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特許7427438変性天然ゴム、それを用いたゴム組成物、並びにそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】変性天然ゴム、それを用いたゴム組成物、並びにそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/22 20060101AFI20240129BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240129BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240129BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240129BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C08C19/22
C08L7/00
C08L15/00
C08L21/00
B60C1/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019225589
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021095447
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 大樹
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190519(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)で表される構造及び/又は一般式(B)で表される構造を有するポリイソプレンが、これらの構造部分において2つ以上の第一級アミノ基を有するアミノ化合物のアミノ基と結合してなる、一般式(C)で表される連結構造を有し、
分岐度が0.4~0.7である、変性天然ゴム。
【化1】
【化2】
ただし、式(A)及び式(B)中、Xは水素原子又はメチル基を示し、Pはポリイソプレンユニットを示し、各式におけるPはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【化3】
式(C)中、Wは前記アミノ化合物から末端のアミノ基を除いた残基を示し、Qは次の一般式(Q-1)~(Q-4)からなる群より選択される少なくとも一つを示し、mは2~4の整数を示す。また、一般式(Q-1)から(Q-4)において、*はポリイソプレンユニットの炭素原子と結合していることを示し、*はWで表される残基の炭素原子と結合していることを示し、Xは水素原子又はメチル基を示す。
【化4】
【請求項2】
前記ポリイソプレンの絶対分子量が20万~60万であり、変性天然ゴムの絶対分子量が100万~300万である、請求項1に記載の変性天然ゴム。
【請求項3】
前記アミノ化合物が3つ以上の第一級アミノ基を有するアミノ化合物を含む、請求項1又は2に記載の変性天然ゴム。
【請求項4】
前記アミノ化合物がトリス(2-アミノエチル)アミンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性天然ゴム。
【請求項5】
ゴム成分100質量部中、請求項1~4のいずれか1項に記載の変性天然ゴムを5~50質量部含有する、ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性天然ゴム、それを用いたゴム組成物、並びにそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムポリマーの物性を高める手段が、従来から種々検討されている。例えば、特許文献1には、安価に製造することができ、かつゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を向上させることを目的として、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性ジエン系ゴムが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、耐摩耗性に優れる重合体組成物を得ることを目的として、共役ジエンに基づく単量体単位と窒素原子等で置換されたベンゼン環を有する特定構造の単量体に基づく単量体単位とを有する共役ジエン系重合体であって、特定構造の有機ケイ素化合物によって重合体の少なくとも一端が変性されている共役ジエン系重合体等が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、ゴム成分に対するフィラーの相溶性を向上させることを目的として、所定構造を有する連結基を分子内に有してジエン系ポリマー鎖が連結基を介して連結されてなる変性ジエン系ゴムを含有するタイヤ用ゴム組成物が記載されている。
【0005】
しかしながら、天然ゴムポリマーの物性の向上、特に低燃費性や引張強度の向上についてさらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2009/104555号公報
【文献】特開2011-195802号公報
【文献】特開2013-163759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、未変性天然ゴムよりも優れた低燃費性及び引張強度を有する変性天然ゴム、それを用いたゴム組成物、並びにそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る変性天然ゴムは、上記課題を解決するために、一般式(A)で表される構造及び/又は一般式(B)で表される構造を有するポリイソプレンが、これらの構造部分において2つ以上の第一級アミノ基を有するアミノ化合物と結合してなる、一般式(C)で表される連結構造を有し、分岐度が0.4~0.7であるものとする。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
ただし、式(A)及び式(B)中、Xは水素原子又はメチル基を示し、Pはポリイソプレンユニットを示し、各式におけるPはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0012】
【化3】
【0013】
式(C)中、Wは上記アミノ化合物から末端のアミノ基を除いた残基を示し、Qは次の一般式(Q-1)~(Q-4)からなる群より選択される少なくとも一つを示し、mは2~4の整数を示す。また、一般式(Q-1)~(Q-4)において、*はポリイソプレンユニットの炭素原子と結合していることを示し、*はWで表される残基の炭素原子と結合していることを示し、Xは水素原子又はメチル基を示す。
【0014】
【化4】
【0015】
上記ポリイソプレンの絶対分子量は20万~60万であり、変性天然ゴムの絶対分子量は100万~300万であるものとすることができる。
【0016】
上記アミノ化合物は3つ以上の第一級アミノ基を有するアミノ化合物を含むものとすることができる。
【0017】
上記アミノ化合物はトリス(2-アミノエチル)アミンを含むものとすることができる。
【0018】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分100質量部中、上記変性天然ゴムを5~50質量部含有するものとする。
【0019】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて作製したものとする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、未変性天然ゴムよりも優れた低燃費性及び引張強度を有する変性天然ゴム、それを用いたゴム組成物、並びにそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0022】
本実施形態に係る変性天然ゴムは、一般式(A)及び/又は一般式(B)の構造を有するポリイソプレンが、これらの構造部分において2つ以上の第一級アミノ基を有するアミノ化合物と結合してなる、一般式(C)で表される連結構造を有し、分岐度が0.4~0.7であるものである。
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
ただし、式(A)及び式(B)中、Xは水素原子又はメチル基を示し、Pはポリイソプレンユニットを示し、各式におけるPはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0026】
【化7】
【0027】
式(C)中、Wは上記アミノ化合物から末端のアミノ基を除いた残基を示し、Qは次の一般式(Q-1)~(Q-4)からなる群より選択される少なくとも一つを示し、mは2~4の整数を示す。また、一般式(Q-1)~(Q-4)において、*はポリイソプレンユニットの炭素原子と結合していることを示し、*はWのエチレン基と結合していることを示す。
【0028】
【化8】
【0029】
上記変性天然ゴムの分岐度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分離した各成分について多角度光散乱検出器(MALS)を用いてRMS(二乗平均平方根:Root Mean Square)半径を測定し、これを次の式に代入することにより求めることができる。
分岐度=(RMS半径(分岐))/(RMS半径(直線))
【0030】
本実施形態に係る変性天然ゴムの製造方法は、特に限定するものではないが、天然ゴムポリマーに酸化剤を添加し、炭素-炭素二重結合を酸化開裂させて酸化分解天然ゴムポリマーを得る工程と、得られた酸化分解天然ゴムポリマーに、2つ以上の第一級アミノ基を有するアミノ化合物を添加して、再結合反応させる工程とを有するものとすることができる。すなわち、本実施形態に係る変性天然ゴムは、天然ゴムポリマーを、その主鎖中に存在する炭素-炭素二重結合を酸化開裂させることで分解して分子量を低下させ、該分解したポリマーを含む系をアミノ化合物と反応させて再結合させることにより得られる。
【0031】
変性対象となる天然ゴムポリマーとしては、溶媒に溶解したものであれば良く、プロトン性溶媒である水中にミセル状になった水系エマルション、すなわちラテックスを用いることが好ましい。水系エマルションを用いることにより、ポリマーを分解させた後に、その状態のまま、アミノ化合物を配合することで再結合反応を生じさせることができる。水系エマルションの濃度(ポリマーの固形分濃度)は、特に限定されないが、5~70質量%であることが好ましく、より好ましくは10~50質量%である。固形分濃度が高くなりすぎるとエマルション安定性が低下してしまい、固形分濃度が小さすぎる場合は反応速度が遅くなり、実用性に欠ける。
【0032】
アミノ化合物としては、2つ以上の第一級アミノ基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、NH(CHCHNH)Hや、N(CHCHNHで表される化合物を挙げることができ、nは1~4の整数であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。すなわち、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、トリス(2-アミノエチル)アミンを好適に用いることができ、この中でも、トリス(2-アミノエチル)アミンであることがより好ましい。
【0033】
上記酸化開裂により天然ゴムポリマーが分解し、末端にカルボニル基(>C=O)やホルミル基(-CHO)を持つポリマーが得られる。詳細には、下記式(A)で表される構造を末端に持つポリマーと、下記式(B)で表される構造を分子鎖中に持つポリマーが生成される。なお、本明細書において、ポリイソプレンユニットとは、天然ゴム由来のポリイソプレンのことであり、詳細には、シス-1,4-ポリイソプレンのことをいう。
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
式(A)中、Xは、水素原子又はメチル基であり、イソプレンユニットが開裂した場合、一方の開裂末端ではXがメチル基、他方の開裂末端ではXが水素原子となる。
【0037】
天然ゴムポリマーの炭素-炭素二重結合を酸化開裂させるためには、酸化剤を用いることができ、例えば、天然ゴムポリマーの水系エマルションに酸化剤を添加し攪拌することにより酸化開裂させることができる。酸化剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム、酸化マンガンなどのマンガン化合物、クロム酸、三酸化クロムなどのクロム化合物、過酸化水素などの過酸化物、過ヨウ素酸などの過ハロゲン酸、オゾン、酸素などの酸素類などが挙げられる。これらの中でも、過ヨウ素酸を用いることが好ましい。酸化開裂に際しては、コバルト、銅、鉄などの金属の塩化物や有機化合物との塩や錯体などの金属系酸化触媒を併用してもよく、例えば、該金属系酸化触媒の存在下で空気酸化してもよい。
【0038】
上記酸化開裂によりポリマーを分解することで、分子量が低下する。分解後のポリマーの絶対分子量は、特に限定されないが、20万~60万であることが好ましく、より好ましくは25万~60万である。なお、分解後の分子量の大きさにより、再結合後の官能基量を調節することができるが、分解時の分子量が小さすぎると、同一分子内での結合反応が生じやすくなる。ここで、本明細書において、絶対分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分離した各成分について多角度光散乱検出器(MALS)を用いて測定した値とする。
【0039】
以上のようにしてポリマーを分解させた後、分解したポリマーを含む反応系を上記アミノ化合物と反応させることにより再結合させる。結合反応させた後、水系エマルションを凝固乾燥させることにより、常温で固形状の変性天然ゴムが得られる。得られた変性天然ゴムは、再結合反応により上記式(C)で表される連結構造が主鎖中に導入され、主鎖構造が変性される。
【0040】
具体的には、一般式(A)で表される構造のカルボニル基又はホルミル基に対して、アミノ化合物の第一級アミノ基が求核付加反応することにより、一般式(Q-1)で表される連結構造となり、さらに脱水反応が起こると一般式(Q-2)で表される連結構造となる。また、一般式(B)で表される構造のカルボニル基に対して、アミノ化合物の第一級アミノ基が求核付加反応することにより、一般式(Q-3)で表される連結構造となり、さらに脱水反応が起こると一般式(Q-4)で表される連結構造となる。
【0041】
すなわち、本実施形態で用いる変性天然ゴムは、上記式(C)で表される連結構造の少なくとも1つを分子内に有し、イソプレンユニットの繰り返し構造からなるポリイソプレン鎖が該連結構造を介して直接連結された構造を有する。
【0042】
上記一般式(C)で表される連結構造の含有率(2種以上の連結構造を有する場合、それらの合計の含有率)は、特に限定されないが、0.1~1.0モル%であることが好ましく、0.1~0.7モル%であることがより好ましく、0.1~0.6モル%であることがさらに好ましい。ここで、連結構造の含有率とは、変性天然ゴムを構成する全構成ユニットのモル数に対する連結構造のモル数の比率であり、NMRにより測定した値とする。NMRスペクトルは、BRUKER社製「400ULTRASHIELDTM PLUS」によりTMSを標準とし測定した。
【0043】
上記変性天然ゴムの絶対分子量は、特に限定されないが、100万~300万であることが好ましく、110万~280万であることがより好ましい。酸化分解した天然ゴムポリマーを再結合させることにより、分子量が高くなることで、分子鎖の絡み合いが増え、引張強度が増大する。
【0044】
また、本実施形態によれば、二重結合を解離させる薬剤である酸化剤の種類や量、反応時間などを調整することにより酸化開裂させる反応を制御できる。また、再結合させる際のアミノ化合物の配合量、反応時間などを調整することにより結合反応を制御できる。これらの制御によって変性天然ゴムの分子量を制御することができる。そのため、変性天然ゴムの絶対分子量を元のポリマーと同等に設定することができ、また元のポリマーよりも低く設定することもできる。
【0045】
酸化剤の配合量は特に限定されないが、天然ゴムポリマー(固形分量)100質量部に対して、0.1~1.0質量部であることが好ましく、0.2~0.5質量部であることがより好ましい。
【0046】
アミノ化合物の配合量は特に限定されないが、酸化分解天然ゴムポリマー1モルに対して、0.01~1.0モルであることが好ましく、0.1~0.5モルであることがより好ましい。
【0047】
また、ポリマー主鎖を分解し再結合させる際に、主鎖とは異なる構造として上記式(C)で表される連結構造が挿入され、主鎖構造のセグメントの結合点が官能基化する。すなわち、反応性の高い構造が分子主鎖中に導入され、元のポリマーの特性を変化させることができる。このように、本実施形態は、グラフトでも直接付加でもなく開環でもなく、天然ゴムの主鎖構造そのものを変化させるものであり、主鎖構造に簡易的に官能基を導入することができる。
【0048】
詳細には、上記変性天然ゴムであると、そのポリマーとフィラーとの間での相互作用(分子間力、極性や反応性)が変化することや、ポリマーの組成が変化することにより、フィラーとの相溶性ないし分散性が向上する。その効果により、低燃費性の向上が見られる。
【0049】
本実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分として、上記変性天然ゴム以外のジエン系ゴムを含有していてもよく、その種類は特に限定されないが、例えば、未変性天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらジエン系ゴムは、いずれか1種単独で、又は2種以上ブレンドして用いることができる。
【0050】
本実施形態に係るゴム組成物において、ゴム成分100質量部中の変性天然ゴムの含有量は、特に限定されないが、10~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることが好ましく、10~30質量部であることがさらに好ましい。
【0051】
本実施形態に係るゴム組成物には、無機充填剤として、カーボンブラック、シリカ等の補強性充填剤を用いることができる。すなわち、無機充填剤は、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラックとシリカの併用である。無機充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばゴム成分100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、より好ましくは20~100質量部であり、さらに好ましくは30~80質量部である。
【0052】
シリカとしては、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカの含有量は、ゴムのtanδのバランスや補強性などの観点からゴム成分100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、より好ましくは15~100質量部であり、さらに好ましくは20~80質量部である。
【0053】
シリカを含有する場合、スルフィドシラン、メルカプトシランなどのシランカップリング剤をさらに含有してもよい。シランカップリング剤を含有する場合、その含有量はシリカ100質量部に対して2~20質量部であることが好ましい。
【0054】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1~70質量部であることが好ましく、より好ましくは1~30質量部である。
【0055】
本実施形態に係るゴム組成物では、上記した各成分に加え、通常のゴム工業で使用されているプロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、ワックス、老化防止剤などの添加剤や、加硫剤、加硫促進剤などの加硫系配合剤を通常の範囲内で適宜配合することができる。
【0056】
加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられる。また、加硫剤の含有量はゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。また、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0057】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて作製することができる。
【0058】
得られるゴム組成物は、タイヤ用として用いることができ、乗用車用、トラックやバスの大型タイヤなど、各種用途・サイズの空気入りタイヤのトレッド部やサイドウォール部などタイヤの各部位に適用することができる。ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせた後、例えば140~180℃で加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【0059】
本実施形態に係る空気入りタイヤの種類としては、特に限定されず、上述の通り、乗用車用タイヤ、トラックやバスなどに用いられる重荷重用タイヤなどの各種のタイヤが挙げられる。
【実施例
【0060】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
変性ジエン系ゴムに関する各測定方法は、以下の通りである。
【0062】
[絶対分子量(Mw)・分岐度]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分離した各分子量成分について多角度光散乱検出器(MALS)を用いて絶対分子量、及びRMS半径を求めた。詳細には、測定試料10mgをTHF10mLに浸漬させて1週間静置し、上澄み液を用いた。(株)島津製作所製「LC-20A」を使用し、試料をフィルター透過後、温度40℃、流量1.0mL/分でカラム(昭和電工社製「GPC KF-807L×2」)を通し、昭光サイエンス社製「DAWN8+」で検出した。得られたRMS半径を、次式に代入し、分岐度を求めた。
分岐度=(RMS半径(分岐))/(RMS半径(直線))
【0063】
[合成例A:酸化分解天然ゴム1の合成]
DRC(Dry Rubber Content)を30質量%に調整した天然ゴムラテックス(レジテックス社製、高アンモニア含有天然ゴムラテックス「HA-NR」)中のポリマー質量100gに対し過硫酸カリウム0.5g、リン酸三ナトリウム0.34gを加え、30℃で3時間撹拌することで酸化分解天然ゴム1を得た。絶対分子量は、59万であった。
【0064】
[合成例B:酸化分解天然ゴム2の合成]
反応温度を60℃に変更した以外は合成例Aと同様に調整し、酸化分解天然ゴム2を得た。絶対分子量は、25万であった。
【0065】
[合成例1:変性天然ゴム1の合成(再結合反応工程)]
得られた酸化分解天然ゴム中のポリマー質量100g(1.5モル)に対しエチレンジアミン8.8g(0.15モル)を加え、30℃で2時間撹拌した。次に、メタノールに反応溶液を注ぎ凝固させた。固形物を真空乾燥させることで変性天然ゴム1を得た。絶対分子量は、120万であり、分岐度は0.79であった。
【0066】
[合成例2,3:変性天然ゴム2,3の合成(再結合反応工程)]
エチレンジアミンに代えて、トリス(2-アミノエチル)アミンを表1に示す配合に従い添加した以外は合成例1と同様に調製し、変性天然ゴム2~3を得た。それぞれの絶対分子量と分岐度は、表1に示した。
【0067】
[合成例4,5:変性天然ゴムの合成(再結合反応工程)]
酸化分解天然ゴム1に代えて、酸化分解天然ゴム2を使用した以外は合成例2,3と同様に行い、変性天然ゴム4,5を得た。それぞれの絶対分子量と分岐度は、表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従い、まず、ノンプロ練り工程で、加硫促進剤及び硫黄を除く成分を添加混合し(排出温度=150℃)、プロ練り工程で、加硫促進剤及び硫黄を添加混合して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
【0070】
表2中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0071】
・未変性NR:レジテックス社製、高アンモニア含有天然ゴムラテックス「HA-NR」
・変性天然ゴム1:合成例1で合成した変性天然ゴム1
・変性天然ゴム2:合成例2で合成した変性天然ゴム2
・変性天然ゴム3:合成例3で合成した変性天然ゴム3
・変性天然ゴム4:合成例4で合成した変性天然ゴム4
・変性天然ゴム5:合成例5で合成した変性天然ゴム5
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」(BET=200m/g)
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックジャパン(株)製「Si69」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・プロセスオイル:株式会社ジャパンエナジー製「X-140」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・硫黄:細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
【0072】
得られた各ゴム組成物について、低燃費性、及び引張強度を評価した。評価方法は次の通りである。
【0073】
・低燃費性:USM社製レオスペクトロメーターE4000を用いて、周波数50Hz、静歪み10%、動歪み2%、温度60℃の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。60℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、低発熱性の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が大きいほどtanδが小さく、従って、発熱しにくく、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
【0074】
・引張強度:JIS K6251に準拠した引張試験(ダンベル状3号形)を行って破断時の強度を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、引張強度が高く、良好であることを示す。
【0075】
【表2】
【0076】
結果は、表2に示す通りであり、比較例1と実施例1~4との対比から、本発明の変性天然ゴムを用いた場合、優れた低燃費性及び引張強度が得られることがわかる。
【0077】
比較例1と比較例2との対比から、分岐度が所定範囲外である変性天然ゴムを用いた場合、引張強度の向上効果が得られないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の変性天然ゴムを用いたゴム組成物は、乗用車、ライトトラック・バス等の各種タイヤに用いることができる。