(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/107 20060101AFI20240129BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20240129BHJP
A61F 9/008 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61B3/107
A61B3/10 100
A61F9/008 130
(21)【出願番号】P 2019540029
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2018054204
(87)【国際公開番号】W WO2018153882
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】102017203010.0
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バブリッツ、ダニエル
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/189174(WO,A2)
【文献】特表2016-520362(JP,A)
【文献】特表2016-523613(JP,A)
【文献】特表2002-517743(JP,A)
【文献】特表2003-526404(JP,A)
【文献】特開2006-95318(JP,A)
【文献】欧州特許第3585245(EP,B1)
【文献】米国特許第11154192(US,B2)
【文献】特表2017-522066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/12
A61B 3/13 - 3/16
G01B 9/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための方法であって、眼が共焦点干渉測定装置の照明源によって照明され、角膜によって反射された光信号が共焦点干渉測定装置および空間分解検出器の両方の検出器によって検出され、前記光信号は評価ユニットに転送され、
a)照明放射が角膜の曲率中心に合焦され、
b)ビームスプリッタから空間分解検出器に出力結合され、かつ前記空間分解検出器上に結像された角膜によって反射された光信号の一部が、遅延線を有する基準光源によって生成された基準信号と重ね合わされ、
c)基準信号が角膜によって反射された光信号と干渉することができるように、角膜によって反射された光信号の波面形状と類似した既知の波面形状を有する基準信号が前記遅延線を介して設定され、
d)干渉パターンが前記空間分解検出器上に生成されるのと同時に、干渉測定装置によって基準面から角膜
表面までの距離が決定され、
e)角膜のトポグラフィーが、少なくとも一回で記録された前記空間分解検出器および干渉測定装置の測定値から評価ユニットによって決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記干渉測定装置は、波長掃引光源OCT法を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照明源は、開口角が20°~100°の照明ビームで前記眼を照明することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記空間分解検出器上に結像するための前記ビームスプリッタは、前記角膜によって反射された前記光信号の一部を出力結合し、前記一部は、2%から50%に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記空間分解検出器は、10μmと1mmの間の範囲の有効コヒーレンス長が実現されるような、前記干渉測定装置の前記照明源の波長調整時間および波長範囲に整合された露光時間で干渉信号を記録することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
角膜によって反射された光信号の一部が、前記基準光源によって基準信号として生成された球面波と重ね合わされ、前記基準光源が角膜の曲率中心と共役であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
焦点からの異なる距離を示す少なくとも2つの測定信号が、両方のシステムを互いに較正するために前記空間分解検出器および前記干渉測定装置によって同時に記録されることを特徴とする請求項1および6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記干渉測定装置が、前記遅延線を設定するために使用される距離測定信号を連続的に供給することを特徴とする請求項1、6および7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの測定信号が、前記空間分解検出器によって記録され、角膜によって反射された光信号の理想的な球面波からの偏差は、干渉法によって決定され、角膜の曲率半径は、干渉測定装置によって供給される測定信号から同時に確立される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
複数の測定信号が、前記空間分解検出器によって記録され、角膜の強い非球面曲率に対する測定可能な深度範囲を拡大するために、前記空間分解検出器の基準信号に対する遅延線の調整は、プロセスにおけるゼロ遅延から著しく大きく逸脱し、ここで、測定信号は、個々の部分的な測定信号から構築および/または補間される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
眼の角膜の高解像度トポグラフィー装置であって、共焦点干渉測定装置、空間分解検出器、位置決めのための装置、および評価ユニットからなり、干渉測定装置は、周波数領域OCT法に基づき、かつ放射が角膜の曲率中心に合焦され、ビームスプリッタが、角膜によって反射された光信号の一部を前記空間分解検出器上に出力結合し、かつ前記空間分解検出器上に結像するために設けられ、前記空間分解検出器上に結像されるべき角膜によって反射された光信号の一部を基準信号と重ね合わせるために遅延線を有する基準光源およびビームスプリッタが設けられ、前記基準光源は前記空間分解検出器の上流に配置され、前記基準光源は、角膜によって反射された光信号の波面形状と類似した既知の波面形状を有する基準信号を生成するように構成され、前記評価ユニットは、前記干渉測定装置および前記空間分解検出器の同時に記録された信号から角膜のトポグラフィーを決定するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記干渉測定装置は、波長掃引光源OCT法に基づくことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
干渉測定装置の照明源が、20°~100°の開口角を有する照明ビームを生成するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
角膜によって反射された光信号の一部を出力結合し、結像するためのビームスプリッタが、前記空間分解検出器上に結像される一部が2%~50%となるように構成されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記基準光源は、角膜によって反射された光の一部を前記空間分解検出器上に重ね合わせるための球面波を生成するように構成され、前記基準光源は、角膜の曲率中心と共役であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記遅延線がファイバーコリメータおよび再帰反射器とからなることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記空間分解検出器の露光時間が、10μmと1mmとの間の範囲の有効コヒーレンス長が実現可能となるような、前記干渉測定装置の照明源の波長調整時間および波長範囲に整合されることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記照明源は、開口角が60°の照明ビームで前記眼を照明することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記空間分解検出器上に結像するための前記ビームスプリッタは、前記角膜によって反射された前記光信号の一部を出力結合し、前記一部は、10%に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
干渉測定装置の照明源が、60°の開口角を有する照明ビームを生成するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項21】
角膜によって反射された光信号の一部を出力結合し、結像するためのビームスプリッタが、前記空間分解検出器上に結像される一部が10%となるように構成されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な非接触データ捕捉に基づいて、眼の角膜のトポグラフィーを決定するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼の角膜トポグラフィーは、マイクロメーターの精度で角膜を検査する方法であり、角膜表面の一種のマップが作成される。眼科医は、何千もの個々の点で角膜の曲率の大きさを測定する。眼の角膜トポグラフィーは、角膜の曲率の正確な画像化を可能にする。眼科医は、これらの結果に基づいて可能性のある病理学的変化を判断することができる。眼の角膜トポグラフィーによる正確な測定は、屈折異常を矯正するためにも非常に重要である。
【0003】
・白内障手術、
・IOLレンズの計算
・コンタクトレンズのフィッティング
・屈折レーザー手術など
の新たなアプリケーションを考慮すると、測定の精度および再現性の観点から、トポグラフィーには特有のいくつかの課題がある。これらの課題は、従来のトポグラフィー方法を改良するか、または新たな方法を開発することを必要とする。
【0004】
眼の角膜(ラテン語のcornea tela(horny sheath)が語源)のトポグラフィーを測定するためのより一般的な機器には、角膜計およびシャインプルーフ(Scheimpflug)カメラに加えてプラシドリング(Placidoring)システムの投影に基づくものが含まれる。
【0005】
より新規なトポグラフィー方法は、共焦点光コヒーレンストモグラフィ(OCT:optical coherence tomography)を含み、共焦点光コヒーレンストモグラフィは、白色光干渉法に基づいており、かつ干渉計を用いて信号の飛行時間を比較する。ここでは、既知の光路長を有する干渉計のアーム(=基準アーム)が測定アームの基準として使用される。両方のアーム(基準アームおよび測定アーム)からの信号の干渉は、Aスキャン内の相対的な光路長(個別の深度信号)を読み取ることが可能なパターンを生じさせる。続いて、一次元走査方法において、かつ超音波技術に類似した方法で、ビームは一方向または二方向に横方向に案内され、その結果として二次元Bスキャン像または三次元断層画像(Cスキャン)を記録することが可能である。一例として、100個の個々のAスキャンからなるBスキャンには1秒の測定時間が必要である。
【0006】
OCT法の測定分解能は、使用される光源のいわゆるコヒーレンス長によって決定され、典型的には約15μmである。この方法は、光学的に透明な媒体を検査するのに特に適していることから、眼科において広く普及している。
【0007】
眼科で使用されるOCT法では、2つの異なるタイプが普及している。測定値を決定する目的のために、基準アームは第1のタイプの長さに関して変更され、干渉の強度はその過程でスペクトルが考慮されることなく連続的に測定される。この方法は「時間領域」法と呼ばれる。対照的に、「周波数領域」と呼ばれる他の方法では、スペクトルが考慮され、個々のスペクトル成分の干渉が、測定値を決定する目的で捕捉される。この理由から、一方では時間領域(略称:TD:Time Domain)における信号が参照され、他方では周波数領域(略称:FD:Frequency Domain)における信号が参照される。
【0008】
カメラチップの露光によって眼球運動を妨げることなくデータ記録を作成することができる従来の角膜測定法およびプラチドトポグラフィー法と比較して、OCT法の比較的長い走査時間は、不利であり、さらなる補正手順を必要とする。
【0009】
そこで、特許文献1には、光源および干渉計を用いて眼を検査するための解決法が記載されている。このプロセスでは、眼球は第1のビーム経路に配置され、眼球の界面で反射された物体光波は基準光波と干渉させられる。干渉現象が検出され、かつ評価され、この発明では、評価が少なくとも1つの光電子センサによって実施され、基準光波が所定の光学素子を通過して物体光波と干渉するように導かれる。特許文献1に記載された解決法は、眼の角膜のトポグラフィーを決定することも可能にするが、波面形状偏差の符号または角膜の絶対曲率半径を決定することは不可能である。
【0010】
従来技術における他の欠点は、現在入手可能な費用効果の高い共焦点OCTシステムを用いて角膜の信頼できるトポグラフィーデータを提供することが未だに可能ではないということである。解像度および再現性に加えて、眼球運動に関連した長い走査時間は、現在のところ原理的には高精度のアイトラッカーを使用してのみ制御することができるという問題がある。
【0011】
プラシドリング投影とOCT機器とを組み合わせたアプリケーションは、特にプラシドディスクを用いた比較的大型の設計を必要とし、特に、患者の眼の上の操作者の視界を妨げ、工程により多くの時間を消費することとなる。トポグラフィーの間に、強膜の領域の約16mmまでの大きな直径が得られるべきである場合、プラチドプロジェクタは、対応してより大きな寸法を必要とし、取り扱いが継続してより困難となり得るか、または光学設計は非常に限られた範囲でのみ実施され得る。
【0012】
非特許文献1では、眼の中のバイオメトリック軸方向距離を測定するためのBスキャンをすでに収集しており、かつ角膜の表面トポグラフィー用のデータメッシュも収集している。得られたバイオメトリックデータがOCT画像に基づいて目視検査を受けるこのシステムは、高い再現性を有する良好な屈折力の結果および臨床データベース接続によって特徴付けられる。また、再現性の標準偏差が比較的低い場合においても、OCTデータを得ることができる。しかしながら、比較的低速の走査速度に関連して特定されている現時点の欠点は、このシステムにも当てはまる。
【0013】
散乱試料の光学的3Dイメージングのためのそのような方法は、特に空間散乱強度分布を決定するための方法は、特許文献2に記載されている。ここでは、試料は異なる波長で照射され、試料によって反射された光および基準光は2D光検出器アレイ上に結像され、それぞれ1つのホログラムが各波長について記録される。試料の少なくとも1つの層における散乱強度の分布は、様々な中間ステップによって、全ての計算された波面から再構成される。
【0014】
波長掃引光源OCTの広視野用途に対応するこの従来のホロスコピーの解決法における不利な点は、この画像スタックから深度情報を抽出するために非常に多くの画像を認識し評価しなければならないことであると考えるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】欧州特許出願公開第0563454号明細書
【文献】独国特許発明第102011018603号明細書
【非特許文献】
【0016】
【文献】ツァイス社製IOLMaster(登録商標)700、DE_32_010_0009II、CZ-I/2015、カールツァイスメディテック社、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、眼の角膜のトポグラフィーの決定も可能にする、OCTに基づくバイオメトリック解決法を開発するという目的に基づく。その際に、解決法は、測定データの精度および再現性に関して増大する要求を満たすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための提案された方法であって、ここで、眼は共焦点干渉測定装置の照明源によって照明され、角膜によって反射された光信号は共焦点干渉測定装置および空間分解検出器の両方によって検出され、前記光信号は、評価ユニットに転送され、
a)照明放射線が角膜の曲率中心に合焦され、
b)ビームスプリッタから空間分解検出器に出力結合され、かつ空間分解検出器上に結像された角膜によって反射された光信号の一部が、遅延線を有する基準光源によって生成された基準信号と重ね合わされ、
c)基準信号が角膜によって反射された光信号と干渉することができるように、角膜によって反射された光信号と類似した既知の波面形状を有する基準信号が遅延線を介して設定され、
d)干渉パターンが空間分解検出器上に生成されるのと同時に、干渉測定装置によって基準面から角膜表面までの距離が決定され、
e)角膜のトポグラフィーが少なくとも一回で記録された空間分解検出器および干渉測定装置の測定信号から評価ユニットによって決定される方法によって達成される。
【0019】
共焦点干渉測定装置、空間分解検出器、位置決めのための装置、および評価ユニットからなる本発明による眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための装置は、周波数領域OCT法に基づき、かつ放射が角膜の曲率中心に合焦される干渉測定装置と、角膜によって反射された光信号の一部を空間分解検出器に出力結合し、かつ空間分解検出器上に結像するために設けられたビームスプリッタと、空間分解検出器上に結像されるべき角膜によって反射された光信号の一部を基準信号と重ね合わせるために設けられた遅延線を有する基準光源およびビームスプリッタと、前記基準光源は、空間分解検出器の上流に配置され、前記基準光源は、角膜によって反射された光信号の波面形状と類似した既知の波面形状を有する基準信号を生成するように構成され、干渉測定装置および空間分解検出器の同時に記録された信号から角膜のトポグラフィーを決定するように構成された評価装置とによってこの目的を達成する。
【0020】
本発明によれば、目的は独立請求項の特徴によって達成されるが、好ましい展開および実施形態は従属請求項の主題である。
提案されている解決法は、眼の角膜のトポグラフィーを決定するのに役立ち、かつコヒーレント光トポグラフィーシステムに基づいている。本発明によれば、この解決法は、共焦点FD-OCT法と結像ホロスコピーの要素とを組み合わせて、それによって、特にツァイス社製のIOLMaster(登録商標)700のような既に確立されたシステムにおいて、必要な精度で角膜のトポグラフィーを干渉測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明を、例示的な実施形態に基づいて以下により詳細に説明する。この点において
【
図1】眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための本発明による装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための方法では、眼が共焦点干渉測定装置の照明源によって照明され、角膜によって反射された光信号が共焦点干渉測定装置および空間分解検出器の両方によって検出され、前記光信号は評価ユニットに転送される。本発明によれば、この方法は、以下の個々の
a)照明放射が角膜の曲率中心に合焦される工程、
b)ビームスプリッタから空間分解検出器に出力結合され、かつ空間分解検出器上に結像された角膜によって反射された光信号の一部が、遅延線を有する基準光源によって生成された基準信号と重ね合わされる工程、
c)基準信号が角膜によって反射された光信号と干渉することができるように、角膜によって反射された光信号の波面形状と類似した既知の波面形状を有する基準信号が、遅延線を介して設定される工程、
d)干渉パターンが空間分解検出器上に生成されるのと同時に、干渉測定装置によって基準面から角膜表面までの距離が決定される工程、
e)角膜のトポグラフィーが、少なくとも一回で記録された空間分解検出器および干渉測定装置の測定信号から評価ユニットによって決定される工程を含む。
【0023】
第1の有利な構成によれば、干渉測定装置は周波数領域OCT法、特に波長掃引光源OCT法を使用する。その際に、眼は、干渉角測定装置の照明源によって照明ビームを介して照射され、照明ビームの開口角は20°~100°、好ましくは60°である。
【0024】
照明源の放射は、特に収束的な方法で、通常の角膜の頂点から約8mm後方にある角膜の曲率中心に合焦される。直径約6mmの角膜領域を照明するためには、約45°(一周(Vollwinkel))の収束レーザー波の開口が必要である。
【0025】
角膜によって反射された光信号の測定値は、照明放射の焦点面と共役な平面にある共焦点干渉測定装置によって捕捉される。
本発明によれば、角膜によって反射された光信号の一部は、空間分解検出器上に結像される。
【0026】
角膜によって反射された光信号の一部、合計で2%から50%、好ましくは約10%が、この目的のために設けられたビームスプリッタによって空間分解検出器に出力結合され、かつ空間分解検出器上に結像される。
【0027】
第2の有利な構成によれば、10μmと1mmとの間の範囲の有効コヒーレンス長が実現されるように、空間分解検出器は、干渉測定装置の照明源の調整時間および波長範囲に整合した露光時間で干渉信号を記録する。
【0028】
本発明によれば、空間分解検出器の露光時間は、照明源を調整するのに必要な時間の1%から100%の範囲内にある。この露出時間は、測定可能な深度範囲を制限する。この測定可能な深度範囲外の物点は、経時的に非常に急速に変化する干渉現象を有し、これらの物点は平均して空間分解検出器の記録から外れる。
【0029】
既に説明したように、空間分解検出器上に結像される角膜によって反射された光信号の一部は、角膜によって反射された光信号の波面形状と類似した既知の波面形状を有する基準信号と重ね合わされる。
【0030】
第3の有利な構成によれば、球面波が基準信号として使用され、前記球面波の中心は角膜の曲率中心と共役である。球面波は、角膜によって反射された光信号と干渉することができるように遅延線によって設定される。本発明によれば、基準光源は、共焦点干渉測定装置の調整可能な照明源とコヒーレントになるように調整可能光源と出力結合される。
【0031】
本発明によれば、照明光が角膜の頂点に焦点を合わせて結像される点の近傍で、焦点からの距離が異なる少なくとも2つの測定信号対が、両方のシステムを互いに較正するために空間分解検出器および干渉測定装置によって同時に記録される。この目的のために、角膜によって反射された光信号の散乱円の直径は、空間分解検出器の少なくとも2つの画像において決定される。この散乱円の直径が、共焦点OCTによって測定された角膜の頂点からの距離にわたってプロットされる場合、例えば、線形回帰によって、光信号が空間分解検出器上に完全に焦点が合うように入射し得る点を決定することが可能である。共焦点OCTによって測定された角膜の頂点からの距離は、またこの状態に関して既知であるため、2つの測定原理を互いに較正し、例えば、干渉測定装置において温度効果に基づいて経路長の変化を補償することが可能である。
【0032】
更なる有利な構成によれば、較正係数は、遅延線を設定する目的で、干渉測定装置によって連続的に確認された距離測定信号を使用するために採用される。好ましくは、遅延線はモータ駆動方式で更新される。
【0033】
さらに、較正は、例えば、前部レンズの焦点距離または全体的な設定における経路差に影響を及ぼし得る熱的効果の補償を可能にする。この較正プロセスは、バックグラウンドで実行され、ユーザーには知覚可能ではない。原則として、較正プロセスは、測定結果を適宜修正するために、実際の測定の後にのみ実行される。
【0034】
基準信号の連続的な距離補正は、空間分解検出器が角膜反射に加えて干渉リングも含む記録を引き続き実現するのみであることを確実にする。
更なる有利な構成によれば、少なくとも1つの測定信号が、照明光が角膜の曲率中心に焦点を合わせて結像される点の近傍において空間分解検出器によって記録される。角膜によって反射された光信号の理想的な球面波からの偏差は、干渉法によって決定され、角膜の絶対曲率半径、本明細書での角膜のトポグラフィーは、干渉測定装置によって供給される測定信号から同時に確立される。
【0035】
しかしながら、角膜によって反射された光信号の理想的な球面波からの偏差の符号は、1つの測定信号対のみから決定することはできない。このため、焦点からの距離に関してわずかに異なる第2の測定信号対が必要とされる。空間分解検出器上に結像される基準信号の遅延は、角膜によって反射された光信号に対してモータ駆動方式で設定されるが、「ゼロ遅延」からの小さいランダムな偏差は、患者の動きのランダム成分によって起こり得、その結果として、干渉リングのコントラストが検出器画像で変化する。
【0036】
角膜の同じ点における干渉のコントラストは、空間分解検出器の少なくとも2つの測定信号において比較される。波面偏差の符号は、共焦点干渉測定装置によって確認されるような、個々の測定信号対に属する角膜の頂点からの距離を考慮することによって一義的に決定することができる。
【0037】
最後の有利な構成によれば、複数の測定信号が、照明光が角膜の曲率中心に焦点を合わせて結像される点の近傍において空間分解検出器によって記録される。空間分解検出器の基準信号に対する遅延線の調整は、ゼロ遅延からより著しく大きく逸脱し、その結果として、角膜の強い非球面曲率に対する測定可能な深度範囲が拡張される。その結果、強く非球面的に湾曲した角膜の場合、合成測定信号を形成するために組み合わされる個々の測定値から利用可能な測定信号の一部によって合成測定信号を得ることができる。
【0038】
本発明によれば、角膜の絶対曲率半径における決定の精度は、干渉測定およびコヒーレント光学距離測定の正確さから生じる。干渉測定の100nm未満の精度およびコヒーレント光学距離測定の5μm未満の精度の場合に、±5μmの精度で角膜の絶対曲率半径を決定することが可能である。
【0039】
提案された方法は、例えば、円錐角膜などのようなある種の疾患の場合に、球形から大きく逸脱している眼の角膜を測定するためであっても適用可能である。
従って、干渉現象は、不十分な深度測定範囲のために、空間分解検出器の測定信号において測定されるべき角膜表面の一部においてのみ可視となる。
【0040】
この場合、焦点からの偏差がより強い複数の測定信号を記録することが有利である。角膜のトポグラフィーの重なり合う部分は、これらの記録から再構成することができ、角膜の全体的なトポグラフィーは、繰り返し再構成によって複数のそのような画像から結果的に補完され、かつ合成されることができる。
【0041】
眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための提案された装置は、共焦点干渉測定装置、空間分解検出器、位置決めのための装置、および評価ユニットからなる。
本発明によれば、干渉測定装置は、周波数領域OCT法に基づいており、干渉測定装置の放射は、角膜の曲率中心に合焦される。本発明のビームスプリッタは、角膜によって反射された光信号の一部を空間分解検出器に出力結合し、かつ空間分解検出器上に結像するように機能する。
【0042】
角膜によって反射された光信号の空間分解検出器上に結像されるべき一部を基準信号と重ね合わせるために、遅延線を有する基準光源およびビームスプリッタが空間分解検出器の上流に配置される。
【0043】
干渉測定装置の照明源は、照明放射が角膜の曲率中心に合焦され、かつ約6mmの直径を有する角膜の領域を照明するように設計されている。
本発明によれば、基準光源は、角膜によって反射された光信号の波面形状と類似した既知の波面形状を有する基準信号を生成するように構成される。ここで、基準光源は、共焦点干渉測定装置の調整可能な照明源とコヒーレントになるように調整可能な照明源と出力結合される。
【0044】
評価ユニットは、干渉測定装置および空間分解検出器の同時に記録された信号から角膜のトポグラフィーを決定するように構成されている。
有利な構成によれば、干渉測定装置は、波長掃引光源OCT法に基づいており、干渉測定装置の照明源は20°~100°、特に好ましくは60°の開口角を有する照明ビームを生成するように構成されている。
【0045】
本発明によれば、角膜によって反射された光信号の一部を出力結合および結像するためのビームスプリッタは、空間分解検出器上に結像される一部が、角膜で反射された光信号全体の2%と50%との間、好ましくは約10%となるように構成される。
【0046】
さらなる有利な構成によれば、基準光源は、角膜によって反射された光の一部を空間分解検出器上に重ね合わせるための球面波を生成するように構成され、前記球面波の中心は、角膜の曲率中心と共役である。さらに、本発明によれば、遅延線は、ファイバーコリメータと再帰反射器とからなる。好ましくは、基準信号は、プロセスにおいてモータ駆動方式において適合され、そのために、例えば、再帰反射器は可動コイル駆動部を有する。
【0047】
さらなる有利な構成によれば、10μmと1mmとの間の範囲の有効コヒーレンス長が実現可能となるように、空間分解検出器の露光時間は、干渉測定装置の照明源の調整時間および波長範囲に整合される。
【0048】
これに関して、
図1は、眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための本発明による装置を示す。
この装置は、
図1ではボックスのみ示されており、かつ調整可能な照明源(図示せず)を含む共焦点干渉測定装置2を備える。眼1は、ビームスプリッタ3および光学系4を介してこの照明源によって照明される。眼1の角膜によって反射された光信号は、共焦点干渉測定装置2と空間分解検出器5の両方に結像される。眼1の角膜によって反射された光信号は、ビームスプリッタ3によって2つの測定装置2および5の間で分割される。
【0049】
眼1の角膜によって反射された光信号の一部を基準信号と重ね合わせるために、遅延線7を有する基準光源6およびさらなるビームスプリッタ8が、空間分解検出器5の上流に配置されている。ここで、基準光源6の光放射は、共焦点干渉測定装置2の調整可能な照明源とコヒーレントになるように導光体9を介して調整可能な照明源と出力結合される。
【0050】
本発明による解決法を使用して、光学的な非接触データ捕捉に基づく、眼の角膜の高解像度トポグラフィーのための方法および装置が利用可能となる。
本発明のOCTベースの解決法は、眼のバイオメトリック値およびトポグラフィー値の両方の捕捉を可能にし、その過程で、測定データの精度および再現性に関してますます厳しくなる要件を満たす。
【0051】
眼からの距離が付加的に既知である場合、干渉法に基づくトポグラフィー測定は、高い精度の測定値を達成することができる。これとは対照的に、共焦点OCTに基づくトモグラフィー測定の場合、眼からの距離が既知であるが、OCTシステムのより低い分解能での順次表面走査によって正確さが不十分な測定値のみが得られる。提案された解決法は、両方のタイプのトポグラフィー測定のポジティブな特性を組み合わせる。
【0052】
提案された解決法の利点は、1つの照明源が共焦点干渉測定装置および空間分解カメラ測定装置の両方に対して測定放射を供給することである。これにより、追加で必要とされる光学部品の数を少なく抑えることができる。トポグラフィーを決定するための複雑な照明装置およびテレセントリック式に補正される検出光学系の両方を省略することが可能である。