(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ドローン荷受け装置
(51)【国際特許分類】
B64F 1/32 20060101AFI20240129BHJP
B64C 39/02 20060101ALN20240129BHJP
B64D 1/02 20060101ALN20240129BHJP
【FI】
B64F1/32
B64C39/02
B64D1/02
(21)【出願番号】P 2019206522
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 壮臣
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108163199(CN,A)
【文献】米国特許第9914539(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0047707(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0091710(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0018247(KR,A)
【文献】特表2009-520621(JP,A)
【文献】特開2019-97271(JP,A)
【文献】特開2013-166436(JP,A)
【文献】特開2001-302146(JP,A)
【文献】特開平9-71395(JP,A)
【文献】市原和雄,“産業用ドローンの技術とアプリケーションについて”,エレクトロニクス実装学会誌,日本,エレクトロニクス実装学会,2016年09月,19巻5号,pp.408-415,DOI: 10.5104/jiep.19.408,ISSN 1884-121X(online),1343-9677(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/32, 3/00,
B64C 27/08,39/02,
B64D 1/02,
B64U 101/60,70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンにより搬送された荷物を受け取るドローン荷受け装置であって、
膨張完了時に互いに密着するように配置された少なくとも一対のエアバッグと、
前記エアバッグの内圧を調整可能な内圧調整手段と、を備え、
前記内圧調整手段は、前記エアバッグを膨張させて密着させることにより前記ドローンから落下された前記荷物を受け取る荷受け部を形成し、前記エアバッグを収縮させることにより前記荷受け部に落下された前記荷物を前記エアバッグの隙間から下方に移動させるように構成されている、
ことを特徴とするドローン荷受け装置。
【請求項2】
前記エアバッグの下方に配置されたベルトコンベアを備える、請求項1に記載のドローン荷受け装置。
【請求項3】
前記エアバッグは、前記荷物を落下させたときの衝撃を緩和する排気口を有する、請求項1に記載のドローン荷受け装置。
【請求項4】
前記エアバッグを昇降可能な昇降手段を備える、請求項1に記載のドローン荷受け装置。
【請求項5】
前記エアバッグは、前記ドローンに前記荷物を落下させる位置を知らせる目印を有する、請求項1に記載のドローン荷受け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン荷受け装置に関し、特に、ドローンを着陸させることなくドローンで搬送された荷物を受け取ることができる、ドローン荷受け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン(遠隔操縦又は自律飛行可能な無人航空機)に関する技術発展とインターネットショッピングの浸透による配送量の急激な増大を背景に、ドローンを利用して荷物を搬送することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、集合住宅やオフィスビルのような建物内の荷受人へのドローンによる宅配において、荷物の保管に適する荷受け設備を提供することを目的とし、建物に設けられたドローンポートと、ドローンポートを覆う覆蓋と、ドローンの通過を許す1つの開口と、人の出入り口を構成する扉と、を有する荷受け設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、荷物を下ろす際にドローンポートにドローンを進入させて着陸させる必要がある。ドローンの離着陸には飛行精度を要し、搬送効率が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、ドローンを着陸させることなくドローンで搬送された荷物を受け取ることができる、ドローン荷受け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ドローンにより搬送された荷物を受け取るドローン荷受け装置であって、膨張完了時に互いに密着するように配置された少なくとも一対のエアバッグと、前記エアバッグの内圧を調整可能な内圧調整手段と、を備え、前記内圧調整手段は、前記エアバッグを膨張させて密着させることにより前記ドローンから落下された前記荷物を受け取る荷受け部を形成し、前記エアバッグを収縮させることにより前記荷受け部に落下された前記荷物を前記エアバッグの隙間から下方に移動させるように構成されている、ことを特徴とするドローン荷受け装置が提供される。
【0008】
前記ドローン荷受け装置は、前記エアバッグの下方に配置されたベルトコンベアを備えていてもよい。
【0009】
また、前記エアバッグは、前記荷物を落下させたときの衝撃を緩和する排気口を有していてもよい。
【0010】
また、前記ドローン荷受け装置は、前記エアバッグを昇降可能な昇降手段を備えていてもよい。
【0011】
また、前記エアバッグは、前記ドローンに前記荷物を落下させる位置を知らせる目印を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明に係るドローン荷受け装置によれば、ドローンで搬送される荷物の受け取り手段としてエアバッグを使用したことにより、ドローンから荷物を落下させても荷物を破損させることなく受け取ることができる。したがって、本発明によれば、ドローンを着陸させることなくドローンで搬送された荷物を受け取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るドローン荷受け装置を示す正面図である。
【
図2】
図1に示したドローン荷受け装置の平面図である。
【
図3】
図1に示したドローン荷受け装置の荷受け方法を示す図であり、(A)は荷受け待ち状態、(B)は荷物落下状態、を示している。
【
図4】
図1に示したドローン荷受け装置の荷受け方法を示す図であり、(A)は荷物移動状態、(B)は荷物載置状態、(C)は荷物回収状態、を示している。
【
図5】本発明の他の実施形態に係るドローン荷受け装置を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。
【
図6】本発明の他の実施形態に係るドローン荷受け装置を示す図であり、(A)は第四実施形態、(B)は第五実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図6(B)を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係るドローン荷受け装置を示す正面図である。
図2は、
図1に示したドローン荷受け装置の平面図である。
【0016】
第一実施形態に係るドローン荷受け装置1は、
図1及び
図2に示したように、ドローンDを着陸させることなくドローンDにより搬送された荷物Xを受け取り可能な装置であって、膨張完了時に互いに密着するように配置された一対のエアバッグ2と、エアバッグ2の内圧を調整可能な内圧調整手段3と、エアバッグ2を昇降可能な昇降手段4と、エアバッグ2の下方に配置されたベルトコンベア5と、を備えている。
【0017】
ドローンDは、遠隔操縦又は自律飛行可能な無人航空機であり、例えば、複数の回転翼を備えたマルチコプターである。近年、インターネットショッピングの浸透により配送量が急激に増大しており、より効率的な搬送手段が求められている。また、近年のドローン技術の発展は目覚ましく、飛行距離は延び、ペイロードも増大している。そこで、ドローンDを利用して荷物を配送することが既に検討されている。
【0018】
エアバッグ2は、例えば、空気を注入することによって膨張可能な袋体である。エアバッグ2は、例えば、荷物Xがエアバッグ2に接触したときに破損しない程度の強度を持った樹脂製の基布によって構成される。エアバッグ2には、車両に配置される乗員保護用のエアバッグを流用することもできる。
【0019】
エアバッグ2は、例えば、直方体形状に膨張するように構成されており、膨張完了時に一対のエアバッグ2の対面が密着するように構成されている。また、エアバッグ2の上面は略平面形状を有しており、荷物Xをエアバッグ2上に落下させたときの荷受け部21を構成している。エアバッグ2の形状は、基布の縫合の仕方や内部に配置されるテザー等によって規制することができる。なお、エアバッグ2の形状は、図示した形状に限定されるものではなく、例えば、半球形状等であってもよい。
【0020】
また、エアバッグ2は、側面に内部のガスを排気可能な排気口22が形成されていてもよい。かかる排気口22を形成することにより、荷物Xをエアバッグ2の上面(荷受け部21)に落下させたときにエアバッグ2内のガスを瞬時に外部に排気することができ、荷物Xの衝撃を緩和することができる。
【0021】
また、図示しないが、排気口22に所定の圧力で開放される弁体を配置して、エアバッグ2の膨張時に排気口22からガスが漏れないようにしてもよい。なお、エアバッグ2が排気口22を有しない場合には、荷物Xがエアバッグ2に接触するタイミングで内圧調整手段3によりエアバッグ2内のガスを抜くようにしてもよい。
【0022】
また、
図2に示したように、エアバッグ2の上面(荷受け部21)には、ドローンDに荷物Xを落下させる位置を知らせる目印23が配置されていてもよい。目印23は、例えば、二次元コードであり、ドローンDに搭載されたカメラによって認識可能に構成されている。なお、目印23は、エアバッグ2以外の場所(例えば、エアバッグ2の近傍に配置された柱等)に配置されていてもよい。
【0023】
内圧調整手段3は、エアバッグ2の内圧を昇圧及び減圧可能な手段である。例えば、内圧調整手段3はエアコンプレッサである。内圧調整手段3は、荷受け時に、エアバッグ2にガスを供給することによってエアバッグ2を膨張させる。内圧調整手段3は、エアバッグ2を膨張させて対面を密着させることによりドローンDから落下された荷物Xを受け取る荷受け部21を形成する。
【0024】
また、内圧調整手段3は、荷物回収時に、エアバッグ2からガスを抜くことによってエアバッグ2を収縮させる。内圧調整手段3によってエアバッグ2を収縮させることにより、荷受け部21に落下された荷物Xをエアバッグ2の隙間から下方に移動させることができる。
【0025】
昇降手段4は、エアバッグ2の位置を上下方向に移動させる手段である。例えば、昇降手段4はベルト駆動装置である。具体的には、一対のローラ41にベルト42が掛け回されており、ベルト42の表面にエアバッグ2の背面が固定されている。ローラ41を所定の方向に回転させることにより、ベルト42を上方向又は下方向に移動させ、エアバッグ2を昇降させることができる。なお、
図1では、ローラ41を支持する支柱43の図を省略してある。
【0026】
かかる昇降手段4を配置することにより、エアバッグ2を高い位置に配置することができ、ドローンDを高い位置でホバリングすることができ、障害物等との接触を回避することができる。なお、昇降手段4は、ベルト駆動装置に限定されるものではなく、チェーン駆動装置や電動アクチュエータ等の他の装置であってもよい。また、ドローンDを低い位置でホバリングすることができる場合には、昇降手段4を省略してもよい。
【0027】
ベルトコンベア5は、受け取った荷物Xを所定の位置まで搬送する荷物回収手段である。エアバッグ2からベルトコンベア5上に移動された荷物Xはベルトコンベア5によって次工程に搬送される。ベルトコンベア5の下流には、荷物Xを受け取る容器が配置されていてもよいし、荷物Xを他の場所まで搬送するベルトコンベアが連結されていてもよい。また、エアバッグ2から受け取った荷物Xを作業者が運び出したり、台車で搬送したりする場合には、ベルトコンベア5を省略することができる。
【0028】
次に、上述したドローン荷受け装置1を用いた荷受け方法について、
図3(A)~
図4(C)を参照しつつ説明する。ここで、
図3は、
図1に示したドローン荷受け装置の荷受け方法を示す図であり、(A)は荷受け待ち状態、(B)は荷物落下状態、を示している。
図4は、
図1に示したドローン荷受け装置の荷受け方法を示す図であり、(A)は荷物移動状態、(B)は荷物載置状態、(C)は荷物回収状態、を示している。なお、説明の便宜上、各図において内圧調整手段3の図を省略してある。
【0029】
ドローンDは、所定の荷物Xを積載し、搬送先のドローン荷受け装置1の位置(例えば、GPS座標)に関する情報を受け取ると、搬送先のドローン荷受け装置1に向かって自動運転により飛行する。搬送先のドローン荷受け装置1は、ドローンDにより荷物Xが搬送される情報を受け取ると、ドローンDが到着する前にエアバッグ2を膨張させ、
図3(A)に示した荷受け待ち状態に移行する。
【0030】
図3(A)に示した荷受け待ち状態は、一対のエアバッグ2を膨張させて対面を密着させた状態である。このように一対のエアバッグ2を密着させて膨張させることにより、一対のエアバッグ2の上面に荷物Xを受け取る荷受け部21が形成される。ドローンDは、エアバッグ2の上面に描かれた目印23を認識すると、エアバッグ2の上方でホバリングする。
【0031】
ドローンDは、ホバリング状態が安定した後、エアバッグ2の荷受け部21に向かって荷物Xを落下させる。なお、図示しないが、風の影響を抑制するために、ドローン荷受け装置1の周囲を風よけ用の壁材で囲うようにしてもよい。
図3(B)に示したように、落下された荷物Xは、エアバッグ2の上面に形成された荷受け部21で捕捉される。このとき、エアバッグ2に排気口22を形成しておくことにより、荷物Xの落下時の衝撃を緩和することができる。
【0032】
その後、
図4(A)に示したように、昇降手段4によりエアバッグ2を下降させながら、内圧調整手段3によりエアバッグ2からガスを抜いて減圧し、荷物Xを一対のエアバッグ2の間で下方に移動させる。
【0033】
図4(B)に示したように、エアバッグ2が下端まで移動し、エアバッグ2をさらに収縮させることにより、荷物Xはベルトコンベア5上に載置される。なお、ここでは、エアバッグ2を下降させながら荷物Xを下方に移動させる場合について説明しているが、エアバッグ2を下端まで移動させた後、エアバッグ2を収縮させて荷物Xを下方に移動させるようにしてもよい。
【0034】
その後、
図4(C)に示したように、エアバッグ2は初期待機位置に移動され、荷物Xはベルトコンベア5により所定の位置まで搬送され回収される。そして、次の荷物Xの受け取り情報を受け取ると、ドローン荷受け装置1はエアバッグ2を膨張させ、
図3(A)に示した荷受け待ち状態に移行する。
【0035】
上述した本実施形態に係るドローン荷受け装置1によれば、ドローンDで搬送される荷物Xの受け取り手段としてエアバッグ2を使用したことにより、ドローンDから荷物Xを落下させても荷物Xを破損させることなく受け取ることができる。したがって、ドローン荷受け装置1によれば、ドローンDを着陸させることなくドローンDで搬送された荷物Xを受け取ることができる。
【0036】
また、本実施形態に係るドローン荷受け装置1によれば、エアバッグ2で荷物Xを受け取るようにしたことにより、荷物Xを荷受け部21に落下させるだけでよいことから、荷物Xの向きを調整する必要がなく、種々の形状の荷物Xを受け取ることもできる。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態に係るドローン荷受け装置1について、
図5(A)~
図6(B)を参照しつつ説明する。ここで、
図5は、本発明の他の実施形態に係るドローン荷受け装置を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。
図6は、本発明の他の実施形態に係るドローン荷受け装置を示す図であり、(A)は第四実施形態、(B)は第五実施形態、を示している。
【0038】
なお、上述した第一実施形態に係るドローン荷受け装置1と同じ構成部品については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、説明の便宜上、各図において、内圧調整手段3の図を省略してある。
【0039】
図5(A)に示した第二実施形態に係るドローン荷受け装置1は、エアバッグ2を膨張完了時に上部の容積に対して下部24の容積が小さくなるように構成したものである。このようにエアバッグ2の下部24の容積を相対的に小さくすることにより、エアバッグ2を収縮したときの下部24の弛み量を少なくすることができる。したがって、荷物Xをベルトコンベア5上に載置するときにおけるエアバッグ2の挟み込みを抑制することができる。
【0040】
図5(B)に示した第三実施形態に係るドローン荷受け装置1は、4つのエアバッグ2を用いて荷受け部21を形成するようにしたものである。かかる構成により、隣接するエアバッグ2を互いに密着させて膨張させることにより、荷受け部21の面積を大きくすることができる。したがって、ドローンDから荷物Xを落下させやすくすることができる。なお、エアバッグ2の個数は、2つや4つに限定されるものではなく、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0041】
図6(A)に示した第四実施形態に係るドローン荷受け装置1は、昇降手段4の構成を変更したものである。具体的には、昇降手段4は、第一駆動ローラ44と、第二駆動ローラ45と、第一中継ローラ46と、第二中継ローラ47と、ベルト42と、を備えている。ベルト42は、一端が第一駆動ローラ44に接続されており、他端が第二駆動ローラ45に接続されている。第一駆動ローラ44によりベルト42を巻き取るとエアバッグ2は上方に移動し、第二駆動ローラ45によりベルト42を巻き取るとエアバッグ2は下方に移動する。
【0042】
図6(B)に示した第五実施形態に係るドローン荷受け装置1は、昇降手段4を省略したものである。ベルトコンベア5に近い位置までドローンDを飛行させてホバリングさせることができる場合には、昇降手段4を省略し、支柱48でエアバッグ2を支持するようにしてもよい。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 ドローン荷受け装置
2 エアバッグ
3 内圧調整手段
4 昇降手段
5 ベルトコンベア
21 荷受け部
22 排気口
23 目印
24 下部
41 ローラ
42 ベルト
43,48 支柱
44 第一駆動ローラ
45 第二駆動ローラ
46 第一中継ローラ
47 第二中継ローラ
D ドローン
X 荷物