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  • 特許-鋼板直線切断ガイド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】鋼板直線切断ガイド
(51)【国際特許分類】
   B23D 47/02 20060101AFI20240129BHJP
   B23D 45/02 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B23D47/02
B23D45/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020027327
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130171
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】北原 隆
(72)【発明者】
【氏名】大平 利夫
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-143526(JP,A)
【文献】実開昭52-050275(JP,U)
【文献】特開昭61-209815(JP,A)
【文献】特開2006-069043(JP,A)
【文献】特開2016-206118(JP,A)
【文献】特開2013-141728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/02
B23D 47/02
B26D 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに取り付けて、長手方向に沿って鋼板を直線状に切断する鋸刃を有する切断部と、
前記鋼板の一方の主面に接触して前記フレームを固定する吸着部と、
前記切断部の切断方向のみに前記切断部を移動可能な逆行防止部と、
を備え、前記逆行防止部は、前記フレームの長手方向に沿って設けたラックと、前記切断部に取り付けて前記ラックに噛み合うピニオン歯車と、前記ピニオン歯車と回転軸を同軸上に取り付けて前記ピニオン歯車と一体的に回転するラチェット歯車と、前記ラチェット歯車を正又は逆回転のいずれか一方向に回転させるラチェット爪からなることを特徴とする鋼板直線切断ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載された鋼板直線切断ガイドであって、
前記フレームと前記切断部の間に、前記フレームの長手方向に沿って設けたレールと、前記切断部側に取り付けて前記レールに嵌合して摺動するボールキャスターを有する摺動部を備えたことを特徴とする鋼板直線切断ガイド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鋼板直線切断ガイドであって、
前記逆行防止部は、前記ラチェット歯車から前記ラチェット爪を離して解除する逆行解除部を備えたことを特徴とする鋼板直線切断ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチップソー(電動丸鋸)などの切断手段により鋼板を直線状(真っ直ぐ)に切断する際に用いる鋼板直線切断ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
円形の鋸刃を回転駆動させて材料を切断するチップソーがある。従来、作業者がチップソーを把持して直線状に切断する際、定規、案内板などを用いて切断していた。
一例として特許文献1に開示の案内装置は、被加工物に載置する基底板と、基底板に設けた誘導手段に沿って移動可能なスライダと、基底板を被加工物に固定する固定具を有し、電気丸鋸を直線状に移動させて木材などの被加工物を切断している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示の固定具は、基底板を下方に押圧する係止片と、被加工物の裏面を押圧するクランパの構成であり、クランパが被加工物の裏面に入り込む、換言すると被加工物を挟むように固定している。このため被加工物の裏面に入り込めないケース、例えば被加工物の裏面に接触できず表面のみに接触する場合には、基底板を固定することができず、切断することができない。
その他、従来の案内板は、被加工物の端面に当てて直線状に切断する構成であり、端面が直線状でない、又は端面から離れた箇所を直線切断する場合には適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-136352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、鋼板を切断する際に容易に取り付けることができ、かつ安全で直線状に切断することができる鋼板直線切断ガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、フレームと、
前記フレームに取り付けて、長手方向に沿って鋼板を直線状に切断する鋸刃を有する切断部と、
前記鋼板の一方の主面に接触して前記フレームを固定する吸着部と、
前記切断部の切断方向のみに前記切断部を移動可能な逆行防止部と、
を備え、前記逆行防止部は、前記フレームの長手方向に沿って設けたラックと、前記切断部に取り付けて前記ラックに噛み合うピニオン歯車と、前記ピニオン歯車と回転軸を同軸上に取り付けて前記ピニオン歯車と一体的に回転するラチェット歯車と、前記ラチェット歯車を正又は逆回転のいずれか一方向に回転させるラチェット爪からなることを特徴とする鋼板直線切断ガイドを提供することにある。
上記第1の手段によれば、幅数メートルとなる大きな鋼板の任意箇所に取り付けることができ、フレームの長手方向に沿った直線切断中は切断方向と反対方向に切断部が移動することがなく作業を安全に行うことができる。
また切断部がフレームの長手方向に沿った切断方向と反対方向に移動することを防止でき、作業を安全に行うことができる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記フレームと前記切断部の間に、前記フレームの長手方向に沿って設けたレールと、前記切断部側に取り付けて前記レールに嵌合して摺動するボールキャスターを有する摺動部を備えたことを特徴とする鋼板直線切断ガイドを提供することにある。
上記第2の手段によれば、切断部をフレームの長手方向に沿って直線状に滑らかに移動させることができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第の手段として、第1又は第2の手段において、前記逆行防止部は、前記ラチェット歯車から前記ラチェット爪を離して解除する逆行解除部を備えたことを特徴とする鋼板直線切断ガイドを提供することにある。
上記第の手段によれば、切断部を切断方向と逆方向に移動させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば幅数メートル以上もあるような大きな鋼板の任意箇所を直線状に、かつ安全に手持ちチップソーで切断することができる。その際直線切断中はチップソーが切断方向と逆方向に移動することがないため、例えば、壁などの垂直面を下方から上方に切断しているときに、作業者が誤って手を離した場合でも、チップソーが落下することがなく安全に作業を進めることができる。また、一般に鋸刃を回転させたままチップソーを逆方向に戻すと生じるキックバック(弾かれ)を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の鋼板直線切断ガイドの斜視図である。
図2】本発明の鋼板直線切断ガイドの一部分解斜視図である。
図3】本発明の鋼板直線切断ガイドの切断方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の鋼板直線切断ガイドの実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0013】
[鋼板直線切断ガイド10]
図1は本発明の鋼板直線切断ガイドの斜視図である。図2は本発明の鋼板直線切断ガイドの一部分解斜視図である。図示のように本発明の鋼板直線切断ガイド10は、棒状のフレーム20と、前記フレーム20に取り付けて、長手方向に沿って鋼板を切断する鋸刃を有する切断部30と、前記鋼板の一方の主面に接触して前記フレーム20を固定する吸着部40と、前記切断部30の切断方向のみに前記切断部30を移動可能な逆行防止部60を備えている。
フレーム20は、所定長さ(一例として1~数メートル)及び所定強度の材質(アルミなどの金属製、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックなどの非磁性体)を用いた断面矩形の角材、棒状又は長尺の直線状の部材であり、切断時のガイドとなる。
切断部30は、火災防止などの理由からガス切断が使用できない現場で使用できる手持ち式チップソーを用いている。切断部30はこの他、エンドミルなども適用することもできる。
【0014】
吸着部40はフレーム20の両端に取り付けた(埋め込んだ)リング状の磁石(一例としてネオジム磁石など)である。吸着部40はネジ切り加工を施した中心孔42と、この中心孔42に螺合するボルト44を有している。このような構成の吸着部40は、鋼板に設置する際には、裏面の中心孔42からボルト44先端を僅かに突出させた状態で鋼板の切断箇所に対するフレーム20の位置決めを行う。その後、ボルト44を取り外す方向に緩めて磁石を鋼板に吸着させて固定できる。一方、鋼板から取り外す際には、中心孔42のボルト44を貫通させる方向に締め込んで、裏面の中心孔42からボルト44先端を突出させることにより磁石が鋼板から離れて磁力が弱まり取り外す(吸着を解除する)ことができる。このように磁石の付く鋼板であれば端面付近でなくても任意箇所に固定できる。
【0015】
摺動部50は、フレーム20の側面を挟むように取り付ける一対の板材51、52を有し、板材51、52同士を長尺ボルト53で固定している。一対の板材51,52はフレーム20と対向する面(内面)に複数のボールキャスター54を取り付けている。図2に示すボールキャスター54は、一例として上に2個、下に1個取り付けている。ボールキャスター54と対向するフレーム20の側面には上下2本のレール56を取り付けている。レール56はボールキャスター54が嵌る凹状に形成しフレーム20の長手方向に沿って延出している。一方の板材51は切断部30に固定している。他方の板材52には後述する逆行防止部60を取り付けている。このような摺動部50の構成により、切断部30をフレーム20の長手方向に沿って直線状に滑らかに進退移動させることができる。
【0016】
逆行防止部60は、ラックアンドピニオン機構とラチェット機構を採用している。より具体的な構成はフレーム20の一面(上面)に長手方向に沿ってラック62を取り付けている。他方の板材52の主面と直交する方向に設けたベース63及びカバー64間には、ラック62と噛み合うピニオン歯車65を回転自在に取り付けている。またピニオン歯車65の上面にはラチェット歯車66を取り付けている。ラチェット歯車66は、ピニオン歯車65よりも小径とし、ベース63及びカバー64間で軸支された回転軸66aの軸心をピニオン歯車65と同軸上に取り付けて、かつ平行キー69により一体的に回転可能に構成している。ラチェット歯車66は歯車に噛み合うラチェット爪67を有している。ラチェット爪67はバネ68によりラチェット歯車66と噛み合う方向に付勢されて(押し付けられて)いる。ラチェット爪67及びバネ68はいずれも回転支点用の段付きネジ67a,68aでカバー64に取り付けている。このような逆行防止部60の構成により、ラチェット歯車66が回転する方向しかピニオン歯車65はラック62上を移動することができない。このため切断部30の切断方向が一方向のみとなり、逆行を防止できる。
【0017】
逆行防止部60には、切断部30を両方向(進退方向)に移動可能な逆行解除部70を設けている。逆行解除部70は、ラチェット爪67の先端上面で上方に延出するピン71と、ラチェット爪67が噛み合う位置から離れる位置に伴って移動するピン71の軌道に合わせて、カバー64を円弧状に切削した長孔72を有し、ピン71が長孔72から突出している。このような逆行解除部70の構成により、逆行防止部60を解除する際、ピン71が解除レバーの役割を担い、バネ68の押し付け力以上の力でピン71を移動することでラチェット爪67とラチェット歯車66の噛み合わせが一時的に解除されて、摺動部50と切断部30を両方向(進退方向)に自在に移動させることができる。このように逆行解除部70で解除しない限り、切り進む方向とは逆方向に切断部30を戻すことはできない。
【0018】
[鋼板切断方法]
図3は本発明の鋼板直線切断ガイドの切断方法の説明図である。
鋼板直線切断ガイド10を鋼板に設置する際には、吸着部40の裏面の中心孔42からボルト44先端を僅かに突出させた状態で鋼板の切断箇所に対するフレーム20の位置決めを行う。その後、ボルト44を取り外す方向に緩めて磁石を鋼板に吸着させて固定する。次に(1)に示すように、フレーム20に摺動部50を介して取り付けた切断部30を逆行解除部70のピン71でラチェット爪67を解除して切断開始側となるフレーム20の一端へ移動させる。
【0019】
(2)に示すように切断部30をフレーム20の長手方向に沿って切断方向に移動させながら鋼板を切断する。切断中は逆走防止部60によって切断部30が切断方向と逆方向に移動することがないため、例えば、壁などの垂直面を下方から上方に切断しているときに、作業者が誤って手を離した場合でも、切断部30が落下することがなく安全に作業を進めることができる。また鋸刃を回転させたままチップソーを逆方向に戻すと生じるキックバック(弾かれ)を防止することができる。
【0020】
(3)に示すように切断部30がフレーム20の切断終了側の他端まで移動したら停止する。その後、作業者が鋼板直線切断ガイド10をバランス良く運ぶために、逆行解除部70のピン71でラチェット爪67を解除して切断部30をフレーム20の中央付近へ移動させる。そして鋼板直線切断ガイド10を鋼板から取り外す際には、中心孔42のボルト44を貫通させる方向に締め込んで、裏面の中心孔42からボルト44先端を突出させることにより磁石が鋼板から離れて磁力が弱まり取り外す(吸着を解除する)ことができる。さらに直線切断を継続するときは、切断先までフレーム20を移動させて、再度吸着部40で固定した後に、(1)以降の作業を繰り返す。
【0021】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 鋼板直線切断ガイド
20 フレーム
30 切断部
40 吸着部
42 中心孔
44 ボルト
50 摺動部
51 一方の板材
52 他方の板材
53 長尺ボルト
54 ボールキャスター
56 レール
60 逆行防止部
62 ラック
63 ベース
64 カバー
65 ピニオン歯車
66 ラチェット歯車
66a 回転軸
67 ラチェット爪
67a 段付きネジ
68 バネ
68a 段付きネジ
70 逆行解除部
71 ピン
72 長孔
図1
図2
図3