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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】スプリングシート及びダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20240129BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F16F15/134 A
F16D7/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020030440
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134834
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037124(WO,A1)
【文献】特開平08-042591(JP,A)
【文献】実開昭52-132961(JP,U)
【文献】特開2017-089678(JP,A)
【文献】実開平02-146230(JP,U)
【文献】特開2000-352442(JP,A)
【文献】実開昭63-146250(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1収容部を有し、前記第1収容部は円周方向の両端面に第1押圧面を有する第1回転体と、
前記第1回転体と相対回転可能であり、複数の第2収容部を有し、前記第2収容部は円周方向の両端面に第2押圧面を有する第2回転体と、
前記第1収容部及び前記第2収容部に収容され、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する複数の弾性部材と、
前記第1回転体に設けられたストップ部材と、前記第2回転体に形成されたストッパ用孔と、を有し、前記ストッパ用孔は、前記ストップ部材が貫通し、円周方向に長く、かつ円周方向の一方の端部が前記第2収容部の第2押圧面に向かって延びている、ストッパ機構と、
複数の前記弾性部材のうちの少なくとも1つの弾性部材の少なくとも一方の端面を支持するスプリングシートと、
を備え、
前記スプリングシートは、端面支持部と、外周支持部と、を有し、
前記端面支持部は、前記弾性部材の端面を受けるとともに前記第1収容部の第1押圧面に支持され、スリットを有し、前記スリットは、前記第2収容部の第2押圧面が円周方向に貫通可能であり、前記第2押圧面を前記弾性部材の端面に当接させるものであり、
前記外周支持部は、前記弾性部材の径方向外側部の一部を支持するものである、
ダンパ装置。
【請求項2】
前記第1回転体は、軸方向に間隔をあけて配置された第1プレート及び第2プレートを有しており、
前記第2回転体は、前記第1プレートと前記第2プレートの軸方向間に配置されている、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記端面支持部は、前記スリットを挟んで第1支持部及び第2支持部を有している、請求項2に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングシート及びダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン及び電動機を備えたハイブリッド車両では、エンジン始動時等において出力側から過大なトルクがエンジン側に伝達するのを防止するために、特許文献1に示されるようなトルクリミッタ機能を有するダンパ装置が用いられている。
【0003】
特許文献1のダンパ装置は、入力回転体としてのサイドプレートと、出力回転体としてのハブプレートと、複数のコイルスプリングと、を有するダンパ部を有しており、このダンパ部の外周側にトルクリミッタが設けられている。トルクリミッタとダンパ部とは、リベットによって連結されている。そして、トルクリミッタのプレートが、ボルトによってフライホイールに固定されている。
【0004】
ここで、ダンパ部のコイルスプリングは、サイドプレートの窓部に配置されている。そして、サイドプレートとハブプレートとが相対回転すると、両プレートの間でコイルスプリングが回転方向に圧縮される。コイルスプリングには遠心力が作用し、またコイルスプリングが圧縮する際に、コイルスプリングが径方向外側に移動する。この結果、コイルスプリングが窓部と摺動し、コイルスプリングとサイドプレートとの間に摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗により、ダンパ部の回転変動減衰性能が低下する。
【0005】
そこで、コイルスプリングの両端にスプリングシートが装着されている。このスプリングシートによって、コイルスプリングの端面及び径方向外側の一部が支持され、コイルスプリングが窓部と摺動するのが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-226572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ダンパ装置では、一般的に、入力回転体と出力回転体との相対回転(捩り角度)を所定の角度範囲内に規制するために、ストッパ機構が設けられている。ストッパ機構は、例えば、入力回転体に設けられたストップピンと、出力回転体に形成された円弧状のストッパ用孔と、によって構成されている。
【0008】
ダンパ装置の回転変動性能を良好にするためには、入力回転体と出力回転体との捩り角度をより大きくする(すなわち、広角化する)のが好ましい。この広角化のためには、出力回転体のストッパ用孔の長さを長く確保する必要がある。
【0009】
しかし、前述にように、コイルスプリングの両端にスプリングシートを設けた場合、このスプリングシートとストッパ用孔とは、径方向において重なる位置に配置される場合が多い。このため、スプリングシートを設けると、ストッパ用孔を長く形成することができず、広角化の妨げになっている。
本発明の課題は、スプリングシートが設けられたダンパ装置において、ストッパ機構を構成する孔を円周方向に長く形成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るスプリングシートは、第1回転体と、第2回転体と、複数の弾性部材と、を有するダンパ装置に設けられ、複数の弾性部材のうちの少なくとも1つの弾性部材の少なくとも一方の端面を支持する。第1回転体は、複数の第1収容部を有し、第1収容部は円周方向の両端面に第1押圧面を有する。第2回転体は、第1回転体と相対回転可能であり、複数の第2収容部を有し、第2収容部は円周方向の両端面に第2押圧面を有する。複数の弾性部材は、第1収容部及び第2収容部に収容され、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。
【0011】
スプリングシートは、端面支持部と外周支持部とを有する。端面支持部は、弾性部材の端面を受けるとともに第1収容部の第1押圧面に支持され、スリットを有している。スリットは、第2収容部の第2押圧面が円周方向に貫通可能であり、第2押圧面を弾性部材の端面に当接させる。外周支持部は、弾性部材の径方向外側部の一部を支持する。
【0012】
ここでは、弾性部材は、スプリングシートによって第1収容部に支持される。スプリングシートの端面支持部には、スリットが形成されており、このスリットを、第2収容部の第2押圧面が貫通しており、第2押圧面は、弾性部材の端面を直接押圧している。
【0013】
このような構成では、第2収容部の円周方向の2つの第2押圧面を、従来の構成に比較して互いに近づけることができる。したがって、第2回転体において、第2収容部が形成されていない領域を、より広く確保することができる。このため、第1回転体と第2回転体との互いの相対回転を規制するためのストッパ機構を、第1回転体に設けられたストップ部材と、第2回転体に形成された円弧状のストッパ用孔と、によって構成した場合、ストッパ用孔を長く形成することができる。この結果、第1回転体と第2回転体との捩り角度を広角化することができる。
【0014】
また、外周支持部により、弾性部材の外周部と第1収容部の外周面との摺動をなくすことができる。したがって、弾性部材と第1回転体との摺動による摩擦抵抗を抑え、ヒステリシストルクを小さくできる。
【0015】
(2)好ましくは、第1回転体は、軸方向に間隔をあけて配置された第1プレート及び第2プレートを有している。また、この場合、好ましくは、第2回転体は、第1プレートと第2プレートの軸方向間に配置されている。
【0016】
(3)好ましくは、端面支持部は、スリットを挟んで第1支持部及び第2支持部を有している。
【0017】
(4)本発明に係るダンパ装置は、第1回転体と、第2回転体と、複数の弾性部材と、ストッパ機構と、前述の特定に係るスプリングシートと、を備えている。第1回転体は、複数の第1収容部を有し、第1収容部は円周方向の両端面に第1押圧面を有する。第2回転体は、第1回転体と相対回転可能であり、複数の第2収容部を有している。第2収容部は、円周方向の両端面に第2押圧面を有する。複数の弾性部材は、第1収容部及び第2収容部に収容され、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。ストッパ機構は、ストップ部材とストッパ用孔とを有している。ストップ部材は、第1回転体に設けられている。ストッパ用孔は、第2回転体に形成された円周方向に長い孔であり、ストップ部材はストッパ用孔を貫通している。
【0018】
(5)好ましくは、ストッパ用孔の円周方向の一方の端部は、第2収容部の第2押圧面に向かって延びている。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明では、スプリングシートが設けられたダンパ装置において、ストッパ機構を構成するストップ用孔を円周方向に長く形成でき、良好な回転変動減衰性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置の断面図。
図2図1のダンパ装置のダンパユニットの正面図。
図3】フランジの正面図。
図4】スプリングシートの側面図。
図5図4のV-V線断面図。
図6】捩り特性線図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置1(以下、単に「ダンパ装置」と記載する場合もある)の断面図である。また、図2はダンパ装置1の正面図であり、一部の部材を取り外して、又は部材の一部を削除して示している。図1において、O-O線は回転軸である。図1において、ダンパ装置1の左側にエンジンが配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニットが配置される。
【0022】
なお、以下の説明において、軸方向とは、ダンパ装置1の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。なお、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向に完全に一致している必要はなく、例えば、図2の上部に示された窓部及び窓孔を基準とした左右方向も含む概念である。また、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の直径方向に完全に一致している必要はなく、例えば、図2の上部に示された窓部及び窓孔を基準とした上下方向も含む概念である。
【0023】
このダンパ装置1は、図示しないフライホイールと駆動ユニットの入力軸との間に設けられ、エンジンと駆動ユニットとの間で伝達されるトルクを制限するとともに、回転変動を減衰するための装置である。ダンパ装置1は、トルクリミッタユニット10と、ダンパユニット20と、を有している。
【0024】
[トルクリミッタユニット10]
トルクリミッタユニット10は、ダンパユニット20の外周側に配置されている。トルクリミッタユニット10は、フライホイールとダンパユニット20との間で伝達されるトルクを制限する。トルクリミッタユニット10は、第1サイドプレート11及び第2サイドプレート12と、摩擦ディスク13と、プレッシャプレート14と、コーンスプリング15と、を有している。
【0025】
第1サイドプレート11と第2サイドプレート12とは複数のリベットによって互いに固定されている。摩擦ディスク13は、コアプレート131及び1対の摩擦部材132を有している。プレッシャプレート14及びコーンスプリング15は、第1サイドプレート11と摩擦ディスク13との間に配置されている。コーンスプリング15は、プレッシャプレート14を介して摩擦ディスク13を第2サイドプレート12に押圧している。
【0026】
[ダンパユニット20]
ダンパユニット20は、入力側プレート21(第1回転体の一例)と、ハブフランジ22(第2回転体の一例)と、入力側プレート21とハブフランジ22との間に配置されたダンパ部23と、から構成されている。
【0027】
<入力側プレート21>
入力側プレート21は、第1プレート211と第2プレート212とを有している(以下、第1プレート211及び第2プレート212を併せて「入力側プレート21」と記載する場合もある)。第1プレート211及び第2プレート212は、ともに中心孔を有する環状の部材である。第1プレート211と第2プレート212とは、4個のストップピン24によって、軸方向に所定の間隔をあけて互いに固定されている。したがって、第1プレート211と第2プレート212とは、軸方向及び回転方向に相対的に移動不能である。また、第1プレート211には、ストップピン24によって摩擦ディスク13のコアプレート131の内周部が固定されている。
【0028】
第1プレート211及び第2プレート212には、それぞれ1対の第1窓部21a及び第2窓部21b(第1収容部の一例)が形成されている。1対の第1窓部21aは、回転中心Oを挟んで対向して配置されている。図2では、第2プレート212の第1窓部21a及び第2窓部21bが示されているが、第1プレート211の第1窓部及び第2窓部も同様の構成である。1対の第1窓部21aは、それぞれのプレート211,212を切り起こして形成されており、円周方向の両端面に押圧面21c(第1押圧面の一例)を有し、外周縁及び内周縁にそれぞれ支持部を有している。また、1対の第2窓部21bは、第1窓部とは90°の間隔をあけて、回転中心を挟んで対向して配置されている。1対の第2窓部21bは、軸方向に貫通する矩形の開口であり、円周方向の両端面に押圧面21dを有している。
【0029】
<ハブフランジ22>
ハブフランジ22は、入力側プレート21からのトルクを出力側の装置に伝達するための部材である。ハブフランジ22は、ハブ221とフランジ222とを有している。ハブ221とフランジ222とは、図2に示すように、複数の歯と、この歯が噛み合う複数の凹部と、によって一体化されている。
【0030】
ハブ221は筒状の部材であり、第1プレート211及び第2プレート212の中心孔内に配置されている。ハブ221の内周部にはスプライン孔が形成されており、このスプライン孔に出力側の部材がスプライン係合可能である。
【0031】
フランジ222は、図2及び図3に示すように、円板状に形成され、第1プレート211と第2プレート212との軸方向間に配置されている。フランジ222は、中心孔と、それぞれ1対の第1窓孔22a(第2収容部の一例)及び第2窓孔22bと、4個のストッパ用孔22cと、を有している。
【0032】
第1窓孔22aは、回転中心Oを挟んで対向して配置されており、第1プレート211及び第2プレート212の第1窓部21aと対応する位置に形成されている。第1窓孔22aは、円周方向の両端部に、外周押圧面22dと内周押圧面22eとを有している。外周押圧面22dは、端面の径方向の中央部から外周側にかけて形成され、内周押圧面22eは、外周押圧面22dの径方向内側に形成されている。
【0033】
以上のように、外周押圧面22dは、内周押圧面22eに対して、対向する端部に近づく方向に突出している。すなわち、両端部の内周押圧面22e間の幅よりも、外周押圧面22d間の幅のほうが狭くなっている。言い換えれば、フランジ222において、第1窓孔22aが形成されていない領域(円周方向の領域)は、外周押圧面22dの形成されている外周側部分の方が、内周側部分に比較して広くなっている。
【0034】
第2窓孔22bは、第1窓孔22aとは90°の間隔をあけて、回転中心Oを挟んで対向して配置されている。すなわち、第2窓孔22bは、第1プレート211及び第2プレート212の第2窓部21bと対応する位置に形成されている。第2窓孔22bは円弧状に形成されており、第2窓孔22bのピッチ径(孔の径方向の幅の中央位置の半径)は、第1窓孔22aの径方向の中心位置よりも径方向内側に位置している。第2窓孔22bは、円周方向の両端面に押圧面22fを有しており、両押圧面22f間の距離は、入力側プレート21の第2窓部21bの両端の押圧面21d間の距離より長く設定されている。
【0035】
ストッパ用孔22cは、第1窓孔22aの円周方向の両側において、円弧状に延びる長孔である。このストッパ用孔22cにストップピン24が軸方向に貫通している。このため、入力側プレート21とハブフランジ22とは、ストップピン24がストッパ用孔22c内において移動可能な範囲で相対回転可能である。言い換えれば、ストップピン24とストッパ用孔22cとによってストッパ機構25が構成されており、入力側プレート21とハブフランジ22とは、ストップピン24がストッパ用孔22cの端面に当接することによって、互いの相対回転が禁止される。
【0036】
ストッパ用孔22cの径方向位置は、第1窓孔22aの外周押圧面22dの径方向位置と重なっている。より詳細には、第1窓孔22aの外周面は円弧状であり、ストッパ用孔22cの外周面の径と、第1窓孔の外周面の径(すなわち、第1窓孔22aの外周押圧面22dの外周端)と、は同じである。また、ストッパ用孔22cの内周面の径は、第1窓孔22aの外周押圧面22dの内周端よりも径方向外側である。
【0037】
ここで、ストッパ用孔22cの円周方向第1側(図2及び図3参照、以下、「R1側」と記載する)の端部は、第2窓孔22bの径方向外側にまで延びている。また、ストッパ用孔22cの円周方向第2側(以下、「R2側」と記載する)の端部は、第1窓孔22aの外周押圧面22dに向かって延び、外周押圧面22dと近接している。
【0038】
以上のように、ストッパ用孔22cは、フランジ222において、円周方向領域の広い部分、より詳細には、第1窓孔22aの外周押圧面22dと径方向において重なる位置に形成されているので、ストッパ用孔22cの円周方向の長さを、より長く形成することができる。
【0039】
<ダンパ部23>
ダンパ部23は、入力側プレート21とハブフランジ22とを回転方向に弾性的に連結するための機構であり、図1及び図2に示すように、それぞれ2個のコイルスプリング27及び樹脂部材28と、コイルスプリング27の端面を支持する1対のスプリングシート30と、ヒス発生機構31(図1参照)と、を有している。
【0040】
コイルスプリング27はフランジ222の第1窓孔22aに収容され、樹脂部材28はフランジ222の第2窓孔22bに収容されている。また、コイルスプリング27及び樹脂部材28は、第1プレート211及び第2プレート212の各窓部21a,21bによって、軸方向及び径方向に支持されている。
【0041】
なお、樹脂部材28は、入力側プレート21の第2窓部21bに対して、円周方向に隙間なく配置されている。一方、樹脂部材28は、フランジ222の第2窓孔22bの円周方向の幅よりも短い。すなわち、入力側プレート21とハブフランジ22とが相対回転していない(捩り角度「0」)の中立時においては、樹脂部材28の両端部と、フランジ222の第2窓孔22bの端面22fと、の間には、隙間(隙間の詳細については後述)が形成されている。
【0042】
スプリングシート30は、フランジ222の第1窓孔22aの円周方向の両端部に配置されている。スプリングシート30は、コイルスプリング27の端面を支持するとともに、コイルスプリング27の外周部の一部(円周方向の両端部)を支持する。
【0043】
図4及び図5に示すように、スプリングシート30は、端面支持部301と、外周支持部302と、を有している。なお、図4はスプリングシート30の側面図(円周方向の一方側から視た図)であり、図5図4のV-V線断面図である。
【0044】
端面支持部301は、側面視で概略U字状に形成されている。端面支持部301の軸方向中央部には、径方向に所定の長さのスリット301aが形成されている。また、端面支持部301は、スリット301aを挟んで、第1支持部301b及び第2支持部301cを有している。また、端面支持部301は、第1支持部301bと第2支持部301cの一部(スリット301aの径方向内側の部分)をつなぐ連絡部301dを有している。
【0045】
端面支持部301は、コイルスプリング27の両端面と、第1プレート2111及び第2プレート212の第1窓部21aの端面及びフランジ222の第1窓孔22aの端面(正確には、内周押圧面22e)と、の間に配置されている。
【0046】
具体的には、第1支持部301b、第2支持部301c、及び連絡部301dの一方側の面にはコイルスプリング27の端面が当接している。一方、第1支持部301bの他方側の面には、第1プレート211の第1窓部21aの端面が当接している。また、第2支持部301cの他方側の面には、第2プレート212の第1窓部21aの端面が当接している。そして、連絡部301dの他方側の面には、フランジ222の第1窓孔22aの内周押圧面22eが当接している。また、スリット301aには、フランジ222の第1窓孔22a外周押圧面22dが入り込み、このスリット301aを貫通した外周押圧面22dが、コイルスプリング27の端面に当接している。
【0047】
以上のように、コイルスプリング27は、第1プレート211及び第2プレート212の第1窓部21aと、フランジ222の第1窓孔22aと、にスプリングシート30を介して円周方向に隙間なく収容されている。
【0048】
外周支持部302は、端面支持部301の外周端部から円周方向に延びて形成されている。この外周支持部302は、コイルスプリング27の両端部の外周部と、第1窓部21aの及び第1窓孔22aの内周面と、の間に配置されている。このため、コイルスプリング27が遠心力によって、あるいは圧縮された状態で、外周側に移動しても、コイルスプリング27と第1窓部21a及び第1窓孔22aとの接触を避けることができる。
【0049】
ヒス発生機構31は、第1プレート211及び第2プレート212と、ハブフランジ22と、の軸方向間に配置されている。ヒス発生機構31は、図1に示すように、第1ブッシュ41と、第2ブッシュ42と、第3ブッシュ43と、コーンスプリング44と、を有している。
【0050】
第1ブッシュ41及び第2ブッシュ42は、ハブ221の外周面において、第1プレート211の内周端部とハブ221との軸方向間に配置されている。第2ブッシュ42は、ハブ221と相対回転不能に係合しており、第1ブッシュ41との間で摩擦接触する。第3ブッシュ43は、第2プレート212の内周端部とフランジ222との軸方向間に配置されている。第3ブッシュ43は第2プレート212と相対回転不能に係合しており、フランジ222と摩擦接触する。コーンスプリング44は、第3ブッシュ43と第2プレート212との間に圧縮された状態で配置されている。
【0051】
以上のような構成によって、第1プレート211及び第2プレート212と、ハブフランジ22と、が相対回転した際に、ヒステリシストルクが発生する。
【0052】
[動作]
エンジンからフライホイールに伝達されたトルクは、トルクリミッタユニット10を介してダンパユニット20に入力される。ダンパユニット20では、トルクリミッタユニット10の摩擦ディスク13が固定されている入力側プレート21にトルクが入力され、このトルクは、コイルスプリング27及び樹脂部材28を介してハブフランジ22に伝達される。そして、ハブフランジ22から、出力側の電動機、発電機、変速機等に動力が伝達される。
【0053】
また、例えば、エンジン始動時においては、出力側の慣性量が大きいために、出力側からエンジンに過大なトルクが伝達される場合がある。このような場合は、トルクリミッタユニット10によってエンジン側に伝達されるトルクが所定値以下に制限される。
【0054】
<正側捩り特性>
ダンパユニット20における正側の捩り特性、すなわち、エンジンからトルクが入力された場合(正側トルクの入力)の特性について説明する。
【0055】
正側トルクが入力されると、図2において、入力側プレート21はR1方向に回転する。このため、2つのコイルスプリング27は、入力側プレート21の第1窓部21aのR2側押圧面21cと、スプリングシート30のスリット301aから露出しているフランジ222の外周押圧面22d(R1側の外周押圧面22d)と、の間で圧縮される。
【0056】
なお、図2に示すように、樹脂部材28は、中立時において、入力側プレート21の第2窓部21bに隙間なく支持されているが、フランジ222の第2窓孔22bにおいては、R1側及びR2側にそれぞれθ1の円周方向隙間が存在している。また、ストップピン24とストッパ用孔22cとの間には、R1側及びR2側にθ2の円周方向隙間が存在している。ここで、各円周方向隙間(以下、単に「隙間」と記載する)の関係は、以下のように設定されている。
【0057】
θ1<θ2
以上のような隙間の設定により、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度(以下、「捩り角度」と記載した場合、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度である)がθ1になるまでは、樹脂部材28は圧縮されない。そして、捩り角度がθ1を超えると、樹脂部材28は、入力側プレート21の第2窓部21bのR2側押圧面21dと、フランジ222の第2窓孔22bのR1側押圧面22fとの間で圧縮される。このため、正側の捩り特性は、図6で示すように、捩り角度がθ1までは特性C1となり、捩り角度がθ1を超えると特性C2となる。
【0058】
また、捩り角度がθ2になると、ストッパ用孔22cのR1側の端面にストップピン24が当接し、入力側プレート21とハブフランジ22との互いの相対回転が禁止される。
【0059】
<負側捩り特性>
ダンパユニット20における負側の捩り特性、すなわち、駆動ユニット側から逆にトルクが入力された場合(負側トルクの入力)の特性について説明する。
【0060】
負側トルクが入力されると、図2において、ハブフランジ22は、入力側プレート21に対してR1方向に回転する。このため、2つのコイルスプリング27は、ハブフランジ22の外周押圧面22d(R2側の外周押圧面22d)と、入力側プレート21の第1窓部21aのR1側押圧面21cと、の間で圧縮される。
【0061】
樹脂部材28の作動については、正側トルクが入力された場合と同様である。すなわち、捩り角度が-θ1になるまでは圧縮されず、捩り角度が-θ1になるまでは、図6に示すように、低剛性の捩り特性C1となる。また、捩り角度が-θ1になると、樹脂部材28は、ハブフランジ22の第2窓孔22bのR2側端面22fと、入力側プレート21の第2窓部21bのR1側押圧面21dと、の間で圧縮され始める。このため、捩り角度が-θ1を超えると、図6に示すように、高剛性の捩り特性C2となる。
【0062】
捩り角度が-θ2になると、ストップピン24がストッパ用孔22cのR2側端面に当接し、入力側プレート21とハブフランジ22との互いの相対回転が禁止される。
【0063】
このような実施形態では、フランジ222の第1窓孔22aに形成された外周押圧面22dは、スプリングシート30のスリット301aを通過し、内周押圧面22eより突出している。このため、ストッパ用孔22cにおいて、作動角度-θ2を大きくすることができる。すなわち、スプリングシート30にスリットがなく、窓孔の端面が1つの平面で形成されている場合に比較して、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度を大きくすること(すなわち、広角化)が可能になる。
【0064】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0065】
(a)前記実施形態では、スプリングシートにおいて、端面支持部に連絡部を設けたが、この連絡部はなくてもよい。すなわち、スリットが内周側に開放するようにしてもよい。
【0066】
(b)前記実施形態では、コイルスプリングの両端部にスプリングシートを設けたが、コイルスプリングの一方の端部にのみスプリングシートを設けてもよい。
【0067】
(c)前記実施形態では、ハブフランジ22を、ハブ221とフランジ222の2つの部材により構成したが、1つの部材によって構成してもよい。
【0068】
(c)弾性部材の構成は、2つのコイルスプリング及び2つの樹脂部材に限定されない。例えば、すべての弾性部材をコイルスプリングにしてもよく、また個数は限定されない。
【0069】
(d)前記実施形態では、本発明をトルクリミッタ付きダンパ装置に適用したが、他のダンパ装置にも同様に適用することができる。
【0070】
(e)捩り特性は図6に示した特性に限定されない。
【符号の説明】
【0071】
21 入力側プレート(第1回転体)
211 第1プレート
212 第2プレート
21a 第1窓部(第1収容部)
22 ハブフランジ(第2回転体)
22a 第1窓孔(第2収容部)
22c ストッパ用孔
22d 外周押圧面
22e 内周押圧面
24 ストップピン
25 ストッパ機構
27 コイルスプリング(弾性部材)
28 樹脂部材(弾性部材)
30 スプリングシート
301 端面支持部
301a スリット
301b 第1支持部
301c 第2支持部
302 外周支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6