(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】消臭剤含有加工液、消臭製品の製造方法、消臭濾材、消臭フィルターユニット及び消臭装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20240129BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240129BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61L9/01 K
B05D5/00 Z
B05D7/24 303B
B05D7/24 303E
(21)【出願番号】P 2019554171
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2018040990
(87)【国際公開番号】W WO2019098071
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-04-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2017221313
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】上杉 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜直
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】松井 裕典
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-204892(JP,A)
【文献】国際公開第2007/088879(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/056486(WO,A1)
【文献】特開2013-94367(JP,A)
【文献】特開2008-138300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L9/00-9/22
B01J20/00-20/22
D06M11/00
D06M13/432
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノグアニジン酸性塩と該アミノグアニジン酸性塩を担持可能な無機担体とを必須成分とする消臭剤組成物と、接着剤樹脂と、分散剤と、分散媒とを含有する消臭剤含有加工液であって、
前記アミノグアニジン酸性塩の含有割合が前記無機担体の含有量100質量部に対して25~100質量部であり、
前記消臭剤組成物が、前記消臭剤含有加工液中に12~18質量%含有しており、
前記分散剤は、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種であり、
粘度(25℃、6rpm)が、50~1000cpsであることを特徴とする消臭剤含有加工液。
【請求項2】
前記アミノグアニジン酸性塩が、前記無機担体に担持されている請求項1に記載の消臭剤含有加工液。
【請求項3】
前記接着剤樹脂が、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はその変性物、エチレン・塩化ビニル共重合体又はその変性物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、変性オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はその変性物から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載の消臭剤含有加工液。
【請求項4】
(a)前記消臭剤組成物のアミノグアニジン酸性塩が、アミノグアニジン塩酸塩又はアミノグアニジン硫酸塩であり、前記無機担体が、珪酸塩化合物又はシリカゲルであり、(b)前記接着剤樹脂が水溶性樹脂又は水不溶性樹脂であり、(c)前記分散剤が水溶性分散液の形態としたものであり、(d)分散媒が水であって、前記(a)から(d)を、一括して又は分割して混合する方法により調製されたものである請求項1から3のいずれか一項に記載の消臭剤含有加工液の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の消臭剤含有加工液と、基材とを用いて、該基材の表面に塗膜を形成させる工程と、前記塗膜を乾燥する工程とを備えることを特徴とする消臭製品の製造方法。
【請求項6】
消臭剤含有部を備える消臭製品であって、
該消臭剤含有部が、アミノグアニジンの酸性塩と、該アミノグアニジン酸性塩を担持している無機担体と、接着剤樹脂と、界面活性剤とを含有し、
前記アミノグアニジン酸性塩の含有割合が前記無機担体の含有量100質量部に対して25~100質量部であり、
前記接着剤樹脂は、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はその変性物、エチレン・塩化ビニル共重合体又はその変性物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、変性オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はその変性物から選ばれた少なくとも1種であって、前記接着剤樹脂の含有割合が、前記消臭剤組成物100質量部に対して20~50質量部であり、
前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種であ
り、
前記界面活性剤の含有割合が前記無機担体の含有量100質量部に対して0.5~40質量部であ
り、
消臭濾材、消臭紙及び消臭フィルムのいずれかである、
消臭製品。
【請求項7】
前記消臭製品が、繊維を含
むシート状
の基材と、該繊維の表面に接合された消臭剤含有部とを備え、1面側から他面側に通気性を有する消臭濾材であって、前記アミノグアニジン酸性塩の添加量が、前記基材に対して3~40質量%であり、通気度が50~350cm
3/(cm
2・秒)である請求項6に記載の消臭
製品。
【請求項8】
消臭濾材からなる前記請求項6
に記載の消臭製品又は
前記請求項7に記載の消臭
製品と該消臭
製品を支持する支持部材とを備えた消臭フィルターユニットを本体の内部に配設し、該本体と、該本体に配設され、且つ、該本体の外部から悪臭ガスを導入する悪臭ガス導入口と、該本体に配設され、且つ、該消臭
製品により清浄化されたガスを排出するガス排出口と、該本体の内部に配設され、且つ、該ガス排出口から該清浄化ガスを強制的に排出する排気用ファンとを備える消臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤含有加工液、消臭製品の製造方法、消臭濾材、消臭フィルターユニット及び消臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生活環境、職場環境等に応じて、空気中には、悪臭、有害ガス等の様々なガス状汚染物質が存在しており、これらガス状汚染物質を除去し、快適な環境を得ることに関心が持たれるようになってきた。例えば、アルデヒド系ガスは、タバコの煙、体臭(汗臭、口臭等)、ペット臭、カビ臭、塗料臭、印刷臭等の各種の臭気に含まれており、人体への影響が指摘されていることから、近年、室内、車内等において、アルデヒド系ガスを含む空気を浄化するための消臭濾材、消臭フィルター等が提案されている。
【0003】
従来、アルデヒド系ガス用の消臭濾材として、下記のように、化学吸着タイプの消臭剤が、不織布、紙等に接着されてなるものが知られている。尚、以下の文献では、「消臭フィルター(又は脱臭フィルター)」なる用語を、消臭濾材の代わりに用いている。
特許文献1には、マンガン酸化物に、ルテニウム化合物又はリン酸塩化合物が担持されてなる触媒を含む脱臭材を備える脱臭フィルターが開示されている。
特許文献2には、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等のヒドロキシアミン化合物を担持させた粒子と、架橋性ビニルモノマー及び含窒素芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られた多孔質ポリマー粒子とを含有する消臭フィルターが開示されている。
また、特許文献3には、活性炭混抄紙に環状飽和アミン及び塩基性化合物が担持されてなる消臭フィルターが開示されている。
【0004】
消臭製品を製造する場合には、消臭剤が、その性状に応じて使用され、一般に、消臭剤、接着剤及び媒体を含有する分散液、即ち、消臭剤含有加工液を、基材の表面に塗布し、塗膜を乾燥する方法が適用されている。消臭剤含有加工液には、液の安定性の観点から、分散剤が配合されることが常法であり、特許文献4には、アミノグアニジン酸性塩をケイ酸アルミニウムに担持させてなる消臭剤と、分散剤と、防腐剤と、消泡剤と、増粘剤と、バインダーと、水とを含有する消臭剤分散液であって、分散剤として、リン酸基を含むブロック共重合体のアルキルアンモニウム塩(両性界面活性剤)又はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(ノニオン性界面活性剤)を含む懸濁液(消臭剤含有加工液)が記載されており、この懸濁液を用いて、消臭性繊維又は消臭性カーペットが製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-104845号公報
【文献】特開2012-120637号公報
【文献】特開2016-154640号公報
【文献】国際公開2007/88879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
消臭剤が基材に添着されてなる消臭製品による消臭性能は、一般に、消臭剤の添着量に依存する。そのため、消臭剤含有加工液を用いて消臭製品を製造する場合において、より多くの消臭剤を基材に添着させるためには、消臭剤を高濃度で含む消臭剤含有加工液を用いるか、あるいは、消臭剤を低濃度で含む消臭剤含有加工液の塗布及び乾燥を繰り返す必要があった。しかしながら、消臭剤を高濃度で含む消臭剤含有加工液においては凝集物の生成や液の増粘等の不具合を招く。他方、消臭剤を低濃度で含む消臭剤含有加工液の塗布及び乾燥を繰り返す後者の方法は、製造コストの点で有利ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の従来技術の問題点に鑑みて、消臭剤を基材に添着させて消臭製品を製造する消臭剤含有加工液の検討を行い、本発明を完成させた。即ち、アミノグアニジン酸性塩と、このアミノグアニジン酸性塩を無機担体に対して所定量以上を担持する無機担体と、分散剤と、分散媒とを含有し、分散剤を、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種とした消臭剤含有加工液は、優れた保存安定性とを有し、高い消臭性能を有する消臭製品を与えることを見い出した。
【0008】
本発明は、以下に示される。
1.アミノグアニジンの酸性塩と、該アミノグアニジン酸性塩を担持可能な無機担体と、分散剤と、分散媒とを含有する消臭剤含有加工液であって、上記アミノグアニジン酸性塩の含有割合が上記無機担体の含有量100質量部に対して15質量部以上であり、上記分散剤は、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする消臭剤含有加工液。
2.上記アミノグアニジン酸性塩が、上記無機担体に担持されている上記項1に記載の消臭剤含有加工液。
3.無機担体の含有割合が、上記消臭剤含有加工液に対して0.1~50質量%である上記項1又は2に記載の消臭剤含有加工液。
4.上記項1から3のいずれか一項に記載の消臭剤含有加工液と、基材とを用いて、該基材の表面に塗膜を形成させる工程と、上記塗膜を乾燥する工程とを備えることを特徴とする消臭製品の製造方法。
5.繊維を含み、シート状を有する基材と、該繊維の表面に接合された消臭剤含有部とを備え、1面側から他面側に通気性を有する消臭濾材であって、上記消臭剤含有部は、アミノグアニジンの酸性塩と、該アミノグアニジン酸性塩を担持している無機担体と、接着剤樹脂と、界面活性剤とを含有し、上記アミノグアニジン酸性塩の含有割合が上記無機担体の含有量100質量部に対して15質量部以上であり、上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする消臭濾材。
6.上記アミノグアニジン酸性塩の含有割合が、上記基材に対して1~50質量%である上記項5に記載の消臭濾材。
7.通気度が10~500cm3/(cm2・秒)である上記項5又は6に記載の消臭濾材。
8.上記項5から7のいずれか一項に記載の消臭濾材と、該消臭濾材を支持する支持部材とを備えることを特徴とする消臭フィルターユニット。
9.上記項5から7のいずれか一項に記載の消臭濾材を備えることを特徴とする消臭装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施態様における消臭剤含有加工液は、安定性に優れ、取り扱いが容易で、消臭剤の添着量の高いアルデヒド系ガス用消臭製品の製造に好適である。
本発明の実施態様における消臭製品の製造方法によれば、高い消臭性能を有するアルデヒド系ガス用消臭製品を提供できる。
本発明の実施態様における消臭濾材は、アルデヒド系ガスに対して高い消臭性能を有する。従って、本発明の実施態様における消臭濾材を備える消臭フィルターユニット及び消臭装置もまた、アルデヒド系ガスに対して高い消臭性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態における消臭濾材の断面構造の1例を示す概略図である。
【
図2】〔実施例〕における消臭濾材の通気消臭試験を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液は、アミノグアニジン酸性塩と、該アミノグアニジン酸性塩を担持可能な無機担体と、接着剤樹脂と、分散剤と、分散媒である水とを含有する組成物である。アミノグアニジン酸性塩及び無機担体は、アルデヒド系ガス用の消臭剤として作用する。本発明の実施形態の消臭剤含有加工液は、必要に応じて、アルデヒド系ガス又は他の悪臭ガスを化学吸着する他の消臭剤(後述)や、添加剤を更に含有することができる。
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液は、所定形状の基材に塗布した後、塗膜を乾燥させて、接着剤樹脂により、基材と、アミノグアニジン酸性塩及び無機担体を含む消臭剤が接着された消臭製品を製造せしめるものである。尚、本発明の実施形態において、「アルデヒド系ガス」とは、-CHO基を含む化合物に由来するガスを意味する。具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブロパナール、ブタナール、ノネナール等に由来するガスである。
【0012】
上記アミノグアニジン酸性塩としては、モノアミノグアニジン、ジアミノグアニジン又はトリアミノグアニジンの塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等を用いることができる。
上記モノアミノグアニジン塩としては、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩、アミノグアニジン重炭酸塩、アミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。
上記ジアミノグアニジン塩としては、ジアミノグアニジン塩酸塩、ジアミノグアニジン硫酸塩、ジアミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。
また、上記トリアミノグアニジン塩としては、トリアミノグアニジン塩酸塩、トリアミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液に含まれるアミノグアニジン酸性塩は、1種のみでも、2種以上でもよい。
上記アミノグアニジン酸性塩としては、アミノグアニジン塩酸塩及びアミノグアニジン硫酸塩が好ましい。
【0013】
上記無機担体は、水と反応せず、消臭剤含有加工液においてその性状を維持するものであれば、特に限定されない。この無機担体を構成する材料としては、珪酸塩化合物、4価金属リン酸塩化合物、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。これらのうち、珪酸塩化合物及びシリカゲルが特に好ましい。
【0014】
上記珪酸塩化合物は、好ましくは珪酸アルミニウム及び珪酸マグネシウムである。
上記珪酸アルミニウムは、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物であり、上記珪酸マグネシウムは、好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物である。
Al2O3・mSiO2・nH2O (1)
(式中、mは6以上の数であり、nは1以上の数である。)
MgO・qSiO2・nH2O (2)
(式中、qは1以上の数であり、nは0.1以上の数である。)
【0015】
上記珪酸アルミニウムを表す一般式(1)において、mは、好ましくは6~50、より好ましくは8~15である。また、nは、好ましくは1~20、より好ましくは3~15である。
上記珪酸マグネシウムを表す一般式(2)において、qは、好ましくは1~20、より好ましくは3~15である。また、nは、好ましくは0.1~20、より好ましくは1~8である。
上記珪酸塩化合物としては、珪酸アルミニウムが特に好ましい。
【0016】
上記4価金属リン酸塩化合物としては、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズ等が挙げられ、結晶性及び非晶性のいずれでもよい。
【0017】
上記ゼオライトとしては、A型、X型、Y型、α型、β型、ZSM-5等の構造を有するものを用いることができる。これらは、天然物及び合成物のいずれでもよい。
【0018】
上記無機担体の性状及びサイズは、特に限定されないが、アルデヒド系ガスの消臭効果の観点から、BET比表面積は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上であり、平均粒径は、好ましくは0.01~50μm、より好ましくは0.02~20μmである。尚、BET表面積が2000m2/gを超えると、細孔の径がアミノグアニジン酸性塩の粒径より下回るため担持が困難となる。
【0019】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液は、得られる消臭製品による消臭性能の観点から、少なくとも、アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体を含む。
アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体において、この複合体による消臭効果の観点から、アミノグアニジン酸性塩の含有割合は、無機担体100質量部に対して、15質量部以上であり、好ましくは15~200質量部、より好ましくは20~160質量部、更に好ましくは25~100質量部である。無機担体に対するアミノグアニジン酸性塩の含有割合が15質量部より少ないと、十分な消臭効果が得られず、所望の消臭効果を得るために、被塗布物品である基材への加工を複数回実施する必要が生じる。一方、無機担体に対するアミノグアニジン酸性塩の含有割合が200質量部を上回ると、無機担体の表面積に対してアミノグアニジン量が過多となり消臭効率が低下する場合がある。
また、アルデヒド系ガス消臭剤以外である、硫黄系ガス、塩基性ガス又は有機酸性ガス消臭剤等と併用した場合であっても、硫黄系ガス、塩基性ガス、有機酸性ガス等に対する消臭性能を保ちつつ、アルデヒド系ガスの消臭性能を十分に発揮することが可能となる。
【0020】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液における上記無機担体の含有割合は、得られる消臭製品による消臭性能の観点から、消臭剤加工液に対して、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは1~40質量%、更に好ましくは5~30質量%である。上記無機担体の含有割合が0.1質量%を下回ると十分な消臭性能を得られず、所望の消臭効果を得るために、基材への加工を複数回実施する必要が生じる。一方、上記無機担体の含有割合が50質量%を上回ると、消臭加工液の粘度が高くなりすぎて加工に適さなくなり、また無機担体が凝集して沈殿物を生じることがある。
【0021】
上記複合体は、従来、公知の方法により得られたものとすることができる。例えば、無機担体の粉末を撹拌しながら、アミノグアニジン酸性塩の溶液(水溶液又はアルコール溶液)を滴下又は噴霧し、その後、媒体を除去するための加熱を行う方法とすることができる。
【0022】
上記接着剤樹脂は、消臭製品の製造に際して、少なくともアミノグアニジン酸性塩及び無機担体を基材に接着させる成分である。尚、本発明の実施形態の消臭剤含有加工液に含まれる接着剤樹脂は、1種のみでも、2種以上でもよい。
上記接着剤樹脂は、水溶性樹脂及び水不溶性樹脂のいずれでもよく、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はその変性物(酸変性物等)、エチレン・塩化ビニル共重合体又はその変性物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、変性オレフィン樹脂(塩素化ポリオレフィン等)、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はその変性物、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらのうち、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はその変性物(酸変性物等)、エチレン・塩化ビニル共重合体又はその変性物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、変性オレフィン樹脂(塩素化ポリオレフィン等)、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はその変性物が好ましい。
上記接着剤樹脂が水不溶性樹脂である場合、本発明の実施形態の消臭剤含有加工液における性状は、粒状、線状等とすることができる。
【0023】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液に含まれる接着剤樹脂の含有割合は、アミノグアニジン酸性塩及び無機担体の合計量、又は、更に、他の消臭剤(後述)を含むときにアミノグアニジン酸性塩、無機担体及び他の消臭剤の合計量を100質量部とした場合に、好ましくは10~300質量部、より好ましくは15~200質量部、更に好ましくは20~150質量部である。
【0024】
上記分散剤は、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種であり、上記のように、アミノグアニジン酸性塩の含有割合が無機担体の含有量100質量部に対して15質量部以上である場合に、本発明の実施形態の消臭剤含有加工液に安定性を付与するものである。本発明の実施形態の消臭剤含有加工液に含まれる分散剤は、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
【0025】
上記アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸系アニオン界面活性剤、スルホン酸系アニオン界面活性剤、硫酸系アニオン界面活性剤、リン酸系アニオン界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、カルボン酸系アニオン界面活性剤が好ましい。尚、上記分散剤に含まれるアニオン性界面活性剤は、1種のみでも2種以上でもよい。
以下、アニオン性界面活性剤を具体的に例示するが、「塩」は、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩又はアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩等)である。
【0026】
上記カルボン酸系アニオン界面活性剤としては、ポリカルボン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩等が挙げられる。これらのうち、ポリカルボン酸塩が好ましい。
【0027】
上記ポリカルボン酸塩としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等に由来する構造単位を含む単独重合体若しくは共重合体の塩が挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ無水マレイン酸、マレイン酸・イソブチレン共重合体、無水マレイン酸・イソブチレン共重合体、マレイン酸・ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸・ジイソブチレン共重合体、アクリル酸・イタコン酸共重合体、メタクリル酸・イタコン酸共重合体、マレイン酸・スチレン共重合体、無水マレイン酸・スチレン共重合体、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、アクリル酸・アクリル酸メチルエステル共重合体、アクリル酸・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・マレイン酸共重合体、アクリル酸・無水マレイン酸共重合体等の塩を用いることができる。
【0028】
上記脂肪族カルボン酸塩としては、カプロン酸塩、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩等の、炭素原子数が8~20のアルキル基を含む脂肪族カルボン酸塩が挙げられる。
【0029】
上記アルキルエーテルカルボン酸塩としては、(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸塩等が挙げられる。具体的には、オキシエチレンオレイルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルプロピオン酸塩、アルキルグリコール酢酸塩等の、炭素原子数が14~60のアルキレン基を含むアルキルエーテルカルボン酸塩を用いることができる。
【0030】
上記アルケニルコハク酸塩としては、炭素原子数が8~22のアルケニル基を含むアルケニルコハク酸塩(モノ塩又はジ塩)が挙げられる。
上記N-アシルアミノ酸塩としては、N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルアスパラギン酸塩、N-アシル-β-アラニン塩、N-アシルメチルアラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルプロリン塩、N-アシルサルコシン塩等が挙げられる。具体的には、N-ラウロイル-β-アラニンアルギニン、N-ラウロイル-β-アラニンカリウム、N-ラウロイル-β-アラニントリエタノールアミン、N-ラウロイル-N-カルボキシメチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム等を用いることができる。
【0031】
上記アミドエーテルカルボン酸塩としては、脂肪酸アルカノールアミドエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレン化アルキルアミドエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0032】
上記スルホン酸系アニオン界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、ホルマリン縮合系スルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0033】
上記アルカンスルホン酸塩としては、1-オクタンスルホン酸塩、2-オクタンスルホン酸塩、1-デカンスルホン酸塩、2-デカンスルホン酸塩、1-ドデカンスルホン酸塩、2-ドデカンスルホン酸塩等の、炭素原子数が8~18のアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
上記α-オレフィンスルホン酸塩としては、テトラデセンスルホン酸塩等の炭素原子数が8~18のα-オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。
【0034】
上記アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、p-トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
上記アルキルナフタレンスルホン酸塩としては、モノアルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。具体的には、メチルナフタレンスルホン酸塩、エチルナフタレンスルホン酸塩、プロピルナフタレンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、ブチルナフタレンスルホン酸塩、イソブチルナフタレンスルホン酸塩、ジメチルナフタレンスルホン酸塩、ジエチルナフタレンスルホン酸塩、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸塩、ジイソブチルナフタレンスルホン酸塩、メチルノニルナフタレンスルホン酸塩等を用いることができる。
【0035】
上記アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩としては、炭素原子数が1~20のアルキル基を含むアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。具体的には、ノニルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ステアリルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等を用いることができる。
上記α-スルホ脂肪酸エステル塩としては、脂肪酸残基の炭素原子数が8~18であるα-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩等が挙げられる。具体的には、メチル2-スルホラウリン酸塩、ポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル等を用いることができる。
上記アシルイセチオン酸塩としては、ラウロイルイセチオン酸塩、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸塩等が挙げられる。
上記アルキルスルホコハク酸塩としては、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ラウリルスルホコハク酸塩等の、炭素原子数が8~18のアルキル基を含むアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩等の、炭素原子数が8~18のポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
上記アルキルスルホ酢酸塩としては、ラウリルスルホ酢酸塩等の、炭素原子数が8~18のアルキル基を含むアルキルスルホ酢酸塩が挙げられる。
上記N-アシルメチルタウリン塩としては、ラウロイルメチルタウリン塩、ミリストイルメチルタウリン塩、パルミトイルメチルタウリン塩、ステアロイルメチルタウリン塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン塩等が挙げられる。
上記ホルマリン縮合系スルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルメラミンスルホン酸のホルマリン縮合物等が挙げられる。
【0036】
上記硫酸系アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩等が挙げられる。
【0037】
上記アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、セチル硫酸塩等が挙げられる。
上記アルキルエーテル硫酸塩としては、POEラウリルエーテル硫酸塩、POEトリデシルエーテル硫酸塩等が挙げられる。
上記アルキルアリールエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩等が挙げられる。
上記脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩としては、ポリオキシエチレンアルキルヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等が挙げられる。
上記脂肪酸モノグリセリド硫酸塩としては、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸塩等が挙げられる。
【0038】
上記リン酸系アニオン界面活性剤としては、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸塩等が挙げられる。
上記アルキルリン酸塩としては、ラウリルリン酸塩、ミリスチルリン酸塩、パルミチルリン酸塩、ステアリルリン酸塩等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(C12~15)エーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
上記アルキルアリールエーテルリン酸塩としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
上記脂肪酸アミドエーテルリン酸塩としては、ポリオキシエチレンアルキルモノエタノールアミドリン酸塩等が挙げられる。
【0039】
上記ノニオン性界面活性剤としては、脂肪族アルコールへのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル;芳香族アルコールへのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレンフェニルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(ポリオキシアルキレンアリールエーテル);グリセリン脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステルへのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル;ペンタエリスリトール脂肪酸エステルへのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレンペンタエリスリトール脂肪酸エステル;脂肪酸へのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステルへのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ペンタエリスリトール脂肪酸エステル;脂肪族アミンへのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレンアルキルアミン;脂肪酸アミドへのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレン脂肪酸アミド;ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油;ポリオキシアルキレン変性ジオルガノポリシロキサン;ポリグリセリル変性シリコーン;グリセリル変性シリコーン;糖変性シリコーン;パーフルオロポリエーテル系界面活性剤;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマーエーテル等が挙げられる。尚、上記分散剤に含まれるノニオン性界面活性剤は、1種のみでも2種以上でもよい。
【0040】
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレンアリールエーテルとしては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
上記(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとしては、(ポリ)グリセリンモノ脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリンジ脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリントリ脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのうち、(ポリ)グリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート等が挙げられる。(ポリ)グリセリンジ脂肪酸エステルとしては、グリセリンジステアレート、グリセリンジベヘネート等が挙げられる。(ポリ)グリセリントリ脂肪酸エステルとしては、グリセリントリステアレート、グリセリントリベヘネート等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノオレート等が挙げられる。
【0042】
上記ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル等が挙げられる。
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル、ソルビタンテトラ脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのうち、ソルビタンモノ脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。ソルビタンジ脂肪酸エステルとしては、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジベヘネート等が挙げられる。ソルビタントリ脂肪酸エステルとしては、ソルビタントリパルミテート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリベヘネート等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
【0043】
上記ポリオキシアルキレンアルキルアミンとしては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドとしては、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシプロピレンミリスチン酸モノエタノールアミド等が挙げられる。
【0044】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液に含まれる分散剤の含有割合は、消臭剤含有加工液の安定性の観点から、無機担体を100質量部とした場合に、好ましくは0.1~60質量部、より好ましくは0.3~50質量部、更に好ましくは0.5~40質量部である。
【0045】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液は、上記成分の一部又は全てが分散媒の中に分散して含まれる分散液である。分散媒の含有割合は、特に限定されないが、アミノグアニジン酸性塩の含有割合が、消臭剤含有加工液に対して、好ましくは0.15~30質量部、より好ましくは1~20質量部となるように調整されている。
【0046】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液は、上記のように、アルデヒド系ガス又は他の悪臭ガス(硫化水素、メチルメルカプタン等の硫黄系ガス;酢酸、イソ吉草酸、酪酸等の有機酸性ガス等)を化学吸着する他の消臭剤、添加剤等の他の成分を含有することができる。以下、他の成分について、説明する。
【0047】
アルデヒド系ガスを吸着する消臭剤としては、ヒドラジド、アミノ基を有するアゾール等が挙げられる。
上記ヒドラジドの構造は、特に限定されない。このヒドラジドは、1分子にヒドラジド基を1つ有するモノヒドラジド、1分子にヒドラジド基を2つ有するジヒドラジド、及び、1分子にヒドラジド基を3つ以上有するポリヒドラジドのいずれでもよい。
【0048】
上記モノヒドラジドとしては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
R1-CO-NHNH2 (3)
(式中、R1は、炭素原子数3以上の、置換又は非置換の炭化水素基である。)
【0049】
上記モノヒドラジドとしては、プロパン酸ヒドラジド、ブタン酸ヒドラジド、ペンタン酸ヒドラジド、ヘキサン酸ヒドラジド、ヘプタン酸ヒドラジド、オクタン酸ヒドラジド、ノナン酸ヒドラジド、デカン酸ヒドラジド、ドデカン酸ヒドラジド、ペンタデカン酸ヒドラジド、4-メチル安息香酸ヒドラジド、フタル酸モノヒドラジド、イソフタル酸モノヒドラジド、テレフタル酸モノヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0050】
上記ジヒドラジドとしては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
H2NHN-X-NHNH2 (4)
(式中、Xは、-CO-基、又は、-CO-R2-CO-基であり、R2は、置換又は非置換であって、炭素原子数3以上のアルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基である。)
【0051】
上記一般式(4)において、R2で表されるアルキレン基としては、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基等が挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等が挙げられる。また、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ペンタセニレン基、ペリレニレン基、ピセニレン基、ピレニレン基、フルオレニレン基、クリセニレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。
【0052】
上記ジヒドラジドとしては、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,12-ドデカンジカルボヒドラジド、1,18-オクタデカンジカルボヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2-メチルテレフタル酸ジヒドラジド、5-tert-ブチルイソフタル酸ジヒドラジド、1,4-ナフタレンジカルボヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボヒドラジド(2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド)、4,4’-ビスベンゼンジヒドラジド、5-ヒドロキシイソフタル酸ジヒドラジド、2-エトキシテレフタル酸ジヒドラジド、3-メトキシフタル酸ジヒドラジド、5-ブトキシイソフタル酸ジヒドラジド、2-フェノキシテレフタル酸ジヒドラジド、4,6-ジメトキシイソフタル酸ジヒドラジド、2,3-ビス(ベンジルオキシ)テレフタル酸ジヒドラジド、4,4’-オキシビス(フタル酸ジヒドラジド)、ハイドロキノンジグリコール酸ジヒドラジド、レゾルシノールジグリコール酸ジヒドラジド、カテコールジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’-エチリデンビスフェノール-ジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’-ビニリデンビスフェノール-ジグリコール酸ジヒドラジド、3-アミノフタル酸ジヒドラジド、3-ニトロフタル酸ジヒドラジド、5-(ジベンジルアミノ)イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0053】
上記ポリヒドラジドとしては、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
R3-(CO-NHNH2)n (5)
(式中、R3は、置換又は非置換であるn価の炭化水素基であり、nは3以上の整数である。)
【0054】
上記ポリヒドラジドとしては、1,2,4-ベンゼントリカルボヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド等のトリヒドラジド;ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボヒドラジド、5,5’-エチレンビスオキシビス(イソフタル酸ジヒドラジド)等のテトラヒドラジド等が挙げられる。
【0055】
上記アミノ基を有するアゾールとしては、3-アミノピラゾール、5-アミノ-3-メチルピラゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、5-アミノ-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。
【0056】
硫黄系ガスを吸着する消臭剤としては、金属銅、銅元素を含む化合物(酸化銅、ケイ酸銅等)、金属亜鉛、亜鉛元素を含む化合物(酸化亜鉛、ケイ酸亜鉛等)、マンガン元素を含む化合物等が挙げられる。
有機酸性ガスを吸着する消臭剤としては、含水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0057】
上述した他の吸着剤の平均粒径は、いずれも、取り扱い性、吸着性能等の観点から、好ましくは0.01~50μm、より好ましくは0.02~20μmである。
【0058】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液が他の消臭剤を含有する場合、その含有割合の上限は、アミノグアニジン酸性塩の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは5000質量部、より好ましくは3000質量部である。
【0059】
添加剤としては、水溶性又は親水性を有する有機溶剤、粘度調整剤、消泡剤、着色剤、芳香剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防腐剤等が挙げられる。
上記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフラン、アセトン等が挙げられる。
【0060】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液のpHは、安定性の観点から、好ましくは1~7、より好ましくは1.5~6である。
【0061】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液は、消臭剤を高濃度で含むにも関わらず、安定性に優れる。また、B型粘度計による粘度(25℃、6rpm)は、好ましくは50~1000cps、より好ましくは100~800cpsである。本発明の実施形態の消臭剤含有加工液が、上記範囲の粘度を有すると、取り扱いが容易であり、基材への塗工性に優れる。その結果、消臭剤の添着量の高いアルデヒド系ガス用消臭製品を効率よく製造することができる。
【0062】
本発明の実施形態の消臭剤含有加工液を調製する方法は、特に限定されないが、好ましい調製方法は、以下に例示される。
(1)各成分を、一括して又は分割して混合する方法
(2)アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体と、上記界面活性剤を含む分散剤及び水を含有する分散剤含有液(水溶液又は分散液)と、接着剤樹脂と、必要に応じて、水とを、一括して又は分割して混合する方法
(3)アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体と、上記界面活性剤を含む分散剤と、接着剤樹脂及び水を含む樹脂分散液又は水溶液と、必要に応じて、水とを、一括して又は分割して混合する方法
(4)アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体と、上記界面活性剤を含む分散剤及び水を含有する分散剤含有液(水溶液又は分散液)と、接着剤樹脂及び水を含む樹脂分散液又は水溶液と、必要に応じて、水とを、一括して又は分割して混合する方法
(5)アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体と、上記界面活性剤の存在下に製造された樹脂エマルション(樹脂分散液)と、必要に応じて、上記界面活性剤及び/又は水とを、一括して又は分割して混合する方法
これらのうち、(2)及び(4)の方法が特に好ましい。
【0063】
本発明の実施形態における消臭剤含有加工液は、上記のように、消臭剤を基材に添着させて消臭製品を製造する原料として好適である。消臭製品の製造方法は、特に限定されず、通常、基材の形状等に応じて、選択される。
【0064】
本発明の実施形態における消臭製品の製造方法は、上記本発明の実施形態の消臭剤含有加工液を基材に塗布して基材の表面に塗膜を形成させる工程(以下、「塗布工程」という)と、上記塗膜を乾燥する工程(以下、「乾燥工程」という)とを備える。
【0065】
上記塗布工程では、基材の形状等に応じて、パディング、浸漬、コーティング、スプレー、プリント等を適用し、基材の表面に塗膜が形成される。この塗膜は、消臭剤含有加工液を浸潤させるように用いて得られた、基材の表面層及び内部に連続相を形成している膜であってもよい。
【0066】
上記基材は、特に限定されず、無機材料、有機材料又はこれらを組み合わせた材料を含む物品とすることができ、その形状も、特に限定されない。上記基材としては、フィルム、粒状体、一般成形品等の樹脂成形品(発泡樹脂成形品を含む);繊維;繊維を含む、不織布、織布等の繊維製品等を用いることができる。
【0067】
上記乾燥工程では、基材の形状等に応じて、密閉加熱、温風加熱等を適用し、塗膜から水を含む媒体が除去され、消臭剤含有部(消臭皮膜)が形成される。
乾燥温度は、好ましくは60~150℃、より好ましくは80~130℃であり、乾燥時間は、好ましくは2分~12時間、より好ましくは5分~2時間である。
【0068】
上記のように、本発明の実施形態では、無機担体の含有量に対してアミノグアニジン酸性塩の含有割合が高く安定な消臭剤含有加工液を用いるため、消臭剤が所期の含有割合で含まれる消臭製品を製造するために、塗布工程及び乾燥工程を繰り返す必要がなく、目的の消臭製品を効率よく製造することができる。
本発明により得られる消臭製品は、後に例示される。
【0069】
本発明の実施形態の消臭濾材は、繊維を含み、シート状を有する基材と、該繊維の表面に接合された消臭剤含有部とを備え、1面側から他面側に通気性を有する物品である。そして、消臭剤含有部は、アミノグアニジン酸性塩と、該アミノグアニジン酸性塩を担持している無機担体と、接着剤樹脂と、界面活性剤とを含有し、アミノグアニジン酸性塩の含有割合が無機担体の含有量100質量部に対して15質量部以上であり、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種である。
【0070】
図1は、本発明の実施形態の消臭濾材の好ましい態様を示し、繊維11と、アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体13とが、接着剤樹脂及び界面活性剤を含む接着部15を介して接合された消臭濾材10である。
図1では、複合体13及び接着部15により、本発明の実施形態に係る消臭剤含有部を形成している。尚、本発明の実施形態の消臭濾材の構造は、
図1に示されるものに限定されず、例えば、上記複合体13が中央に偏在して消臭層を形成している態様、上記複合体13が1面側に偏在して消臭層を形成している態様(いずれも図示せず)等とすることができる。
【0071】
上記基材は、繊維を含み、1面側から他面側に通気性を有するシート状物品であり、織布及び不織布のいずれからなるものであってもよいが、所望の厚さの設定が容易であり、通気性のコントロールがし易いことから、不織布からなることが好ましい。
上記繊維は、樹脂を主とするものであることが好ましく、このような樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリビニルエステル、ポリメタクリル酸エステル、レーヨン等が挙げられる。これらのうち、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタンが好ましい。尚、上記不織布は、1種のみの樹脂を含む繊維からなる不織布であってよいし、複数種類の樹脂繊維からなる不織布であってもよい。また、上記不織布は、交絡されていてもよい。
【0072】
本発明の実施形態に係る消臭剤含有部は、アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体と、接着剤樹脂と、界面活性剤とを含有する。アミノグアニジン酸性塩、無機担体、接着剤樹脂及び界面活性剤の好ましい材料は、上記本発明の実施形態の消臭剤含有加工液に係る記載の通りである。
【0073】
上記消臭剤含有部におけるアミノグアニジン酸性塩の含有割合は、アルデヒド系ガスを含む悪臭ガスの消臭性の観点から、無機担体の含有量100質量部に対して15質量部以上であり、好ましくは15~200質量部、より好ましくは20~150質量部、更に好ましくは25~100質量部である。
尚、上記アミノグアニジン酸性塩の含有割合は、アルデヒド系ガスを含む悪臭ガスの消臭性の観点から、上記基材に対して、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~40質量%、更に好ましくは5~30質量%である。
【0074】
上記消臭剤含有部における接着剤樹脂の含有割合は、アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体と繊維との接着性の観点から、アミノグアニジン酸性塩及び無機担体の合計量100質量部に対して、好ましくは10~300質量部であり、より好ましくは15~200質量部、更に好ましくは20~150質量部である。
また、上記消臭剤含有部における界面活性剤の含有割合は、無機担体を100質量部とした場合に、好ましくは0.1~60質量部、より好ましくは0.3~50質量部、更に好ましくは0.5~40質量部である。
【0075】
本発明の実施形態の消臭濾材の目付は、アルデヒド系ガスに対する十分な消臭効果及び通気性が得られることから、好ましくは25~200g/m2、より好ましくは40~150g/m2である。
本発明の実施形態の消臭濾材の通気度は、アルデヒド系ガスに対する十分な消臭効果が得られることから、好ましくは10~500cm3/(cm2・s)、より好ましくは50~300cm3/(cm2・s)である。尚、上記通気度は、JISL1096に準ずる方法により得られたものである。
【0076】
本発明の実施形態の消臭濾材を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、以下に例示される方法を適用することができる。
(1)繊維を含む織布又は不織布からなる基材に、上記本発明の実施形態の消臭剤含有加工液を塗布(浸漬、スプレー、パディング等)した後、乾燥することにより、織布又は不織布に含まれる繊維の表面に、アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体を接着させる方法
(2)繊維を含む織布又は不織布からなる基材に、接着剤樹脂、界面活性剤及び媒体を含有する液を塗布(浸漬、スプレー、パディング等)した後、アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体を散布し、上記媒体を除去することにより、アミノグアニジン酸性塩が無機担体に担持されてなる複合体を、織布又は不織布に含まれる繊維の表面に接着させる方法
【0077】
本発明の実施形態の消臭フィルターユニットは、上記本発明の実施形態の消臭濾材と、該消臭濾材を支持する支持部材とを備える。即ち、本発明の実施形態の消臭フィルターユニットは、消臭濾材及び支持部材を含む複合物である。
上記支持部材の形状及び構成材料は、特に限定されず、用途により、適宜、選択されたものとすることができる。
上記消臭濾材の形状もまた、特に限定されず、用途により、適宜、選択されたものとすることができ、例えば、プリーツ加工によりジグザグ形状を有するもの、複数枚を立体的に積層して多層形状にしたもの等とすることができる。
【0078】
本発明の実施形態の消臭フィルターユニットの構成は、以下に例示される。
(1)消臭濾材が、枠状の支持部材に嵌め込まれている態様
(2)消臭濾材が、支持部材に接合されている態様
(3)消臭濾材の周縁の繊維間に、輪状の支持部材が配設されている態様
【0079】
本発明の実施形態の消臭フィルターユニットは、目的、用途等に応じて、更に、集塵濾材、殺菌濾材、抗アレルゲン濾材、抗ウイルス濾材等の、他の部材を備えることができる。
【0080】
本発明の実施形態の消臭装置は、上記本発明の実施形態の消臭濾材を備えるものであり、上記本発明の実施形態の消臭フィルターユニットを備えることができる。
本発明の実施形態の消臭装置の構造は、特に限定されないが、本体と、該本体に配設され、且つ、該本体の外部から悪臭ガスを導入する悪臭ガス導入口と、該本体の内部に配設された消臭濾材と、該本体に配設され、且つ、該消臭濾材により清浄化されたガスを排出するガス排出口と、該本体の内部に配設され、且つ、該ガス排出口から該清浄化ガスを強制的に排出する排気用ファンとを備えることが好ましい。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、下記において、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0082】
1.消臭剤含有加工液の原料
消臭剤含有加工液の製造に用いた原料を以下に示す。
【0083】
1-1.消臭剤組成物
アミノグアニジンの塩酸塩又は硫酸塩の水溶液と、無機担体である、BET比表面積が600m2/g、平均粒径が10μmのケイ酸アルミニウム(SiO2:Al2O3のモル比9:1)又はBET比表面積が700m2/g、平均粒径が5μmのシリカゲルとを用いて、上記記載の方法により複合体からなる複合化消臭剤とした後、必要により、他の消臭剤である、含水酸化ジルコニウム又は酸化亜鉛と混合して、表1に示される消臭剤組成物(A1)~(A11)を調製した。そして、これらの消臭剤組成物(A1)~(A11)を、消臭剤含有加工液の製造原料として用いた。
【0084】
【0085】
1-2.接着剤
各接着剤樹脂を含むエマルションを用いた。
(1)エマルション(B1)
エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルションを用いた。接着剤樹脂の固形分濃度は、57%である。
(2)エマルション(B2)
エチレン・塩化ビニル共重合体エマルションを用いた。接着剤樹脂の固形分濃度は、50%である。
(3)エマルション(B3)
アクリル樹脂エマルションを用いた。接着剤樹脂の固形分濃度は、40%である。
(4)エマルション(B4)
ウレタン樹脂エマルションを用いた。接着剤樹脂の固形分濃度は、30%である。
(5)エマルション(B5)
塩素化ポリオレフィンエマルションを用いた。接着剤樹脂の固形分濃度は、30%である。
【0086】
1-3.分散剤
各界面活性剤を含む分散剤含有液を用いた。
(1)分散剤含有液(C1)
アニオン性界面活性剤(酸価1.5mgKOH/g)の水溶性分散剤を用いた。界面活性剤の純分濃度は、40%である。
(2)分散剤含有液(C2)
アニオン性界面活性剤(酸価10mgKOH/g)の水溶性分散剤を用いた。界面活性剤の純分濃度は、40%である。
(3)分散剤含有液(C3)
ノニオン性界面活性剤水溶性分散剤を用いた。界面活性剤の純分濃度は、40%である。
(4)分散剤含有液(C4)
ノニオン性界面活性剤水溶性分散剤を用いた。界面活性剤の純分濃度は、60%である。
(5)分散剤含有液(C5)
カチオン性界面活性剤(4級アンモニウム塩)を主成分とした水溶性分散剤を用いた。界面活性剤の純分濃度は、63%である。
(6)分散剤含有液(C6)
両性界面活性剤(酸価30mgKOH/g、アミン価20mgKOH/g)の水溶性分散剤を用いた。界面活性剤の純分濃度は、98%である。
(7)分散剤含有液(C7)
両性界面活性剤(酸価94mgKOH/g、アミン価94mgKOH/g)の水溶性分散剤を用いた。界面活性剤の純分濃度は、81%である。
(8)分散剤含有液(C8)
両性界面活性剤(酸価8mgKOH/g、アミン価18mgKOH/g)の水溶性分散剤を用いた。界面活性剤の純分濃度は、>98.5%である。
【0087】
2.消臭剤含有加工液の製造及び評価
表1に示した消臭剤組成物と、エマルションと、分散剤含有液と、水とを用いて、消臭剤含有加工液を製造し、各種物性の評価を行った。
【0088】
実施例1-1
消臭剤組成物(A3)15部と、エマルション(B1)9.1部と、分散剤含有液(C1)1.5部と、純水74.4部とを混合し、消臭剤含有加工液(L1)を製造した(表2参照)。その後、25℃におけるpHを測定し、B型粘度計(東機産業株式会社製、BL型、No.3ローター)を用いて、25℃における粘度を測定した。これらの結果を表2に併記した。
【0089】
実施例1-2
消臭剤組成物(A2)15部と、エマルション(B2)10部と、分散剤含有液(C4)2.5部と、純水72.5部とを混合し、消臭剤含有加工液(L2)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0090】
実施例1-3
消臭剤組成物(A1)12部と、エマルション(B3)15部と、分散剤含有液(C3)2部と、純水71部とを混合し、消臭剤含有加工液(L3)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0091】
実施例1-4
消臭剤組成物(A4)18部と、エマルション(B1)8.2部と、分散剤含有液(C1)1.5部と、純水72.3部とを混合し、消臭剤含有加工液(L4)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0092】
実施例1-5
消臭剤組成物(A5)15部と、エマルション(B4)16.7部と、分散剤含有液(C1)2部と、純水66.3部とを混合し、消臭剤含有加工液(L5)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0093】
実施例1-6
消臭剤組成物(A10)17部と、エマルション(B3)21.3部と、分散剤含有液(C3)2部と、純水59.7部とを混合し、消臭剤含有加工液(L6)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0094】
実施例1-7
消臭剤組成物(A9)16部と、エマルション(B3)10部と、分散剤含有液(C2)1.5部と、純水72.5部とを混合し、消臭剤含有加工液(L7)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0095】
実施例1-8
消臭剤組成物(A11)16部と、エマルション(B5)13.3部と、分散剤含有液(C2)1.5部と、純水69.2部とを混合し、消臭剤含有加工液(L8)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0096】
比較例1-1
消臭剤組成物(A3)15部と、エマルション(B1)9.1部と、純水75.9部とを混合し、消臭剤含有加工液(L9)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0097】
比較例1-2
消臭剤組成物(A7)15部と、エマルション(B3)18.8部と、分散剤含有液(C5)1部と、純水65.2部とを混合し、消臭剤含有加工液(L10)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0098】
比較例1-3
消臭剤組成物(A6)14部と、エマルション(B1)6.4部と、分散剤含有液(C7)1部と、純水78.6部とを混合し、消臭剤含有加工液(L11)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0099】
比較例1-4
消臭剤組成物(A5)15部と、エマルション(B4)16.7部と、分散剤含有液(C8)2部と、純水66.3部とを混合し、消臭剤含有加工液(L12)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pHを測定した(表2参照)。尚、粘度は、原料成分が凝集したため、測定することができなかった。
【0100】
比較例1-5
消臭剤組成物(A9)16部と、エマルション(B3)10部と、分散剤含有液(C6)1.5部と、純水72.5部とを混合し、消臭剤含有加工液(L13)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0101】
比較例1-6
消臭剤組成物(A8)12部と、エマルション(B5)10部と、分散剤含有液(C5)1部と、純水77部とを混合し、消臭剤含有加工液(L14)を製造した(表2参照)。その後、実施例1-1と同様にして、pH及び粘度を測定した(表2参照)。
【0102】
【0103】
表2から明らかなように、比較例1-1は、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を不使用とした例であり、得られた消臭剤含有加工液の粘度が高くなりすぎた。比較例1-2~1-6は、分散剤として、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を用いた例であり、得られた消臭剤含有加工液の粘度が高くなりすぎたか、あるいは、原料成分の凝集が発生した。一方、実施例1-1~1-8は、これらの不具合現象が発生せず、安定性に優れていた。
【0104】
3.消臭製品の製造及び評価
表2に示した消臭剤含有加工液及び以下の基材を用いて、各種消臭製品を製造し、消臭性の評価を行った。
(1)不織布シート
倉敷繊維加工社製ケミカルボンド不織布「TN60BT」を用いた。JISL1096に準ずる通気度は310cm3/(cm2・秒)、目付(坪量)は60g/m2である。
(2)紙
大塚商会社製「TANOSEE αエコペーパー タイプTR」(商品名)を用いた。坪量は66g/m2である。
(3)樹脂フィルム
東洋紡社製易接着PETフィルム「A4300」(商品名)を用いた。厚さは50μmである。
【0105】
実施例2-1
(1)消臭濾材の製造及び評価
25℃の消臭剤含有加工液(L1)に上記不織布シートを浸漬(5秒間)した。そして、これを、マングルを用いて絞った後、加熱乾燥(130℃、3分間)することにより、消臭濾材を得た。
得られた消臭濾材10を通気消臭試験に供し(
図2参照)、以下の方法で消臭性能を評価した。200体積ppmのホルムアルデヒドを含む空気(以下、「ホルムアルデヒド含有ガス」という)を収容した臭気袋20と、ガス検知管30との間に消臭濾材10をセットした。そして、気体採取器40により上記ホルムアルデヒド含有ガスを吸引させ、吸引力により、ホルムアルデヒド含有ガスを、消臭濾材10に通過させ、通過後のホルムアルデヒドの濃度をガス検知管30により測定した。尚、ホルムアルデヒド含有ガスの通気速度は、消臭濾材10の通過面積を制御することにより、調整が可能である。
消臭濾材10の通気消臭試験による臭気低減率(%)を、下記式により算出した。その結果を表3に示す。
【数1】
また、得られた消臭濾材を10cm×10cmの大きさに裁断して試験片を作製した。次いで、PVDO樹脂をコーティングしたPP樹脂製フィルムからなる袋(体積:3リットル)に収容し、これに、1500体積ppmのホルムアルデヒドを含む空気を封入した。この状態で静置(25℃、24時間)した後、ホルムアルデヒドの濃度を測定し、消臭率(以下、「24時間後消臭率」という)を算出した。その結果を表3に示す。
(2)消臭紙の製造及び評価
消臭剤含有加工液(L1)を上記紙の表面にバーコーティング(No.32)させた後、塗膜を加熱乾燥(130℃、3分間)することにより、消臭剤組成物がセルロース繊維に接着されてなる消臭紙を得た。
得られた消臭紙の消臭性(24時間後消臭率)を、上記消臭濾材と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
(3)消臭フィルムの製造及び評価
消臭剤含有加工液(L1)を上記樹脂フィルムの表面にバーコーティング(No.32)させた後、塗膜を加熱乾燥(130℃、3分間)することにより、皮膜厚さが約10μmの消臭フィルムを得た。
得られた消臭フィルムの消臭性(24時間後消臭率)を、上記消臭濾材と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0106】
実施例2-2
消臭剤含有加工液(L1)に代えて、消臭剤含有加工液(L2)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、消臭濾材、消臭紙及び消臭フィルムを製造し、各種評価を行った(表3参照)。
【0107】
実施例2-3
消臭剤含有加工液(L1)に代えて、消臭剤含有加工液(L3)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、消臭濾材、消臭紙及び消臭フィルムを製造し、各種評価を行った(表3参照)。
【0108】
実施例2-4
消臭剤含有加工液(L1)に代えて、消臭剤含有加工液(L4)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、消臭濾材、消臭紙及び消臭フィルムを製造し、各種評価を行った(表3参照)。
【0109】
実施例2-5
消臭剤含有加工液(L1)に代えて、消臭剤含有加工液(L5)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、消臭濾材、消臭紙及び消臭フィルムを製造し、各種評価を行った(表3参照)。
【0110】
実施例2-6
消臭剤含有加工液(L1)に代えて、消臭剤含有加工液(L6)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、消臭濾材、消臭紙及び消臭フィルムを製造し、各種評価を行った(表3参照)。
【0111】
実施例2-7
消臭剤含有加工液(L1)に代えて、消臭剤含有加工液(L7)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、消臭濾材、消臭紙及び消臭フィルムを製造し、各種評価を行った(表3参照)。
【0112】
実施例2-8
消臭剤含有加工液(L1)に代えて、消臭剤含有加工液(L8)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、消臭濾材、消臭紙及び消臭フィルムを製造し、各種評価を行った(表3参照)。
【0113】
比較例2-1~2-6
消臭剤含有加工液(L1)に代えて、消臭剤含有加工液(L9)、(L10)、(L11)、(L12)、(L13)又は(L14)を用いて、各種消臭製品の製造を試みたが、加工液の粘度が高すぎる又は含有成分の凝集により、これらを製造することができなかった(表3参照)。
【0114】
【0115】
実施例2-1~2-8の消臭製品(消臭フィルム、消臭紙及び消臭濾材)は、実施例1-1~1-8で得られた安定な消臭剤含有加工液(L1)~(L8)を用いて得られたものである。消臭剤含有加工液(L1)~(L8)は、各基材に対して、高濃度の複合化消臭剤を均一に添着させることができ、実施例2-1~2-8により得られた消臭製品は、消臭性能が十分に高いことを示した。
【0116】
本発明の実施形態によれば、アミノグアニジンの酸性塩と、このアミノグアニジン酸性塩を担持可能な無機担体とを組み合わせてなる消臭剤であって、アミノグアニジン酸性塩の無機担体に対する質量割合の高い消臭剤を担持させた場合に、凝集物が生成したり、液が増粘したりすることが抑制された消臭剤含有加工液を提供することができる。
また、本発明の実施形態によれば、塗布及び乾燥を繰り返すことによらず、消臭性能の高い消臭製品を効率よく製造する方法を提供することができる。
更に、本発明の実施形態によれば、アルデヒド系ガスに対して優れた消臭性能を有する消臭濾材及びそれを備える消臭フィルターユニット並びに消臭装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の消臭剤含有加工液は、繊維基材等への塗工が容易であり、アルデヒド系ガスの消臭性能に優れた各種消臭製品(消臭濾材、消臭紙、消臭フィルム等)の製造に好適である。
本発明により得られた消臭製品は、製品自身からアルデヒド系ガスを発生する材料、例えば、合板、集成材、フローリング材、パーティクルボード、断熱材等の建材、フロア-カーペット、消音パット、クッション材、カーシート、ヘッドレスト、アームレスト、トアトリム、成形天井、サンバイザー、リアパッケージトレイ、インストルメントパネル、ダッシュインシュレーサー等を扱う現場において、好適に使用することができる。
本発明の消臭濾材は、これを通過する悪臭ガスに含まれるアルデヒド系ガスに対して瞬時に高い消臭性能を発揮するため、本発明の消臭濾材を備える消臭装置とともに、医療・介護・排泄現場、下水処理場、ごみ処理場(焼却場)、肥料工場、化学工場等において好適である。
【符号の説明】
【0118】
10:消臭濾材、11:繊維、13:消臭剤(複合体)、15:接合部(接着剤樹脂及び分散剤)、20:臭気袋、30:ガス検知管、40:気体採取器