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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】長繊維不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/04 20120101AFI20240129BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20240129BHJP
   D04H 3/009 20120101ALI20240129BHJP
【FI】
D04H3/04
D04H3/16
D04H3/009
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019219600
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021088786
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】八牧 孝介
(72)【発明者】
【氏名】椎名 峻之
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-043998(JP,A)
【文献】特開2019-001005(JP,A)
【文献】特開昭53-038767(JP,A)
【文献】特開2001-140159(JP,A)
【文献】特開平11-222759(JP,A)
【文献】特開2016-183430(JP,A)
【文献】特開2018-012896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H、D01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布であって、
目付が5~40g/m であり、前記延伸された複数の長繊維の延伸の倍率が2~6倍であり、構成繊維の平均繊維径が5.5~30μmであり、嵩密度が0.04~0.0g/cmであり、かつ、前記一方向の引張強度が10N/50mm以上である、長繊維不織布。
【請求項2】
通気度が1000~3000cm/cm・sである、請求項1に記載の長繊維不織布。
【請求項3】
前記一方向の剛軟度が2.5mN・cm以下である、請求項1又は2に記載の長繊維不織布。
【請求項4】
前記複数の長繊維は、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して形成されたものである、請求項1~のいずれか一つに記載の長繊維不織布。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂であり、前記一方向の剛軟度が1.5mN・cm以下である、請求項に記載の長繊維不織布。
【請求項6】
ロール状の巻取体として形成されている、請求項1~のいずれか一つに記載の長繊維不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布に関し、特に、良好な量産性、二次加工の容易性及び適度な嵩高性を有する前記長繊維不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布は、前記一方向において比較的高い引張強度が得られる。そのため、前記延伸された複数の長繊維が一方向に配列された長繊維不織布は、ウェブ状態で搬送することやロール状に巻き取ることが可能であり、量産性が良好であるとともに、ロールツーロール方式などでの二次加工も容易である。このような長繊維不織布の一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-12896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不織布の中でも適度な嵩高性を有する不織布は、通気性やクッション性などを有し、衛生用品、医療用品、工業用品及び衣料用品など様々の用途において広く使用され、また、その使用用途もますます拡大している。そのため、前記延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布に対しても適度な嵩高性を付与することが検討されている。
【0005】
嵩高性を付与するには繊維間の空隙を増加する必要がある。しかし、単に繊維間の空隙を増加してしまうと、例えば前記一方向の引張強度が低下してウェブ状態で搬送することやロール状に巻き取ることが難しくなり、その結果、良好な量産性や二次加工の容易性といった前記延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布の特性を損なうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布であって、良好な量産性、二次加工の容易性及び適度な嵩高性を有する前記長繊維不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布が提供される。前記長繊維不織布の目付は5~40g/m であり、前記長繊維不織布において、前記延伸された複数の長繊維の延伸の倍率は2~6倍であり、構成繊維の平均繊維径は5.5~30μmであり、嵩密度は0.04~0.0g/cmであり、かつ、前記一方向の引張強度は10N/50mm以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布であって、良好な量産性、二次加工の容易性及び適度な嵩高性を有する前記長繊維不織布を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による長繊維不織布の一実施形態である縦配列長繊維不織布の製造装置の一例の概略構成図である。
図2】実施例1~10及び比較例1~7の特性を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の概要]
まず、本発明の概要を説明する。本発明は、延伸された複数の長繊維が一方向に沿って配列された長繊維不織布であって、良好な量産性、二次加工の容易性及び適度な嵩高性を有する前記長繊維不織布を提供する。本発明による長繊維不織布は、例えば、複数の長繊維を一方向に沿って配列すること及び配列された複数の長繊維を前記一方向に延伸することを含む製造方法によって製造され得る。
【0011】
前記長繊維は、実質的に長繊維であれば良く、その長さは問わない。例えば、前記長繊維は、平均長が100mm程度の繊維であり得る。また、前記長繊維は、主に熱可塑性樹脂を溶融紡糸して形成される。前記熱可塑性樹脂は、溶融紡糸が加工な熱可塑性樹脂であればよく、特に制限されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂(特に、ナイロン6(PA6)及びナイロン12(PA12))及びポリ乳酸(PLA)樹脂などの延伸性及び分子配向性が良好な熱可塑性樹脂であるのが好ましい。なお、前記熱可塑性樹脂は、必要に応じて各種の添加剤を含み得る。
【0012】
ここで、「複数の長繊維を一方向に沿って配列する」とは、複数の長繊維をそれぞれの長さ方向(軸方向)が概ね前記一方向となるように、換言すれば、それぞれが前記一方向に延びる複数の長繊維を概ね平行に配列することをいう。複数の長繊維は、概ね平行に配列されていればよく、複数の長繊維の中には他の長繊維に対して僅かに傾斜する(すなわち、他の長繊維に交差する)長繊維が含まれ得る。前記一方向とは、主に前記長繊維不織布が長尺シートとして製造される場合における当該長尺シートの長さ方向のことである。但し、これに限られるものではなく、前記一方向は、前記長尺シートの幅方向であってもよいし、前記長尺シートの長さ方向(又は幅方向)から傾斜した方向であってもよい。
【0013】
また、「配列された複数の長繊維を前記一方向に延伸する」ことにより、前記長繊維を構成する分子は、延伸方向である前記一方向に、すなわち、前記長繊維の軸方向(繊維軸方向)方向に配向される。
【0014】
前記延伸された複数の長繊維の延伸の倍率は2~6倍である。延伸の倍率が2倍よりも低くなると延伸(分子配向)による強度向上効果が十分に得られない。また、延伸の倍率が6倍以下であれば、製造装置等の大幅な変更を伴うことなく、複数の長繊維を比較的容易に且つ少ないバラツキで延伸することが可能である。
【0015】
本発明による長繊維不織布の構成繊維(すなわち、前記延伸された複数の長繊維)の平均繊維径は5.5~30μmである。構成繊維の平均繊維径がこの範囲内にあれば、適度な嵩高性を有するとともに、前記一方向において十分な引張強度を有する長繊維不織布を製造できることが発明者の実験によって確認されている。
【0016】
ここで、「適度な嵩高性を有する」とは、嵩密度が比較的低いこと、具体的には、嵩密度が0.04~0.30g/cmであり、好ましくは0.04~0.20g/cmであることをいう。嵩密度が0.04g/cmよりも低くなると不織布としての強度が不足するおそれがある。また、嵩密度が0.30g/cmを超えると良好な通気性やクッション性が得られなくなる。嵩密度が0.04~0.30g/cmであることにより、良好な通気性とクッション性とを有する長繊維不織布が得られる。
【0017】
また、「前記一方向において十分な引張強度を有する」とは、長繊維不織布の製造時や二次加工時にウェブ状態で前記一方向に搬送することやロール状に巻き取ることが可能なこと、具体的には、前記一方向の引張強度が10N/50mm以上であることをいう。前記一方向の引張強度が10N/50mm以上であることにより、ウェブ状態で搬送することやロール状に巻き取ることなどが可能となり、量産性が良好であるとともに、ロールツーロール方式などでの二次加工が容易な長繊維不織布が得られる。
【0018】
本発明による長繊維不織布の目付は5~40g/mであり、好ましくは10~30g/mであり、さらに好ましくは15~25g/mである。また、本発明による長繊維不織布の通気度は1000~3000cm/cm・sである。さらに、本発明による長繊維不織布の前記一方向の剛軟度(曲げ硬さ)は2.5mN・cm以下、好ましくは1.5mN・cm以下であり、本発明による長繊維不織布の前記一方向に直交する方向の剛軟度(曲げ硬さ)は0.1mN・cm以下、好ましくは0.06mN・cm以下である。このような長繊維不織布によれば、軽量で、不織布としての十分な強度と高い通気性とを有し、柔軟性に優れ、ソフトでしなやかな風合いが得られる。
【0019】
このように、本発明による長繊維不織布は、良好なクッション性及び通気性を有し、柔軟性に優れ、ソフトでしなやかな風合いが得られて手触り感の良さがある。また、前記一方向において十分な引張強度を有しており、量産性が良好であるとともにロールツーロール方式などでの二次加工も容易である。さらに、複数の長繊維が一方向に沿って配列されており、しかも、各長繊維が捲縮(クリンプ)を有していないため、滑らかな表面感と光沢感とがあり、見る角度によって光沢感が変化するという優れた意匠性も有している。
【0020】
[実施形態]
次に、本発明による長繊維不織布の一実施形態である「縦配列長繊維不織布」について説明する。但し、本発明による長繊維不織布は、以下に説明する縦配列長繊維不織布に限定されるものではない。
【0021】
縦配列長繊維不織布は、縦方向に延伸された複数の長繊維が縦方向に沿って配列された長繊維不織布である。前記縦配列長繊維不織布は、例えば、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して形成された複数の長繊維を縦方向に沿って配列すること、隣接又は交差する長繊維同士を接合させること、及び、配列された複数の長繊維を前記縦方向に延伸することを含む製造方法によって製造され得る。
【0022】
隣接又は交差する長繊維同士が結果的に接合されていればよく、隣接又は交差する長繊維同士を接合させる時期は特に制限されない。すなわち、隣接又は交差する長繊維同士の接合は、複数の長繊維を縦方向に沿って配列するとき、配列された複数の長繊維を縦方向に延伸する前、配列された複数の長繊維を縦方向に延伸するとき、及び/又は、配列された複数の長繊維を縦方向に延伸した後に行われ得る。縦方向に沿って配列された複数の長繊維が縦方向に延伸されることにより、縦配列長繊維不織布においては、その構成繊維である各長繊維を構成する分子が縦方向に配向されることになる。
【0023】
ここで、本実施形態において、「縦方向」とは、縦配列長繊維不織布を製造する際の機械方向(MD方向)、すなわち、縦配列長繊維不織布の長さ方向のことをいう。したがって、前記機械方向(MD方向)に直交するTD方向、すなわち、縦配列長繊維不織布の幅方向が本実施形態における「横方向」になる。
【0024】
縦方向(MD方向)に沿って配列された複数の長繊維の縦方向(MD方向)への延伸の倍率は2~6倍であり、縦配列長繊維不織布の構成繊維の平均繊維径は5.5~30μmであり、縦配列長繊維不織布の嵩密度は0.04~0.30g/cm、好ましくは0.04~0.20g/cmであり、及び、縦配列長繊維不織布の縦方向(MD方向)の引張強度は10N/50mm以上である。
【0025】
また、縦配列長繊維不織布の目付は5~40g/mであり、好ましくは10~30g/mであり、さらに好ましくは15~25g/mである。また、縦配列長繊維不織布の通気度は1000~3000cm/cm・sである。また、縦配列長繊維不織布の縦方向(MD方向)の剛軟度は2.5mN・cm以下、好ましくは1.5mN・cm以下であり、縦配列長繊維不織布の横方向(TD方向)の剛軟度は0.1mN・cm以下、好ましくは0.06mN・cm以下である。
【0026】
図1は、縦配列長繊維不織布の製造装置の一例の概略構成図である。図1に示された製造装置は、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して形成された複数の長繊維を縦方向(MD方向)に沿って配列するとともに集積させて長繊維ウェブを形成し、形成された長繊維ウェブ(すなわち、縦方向(MD方向)に配列された複数の長繊維)を縦方向(MD方向)に延伸することによって縦配列長繊維不織布を製造するように構成されている。
【0027】
図1において、まず、前記製造装置の前段において、長繊維の原料である熱可塑性樹脂が図示省略の押出機に投入され、溶融されて前記押出機から押し出される。押し出された溶融樹脂MRは、図示省略のギヤポンプなどによってメルトブローダイス1に送られる。
【0028】
メルトブローダイス1は、その先端(下端)に、複数のノズル孔2を有した紡糸ノズルを有している。そして、前記ギヤポンプなどによってメルトブローダイス1に送られた溶融樹脂MRがメルトブローダイス1(すなわち、複数のノズル孔2)から吐出される(押し出される)ことによって、複数の長繊維Fが形成される。複数のノズル孔2は、紙面に対して垂直な方向に、すなわち、メルトブローダイス1の下方に配置されたコンベアベルト3の移動方向に直交する方向(すなわち、コンベアベルト3の幅方向)に、所定のピッチで配置されている。コンベアベルト3は、図示省略の駆動装置によって駆動されるコンベアローラ11やその他のローラなどに巻き掛けられており、コンベアローラ11の回転によって矢印A方向に移動する。なお、ノズル孔2の数、ノズル孔間ピッチ、ノズル孔径及びノズル孔長さなどは、任意に設定され得る。
【0029】
メルトブローダイス1には、複数のノズル孔2を挟んで第1エア通路4a及び第2エア通路4bが設けられている。第1エア通路4a及び第2エア通路4bには、図示省略のエア供給部から前記熱可塑性樹脂の融点以上に加熱された高圧加熱エアが供給される。第1エア通路4a及び第2エア通路4bは、メルトブローダイス1の先端(下端)にて各ノズル孔2に隣接して開口する第1スリット5a及び第2スリット5bに接続されている。第1エア通路4aに供給された前記高圧加熱エアは、第1エア通路4aを通過し、その後、第1スリット5aからメルトブローダイス1の下方に噴出される。同様に、第2エア通路4bに供給された前記高圧加熱エアは、第2エア通路4bを通過し、その後、第2スリット5bからメルトブローダイス1の下方に噴出される。そして、第1スリット5a及び第2スリット5bから噴出された前記高圧加熱エアが合流することにより、メルトブローダイス1の下方には、各ノズル孔2からの長繊維Fの押し出し方向とほぼ平行な高速気流が形成される。この高速気流によって、各ノズル孔2から押し出された長繊維Fはドラフト可能な溶融状態に維持されるとともに、前記高速気流の摩擦力により長繊維Fにドラフトが与えられて長繊維Fが細径化される。このようにして前記熱可塑性樹脂から長繊維Fが溶融紡糸される。
【0030】
ここで、前記高速気流の温度は、前記熱可塑性樹脂から長繊維Fを溶融紡糸する際の紡糸温度(ここではメルトブローダイス1の温度)よりも20℃以上、望ましくは40℃以上高く設定される。例えば、前記熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂である場合、前記紡糸温度(メルトブローダイス1の温度)は300~320℃に設定され、各ノズル孔2から押し出された長繊維Fにドラフトを与えて細径化するための前記高速気流の温度は365~390℃に設定され得る。前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン(PP)樹脂である場合、前記紡糸温度は185℃に設定され、前記高速気流の温度は260℃に設定され得る。前記熱可塑性樹脂がナイロン6(PA6)である場合、前記紡糸温度は250~280℃に設定され、前記高速気流の温度は280~310℃に設定され得る。前記熱可塑性樹脂がナイロン12(PA12)である場合、前記紡糸温度は230~250℃に設定され、前記高速気流の温度は270~300℃に設定され得る。
【0031】
メルトブローダイス1の下方において、前記高速気流に隣接する領域には気流制御機構6が設けられている。気流制御機構6は、断面が楕円形の楕円柱部6aと、楕円柱部6aの両端のそれぞれから延びる支持軸6bとを有し、コンベアベルト3の移動方向にほぼ直交する方向(コンベアベルト3の幅方向)とほぼ平行になるように配置されている。気流制御機構6は、図示省略の駆動装置によって支持軸6bが回転されることで楕円柱部6aが矢印B方向に回転するように構成されている。気流制御機構6は、コアンダ効果を利用して前記高速気流の向きを変化させ、これによって、長繊維Fを縦方向(MD方向)に振らせるように構成されている。
【0032】
メルトブローダイス1とコンベアベルト3との間には、前記高速気流中に霧状の水を噴霧するスプレーノズル7がさらに設けられている。このスプレーノズル7が前記高速気流中に霧状の水を適宜噴霧することにより、長繊維Fが冷却されて凝固する。
【0033】
凝固した長繊維Fは、縦方向(MD方向)に振られることにより、縦方向(MD方向)に折り畳まれてコンベアベルト3上に集積される。これにより、コンベアベルト3上において複数の長繊維Fが縦方向(MD方向)に沿って配列されるとともに集積されて長繊維ウェブWが形成される。なお、凝固した長繊維Fは、依然として高温であるため、コンベアベルト3上において隣接する又は交差する長繊維F同士が互いに接合され得る。
【0034】
コンベアベルト3上に形成された長繊維ウェブWは、コンベアベルト3の移動によって矢印A方向(図1の右方向)に搬送され、延伸温度に加熱された第1延伸シリンダ12aと押さえローラ13とにニップされて第1延伸シリンダ12aに移される。その後、長繊維ウェブWは、延伸温度に加熱された第2延伸シリンダ12bに移され、第2延伸シリンダ12bと押さえゴムローラ14とにニップされることによって第1延伸シリンダ12a及び第2延伸シリンダ12bに密着する。これにより、長繊維ウェブWが所定の延伸温度に加熱される。また、長繊維ウェブWが第1延伸シリンダ12a及び第2延伸シリンダ12bを通過する過程で隣接する又は交差する長繊維F同士が互いに接合され得る。
【0035】
第2延伸シリンダ12b及び押さえゴムローラ14によって送り出された長繊維ウェブWは、引取ローラ15a及び引取ゴムローラ15bで引き取られる。ここで、引取ローラ15a及び引取ゴムローラ15bの周速は、第1延伸シリンダ12a及び第2延伸シリンダ12bの周速よりも大きく設定されている。このため、長繊維ウェブWが縦方向(MD方向)に延伸され、これにより、縦配列長繊維不織布NWが形成される。なお、引取ローラ15a及び引取ゴムローラ15bと、第1延伸シリンダ12a及び第2延伸シリンダ12bとの周速比を変更することにより、長繊維ウェブW(すなわち、複数の長繊維F)の縦方向(MD方向)への延伸倍率も変更される。
【0036】
長繊維ウェブW(複数の長繊維F)の縦方向(MD方向)への延伸倍率は、例えば、延伸前の長繊維ウェブWに延伸方向に一定の間隔で入れたマークを用いて以下の式で定義される。
延伸の倍率=[延伸後のマーク間の長さ]/[延伸前のマーク間の長さ]
【0037】
形成された縦配列長繊維不織布NWは、第1搬送ローラ16a及び第2搬送ローラ16bによって搬送され、その後、巻取りローラ17によってロール状に巻き取られて縦配列長繊維不織布NWの巻取体NWRとなる。なお、形成された縦配列長繊維不織布NWは、巻取体NWRとなる前に、必要に応じてさらに延伸されてもよいし、熱処理や熱エンボス処理などの後処理が行われてもよい。
【実施例
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
図1に示された縦配列長繊維不織布の製造装置を用いて実施例1~実施例10に係る縦配列長繊維不織布及び比較例1~比較例7に係る縦配列長繊維不織布を製造し、主に(1)平均繊維径(μm)、(2)引張強度(N/50mm)、(3)見付(g/m)、(4)剛軟度(mN・cm)、(5)通気度(cm/cm・s)、及び、(6)嵩密度(g/cm)について評価した。得られた特性を図2に示す。なお、各特性の評価方法は、以下のとおりである。
【0040】
(1)平均繊維径(μm)については、各縦配列長繊維不織布から採取した試験片を走査型電子顕微鏡よって拡大観察し、N個(例えば50個)の構成繊維の繊維径を測定してその平均値を求めた。引張強度(N/50mm)、(3)目付(g/m)、(4)剛軟度(mN・cm)及び(5)通気度(cm/cm・s)については、JIS L 1913:2010に準じて測定した。(6)嵩密度(g/cm)については、熊谷理機工業社製の自動昇降式紙厚計 軽荷重モデルTM600-Lを用いて前記試験片の厚み(μm)を測定し、「嵩密度(g/cm)=目付(g/m)/厚み(μm)」により算出した。
【0041】
[実施例1]
前記製造装置において、ノズル孔径が0.2mmであり、ノズル孔間ピッチが0.5mmであり、ノズル孔長/ノズル孔径=10であり、紡糸幅が500mmである紡糸ノズルを有するメルトブローダイスをメルトブローダイス1として用い、固有粘度IVが0.53、融点が260℃であるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(CHUNG SHING TEXTILE CO.,LTD.)を長繊維Fの原料である熱可塑性樹脂として用いた。メルトブローダイス1の温度を320℃とし、メルトブローダイス1から溶融樹脂MR(溶融PET)を吐出量14kg/hで吐出して(押し出して)複数の長繊維Fを形成した。また、前記高速気流の温度を380℃とし、前記高速気流の流量を0.4m/minとした。さらに、気流制御機構6の楕円柱部6aを800rpmで回転させて複数の長繊維Fを縦方向(MD方向)に振らせ、コンベアベルト3を8.4m/minで移動させた。これにより、コンベアベルト3上に複数の長繊維Fを縦方向(MD方向)に沿って配列させつつ集積させてコンベアベルト3上に長繊維ウェブWを形成した。そして、形成された長繊維ウェブWを120℃に加熱された第1延伸シリンダ12a及び第2延伸シリンダ12bによって加熱し、縦方向(MD方向)に4.5倍に延伸して実施例1に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0042】
実施例1に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が9.5μmであり、嵩密度が0.25g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が115N/50mmであり、TD方向(横方向)の引張強度が5.1N/50mmであった。また、実施例1に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が20g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が2.1mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.07mN・cmであり、通気度が1390cm/cm・sであった。
【0043】
[実施例2]
実施例1に対して、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PET)の吐出量を14kg/hから25kg/hに変更し、及び、前記長繊維ウェブの縦方向(MD方向)への延伸の倍率を4.5倍から5.0倍に変更することによって、実施例2に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0044】
実施例2に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が15μmであり、嵩密度が0.20g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が150N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が5.0N/50mmであった。また、実施例2に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が35g/mであり、MD方向(縦方向)の剛軟度が2.0mN・cmであり、TD方向(横方向)の剛軟度が0.06mN・cmであり、通気度が1010cm/cm・sであった。
【0045】
[実施例3]
前記製造装置において、ノズル孔径が0.2mmであり、ノズル孔間ピッチが0.5mmであり、ノズル孔長/ノズル孔径=10であり、紡糸幅が500mmである紡糸ノズルを有するメルトブローダイスをメルトブローダイス1として用い、融点が165℃であるポリプロピレン(PP)樹脂(プライムポリマー社 SB13)を長繊維Fの原料である熱可塑性樹脂として用いた。メルトブローダイス1の温度を185℃とし、メルトブローダイス1から溶融樹脂MR(溶融PP)を吐出量を11kg/hで吐出して(押し出して)複数の長繊維Fを形成した。また、前記高速気流の温度を260℃とし、前記高速気流の流量を0.5m/minとした。さらに、気流制御機構6の楕円柱部6aを650rpmで回転させて複数の長繊維Fを縦方向(MD方向)に振らせ、コンベアベルト3を5.0m/minで移動させた。これにより、コンベアベルト3上に複数の長繊維Fを縦方向(MD方向)に沿って配列させつつ集積させてコンベアベルト3上に長繊維ウェブWを形成した。そして、形成された長繊維ウェブWを150℃に加熱された第1延伸シリンダ12a及び第2延伸シリンダ12bによって加熱し、縦方向(MD方向)に5.5倍に延伸して実施例2に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0046】
実施例3に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が5.5μmであり、嵩密度が0.14g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が45N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が0.4N/50mmであった。また、実施例3に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が19g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が1.9mN・cmであり、TD方向(横方向)の剛軟度が0.06mN・cmであり、通気度が1510cm/cm・sであった。
【0047】
[実施例4]
実施例3に対して、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PP)の吐出量を11kg/hから5kg/hに変更し、前記高速気流の流量を0.5m/minから0.4m/minに変更し、及び、前記長繊維ウェブの縦方向(MD方向)への延伸の倍率を5.5倍から2.5倍に変更することによって、実施例4に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0048】
実施例4に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が6.6μmであり、嵩密度が0.18g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が30N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が0.8N/50mmであった。また、実施例4に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が8g/mであり、MD方向(縦方向)の剛軟度が1.7mN・cmであり、TD方向(横方向)の剛軟度が0.06mN・cmであり、通気度が2980cm/cm・sであった。
【0049】
[実施例5]
前記製造装置において、ノズル孔径が0.2mmであり、ノズル孔間ピッチが0.5mmであり、ノズル孔長/ノズル孔径=10であり、紡糸幅が500mmである紡糸ノズルを有するメルトブローダイスをメルトブローダイス1として用い、融点が145℃であるナイロン12(PA12)樹脂(UBESTA 7115U)を長繊維Fの原料である前記熱可塑性樹脂として用いた。メルトブローダイス1の温度を230℃とし、メルトブローダイス1から溶融樹脂MR(溶融PA12)を吐出量10kg/hで吐出して(押し出して)複数の長繊維Fを形成した。また、前記高速気流の温度を270℃とし、前記高速気流の流量を0.3m/minとした。さらに、気流制御機構6の楕円柱部6aを650rpmで回転させて複数の長繊維Fを縦方向(MD方向)に振らせ、コンベアベルト3を5.0m/minで移動させた。これにより、コンベアベルト3上に複数の長繊維Fを縦方向(MD方向)に沿って配列させつつ集積させてコンベアベルト3上に長繊維ウェブWを形成した。そして、形成された長繊維ウェブWを90℃に加熱された第1延伸シリンダ12a及び第2延伸シリンダ12bによって加熱し、縦方向(MD方向)に4.0倍に延伸して実施例3に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0050】
実施例5に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が11μmであり、嵩密度が0.09g/cmであり、MD方向(縦方向)の引張強度が51N/50mmであり、TD方向(横方向)の引張強度が0.8N/50mmであった。また、実施例5に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が21g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が0.7mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.04mN・cmであり、通気度が1870cm/cm・sであった。
【0051】
[実施例6]
実施例5に対して、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PA12)の吐出量を10kg/hから4.2kg/hに変更し、及び、コンベアベルト3の移動速度を5.0m/minから2.5m/minに変更することによって、実施例6に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0052】
実施例6に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が6.3μmであり、嵩密度が0.19g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が70N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が3.0N/50mmであった。また、実施例6に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が25g/mであり、MD方向(縦方向)の剛軟度が1.1mN・cmであり、TD方向(横方向)の剛軟度が0.04mN・cmであり、通気度が1710cm/cm・sであった。
【0053】
[実施例7]
実施例5に対して、前記高速気流の流量を0.3m/minから0.24m/minに変更し、コンベアベルト3の移動速度を5.0m/minから6.7m/minに変更し、及び、前記長繊維ウェブの縦方向(MD方向)への延伸の倍率を4.0倍から3.0倍に変更することによって、実施例7に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0054】
実施例7に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が15μmであり、嵩密度が0.05g/cmであり、MD方向(縦方向)の引張強度が19N/50mmであり、TD方向(横方向)の引張強度が0.5N/50mmであった。また、実施例7に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が20g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が0.3mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.03mN・cmであり、通気度が2520cm/cm・sであった。
【0055】
[実施例8]
実施例5に対して、メルトブローダイス1の温度を230℃から210℃に変更し、コンベアベルト3の移動速度を5.0m/minから9.7m/minに変更し、及び、前記長繊維ウェブの縦方向(MD方向)への延伸の倍率を4.0倍から2.0倍に変更することによって、実施例8に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0056】
実施例8に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が29μmであり、嵩密度が0.07g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が11N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が1.0N/50mmであった。また、実施例8に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が21g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が0.3mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.03mN・cmであり、通気度が2600cm/cm・sであった。
【0057】
[実施例9]
前記製造装置において、ノズル孔径が0.2mmであり、ノズル孔間ピッチが0.5mmであり、ノズル孔長/ノズル孔径=10であり、紡糸幅が500mmである紡糸ノズルを有するメルトブローダイスをメルトブローダイス1として用い、融点が220℃であるナイロン6(PA6)樹脂(UBEナイロン 1013B)を長繊維Fの原料である熱可塑性樹脂として用いた。メルトブローダイス1の温度を230℃とし、メルトブローダイス1から溶融樹脂MR(溶融PA6)を吐出量10kg/hで吐出して(押し出して)複数の長繊維Fを形成した。また、前記高速気流の温度を250℃とし、前記高速気流の流量を0.4m/minとした。さらに、気流制御機構6の楕円柱部6aを800rpmで回転させて複数の長繊維Fを縦方向(MD方向)に振らせ、コンベアベルト3を7.0m/minで移動させた。これにより、コンベアベルト3上に複数の長繊維Fを縦方向(MD方向)に沿って配列させつつ集積させてコンベアベルト3上に長繊維ウェブWを形成した。そして、形成された長繊維ウェブWを170℃に加熱された第1延伸シリンダ12a及び第2延伸シリンダ12bによって加熱し、縦方向(MD方向)に3.2倍に延伸して実施例9に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0058】
実施例9に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が9.9μmであり、嵩密度が0.11g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が22N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が0.3N/50mmであった。また、実施例9に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が12g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が0.2mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.02mN・cmであり、通気度が2790cm/cm・sであった。
【0059】
[実施例10]
実施例9に対して、メルトブローダイス1の温度を230℃から240℃に変更し、前記高速気流の温度を250℃から260℃に変更し、前記高速気流の流量を0.4m/minから0.6m/minに変更し、コンベアベルト3の移動速度を7.0m/minから4.0m/minに変更し、及び、前記長繊維ウェブの縦方向(MD方向)への延伸の倍率を3.2倍から2.5倍に変更することによって、実施例10の係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0060】
実施例10に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が6.0μmであり、嵩密度が0.18g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が15N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が0.7N/50mmであった。また、実施例10に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が28g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が0.6mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.05mN・cmであり、通気度が1580cm/cm・sであった。
【0061】
実施例1~10に係る縦配列長繊維不織布NWは、良好な通気性及びクッション性を有し、柔軟性に優れ、ソフトでしなやかな風合いを有していた。特に、実施例5~10に係る縦配列長繊維不織布NWは、横方向(TD方向)の剛軟度が低いことに加えて縦方向(MD方向)の剛軟度も低いため、風合いが優れるものであった。また、実施例1~10に係る縦配列長繊維不織布NWは、破断することなく、ウェブ状態で縦方向(MD方向)に連続的に搬送すること及び巻取りローラによって連続的にロール状に巻き取ることが可能であった。
【0062】
[比較例1]
実施例1に対し、メルトブローダイス1の温度を320℃から325℃に変更し、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PET)の吐出量を14kg/hから8kg/hに変更し、前記高速気流の温度を380℃から400℃に変更し、前記高速気流の流量を0.4m/minから0.6m/minに変更し、コンベアベルト3の移動速度を8.4m/minから4.0m/minに変更し、及び、前記長繊維ウェブの縦方向(MD方向)への延伸の倍率を4.5倍から4.2倍に変更することによって、比較例1に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0063】
比較例1に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が3.0μmであり、嵩密度が0.35g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が155N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が5.5N/50mmであった。また、比較例1に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が20g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が2.8mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.05mN・cmであり、通気度が25cm/cm・sであった。比較例1に係る縦配列長繊維不織布NWは、繊維径が細く、嵩密度及び縦方向(MD方向)の剛軟度が高いため、十分な通気性及びクッション性が得られず、また、しなやかさや柔軟性に欠けるものであった。
【0064】
[比較例2]
実施例3に対して、メルトブローダイス1の温度を185℃から200℃に変更し、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PP)の吐出量を11kg/hから8.0kg/hに変更し、前記高速気流の温度を260℃から280℃に変更し、前記高速気流の流量を0.5m/minから0.6m/minに変更し、及び、コンベアベルト3の移動速度を5.0m/minから3.5m/minに変更することによって、比較例2に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0065】
比較例2に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が3.6μmであり、嵩密度が0.33g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が60N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が0.9N/50mmであった。また、比較例2に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が19g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が2.7mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.1mN・cmであり、通気度が55cm/cm・sであった。比較例2に係る縦配列長繊維不織布NWは、繊維径が細く、嵩密度及び縦方向(MD方向)の剛軟度が高いため、十分な通気性及びクッション性が得られず、また、しなやかさや柔軟性に欠けるものであった。
【0066】
[比較例3]
実施例5に対して、メルトブローダイス1の温度を230℃から240℃に変更し、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PA12)の吐出量を10kg/hから3.0kg/hに変更し、前記高速気流の温度を270℃から280℃に変更し、前記高速気流の流量を0.3m/minから0.5m/minに変更し、及び、コンベアベルト3の移動速度を5.0m/minから2.0m/minに変更することによって、比較例3に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0067】
比較例3に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が4.3μmであり、嵩密度が0.33g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が80N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が3.5N/50mmであった。また、比較例3に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が20g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が1.8mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.08mN・cmであり、通気度が930cm/cm・sであった。比較例3に係る縦配列長繊維不織布NWは、繊維径が細く、嵩密度が高いため、十分な通気性及びクッション性が得られなかった。
【0068】
[比較例4]
実施例5に対して、メルトブローダイス1の温度を230℃から200℃に変更し、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PA12)の吐出量を10kg/hから12kg/hに変更し、前記高速気流の温度を270℃から260℃に変更し、コンベアベルト3の移動速度を5.0m/minから9.7m/minに変更し、及び、前記長繊維ウェブの縦方向(MD方向)への延伸の倍率を4.0倍から2.0倍に変更した。なお、巻取りローラ17によって巻き取る際に縦配列長繊維不織布NWの破断が発生したため、縦配列長繊維不織布NMを巻取りローラ17に代えて手で巻き取ることにより、比較例4に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0069】
比較例4に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が33μmであり、嵩密度が0.07g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が8.0N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が0.7N/50mmであった。また、比較例4に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が25g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が0.3mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.03mN・cmであり、通気度が3180cm/cm・sであった。比較例4に係る縦配列長繊維不織布NWは、縦方向(MD方向)の引張強度が低いため、上述のように、巻取りローラ17による巻き取りに耐え得るものではなかった。
【0070】
[比較例5]
実施例5に対して、気流制御機構6の楕円柱部6aを回転させず、コンベアベルト3の移動速度を5.0m/minから11m/minに変更し、及び、前記長繊維ウェブの縦方向(MD方向)への延伸の倍率を4.0倍から1.8倍に変更した。なお、巻取りローラ17によって巻き取る際に縦配列長繊維不織布NWの破断が発生したため、縦配列長繊維不織布NMを巻取りローラ17に代えて手で巻き取ることにより、比較例5に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0071】
比較例5に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が10μmであり、嵩密度が0.24g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が8.0N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が5.0N/50mmであった。比較例5に係る縦配列長繊維不織布NWは、縦方向(MD方向)の引張強度が低いため、上述のように、巻取りローラ17による巻き取りに耐え得るものではなかった。なお、破断が発生したため、比較例5に係る縦配列長繊維不織布の剛軟度及び通気度の測定は省略した。
【0072】
[比較例6]
実施例9に対して、メルトブローダイス1の温度を230℃から240℃に変更し、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PA6)の吐出量を10kg/hから5.0kg/hに変更し、前記高速気流の温度を250℃から260℃に変更し、前記高速気流の流量を0.4m/minから0.6m/minに変更し、及び、コンベアベルト3の移動速度を7.0m/minから2.5m/minに変更することによって、比較例6に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0073】
比較例6に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が4.9μmであり、嵩密度が0.31g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が32N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が0.5N/50mmであった。また、比較例6に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が19g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が1.6mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.06mN・cmであり、通気度が980cm/cm・sであった。比較例6に係る縦配列長繊維不織布NWは、繊維径が細く、嵩密度が高いため、十分な通気性及びクッション性が得られなかった。
【0074】
[比較例7]
実施例9に対して、メルトブローダイス1からの溶融樹脂MR(溶融PA6)の吐出量を10kg/hから15kg/hに変更し、及び、前記高速気流の流量を0.4m/minから0.2m/minに変更した。なお、巻取りローラ17によって巻き取る際に縦配列長繊維不織布NWの破断が発生したため、縦配列長繊維不織布NMを巻取りローラ17に代えて手で巻き取ることにより、比較例7に係る縦配列長繊維不織布NWを得た。
【0075】
比較例7に係る縦配列長繊維不織布NWは、その構成繊維の平均繊維径が32μmであり、嵩密度が0.06g/cmであり、縦方向(MD方向)の引張強度が9.0N/50mmであり、横方向(TD方向)の引張強度が0.1N/50mmであった。また、比較例7に係る縦配列長繊維不織布NWは、目付が21g/mであり、縦方向(MD方向)の剛軟度が0.4mN・cmであり、横方向(TD方向)の剛軟度が0.06mN・cmであり、通気度が3980cm/cm・sであった。比較例7に係る縦配列長繊維不織布NWは、縦方向(MD方向)の引張強度が低いため、上述のように、巻取りローラ17による巻き取りに耐え得るものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明による長繊維不織布は、単独で又は織布などの他の素材と組み合わせて、衛生用品、医療用品、工業用品及び衣料用品など様々の用途で使用可能である。例えば、本発明による長繊維不織布は、使い捨ておむつ、生理用品、使い捨てガーゼ、使い捨てマスク、クッション材、包装資材、各種のフィルター、吸水材、吸音材、及び、中綿などに使用可能である。また、本発明による長繊維不織布は、樹脂製シート、紙及び繊維強化樹脂部材などと複合化することを目的とした補強材としても使用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…メルトブローダイス、2…ノズル孔、3…コンベアベルト、4a…第1エア通路、4b…第2エア通路、5a…第1スリット、5b…第2スリット、6…気流制御機構、11…コンベアローラ、12a…第1延伸シリンダ、12b…第2延伸シリンダ、15a…引取ローラ、15b…引取ゴムローラ、16a…第1搬送ローラ、16b…第2搬送ローラ、17…巻取りローラ、F…長繊維、MR…溶融樹脂、NW…縦配列長繊維不織布、NWR…巻取体、W…長繊維ウェブ
図1
図2