】
S801において、彩度変換部2043は、注目領域における全ての画素について、明度L
*,彩度C,色相Hと、彩度の判定結果である識別情報と、を取得する。S1301において、彩度変換部2043は、注目領域において、識別情報が1である画素の彩度を彩度変換LUTを用いて変換する。
図14(a)は彩度変換LUTを示す図である。彩度変換LUTは、入力される彩度と出力される彩度との対応関係を保持している。
図14(b)は彩度変換LUTにおける入力彩度と出力彩度との対応関係を示す図である。彩度変換LUTは、
図14のように、表示装置17が表示可能な彩度範囲のうち相対的に高彩度な色の階調を維持するように、入力彩度と出力彩度との対応関係を保持している。尚、
図14(a)における数値は、該当する色相に対応する、表示装置17の最大の彩度に対する相対値である。画像変換部2042によるS805~S807の処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0054】
<第2実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態における画像処理装置は、画像に対して表示装置が表示可能な彩度範囲のうち相対的に高彩度な色の階調を維持するように彩度の変換を行い、表示画像の表示を行う。これにより、色相を維持して生成される、実物と彩度の階調が近い画像を参照しながら、画像上の評価領域を指定することができる。
【0055】
<変形例>
第2実施形態においては、予め決められた1種類の彩度変換LUTを用いて彩度の変換を行ったが、用途に合わせて複数種類の彩度変換LUTから彩度変換に用いる彩度変換LUTを選択できるようにしてもよい。
図15は彩度の変換方法を指定するためのUIを示す図である。コンボボックス1501はどの彩度範囲の階調を維持して彩度変換を行うかを指定するためのコンボボックスである。コンボボックス1502は階調を維持する彩度範囲のサイズを指定するためのコンボボックスである。コンボボックス1503の物体の色相に応じて彩度範囲を指定するためのコンボボックスである。実行ボタン1504は色変換を実行するためのボタンであり、終了ボタン1505は処理を終了するためのボタンである。
【0056】
図16は彩度変換LUTそれぞれの特性を模式的に示す図である。
図16(a)はコンボボックス1501に対応する彩度変換LUTの特性を示す。表示装置17には色相ごとに出力できる最大の彩度が異なる。つまり、表示装置17が出力できる彩度範囲において相対的に高彩度な範囲は色相ごとに異なる。コンボボックス1501において、ユーザは、階調を維持する彩度範囲を指定することができる。
図16(b)はコンボボックス1502に対応する彩度変換LUTの特性を示す。コンボボックス1502において、ユーザは、階調を維持する彩度範囲のサイズを指定することができる。
図16(c)はコンボボックス1503に対応する彩度変換LUTの特性を示す。コンボボックス1503において、ユーザは、物体の色相を直接指定することによって、階調を維持する彩度範囲を指定することができる。以上のように、複数種類の彩度変換LUTから彩度の変換に用いる彩度変換LUTを指定することによって、物体の色に適した彩度の変換を行うことができる。
【0057】
[第3実施形態]
上述した実施形態においては、撮像画像の画素値をL*a*b*値に変換し、L*a*b*値に基づいて色相又は彩度を変換した。本実施形態においては、撮像画像の画素値と色相又は彩度が変換された後の色信号値との対応関係を保持する色変換LUTを用いて、表示画像データを生成する。尚、本実施形態における画像処理装置1のハードウェア構成は第1実施形態のものと同様であるため、説明を省略する。以下において、本実施形態と第1実施形態とで異なる部分を主に説明する。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。
【0058】
<画像処理装置の論理構成>
図17は画像処理装置1の論理構成を示すブロック図である。CPU101は、RAM103をワークメモリとして、ROM102又はHDD15に格納されたプログラムを読み出して実行することによって、
図17に示す論理構成として機能する。尚、以下に示す処理の全てがCPU101によって実行される必要はなく、処理の一部または全てがCPU101以外の一つまたは複数の処理回路によって行われるように画像処理装置1が構成されていてもよい。
【0059】
画像処理装置1は、画像取得部201、画像生成部1701、色差算出部205、表示制御部206、指定受付部207を有する。画像生成部1701は、撮像画像の画素値と色相又は彩度が変換された後の色信号値との対応関係を保持する色変換LUTを用いて、表示画像データを生成する。
【0060】
<画像処理装置が実行する処理>
図18は画像処理装置1が実行する処理を示すフローチャートである。尚、以下の処理は、入力デバイス12を介したユーザ指示により開始する。尚、S301~S303,S307,S308の処理は上述した実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0061】
S1801において、画像生成部1701は、撮像画像が各画素に有する画素値(R,G,B)を、色変換LUTを用いて、表示装置17の特性に応じた色信号値(RD,GD,BD)に変換する。ここで用いる色変換LUTは予め生成され、HDD15に保持されている。色変換LUTは、撮像装置13に依存したRGB色空間において均等に配置された格子点それぞれに対応する画素値(R,G,B)と、上述したS306の処理により色相又は彩度が変換された色信号値(RD,GD,BD)と、の対応関係を保持する。色変換LUTは、撮像装置13に依存したRGB色空間において均等に配置された格子点それぞれに対応する画素値(R,G,B)に対して、上述したS304及びS306の処理を行うことによって予め生成することができる。
【0062】
<第3実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置は、撮像画像の画素値と色相又は彩度が変換された後の色信号値との対応関係を保持する色変換LUTを用いて、表示画像データを生成する。これにより、色相回転処理などを行わずに高彩度色の階調を維持する色変換を行うことができるため、計算コストを削減することができる。
【0063】
<変形例>
第3実施形態においては、撮像画像の画素値と色相又は彩度が変換された後の色信号値との対応関係を保持する色変換LUTを用いたが、色変換LUTを用いた変換ではなく、マトリクスを用いた変換やガンマ変換を行ってもよい。
【0064】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 画像処理装置
201 画像データ取得部
204 画像生成部
206 表示制御部
1701 画像生成部