IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械エンバイロメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-汚泥掻寄機 図1
  • 特許-汚泥掻寄機 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】汚泥掻寄機
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/18 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
B01D21/18 G
B01D21/18 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020040311
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137781
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
(72)【発明者】
【氏名】内野 友徳
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174084(JP,A)
【文献】特開2012-130837(JP,A)
【文献】実開昭54-176169(JP,U)
【文献】特開2019-126760(JP,A)
【文献】特開2019-025383(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0712011(KR,B1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0315838(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00 - 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池の池底に堆積した堆積物を掻き寄せる汚泥掻寄機であって、
前記池底を周回移動する無端チェーンと、
前記無端チェーンの周回方向に沿って複数取り付けられるフライトと、
前記無端チェーンに周回移動するための駆動力を与える駆動軸と、
前記駆動軸と一対に設けられる従動軸と、を備え、
前記駆動軸と前記従動軸は池底側に設けられ、前記駆動軸と前記従動軸間の無端チェーンに一定の張力を与える張力付与機構を備え
前記張力付与機構は、カウンターウェイトを用いて前記駆動軸あるいは前記従動軸の位置を調整するものであり、
前記カウンターウェイトは、ウエイトの自重により、前記駆動軸あるいは前記従動軸の位置を移動し、前記無端チェーンに対して一定の張力を自動的に付与することを特徴とする、汚泥掻寄機。
【請求項2】
前記張力付与機構は、前記従動軸の位置が移動することで、チェーンの張力を調整するものであることを特徴とする、請求項1に記載の汚泥掻寄機。
【請求項3】
前記張力付与機構により付与する力は、前記駆動軸から前記従動軸へ向かう前記フライト及び前記無端チェーンに生じる走行抵抗よりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の汚泥掻寄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿池の池底に堆積した汚泥を掻き寄せるための汚泥掻寄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場、廃水処理場、浄水場等の水処理施設では、被処理水中に含まれる汚泥のような固形物の沈降分離を行う沈殿池が設置されている。また、沈殿池には、沈降分離した汚泥を掻き寄せるための汚泥掻寄機が設置されており、掻き寄せられた汚泥は、汚泥ピットに集められて排出管から沈殿池の外部へ排出される。
【0003】
池底の汚泥を掻き寄せるための汚泥掻寄機として、チェーンフライト式が知られている。チェーンフライト式汚泥掻寄機は、沈殿池内を周回移動する無端チェーンと、無端チェーンに固定された複数のフライトからなるものであり、無端チェーンを駆動する回転軸(駆動軸及び従動軸)の数により、4軸式、3軸式、2軸式などと呼ばれるものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、汚泥掻寄機を備えた沈殿池設備において、沈殿池内部に好気区画や嫌気区画などの生物学的処理部を設けたものが記載されている。また、特許文献1には、沈殿池内に設けた生物学的処理部(好気区画や嫌気区画など)と干渉しないように、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-126760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機を用いることで、汚泥掻寄機の設置スペースを削減し、沈殿池内における他の設備と干渉することなく、汚泥の掻き寄せを行うことが可能となる。また、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機は、4軸式や3軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機と異なり、水面付近にレールや軸がない。したがって、水面の揺れ(スロッシング)による影響を受けにくいという利点もある。
【0007】
一方、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機においては、4軸式や3軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機のように、チェーンのカテナリー部が存在しない。このため、チェーンの弛みにより一旦張力が弱まってしまうと、張力を適切に維持することができず、チェーンの安定駆動ができなくなったり、チェーンの脱落などが生じたりしてしまう。また、チェーンの張力が弱まると、沈殿池内の設備を全て停止して沈殿池内の水を抜き、チェーンの張力を調整するメンテナンス作業が必要となり、多大な時間とコストが掛かるという問題があった。
【0008】
したがって、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機の利点を生かすためには、チェーンの張力を適切に確保し、チェーンの張力調整に係るメンテナンスの頻度を低下させることが求められる。また、特許文献1に記載されるように、沈殿池内には汚泥掻寄機以外の設備を設けることがある。これにより、沈殿池内の汚泥掻寄機の設置スペースが制限されることがあるため、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機の高さ方向に係る設置スペースは極力削減することも求められる。
【0009】
本発明の課題は、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機において、汚泥掻寄機の高さ方向に係る設置スペースを削減し、かつチェーンの張力を適切に維持することができる汚泥掻寄機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機において、駆動軸と従動軸の間の無端チェーンに一定の張力を与える張力付与機構を備えることにより、汚泥掻寄機の高さ方向に係る設置スペースを削減し、かつチェーンの張力を適切に維持することができることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の汚泥掻寄機である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の汚泥掻寄機は、沈殿池の池底に堆積した堆積物を掻き寄せる汚泥掻寄機であって、池底を周回移動する無端チェーンと、無端チェーンの周回方向に沿って複数取り付けられるフライトと、無端チェーンに周回移動するための駆動力を与える駆動軸と、駆動軸と一対に設けられる従動軸と、を備え、駆動軸と従動軸は池底側に設けられ、駆動軸と従動軸間の無端チェーンに一定の張力を与える張力付与機構を備えることを特徴とする。
【0012】
従来の2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機においては、チェーンの過度な弛みが生じると、フライトが間欠動作し、フライトの動きが安定しなくなることや、フライトが倒れるという問題があった。
本発明の汚泥掻寄機によれば、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機において、駆動軸と従動軸間の無端チェーンに一定の張力を与える張力付与機構を設けることで、チェーンに対して常に張力を与え、チェーンの弛みが発生することを抑制し、汚泥掻寄機の安定した運転を可能にするとともに、チェーンの弛みに起因するメンテナンス頻度を低下させることが可能となる。また、駆動軸と従動軸間の無端チェーンに直接張力を付与し、駆動軸と従動軸間の無端チェーンを略直線状に保つことで、汚泥掻寄機の高さ方向に係るスペースを削減することが可能となる。
【0013】
また、本発明の汚泥掻寄機の一実施態様としては、張力付与機構は、従動軸の位置が移動することで、チェーンの張力を調整するものであることを特徴とする。
この特徴によれば、駆動軸と従動軸間の無端チェーンを略直線状に保ちつつ、駆動軸と従動軸間の無端チェーンに張力を付与することが容易となる。これにより、汚泥掻寄機の高さ方向に係るスペースを削減し、チェーンの張力を適切に維持することが容易となり、汚泥掻寄機の安定運転及びメンテナンス頻度の低減が可能となる。
【0014】
また、本発明の汚泥掻寄機の一実施態様としては、張力付与機構は、カウンターウェイトを用いて従動軸の位置を調整するものであることを特徴とする。
この特徴によれば、従動軸の位置調整を容易に行うことが可能となる。また、ウェイトの重さを変えることで、チェーンに付与する張力の大きさを調整することも容易となる。
【0015】
また、本発明の汚泥掻寄機の一実施態様としては、張力付与機構により付与する力は、駆動軸から従動軸へ向かうフライト及び無端チェーンに生じる走行抵抗よりも大きいことを特徴とする。
この特徴によれば、無端チェーンには、チェーンが安定して走行するために必要な張力が常時付与されることになる。また、駆動軸におけるチェーンの脱落を防止することが可能となる。これにより、汚泥掻寄機の安定運転及びメンテナンス頻度の低減が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機において、汚泥掻寄機の高さ方向に係る設置スペースを削減し、かつチェーンの張力を適切に維持することができる汚泥掻寄機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施態様の汚泥掻寄機の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の実施態様の汚泥掻寄機における張力付与機構の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る汚泥掻寄機の実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載する汚泥掻寄機の構造については、本発明に係る汚泥掻寄機を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施態様の汚泥掻寄機の構造を示す概略説明図である。
図1に示すように、本発明の実施態様の汚泥掻寄機1は、下水処理場や浄水場等の沈殿池10の内部に設置されている。
【0020】
[沈殿池]
沈殿池10は、横長に構成され、図1の左側から汚水等の被処理水が供給される。沈殿地10の池底10aの被処理水供給側の端部には、汚泥ピット10bが設けられ、この汚泥ピット10bには、汚泥を外部に排出するための排出管10cが設けられている。
【0021】
また、沈殿池10には、汚泥掻寄機1以外の設備を設けるものとしてもよい。例えば、沈殿池の水面10d付近にスカム掻寄機構及びスカム排出装置を設けることが挙げられる。さらに、本実施態様における汚泥掻寄機1は、後述するように、池底10a付近に設けられ、沈殿池10内の高さ方向に係るスペースが少ないことから、沈殿池10内において汚泥掻寄機1の上方に他の設備を設けるものとすることができる。例えば、沈殿池10内に汚泥の沈降を促進するための沈降促進機構や被処理水の生物学的処理等を行うための処理設備を設けること等が挙げられる。
【0022】
[汚泥掻寄機]
汚泥掻寄機1は、沈殿池10内を長手方向に周回移動する無端チェーン2aを備えている。無端チェーン2aは、沈殿池10の幅方向(紙面垂直方向)に対向して一対が設置されており、この一対の無端チェーン2aには、沈殿池10の幅方向に延びるフライト(掻き寄せ羽根)3が周回方向に沿って複数配置されている。フライト3は、一対の無端チェーン2aを横架するように取り付けられており、フライト3の両端部は、無端チェーン2aより沈殿池10の幅方向外側まで延在し、沈殿池10の側壁近傍に位置している。
【0023】
また、汚泥掻寄機1は、無端チェーン2aに周回移動するための駆動力を与える駆動軸4と、駆動軸4と一対に設けられる従動軸5を備え、駆動軸4及び従動軸5は池底10a側に設けられている。つまり、本実施態様における汚泥掻寄機1は、いわゆる2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機として機能するものである。ここで、本発明における2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機とは、池底10a側に駆動軸4及び従動軸5が設けられ、無端チェーン2aが略直線状に周回移動するものを指しており、駆動軸4と従動軸5の間に、中継軸を設けるものも含まれる。
【0024】
無端チェーン2aは、図1に示すように、駆動軸4に設けられた駆動スプロケット4a及び従動軸5に設けられた従動スプロケット5aに掛け回され、沈殿池の池底10a側を周回移動するように取り付けられている。更に、無端チェーン2bが、駆動スプロケット4aと、モータ6に設けられたモータ用スプロケット6aに掛け回されており、モータ6の動力を無端チェーン2aに伝達する。
これにより、モータ6の駆動とともに、駆動スプロケット4aが回転駆動し、従動スプロケット5aも同一方向に回転駆動する。したがって、駆動スプロケット4a及び従動スプロケット5aの間に掛けられた無端チェーン2aは略直線状を保ちながら、池底10aに沿って略水平に移動する。そして、無端チェーン2aに取り付けられたフライト3により、池底10aに堆積した汚泥が汚泥ピット10bに掻き寄せられる。汚泥ピッチ10bに集められた汚泥は、排出管10cから沈殿池10の外部に排出される。
【0025】
無端チェーン2a、2bの形状は、公知の形状を用いることが可能である。無端チェーン2a、2bの形状としては、例えば、ブッシュドチェーン、ローラチェーン、ノッチ式チェーン等が挙げられる。なお、フライト3を取り付けるためのアタッチメントを設置しやすいという観点から、無端チェーン2aの形状としては、ノッチ式チェーンが好ましい。
【0026】
また、無端チェーン2a、2bの材質は、公知の材質を用いることが可能である。無端チェーン2a、2bの材質としては、例えば、金属製チェーンや樹脂製チェーンが挙げられる。樹脂製チェーンは、軽量であるため、組み立て作業や交換作業が容易になるという利点だけでなく、耐腐食性に優れるため、交換頻度が低下するという利点もある。そのため、本発明において、無端チェーン2a、2bの材質としては、樹脂製チェーンが好ましい。
さらに、後述するように、張力付与機構8により無端チェーン2aに張力を付与する際、無端チェーン2aは軽量であることが好ましい。したがって、無端チェーン2aの材質は、樹脂製チェーンの中でも比重の軽いものを用いることが特に好ましい。無端チェーン2aとしては、例えば、比重が1.4以下の樹脂からなる樹脂製チェーンとすることが好ましく、比重が1.1以下の樹脂からなる樹脂製チェーンとすることがより好ましい。
【0027】
また、汚泥掻寄機1は、図1に示すように、無端チェーン2aに対しチェーンガイドレール7a、7bを設けるものとしてもよい。これにより、無端チェーン2aを池底10aに沿って略水平に移動させることが容易となる。さらに、チェーンガイドレール7aを池底10aに設け、無端チェーン2aのみを摺動させることにより、チェーンガイドレール7a上を摺動する無端チェーン2aは弛みが発生せず、フライト3の姿勢を維持するための張力付与が不要となる。このため、後述する張力付与機構8により付与する力の大きさを低減することができ、無端チェーン2aに係る負荷を減少させ、装置寿命の向上が可能となる。
【0028】
チェーンガイドレール7a、7bの材質は、特に制限されないが、例えば、ステンレス等の金属や、超高分子量ポリエチレン等の樹脂等を使用することができる。無端チェーン2aと同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。ただし、チェーンガイドレール7a、7bと無端チェーン2aが当接して摺動することを考慮して材質を選択することが好ましい。強度を考慮してステンレス等の金属製のチェーンガイドレール7a、7bとし、無端チェーン2aと摺動する箇所に超高分子量ポリエチレン等の樹脂製の摺動部を設けることなどが挙げられる。
【0029】
[張力付与機構]
本実施態様における汚泥掻寄機1は、駆動軸4と従動軸5間に掛け回された無端チェーン2aに一定の張力を付与する張力付与機構8を備えている。
【0030】
従来の2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機では、チェーンの弛みやフライトに掛かる抵抗の違いなどによりチェーンの張力が一定でなくなると、チェーンが間欠動作して、フライトの動きが安定しなくなることや、フライトが倒れるという問題があった。
一方、本実施態様における張力付与機構8は、無端チェーン2aに対し、常に張力を付与し、無端チェーン2aの弛みが発生することを抑制するものである。これにより、無端チェーン2aは常に一定の張力を維持した状態で池底10a付近を周回移動することが可能となる。
また、本実施態様における張力付与機構8は、モータ6と駆動軸4の間に設けられた無端チェーン2bではなく、駆動軸4と従動軸5間の無端チェーン2aに直接張力を付与するものである。これにより、無端チェーン2aが駆動スプロケット4aや従動スプロケット5aから脱落することを抑制し、かつ駆動軸4と従動軸5間の無端チェーン2aを略直線状に保つことが可能となる。また、無端チェーン2aを略直線状に保つことで、汚泥掻寄機1の高さ方向に係るスペースを削減することが可能となる。
【0031】
本実施態様の張力付与機構8は、無端チェーン2aに対して一定の張力を与え、無端チェーン2aを略直線状に保つことができる機構を備えるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、無端チェーン2aの張力を自動的に調節することができる自動テンショナとして機能するものが挙げられる。より具体的には、張力付与機構8としては、例えば、駆動軸4あるいは従動軸5の位置を移動させることで、駆動軸4と従動軸5間の距離を変動させ、無端チェーン2aに張力を付与することが挙げられる。これにより、無端チェーン2aを略直線状に保ちつつ、無端チェーン2aに直接張力を付与することが容易となる。特に、張力付与機構8としては、従動軸5の位置を移動させるものとすることが好ましい。これにより、無端チェーン2aへの張力付与に際し、影響を受ける範囲を限定的なものとし、張力付与機構8の構造を簡易なものとすることが可能となる。
【0032】
以下、図2に基づき、本実施態様の張力付与機構8の構造の一例について説明する。
図2は、本発明の実施態様の張力付与機構8の構造を示す概略説明図である。なお、図2において破線で示したものは、張力付与によって移動した後の各構成の位置を示すものである。
【0033】
図2に示すように、張力付与機構8は、従動軸5を後方移動させるカウンターウェイトを備えるものである。より具体的には、従動軸5と連結される接続具80を介し、従動軸5に接続される第1アーム81aと、1又は複数のウェイト82aが収容されるウェイトケース82と接続される第2アーム81bとを備え、第1アーム81aと第2アーム81bが所定の角度θを成して回転軸83に接続されるものが挙げられる。このとき、第1アーム81a及び第2アーム81bにより形成される角度θは、ウェイト82aの移動(回転移動)時においては固定値となるように第1アーム81a及び第2アーム81bを接続する。なお、角度θの値は、ウェイト82aの移動(回転移動)時における従動軸5の移動距離の範囲に関与する。したがって、角度θについては、所望する従動軸5の移動距離の範囲に応じ、適宜決定することができる。
【0034】
接続具80は、第1アーム81aと従動軸5とを接続することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。接続具80としては、例えば、従動軸5に対し、回転自由な軸受(すべり軸受)の構造とすることや、従動軸5に一体化する構造などが挙げられる。
【0035】
図2中の実線で示すように、張力付与機構8の初期状態においては、ウェイト82aの重量、第1アーム81a及び第2アーム81bの位置(角度θ含む)によって、従動軸5の位置が決定される。また、このとき、無端チェーン2aに掛かる張力が適切に維持されるように、ウェイト82aの重量等を調整する。
そして、無端チェーン2aの弛みが発生すると、ウェイト82aを収容したウェイトケース82が自重により傾き、回転軸83を中心として、第1アーム81a及び第2アーム81bが角度θ分回転する。これにより、図2中の破線で示すように、従動軸5及び従動スプロケット5aの位置が略水平方向に移動し、無端チェーン2aに対し適切な張力が自動的に付与される。
【0036】
本実施態様における張力付与機構8として、このようなカウンターウェイトの構造を用いることで、無端チェーン2aの張力を自動的に調節することができる自動テンショナとして機能するとともに、無端チェーン2aに掛かる張力の調整を、ウェイト82aの重量(個数)の調整という簡便な手段により行うことができる。これにより、張力付与機構8自体に係る操作及びメンテナンス作業が大幅に削減され、作業者の負荷を軽減することができる。
【0037】
張力付与機構8により付与する力の大きさは、駆動軸4における無端チェーン2aの脱落防止及びフライト3の円滑な走行を行うことができるものとすることが好ましい。例えば、張力付与機構8により付与する力の大きさは、無端チェーン2a及びフライト3の重量に摩擦係数を乗じた値である走行抵抗よりも大きくすることが挙げられる。これにより、無端チェーン2aには常に適切な張力が付与された状態となり、無端チェーン2a及びフライト3を円滑に駆動させることが可能となる。
なお、図1に示すように、汚泥掻寄機1においてチェーンガイドレール7aを設けると、従動軸5側から駆動軸4側へ移動する無端チェーン2aには弛みが生じない。したがって、この場合、駆動軸4側から従動軸5側に向けて移動する無端チェーン2a及びフライト3に係る走行抵抗の値より、張力付与機構8により付与する力の大きさを大きくするものとすればよい。
【0038】
張力付与機構8により付与する力の大きさを走行抵抗よりも大きくする手段は、特に限定されない。例えば、チェーンガイドレール7bを摺動する無端チェーン2a及び/又はフライト3の重量あるいは比重を小さくすることや、フライト3に浮きを設け、無端チェーン2aに掛かるフライト3の重量を減少させることなどにより、走行抵抗の値を小さくすることが挙げられる。なお、フライト3に浮きを設ける場合、フライト3の重量を軽減するための浮力を与え、走行抵抗の値を小さくすることができればよく、フライト3が完全に浮き上がるほどの浮力を与えるものではない。また、他の例としては、ウェイト82aの重量(個数)を増加させ、張力付与機構8により付与する力の大きさを大きくすることが挙げられる。
なお、ウェイト82aの重量を増加させることなどにより、張力付与機構8により付与する力の大きさを大きくすると、無端チェーン2aに対し必要以上の負荷が掛かり、装置寿命を短くしてしまうことが懸念される。このため、無端チェーン2a及び/又はフライト3の重量(比重)を小さくすることなどにより、走行抵抗の値を小さくすることがより好ましい。これにより、張力付与機構8(カウンターウェイト)に係るウェイト82aの重量(個数)を減らすことができ、張力付与機構8として必要となる耐荷重性に係る条件を緩和することが可能となる。
【0039】
以上のように、本実施態様における汚泥掻寄機は、2軸式のチェーンフライト式汚泥掻寄機において、駆動軸と従動軸間の無端チェーンに一定の張力を与える張力付与機構を設けることで、チェーンに対して常に張力を与え、チェーンの弛みが発生することを抑制し、汚泥掻寄機の安定した運転を可能にするとともに、チェーンの弛みに起因するメンテナンス頻度を低下させることが可能となる。また、駆動軸と従動軸間の無端チェーンに直接張力を付与し、駆動軸と従動軸間の無端チェーンを略直線状に保つことで、汚泥掻寄機の高さ方向に係るスペースを削減することが可能となる。
【0040】
なお、上述した実施態様は汚泥掻寄機の一例を示すものである。本発明に係る汚泥掻寄機は、上述した実施態様に限られるものではなく、要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る汚泥掻寄機を変形してもよい。
【0041】
例えば、本実施態様の張力付与機構に対し、張力付与機構の異常状態を検知するための検知手段を設けるものとしてもよい。例えば、張力付与機構の第2アームに対し、フロートを接続し、フロートの浮沈程度によって張力付与機構の異常(過剰あるいは過小な張力付与状態)を検知すること等が挙げられる。これにより、水中にある張力付与機構の異常を、速やかに把握することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の汚泥掻寄機は、例えば、下水処理場、廃水処理場、浄水場等などの沈殿池において、汚泥のような固形物を含む被処理水の処理に利用される。また、本発明の汚泥掻寄機は、汚泥掻寄機以外の他の設備を設ける沈殿池に対し、好適に利用される。
【符号の説明】
【0043】
10 沈殿池、10a 池底、10b 汚泥ピット、10c 排出管、10d 水面、
1 汚泥掻寄機、2a,2b 無端チェーン、3 フライト、4 駆動軸、4a 駆動スプロケット、5 従動軸、5a 従動スプロケット、6 モータ、6a モータ用スプロケット、7 チェーンガイドレール、8 張力付与機構、80 接続具、81a 第1アーム、81b 第2アーム、82 ウェイトケース、82a ウェイト、83 回転軸、θ 第1アームと第2アームが成す角度、θ ウェイトケース(ウェイト)の移動に係る角度
図1
図2