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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】露光装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240129BHJP
   G02B 7/182 20210101ALI20240129BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B7/182
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020018861
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021124634
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】木村 良一
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-095412(JP,A)
【文献】特開2008-292761(JP,A)
【文献】特開2015-079074(JP,A)
【文献】特開平10-092735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G02B 7/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターンの像を基板に投影し、前記基板を露光する露光装置であって、
前記パターンの像を前記基板に投影する投影光学系と、
前記投影光学系を収納する鏡筒と、
ガス供給手段から前記鏡筒内に供給されるガスの進行方向を設定する進行方向設定手段と、
前記基板を露光する露光時と非露光時とで、前記進行方向が異なるように前記進行方向設定手段を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記露光時において前記供給されたガスが前記投影光学系の光路を通過しないように前記進行方向設定手段を制御する一方で、前記非露光時においては前記供給されたガスが前記投影光学系の光路を通過するように前記進行方向設定手段を制御することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記進行方向設定手段は、前記鏡筒に設けられた可変ルーバーであることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記進行方向設定手段は、前記鏡筒に設けられた複数のガス供給口であることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
前記鏡筒には、前記鏡筒内におけるガスの進行路を制限するエアロパーツが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記進行方向設定手段は、前記鏡筒に設けられた可動エアロパーツであることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記非露光時において前記進行方向が変更されるように、前記進行方向設定手段を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記投影光学系の光路上をアライメント光が通過していない際に前記進行方向が変更されるように、前記進行方向設定手段を制御することを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基板が交換される際に前記進行方向が変更されるように、前記進行方向設定手段を制御することを特徴とする請求項またはに記載の露光装置。
【請求項9】
前記投影光学系の光路上における光量を検知する光量検知センサを備え、
前記制御部は、該光量検知センサの検知結果から前記基板のアライメントが行われているかどうか判断することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記鏡筒内の圧力を検知する圧力センサを備え、
該圧力センサの検知結果から前記圧力が静定したと判断した後、露光を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記基板を露光する工程と、
露光された前記基板を現像する工程と、
現像された前記基板を加工して物品を得る工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、露光装置において鏡筒内に設けられた光学素子が光照射によって発熱し、それにより鏡筒内のガスの屈折率が温度変化することで、結像性能が低下することが知られている。
そのため、露光装置の鏡筒内に温調ガスを供給することで、光学素子及びその周囲のガスを冷却することが行われている。
【0003】
一方、露光装置に設けられた鏡筒内の投影光学系の光路空間において露光時に温調ガスを供給すると、投影光学系の周囲においてガスの流速の差に伴って揺らぎが発生したり、投影光学系を構成する光学素子に振動が生じることで、結像性能が低下する虞がある。
特許文献1は、結像性能の低下を抑制するために、鏡筒内の投影光学系への温調ガス供給を露光時には行わず、非露光時にのみ行う露光装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-292761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている露光装置のように、露光時において鏡筒内への温調ガス供給を停止すると、鏡筒内の正圧が保たれなくなる。そのため、外部から入り込むガスによって、鏡筒内に設けられた光学素子においてケミカルコンタミネーションが発生する虞がある。
また、露光時において鏡筒内への温調ガス供給を停止すると、上記のように鏡筒内のガスの温度や圧力が変動することに伴って屈折率が変化することで、結像性能が低下してしまう。
そこで本発明は、露光による熱の影響を低減しつつ結像性能の低下を抑制することができる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る露光装置は、原版のパターンの像を基板に投影し、基板を露光する露光装置であって、パターンの像を基板に投影する投影光学系と、投影光学系を収納する鏡筒と、ガス供給手段から鏡筒内に供給されるガスの進行方向を設定する進行方向設定手段と、基板を露光する露光時と非露光時とで、進行方向が異なるように進行方向設定手段を制御する制御部とを備え、制御部は、露光時において供給されたガスが投影光学系の光路を通過しないように進行方向設定手段を制御する一方で、非露光時においては供給されたガスが投影光学系の光路を通過するように進行方向設定手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、露光による熱の影響を低減しつつ結像性能の低下を抑制することができる露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る露光装置の非露光時及び露光時における模式的断面図。
図2】第一実施形態に係る露光装置におけるルーバーの切り替え制御を示したフローチャート。
図3】第二実施形態に係る露光装置の露光時における模式的断面図。
図4】第三実施形態に係る露光装置の露光時における模式的断面図。
図5】第四実施形態に係る露光装置の露光時における模式的断面図。
図6】第五実施形態に係る露光装置の露光時における模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態に係る露光装置を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す図面は、本実施形態を容易に理解できるようにするために、実際とは異なる縮尺で描かれている。
なお、以下の説明では、プレート4の感光面に垂直な方向をZ方向、プレート4の感光面内において互いに直交する二方向をそれぞれX方向及びY方向とする。
【0010】
[第一実施形態]
図1(a)及び(b)はそれぞれ、第一実施形態に係る光学装置を備える露光装置100の非露光時及び露光時における模式的断面図を示している。
【0011】
本実施形態に係る光学装置を備える露光装置100は、照明系1、アライメントスコープ2、投影光学系5(光学素子)、鏡筒11、制御部18及び圧力センサ19を備えている。
また、図1(a)及び(b)に示されているように、投影光学系5は、反射ミラー7、凹面鏡8、凸面鏡9を備えている。
【0012】
また、図1(a)及び(b)に示されているように、鏡筒11には、排気口14、給気口15及びルーバー16(進行方向設定手段、可変ルーバー)が設けられている。
本実施形態に係る光学装置は、投影光学系5、鏡筒11、ルーバー16、制御部18及び圧力センサ19から構成される。
【0013】
露光装置100では、照明系1からの照明光12(露光光)がマスク3(原版)を通過した後、投影光学系5を介してプレート4(基板)に照射されることで、マスク3に描画されているパターンの像がプレート4上の感光体に投影(転写)される。
そして、露光装置100では、マスク3が載置される不図示のマスクステージとプレート4が載置される不図示のプレートステージとが、Y方向に沿って互いに同期して走査される。
なお一般的には、鏡筒11や露光装置100の各構成部品は、その性能を保証するために不図示の温調チャンバ内に設置される。
【0014】
また、給気口15は不図示のガス供給手段と連通しており、給気口15を介してガス供給手段から鏡筒11内に温調されたガス17(以下、温調ガスという。)が供給される。
そして、ルーバー16によって給気口15から供給された温調ガス17の進行方向が設定される。
【0015】
例えば、露光装置100のようなミラープロジェクション方式の露光装置を用いてフォトリソグラフィー法によって液晶パネル等を製造する際には、精細度を向上することが必要とされる場合がある。
その場合、プレート4上の感光体への露光光12の照射量を増加させるために、照明系1の照度を上げると共に、プレート4が載置される不図示のプレートステージの走査速度を下げることが考えられる。
ここで、プレート4上の感光体へ照射される単位時間あたりのエネルギーを露光量(DOSE)としたとき、このような露光プロセスを高DOSE露光プロセス(高負荷露光プロセス、高エネルギー入射プロセス)と呼ぶことができる。
【0016】
そして、このような高DOSE露光プロセスを行うと、通常DOSE露光プロセスと比較して、鏡筒11内の温度が高くなる。
これは、投影光学系5に含まれる光学素子に入射する露光光12のエネルギーが大きくなり、光学素子が大きく発熱することで、光学素子の周囲のガスが暖められるからである。
【0017】
そして、光学素子の発熱によって暖められたガスはZ方向上方に移動するため、鏡筒11の内部においてZ方向上方にあるガスの温度は下方に比べて高くなる。
これにより、温度が上昇したZ方向上方にあるガスの屈折率が変化するため、このような状態において露光プロセスを行うと、通常DOSE露光プロセスと比較して結像性能が低下する虞がある。
【0018】
特に、本実施形態のようなミラープロジェクションタイプの露光装置に設けられている投影光学系5は、露光光12の入射方向及び出射方向に平行な鉛直方向(Z方向)に交差する方向に延在する光軸を有する凹面鏡8及び凸面鏡9を備えている。
そのため、凹面鏡8や凸面鏡9の鉛直方向上下それぞれの周囲のガスの間で上記に示したような温度差が生じ、像高に応じた結像性能の低下が顕著になってしまう。
【0019】
そこで、露光装置の鏡筒内のそのような温度差を低減することで結像性能の低下を抑制するために、鏡筒内に温調ガスを供給することで鏡筒内の光学素子を冷却することが行われている。
【0020】
一方、鏡筒11内の露光光12の光路上(光路空間)に温調ガスを供給すると、凹面鏡8や凸面鏡9の周囲におけるガス間の流速の差に伴って揺らぎが発生したり、凹面鏡8や凸面鏡9に振動が生じることで、結像性能が低下する虞がある。
そのため、露光時やアライメント時には一時的に温調ガスの供給を停止することで、結像性能の低下を抑制する方法も知られている。
【0021】
しかしながら、温調ガスの供給を一時的に停止すると、鏡筒11内の正圧が保持されず、外部から入り込むガスによって、鏡筒11内の光学素子においてケミカルコンタミネーションが発生する虞がある。
また、鏡筒11内のガスの温度や圧力が変動することに伴って屈折率が変化することで、結像性能が不安定になってしまう。
【0022】
そこで、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置100では、以下に示すような制御を行うことで、上記に示したような課題を解決することができる。
【0023】
図2は、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置100におけるルーバー16の切り替え制御を示したフローチャートである。なお、以下に示す制御は、制御部18によって行われる。
【0024】
まず、露光装置100において露光処理の指令が発行されたか判断する(ステップS1)。もし、露光処理の指令が発行されていない、すなわち露光装置100が非露光時にある場合には(ステップS1のNo)、温調ガスが鏡筒11の光路空間内に供給されるようにルーバー16の向きを設定する(ステップS2)。換言すると、ステップS2ではルーバー16によって温調ガスが鏡筒11の光路空間内に供給されるように温調ガスの進行方向が設定(変更)される。その後、ステップS1に戻る。
【0025】
一方、露光処理の指令が発行された、すなわち露光装置100が露光処理を行う場合には(ステップS1のYes)、温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きを設定する(ステップS3)。換言すると、ステップS3ではルーバー16によって温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるように温調ガスの進行方向が設定(変更)される。その後、露光を開始する(ステップS4)。
そして、露光が終了する、すなわち露光装置100が非露光時になると(ステップS5)、温調ガスが鏡筒11の光路空間内に供給されるようにルーバー16の向きを設定し(ステップS6)、ステップS1に戻る。
【0026】
上記のように、露光装置100では、露光時において温調ガスが投影光学系5の光路を通過しないように温調ガスの進行方向が設定される一方で、非露光時においては温調ガスが投影光学系5の光路を通過するように温調ガスの進行方向が設定される。
【0027】
なお、上記の制御においては、ステップS3において温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きを設定した後、鏡筒11内の圧力が静定してからステップS4において露光を開始することが好ましい。
そのため、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置100では、鏡筒11内の圧力を監視するための圧力センサ19が設けられている。
【0028】
また、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置100では、ステップS3におけるルーバー16の向きの切り替え(設定)は、特にプレート4を交換する際に行うようにタイミング制御されることが好ましい。
なおこれに限らず、複数ロットのプレート4を処理する際に各ロット間において露光動作を待機している際にルーバー16の向きを切り替えても構わない。
また、プレート4に対してアライメント処理をしている、すなわち投影光学系5の光路上をアライメント光が通過している際には、ルーバー16の向きの切り替えを行わない方が好ましい。
【0029】
また、露光装置100では、鏡筒11の内部空間は外部からのエアの引き込みを抑制するために弱正圧となっており、具体的には、大気圧+約1Paとなっている。
一方、従来の露光装置のように鏡筒11内への温調ガス供給を停止すると、鏡筒11の内部空間の圧力は大気圧に変化する。
【0030】
ここで、鏡筒11内に温調ガスを供給している際の鏡筒11内のガスの屈折率、すなわち大気圧+約1Paにおけるガスの屈折率をnとする。そして、鏡筒11内への温調ガスの供給を停止している際の鏡筒11内のガスの屈折率、すなわち大気圧におけるガスの屈折率をnとする。
このとき、鏡筒11内への温調ガス供給の停止に伴うガスの屈折率の変化Δnは、以下の式(1)から求めることができる。
Δn=n-n ・・・(1)
【0031】
また、ここで鏡筒11内に供給される温調ガスを空気とすると、屈折率n及びnはそれぞれ、以下の式(2)に示されるエドレンの式から算出することができる。
【数1】
【0032】
ここで、鏡筒11内に空気を供給している際の鏡筒11内の圧力Pを101309Pa、鏡筒11内への空気の供給を停止している際の鏡筒11内の圧力Pを101308Paとする。
そして、温度T及び湿度Hはそれぞれ、23度及び50%のまま変化しないとすると、屈折率の変化Δnは式(2)から2.66×10-9と求めることができる。
この屈折率の変化は、結像性能に影響を与える。具体的には、屈折率の変化は、光路の長さに比例してフォーカスやディストーションのずれを引き起こし、これらのずれによってマスク3からプレート4へ転写されるパターンの線幅が広がる等、結像性能の低下につながる。
【0033】
また、露光時に鏡筒11内の光路空間に温調ガスを供給すると、光学素子の周囲におけるガス間の流速の差に伴って揺らぎが発生したり、光学素子に振動が生じることで、オーバーレイ(重ね合わせ)精度が低下する虞がある。
【0034】
そこで本願発明者は、そのようなオーバーレイ精度の低下を検討するために、露光時に鏡筒11内の光路空間へ空気供給を行った場合と行わなかった場合とを比較した。
具体的には、アライメントスコープ2、マスク3及びプレート4を用いたアライメント機構における計測再現性を評価した。
その結果、露光時に鏡筒11内の光路空間へ空気供給を行った場合は、行わなかった場合に比べてアライメント機構における計測再現性が40%低下することが見いだされた。
このようにアライメント機構における計測再現性が低下すると、アライメントにおけるずれ等につながり、オーバーレイ精度が低下する。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置100では、非露光時には温調ガスが鏡筒11の光路空間内に供給されるようにルーバー16の向きを設定する。一方で、露光時には温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きを設定する。
【0036】
これにより、温調ガスの供給は停止していないため露光時と非露光時とで鏡筒11内の圧力は変化しない、すなわち鏡筒11内のガスの屈折率は変化しない。そのため、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置100では、屈折率の変化に伴う結像性能の低下を抑制することができる。
また、露光時において、温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きを切り替えるため、上記に示したようなオーバーレイ精度の低下も抑制することができる。
【0037】
なお、本実施形態に係る光学装置では、図1(a)及び(b)に示されているように、排気口14及び給気口15はそれぞれ、4箇所及び1箇所設けられている。しかしながら、排気口14及び給気口15の数はこれに限られない。
また、本実施形態に係る光学装置では、鏡筒11へ供給されるガス及び鏡筒11から排出されるガスは空気としているが、これに限られない。例えば、鏡筒11内の投影光学系5に悪影響を及ぼさずに鏡筒11内を温調することができるものであれば、不活性ガス等他のガスを用いても構わない。
【0038】
[第二実施形態]
図3は、第二実施形態に係る光学装置を備える露光装置200の露光時における模式的断面図を示している。
なお、本実施形態に係る光学装置は、ルーバー16の代わりに非露光時供給口20a及び露光時供給口20bが設けられている以外は、第一実施形態に係る光学装置と同一の構成であるため、同一の部材には同一の付番を付して、説明を省略する。
【0039】
図3に示されているように、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置200では、露光時においては温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるように、露光時供給口20b(ガス供給口)から鏡筒11内へ温調ガスを供給する。
一方、非露光時には温調ガスが鏡筒11の光路空間内に供給されるように非露光時供給口20a(ガス供給口)から鏡筒11内へ温調ガスを供給する。
【0040】
これにより、露光時と非露光時とで鏡筒11内の圧力は変化しない、すなわち鏡筒11内のガスの屈折率が変化しないため、屈折率の変化に伴う結像性能の低下を抑制することができる。
また、露光時において、温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるように露光時供給口20bから鏡筒11内へ温調ガスを供給しているため、オーバーレイ精度の低下も抑制することができる。
【0041】
[第三実施形態]
図4は、第三実施形態に係る光学装置を備える露光装置300の露光時における模式的断面図を示している。
なお、本実施形態に係る光学装置は、エアロパーツ21が新たに設けられている以外は、第一実施形態に係る光学装置と同一の構成であるため、同一の部材には同一の付番を付して、説明を省略する。
【0042】
図4に示されているように、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置300では、露光時において温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きが設定されている。そして、露光時においてルーバー16を通過した温調ガスが所定の排気口14に向かうように、エアロパーツ21が設けられている。換言すると、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置300では、エアロパーツ21によって鏡筒11内における温調ガスの進行路が制限されている。
これにより、所定の排気口14への温調ガスの指向性をより高めることができる。なお、エアロパーツ21のX方向における長さは、鏡筒11の内部空間のX方向における幅と略同一となっている。
【0043】
そして、第一実施形態に係る光学装置と同様に、非露光時には温調ガスが鏡筒11の光路空間内に供給されるようにルーバー16の向きを設定する。一方で、露光時には温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きを設定する。
これにより、露光時と非露光時とで鏡筒11内の圧力は変化しない、すなわち鏡筒11内のガスの屈折率が変化しないため、屈折率の変化に伴う結像性能の低下を抑制することができる。
また、露光時において、温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きを切り替えるため、上記に示したようなオーバーレイ精度の低下も抑制することができる。
【0044】
[第四実施形態]
図5は、第四実施形態に係る光学装置を備える露光装置400の露光時における模式的断面図を示している。
なお、本実施形態に係る光学装置は、ルーバー16の代わりに可動エアロパーツ22が設けられている以外は、第一実施形態に係る光学装置と同一の構成であるため、同一の部材には同一の付番を付して、説明を省略する。
【0045】
図5に示されているように、本実施形態に係る光学装置を備える露光装置400では、露光時において可動エアロパーツ22のYZ断面内における中心が位置P1に配置されるように、可動エアロパーツ22を移動させる。これにより、露光時においては温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給される。
一方、非露光時においては可動エアロパーツ22のYZ断面内における中心が位置P2に配置されるように、可動エアロパーツ22を移動させる。これにより、非露光時においては温調ガスが鏡筒11の光路空間内に供給される。
なお、可動エアロパーツ22のX方向における長さは、鏡筒11の内部空間のX方向における幅と略同一となっている。
【0046】
これにより、露光時と非露光時とで鏡筒11内の圧力は変化しない、すなわち鏡筒11内のガスの屈折率が変化しないため、屈折率の変化に伴う結像性能の低下を抑制することができる。
また、露光時において、温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるように可動エアロパーツ22を移動させているため、オーバーレイ精度の低下も抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態に係る光学装置では、露光時と非露光時とで可動エアロパーツ22を移動させているが、これに限らず、可動エアロパーツ22の大きさや形状を変化させても構わない。
【0048】
[第五実施形態]
図6は、第五実施形態に係る光学装置を備える露光装置500の露光時における模式的断面図を示している。
なお、本実施形態に係る光学装置は、光量検知センサ24が新たに設けられている以外は、第一実施形態に係る光学装置と同一の構成であるため、同一の部材には同一の付番を付して、説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る光学装置を備える露光装置500では、図6に示されているように、鏡筒11内の投影光学系5の光路上に光量検知センサ24を設けている。これにより、特にプレート4に対するアライメント処理において投影光学系5の光路上をアライメント光が通過しているかどうか検出することができる。
上記で述べたように、プレート4のアライメント時にはルーバー16の向きは切り替えない方が好ましい。
そのため、露光装置500ではアライメントが行われていないとき、すなわち光量検知センサ24の検知結果から投影光学系5の光路上をアライメント光が通過していないときに温調ガスが鏡筒11の光路空間内に供給されるようにルーバー16の向きを設定する。一方で、非露光時、具体的には露光開始の直前において温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きを設定する。
【0050】
これにより、露光時と非露光時とで鏡筒11内の圧力は変化しない、すなわち鏡筒11内のガスの屈折率が変化しないため、屈折率の変化に伴う結像性能の低下を抑制することができる。
また、露光時において、温調ガスが鏡筒11の光路空間外に供給されるようにルーバー16の向きを設定するため、上記に示したようなオーバーレイ精度の低下も抑制することができる。
【0051】
なお、本実施形態に係る光学装置では光量検知センサ24を設けているが、これに限らず熱量検知センサを設けても構わない。
【0052】
以上、好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0053】
[物品の製造方法]
次に、第一乃至第五実施形態のいずれかに係る光学装置を備える露光装置を用いた物品の製造方法について説明する。
【0054】
物品は、半導体デバイス、表示デバイス、カラーフィルタ、光学部品、MEMS等である。
例えば、半導体デバイスは、ウエハに回路パターンを作るための前工程と、前工程で作られた回路チップを製品として完成させるための、加工工程を含む後工程とを経ることにより製造される。
前工程は、第一乃至第五実施形態のいずれかに係る光学装置を備える露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する露光工程と、感光剤を現像する現像工程とを含む。
【0055】
現像された感光剤のパターンをマスクとしてエッチング工程やイオン注入工程等が行われ、ウエハ上に回路パターンが形成される。
これらの露光、現像、エッチング等の工程を繰り返して、ウエハ上に複数の層からなる回路パターンが形成される。
後工程で、回路パターンが形成されたウエハに対してダイシングを行い、チップのマウンティング、ボンディング、検査工程を行う。
【0056】
表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラスウエハに感光剤を塗布する工程と、第一乃至第五実施形態のいずれかに係る光学装置を備える露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラスウエハを露光する工程とを含む。また、透明電極を形成する工程は、露光された感光剤を現像する工程を含む。
【0057】
本実施形態に係る物品の製造方法によれば、従来よりも高品位且つ高生産性の物品を製造することができる。
【符号の説明】
【0058】
5 投影光学
11 鏡筒
16 ルーバー(進行方向設定手段)
18 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6