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特許7427462マスキングテープ巻取装置および巻取方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】マスキングテープ巻取装置および巻取方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/198 20060101AFI20240129BHJP
   B65H 23/192 20060101ALI20240129BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20240129BHJP
   B65H 41/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B65H23/198
B65H23/192
C25D5/02 H
B65H41/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020019479
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021123487
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】根本 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】伊波 周吾
(72)【発明者】
【氏名】三島 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-124431(JP,A)
【文献】特開平06-297022(JP,A)
【文献】特開平10-167534(JP,A)
【文献】特開平02-095671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/198
B65H 23/192
C25D 5/02
B65H 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する条材から剥ぎ取られたマスキングテープを回収する巻取装置であって、
前記条材から剥ぎ取られた前記マスキングテープを引っ掛ける支点ロールと、
前記支点ロールの下流側で前記マスキングテープを引っ張る剥ぎ取りブライドルロールと、
前記剥ぎ取りブライドルロールの下流側で、剥ぎ取られた前記マスキングテープが巻き付けられる巻き取りロールと、を備え、
前記剥ぎ取りブライドルロールおよび前記巻き取りロールはそれぞれロールを回転させる駆動装置を備え
前記剥ぎ取りブライドルロールと前記支点ロールとの距離の可変機能を備えていることを特徴とする、マスキングテープ巻取装置。
【請求項2】
前記条材の走行速度に基づいて前記剥ぎ取りブライドルロールの回転速度を制御する機能を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のマスキングテープ巻取装置。
【請求項3】
前記巻き取りロールの回転トルクを制御する機能を備えていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のマスキングテープ巻取装置。
【請求項4】
走行する条材からマスキングテープを回収する巻取方法であって、
条材からマスキングテープの前端部を剥ぎ取って、前記マスキングテープを支点ロールおよび前記支点ロールの下流側の剥ぎ取りブライドルロールへ順に引っ掛け、さらに巻き取りロールに巻き付けた後、
前記剥ぎ取りブライドルロールおよび前記巻き取りロールに設けられた駆動装置でそれぞれのロールを回転させることにより、前記マスキングテープを条材から剥離して前記巻き取りロールに巻き取り、
前記条材から剥ぎ取ったマスキングテープの前端部を、前記巻き取りロールに巻き付けた後、前記剥ぎ取りブライドルロールと前記支点ロールとの距離を近づけて、その後、前記剥ぎ取りブライドルロールおよび前記巻き取りロールを回転させることを特徴とする、マスキングテープ巻取方法。
【請求項5】
前記条材の走行速度よりも速くなるように、前記剥ぎ取りブライドルロールの回転速度を設定することを特徴とする、請求項4に記載のマスキングテープ巻取方法。
【請求項6】
前記巻き取りロールの回転トルクを制御することを特徴とする、請求項4または5のいずれか一項に記載のマスキングテープ巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、条材に貼り付けられたマスキングテープを回収するためのマスキングテープ巻取装置および巻取方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属や樹脂などの材料の条材に対して部分めっき処理を行う場合、条材表面の所望の部分のみをめっきすることができるように、めっき処理が不要な部分にマスキングテープを貼り付けて、その状態でめっき処理を行う手法がある。
【0003】
具体的には、例えば条材表面の一方の面のみにめっきを施す場合には、他方の面全体にマスキングテープを貼り付ける。また、条材に所謂ストライプめっきを施す場合には、条材表面の一部分にマスキングテープを貼り付ける。このようにマスキングテープを貼り付けた状態でめっき処理を行うと、条材表面のマスキングテープを貼り付けた部分を除く、その他の部分にめっきが施される。
【0004】
条材に貼り付けたマスキングテープは、めっき処理後に剥ぎ取られて回収される。めっき処理の対象となる条材の長さは非常に長いため、マスキングテープの回収作業には、一般に、めっき処理ラインを走行する条材の走行速度に連動したマスキングテープ巻取装置が使用される。
【0005】
従来のマスキングテープ巻取装置として、例えば特許文献1には、走行する条材からマスキングテープが剥がれ始める位置を撮影装置で撮影し、撮影された剥がれ位置の位置情報に基づいて、マスキングテープが巻き付けられるボビンの回転速度を自動的に変更するように制御される巻取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-124431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
条材に貼り付けられた複数のマスキングテープを、めっき処理などの加工を実施した後に剥離して巻き取る場合、従来の巻取装置では複数のマスキングテープのそれぞれの伸びに相違が生じ、マスキングテープが弛んだり切れたりする不具合が発生することがある。複数のマスキングテープは、幅や貼り付け位置や種類などの違いにより、条材から剥離して巻き取る際に、不均一に剥離されたり、空気の混入やしわなどが発生し、マスキングテープを巻き取る巻き取りロールにマスキングテープが不均一に巻き取られ、複数のマスキングテープそれぞれに対応する巻取径(巻き取りロールにマスキングテープが巻き付いた状態の径)が異なってくることがある。巻取径が異なると、1回転当たりに巻き取られるマスキングテープの量が異なり、一部のマスキングテープが弛み、剥離できなくなったり、一部のマスキンテープが強く引っ張られて切れたりする不具合が発生すると考えられる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、走行する条材から幅や貼り付け位置や種類が異なる複数のマスキングテープを剥がす場合でも均一に剥離でき、容易且つ円滑に巻き取ることができるマスキングテープの巻取装置および巻取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、走行する条材から剥ぎ取られたマスキングテープを回収する巻取装置であって、前記条材から剥ぎ取られた前記マスキングテープを引っ掛ける支点ロールと、前記支点ロールの下流側で前記マスキングテープを引っ張る剥ぎ取りブライドルロールと、前記剥ぎ取りブライドルロールの下流側で、剥ぎ取られた前記マスキングテープが巻き付けられる巻き取りロールと、を備え、前記剥ぎ取りブライドルロールおよび前記巻き取りロールはそれぞれロールを回転させる駆動装置を備え 前記剥ぎ取りブライドルロールと前記支点ロールとの距離の可変機能を備えていることを特徴とする、マスキングテープ巻取装置が提供される。
【0010】
このマスキングテープの巻取方法において、前記条材の走行速度に基づいて前記剥ぎ取りブライドルロールの回転速度を制御する機能を備えていることが好ましい。さらに、前記巻き取りロールの回転トルクを制御する機能を備えていることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、走行する条材からマスキングテープを回収する巻取方法であって、条材からマスキングテープの前端部を剥ぎ取って、前記マスキングテープを支点ロールおよび前記支点ロールの下流側の剥ぎ取りブライドルロールへ順に引っ掛け、さらに巻き取りロールに巻き付けた後、前記剥ぎ取りブライドルロールおよび前記巻き取りロールに設けられた駆動装置でそれぞれのロールを回転させることにより、前記マスキングテープを条材から剥離して前記巻き取りロールに巻き取り、前記条材から剥ぎ取ったマスキングテープの前端部を、前記巻き取りロールに巻き付けた後、前記剥ぎ取りブライドルロールと前記支点ロールとの距離を近づけて、その後、前記剥ぎ取りブライドルロールおよび前記巻き取りロールを回転させることを特徴とする、マスキングテープ巻取方法が提供される。
【0012】
このマスキングテープの巻取方法において、前記条材の走行速度よりも速くなるように、前記剥ぎ取りブライドルロールの回転速度を設定してもよい。また、前記巻き取りロールの回転トルクを制御してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマスキングテープ巻取装置および巻取方法にあっては、走行する条材から幅や貼り付け位置や種類が異なる複数のマスキングテープを同時に剥がす場合でも均一に剥離でき、マスキングテープを円滑に巻き取り回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るマスキングテープ巻取装置の概略構成を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る剥ぎ取りブライドルロールの移動機構例の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、マスキングテープが貼り付けられた金属等の条材の少なくとも一方の面にストライプ状の部分めっきを行うフープめっき(リールtoリールめっき)へ好適に適用される。そこで、以下、本発明の実施形態として、フープめっきラインに設けられたマスキングテープを巻き取る巻取装置(以下、単に「巻取装置」という)に基づいて説明する。なお、フープめっきラインの具体的な工程は、金属条材の送り出し(アンコイラー(巻出機))工程、めっき工程(めっき加工装置)、マスキングテープの剥ぎ取り工程(マスキングテープ巻取装置)、金属条材の巻き取り(リール(巻取機))工程の順となっている。本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
本発明にかかる巻取装置1は、走行する帯状の条材2の少なくとも一方の面側に備えられ、図1に示す本実施形態では、条材2を挟んで両面側に巻取部1a、1bを備えている。図1中、X方向が条材2の搬送方向であり、条材2は右から左に向かって走行する。すなわち、図1中、右側が上流側であり、左側が下流側である。なお、図示はしないが、巻取装置1の上流側には、条材2を送り出すアンコイラー(条材巻出機)や、条材2にめっき処理を行うめっき装置が配置されており、アンコイラーから送り出され、めっき装置でめっき処理された条材2が、連続的に巻取装置1に導入される。さらに、巻取装置1の上流側に、条材2の走行速度を変化させるアキューム機構を設けてもよい。また、図示はしないが、巻取装置1の下流側には、条材2を巻き取るリール(条材巻取機)が配置され、巻取装置1でマスキングテープ3が剥ぎ取られた後の条材2が、リール(条材巻取機)で巻き取られる。
【0017】
図1に示す実施形態においては、巻取装置1は、条材2を挟んで両面側に2つの巻取部1a、1bを備えており、図1において条材2の走行方向右側の巻取部1aで条材2の一方の面のマスキングテープ3を巻き取り、条材2の進行方向左側の巻取部1bで他方の面のマスキングテープ3を巻き取るように構成されている。巻取部1a、1bは同様の構成を有しているため、以下の説明においては、巻取部1aと重複する内容の巻取部1bの説明については省略する。
【0018】
巻取装置1には、X方向に走行する条材2の下方に支持台10が設けられている。支持台10の上面には、図1に示すように、巻取装置1内に導入された条材2の表面を加熱するヒーター11(パネルヒーター等)が設けることが好ましい。ヒーター11は、本発明において必須の構成ではないが、ヒーター11を設けることにより、マスキングテープ3の粘着力を弱めて、条材2からマスキングテープ3を剥がしやすくなる。
【0019】
巻取部1aは、複数例えば2つのガイドロール12と、ガイドロール12とは条材2を挟んで反対側に配置された支点ロール13を備えている。各ガイドロール12は、支持台10の上面において、走行する条材2に接するように配置される。支点ロール13は、マスキングテープ3の巻き取り時に、条材2から剥ぎ取られたマスキングテープ3の前端部が引っ掛けられ、マスキングテープ3が条材2から剥がす支点となる。支点ロール13の直径は、例えば70mm程度である。
【0020】
さらに、巻取部1aには、台14が設けられている。台14は、支持台10と同等の高さを有することができる。台14の上面には、支点ロール13を介して条材2の一方の面から剥がされたマスキングテープ3を引っ張る剥ぎ取りブライドルロール15と、剥ぎ取りブライドルロール15から送られたマスキングテープ3を巻き取る巻き取りロール16とが設けられている。つまり、剥ぎ取られたマスキングテープ3の走行方向に対して、支点ロール13の下流側に剥ぎ取りブライドルロール15、剥ぎ取りブライドルロール15の下流側に巻き取りロール16が設けられている。剥ぎ取りブライドルロール15は、例えば直径が200mm程度、巻き取りロール16は、例えば直径が115mm程度である。
【0021】
剥ぎ取りブライドルロール15および巻き取りロール16は、それぞれに、ロールを回転させる駆動装置15a、16aを備えている。剥ぎ取りブライドルロール15の駆動装置15aは、条材2の走行速度に基づいて、剥離したマスキングテープ3が所定の張力を維持するように、剥ぎ取りブライドルロール15の回転速度を制御(設定)する機能を備えていることが好ましい。巻き取りロール16の駆動装置16aは、剥ぎ取りブライドルロール15から搬送されるマスキングテープ3によって巻き取りロール16に加わる負荷に応じて、マスキングテープ3の張力が一定になり、マスキングテープ3が弛まないように、回転トルクを制御する機能を備えていることが好ましい。
【0022】
以上のように、本発明のマスキングテープ巻取装置1は、剥ぎ取りブライドルロール15および巻き取りロール16にそれぞれ駆動を持たせ、好ましくはそれぞれの回転を制御することで、マスキングテープ3の弛みが生じるのを抑制、もしくはマスキングテープ3が切れないようにしながら巻き付けることができる。
【0023】
さらに、本実施形態では、剥ぎ取りブライドルロール15は、支点ロール13との距離が可変であり、適宜調整できるようになっていることが好ましい。図2は、距離調整のための可変機能の一例を示すものであり、レール21に沿って往復移動が可能な架台22に、剥ぎ取りブライドルロール15およびその駆動装置15aが取り付けられる。架台22が、例えばハンドル23の手動操作によって、あるいは遠隔操作等の他の手段によって、レール21上を移動することにより、剥ぎ取りブライドルロール15を支点ロール13に近づけたり、離したりすることができる。剥ぎ取りブライドルロール15と支点ロール13との距離が長いと、マスキングテープ3に張力がかかった状態で空中を搬送される区間が長くなるため、マスキングテープ3の伸び量が大きくなる。したがって、殊にマスキングテープ3の幅が細い場合や、粘着力が強い場合等、マスキングテープ3が伸びやすいときには、なるべく剥ぎ取りブライドルロール15と支点ロール13との距離が短くなるように、剥ぎ取りブライドルロール15の位置を移動することで、マスキングテープ3の伸び量を抑制することが好ましい。
【0024】
条材2の他方の面から剥ぎ取ったマスキングテープ3を巻き取る巻取部1bも同様の構成を有しているため、共通の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
次に、上記構成の巻取装置1を用いて、条材2からマスキングテープ3を剥ぎ取って回収する方法について説明する。
【0026】
図1に示すように、巻取装置1に導入された条材2は、ヒーター11で加熱された後、条材2の走行方向に対して左右両面側に巻取部1a、1bを備えた巻取装置1へ搬送される。巻取装置1に条材2を導入する際は、先ず、図示しないダミー材をアンコイラーから送り出して、図示しないめっき装置及び巻取装置1に導入し、ダミー材の後端と条材2の先端とを接続することにより、ダミー材に引き続いてアンコイラーから送り出した条材2を巻取装置1に導入する。なお、ダミー材を送り出すアンコイラーと、条材2を送り出すアンコイラーを、別に設けても良い。
【0027】
巻取部1a(1b)において条材2からマスキングテープ3が回収される手順としては、まず、ダミー材に引き続いて条材2の先端が巻取部1aに到達した後、作業者が条材2の一方の面に貼り付けられたマスキングテープ3の前端部を剥ぎ取る。そして、マスキングテープ3の前端部を引っ張りながら、後続のマスキングテープ3を適宜長さまで剥がしていく。
【0028】
剥がしたマスキングテープ3がある程度の長さとなったら、支点ロール13および剥ぎ取りブライドルロール15へ順にマスキングテープ3を引っ掛け、さらに巻き取りロール16にマスキングテープ3を巻き付ける。このとき、剥ぎ取ったマスキングテープ3を巻き取りロール16まで引っ掛ける作業が行いやすいように、すなわち、それぞれのロールにマスキングテープ3を引っ掛ける作業者の手が十分に入りやすいように、剥ぎ取りブライドルロール15と支点ロール13との距離を適宜離しておく。マスキングテープ3が巻き取りロール16に巻き付いたことを確認した後、剥ぎ取りブライドルロール15を支点ロール13に向けて移動させて、支点ロール13との距離をできるだけ近づけることが好ましい。このときの距離は、各ロールの回転を邪魔しない範囲で極力接近させることが好ましい。具体的には、例えば各ロールの外周同士の距離が0.5~20mm程度が好ましく、1~10mm程度がさらに好ましい。
【0029】
その後、駆動装置15a、16aを作動させて、マスキングテープ3が所定の張力で巻き取られるように、剥ぎ取りブライドルロール15および巻き取りロール16の回転を制御する。なお、マスキングテープ3の張力は、例えば図1に示すように、マスキングテープ3の搬送経路の途中に張力センサ17を設けて測定してもよい。剥ぎ取りブライドルロール15は、条材2の搬送速度とほぼ一致、または、マスキングテープ3の伸び量を考慮して一定の速度差を維持するように、速度制御される。通常、条材2から剥がされたマスキングテープ3は若干伸びながら巻き付けられるため、条材2の搬送速度よりも例えば1~数%程度速く回転するように剥ぎ取りブライドルロール15の回転速度を制御するのが好ましい。これにより、条材2の一方の面から剥ぎ取られたマスキングテープ3は、走行する条材2の走行速度に応じて自動的に剥ぎ取られ、巻き取りロール16に巻き取られていく。剥ぎ取りブライドルロール15の直径は、巻き取りロール16の巻取径のように変化することはないため、一定の張力でマスキングテープ3を条材2から剥離することができ、テープの弛みによる剥ぎ取りの遅れを抑制し、また引っ張りすぎてテープが切れるのを防止し、安定してマスキングテープを剥離することができる。
【0030】
さらに、剥ぎ取りブライドルロール15と巻き取りロール16との間のマスキングテープ3の張力が一定になるように、巻き取りロール16の回転トルクの制御、すなわち、回転トルクが設定値になるように回転数を調整することが好ましい。マスキングテープ3の張力が一定になるようにするには、巻き取りロール16の回転トルクを一定にすればよい。これにより、巻き取りロール16に巻き取られるマスキングテープ3の巻き取りムラを抑制して巻取径の変動を小さくし、良好にマスキングテープ3を巻き取ることができる。
【0031】
なお、剥ぎ取りブライドルロール15に駆動装置15aを設けず、巻き取りロール16のみに駆動装置16aを設けてマスキングテープ3を剥離して巻き取りロール16に巻き取ると、複数のマスキングテープ3においてその幅や上下方向の貼り付け位置や種類などの違いにより、マスキングテープ3が巻き取りロール16に不均一に巻き取られ、それぞれのマスキングテープ3が異なる巻取径で巻き取られる状況が発生する。このため、条材2からマスキングテープ3を均一に剥離することができず、マスキングテープ3に弛みが発生して剥離の遅れが発生したり、また、引っ張り過ぎて切れたりする不具合が発生する場合がある。
【0032】
本発明は、上述のように、ロール径の変化しない剥ぎ取りブライドルロール15に駆動装置15aを備えているため、複数のマスキングテープ3を均一に剥離することができ、さらに、巻き取りロール16に駆動装置16aを備えているため、剥ぎ取られた複数のマスキングテープ3を安定して良好に巻き取ることができる。
【0033】
同様の作業を、条材2の反対面側の巻取部1bにおいても行い、巻取部1aと同様、条材2の他方の面に貼り付けられたマスキングテープ3が、走行する条材2の走行速度に応じて自動的に剥ぎ取られ、巻取機5bの巻き取りロール16に巻き取られていく。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、条材から剥離されたマスキングテープ3を弛み等なく巻き付けることができる。さらに、支点ロール13と剥ぎ取りブライドルロール15との距離を調整し、必要に応じて距離を極力短くすることで、マスキングテープ3の伸び量を抑制できる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例
【0036】
[実施例1]
本発明の実施形態における巻取装置1において、下記の条件でマスキングテープを剥がす試験を実施した。
・条材:銅合金
製品名 DSC3N-1/2H、DOWAメタルテック株式会社製
組成 銅:99.9質量%、Fe+Ni+Sn+Zn+P:0.1質量%
・条材の寸法:板厚1.8mm、幅190mm
・マスキングテープ型式:めっきマスキング用テープ ヒタレックスK-2165B、日立化成株式会社製
・マスキングテープの幅:10mm、170mmの2本
・マスキングテープの貼り付け位置:条材の一方の面の上端部に170mm幅のマスキングテープが貼り付けられており、このマスキングテープの下端から10mm離れた位置に10mm幅のマスキングテープが平行に貼り付けられている。条材の他方の面にはマスキングテープは貼り付けられていない。
・剥ぎ取りブライドルロールと支点ロールとの距離の可変機構を備える(図2参照)。
【0037】
先ず、条材2の先端が巻取部1aに到達した後、条材2の走行(搬送)を一時的に停止し、条材の一方の面に貼り付けられたマスキングテープ3の前端部を剥ぎ取り、剥がしたマスキングテープ3を支点ロール13および剥ぎ取りブライドルロール15へ順に引っ掛け、さらに巻き取りロール16にマスキングテープ3を巻き付けた。このとき、剥ぎ取ったマスキングテープ3を巻き取りロール16まで引っ掛ける作業が行いやすいように、剥ぎ取りブライドルロール15の外周と支点ロール13の外周との間の距離を100mmとした。
【0038】
マスキングテープ3が巻き取りロール16に巻き付いたことを確認した後、条材2を2m/minの走行速度で搬送させると同時に、剥ぎ取りブライドルロール15に備えられた駆動装置15aおよび駆動装置15aを制御する機能により、剥ぎ取りブライドルロール15の回転速度を、マスキングテープ3を引っ張る速度が2.1m/minとなるように設定し、剥ぎ取りブライドルロール15を駆動した。
【0039】
また、条材2の搬送および剥ぎ取りブライドルロール15の回転と同時に、巻き取りロール16を巻き取りロール16に備えられた駆動装置16aを用いて回転させ、剥ぎ取られたマスキングテープ3を巻き取りロール16に巻き付けて回収した。このとき、剥ぎ取りブライドルロール15と巻き取りロール16間のマスキングテープ3の張力が一定となるように、回転トルクを制御しながら巻き取りロール16を駆動した。
【0040】
その結果、10mm幅および170mm幅のマスキングテープ3のいずれも、弛みや巻き取りムラの発生がなく、良好に条材2から剥ぎ取ることができた。また巻き取りロール16にマスキングテープ3が均一に巻き取られており、円滑に回収することができた。
【0041】
[実施例2]
マスキングテープ3が巻き取りロール16に巻き付いたことを確認した後、剥ぎ取りブライドルロール15を支点ロール13に向けて移動させて、支点ロール13との距離を5mmとしたこと以外は、実施例1と同様にマスキングテープを巻き取った。
【0042】
その結果、10mm幅および170mm幅のマスキングテープ3のいずれも、弛みや巻き取りムラの発生はなく、良好に条材2から剥ぎ取ることができた。また、巻き取りロール16にマスキングテープ3が均一に巻き取られており、円滑に回収することができた。巻き取りロール16に巻き取られたマスキングテープ3の巻きムラはほとんどなく、実施例1よりもさらに均一に巻き取られていた。
【0043】
[比較例]
剥ぎ取りブライドルロール15に駆動装置15aが備えられておらず、剥ぎ取りブライドルロール15を駆動しないこと以外は、実施例1と同様にマスキングテープを条材から剥ぎ取り、巻き取った。剥ぎ取りブライドルロール15はフリーとなっており、巻き取りロール16の駆動によってテープが搬送される力により従動して回転する。
【0044】
その結果、細い10mm幅のマスキングテープに弛みが発生し、巻き取りロール16において巻きムラが発生した。さらに巻き取りを継続すると、10mm幅のテープが切れてしまった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、走行する条材から剥ぎ取られたマスキングテープを巻き取る際に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 巻取装置
1a,1b 巻取部
2 条材
3 マスキングテープ
10 支持台
11 ヒーター
12 ガイドロール
13 支点ロール
14 台
15 剥ぎ取りブライドルロール
16 巻き取りロール
17 張力センサ
21 レール
22 架台
図1
図2